(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態の例示にのみ狭く限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る管抜装置(以下「本装置」という。)1の概略を示す図であり、
図2は、本装置1の断面図である。
【0016】
本図で示すように、本装置1は、ベース部2と、ベース部2に固定される筒状のジャッキ部3と、ジャッキ部3を貫通し、ジャッキ部3を挟んで一対のアタッチメント4が付された棒状部材5と、を有する。
【0017】
また、本装置1は、更に、棒状部材5が貫通し、一対のアタッチメント4の間に配置されるリーマ6と、を備えており、リーマ6は、貫通孔612が形成され棒状部材5が貫通する円筒状部分611を備える本体部61と、本体部61周囲に少なくとも3段配置されるリング状の刃62と、を備えている。
【0018】
実施形態において、ベース部2は、後述の記載からも明らかなように、引き抜く管を収めることができる程度の空間21を確保することのできる部材であって、具体的には複数の脚部材22とこの脚部材上に配置される板状部材25を備えて構成されている。複数の脚部材22を備えることで、脚部材22間で引き抜いた管を抜きやすくするとともにバランスをとりやすくし、更に装置全体の軽量化を図ることができる。
【0019】
脚部材22の数は、適宜調整可能であり、自立させることができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えば3本以上あることが好ましい。
【0020】
また、ベース部2の形成する空間21の広さは、引抜対象となる配管を収納できる程度に広ければ十分であり、一般の配管の径の大きさが100mm程度であるため、断面が120mm以上の円形状、より好ましくは150mm以上の円形状を収納する広さを備えていることが好ましい。なお上記した3本以上の脚部材22を供えている場合は、3本以上の脚部材22により囲まれる領域が、120mm以上の円形状、より好ましくは150mm以上の円形状を収納する広さを備えていることが好ましい。
【0021】
またベース部2の高さ、より具体的には脚部材22の長さは、引き抜いた部分の配管を十分な長さ収納することができる程度あることが好ましく、例えば400mm以上あることが好ましく、600mm以上あることがより好ましい。この程度の長さがあれば、スラブ面から数百mm程度離れた位置で切断した程度の長さの配管を一度で引き抜くことができ、またこの長さ以上であっても、後述の引き抜く作業を複数回繰り返すことが可能となり様々な長さの配管に十分に対応することができるようになる。
【0022】
また本実施形態においてジャッキ部3は、上記の通りベース部2に固定されており、筒状である。
【0023】
また本実施形態に係るジャッキ部3とベース部2の脚部材22との間には、板状部材25が配置されている。板状部材25にはジャッキ部3のくり抜かれた空間31程度の径の空隙が形成されており、ジャッキ部3の空間31とベース部2の空間21の接続を阻害しないようになっている。また、板状部材25には、ジャッキ部3の下部周囲を覆う壁部が形成されていることも好ましい。このようにしておくことで、ジャッキ部3を完全に板状部材25に溶接して固定する必要がなくなり、必要なときに設置するだけですみ、未使用時に分離させておくことができ、よりコンパクトに保存することができる。
【0024】
また本実施形態においてジャッキ部3は、限定されるわけではないが、二つの筒部を有して構成され、内側の筒部(内筒部32)が、外側の筒部(外筒33)内を摺動できるように構成されていることが好ましい。
【0025】
本実施形態において、外筒33は、ベース部2(より具体的には板状部材25)に対し固定されており、内筒32を支持するものである。また内筒32は、外筒33内に配置され、上記の通り、外筒33内を摺動することができる。また内筒32のベース部2に固定されている側とは反対の側には、ジャッキヘッド34が配置されている。ジャッキヘッド34はアタッチメント又は後述の棒状部材5の貫通孔51に挿入されるアジャストピン52に当たって棒状部材5を引き上げる際に役立つものであり、棒状部材5が貫通する程度の孔が形成されている。
【0026】
内筒32の摺動は、限定されるわけではないが、外筒33と内筒32の間に空間35を設け、この空間35に油等の流体を充填し、この流体の圧力を高める又は低くすることで上下に摺動可能とすることが好ましい。この場合、外筒33には流体を導入し、圧力を加えるための接続口36を設け、この接続口36に圧力ポンプ(図示省略)を接続することで摺動を実現することができる。
【0027】
また本実施形態において棒状部材5は、ベース部2及びジャッキ部3を貫通することのできる部材であり、その長さはベース部2及びジャッキ部3よりも十分に長いことが必要である。具体的には、スラブに本装置1を設置したとき、スラブに埋め込まれた配管の本装置1より遠い側の配管口より突き出している程度長いことが好ましい。詳細については後述するが、例えば
図3で示すように、一対のアタッチメント4により配管、スラブ、ジャッキ部3を挟むことができる程度に長いことが好ましい。
【0028】
また本実施形態において、棒状部材5の両端部近傍に、ジャッキ部2及びベース部3を挟むよう一対のアタッチメント4を備えている。より具体的には、ジャッキ部3側にトップアタッチメント41を、ベース部2側にボトムアタッチメント42を有している。
【0029】
トップアタッチメント41は、棒状部材5がジャッキ部2及びベース部3から抜け落ちてしまわないように設けられるものであり、ボトムアタッチメント42は、本装置1より遠い側の配管口に当たり、配管を本装置側に引き上げるために用いられるものである。
【0030】
本実施形態において、トップアタッチメント41は、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、ワッシャー411と、このワッシャーを抑えるナット412と、を有していることが簡便である。この場合、棒状部材5の一端から所定の距離だけネジ溝を形成し、ワッシャー411を嵌め入れるとともにナット412で押さえ込むことで実現できる。
【0031】
また また本実施形態において、ボトムアタッチメント42は、上記の通り、配管の配管口に当て、ジャッキ部3を摺動させる、具体的にはジャッキ部3の内筒32を上に引き上げることで配管を引っ張り上げることのできるものである。この限りにおいて限定されるわけではないが、ボトムアタッチメント42は、棒状部材5を貫通させる中空軸部材4211と、この中空軸部材4211の周囲方向に分散して固定される複数のテーパー板4212及び支え部4213を有する台座部421と、この台座部421を締めるナット422と、を有していることが好ましい。この斜視概略図を
図4に、設置した場合のイメージを
図5にそれぞれ示しておく。
【0032】
本実施形態では、このようにボトムアタッチメント42に台座部421、具体的には中空軸部材4211、複数のテーパー板4212、支え部4212を設けることで、確実に配管を押さえ込むことができるようになるとともに、管から取り出しやすくなる。特に、テーパー板4212とすることで、円錐台形とする場合に比べ、管に対する安定性、取り出し性能がより向上する。具体的に説明すると、通常管を引き抜く際は管を切断するがその断面は必ずしも平坦ではなく、場合によっては管の遠心方向に対して傾いている場合もある。管の断面が平坦でない場合や傾いているような場合、円錐台であるとその接触に隙間が生じ安定感が損なわれる場合もあり、場合によっては台座部421及び棒状部材5が本来の方向から傾いてしまう場合さえある。この結果、十分に引き抜く力を管に与えることができなくなってしまう場合もある。また、円錐台形としておくと、管を引き抜いた際このテーパー部分が管に食い込む場合も多く円錐台形のテーパーであると、管と台座部の間が少なく取り出しにくいといった課題もある。これに対し、複数のテーパー板を周方向に分散させて配置することで、管とテーパー板の接点を確実に設定することができ、更に、テーパー板間には十分な隙間を設けることが可能となるため、テーパー板が管に食い込んだ場合であっても、隙間が十分にあり、この間に細い棒状の部材を挿入してテコの原理を用いて簡単に取り外すことが可能となる。この場合のイメージ図を
図6に示しておく。
【0033】
なお、ボトムアタッチメントの設置は、上記トップアタッチメント41と同様に、棒状部材5の一端からネジ溝を掘り、台座部421を嵌め込んだあと、ナットで固定することで実現することができる。また、本実施形態において、ボトムアタッチメント42は、配管口に対して確実に当てる必要があるため、配管の径の大きさに合わせて複数のサイズのものがあることが好ましい。
【0034】
また本実施形態において、台座部421の外径は、引抜対象となる管とほぼ同等の径であることが好ましい。管よりも径が必要以上に大きくなってしまうと、この台座部421がスラブに引っかかり、引き抜くことが難しくなってしまう一方、管の内径よりも小さい場合、配管に引っかからず抜けてしまうといったおそれがある。従って、本装置1を使用して管を抜こうとする場合、台座部の外径は管の内径よりも大きく、管の外形から5mm以下、より好ましくは3mm以下程度大きいことが好ましい。
【0035】
また本実施形態において、棒状部材5は、上記の説明から既に明らかではあるが、配管を貫通し、アタッチメントにより引き上げるために用いられるものである。
【0036】
また本実施形態にかかる棒状部材5には、延伸方向に対し略垂直な方向に複数の貫通孔51が一定の距離をおいて形成されており、この貫通孔51にはアジャストピン52が挿入可能となっている。
【0037】
そして本装置1では、ボトムアタッチメント42を配管の一方の配管口に当てる一方、貫通孔51にアジャストピン52を挿入し、内筒32を摺動させて引き上げることでアジャストピン52をジャッキヘッド25にあて、更に引き上げることで、配管をベース部3側に引き上げることができるようになる。なお、一定の距離引き上げると、ジャッキ部3の内筒32が上がりきってしまう。しかしながら、一定の距離引き上げた後、ジャッキ部3の内筒32を下げると、アジャストピン52が挿入された貫通孔51の下の貫通孔が露出するようになっているため、アジャストピン52を抜いて下の貫通孔に挿しなおすことで再び一定距離引き上げることができるようになる。
【0038】
また本装置1では、管を引き抜いた後に一対のアタッチメント間、より具体的にはボトムアタッチメントのナットの上に設置する部材として、上記のとおり、棒状部材5が貫通し、一対のアタッチメント4の間に配置されるリーマ6と、を備えている。リーマ6は、貫通孔612が形成され棒状部材5が貫通する円筒状部分611を備える本体部61と、本体部61周囲に少なくとも3段配置されるリング状の刃62と、を備えている。
図7に、リーマ6の斜視外略図を、
図8にリーマ6の断面外略図を、
図9に、リーマ6の刃の部分断面図をそれぞれ示す。
【0039】
本図で示すように、リーマ6の本体部は、リング状の刃62を配置するための部材であり、引き抜く管の径と同等であることが好ましい。具体的には、引き抜いた管の径以上5mm以下の径であることが好ましい。
【0040】
またリーマ6を構成する部材は、金属製であることが好ましい。金属製とすることで十分な強度を確保することができる。
【0041】
またリーマ6には、円錐部又は円錐台部を備えていることが好ましい。リーマ6はほぼ引き抜いた管と同等の径を備えているため、そのまま挿入した場合、角の縁部分がスラブに引っかかってしまう場合がある。そのため、円錐部又は円錐台部を設けることで、この引っ掛かりを抑えることができる。
【0042】
また上記のとおり、リーマ6にはリング状の刃62が、本体部61周囲に少なくとも3段配置されている。1段である場合、孔の中で本体部が傾いてしまい十分なスラブの切削を行うことができなくなってしまう場合があるだけでなく、十分な切削を1段の刃で行わなければならないため、その抵抗は非常に大きくなるといった課題がある。これに対し、刃を3段以上とし、更に、リング状の刃が円筒軸方向に沿って徐々に高さが変化していく(より具体的には、円錐部又は円錐台部を備えている場合は円錐部又は円錐台部から遠ざかる方向に従い高さが高くなっていく)ことで、刃を孔の面に安定的に接触させることがようになり切削面を安定化させることができる。さらに、徐々に孔を広げることができ、抵抗を非常に小さくできる。この場合のイメージ図を
図10に示しておく。このようにすることで、安定的にリーマの方向を維持することができるとともに、一つの刃あたりに発生する切削屑の量を少なくすることで抵抗を抑えることができる。特に、リング状の刃を多段に備えることで、この刃の間が隙間となり、切削屑を収納するスペースともなり、抵抗を低く抑えることができる。なお、リング状の刃の数の上限は特にないが、多すぎるとリーマ自体を長くしなければならず抵抗が大きくなるとともに、刃の数も多くなると抵抗が大きくなるため、葉の数としては7以下であること、より好ましくは5以下である。
【0043】
またリーマ6の刃の高さは、限定されるわけではないが、前段の刃の高さよりも0.1mm以上1.5mm以下(リング全体の径としては0.2mm以上3mm以下)の範囲で変化していくことが好ましく、より好ましくは0.2mm以上1mm以下(リング全体の径としては0.4mm以上2mm以下)である。また、一番低いリング状の刃の高さとしては、限定されるわけではないが0.5mm以上3mm以下、より好ましくは1mm以上2mm以下である。リーマの刃の高さの変化を上記の範囲とすることで1段あたりの抵抗を抑えて十分な切削を可能とすることができる。
【0044】
またリーマ6の刃同士の間隔は、本体部の傾きを抑えることができる範囲とする観点から、20mm以上80mm以下とすることが好ましく、より好ましくは20mm以上60mm以下の範囲である。この範囲とすることで、少なくとも2段の状態を長期維持して本体部の傾きを十分に抑えることができる。
【0045】
次に、本装置1を用いた管抜方法について詳細に説明する。
【0046】
まず、施工者は、
図11で示すように、引抜対象となるスラブに埋め込まれた配管を切断する。具体的には、スラブ表面から10〜20cm程度の部分を残して配管を切断する。
【0047】
次に、施工者は、ベース部2及びジャッキ部3をスラブ表面にセットし、ボトムアタッチメントを外した棒状部材5をベース部2及びジャッキ部3上部からくり抜かれた空間31、21を貫通させ、配管の下の配管口から端部を突出させる。そして、棒状部材5の突出した端部近傍にボトムアタッチメント42を固定する。この結果、上記図で示すような状態となる。
【0048】
次に、施工者は、棒状部材5を上部に適当に引っ張り、棒状部材5の上部に形成された貫通孔を確認し、最もジャッキヘッド34に近い露出した貫通孔51にアジャストピン52を挿入する。この状態におけるトップアタッチメント41及びアジャストピン52近傍の状態は上記
図12(1)に相当する。
【0049】
そして、施工者は、ジャッキ部3の接続口36に圧力ポンプ(図示省略)を接続し、圧力を挙げることで内筒32を引き上げる。この結果、上記
図12(2)で示す状態となる。
【0050】
そして、施工者は、内筒32が最大の引き上げ量となったら圧力ポンプの圧力を下げ、内筒を初期状態に戻す。この結果上記
図12(3)の状態となる。
【0051】
そして、施工者は、再び最もジャッキヘッド34に近い露出した貫通孔51にアジャストピン52を挿入しなおし、再び内筒32を引き上げる。この結果、上記
図12(4)となる。そして、これら作業を繰り返すことで、配管を十分に引き上げ、配管を引き抜くことができる。また、全て本装置で引き抜かなくても、十分な一定量引き上げ、後は人力で簡単に管を抜くこともできる(
図13参照)。
【0052】
そして施工者は、管を引き抜いた後、管が存在していた箇所にリーマを設置する。具体的には、上記同様の作業を用いて一対のアタッチメントの間、スラブの下にリーマ6を設置する。この場合のイメージを
図14に示す。
【0053】
そして上記管の引き抜きと同様の作業を行い、リーマ6をスラブの上面にまで引っ張る。この結果、リーマ6により、引き抜いた管と同等の大きさの管を配置することが可能となる。
【0054】
以上、本装置によると、配管に棒状部材5を貫通させてアタッチメント及びアジャストピンで挟み込み、ジャッキ部3により配管を引き抜くとともに、ベース部2を設けることで引き抜いた部分を収納することが可能となり、切削機を用いることなく容易に引き抜くことが可能となり、より音や振動が少なく、スラブに損傷を与えにくいものとなる。
【0055】
そして、抜いた管と同等の径の管を挿入することができる程度に孔の径を拡張し、抜いた管と同等の径の管を安定的に配置させるためのリーマ及びこれを有する管抜装置を提供し、更にはこれらを用いた管抜方法を提供することができる。
抜いた管と同等の径の管を挿入することができる程度に孔の径を拡張し、抜いた管と同等の径の管を安定的に配置させるためのリーマ及びこれを有する管抜装置を提供する。
本発明に係るリーマは、貫通孔が形成された円筒状部分を備える本体部と、前記本体部周囲に少なくとも3段配置されるリング状の刃と、を備えることを特徴とする。また本発明に係る管抜装置は、ベース部と、ベース部に固定される筒状のジャッキ部と、ジャッキ部を貫通し、ジャッキ部を挟んで一対のアタッチメントが付された棒状部材と、一対のアタッチメントの間に配置されるリーマと、を備えた管抜装置であって、リーマは、貫通孔が形成され前記棒状部材が貫通する円筒状部分を備える本体部と、本体部周囲に少なくとも3段配置されるリング状の刃と、を備えることを特徴とする。