【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示すような層構成からなる有機EL素子を作製した。
陽極1はITOを備えたガラス基板による透明電極とし、その上に、ホール注入層([HIL])2を形成し、ホール輸送層3としてNPD(膜厚40nm)、発光層4としてAlq
3(膜厚60nm)で積層した。その上に、陰極5としてLiF(膜厚0.5nm)及びAl(膜厚80nm)を順次積層した。
上記のようにして作製した有機EL素子の層構成を簡略化して表すと、ITO/[HIL]/NPD(40)/Alq
3(60)/LiF(0.5)/Al(80)である。
上記層構成において、ホール注入層2を下記表1に示すように変化させて、各種素子試料を作製した。試料2,3のホール注入層は、硫化亜鉛(ZnS)と酸化モリブデン(MoO
3)を積層したものであり、試料4〜9のホール注入層は、ZnSとMoO
3の所定比率で共蒸着したものである。
【0024】
【表1】
【0025】
図3,4に、上記各素子試料についての電流密度−電圧曲線を示す。
図3,4に示した曲線から分かるように、ZnSとMoO
3の混合比1:1の共蒸着膜(試料4)が最も低電圧であり、また、混合比が1:1から離れるほど高電圧化することが認められた。
【0026】
(実施例2)
図2に示すような層構成からなる発光ユニットを2個備えたMPE素子(試料10)を作製した。
陽極1はITOを備えたガラス基板による透明電極とし、その上に、ホール注入層2としてZnSとMoO
3の混合比1:1の共蒸着膜(膜厚10nm)、ホール輸送層3としてNPD(膜厚65nm)を形成し、発光ユニット([EL])6として緑色発光ドーパントC545Tを1重量%ドープしたAlq
3(膜厚35nm)及びAlq
3(膜厚35nm)を順次積層した。
そして、電子注入層8としてZnS(膜厚5nm)、LiF(膜厚1nm)及びAl(膜厚1nm)、電荷発生層7としてZnSとMoO
3の混合比1:1の共蒸着膜(膜厚10nm)及びNPD(膜厚65nm)を順次積層した。
再度、上記と同様の発光ユニット6を積層し、その上に、電子注入層8としてZnS(膜厚5nm)及びLiF(膜厚0.5nm)、陰極5としてAl(膜厚80nm)を順次積層した。
【0027】
なお、比較のため、上記の試料10の素子の層構成のうち、発光ユニットを1個、発光ユニット間の電荷発生層7及び電子注入層8を形成しない1ユニット素子(試料9)も作製した。
【0028】
さらに、試料10を基本として、ZnSを用いずに、1ユニット素子(試料11)及び発光ユニットを2個備えたMPE素子(試料12)を作製した。
なお、膜厚は、陰極から発光領域までの距離を1ユニットで76.47nm、2ユニットで229.41nmとなるように調整した。
上記において作製した各有機EL素子の層構成を表2にまとめて示す。
【0029】
【0030】
図5に、上記各素子試料についての外部量子効率−発光輝度曲線を示す。
図5に示した曲線から分かるように、2ユニットのMPE素子とした場合、ZnSを用いた素子(試料10)の方が高効率であることが認められた。
【0031】
(実施例3)
光学距離を考慮せずに、合計膜厚を一定として、下記表3の試料13〜17に示すような層構成からなる1ユニット素子及び2ユニットのMPE素子を作製した。2ユニットのMPE素子は、電子注入層をLiFとLiqにしたものをそれぞれ作製した。また、ZnSを用いない素子と用いた素子での比較を行った。
【0032】
【表3】
【0033】
なお、表2において、Rubとはルブレンであり、また、B3PyMPMは、下記(化1)に示す化合物である。
【0034】
【化1】
【0035】
図6に、上記各素子試料についての電流密度−電圧曲線を示す。
図6に示した曲線から分かるように、2ユニットのMPE素子とした場合、電子注入層にLiFを用いた素子(試料14)は高電圧化したが、電子注入層にLiqを用い、これに接してZnSとMoO
3の混合蒸着膜による電荷発生層を形成した素子(試料17)が最も低電圧駆動であった。立ち上がりこそ1ユニット素子の2倍の電圧であったが、その後は1ユニット素子と同等の電流密度−電圧特性を示した。