特許第6041298号(P6041298)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041298
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ボール弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   F16K5/06 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-213044(P2012-213044)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-66324(P2014-66324A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年7月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】池田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】四方 出
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5730420(US,A)
【文献】 特開昭46−7533(JP,A)
【文献】 米国特許第6090094(US,A)
【文献】 特開2011−174598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口通路、流体出口通路およびこれらの通路間に設けられた連通部を有する本体と、
流体連通路を有し本体の連通部に基準軸回りに回転可能に配設されたボールと、
周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなし前記ボールと前記本体との間に配設されたボールシートと、
前記ボールシートに隣接して前記本体の内部に配設されたボールシート押さえと、
前記本体の内周にねじ合わせされて配設された押さえねじと、を備えており、ボールを基準軸回りに回転させることで流体入口通路と流体出口通路との連通と遮断を行うボール弁において、
前記ボールシート押さえの上部において、ステムと前記本体の筒状部との間にグランドパッキンが保持され、
前記押さえねじの締付け力が調整されることによって、前記ボールシートが前記ボールシート押さえのみを介して上方から押圧されることを特徴とするボール弁。
【請求項2】
流体入口通路、流体出口通路およびこれらの通路間に設けられた連通部を有する本体と、
流体連通路を有し本体の連通部に基準軸回りに回転可能に配設されたボールと、
周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなし前記ボールと前記本体との間に配設されたボールシートと、
前記ボールシートに隣接して前記本体の内部に配設されたボールシート押さえと、
前記本体の内周にねじ合わせされて配設された押さえねじと、を備えており、ボールを基準軸回りに回転させることで流体入口通路と流体出口通路との連通と遮断を行うボール弁において、
前記ボールシート押さえの上部において、ステムと前記本体の筒状部との間にグランドパッキンが保持され、
前記押さえねじが前記ボールシート押さえを剛性スペーサのみを介して押圧することを特徴とするボール弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルトルクを低減しこれにより手動での開閉が容易であって、且つ確実にリークを防ぐことができるボール弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブ本体の内部空間に、ステム軸回りの回転により流路を開閉する弁体(ボール)と、該弁体の周囲を囲むように配設されたボールシートとを備えた構造をもつボール弁が知られている。このような構造のボール弁においては、リークを防ぐためボールシートをボール側へ押圧しておく必要がある。
【0003】
特許文献1には、図4に示すように、本体(2’)の筒状部内に嵌め入れられたボールシート押さえ(14’)とボールシート受け面(13’)によりボールシート(12’)を挟持し、ボールシート内にボール(3’)を収容する構成を有するボール弁(1’)が開示されている。
特許文献1記載のボール弁(1’)は、ボールシート押さえ(14’)上部に配設されステム(5’)と本体筒状部との間をシールするフッ素樹脂パッキン(15’)と、フッ素樹脂パッキン上部に配設されたパッキン押さえ(16’)とを備えており、ボールシート押さえ(14’)はこれらを介して本体筒状部の内周にねじ合わせされたパッキン押さえねじ(17’)によって下方に押圧されている。これによりリークを防ぐことができる。
【0004】
しかし、特許文献1記載のボール弁においては、ボールシート押さえ(14’)はフッ素樹脂パッキン(15’)を介して押圧されているため、フッ素樹脂パッキン(15’)の弾性により、フッ素樹脂パッキンを十分に押し付けないとフッ素樹脂パッキンが変位を吸収してしまいボールシート押さえへと力が十分に伝わらず、これによりリークが発生してしまう可能性があった。このリークを防ぐためにリークが止まるまでパッキン押さえねじ(17’)の締付けを行うと、今度はハンドルトルクが重くなり手動でバルブを開閉させることが困難になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−174598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであって、ハンドルトルクを低減しこれにより手動での開閉が容易であって、且つ確実にリークを防ぐことができるボール弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、流体入口通路、流体出口通路およびこれらの通路間に設けられた連通部を有する本体と、
流体連通路を有し本体の連通部に基準軸回りに回転可能に配設されたボールと、
周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなし前記ボールと前記本体との間に配設されたボールシートと、
前記ボールシートに隣接して前記本体の内部に配設されたボールシート押さえと、
前記本体の内周にねじ合わせされて配設された押さえねじと、を備えており、ボールを基準軸回りに回転させることで流体入口通路と流体出口通路との連通と遮断を行うボール弁において、
前記ボールシート押さえの上部において、ステムと前記本体の筒状部との間にグランドパッキンが保持され、
前記押さえねじの締付け力が調整されることによって、前記ボールシートが前記ボールシート押さえのみを介して上方から押圧されることを特徴とするボール弁に関する。
【0009】
請求項に係る発明は、流体入口通路、流体出口通路およびこれらの通路間に設けられた連通部を有する本体と、
流体連通路を有し本体の連通部に基準軸回りに回転可能に配設されたボールと、
周壁に所要の開口部が設けられた略円筒状をなし前記ボールと前記本体との間に配設されたボールシートと、
前記ボールシートに隣接して前記本体の内部に配設されたボールシート押さえと、
前記本体の内周にねじ合わせされて配設された押さえねじと、を備えており、ボールを基準軸回りに回転させることで流体入口通路と流体出口通路との連通と遮断を行うボール弁において、
前記ボールシート押さえの上部において、ステムと前記本体の筒状部との間にグランドパッキンが保持され、
前記押さえねじが前記ボールシート押さえを剛性スペーサのみを介して押圧することを特徴とするダイヤフラムに関する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、押さえねじがボールシート押さえをパッキンを介さずに押圧するので、押さえねじの締付け力を直接ボールシート押さえに伝えることができる。これにより、押さえねじの締付トルクが小さな値でもリークを防ぐことができ、よってハンドルトルクを低減できる。
【0012】
請求項に係る発明によれば、押さえねじがボールシート押さえを剛性スペーサのみを介して押圧するので、押さえねじの締付け力をボールシート押さえに十分伝えることができる。これにより、押さえねじの締付トルクが小さな値でもリークを防ぐことができ、よってハンドルトルクを低減できる。
また、剛性スペーサを備えることにより、押さえねじの底面の形状を単純化することができ、押さえねじの加工を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係るボール弁の第1実施形態を示す正面断面図である。
図2】本発明に係るボール弁の第2実施形態を示す正面断面図である。
図3】本発明に係るボールシートを示す拡大正面断面図である。
図4】従来のボール弁の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るボール弁について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下および左右は、図1の上下および左右をいうものとする。この方向は、便宜的なものであり、実際の取付けでは、上下方向が鉛直方向とされるだけでなく、水平方向とされることもある。
【0015】
図1は、本発明に係るボール弁(1)の第1実施形態を示す正面断面図である。
ボール弁(1)は、2ポートのもので、流体入口通路(2a)、流体出口通路(2b)およびこれらの通路(2a),(2b)間に設けられた連通部(2c)を有する本体(2)と、流体連通路(3a)を有し本体(2)の連通部(2c)に基準軸(上下方向の軸)回りに回転可能に配設されたボール(3)と、周壁に所要の開口部(4a)が設けられた略円筒状をなしボール(3)と本体(2)との間に密に配設されたボールシート(4)と、ボール(3)と一体に形成されたステム(5)と、ステム(5)の上端部に設けられたハンドル(6)と、ボールシート(4)に設けられた開口部(4a)に嵌め入れられたリテーナ(7)とを備えている。
【0016】
本体(2)、ボール(3)、ステム(5)およびリテーナ(7)はステンレス鋼のような金属材料から形成される。
ボールシート(4)は、合成樹脂材料から形成されており、より具体的には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、超高分子量ポリエチレン等から形成されることが好ましい。
ハンドル(6)の材料は特に限定されないが、黄銅鋳物やナイロン6を用いることができる。
【0017】
本体(2)の流体入口通路(2a)の入口部分には、入口管を接続するための継手部(8)が設けられており、本体(2)の流体出口通路(2b)の出口部分には、出口管を接続するための継手部(9)が設けられている。本体(2)は、上方に突出する筒状部(2d)を有しており、筒状部(2d)に設けられたおねじ部にパネルナット(10)がねじ合わされている。
【0018】
図1には、流体入口通路(2a)と流体出口通路(2b)とがボール(3)の流体連通路(3a)によって連通させられている状態が示されている。図示省略するが、この状態からボール(3)を基準軸回りに回転させて、その流体連通路(3a)を同図の紙面表から裏に向かう方向に向けることにより、流体入口通路(2a)と流体出口通路(2b)との連通が遮断される。
【0019】
図3は、本発明に係るボールシートを示す拡大正面断面図である。
ボールシート(4)は、図3に示すように上下に分割されており、下半部(11)と、これと類似形状の上半部(12)とが突き合わされることで、ボール(3)を収容可能な略円筒状に形成されている。下半部(11)は、その下面が本体(2)の流体連通路(3a)の下面を構成しているボールシート受け面(13)で受けられており、上半部(12)は、その上面がボールシート押さえ(14)の下面で受けられている。
【0020】
ボールシート押さえ(14)は、ステンレスのような金属材料から形成され、本体(2)の筒状部(2d)内に嵌め入れられている。ボールシート押さえ(14)の上部には、ステム(5)と本体(2)の筒状部(2d)との間にフッ素樹脂製のグランドパッキン(15)が保持されている。ボールシート押さえ(14)は、本体(2)の筒状部(2d)の内周にねじ合わされた押さえねじ(17)によって、グランドパッキン(15)を介さず直接下方に押圧されている。即ち、押さえねじ(17)の締付け力が調整されることによって、ボールシート(4)がボールシート押さえ(14)を介して上方から押圧されている。
【0021】
図2は、本発明に係るボール弁の第2実施形態を示す正面断面図である。
第1実施形態においては、ボールシート押さえ(14)は押さえねじ(17)によって直接下方に押圧されているが、第2実施形態においては、図2に示すように押さえねじ(17)とボールシート押さえ(14)との間に剛性スペーサ(18)が備えられている。剛性スペーサ(18)はグランドパッキン(15)を押圧することはなくボールシート押さえ(14)のみを押圧する。
剛性スペーサ(18)の材料は、特に限定されないが、ステンレス鋼のような金属材料を好適に使用できる。
剛性スペーサ(18)を備えることにより、押さえねじ(17)の底面の形状を単純化することができ、加工が容易となるという利点がある。
また、ボールシート押さえ(14)の下面(即ちボールシート(4)と接触する面)は、凸形状或いは凹形状を有していてもよい。
【0022】
このようにボールシート押さえ(14)が押さえねじ(17)によってグランドパッキン(15)を介さず直接下方に押圧されるので、従来のようにグランドパッキンの弾性に起因してグランドパッキンが変位を吸収してしまいボールシート押さえへと力が十分に加わらないということがない。よって、押さえねじ(17)の締付け力を小さな値としてもリークを防ぐことができ、これによりハンドルトルクの値を小さくすることができるので手動で容易に弁の開閉を行うことが可能となる。
この構成により確実にシールすることができるのでグランドパッキン(15)は無くてもよいが、ステム(5)を支持するために備えられていてもよい。
【0023】
ボールシート(4)の周壁には、等間隔で計4カ所の開口部(4a),(4b)が設けられており、図1に示されている左右の開口部(4a)には、略円環状のリテーナ(7)が嵌め入れられている。このリテーナ(7)によって、流体通路となる開口が確保されるとともに、ボールシート(4)の変形が抑制されている。ボールシート(4)の前後の開口部(4b)(図3参照)には、2ポートのボール弁(1)として使用するために、この開口部(4b)を閉鎖する円板状のリテーナ(図示略)が嵌め入れられている。
【実施例】
【0024】
以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明に係るボール弁はこれらに限定されるものではない。
【0025】
ボールシート押さえを押さえねじにより直接押圧する構成のボール弁(実施例)と、ボールシート押さえを押さえねじによりグランドパッキン(フッ素樹脂製、厚さ5mm)を介して押圧する構成のボール弁(比較例)をそれぞれ3個準備し、気密・弁座リークが止まったときのグランド締付トルクと、この時のハンドルトルクを測定した。
結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
この結果より、ボールシート押さえを押さえねじによりグランドパッキンを介さず直接押圧する構成のボール弁(実施例)は、グランドパッキンを介して押圧する構成のボール弁(比較例)と比べて低い締付トルクでシールできることがわかる。また、低い締付トルクでシールできるので、ハンドルトルクを低減できることがわかる。人が手動でハンドルを開閉できるトルクは5N・m以下と言われており、実施例のボール弁はそれ以下にハンドルトルクを抑えることができるので、手動で容易に弁を開閉できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、流体の流通を許容及び遮断するためのボール弁として利用される。
【符号の説明】
【0029】
1 ボール弁
2 本体
2a 流体入口通路
2b 流体出口通路
2c 連通部
3 ボール
3a 流体連通路
4 ボールシート
4a、4b 開口部
13 ボールシート受け面
14 ボールシート押さえ
15 グランドパッキン
17 押さえねじ
18 剛性スペーサ
図1
図2
図3
図4