特許第6041291号(P6041291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041291
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】長尺ツール及びファイバスコープ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20161128BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61B1/00 310H
   G02B23/24 A
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-83981(P2012-83981)
(22)【出願日】2012年4月2日
(65)【公開番号】特開2013-212258(P2013-212258A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年4月2日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:米国電気電子学会(IEEE) 刊行物名:テクニカルダイジェスト トウェンティファイブス アイトリプルイー インターナショナル カンファレンス オン マイクロ エレクトロ メカニカル システムズ 発行年月日:平成24年 1月16日 集会名:トウェンティファイブス アイトリプルイーインターナショナル カンファレンス オン マイクロ エレクトロ メカニカル システムズ 開催日:平成24年1月31日 集会名:2012年度 修士論文公聴会 開催日:平成24年2月23日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、文部科学省イノベーションシステム整備事業、地域イノベーション戦略支援プログラム(グローバル型)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 聡
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−031069(JP,A)
【文献】 特開平01−096615(JP,A)
【文献】 特開平06−319689(JP,A)
【文献】 特開平02−218330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作する操作部と、この操作部から延び先部側に湾曲動作可能な可動部を有しかつ変形自在な軟性部を前記可動部から前記操作部側に有している挿入部と、前記操作部の操作に基づいて前記可動部を湾曲動作させる駆動機構部と、を備え、
前記駆動機構部は、
前記可動部に組み込まれ張力が付与されることにより当該可動部を湾曲動作させる操作ワイヤと、
前記挿入部のうち前記可動部の近傍でかつ前記軟性部に組み込まれ流体を作動媒体として伸張又は短縮し前記操作ワイヤを引っ張る複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータから前記操作部側まで前記軟性部に沿って設けられ当該複数のアクチュエータに前記流体を供給すると共に当該軟性部に追従して変形可能な流路と、
を有し
前記アクチュエータは、厚さ寸法が幅方向寸法よりも小さい薄型であって、前記軟性部の変形に追従して変形可能であり、エアを作動媒体とするエアシリンダであることを特徴とするファイバスコープ。
【請求項2】
ユーザが操作する操作部と、この操作部から延び先部側に湾曲動作可能な可動部を有しかつ変形自在な軟性部を前記可動部から前記操作部側に有している挿入部と、前記操作部の操作に基づいて前記可動部を湾曲動作させる駆動機構部と、を備え、
前記駆動機構部は、
前記可動部に組み込まれ張力が付与されることにより当該可動部を湾曲動作させる操作ワイヤと、
前記挿入部のうち前記可動部の近傍でかつ前記軟性部に組み込まれ流体を作動媒体として伸張又は短縮し前記操作ワイヤを引っ張る複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータから前記操作部側まで前記軟性部に沿って設けられ当該複数のアクチュエータに前記流体を供給すると共に当該軟性部に追従して変形可能な流路と、
を有し
前記アクチュエータは、厚さ寸法が幅方向寸法よりも小さい薄型であって、前記軟性部の変形に追従して変形可能であり、エアを作動媒体とするエアシリンダであり、
単一の前記操作ワイヤから枝分かれした複数のワイヤそれぞれに前記アクチュエータが接続されており、前記複数のアクチュエータの推力が単一の前記操作ワイヤに付与されることを特徴とするファイバスコープ。
【請求項3】
動作可能な可動部を有しかつ変形自在な軟性部を前記可動部から一端部側に有している長尺体と、前記可動部を動作させる駆動機構部と、を備え、
前記駆動機構部は、
前記可動部に組み込まれ張力が付与されることにより当該可動部を動作させる操作ワイヤと、
前記長尺体のうち前記可動部の近傍でかつ前記軟性部に組み込まれ流体を作動媒体として伸張又は短縮し前記操作ワイヤを引っ張る複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータから前記一端部側まで前記軟性部に沿って設けられ当該複数のアクチュエータに流体を供給すると共に当該軟性部に追従して変形可能な流路と、
を有し
前記アクチュエータは、厚さ寸法が幅方向寸法よりも小さい薄型であって、前記軟性部の変形に追従して変形可能であり、エアを作動媒体とするエアシリンダであることを特徴とする長尺ツール。
【請求項4】
動作可能な可動部を有しかつ変形自在な軟性部を前記可動部から一端部側に有している長尺体と、前記可動部を動作させる駆動機構部と、を備え、
前記駆動機構部は、
前記可動部に組み込まれ張力が付与されることにより当該可動部を動作させる操作ワイヤと、
前記長尺体のうち前記可動部の近傍でかつ前記軟性部に組み込まれ流体を作動媒体として伸張又は短縮し前記操作ワイヤを引っ張る複数のアクチュエータと、
前記複数のアクチュエータから前記一端部側まで前記軟性部に沿って設けられ当該複数のアクチュエータに流体を供給すると共に当該軟性部に追従して変形可能な流路と、
を有し
前記アクチュエータは、厚さ寸法が幅方向寸法よりも小さい薄型であって、前記軟性部の変形に追従して変形可能であり、エアを作動媒体とするエアシリンダであり、
単一の前記操作ワイヤから枝分かれした複数のワイヤそれぞれに前記アクチュエータが接続されており、前記複数のアクチュエータの推力が単一の前記操作ワイヤに付与されることを特徴とする長尺ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作可能である可動部及びこの可動部を動作させる駆動機構部を備えた長尺ツールに関するものであり、特に、先部側が可動部であり湾曲動作するファイバスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟性のある光ファイバが束にされ、その一端側にレンズが設けられ、他端側にアイピースやカメラ等が設けられたファイバスコープが知られており、ファイバスコープは、工業用、医療用及び災害救助ロボット用等の様々な分野で用いられている。
医療用では、ファイバスコープが内視鏡として用いられており、内視鏡は、図7に示すように、ユーザ(医師)が操作する操作部80と、この操作部80から延び先部側に湾曲動作する可動部82を有している挿入部81と、操作部80の操作に基づいて可動部82を湾曲動作させる駆動機構部84とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
操作部80は、ユーザが把持し指先で操作する部分であり、挿入部81は、体内へ挿入される部分である。挿入部81の可動部82は、その先端81aから例えば20cm程度の領域であり、複数の節輪82aを備え湾曲動作が可能である。また、この挿入部81のうち、可動部82から操作部80までの間は、挿入経路に沿って変形自在な(自由に曲がる)軟性部83を有しており、可動部82及び軟性部83により、体内への挿入部81の挿入を容易としている。
【0004】
特許文献1に記載の内視鏡の場合、駆動機構部84は、挿入部81に沿って組み込まれた操作ワイヤ85と、この操作ワイヤ85を駆動するプーリ86とを備えている。プーリ86は操作部80内に設けられており、このプーリ86に操作ワイヤ85が架けられ、操作ワイヤ85の端部が挿入部81の先部の節輪82aに固定されている。
ユーザが操作部80に設けられているレバー等を操作することで、プーリ86を回転させると、操作ワイヤ85が引っ張られ、挿入部81の先部にある可動部82を湾曲動作(首振り動作)させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−219822号公報(図1図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内視鏡の場合、挿入部81は、例えば人体の口や鼻から食道を通じて胃へと挿入されることから人体に対して低侵襲である必要があり、このために、挿入部81の軟性部83はできるだけ可撓性に富んだ構成であるのが好ましい。
しかし、従来のように、剛性を有する操作ワイヤ85が、挿入部81の先部側から操作部80までの全長にわたって挿入部81に組み込まれていると、軟性部83の可撓性が低下してしまう。特に、可動部82の湾曲動作は三次元的に行われるため、操作ワイヤ85の本数は、図7に示す構成よりも多くなり、軟性部83の可撓性が低下することが考えられる。
【0007】
そこで本発明は、従来に比べて、挿入部(軟性部)の可撓性が低下するのを抑えることが可能となるファイバスコープ及び長尺ツールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のファイバスコープは、ユーザが操作する操作部と、この操作部から延び先部側に湾曲動作可能な可動部を有しかつ変形自在な軟性部を前記可動部から前記操作部側に有している挿入部と、前記操作部の操作に基づいて前記可動部を湾曲動作させる駆動機構部とを備え、前記駆動機構部は、前記可動部に組み込まれ張力が付与されることにより当該可動部を湾曲動作させる操作ワイヤと、前記挿入部のうち前記可動部の近傍に組み込まれ流体を作動媒体として伸張又は短縮し前記操作ワイヤを引っ張るアクチュエータと、このアクチュエータから前記操作部側まで前記軟性部に沿って設けられ当該アクチュエータに前記流体を供給すると共に当該軟性部に追従して変形可能な流路とを有していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、挿入部の先部側の可動部は、操作ワイヤが引っ張られることで湾曲動作し、この操作ワイヤは、可動部の近傍に組み込まれているアクチュエータによって引っ張られる。このアクチュエータは、流体を作動媒体としており、この流体は、軟性部に沿って設けられている流路から供給される。
そして、この流路は、可動部の近傍に組み込まれているアクチュエータから操作部側まで軟性部に沿って設けられており、しかも、この流路は、軟性部に追従して変形可能である。このため、軟性部において、従来のような、剛性を有する操作ワイヤを削減することができ、可撓性が低下するのを抑えることが可能となる。
【0010】
また、ファイバスコープの断面形状を小さくする(細くする)ためには、このファイバスコープの挿入部に組み込むアクチュエータを小型化する必要がある。しかし、アクチュエータをあまりに小型化すると操作ワイヤを引っ張る力が弱くなることがある。
そこで、前記アクチュエータは、前記挿入部に複数組み込まれており、単一の前記操作ワイヤに対して複数の前記アクチュエータが連結されているのが好ましく、この場合、複数のエアシリンダの推力を単一の操作ワイヤに付与することができ、エアシリンダを小型化しても、可動部を湾曲動作させるために必要となる大きな操作力を発生させることが可能となる。
【0011】
また、このファイバスコープにおいて、単一の前記操作ワイヤは、前記可動部に組み込まれている本体ワイヤ部と、この本体ワイヤ部から延長して前記軟性部の一部に組み込まれている連結ワイヤ部とを有し、複数の前記アクチュエータは、前記連結ワイヤ部にその長手方向に沿って直列的に連結されているのが好ましい。
この場合、軟性部に沿って複数のアクチュエータを組み込むことが容易となり、複数のアクチュエータの推力を単一の操作ワイヤに付与するための構成が簡単に得られる。
【0012】
また、前記アクチュエータは、前記軟性部の変形に追従して変形可能であるのが好ましい。
この場合、アクチュエータの存在によって軟性部の可撓性が低下するのを抑えることが可能となる。特にアクチュエータを軟性部に多く組み込んだ場合であっても、その組み込んだ部分が極端に剛性が高くなるのを防ぐことができる。
【0013】
また、前記アクチュエータは、エアを作動媒体とするエアシリンダであるのが好ましく、この場合、伸張又は短縮することで操作ワイヤを引っ張る動作を効率良く行うことができる。また、エアを作動媒体とすることで、例えばファイバスコープを内視鏡とする場合、人体に対して低侵襲である。
【0014】
また、本発明の長尺ツールは、動作可能な可動部を有しかつ変形自在な軟性部を前記可動部から一端部側に有している長尺体と、前記可動部を動作させる駆動機構部とを備え、前記駆動機構部は、前記可動部に組み込まれ張力が付与されることにより当該可動部を動作させる操作ワイヤと、前記長尺体のうち前記可動部の近傍に組み込まれ流体を作動媒体として伸張又は短縮し前記操作ワイヤを引っ張るアクチュエータと、このアクチュエータから前記一端部側まで前記軟性部に沿って設けられ当該アクチュエータに流体を供給すると共に当該軟性部に追従して変形可能な流路とを有していることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、長尺体の可動部は、操作ワイヤが引っ張られることで動作し、この操作ワイヤは、可動部の近傍に組み込まれているアクチュエータによって引っ張られる。このアクチュエータは、流体を作動媒体としており、この流体は、軟性部に沿って設けられている流路から供給される。
そして、この流路は、可動部の近傍に組み込まれているアクチュエータから一端部側まで軟性部に沿って設けられており、しかも、この流路は、軟性部に追従して変形可能である。このため、軟性部において、剛性を有する操作ワイヤを削減することができ、可撓性が低下するのを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、挿入部の軟性部において、剛性を有する操作ワイヤを削減することができ、可撓性が低下するのを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のファイバスコープの概略図である。
図2】ファイバスコープの内部の構成を説明する説明図である。
図3】エアシリンダの説明図である。
図4】操作ワイヤに対するエアシリンダの連結数を説明する説明図である。
図5】エアシリンダに供給するエアの圧力と、操作ワイヤに発生させることができる力(張力)との関係を説明するグラフである。
図6】挿入部の先部側の説明図である。
図7】従来の内視鏡の内部の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のファイバスコープ(長尺ツール)の概略図であり、本実施形態のファイバスコープは医療用の内視鏡1である。この内視鏡1は、ユーザ(医師)が操作する操作部2と、この操作部2から延び挿入経路に沿って変形する挿入部3とを備えている。挿入部3は、長尺体からなり、その先部3a側に、湾曲動作可能な可動部5を有していると共に、変形自在な軟性部6を可動部5と操作部2との間に有している。そして、内視鏡1は、可動部5を湾曲動作させる駆動機構部4を備えている。駆動機構部4の駆動、つまり、可動部5の湾曲動作は、ユーザによる操作部2の操作に基づく。
【0019】
挿入部3の大部分は、挿入経路に沿って自由に曲がる軟性部6であり、この軟性部6の基部6aは操作部2と連結されている。軟性部6の先部6bには、可動部5が連結されており、可動部5の先端には硬質部8が設けられている。硬質部8(図2参照)には、ライト8a、ノズル8b、レンズ8c及び鉗子等の処置具を挿通させる開口8d等が設けられている。また、操作部2からはケーブル9(図1参照)が延びて設けられており、レンズ8cによって写された被写体の画像のデータは、このケーブル9を通じてモニタ(図示せず)に出力される。
【0020】
可動部5は、先部3aを所望の方向へ向けるために、図2に示すように、複数の節輪5aが設けられており、これら節輪5aによって湾曲動作が可能となる。これら節輪5aの径方向外側には、被覆部材5bが設けられている。なお、可動部5を湾曲動作可能とするための構成は、節輪5aによるもの以外であってもよく、従来知られている他の構成を採用することができる。軟性部6は、ゴム製等の筒部材7を有しており、この筒部材7及び節輪5aの中心側に、光ファイバー(図示せず)等が設けられる。
【0021】
駆動機構部4は、操作ワイヤ11と、流体を作動媒体として伸張又は短縮し操作ワイヤ11を引っ張るアクチュエータとを有している。本実施形態のアクチュエータは、エアを作動媒体とするエアシリンダ12である。さらに、駆動機構部4は、エアシリンダ12にエアを供給する流路を有しており、本実施形態の流路は、チューブ13からなる。なお、流路は、チューブ13以外の構成であってもよく、例えば、筒部材7に沿って形成された長い孔であってもよい。
【0022】
可動部5は、様々な自由度で湾曲することができ、このために、操作ワイヤ11とこの操作ワイヤ11を操作するエアシリンダ12とからなるユニットが、挿入部3の周方向に複数配設されている。各ユニットは周方向に並んで設けられており、本実施形態では、上下の二方向と左右の二方向とに湾曲することができ、4つのユニットが90度間隔で配設されている。各ユニットは同じ構成であり、以下では、そのうちの一つを代表として説明する。
【0023】
操作ワイヤ11は、主に可動部5に組み込まれており、その端部11aが先端側の節輪5aに連結固定され、操作ワイヤ11は可動部5の長手方向に沿って設けられている。本実施形態では、単一の操作ワイヤ11は、可動部5に組み込まれている本体ワイヤ部15と、この本体ワイヤ部15から延長して軟性部6の一部に(長手方向に沿って)組み込まれている連結ワイヤ部16とを有している。連結ワイヤ部16は、エアシリンダ12を連結させるための部分であり、エアシリンダ12を連結させるだけの長さを有していれば足り、本実施形態では、本体ワイヤ部15よりも短い。そして、この操作ワイヤ11に張力が付与されることにより、可動部5を湾曲動作させることができる。操作ワイヤ11は、金属製のワイヤからなる。
【0024】
エアシリンダ12は、図3に示すように、厚さ寸法tが幅方向寸法bよりも小さい薄型であり、内部空間が形成されているケース部17と、ロッド部18とを有している。ロッド部18はケース部17内を進退移動するスライダ部となる。なお、図3では、内部構造を説明するために、ケース部17の上面部材を透明と考え、二点鎖線で示している。また、このエアシリンダ12は、内視鏡1の挿入部3に組み込むために小型としている。このような小型のエアシリンダ12は、ミクロ機械加工によって製作される。エアシリンダ12を薄型化、小型化することで挿入部3に組み込むのが容易となる。
【0025】
ケース部17内には、ケース部17の長手方向に延びる中央空間19と、その幅方向両側の側部空間20とが形成されており、中央空間19と側部空間20とが長手方向端部側(図3では右側)で繋がっている。中央空間19がロッド部18の端部によって区画され、区画された領域の一端部側に第1ポート21が形成されている。そして、側部空間20に第2ポート22が形成されている。これらポート21,22に、前記チューブ13(図2参照)が連結されており、第1ポート21にエアが供給されることで、図3(A)に示すようにエアシリンダ12は伸張し、第2ポート22にエアが供給されることで、図3(B)に示すようにエアシリンダ12は短縮する。
【0026】
そして、図2において、エアシリンダ12の伸縮方向と操作ワイヤ11の長手方向とが一致するようにして、エアシリンダ12(ケース部17)は軟性部6(筒部材7)に取り付けられている。特に、エアシリンダ12は、挿入部3のうち、可動部5よりも操作部2側にある途中部であって可動部5の近傍に組み込まれている。つまり、エアシリンダ12は、軟性部6の先部6b側にのみ設けられている。
そして、エアシリンダ12のロッド部18に、操作ワイヤ11が連結固定されており、エアシリンダ12が短縮動作すると、操作ワイヤ11を引っ張ることができる。
【0027】
また、図2の場合、エアシリンダ12は、軟性部6に沿って複数組み込まれており、単一の操作ワイヤ11に対して、複数(図例では3つ)のエアシリンダ12それぞれが連結されている。さらに説明すると、これら3つのエアシリンダ12は、連結ワイヤ部16に、その長手方向に沿って直列的に連結されている。したがって、これらエアシリンダ12の推力の合計が、単一の操作ワイヤ11に付与され、全体として大きな力を発生させることが可能となる。
【0028】
エアを各エアシリンダ12に供給するためのチューブ13は、前記のとおり第1と第2ポート21,22(図3参照)に連結されているが、本実施形態では、単一の操作ワイヤ11に対して3つのエアシリンダ12が連結されていることから、これら3つのエアシリンダ12それぞれの第1ポート21と繋がっている枝チューブ13a(図2参照)は、操作部2側からエアシリンダ12まで軟性部6に沿って延びている一本の主チューブ13bに、合流している。これと同様に、3つのエアシリンダ12それぞれの第2ポート22と繋がっている枝チューブ13cは、操作部2側からエアシリンダ12まで軟性部6に沿って延びている一本の主チューブ13dに、合流している。なお、各合流点は各エアシリンダ12の近傍の点であるのが好ましく、各枝チューブは主チューブに最短で繋がっているのが好ましい。
【0029】
これら枝チューブ13a,13c及び主チューブ13b,13dにより、チューブ13が構成されており、このチューブ13は、軟性部6に追従して変形可能な(フレキシブルな)材料からなる。チューブ13は、ゴム製である筒部材7よりも弾性変形が容易な材料からなる。
以上より、チューブ13は、エアシリンダ12から操作部2側まで、軟性部6に沿って組み込まれており、操作部2側に設けられているポンプ26によって吐出されたエアが、チューブ13内を流れ、そのエアがエアシリンダ12に供給される。
【0030】
ポンプ26は、操作部2内に設けられていてもよいが、操作部2とは別に設置されていてもよく、この場合、操作部2とポンプ26とは配管(図示せず)を介して接続される。ポンプ26のエア吐出側には、切り換えバルブ(図示せず)が設けられており、このバルブの吐出ポートが切り換えられることで、主チューブ13b,13dのいずれか一方にのみエアを流すことができる。これにより、3つのエアシリンダ12を伸張又は短縮させることができ、可動部5を二方向のうちの一方に湾曲動作させることが可能となる。そして、前記バルブの切り換えは、操作部2に設けられているレバー操作に基づいて実行され、レバーの操作はユーザが行う。
【0031】
以上の構成を備えた内視鏡1によれば、挿入部3の先部3a側の可動部5は、操作ワイヤ11が引っ張られることで湾曲動作し、この操作ワイヤ11を引っ張るエアシリンダ12は挿入部3のうち可動部5の近傍に組み込まれている。そして、このエアシリンダ12から操作部2側へはチューブ13が組み込まれており、このチューブ13を通じてエアをエアシリンダ12に供給することで、可動部5を湾曲動作させることができる。
そして、可動部5の近傍に組み込まれているエアシリンダ12から操作部2側まで軟性部6に沿ってチューブ13が組み込まれており、しかも、このチューブ13は、軟性部6に追従して変形可能である。このため、軟性部6において、従来のような剛性を有する長い操作ワイヤ85(図7参照)を削減することができ、可撓性(軟性)が低下するのを抑えることが可能となる。
【0032】
また、内視鏡1では、挿入部3の断面形状を小さくする(細くする)のが好ましいことから、この挿入部3に組み込むエアシリンダ12を小型化している。なお、エアシリンダ12をあまりに小型化すると、エアシリンダ12内のロッド部18におけるエアの受圧面積が小さくなり、操作ワイヤ11を引っ張る力が弱くなる。しかし、本実施形態では、小型化したエアシリンダ12が3つ組み込まれており、単一の操作ワイヤ11に対して、これら3つのエアシリンダ12(ロッド部18)を連結させている。このため、これらエアシリンダ12の推力を単一の操作ワイヤ11に付与することができ、たとえエアシリンダ12を小型化しても、可動部5を湾曲動作させるために必要となる大きな操作力を発生させることが可能となる。
また、本実施形態では、操作ワイヤ11の必要長を、可動部5の長手方向の長さと同程度(同程度よりも僅かに長い)とすることができ、この結果、従来の構成に比べて操作ワイヤ11における動力の伝達損を減らすことが可能となる。
【0033】
特に、本実施形態では、3つのエアシリンダ12を連結ワイヤ部16にその長手方向に沿って直列的に連結させている。このため、軟性部6に沿ってエアシリンダ12を分散配置して組み込むことが容易となり、これらエアシリンダ12の推力を単一の操作ワイヤ11に付与するための構成が簡単に得られる。
そして、これらエアシリンダ12の伸縮方向が、操作ワイヤ11の引っ張り方向と一致していることから、操作ワイヤ11を引っ張る動作を効率良く行うことができる。また、エアを作動媒体としていることで人体に対して低侵襲であり、電気的なエネルギを可動部に供給していないことから、例えば発火のおそれもなく安全である。
【0034】
また、エアシリンダ12は、筒部材7に埋め込んだり表面に貼り付けたりすることで、軟性部6に組み込まれる。このように、エアシリンダ(アクチュエータ)12を軟性部6と一体化する(軟性部6に貼り付ける)ことで、節構造を得ることが可能となる。エアシリンダ12(ケース部17及びロッド部18)は、様々な材質を採用することができ、ステンレス等の金属製とすることもできるが、軟性部6の変形に追従して変形可能となる材質からなるのが好ましい。例えば、エアシリンダ12をポリマー製とすることができる。これにより、エアシリンダ12の存在によって軟性部6の可撓性が低下するのを抑えることが可能となる。特にエアシリンダ12を軟性部6に多く組み込んだ場合であっても、その組み込んだ部分が極端に剛性が高くなるのを防ぐことができる。
【0035】
また、本実施形態では、小型のエアシリンダ12が、軟性部6の長手方向に沿って隙間を空けて配設されており、また、エアシリンダ12の間では軟性部6は自由に変形可能であることから、エアシリンダ12の存在によって軟性部6の可撓性が低下するのを防ぐことができる。また、エアシリンダ12間に操作ワイヤ11(連結ワイヤ部16)が介在しているが、操作ワイヤ11は可撓性を有しておりまた僅かな範囲のみであることから、操作ワイヤ11による軟性部6の変形抵抗は極小で済む。なお、これについては、エアシリンダ12を剛性の高い材質から構成した場合であっても、同様である。
【0036】
前記実施形態では、単一の操作ワイヤ11に対して、エアシリンダ12を3つ直列接続した場合について説明したが、エアシリンダ12の数は変更可能である。図4(A)の概略構成図に示すように、単一の操作ワイヤ11に対して3つのエアシリンダ12が直列接続されており、これは、前記実施形態に対応している。これに対して、図4(B)に示すように、単一の操作ワイヤ11に対して2つのエアシリンダ12が直列接続されていてもよく、また、単一の操作ワイヤ11に対して1つのエアシリンダ12が接続されていてもよい。このエアシリンダ12の数は、可動部5を湾曲動作するために必要となる操作ワイヤ11に付与する張力に基づく。
【0037】
図5は、エアシリンダ12に供給するエアの圧力と、このエアの圧力によって操作ワイヤ11に発生させることができる力(張力)との関係を説明するグラフであり、単一の操作ワイヤ11に対して直列接続したエアシリンダ12の数毎に、力(張力)の測定結果を示している。なお、この図5には、エアシリンダ12の数について、1つの場合(×1)、2つの場合(×2)、3つの場合(×3)及び4つの場合(×4)を示している。図5によれば、エアの圧力を大きくすれば力を大きくすることができるが、単一の操作ワイヤ11に対するエアシリンダ12の数に応じて、力も大きくなることがわかる。
【0038】
また、図6は、挿入部3の先部3a側の説明図である。この挿入部3を備えている内視鏡では、硬質部8に開口8dが形成されており、この開口8dから鉗子等の処置具10を挿通させることができる。処置具10は、挿入部3(可動部5)内に収容される位置と、挿入部3の先端から突出した位置(図6の状態)との間を進退移動することができる。この処置具10の基部には、可動部5を湾曲動作させるために用いられる操作ワイヤ11と同様の、操作ワイヤ23が連結されている。そして、この操作ワイヤ23に、可動部5を湾曲動作させるために用いられるエアシリンダ12と同様の、エアシリンダ(アクチュエータ)24が連結されており、このエアシリンダ24がエアによって伸縮動作することで、操作ワイヤ23を押し引きし、前記処置具10を操作することができる。例えば、処置具10が物を掴む鉗子である場合、エアシリンダ24がエアによって伸縮動作することで、操作ワイヤ23を押し引きし、鉗子(処置具10)の先端部を開閉動作させることが可能となる。また、この開閉動作とは別に、同様のエアシリンダ及び操作ワイヤを設け、このエアシリンダがエアによって伸縮動作することで、操作ワイヤを押し引きし、処置具10を進退移動させることが可能となる。
【0039】
そして、このエアシリンダ24についても可動部5の近傍に組み込まれており、このエアシリンダ24から(図外の)操作部2までの間は軟性部6に沿ってチューブ25が組み込まれている。このチューブ25を通じてエアシリンダ24にエアを供給することができ、このチューブ25は、前記チューブ13(図2参照)と同様に、軟性部6に追従して変形可能である。このため、軟性部6において、可撓性が低下するのを抑えることが可能となる。
【0040】
また、本発明のファイバスコープは、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。本発明のファイバスコープは、医療用である内視鏡以外に、工業用であってもよく、又は、人が侵入困難である災害現場に向かう災害救助ロボットに組み込まれてもよい。
【0041】
また、ファイバスコープが備えているアクチュエータに関して、前記実施形態ではエアシリンダとしたが、流体を作動媒体としていればその他の型式であってもよく、例えば図示しないが、エアの供給によって膨張(伸張)するバルーン型のアクチュエータであってもよい。この場合、このアクチュエータが全体として膨張(又は収縮)することで操作ワイヤを引っ張る構成であってもよい。また、作動媒体をエアとして説明したが、他の流体であってもよく、例えば水とすることができる。
【0042】
アクチュエータとしてエアシリンダを採用する場合、前記実施形態では、薄型のエアシリンダとしたが、この形態も変更可能であり筒型であってもよい。図2では、ロッド部18を可動部5側に位置させてエアシリンダ12を設けた場合を説明したが、このエアシリンダ12の向きを反対としてもよい。この場合、エアシリンダ12が伸張することで操作ワイヤ11を引っ張ることができる。
【0043】
さらに、エアシリンダ12を直列として操作ワイヤ11に接続する場合を説明したが、この配置は他の形態であってもよく、図示しないが複数のエアシリンダを並列に配置し、これらエアシリンダそれぞれを単一の操作ワイヤ11に接続してもよい。さらに、直列又は並列の一方ではなく、直列かつ並列にエアシリンダを配設し、これらエアシリンダそれぞれを単一の操作ワイヤ11に接続してもよい。この場合、軟性部6の外周の円周面に沿って周方向かつ軸方向にエアシリンダが配置された構成となる。又は、エアシリンダ自体が筒型であってもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、可動部5は湾曲動作する場合について説明したが、この動作は湾曲のみならず、その他の動作であってもよく、また、可動部5の構成は変更自在であり、図6のように処置具10を進退動作させる場合であってもよい。この場合、挿入部3は進退動作する動作部分を含み、この動作部分が可動部となる。特に、長尺体である挿入部3に設けられている可動部の構成は、この長尺体を備えている長尺ツールの用途(医療用、工業用又は災害救助ロボット等の用途)によって変更自在である。
【符号の説明】
【0045】
1:内視鏡(ファイバスコープ) 2:操作部 3:挿入部(長尺体) 3a:先部 4:駆動機構部 5:可動部 6:軟性部 11:操作ワイヤ 12:エアシリンダ(アクチュエータ) 13:チューブ(流路) 15:本体ワイヤ部 16:連結ワイヤ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7