(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(1)第1の実施の形態
図1において、1は全体として第1の実施の形態による光走査部10を含む画像表示装置を示す。画像表示装置1は、その外郭を形成する画像表示装置の筐体(以下、これを表示装置筐体と呼ぶ)20の内部に、光源部30、反射ミラー40及び光走査部10を備えて構成される。表示装置筐体20は、光走査部10がスクリーン50等に走査する光を通すための開口部21を有している。
【0020】
まず、光源部30について説明する。光源部30は、第1のレーザ光源31、第2のレーザ光源32、第3のレーザ光源33、第1のコリメータレンズ34、第2のコリメータレンズ35、第3のコリメータレンズ36、第1の光合成素子37、及び、第2の光合成素子38を備える。
【0021】
第1のレーザ光源31は、例えば520nm帯の緑色(Green)光ビームを出射する半導体レーザから構成される。第1のレーザ光源31から出射した緑色光ビームは、コリメータレンズ34において平行光ビーム又は弱収束光ビームに変換される。なお、第1のレーザ光源31として、第二次高調波を使用したSHGレーザ光源を適用することができる。
【0022】
また、第2のレーザ光源32は、例えば640nm帯の赤色(Red)光ビームを出射する半導体レーザから構成される。第2のレーザ光源32から出射した赤色光ビームは、コリメータレンズ35において平行光ビーム又は弱収束光ビームに変換される。
【0023】
さらに、第3のレーザ光源33は、例えば455nm帯の青色(Blue)光ビームを出射する半導体レーザから構成される。第3のレーザ光源33から出射した青色光ビームは、コリメータレンズ36において平行光ビーム又は弱収束光ビームに変換される。
【0024】
第1の光合成素子37は、例えば、緑色光ビームを透過し、赤色光ビームを反射する波長選択性ミラーから構成される。第1の光合成素子37は、緑色光ビームと赤色光ビームの光軸をほぼ一致させるように調整する。
【0025】
第2の光合成素子38は、例えば、緑色光ビーム及び赤色光ビームを透過し、青色光ビームを反射する波長選択性ミラーから構成される。第2の光合成素子38は、青色光ビーム、緑色光ビーム及び赤色光ビームの光軸をほぼ一致させるように調整する。
【0026】
第1〜第3のレーザ光源31〜33から出射された光ビームは、第1の光合成素子37及び第2の光合成素子38を通過することによって、それぞれの光軸がほぼ一致した光ビーム60となる。以降では、第1〜第3のレーザ光源31〜33から光ビームが出射されて光軸がほぼ一致した光ビーム60になる過程は省略し、「光源部30から反射ミラー40に光ビーム60が出射する」と記載する。
【0027】
なお、第1〜第3のレーザ光源31〜33を用いた光源部30は、画像表示装置1を構成する光源部30の一例であって、これに限定されるものではない。
【0028】
反射ミラー40は、光源部30から出射した光ビーム60を反射するミラーである。光源部30から出射して反射ミラー40で反射した光ビーム60は、光走査部10に向かう入射光となる。
【0029】
次に、光走査部10について説明する。
【0030】
光走査部10は、例えば、MEMS筐体である。
図1に示すように、光走査部10は、走査部筐体11とそれに接合する透光性カバー12とによって内部に空間が形成された封止構造になっている。この封止構造の内部には、回動ミラー13が回動可能に固定されている。
【0031】
回動ミラー13は、例えば、MEMSミラーで実現され、中立状態から所定の角度で回動することができる。
図1には中立状態の回動ミラー13が示されている。回動ミラー13は、光源部30から出射する光ビーム60をスクリーン50方向に反射する反射面131を備える。回動ミラー13は、回動によって光ビーム60の反射方向を調整してスクリーン50に2次元的に走査させ、その残像効果によってスクリーン50に画像を表示する。
【0032】
なお、回動ミラー13は、例えば、MEMSミラー走査器(図示せず)によって駆動速度や回転角を制御されるが、説明を簡略にするために、「回動ミラー13が回動する」と記載している。また、回動ミラー13は、例えば、あおり方向及び回転方向の動作によって二次元的な走査を実現する。以降では、説明を簡略にするために、あおり方向に限って説明を行うが、回動ミラー13による回転方向の動作を限定するものではない。
【0033】
透光性カバー12は、ガラス板等の透光性の材料からなる部材であって、回動ミラー13と反射ミラー40との間に設けられる。透光性カバー12は、透光性カバー12における反射ミラー40側の第1の面(外面)121と透光性カバー12における回動ミラー13側の第2の面(内面)122とが平行ではない関係(非平行)に形成されている。例えば、
図1に示す透光性カバー12は、
図1の上端の厚みが下端の厚みよりも小さい断面くさび状に形成されている。さらに、透光性カバー12の外面121及び内面122は、回動する回動ミラー13の反射面131に対して、それぞれ非平行に設けられる。
【0034】
光走査部10では、まず、光源部30から出射して反射ミラー40で反射した光ビーム60が、入射光として透光性カバー12を透過する。このとき、外面121では、光ビーム60の一部が反射して光走査部10の外部に向かう(第1の反射光61)。また、内面122では、透光性カバー12の内部を透過した光の一部が反射して光走査部10の外部に向かう(第2の反射光62)。
【0035】
そして、透光性カバー12を透過した光ビーム60は、回動ミラー13の反射面131で反射する。回動ミラー13の反射面131で反射した光ビーム60は、再び透光性カバー12を透過し、光走査部10の外部にあるスクリーン50方向に向かう(第3の反射光63)。
【0036】
図2は、回動ミラー13の回動状態に応じた光ビーム60の軌道を示す。レーザ光源30から透光性カバー12に入射する光ビーム60について、水平方向に対する入射角を入射角aとする。回動ミラー13Aは中立状態にあり、回動ミラー13B及び13Cは、あおり方向に最大の振り角で回動した状態にある。
【0037】
図2に示す第3の反射光63A〜63Cは、異なる回動状態にある回動ミラー13A〜13Cに対応した第3の反射光63である。第3の反射光63Aは、回動ミラー13Aによって反射された第3の反射光63に相当する。第3の反射光63Bは、下方あおり方向に最大の振り角で回動した状態にある回動ミラー13Bによって反射された第3の反射光63に相当する。第3の反射光63Cは、上方あおり方向に最大の振り角で回動した状態にある回動ミラー13Cによって反射された第3の反射光63に相当する。
【0038】
また、
図2では、透光性カバー12の外面121及び内面122で反射した反射光(第1の反射光61及び第2の反射光62)が破線で示されている。また、光ビーム60が透光性カバー12を透過する場合には、光ビーム60の入射角及び透光性カバー12の屈折率に応じて光路が屈折する。
【0039】
このような光走査部10では、第1の反射光61と第2の反射光62とが、第3の反射光63による画像の投射領域とは異なる領域に到達するように、透光性カバー12の外面121及び内面122の傾きが決定されている。なお、光走査部10では、第1の反射光61及び第2の反射光62は、第3の反射光63による画像の投射領域の境界部分に到達してもよいとする。
【0040】
ここで、透光性カバー12の外面121及び内面122の傾きを決定する方法の一例を説明する。
図3は、回動ミラー13、透光性カバー12、及び光ビーム60によって形成される種々の角度を示す。
【0041】
図3に示すように、中立状態の回動ミラー13における法線が水平軸となす傾斜角を中立傾斜角bとする。そして、回動ミラー13による中立傾斜角bからの最大の振り角を振り角cとする。すなわち、回動ミラー13は、水平軸を基準として(b−c)から(b+c)の間の傾斜角で回動する。
【0042】
透光性カバー12は、前述したように外面121と内面122とが非平行であるので、外面121及び内面122のそれぞれの面が回動ミラー13の反射面131に対してなす角度が異なる。ここで、透光性カバー12の内面122における法線
が回動ミラー13の反射面131における法線に対してなす角を相対傾斜角dとする。このとき、内面122がなす絶対傾斜角度は、垂直軸を基準として(d−b)で示される。
【0043】
相対傾斜角dは、透光性カバー12の内面122の絶対角度を示す(d−b)が回動ミラー13が最も傾いた時の角度(c−b)と等しいかそれ以上となるように設定される。このとき、中立傾斜角b、振り角c及び相対傾斜角dの間には、以下の(1)式及び(2)式の関係が成立する。(1)式及び(2)式は、第2の反射光62が、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域内に投影されないようにするための条件の一例である。(1)式及び(2)式を満足する場合に、第2の反射光62は、下方あおり方向に最大の振り角で回動した状態の回動ミラー13Bによって反射される第3の反射光63Bよりも、外側(
図2では下側)に向かう。なお、(1)式及び(2)式で等号が成立する場合には、第2の反射光62は、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域の下辺に投射される。
【0044】
【数1】
【数2】
【0045】
また、透光性カバー12の外面121における法線
が回動ミラー13の反射面131における法線に対してなす角を相対傾斜角eとする。相対傾斜角eは、媒介変数の角度f,g,h,i,j,k,l,mを用いて、以下の(3)式〜(11)式の関係を満たすように設定される。nは、透光性カバー12の屈折率を示す。(3)式〜(11)式は、第1の反射光61が、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域内に投影されないようにするための条件の一例である。(3)式〜(11)式を満足する場合に、第1の反射光61は、上方あおり方向に最大の振り角で回動した状態の回動ミラー13Cによって反射される第3の反射光63Cよりも、外側(
図2では上側)に向かう。なお、(11)式で等号が成立する場合には、第1の反射光61は、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域の上辺に投射される。
【0046】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0047】
なお、
図2及び
図3に示す入射角a、中立傾斜角b、振り角c、相対傾斜角d、及び相対傾斜角eの値は、一例として、図中における時計回り方向を正とし、反時計回り方向を負として表記される。また、上述の式(3)は、光ビーム60が透光性カバー12に入射する際の入射角と屈折角との関係(スネルの法則)を示した式であり、式(4)は、光ビーム60が透光性カバー12を透過して内面122から回動ミラー13側に出射する際の入射角と屈折角との関係(スネルの法則)を示した式である。また、式(5)は、光ビーム60が回動ミラー13で反射する際の入射角と反射角との関係を示した式である。また、式(6)は、回動ミラー13で反射した光ビーム60が透光性カバー12に再入射する際の入射角と屈折角との関係(スネルの法則)を示した式である。また、式(7)は、透光性カバー12を透過した光ビーム60の反射光が透光性カバー12から第3の反射光63として出射する際の入射角と屈折角との関係(スネルの法則)を示した式であり、式(8)は、透光性カバー12を透過して出射される第3の反射光63の絶対出射角度の値を表す式である。また、式(9)は、光ビーム60が透光性カバー12に入射する際に外面121で反射する第1の反射光について、入射角と反射角との関係を示した式であり、式(10)は、光ビーム60が透光性カバー12に入射する際に外面121で反射する第1の反射光61の絶対出射角度の値を表す式である。
【0048】
以上の(1)式〜(11)式の関係を満たすように透光性カバー12の内面122及び外面121の傾きを設定することにより、第1の反射光61及び第2の反射光62が、第3の反射光63による画像の投射領域とは異なる領域に到達する光走査部10を実現することができる。
【0049】
ここで、a〜e及びnに具体的な数値を適用した一例(第1の適用例)を示す。各数値は、例えば、コンピュータによる光線追跡計算を用いた自動設計によって設定することができる。
【0050】
まず、a=+15.000°,b=+7.415°,c=+9.000°,d=+9.000°と設定した。
【0051】
このとき、(d−b)の値は+1.585°に、(c−b)の値は+1.585°になる。すなわち、(d−b)=(c−b)であり、(1)式の関係((d−b)≧(c−b))を満たす。なお、当然ではあるが、c=dであるから、c及びdは、(2)式の関係(d≧c)を満たす。
【0052】
次に、e=−2.058°,n=1.51431と設定した。
【0053】
このとき、(3)式に示したsin(a+b−e)/sin(f)=nの関係からfを算出すると、f=+15.877°となる。そして、(4)式に示したsin(g)/sin(f+e−d)=nの関係からgを算出すると、g=+7.309°となる。
【0054】
さらに、(5)式に示したh=g+d+cの関係から、h=+25.309°となる。そして、(6)式に示したsin(−h−c−d)/sin(i)=nの関係からiを算出すると、i=−26.934°となる。そして、(7)式に示したsin(j)/sin(i+d−e)=nの関係からjを算出すると、j=−24.472°となる。
【0055】
さらに、(8)式に示したk=j−b+eの関係から、k=−33.945°となる。そして、(9)式に示したl=−a−b+eの関係から、l=−24.473°となる。最後に、(10)式に示したm=l−b+eの関係から、m=−33.946°となる。このとき、以上の算出結果からmとkの大小関係を比較すると、m及びkは、(11)式の関係(m≦k)を満たしている。
【0056】
従って、(1)式〜(11)式の関係を満たす数値が実際に存在することが確認でき、第1の実施の形態の光走査部10が実現可能なことが確認された。
【0057】
図4は、第1の適用例において画像表示装置1が格子状の画像を表示した場合の画像の表示結果を示す。
図4に示すように、格子状の画像は、スクリーン上でひずみを有して投射される。
図4に示す画像には、台形ひずみと糸巻き型ひずみが表れている。なお、光走査部からスクリーン50までの距離は、例えば1000mmとした。この距離は、後述の
図6、
図8、及び
図10でも同様とする。
【0058】
なお、
図4のP61及びP62は、第1の反射光61又は第2の反射光62の到達点を示し、P63A、P63B、及びP63Cは、第3の反射光63A、63B、及び63Cの到達点を示す。
図4に示されたP61及びP62の位置から、第1の反射光61及び第2の反射光62が画像の表示領域に混入していないことが確認できる。なお、後述の
図6、
図8、及び
図10でも、
図4と同様に、スクリーン50上の到達点P61〜P62及びP63A〜P63Cが示される。
【0059】
次に、表示された画像のひずみについて説明する。
【0060】
画像のひずみの程度は、様々な処理方法によって計算可能であるが、ここでは一例として、以下の(12)式〜(17)式に示す算出方法を用いて、水平台形ひずみTH、垂直台形ひずみTV、上辺ひずみT1、下辺ひずみB1、左辺ひずみL1、及び右辺ひずみR1を算出した。なお、AD、BC、AB、及びDCは、表示された格子状画像の頂点を結んだ四角形における各辺の長さに相当する。また、a1、b1、c1、及びd1は、当該四角形の各辺から最もひずんだ点(ピーク)までの距離を示す。この距離は、ピークが当該四角形の辺よりも外側にある場合は正とし、当該四角形の辺よりも内側にある場合には負とする。そして、算出されたT1、B1、L1、及びR1の値は、負の場合には糸巻き型ひずみを示し、正の場合には樽形ひずみを示す。
【0061】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【0062】
第1の適用例について、(12)式〜(17)式の算出方法に則って算出したひずみの程度は、TH=0.0%,TV=+4.1%,T1=−11.1%,B1=−2.1%,L1=−3.1%,R1=−3.1%となった。
【0063】
次に、このひずみの程度を、従来の光走査部によって表示される画像におけるひずみと比較する。
【0064】
図5は、従来の光走査部90の構成例を示す。光走査部90では、透光性カバー92の外面921及び内面922が、中立状態の回動ミラー93と平行に形成されている。光走査部90は、透光性カバー92の形状及びその配置以外は、
図1に示す第1の実施の形態の光走査部10と同様の構成であり、説明を省略する。
【0065】
まず、光走査部90における種々の角度について、a=+15.000°,b=+1.500°,c=+9.000°,d=+0.000°と設定した。このとき、(d−b)の値は−1.500°になり、(c−b)の値は+7.500°になる。すなわち、(d−b)<(c−b)であり、(1)式に示す関係は満たされていない。また、d<cであるので、(2)式に示す関係も満たされていない。
【0066】
次に、e=−0.000°,n=1.51431と設定した。このとき、(3)式〜(10)式に示した関係に基づいて、媒介変数f〜mの値を算出した。その結果、f=+10.810°,g=+16.500°,h=+25.500°,i=−21.965°,j=−34.500°,k=−36.000°,l=−16.500°,m=−18.000°が算出される。このとき、以上の算出結果からmとkの大小関係を比較すると、m>kであり、m及びkは、(11)式に示す関係(m≦k)を満たしていない。
【0067】
図6は、上記の数値条件が適用された従来の画像表示装置90が格子状の画像を表示した場合の画像の表示結果を示す。
図6では、P61及びP62がP63Aに一致しているので、第1の反射光61及び第2の反射光62が画像の投射領域に混入していることが分かる。
【0068】
次に、
図6に示された画像について、(12)式〜(16)式の算出方法に則ってひずみの程度を算出した結果は、TH=0.0%,TV=+6.9%,ひずみT1=−26.5%,ひずみB1=+5.7%,ひずみL1=−4.0%,ひずみR1=−4.0%となった。
【0069】
このとき、垂直台形ひずみTV、上辺ひずみT1、下辺ひずみB1、左辺ひずみL1、及び右辺ひずみR1の絶対値が第1の適用例の場合よりも大きく、従来の光走査部90におけるひずみの程度は、第1の適用例におけるひずみの程度よりも大きくなった。従って、光走査部10では、特別な画像ひずみの補正処理を行うことなく、従来の光走査部90よりも表示画像のひずみを改善する効果が期待できる。
【0070】
このように、第1の実施の形態における光走査部10では、第1の反射光61及び第2の反射光62が第3の反射光63による画像の投射領域とは異なる領域に到達することにより、画像の投射領域に第1の反射光61及び第2の反射光62が混入することを防止し、表示画質の低下を防ぐ効果が期待できる。
【0071】
また、このような光走査部10によれば、走査部筐体11と透光性カバー12とによって封止構造が形成されているので、低い気圧又は真空状態にした封止構造の内部に回動ミラー13を配置することができる。このように配置された回動ミラー13は、回動時に受ける空気抵抗が小さくなる。そのため、回動ミラー13の回動に伴って発生する発熱量を抑える効果が期待できる。また、従来の発熱量の範囲内に抑えたまま、より高い周波数を回動ミラー13の動作のために用いることもでき、その場合には、光走査部10の走査速度の向上によって表示画像の画質の向上が期待できる。なお、この封止構造による効果は、後述の第2の実施の形態による光走査部70及び第3の実施の形態による画像表示装置2でも同様に期待できる。
【0072】
(2)第2の実施の形態
図7は、第2の実施の形態による光走査部70の構成例を示す。透光性カバー72以外の光走査部70の構成は、光走査部10の構成要素と同じであり、その説明を省略する。
【0073】
透光性カバー72は、第1の実施の形態における透光性カバー12と同様に、外面721と内面722とが互いに非平行であるだけでなく回動ミラーの反射面131とも非平行となるように形成されて配置される。そして、透光性カバー72の外面721及び内面722の傾きは、第1の反射光61及び第2の反射光62が、第3の反射光63(63A〜63Cを含む)による画像の投射領域とは異なる領域に到達するように決定される。
【0074】
ここで、第2の実施の形態において、透光性カバー72は、上端の幅が下端の幅よりも大きく形成されている。このような透光性カバー72を備えた光走査部70では、入射光に対する外面721の角度が第1の実施の形態のそれとは異なるために、第1の反射光61及び第2の反射光62の反射方向は、
図2で示した第1の反射光61及び第2の反射光62の反射方向とは異なるものになる。
【0075】
従って、例えば、第1の反射光61は、
図2では第3の反射光63よりも上方に向かえば良かったが、
図7では第3の反射光63よりも下方に向かう必要がある。また、第2の反射光62は、
図2では第3の反射光63よりも下方に向かえば良かったが、
図7では第3の反射光63よりも上方に向かう必要がある。
【0076】
このような観点に基づいて、第2の実施の形態において透光性カバー72の外面721及び内面722の傾きを決定する方法の一例として、以下に示す(18)式〜(28)式を用いる。(18)式〜(28)式は、第1の実施の形態において説明した(1)式〜(11)式と同様に、第2の実施の形態における光ビーム60と透光性カバー72との関係を示すものである。(18)式及び(19)式は、第2の反射光62が、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域内に投影されないようにするための条件の一例である。(18)式及び(19)式を満足する場合に、第2の反射光62は、上方あおり方向に最大の振り角で回動した状態の回動ミラー13Cによって反射される第3の反射光63Cよりも、外側(
図7では上側)に向かう。なお、(18)式及び(19)式で等号が成立する場合には、第2の反射光62は、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域の上辺に投射される。また、(20)式〜(28)式は、第1の反射光61が、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域内に投影されないようにするための条件の一例である。(20)式〜(28)式を満足する場合に、第1の反射光61は、下方あおり方向に最大の振り角で回動した状態の回動ミラー13Bによって反射される第3の反射光63Bよりも、外側(
図7では下側)に向かう。なお、(28)式で等号が成立する場合には、第1の反射光61は、第3の反射光63によってスクリーン50に走査される画像の表示領域の下辺に投射される。
【0077】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
【0078】
なお、(18)式及び(19)式で等号が成立する場合には、第2の反射光62は、第3の反射光63Cによってスクリーンに走査される画像の表示領域の上辺に投射される。また、(28)式で等号が成立する場合には、第1の反射光61は、第3の反射光63Bによってスクリーン50に走査される画像の表示領域の下辺に投射される。
【0079】
ここで、a〜e及びnに具体的な数値を適用した一例(第2の適用例)を示し、(18)式〜(28)式の関係を満たす数値が実際に存在することを確認する。
【0080】
まず、a=+15.000°,b=−4.789°,c=+9.000°,d=−9.000°と設定した。
【0081】
このとき(d−b)の値は−4.211°に、(−c−b)の値は−4.211°になる。すなわち、(d−b)及び(−c−b)は、(18)式の関係を満たす。また、−c及びdは、(19)式の関係を満たす。
【0082】
次に、e=+2.711°,n=1.51431と設定した。
【0083】
このとき、(20)式〜(27)式を用いると、f=+4.945°,g=+25.724°,h=+7.724°,i=+6.765°,j=−7.502°,k=−0.002°,l=−7.500°,m=+0.000°が算出される。その結果、m及びkはm≧kであり、(28)式の関係を満たす。
【0084】
従って、(18)式〜(28)式の関係を満たす数値が実際に存在することが確認でき、第2の実施の形態の光走査部70が実現可能なことが確認された。
【0085】
図8は、第2の適用例において画像表示装置が格子状の画像を表示した場合の画像の表示結果を示す。
図8に示す画像では、台形ひずみが表れている。さらに、
図8に示す画像では、下辺で樽形ひずみが表れ、その他の辺で糸巻き形ひずみが表れている。また、
図8に示されたP61及びP62の位置から、第1の反射光61及び第2の反射光62が画像の表示領域に混入していないことが確認できる。
【0086】
次に、第1の実施の形態と同様に、(12)式〜(17)式に示す算出方法を用いて、水平台形ひずみTH、垂直台形ひずみTV、上辺ひずみT1、下辺ひずみB1、左辺ひずみL1、及び右辺ひずみR1を算出した。算出結果は、TH=0.0%,TV=+11.4%,T1=−46.3%,B1=+11.4%,L1=−5.5%,R1=−5.5%となった。
【0087】
上記の算出結果は、第2の適用例は第1の適用例よりもひずみの補正効果が小さいことを示している。
【0088】
このような光走査部70によれば、透光性カバー72が上端の幅が下端の幅よりも大きく形成された場合でも、第1の実施の形態による光走査部10と同様に、光走査部70による画像の投射領域に第1の反射光61及び第2の反射光62が混入することを防止し、表示画質の低下を防ぐ効果を期待できる。
【0089】
(3)第3の実施の形態
図9は、第3の実施の形態による画像表示装置2の構成例を示す。画像表示装置2の構成は、
図1に示した画像表示装置1の構成と同様であり、その説明を省略する。なお、
図9では、
図1に示した光源部30、反射ミラー40、及びスクリーン50が省略されている。
【0090】
表示装置筐体20には、光走査部10がスクリーン50等に走査する光を通すための開口部21が設けられている。そして、遮光部22は、表示装置筐体20の一部であり、開口部21の周囲に、第1の反射光61及び第2の反射光62の光路を遮る場所に備えられる。
【0091】
ここで、第3の実施の形態による画像表示装置2に具体的な数値を適用した一例(第3の適用例)を説明する。
【0092】
まず、回動ミラー13の反射面131から表示装置筐体20の開口部21までの距離を10mmとし、a=+15.000°,b=+10.752°,c=+9.000°,e=−5.554°,n=1.51431とした。相対傾斜角d及びeについては、コンピュータによる光線追跡計算を用いた自動設計により、第1の反射光61及び第2の反射光62の光路が、開口部21の端部近傍における第3の反射光63の光路に対して少なくとも1mmの距離をとるように設定した。具体的には、d=11.400°,e=−5.554°と設定した。
【0093】
このとき、c及びdは(2)式の関係を満たす。また、(d−b)の値は+0.648°になり、(c−b)の値は−1.752°となることから、(1)式の関係が満たされる。
【0094】
次に、(3)式〜(10)式を用いると、f=+20.068°,g=+4.719°,h=+25.119°,i=−28.110°,j=−17.037°,k=−33.343°,l=−31.306°,m=−47.612°が算出される。すなわち、m及びkはm≦kであり、(12)式の関係を満たす。
【0095】
従って、(1)式〜(11)式の関係を満たす数値が実際に存在することが確認でき、第3の実施の形態の画像表示装置2が実現可能なことが確認された。
【0096】
図10は、第3の適用例において画像表示装置2が格子状の画像を表示した場合の画像の表示結果を示す。
図10に示す画像では、台形ひずみ及び糸巻き形ひずみが表れている。また、
図10には、P61及びP62が表示されていないことから、第1の反射光61及び第2の反射光62が画像の表示領域に混入していないことが確認できる。
【0097】
次に、第1の実施の形態と同様に、(12)式〜(17)式に示す算出方法を用いて、水平台形ひずみTH、垂直台形ひずみTV、上辺ひずみT1、下辺ひずみB1、左辺ひずみL1、及び右辺ひずみR1を算出した。算出結果は、TH=0.0%,TV=+3.2%,T1=−4.2%,B1=−7.2%,L1=−2.8%,R1=−2.8%となった。
【0098】
このとき、垂直台形ひずみTV、上辺ひずみT1、下辺ひずみB1、左辺ひずみL1、及び右辺ひずみR1の絶対値は、
図6の従来の画像表示装置による画像表示例のひずみの値よりも格段に小さい。従って、第3の適用例の場合には、表示画像のひずみについて、従来の光走査部70よりも大幅な改善が確認できた。
【0099】
このような画像表示装置2によれば、第1の反射光61及び第2の反射光62は、遮光部22によって遮られるために画像の投射領域には到達できず、不要な反射光が画像の投射領域に混入することを防止し、表示画質の低下を防ぐ効果が期待できる。
【0100】
また、本画像表示装置2によれば、遮光部22によって表示装置筐体20の内部で第1の反射光61及び第2の反射光62を遮光することができるため、第1の実施の形態による画像表示装置1と比べて、より確実に不要光を排除することが期待できる。
【0101】
(4)他の実施の形態
なお上述の第1〜第3の実施の形態においては、光源部30から出射する光ビーム60が反射ミラー40で反射して光走査部10又は光走査部70に入射するように述べたが、本発明はこれに限らず、光源部30から出射する光ビーム60が光走査部10又は光走査部70に直接入射するように画像表示装置1又は画像表示装置2を構成するようにしてもよく、そのような場合には、画像表示装置1又は画像表示装置2は反射ミラー40を備えていなくてもよい。
【0102】
また上述の第1〜第3の実施の形態においては、光ビーム60が透光性カバー12又は72を透過することによりスクリーン50に表示される画像のひずみが補正される場合があることについて述べたが、本発明はこれに限らず、光走査部10を備えた画像表示装置1又は光走査部70を備えた画像表示装置1が、画像ひずみを補正するために一般的に用いられている画像ひずみ補正手段をさらに備えてもよい。このような画像表示装置1又は2では、光走査部10又は70によるひずみの補正効果に加えて、画像ひずみ補正手段によるさらなる補正の効果を期待できる。また、光走査部10又は70によるひずみの補正効果がある場合には、画像ひずみ補正手段によるひずみの補正量を少なくすることができるので、画像ひずみ補正手段の処理量を低減する効果が期待できる。