(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041312
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】制御装置及びその制御方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/08 20090101AFI20161128BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20161128BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20161128BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20161128BHJP
【FI】
H04W72/08 110
H04W88/04
H04W64/00 173
H04W16/14
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-159668(P2013-159668)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-32903(P2015-32903A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年1月27日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)平成25年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】樫木 勘四郎
(72)【発明者】
【氏名】定 知生
【審査官】
田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−090149(JP,A)
【文献】
特開2011−142596(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0003591(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0252051(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0192686(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置であって、
地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段と、
前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第1の移動通信装置が含まれるかを判定する判定手段と、
前記第1の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第1の移動通信装置が前記第1の周波数帯域において前記第2の移動通信装置へ信号を送信すると共に、前記第2の移動通信装置が、前記第1の移動通信装置から受信した信号を、前記第2の周波数帯域において、前記基地局へ転送することを示す指示を、前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置とへ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置であって、
地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段と、
前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第2の移動通信装置が含まれるかを判定する判定手段と、
前記第2の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第2の移動通信装置が、前記基地局から前記第2の周波数帯域において受信した信号を、前記第1の周波数帯域において前記第1の移動通信装置へ転送することを示す指示を前記第2の移動通信装置へ通知する通知手段と、
を有することを特徴とする制御装置。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記第1の周波数帯域において信号を送信した場合に、当該第1の周波数帯域を用いて通信を行う他の通信装置に干渉を及ぼさない領域である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1の周波数帯域において前記第1の移動通信装置と通信できると共に前記第2の周波数帯域において前記基地局と通信できる移動通信装置の中から、前記第2の移動通信装置を選択する選択手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1の移動通信装置は、さらに、前記第2の周波数帯域で通信する機能を有し、
前記第1の移動通信装置が前記基地局との通信ができる第2の領域に存在するかを特定する特定手段をさらに有し、
前記通知手段は、前記第1の移動通信装置が前記第2の領域に存在しない場合にのみ、前記指示を通知する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段を有すると共に、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置の制御方法であって、
判定手段が、前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第1の移動通信装置が含まれるかを判定する判定工程と、
通知手段が、前記第1の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第1の移動通信装置が前記第1の周波数帯域において前記第2の移動通信装置へ信号を送信すると共に、前記第2の移動通信装置が、前記第1の移動通信装置から受信した信号を、前記第2の周波数帯域において、前記基地局へ転送することを示す指示を、前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置とへ通知する通知工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段を有すると共に、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置の制御方法であって、
判定手段が、前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第2の移動通信装置が含まれるかを判定する判定工程と、
通知手段が、前記第2の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第2の移動通信装置が、前記基地局から前記第2の周波数帯域において受信した信号を、前記第1の周波数帯域において前記第1の移動通信装置へ転送することを示す指示を前記第2の移動通信装置へ通知する通知工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段を有すると共に、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置が有するコンピュータに、
前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第1の移動通信装置が含まれるかを判定する判定工程と、
前記第1の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第1の移動通信装置が前記第1の周波数帯域において前記第2の移動通信装置へ信号を送信すると共に、前記第2の移動通信装置が、前記第1の移動通信装置から受信した信号を、前記第2の周波数帯域において、前記基地局へ転送することを示す指示を、前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置とへ通知する通知工程と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段を有すると共に、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置が有するコンピュータに、
判定手段が、前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第2の移動通信装置が含まれるかを判定する判定工程と、
通知手段が、前記第2の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第2の移動通信装置が、前記基地局から前記第2の周波数帯域において受信した信号を、前記第1の周波数帯域において前記第1の移動通信装置へ転送することを示す指示を前記第2の移動通信装置へ通知する通知工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信における周波数利用効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信においては、通常、所定の周波数帯域を用いて基地局と移動体端末との間で無線信号を送受信することにより通信を行う。したがって、基地局が送信した電波を移動体端末が受信でき、かつ、移動体端末が送信した電波を基地局が受信できる場合に、通信が可能となる。ここで、電波は伝搬距離や遮蔽物によって減衰し、基地局や移動体端末の信号の送信電力には物理的又は法的な限界があることを考慮すれば、放射された信号を正常に受信できない程度の電力レベルまで、受信信号電力が落ち込む地理的領域が存在しうる。同様に、放射した電力が相手方装置において正常に受信されない地理的領域が存在しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−142596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の比較的中心周波数が低い周波数帯域を用いた移動体通信においては、このような地理的領域が可能な限り狭くなるように、多くの基地局を設置している。しかしながら、高速な通信の要求が高まっている昨今では、中心周波数が比較的高い周波数帯域を使用することが必要となり、その電波の減衰特性及び直進性から、カバレッジエリアが狭くなることが考えられる(特許文献1参照)。この結果、このような周波数帯域では、面的なカバレッジが困難な領域が発生し、システム全体として十分に高い周波数利用効率を得られないという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、中心周波数が高い周波数帯域におけるカバレッジエリアを実質的に拡大し、周波数利用効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による制御装置は、第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置であって、地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段と、前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第1の移動通信装置が含まれるかを判定する判定手段と、前記第1の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第1の移動通信装置が前記第1の周波数帯域において前記第2の移動通信装置へ信号を送信すると共に、前記第2の移動通信装置が、前記第1の移動通信装置から受信した信号を、前記第2の周波数帯域において、前記基地局へ転送することを示す指示を、前記第1の移動通信装置と前記第2の移動通信装置とへ通知する通知手段と、を有する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明による別の制御装置は、第1の周波数帯域を用いて通信を行う第1の移動通信装置と、前記第1の周波数帯域と第2の周波数帯域の少なくともいずれかを用いて通信を行う第2の移動通信装置と、前記第2の周波数帯域を用いて通信を行う基地局と、を含む無線通信システムにおいて、前記第1の移動通信装置、前記第2の移動通信装置、及び前記基地局の通信を制御する制御装置であって、地理的に分散して配置され、第1の周波数帯域において、信号の受信電力の検出または信号の特徴検出に基づいて当該信号を検出する、複数の検出手段と、前記複数の検出手段のうち、信号を検出しなかった検出手段の地理的な位置に応じて定まる、前記第1の周波数帯域を用いた信号の送信が許可される第1の領域に、前記第2の移動通信装置が含まれるかを判定する判定手段と、前記第2の移動通信装置の位置が前記第1の領域に含まれる場合に、前記第2の移動通信装置が、前記基地局から前記第2の周波数帯域において受信した信号を、前記第1の周波数帯域において前記第1の移動通信装置へ転送することを示す指示を前記第2の移動通信装置へ通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線通信における周波数利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】制御装置が実行する下りリンクの通信制御を示すフローチャート。
【
図6】制御装置が実行する上りリンクの通信制御を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。
図1では、基地局151は、第1の周波数帯域を用いて、移動通信装置(以下、端末と呼ぶ)152に信号を送信し、又はその端末152から信号を受信する。同様に、基地局101は、第2の周波数帯域を用いて、端末102へ信号を送信し、又はその端末から信号を受信する。ここで、第1の周波数帯域は例えば3.5GHz帯の周波数帯域であり、第2の周波数帯域は例えば2GHz帯の周波数帯域であるとする。
【0012】
ここで、第1の周波数帯域を用いる基地局を複数展開して得られるカバレッジエリアと、第2の周波数帯域を用いる基地局を複数展開して得られるカバレッジエリアとは、それぞれ独立しており、一般に一致しない。すなわち、例えば、第2の周波数帯域で通信できるが、第1の周波数帯域では通信できない領域が存在する。このとき、第1の周波数帯域のカバレッジエリアは、第2の周波数帯域のカバレッジエリアと比べて、電波の減衰が大きいこと、また電波の直進性が高いことにより、通信圏外となる領域が生じやすい。ここで、通信圏外となる領域とは、例えば、基地局からの信号を所定値以上の電力で受信できない、又は端末が送出した信号を基地局が所定値以上の電力で受信できない領域のことである。
【0013】
一方で、例えば基地局からの電波が届かない領域においては、端末が電波を送信しても基地局までは届かない、すなわちその端末の送信信号が基地局に干渉しないものと考えられる。同様に、他の端末からの電波が届かない領域においては、当該他の端末へは干渉しないものと考えられる。このような領域では、電波が届かない周波数帯域及び時間のリソースが利用されていない(すなわち、「空いている」)と考えることができる。したがって、そのような領域に存在する端末は、基地局との通信で使用する周波数帯域と時間のリソースの少なくともいずれかを用いて、別の端末との間で直接信号を送受信することができると考えられる。
【0014】
そこで、本実施形態の無線通信システムでは、端末102が、第1の周波数帯域の基地局151及び端末152に干渉を与えない場合に、第1の周波数帯域の信号送信を許可する。そして、端末102が第2の周波数帯域で基地局101から受信した信号を、第1の周波数帯域を用いて他の端末103へ転送するようにする。同様に、端末103が、第1の周波数帯域の基地局151及び端末152に干渉を与えない場合に、端末102に向けて第1の周波数帯域を用いて信号を送信することを許可する。この場合、端末102は、第1の周波数帯域で信号を受信すると、その信号を、第2の周波数帯域で基地局101へ転送する。
【0015】
ここで、これらの通信は、制御装置110によって制御される。制御装置110は、地理的に分散して配置された複数の信号検出器111と、例えば不図示の有線回線又は無線回線によって接続される。複数の信号検出器111は、例えば、それぞれが、所定値以上の受信電力の第1の周波数帯域の信号を検出し、その検出結果を制御装置110に通知する。制御装置110は、所定値以上の受信電力の第1の周波数帯域の信号を検出しなかった信号検出器111の地理的な位置に基づいて、第1の周波数帯域での信号の送信が許可される送信許可領域を特定する。なお、複数の信号検出器111は、第1の周波数帯域の信号の例えば同期用信号や参照信号等の特徴に基づく特徴検出の結果、第1の周波数帯域に信号が存在するか否かの検出結果を制御装置110へ通知してもよい。この場合、制御装置110は、この検出結果に応じて、第1の周波数帯域で特徴検出により信号を検出しなかった信号検出器111の地理的な位置に基づいて、第1の周波数帯域での信号の送信が許可される送信許可領域を特定してもよい。送信許可領域の特定についての詳細は後述する。
【0016】
制御装置110は、例えば、端末102が送信許可領域に存在する場合、第1の周波数帯域を用いた端末103への信号の転送の指示を端末102に通知する。また、制御装置110は、例えば、端末103が送信許可領域に存在する場合、第1の周波数帯域を用いた端末102への信号送信の指示を端末103へ、第1の周波数帯域で受信した信号の基地局101への転送指示を端末102へ、それぞれ通知する。
【0017】
以上のような動作により、例えば、端末103は、実際には第1の周波数帯域のカバレッジエリア150内に存在しないにもかかわらず、第1の周波数帯域を用いた通信を行うことができる。この結果、第1の周波数帯域のカバレッジエリアが実質的に拡大し、システム全体としての周波数利用効率を向上させることが可能となる。
【0018】
以下では、本実施形態に係る制御装置110の構成及び処理について、詳細に説明する。
【0019】
(制御装置の構成)
図2に制御装置110のハードウェア構成例を示す。制御装置110は、
図2に示すように、例えば、CPU201、ROM202、RAM203、外部記憶装置204、及び通信装置205を有する。制御装置110では、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録された、以下に示す制御装置110の各機能を実現するプログラムをCPU201により実行する。そして、制御装置110は、通信装置205を用いて、信号検出器111からの検出結果の情報収集を行い、又は通信制御を行うための、端末等への指示の通知を行う。なお、
図2では、制御装置110は、1つの通信装置205を有するとしているが、例えば情報収集用の通信装置及び指示通知用の通信装置など、複数の通信装置を有してもよい。
【0020】
なお、制御装置110は、以下に説明する各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、以下の全機能をコンピュータとプログラムにより実行させてもよい。
【0021】
図3は、制御装置110の機能構成を示すブロック図である。制御装置110は、機能として、信号検出情報取得部301、送信許可領域判定部302、端末位置情報取得部303、中継判定部304、及び指示通知部305を有する。なお、制御装置110は、中継装置選択部306を有してもよい。
【0022】
信号検出情報取得部301は、信号検出器111から、所定値以上の受信電力の信号を検出したかの検出結果の情報を取得する。なお、信号検出器111は、信号に含まれる、例えば同期信号または参照信号などの特徴部分を検出して信号の有無または強度を推定する検出方式の検出結果を、信号検出情報取得部301に受け渡してもよい。このとき、信号検出器111は、第1の周波数帯域の信号のみならず、第2の周波数帯域の信号をも検出してもよい。また、信号検出器111は、受信した信号が、基地局と端末との通信に係るものであるか、端末間通信に係るものであるかを判定する機能を有していてもよい。この場合、信号検出器111は、端末間通信に係る信号が検出されたとしても、基地局と端末との通信に係る信号が検出されなければ、信号を未検出であると判定してもよい。
【0023】
また、信号検出器111をアンテナによって構成し、信号検出情報取得部301は信号検出器111から受信信号そのものを受け取り、その受信信号に基づいて、信号検出情報取得部301が所定値以上の受信電力の信号が検出されるかを判定してもよい。同様に、信号検出情報取得部301は、信号検出部から受け取った受信信号に基づいて、信号の特徴検出を行い、信号が検出されるかを判定してもよい。
【0024】
送信許可領域判定部302は、信号検出情報取得部301が取得した信号検出結果に基づいて、信号を送信したとしても、他の装置へ干渉を及ぼさない送信許可領域を判定する。判定方法の詳細については後述する。判定結果は、中継判定部304へ入力される。
【0025】
端末位置情報取得部303は、通信の対象となる端末の位置の情報を取得する。例えば、端末位置情報取得部303は、
図1において、端末102、端末103及び端末152の少なくともいずれかの位置情報を取得する。なお、端末位置情報取得部303は、例えば、ある端末との通信を行う場合には、その端末との通信に関連する端末の位置情報のみを取得してもよい。すなわち、例えば、端末103との通信においては、基地局101と端末103との間の通信には端末102が関連することとなるため、端末102及び端末103の位置情報のみが取得されてもよい。また、例えば、中継装置選択部306が、端末103との間の端末間通信が可能な端末を中継装置の候補として選択する場合、この場合、この中継装置の候補の端末の位置情報を全て取得するようにしてもよい。取得された位置情報は中継判定部304に入力される。
【0026】
中継判定部304は、端末の位置情報と、送信許可領域との位置関係から、信号の中継伝送が可能であるかを判定する。具体的には、
図1の下りリンクの例においては、中継判定部304は、端末102が第1の周波数帯域における送信許可領域に位置しているかを判定し、送信許可領域に入っている場合には、中継伝送を許可できると判定する。また、
図1の上りリンクの例においては、端末103が送信許可領域に位置しているかを判定し、送信許可領域に入っている場合には、端末103による第1の周波数帯域を用いた信号送信と、端末102による第2の周波数帯域を用いた信号の転送とを許可する。なお、中継判定部304は、上りと下りとの両方の中継伝送が共に可能であると判断した場合にのみ、すなわち端末102と端末103との両方が送信許可領域に存在する場合にのみ、中継伝送を許可するように判定してもよい。判定の結果は指示通知部305に入力される。
【0027】
なお、中継判定部304は、端末103が第2の周波数帯域を用いて基地局101と通信できる場合には、中継伝送を許可しなくてもよい。この場合は、中継伝送をせずに、第2の周波数帯域を用いることで、基地局101は端末103と直接通信を行うことができるからである。このとき、例えば、信号検出器111が第2の周波数帯域における基地局101からの信号を検出する場合、中継判定部304は、その検出結果に応じて、基地局101が展開するエリアに端末103が存在するかを特定してもよい。また、中継判定部304は、基地局101に対して、エリア内に端末103が存在するかを直接問い合わせてもよい。また、中継判定部304は、この場合、端末103が第2の周波数帯域の信号の送受信が可能であるかの情報を不図示のデータベースから取得してもよい。端末103が第2の周波数帯域の信号を送受信できない場合は、基地局101が展開するエリア内に存在しているといないとによらず、端末102又は端末103が送信許可領域に存在するか否かに応じて中継伝送の可否が判断される。
【0028】
また、中継判定部304は、端末103と端末間通信を行うことができる複数の端末が存在する場合、すなわち中継装置の候補が複数存在する場合、これらの候補のそれぞれについて、中継伝送の許否を判定してもよい。そして、中継判定部304は、その判定結果に応じて、中継装置を1つ選択してもよい。例えば、中継判定部304は、送信許可領域に存在する候補のうち、端末103との距離が十分に近い候補を中継装置として選択してもよい。また、中継判定部304は、上りリンクと下りリンクとで異なる中継装置を選択してもよい。
【0029】
指示通知部305は、中継装置となる端末と、基地局101が送信するデータの宛先となる端末との少なくともいずれかに対して、信号を伝送又は転送すべきことを示す指示を通知する。この指示は、例えば、基地局101を介して端末102に通知され、端末102から転送されることにより端末103に通知される。または、制御信号用の十分に広いカバレッジエリアを有する無線通信システムを介して、この指示が各端末に通知されてもよい。指示を受けた端末は、その指示の内容に従って、信号を送信し、または受信した信号を転送する。
【0030】
指示には、例えば、
図1の下りリンク伝送において、端末102に対して、基地局101から第2の周波数帯域で受信した信号を、第1の周波数帯域を用いて端末103へ転送することの指示が含まれる。また、例えば、
図1の上りリンク伝送において、端末103に対する第1の周波数帯域を用いた信号の送信許可と、端末102に対する、第1の周波数帯域において端末103から受信した信号の第2の周波数帯域を用いた基地局101への転送の指示が含まれる。
【0031】
(送信許可領域の判定手法)
続いて、送信許可領域の判定手法について説明する。まず、前提として、信号検出器111が、
図4のように、地理的に分散して配置されており、送信許可領域判定部302は、それぞれの位置関係を知っているものとする。すなわち、例えば信号検出器111−1が信号検出器111−2及び111−5と隣接する位置に存在することを送信許可領域判定部302が知っているものとする。
【0032】
このとき、
図4において、信号検出器111−4、111−6〜111−8、111−10〜111−12、及び111−14〜111−16において、所定値以上の受信電力の信号を検出しなかったものとする。一方で、信号検出器111−1〜111−3、111−5、111−9及び111−13では、所定値以上の受信電力の信号が検出されたとする。なお、以下では、所定値以上の受信電力の信号を検出したか否かに基づく処理の説明を行うが、所定レベル以上のレベルで信号の特徴量が検出されるか否かなどの、特徴検出によって信号が検出されたか否かに基づく処理であっても同様の処理が実行される。すなわち、以下の説明は、“所定値以上の受信電力で信号が受信される”という点を、“特徴検出によって信号を検出される”に置き換えても成り立つ。
【0033】
このとき、送信許可領域判定部302は、所定値以上の受信電力の信号が検出されなかった信号検出部のうち、隣接する位置にある信号検出部においては所定値以上の受信電力の信号が検出されたものを抽出する。すなわち、
図4の例では、信号検出器111−4、111−6〜111−8、111−10及び111−14が抽出される。
【0034】
このとき、これらの抽出された信号検出器は、隣接する信号検出器においては所定値以上の受信電力で信号が検出されていることから、そのような信号が検出される領域と、検出されない領域との境界付近に位置していると考えられる。したがって、これらの抽出された信号検出器の近辺で信号を送出すると、意図せずに、他の装置への干渉を生じさせてしまうことがある。このため、送信許可領域判定部302は、例えば、これらの抽出された信号検出器から、所定距離以上離れた位置を、信号の送信を許可する領域として判定する。なお、このとき、所定値以上の受信電力で信号を検出した信号検出器の方向に広がる領域は、信号の送信を許可しない領域とする。このようにして、例えば、
図4の縦線で塗られた領域のような領域が、送信許可領域として判定される。すなわち、信号を検出しなかった信号検出器のうち、信号を検出した信号検出器に隣接する信号検出器を基準として、信号を検出した信号検出器が存在しない方向にその信号検出器から所定距離以上離れた領域が送信許可領域として判定される。これにより、信号が検出される領域と検出されない領域との境界付近で誤って信号が送出されることがなくなり、他の装置へ干渉を与える確率を低減させることができる。
【0035】
なお、
図4の例では、信号が検出される領域と検出されない領域との境界付近の信号検出器のうち、信号が検出されない側の信号検出器から所定距離以上離れた領域を送信許可領域としたが、これに限られない。例えば、隣接する信号検出器の全てにおいて信号を検出していない信号検出器で、その信号検出器も信号を検出していない場合は、その信号検出器から所定距離以内の領域を送信許可領域としてもよい。
【0036】
(制御装置の処理)
続いて、制御装置110が実行する処理について、
図5及び
図6を用いて説明する。
図5は、下りリンク伝送(基地局101から端末103方向)における通信制御の処理の流れを示すフローチャートであり、
図6は、上りリンク伝送(端末103から基地局101方向)における通信制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【0037】
図5において、まず、制御装置110は、信号を検出しなかった信号検出器を特定し(S501)、その信号検出器の地理的位置に基づいて、送信許可領域を特定する(S502)。具体的な送信許可領域の特定の仕方は上述の通りである。そして、制御装置110は、データを中継する端末、すなわち、基地局と第2の周波数帯域で直接通信できると共に、データの宛先の端末と第1の周波数帯域で直接通信できる端末が、送信許可領域内に存在しているかを判定する(S503)。そして、中継端末が送信許可領域内に存在する場合(S504でYES)、制御装置110は、その中継端末に対して、基地局から第2の周波数帯域で受信した下りリンクのデータの、第1の周波数帯域を用いた転送を指示する(S505)。一方、データを中継する端末が送信許可領域内に存在しない場合(S504でNO)、その端末が実際に中継処理を行うと、他の装置に干渉を与えることとなってしまうため、中継を許可せずに、処理を終了する。
【0038】
なお、制御装置110は、本処理を開始する前に、データの宛先の端末が、基地局が展開するエリア内に存在するかを確認してもよい。その端末が基地局の展開するエリア内に存在する場合は、中継処理を行う必要がないため、制御装置110は、
図5の処理を行わなくてもよい。これにより、不必要な中継処理を省略すると共に、第1の周波数帯域での中継を必要とする他の端末が通信する機会を増やすことができ、システム全体の周波数利用効率を向上させることが可能となる。
【0039】
また、S503及びS504において、中継端末の候補が複数存在する場合は、各候補が送信許可領域内に存在するかを判定し、送信許可領域内に存在する候補から実際に中継を行う端末を選択してもよい。これにより、あらかじめ1つの端末のみを中継端末として定めて送信許可領域内に存在するかを判定する場合と比べて、中継を許可できる状況となる確率を高めることが可能となる。したがって、宛先の端末へデータを送信できる機会をより多く確保することが可能となる。
【0040】
一方、上りリンクの通信制御(
図6)においても、制御装置110は、まず、信号を検出しなかった信号検出器を特定し(S501)、その信号検出器の地理的位置に基づいて、送信許可領域を特定する(S502)。続いて、制御装置110は、中継端末ではなく、データの送信元の端末が、送信許可領域内に存在するかを判定する(S601)。そして、データの送信元の端末が送信許可領域内に存在する場合(S602でYES)、制御装置110は、その送信元の端末に、第1の周波数帯域を用いた上りリンクのデータの送信許可を通知する(S603)。また、この場合、制御装置は、中継端末に対して、第1の周波数帯域で受信したデータの第2の周波数帯域を用いた中継を指示する。一方、データの送信元の端末が送信許可領域内に存在しない場合(S602でNO)、この端末が信号を送出すると、他の装置への干渉が生じるおそれがある。したがって、この場合は、制御装置110は、信号の送信を許可せず、処理を終了する。
【0041】
このように、本実施形態の制御装置110は、中継端末またはデータの送信元の端末が、第1の周波数帯域を用いたシステムの送信可能領域に存在することを確認したうえで、データの送信または中継を指示する。これにより、第1の周波数帯域を使用する他の装置に対する干渉を避けながら、第1の周波数帯域の有効利用を図ることが可能となり、システム全体としての周波数利用効率を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、上述の説明では、制御装置110が能動的に端末103の通信の許否を定める処理を実行しているが、端末103からの通信要求があった場合にのみ上述の処理を実行するようにしてもよい。すなわち、制御装置110は、端末103からの基地局101との通信の要求があった場合に
図5と
図6との少なくともいずれかに示す処理を実行し、その要求に対する応答として、上述の指示を端末103と端末102との少なくともいずれかに通知してもよい。このとき、その要求信号は、例えば端末102によって中継されて基地局101へ伝達し、基地局101から制御装置110へ通知されてもよい。なお、このときの要求を送信する周波数帯域は、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域との少なくともいずれかが用いられてもよいし、他の周波数帯域が用いられてもよい。