特許第6041309号(P6041309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041309
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/00 20060101AFI20161128BHJP
   G01L 7/00 20060101ALI20161128BHJP
   G01L 9/08 20060101ALI20161128BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01L9/00 303Q
   G01L7/00 K
   G01L9/08
   H01L29/84 A
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-46396(P2013-46396)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-173977(P2014-173977A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】内山 武
(72)【発明者】
【氏名】大海 学
(72)【発明者】
【氏名】篠原 陽子
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/102073(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0000378(US,A1)
【文献】 特開平04−208827(JP,A)
【文献】 米国特許第05293095(US,A)
【文献】 特開平09−051951(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0013793(US,A1)
【文献】 特開平11−356065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 9/00
G01L 7/00
G01L 9/08
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力変動を検出する圧力センサであって、
内部にキャビティを形成し、前記キャビティと外部とを連通する連通開口を有する中空のセンサ本体と、
先端部が自由端かつ基端部が前記センサ本体に片持ち状に支持された状態で前記連通開口を塞ぐように配置され、前記キャビティと前記センサ本体の外部との圧力差に応じて撓み変形するカンチレバーと、
前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部と、
前記カンチレバーの先端部との間に前記連通開口の一部を構成するギャップを形成するギャップ形成部材と、
を備え、
前記カンチレバーおよび前記ギャップ形成部材のうち少なくとも何れかは、前記ギャップの大きさを変更するようにして相対的に近接または離間する方向に変位可能である、
ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位に基づき、前記ギャップの大きさを制御するギャップ制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ギャップ形成部材は、前記カンチレバーの先端部に対向する先端部を変位可能な可変部材と、電磁相互作用または伸縮によって前記可変部材の前記先端部を変位させるアクチュエータと、を備え、
前記ギャップ制御手段は、前記アクチュエータの電磁相互作用または前記アクチュエータの伸縮を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記ギャップ形成部材は、前記カンチレバーの先端部に向かい伸縮可能なアクチュエータを備え、
前記ギャップ制御手段は、前記アクチュエータの伸縮を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記ギャップ制御手段は、
電磁相互作用または伸縮によって前記ギャップ形成部材の先端部に対向する前記カンチレバーの先端部を変位させるレバーアクチュエータを備え、
前記レバーアクチュエータの電磁相互作用または前記レバーアクチュエータの伸縮を制御する、
ことを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1つに記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記ギャップ制御手段は、前記圧力差に応じた前記カンチレバーの撓み変形時に、前記圧力差または前記撓み変形が無い場合に比べて、前記カンチレバーの先端部および前記ギャップ形成部材の先端部の少なくとも何れかを相対的に近接するように変位させる、
ことを特徴とする請求項2から請求項5の何れか1つに記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記ギャップ制御手段は、前記圧力差に応じた前記カンチレバーの撓み変形時に前記ギャップの大きさが一定値となるように制御する、
ことを特徴とする請求項2から請求項6の何れか1つに記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記ギャップ制御手段は、前記圧力差または前記撓み変形が所定上限値よりも大きい場合に、前記ギャップの大きさを増大させる、
ことを特徴とする請求項2から請求項7の何れか1つに記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力変動を検出する圧力センサ(差圧センサ)として、たとえば、透孔又は凹部を有する基板と、通気孔を有する収納容器と、収納容器内に配設され、透孔又は凹部内で振動可能に基板に片持ち支持された圧電素子と、を具備した圧力センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この圧力センサによれば、通気孔を介して収納容器内に伝わる圧力変動と、この圧力変動に遅れて追従する透孔又は凹部内部の圧力との差圧の大きさに応じて圧電素子が振動する。その結果、上記圧力センサは、圧電素子に生ずる電圧変化に基づいて、収納容器に伝わる圧力変動を検出することが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−208827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る圧力センサの検出感度は、圧電素子の形状や、透孔又は凹部の容積や、透孔又は凹部と外気との間を出入りする流量等に応じて変化する。しかしながら、圧電素子は、圧電体の両面に電極膜等を具備する両面電極構造を有するので、厚みを小さくすることによって大きな変形量を確保することが難しいという問題が生じる。これによって、共振周波数を低下させつつ感度を増大させることが困難であり、測定できる下限周波数を下げることが難しいうえ、例えば1Hz以下等の低周波帯域における所望の感度を確保することが難しいという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、圧力変動の検出を精度良く行うことができるとともに、検出できる下限周波数を下げることができ、かつ低周波帯域の圧力変動を感度良く検出することができる圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る圧力センサは、圧力変動を検出する圧力センサであって、内部にキャビティを形成し、前記キャビティと外部とを連通する連通開口を有する中空のセンサ本体と、先端部が自由端かつ基端部が前記センサ本体に片持ち状に支持された状態で前記連通開口を塞ぐように配置され、前記キャビティと前記センサ本体の外部との圧力差に応じて撓み変形するカンチレバーと、前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位を検出する変位検出部と、前記カンチレバーの先端部との間に前記連通開口の一部を構成するギャップを形成するギャップ形成部材と、を備え、前記カンチレバーおよび前記ギャップ形成部材のうち少なくとも何れかは、前記ギャップの大きさを変更するようにして相対的に近接または離間する方向に変位可能である。
【0007】
(2)上記(1)に記載の圧力センサは、前記変位検出部によって検出された前記カンチレバーの撓み変形に応じた変位に基づき、前記ギャップの大きさを制御するギャップ制御手段を備えてもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の圧力センサでは、前記ギャップ形成部材は、前記カンチレバーの先端部に対向する先端部を変位可能な可変部材と、電磁相互作用または伸縮によって前記可変部材の前記先端部を変位させるアクチュエータと、を備え、前記ギャップ制御手段は、前記アクチュエータの電磁相互作用または前記アクチュエータの伸縮を制御してもよい。
【0009】
(4)上記(2)に記載の圧力センサでは、前記ギャップ形成部材は、前記カンチレバーの先端部に向かい伸縮可能なアクチュエータを備え、前記ギャップ制御手段は、前記アクチュエータの伸縮を制御してもよい。
【0010】
(5)上記(2)〜(4)の何れか一項に記載の圧力センサでは、前記ギャップ制御手段は、電磁相互作用または伸縮によって前記ギャップ形成部材の先端部に対向する前記カンチレバーの先端部を変位させるレバーアクチュエータを備え、前記レバーアクチュエータの電磁相互作用または前記レバーアクチュエータの伸縮を制御してもよい。
【0011】
(6)上記(2)〜(5)の何れか一項に記載の圧力センサでは、前記ギャップ制御手段は、前記圧力差に応じた前記カンチレバーの撓み変形時に、前記圧力差または前記撓み変形が無い場合に比べて、前記カンチレバーの先端部および前記ギャップ形成部材の先端部の少なくとも何れかを相対的に近接するように変位させてもよい。
【0012】
(7)上記(2)〜(6)の何れか一項に記載の圧力センサでは、前記ギャップ制御手段は、前記圧力差に応じた前記カンチレバーの撓み変形時に前記ギャップの大きさが一定値となるように制御してもよい。
【0013】
(8)上記(2)〜(7)の何れか一項に記載の圧力センサでは、前記ギャップ制御手段は、前記圧力差または前記撓み変形が所定上限値よりも大きい場合に、前記ギャップの大きさを増大させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記(1)に記載の態様に係る圧力センサによれば、圧力変動の検出を精度良く行うことができるとともに、検出できる下限周波数を下げることができ、かつ低周波帯域の圧力変動を感度良く検出することができる。
また、複数の圧力センサのギャップに製造時などのばらつきが存在する場合であっても、ギャップの大きさを均一化することができるとともに、圧力センサが適用される状況などに応じてギャップの大きさを調整可能であり、圧力センサの特性を最適化することができる。
上記(2)に記載の態様に係る圧力センサによれば、圧力変動に起因するカンチレバーの撓み変形に応じた変位に基づき、ギャップの大きさを制御することによって、検出期間中において常に圧力センサの特性を最適化することができる。また、過大な圧力変動に起因して圧力センサが損傷することを防止することができる。
上記(3)に記載の態様に係る圧力センサによれば、圧電アクチュエータまたは電磁アクチュエータなどの各種のアクチュエータを用いることができ、構成の自由度を向上させることができる。
上記(4)に記載の態様に係る圧力センサによれば、圧力センサの構成が複雑化することを防止することができる。
上記(5)に記載の態様に係る圧力センサによれば、カンチレバーを変位させるレバーアクチュエータによって構成の自由度を向上させることができる。
上記(6)または(7)に記載の態様に係る圧力センサによれば、カンチレバーの撓み変形の有無にかかわらずにギャップの大きさを均一化することができる。
上記(8)に記載の態様に係る圧力センサによれば、過大な圧力変動に起因して圧力センサが損傷することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る圧力センサの構成を示す平面図である。
図2図1に示すA−A線に沿った断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る圧力センサの動作を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態および比較例に係る圧力センサのセンサ出力、キャビティの内圧、外圧と内圧との差圧および可動電極部の変位量の変化の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態および比較例に係る圧力センサのセンサ感度を示す図である。
図6】本発明の実施形態の第1変形例に係る圧力センサの構成を示す平面図である。
図7図6に示すA−A線に沿った断面図である。
図8】本発明の実施形態の第2変形例に係る圧力センサの構成を示す平面図である。
図9図8に示すA−A線に沿った断面図である。
図10】本発明の実施形態の第3変形例に係る圧力センサの構成を示す平面図である。
図11図10に示すA−A線に沿った断面図である。
図12】本発明の実施形態の第4変形例に係る圧力センサのギャップ制御部の主要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(圧力センサの構成)
以下、本発明の実施形態に係る圧力センサについて添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態の圧力センサ1は、所定の周波数帯域の圧力変動を検出するセンサであり、適宜の圧力伝達媒体(例えば、空気などの気体や液体など)が存在する空間などに配置さている。
図1および図2に示すように、圧力センサ1は、例えば、SOI基板2とセンサ本体3とを一体的に固定した形状からなり、SOI基板2に形成されたカンチレバー4と、カンチレバー4に接続されてカンチレバー4の変位を検出する変位検出部5と、SOI基板2に形成されたギャップ形成部材6と、ギャップ制御部7と、を備えている。
【0017】
SOI基板2は、シリコン支持層2a、シリコン酸化膜等の酸化層2bおよびシリコン活性層2cを熱的に張り合わせて形成されている。
センサ本体3は、例えば樹脂材で構成された中空の箱型の形状を有し、内部に形成されたキャビティ10と、キャビティ10と外部とを連通する連通開口11と、を備えている。センサ本体3は、キャビティ10として機能する凹部10aを備え、この凹部10aの開口をキャビティ10の内部と外部とを連通する連通開口11としている。
センサ本体3に一体的に固定されたSOI基板2は、センサ本体3の壁部3aと同様の環状に形成されたシリコン支持層2aおよび酸化層2bと、カンチレバー4を成すシリコン活性層2cとを備えている。環状に形成されたシリコン支持層2aおよび酸化層2bは、箱型のセンサ本体3の環状の壁部3aによって形成された連通開口11と同一形状の連通開口2Aを有し、センサ本体3の環状の壁部3aに環状のシリコン支持層2aおよび酸化層2bが積層されることによって、センサンサ本体3の連通開口11と、シリコン支持層2aおよび酸化層2bの連通開口2Aとは互いに臨んで連通している。
【0018】
カンチレバー4は、SOI基板2のシリコン活性層2cからなり、平板状のシリコン活性層2cからカンチレバー4と枠部12とを形成するようにギャップ13を切り出すことによって形成されている。カンチレバー4は、先端部4bを自由端とし、基端部4aを、シリコン支持層2aおよび酸化層2bを介してセンサ本体3の壁部3aに固定された固定端とし、片持ち梁構造を形成している。カンチレバー4は、環状のシリコン支持層2aおよび酸化層2bによって形成された連通開口2Aの大きさよりも小さく形成されているので、カンチレバー4の先端部4bと環状のシリコン支持層2aおよび酸化層2bとの間には間隙が設けられている。つまり、カンチレバー4を形成するようにしてシリコン活性層2cに設けられたギャップ13は、環状のシリコン支持層2aおよび酸化層2bによって形成された連通開口2Aの一部を成すように(あるいは、連通開口2Aに含まれるように)配置されている。ここで、SOI基板2全体として見た場合、SOI基板2は、センサ本体3の連通開口11を塞ぐようにしてセンサ本体3に積層され、一体的に固定されている。このSOI基板2のうち、センサ本体3の壁部3aと同様の環状に形成されたシリコン支持層2aおよび酸化層2bは、センサ本体3の壁部3aに連続して、この壁部3aを延長するように設けられている。そして、カンチレバー4を成すシリコン活性層2cは、センサ本体3の連通開口11に連続するシリコン支持層2aおよび酸化層2bの連通開口2Aを塞ぐように配置されているので、カンチレバー4を形成するようにしてシリコン活性層2cに設けられたギャップ13は、センサ本体3の連通開口11の一部を成すように(あるいは、連通開口11に含まれるように)配置されている。
カンチレバー4は、基端部4aを固定端とし、先端部4bを自由端とした片持ち梁構造によって、基端部4aを中心としてキャビティ10の内部と外部との圧力差(つまりギャップ13を介してキャビティ10の内部と外部との間を流通可能な圧力伝達媒体による圧力の差)に応じて撓み変形可能とされている。
カンチレバー4の基端部4aには、該カンチレバー4が撓み変形し易くなるようにして、貫通孔15が形成されている。
【0019】
変位検出部5は、カンチレバー4の基端部4aの表面上に設けられたピエゾ抵抗20と、ピエゾ抵抗20に接続された配線部21と、カンチレバー4の変位を検出する検出回路22と、を備えている。
ピエゾ抵抗20は、カンチレバー4の撓み量(変位量)に応じて電気抵抗値が変化する抵抗素子であり、図1におけるカンチレバー4の短手方向において、貫通孔15を挟んだ両側に対となって配置されている。これら一対のピエゾ抵抗20は、導電性材料からなる配線部21を介して相互に電気的に接続されている。検出回路22は一対のピエゾ抵抗20に接続され、ピエゾ抵抗20の電気抵抗値変化に基づいてカンチレバー4の変位を検出する。
【0020】
この変位検出部5において、検出回路22を通じてピエゾ抵抗20に所定電圧が印加されると、この電圧印加に起因する電流は、貫通孔15を回り込むようにして、一方のピエゾ抵抗20から配線部21を経由して他方のピエゾ抵抗20に流れる。これによって、検出回路22は、カンチレバー4の変位(撓み変形)に応じて変化するピエゾ抵抗20の電気抵抗値変化を電気的な出力信号として取り出すことが可能である。変位検出部5は、この出力信号(センサ出力)に基づいて、カンチレバー4の変位を測定可能であり、キャビティ10の内部と外部との間に発生した圧力差を検出する。
【0021】
なお、ピエゾ抵抗20は、例えばリンなどのドープ剤(不純物)がイオン注入法や拡散法などの各種の方法によりドーピングされることで形成される。また、双方のピエゾ抵抗20は配線部21のみで電気的に導通するように形成されている。これによって、カンチレバー4周囲のシリコン活性層2cは、配線部21以外でピエゾ抵抗20双方が導通しないよう、エッチングされている。
また、ピエゾ抵抗20は、圧電薄膜であってもよい。この場合、カンチレバー4の基端部4aに加わる応力に応じて、起電力が発生する。検出回路22は、この起電力を検出することで、カンチレバー4の変位を検出する。
【0022】
ギャップ形成部材6は、例えば静電アクチュエータであって、2つの櫛歯型の第1および第2固定電極部31,32と、平板状の第3固定電極部33と、可動電極部34と、可動電極部34に弾性力を作用させる板ばね部35と、板ばね部35を支持する固定部36と、を備えている。
可動電極部34は、2つの櫛歯型の第1および第2固定電極部31,32に噛み合うように配置される櫛歯型の2つの第1および第2電極部34a,34bを備え、センサ本体3に固定された第3固定電極部33に積層されるようにして配置されている。可動電極部34は、先端部34cとカンチレバー4の先端部4bとの間に連通開口11の一部を構成するギャップ13を形成している。
【0023】
板ばね部35は、可動電極部34と固定部36とに接続され、可動電極部34を所定の基準位置に維持するようにして可動電極部34に弾性力を作用させる。所定の基準位置は、例えば、可動電極部34の先端部34cを、所定距離を置いてカンチレバー4の先端部4bに対向配置させるとともに、可動電極部34を、積層方向に所定距離を置いて第3固定電極部33に対向配置させる位置である。なお、可動電極部34と板ばね部35と固定部36とは電気的にも接続されている。
【0024】
可動電極部34は、板ばね部35の弾性力に抗うように作用する第1固定電極部31と第1電極部34aとの間の静電力によって、カンチレバー4の先端部4bに対向配置された先端部34cをカンチレバー4の先端部4bに向かい近接させるように変位可能である。また、可動電極部34は、板ばね部35の弾性力に抗うように作用する第2固定電極部32と第2電極部34bとの間の静電力によって、先端部34cをカンチレバー4の先端部4bから離間させるように変位可能である。また、可動電極部34は、板ばね部35の弾性力に抗うように作用する可動電極部34と第3固定電極部33との間の静電力によって、第3固定電極部33に向かい近接および接触するように変位可能である。
【0025】
ギャップ制御部7は、所定値記憶部41と、比較回路42と、信号処理回路43と、駆動回路44と、駆動回路44から出力される信号(駆動出力)に応じて通電が制御される第1〜第3電圧可変直流電源45a,45b,45cと、を備えている。
【0026】
所定値記憶部41は、カンチレバー4の変位に対する目標値とされる所定値を記憶している。所定値記憶部41に記憶されている所定値は、例えばキャビティ10の内部と外部との間の圧力差がゼロ(またはゼロを含む所定値以下)である場合または圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形が無い場合(または撓み変形が所定程度以下である場合)に、検出回路22から出力されるカンチレバー4の変位の検出値などである。
【0027】
なお、カンチレバー4の撓み変形による変位の大きさは、可動電極部34の先端部34cとカンチレバー4の先端部4bとの間に設けられるギャップ13の大きさに関連しており、カンチレバー4の撓み変形による変位が増大することに伴い、ギャップ13は増大傾向に変化する。これによって、所定値記憶部41に記憶されている所定値は、例えばキャビティ10の内部と外部との間の圧力差がゼロ(またはゼロを含む所定値以下)である場合または圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形が無い場合(または撓み変形が所定程度以下である場合)における、ギャップ13の大きさ(つまり、ギャップ13の大きさの目標値)に対応した値である。
なお、所定値記憶部41に記憶されている所定値は、圧力センサ1の状態などに応じて適宜に変更されてもよい。
【0028】
比較回路42は、検出回路22から出力された検出出力、つまり検出回路22によって検出されたカンチレバー4の変位の検出値と、所定値記憶部41に記憶されている所定値とを比較し、比較結果(例えば、検出値と所定値との差など)を出力する。
【0029】
信号処理回路43は、比較回路42から出力された比較結果に基づき、検出回路22によって検出されたカンチレバー4の変位の検出値に応じたギャップ13の大きさを、所定値記憶部41に記憶されている所定値に応じたギャップ13の大きさに追従させるようにして、フィードバック制御などを行なう。そして、この検出値に応じたギャップ13の大きさを、所定値に応じたギャップ13の大きさに追従させるために必要とされる指令値(例えば、可動電極部34の先端部34cとカンチレバー4の先端部4bとの間に設けられたギャップ13の大きさに対する指令値など)を出力する。つまり、この指令値は、キャビティ10の内部と外部との間の圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形にかかわらずにギャップ13の大きさおよびギャップ13を流通する圧力伝達媒体の流量を一定にすることを指示する。
【0030】
なお、信号処理回路43は、指令値が所定の上限値を超えた場合、または指令値に応じて後述する駆動回路44から第1〜第3電圧可変直流電源45a,45b,45cに出力される駆動出力の値が所定上限値を超える場合には、ギャップ形成部材6に対する制御状態を所定の初期状態に戻すことを指示するリセット信号を出力する。これによって、ギャップ13の大きさを増大させる。
また、信号処理回路43は、検出回路22から出力された検出出力、つまり検出回路22によって検出されたカンチレバー4の変位の検出値が、所定の下限閾値を超えた場合、または所定の許容範囲内の値となった場合、または所定条件を満たした場合などにおいて、ギャップ形成部材6による制御動作を許可し、この制御動作を開始する。
【0031】
駆動回路44は、信号処理回路43から出力された指令値に応じてギャップ形成部材6を作動させるための信号(駆動出力)を出力する。より詳細には、第1〜第3電圧可変直流電源45a,45b,45cからギャップ形成部材6への通電を指示する信号によって、可動電極部34の変位を制御する。
【0032】
第1電圧可変直流電源45aは、第1固定電極部31と可動電極部34とに接続されている。第1電圧可変直流電源45aは、第1固定電極部31と可動電極部34との間に所定電圧を印加することによって、第1固定電極部31と可動電極部34の第1電極部34aとの間に静電引力を発生させ、可動電極部34の先端部34cがカンチレバー4の先端部4bに向かい近接するように可動電極部34を変位させる。
第2電圧可変直流電源45bは、第2固定電極部32と可動電極部34とに接続されている。第2電圧可変直流電源45bは、第2固定電極部32と可動電極部34との間に所定電圧を印加することによって、第2固定電極部32と可動電極部34の第2電極部34bとの間に静電引力を発生させ、可動電極部34の先端部34cがカンチレバー4の先端部4bから離間するように可動電極部34を変位させる。
第3電圧可変直流電源45cは、可動電極部34と第3固定電極部33とに接続されている。第3電圧可変直流電源45cは、可動電極部34と第3固定電極部33との間に静電引力を発生させ、可動電極部34が第3固定電極部33に向かい近接および接触するように可動電極部34を変位させる。
【0033】
これらによって、駆動回路44は、可動電極部34の先端部34cとカンチレバー4の先端部4bとの間に設けられたギャップ13の大きさを制御し、検出回路22から出力されるカンチレバー4の変位の検出値に応じたギャップ13の大きさを、所定値記憶部41に記憶されている所定値に応じたギャップ13の大きさに追従させる。
さらに、駆動回路44は、可動電極部34を第3固定電極部33に接触させることによって、カンチレバー4に対する可動電極部34の相対位置を固定する。
【0034】
例えば、駆動回路44は、キャビティ10の内部と外部との間の圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形時に、圧力差または撓み変形が無い場合に比べて、カンチレバー4の先端部4bおよび可動電極部34の先端部34cの少なくとも何れかを相対的に近接するように変位させる。駆動回路44は、図3(A),(B)に示すように、第1電圧可変直流電源45aによって第1固定電極部31と可動電極部34との間に所定電圧を印加することによって、可動電極部34の先端部34cをカンチレバー4の先端部4bに向かい近接させる。
また、可動電極部34と第3固定電極部33とを接触させて、カンチレバー4に対する可動電極部34の相対位置を固定する場合には、駆動回路44は、図3(C)に示すように、第3電圧可変直流電源45cによって第3固定電極部33と可動電極部34との間に所定電圧を印加する。
【0035】
(圧力センサの動作)
まず、上述した圧力センサ1を用いて、微小な圧力変動を検出する場合について、図4を用いて説明する。なお、図4においては、上述した本実施形態と、本実施形態の圧力センサ1からギャップ形成部材6およびギャップ制御部7が省略された比較例とに対して、センサ出力、キャビティ10の内圧、外圧と内圧との差圧および可動電極部34の変位量の変化を示した。
【0036】
先ず、図4に示す時刻t1以前の期間のように、キャビティ10の外部の圧力(以下、外圧)と、キャビティ10の内部の圧力(以下、内圧)との圧力差がゼロである場合には、カンチレバー4は圧力差によって撓み変形せず、検出回路22から出力されるカンチレバー4の変位の検出値は所定値である。
そして、時刻t1以降の期間のように、外圧が上昇すると、キャビティ10の外部と内部との間に圧力差が生じるので、カンチレバー4はキャビティ10内部に向けて撓み変形する。これに伴い、カンチレバー4の撓み変形に応じてピエゾ抵抗20に歪みが生じ、電気抵抗値が変化するので、圧力センサ1のセンサ出力が増大する。
【0037】
ここで、本実施形態の圧力センサ1では、カンチレバー4の撓み変形にかかわらずにギャップ13の大きさが一定値になるように、可動電極部34の先端部34cがカンチレバー4の先端部4bに向かい近接するようにして可動電極部34が変位させられる。すると、キャビティ10の外部と内部との間の圧力差に応じてギャップ13を介してキャビティ10の外部から内部へと流動する圧力伝達媒体の流動量の増大が抑制される。
これに対して、ギャップ形成部材6およびギャップ制御部7が省略された比較例では、カンチレバー4の撓み変形の増大に伴ってギャップ13の開き(つまり、カンチレバー4の先端部4bと枠部12との間の間隔)が大きくなり、圧力差に応じてキャビティ10の外部から内部へと流動する圧力伝達媒体の流動量は本実施形態よりも増大する。
これによって、キャビティ10の外部から内部へと流動する圧力伝達媒体の流動量の増大が抑制される本実施形態の圧力センサ1に比べて、より流動量が増大する比較例では、外圧の上昇がカンチレバー4の変位に適正に反映されずに内圧が上昇して、センサ出力がより小さくなる。
【0038】
さらに、本実施形態および比較例において、外圧の上昇終了後には、ギャップ13を介してキャビティ10の外部から内部へと圧力伝達媒体が流動することに伴い、内圧は時間の経過とともに、外圧よりも遅れながら、かつ外圧の変動よりも緩やかな応答で上昇する。その結果、内圧が外圧に徐々に近づくので、キャビティ10の外部と内部との圧力が均衡状態になり始め、カンチレバー4の撓みが徐々に小さくなり、センサ出力が徐々に低下する。そして、内圧が外圧に等しくなると、圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形が解消されて元の状態に復帰し、圧力センサ1のセンサ出力が再びゼロになる。
【0039】
ここで、ギャップ13の開きの増大が抑制されることによって、キャビティ10の外部から内部への圧力伝達媒体の流動量の増大が抑制される本実施形態の圧力センサ1では、カンチレバー4の撓み変形は緩やかに解消される。これによって、元の状態に戻るまで(つまり圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形が無くなるまで)の緩和時間が長く確保され、圧力変動が長時間に亘って維持される。
これに対して、ギャップ形成部材6およびギャップ制御部7が省略された比較例では、カンチレバー4の撓み変形は急速に解消され、元の状態に戻るまで(つまり圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形が無くなるまで)の緩和時間がより短くなる。
【0040】
このように、本実施形態の圧力センサ1では、図5に示すように、ギャップ形成部材6およびギャップ制御部7が省略された比較例に比べて、より低い、例えば0.1以上かつ1Hz以下の周波数帯域の圧力変動であっても感度良く検出することができる。さらに、検出できる下限周波数(例えば、所望のセンサ感度Aに対する下限周波数Fc)を比較例の下限周波数(例えば、所望のセンサ感度Aに対する下限周波数Fc0>Fc)よりも下げることができる。
そして、カンチレバー4の変位に基づいたセンサ出力(出力信号)の変動をモニタすることで、キャビティ10の外部の圧力変動を検出することができる。
特に、SOI基板2のシリコン活性層2cを用いて半導体プロセス技術によりカンチレバー4およびギャップ形成部材6を形成できるので、従来の圧電素子に比べて薄型化(例えば、数十〜数百nm)し易い。したがって、微小な圧力変動の検出を精度よく行うことができる。
【0041】
上述したように本実施形態の圧力センサ1によれば、外圧の圧力変動に対してギャップ13の大きさの増大を抑制することができ、圧力変動の検出を精度良く行うことができるとともに、検出できる下限周波数を下げることができ、かつ低周波帯域の圧力変動を感度良く検出することができる。さらに、ダイナミックレンジを増大させることができるとともに、カンチレバー4の変位とキャビティ10の外部の圧力変動の検出値との対応関係の線形性を向上させることができる。
さらに、複数の圧力センサ1のギャップ13の大きさに製造時などのばらつきが存在する場合であっても、ギャップ13の大きさを均一化することができるとともに、圧力センサ1が適用される状況などに応じてギャップ13の大きさを調整可能であり、圧力センサ1の特性を最適化することができる。
また、信号処理回路43から出力される指令値が所定の上限値を超えた場合などにおいて、リセット信号を出力して、ギャップ13の大きさを増大させることによって、過大な圧力変動に起因して圧力センサ1が損傷することを防止することができる。
【0042】
なお、上述した実施形態において、信号処理回路43はフィードバック制御を行なうとしたが、これに限定されず、単に、キャビティ10の内部と外部との間の圧力差に応じたカンチレバー4の撓み変形時あるいは圧力センサ1の作動時に、圧力差または撓み変形が無い場合あるいは圧力センサ1の作動停止時に比べて、カンチレバー4の先端部4bおよび可動電極部34の先端部34cの少なくとも何れかを相対的に所定距離だけ近接するように変位させてもよい。
なお、上述した実施形態において、ギャップ形成部材6を静電アクチュエータとしたが、これに限定されず、電磁アクチュエータなどの他のアクチュエータであってもよい。
なお、上述した実施形態において、信号処理回路43がリセット信号を出力する機能は省略されてもよい。
また、上述した実施形態において、第3電圧可変直流電源45cおよび第3固定電極部33と、駆動回路44が可動電極部34を第3固定電極部33に向かい近接および接触させる機能と、は省略されてもよい。
なお、上述した実施形態において、可動電極部34の変位に応じて変形または変位する膜状部材やベローズ型の伸縮管などを備え、可動電極部34の変位に応じて膜状部材またはベローズ型の伸縮管の端部をカンチレバー4の先端部4bに対して近接または離間させてもよい。
【0043】
(第1変形例)
なお、上述した実施形態においては、ギャップ形成部材6を静電アクチュエータとしたが、これに限定されず、例えば図6および図7に示す第1変形例のように、ギャップ形成部材6を枠部12とし、ギャップ制御部7がカンチレバー4の基端部4aに一体に接続された静電アクチュエータを備えてもよい。
この第1変形例のギャップ制御部7は、上述した実施形態での所定値記憶部41と、比較回路42と、信号処理回路43と、駆動回路44と、第1〜第3電圧可変直流電源45a,45b,45cと、に加えて、静電アクチュエータとして、2つの櫛歯型の第1および第2固定電極部31,32と、平板状の第3固定電極部33と、可動電極部34と、可動電極部34に弾性力を作用させる板ばね部35と、板ばね部35を支持する固定部36と、を備えている。
この第1変形例の可動電極部34はカンチレバー4に一体に接続されており、可動電極部34の先端部34cは対向するカンチレバー4の基端部4aに接続されている。第1変形例のギャップ13は、カンチレバー4の先端部4bと枠部12の内周端部12aとの間に形成されている。
【0044】
これらによって、可動電極部34は、板ばね部35の弾性力に抗うように作用する第1固定電極部31と第1電極部34aとの間の静電力によって、枠部12の内周端部12aに対向配置されたカンチレバー4の先端部4bを枠部12の内周端部12aに向かい近接させるように変位可能である。また、可動電極部34は、板ばね部35の弾性力に抗うように作用する第2固定電極部32と第2電極部34bとの間の静電力によって、カンチレバー4の先端部4bを枠部12の内周端部12aから離間させるように変位可能である。また、可動電極部34は、板ばね部35の弾性力に抗うように作用する可動電極部34と第3固定電極部33との間の静電力によって、第3固定電極部33に向かい近接および接触するように変位可能である。
【0045】
(第2変形例)
なお、上述した実施形態および第1変形例においては、ギャップ形成部材6またはギャップ制御部7は静電アクチュエータを備えるとしたが、これに限定されず、静電アクチュエータの代わりに圧電アクチュエータを備えてもよい。
【0046】
例えば図8および図9に示す上述した実施形態の第2変形例の圧力センサ1は、ギャップ形成部材6として板状の圧電アクチュエータ51を備えている。圧電アクチュエータ51は、基端部51aがSOI基板2のシリコン活性層2cに固定され、先端部51bがカンチレバー4の先端部4bに対向するように設けられている。圧電アクチュエータ51は、例えばピエゾアクチュエータなどであって、駆動回路44から出力された信号に応じて、圧電アクチュエータ51の先端部51bに向かい伸縮可能である。これによって、駆動回路44は、圧電アクチュエータ51の先端部51bとカンチレバー4の先端部4bとの間に設けられたギャップ13の大きさを制御し、検出回路22から出力されるカンチレバー4の変位の検出値に応じたギャップ13の大きさを、所定値記憶部41に記憶されている所定値に応じたギャップ13の大きさに追従させる。
この第2変形例によれば、圧力センサ1の構成が複雑化することを防止することができる。
【0047】
(第3変形例)
なお、上述した実施形態および第1変形例においては、ギャップ形成部材6またはギャップ制御部7は静電アクチュエータを備えるとしたが、これに限定されず、静電アクチュエータの代わりに、各種のアクチュエータによって可変部材を変形または変位させるアクチュエータ部52を備えてもよい。
【0048】
例えば図10および図11に示す上述した実施形態の第3変形例の圧力センサ1は、ギャップ形成部材6としてアクチュエータ部52を備えている。このアクチュエータ部52は、変形または変位によって、カンチレバー4の先端部4bに対向する先端部53aをカンチレバー4の先端部4bに近接または離間させる可変部材53と、伸縮変形によって可変部材53を変形または変位させるアクチュエータ54と、を備えている。
この可変部材53の先端部53aは、例えば膜状部材によって形成され、カンチレバー4の先端部4bに近接または離間するように撓み変形可能である。
【0049】
アクチュエータ54は、例えば圧電アクチュエータまたは電磁アクチュエータなどであって、SOI基板2に固定された中空箱型の固定部材55の内部に支持されるとともに、固定部材55の開口部を覆うように設けられた膜状部材から成る可変部材53の先端部53aに接続されている。アクチュエータ54は、駆動回路44から出力された信号に応じて伸縮変形することによって、可変部材53の先端部53aをカンチレバー4の先端部4bに近接または離間させるように撓み変形させる。これによって、駆動回路44は、可変部材53の先端部53aとカンチレバー4の先端部4bとの間に設けられたギャップ13の大きさを制御する。そして、検出回路22から出力されるカンチレバー4の変位の検出値に応じたギャップ13の大きさを、所定値記憶部41に記憶されている所定値に応じたギャップ13の大きさに追従させる。
【0050】
この第3変形例によれば、アクチュエータ54として圧電アクチュエータまたは電磁アクチュエータなどの各種のアクチュエータを用いることができ、構成の自由度を向上させることができる。
なお、この第3変形例において、可変部材53は、膜状部材の代わりに、内部に配置されたアクチュエータ54によって伸縮変形するベローズ型の伸縮管(図示略)を備え、この伸縮管の伸縮変形によって、カンチレバー4の先端部4bに対向する伸縮管の先端部をカンチレバー4の先端部4bに近接または離間させてもよい。
【0051】
(第4変形例)
なお、上述した実施形態においては、例えば図12に示す第4変形例のように、所定値記憶部41の代わりに、ローパスフィルタ61を備えてもよい。
この第4変形例のローパスフィルタ61は、検出回路22から出力されるカンチレバー4の変位の検出値に対して、所定の低域通過処理を行ない、処理後の検出値を比較回路42に出力する。比較回路42は、検出回路22から出力された検出出力、つまり検出回路22によって検出されたカンチレバー4の変位の検出値と、ローパスフィルタ61から出力された処理後の検出値とを比較し、比較結果(例えば、差など)を出力する。
この第4変形例によれば、圧力センサ1の出力が不安定な場合などであっても、フィードバック制御を適正に行なうことができる。
【符号の説明】
【0052】
1…圧力センサ 3…センサ本体 4…カンチレバー 4a…基端部 4b…先端部
5…変位検出部 6…ギャップ形成部材 7…ギャップ制御部(ギャップ制御手段、レバーアクチュエータ) 10…キャビティ 11…連通開口 12…枠部(ギャップ形成部材) 34…可動電極部(可変部材) 31,32…第1および第2固定電極部(アクチュエータ) 34a,34b…第1および第2電極部(アクチュエータ) 51…圧電アクチュエータ(アクチュエータ) 53…可変部材 53a…先端部 54…アクチュエータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12