(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記機具類支持手段は、前記中間リンク金具に後端部が第3旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された第2アームから構成され、前記第2アームの先端部に機具類が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の機具類保持用バランサ装置。
前記機具類支持手段は、前記中間リンク金具に後端部が第3旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された第2アームと、前記第2アームの先端部が第4旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された先端側リンク金具と、前記先端側リンク金具に取り付けられた機具類保持部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の機具類保持用バランサ装置。
前記第1旋回中心から前記第2旋回中心までの距離により規定される前記一対の第1アームの長さは300mmであり、前記第2アームの旋回長さ及び前記機具類保持部材の旋回長さは、好ましくはそれぞれ100mm〜150mm及び50mm〜70mmであり、更に好ましくはそれぞれ140mm及び60mmであることを特徴とする請求項4に記載の機具類保持用バランサ装置。
前記第1旋回中心から前記第2旋回中心までの距離により規定される前記一対の第1アームの長さは300mmであり、前記第2アームの旋回長さ及び前記機具類保持部材の旋回長さは、好ましくはそれぞれ100mm〜150mm及び50mm〜70mmであり、更に好ましくはそれぞれ140mm及び60mmであることを特徴とする請求項6に記載の機具類保持用バランサ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
工具保持用バランサ装置200には次のような問題があった。即ち、実際の組立作業は、工具先端部を被組立物の目標点に当接させて行うが、工具先端部の目標点への当接は次のように行われる。まず、一対の第2アーム218,219を下方へ揺動させることで作業工具を予備位置(例えば、目標点の上方20mmの位置)まで下降させ、この予備位置において目標点を定める。次に、作業工具を作業位置まで更に下降させて、工具先端部を目標点に当接させる。
【0013】
しかしながら、作業工具を予備位置から作業位置まで下降させると、これに伴い作業工具は水平方向へも大きく移動してしまう。従って、作業者は、この作業工具の水平方向への移動量を見越した上で目標点を定める必要があり、作業工具を正確に目標点へ移動させるのが難しかった。
【0014】
また、作業工具を例えば
図15(a)に示す位置E21から位置E22へ移動させる際には、作業者は次のようにして工具保持用バランサ装置200を操作する必要があった。即ち、作業者はまず、作業工具を把持して、これを手前に引く。すると、工具保持部材225が旋回中心P24を中心に図中時計周りに旋回する。次に、作業工具を更に手前に引くと、平行四辺形リンク機構M20が旋回中心P23を中心に図中時計周りに旋回する。その後、作業工具を位置E22へ向けて押すと、第1アーム208は旋回中心P25を中心に図中反時計回りに旋回し、これにより作業工具を位置E22へ位置づけることができる。ここで、平行四辺形リンク機構M20の旋回角度(旋回量)が足りないと、作業工具を位置E22へ向けて押した際に、第1アーム208は逆に図中時計回りに旋回してしまい、作業工具を目的の位置E22へ移動させることができない。このように、平行四辺形リンク機構M20を大きく旋回させる必要があることから、工具保持用バランサ装置200では作業工具の移動に要する作業者の動作量が大きくなり、その分だけ無駄な動作が多くなり、スムーズな作業が行えなかった。
【0015】
また、従来より、例えばテーブル等に並べられた多数の物品の記録写真を撮影することが行われており、このような撮影の際における負担を軽減できるバランサ装置に対する要望があった。更に、工具や撮影機材に限らず、調理具や大工道具等、種々の機具類を用いた作業においても同様の要望が存在していた。
【0016】
本発明の目的は、構成がシンプルで、目標点を容易に定めることができる機具類保持用バランサ装置を提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、よりスムーズな作業を実現できる機具類保持用バランサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に記載の機具類保持用バランサ装置は、
作業者が把持する機具類の先端を目標点に当接させて行う作業において用いられる機具類保持用バランサ装置であって、
実質上垂直に延びるように設けられる支柱と、前記支柱に取り付けられた基部側リンク金具と、前記基部側リンク金具に後端部が第1旋回中心を中心として上下方向へ旋回自在に連結された一対の第1アームと、前記一対の第1アームの先端部が第2旋回中心を中心として上下方向へ旋回自在に連結された中間リンク金具と、前記中間リンク金具に後端部が第3旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結され
、作業者が把持する機具類を支持するための機具類支持手段と、を備え、前記基部側リンク金具、前記一対の第1アーム、及び前記中間リンク金具は、平行四辺形リンク機構を構成し、前記一対の第1アームは待機位置と作業位置との間を前記第1旋回中心を中心として上下方向へ旋回自在であり、前記待機位置は前記作業位置の上方に位置し、
前記待機位置において、前記第1アームの先端部は前記第1アームの後端部よりも上方に位置し、前記作業位置において、
前記機具類の先端は目標点に当接され、前記一対の第1アームは実質上水平方向に延びることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の
請求項2に記載の機具類保持用バランサ装置は、前記機具類支持手段は、前記中間リンク金具に後端部が第3旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された第2アームから構成され、前記第2アームの先端部に機具類が取り付けられることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の
請求項3に記載の機具類保持用バランサ装置は、前記機具類支持手段は、前記中間リンク金具に後端部が第3旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された第2アームと、前記第2アームの先端部が第4旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された先端側リンク金具と、前記先端側リンク金具に取り付けられた機具類保持部材と、を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の
請求項4に記載の機具類保持用バランサ装置は、前記基部側リンク金具は、前記支柱に対して第5旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結され、前記第3旋回中心から前記第4旋回中心までの距離により規定される前記第2アームの旋回長さは、前記第5旋回中心から前記第3旋回中心までの距離により規定される前記平行四辺形リンク機構の旋回長さよりも短く、前記第4旋回中心から前記機具類保持部材に保持された機具類の中心軸までの距離により規定される前記機具類保持部材の旋回長さは、前記第2アームの旋回長さよりも短いことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の
請求項5に記載の機具類保持用バランサ装置は、前記第1旋回中心から前記第2旋回中心までの距離により規定される前記一対の第1アームの長さは300mmであり、前記第2アームの旋回長さ及び前記機具類保持部材の旋回長さは、好ましくはそれぞれ100mm〜150mm及び50mm〜70mmであり、更に好ましくはそれぞれ140mm及び60mmであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の
請求項6に記載の機具類保持用バランサ装置は、
作業者が把持する機具類の先端を目標点に当接させて行う作業において用いられる機具類保持用バランサ装置であって、実質上垂直に延びるように設けられる支柱と、前記支柱に取り付けられた基部側リンク金具と、前記基部側リンク金具に後端部が第1旋回中心を中心として上下方向へ旋回自在に連結された一対の第1アームと、前記一対の第1アームの先端部が第2旋回中心を中心として上下方向へ旋回自在に連結された中間リンク金具と、前記中間リンク金具に後端部が第3旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された第2アームと、前記第2アームの先端部が第4旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結された先端側リンク金具と、前記先端側リンク金具に取り付けられ
、前記機具類を保持するための機具類保持部材と、を備え、前記基部側リンク金具、前記一対の第1アーム、及び前記中間リンク金具は、平行四辺形リンク機構を構成し、前記基部側リンク金具は、前記支柱に対して第5旋回中心を中心として水平方向へ旋回自在に連結され、前記第3旋回中心から前記第4旋回中心までの距離により規定される前記第2アームの旋回長さは、前記第5旋回中心から前記第3旋回中心までの距離により規定される前記平行四辺形リンク機構の旋回長さよりも短く、前記第4旋回中心から前記機具類保持部材に保持された
前記機具類の中心軸までの距離により規定される前記機具類保持部材の旋回長さは、前記第2アームの旋回長さよりも短いことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の
請求項7に記載の機具類保持用バランサ装置は、前記第1旋回中心から前記第2旋回中心までの距離により規定される前記一対の第1アームの長さは300mmであり、前記第2アームの旋回長さ及び前記機具類保持部材の旋回長さは、好ましくはそれぞれ100mm〜150mm及び50mm〜70mmであり、更に好ましくはそれぞれ140mm及び60mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の請求項1に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、第1アームの第1旋回中心を通る第1軸線及び一対の第1アームの第2旋回中心を通る第2軸線は、支柱の軸線と実質上平行となるように構成され、作業位置において、一対の第1アームは実質上水平方向に延びるため、一対の第1アームを作業位置へ向けて下方へ旋回させる際における機具類の水平方向移動量を少なくでき、目標点を容易に定めることができる。
【0029】
また、本発明の
請求項2に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、第2アームの先端部に機具類が取り付けられるので、機具類保持用バランサ装置全体の構成をシンプルにできる。また、本発明の
請求項3に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、機具類支持手段は第4旋回中心を有するので、より細かい作業動作に対応できる。
【0030】
また、本発明の
請求項4に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、第2アームの旋回長さは平行四辺形リンク機構の旋回長さより短いため、機具類保持部材により保持された機具類を移動させる際に、第2アームを大きく旋回させることなく平行四辺形リンク機構を所望の方向へ旋回させることができ、機具類の移動に要する作業者の動作量を減らすことができる。
【0031】
また、本発明の
請求項5に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、作業領域を過度に制限することなく装置全体をコンパクト化できると共に、空動作を減らして作業性を向上できる。
【0033】
また、本発明の
請求項6に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、第2アームの旋回長さは平行四辺形リンク機構の旋回長さより短いため、機具類保持部材により保持された機具類を移動させる際に、第2アームを大きく旋回させることなく平行四辺形リンク機構を所望の方向へ旋回させることができ、機具類の移動に要する作業者の動作量を減らすことができる。
【0034】
また、本発明の
請求項7に記載の機具類保持用バランサ装置によれば、作業領域を過度に制限することなく装置全体をコンパクト化できると共に、空動作を減らして作業性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
[第1実施形態]
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る機具類保持用バランサ装置について説明する。なお、本発明に従う機具類保持用バランサ装置は、機具類を保持するものであって、この機具類としては、大工道具、農具、漁具、電動工具、ハンダ、こて、測定具、調理具(刃物、加工具、加熱具など)、撮影機器(カメラ、ビデオカメラ、光学機器)、スタンプ、ペーパー加工具、プロジェクタ等、種々の道具や機器、機材等が挙げられる。ここでは機具類として電動ドリルなどの作業工具Tを用いた場合を例に説明する。
【0037】
図1において、図示の機具類保持用バランサ装置1は、矩形状の基台2と、基台2から実質上垂直上方に延びる支柱3と、支柱3に対して水平方向に旋回自在に連結された平行四辺形リンク機構Mと、平行四辺形リンク機構Mに対して水平方向に旋回自在に連結された機具類支持手段Nと、を備える。機具類支持手段Nは、平行四辺形リンク機構Mに対して水平方向に旋回自在に連結された第2アーム18と、第2アーム18に対して水平方向へ旋回自在に連結された先端側リンク金具26と、先端側リンク金具26に連結された機具類保持部材25とを備え、機具類保持部材25に作業工具Tが取り付けられて保持される。以下、これら各部材について詳述する。
【0038】
基台2は、組立作業などを行う作業台Dに取付ねじ(図示せず)などによって取り付けられる。支柱3は、その下端部が基台2により固定され、実質上垂直上方に延びる。平行四辺形リンク機構Mは、基部側リンク金具6と、一対の第1アーム8,9と、中間リンク金具16と、を備える。基部側リンク金具6は、支柱3に上下方向に位置調整自在、且つ旋回中心P6(第5旋回中心)を中心として水平方向に旋回自在に装着されている。旋回中心P6は支柱3の軸線C1と一致する。
【0039】
図2及び
図3をも参照して、基部側リンク金具6は略コ字状であり、一対の側壁6a,6bと、これら側壁6a,6bを接続する接続壁6cとを有し、この基部側リンク金具6の開放された一端部(具体的には一対の側壁6a,6b間)に第1アーム8,9の後端部が旋回自在に連結されている。本実施形態では、両端部に雄ねじ部が設けられた連結軸19が用いられ、側壁6a,6b間に第1アーム8,9を位置付け、これらを通して連結軸19を挿通し、側壁6a,6bから突出する連結軸19の両端部に取付ナット20を螺着することによって、第1アーム8,9の後端部が連結軸19を介して旋回自在に連結される。
【0040】
一対の側壁6a,6bの上端部及び下端部間にはスリーブ軸受10が装着され、これらスリーブ軸受10は軸受支持部材11より支持され、この軸受支持部材11が基部側リンク金具6に装着されている。当該構成により、基部側リンク金具6は支柱3に対して一対のスリーブ軸受10及び一対の軸受支持部材11を介して回動自在(即ち水平方向へ旋回自在)に支持される。
【0041】
下側の軸受支持部材11の下側には、下ストッパ部材12が装着され、この下ストッパ部材12は固定用ねじ121により支柱3に対して上下位置調整自在に取り付けられている。また、上側の軸受支持部材11の上側には、上ストッパ部材13が装着され、この上ストッパ部材13が固定用ねじ131により支柱3に対して上下位置調整自在に取り付けられている。このような構成により、下ストッパ部材12及び上ストッパ部材13の上下方向位置を調整することによって、基部側リンク金具6の上下方向(支柱3の軸線C1方向)の装着位置を調整することができる。
【0042】
図4及び
図5を参照して、一対の第1アーム8,9の先端部は、中間リンク金具16に旋回自在に連結されている。中間リンク金具16は、一対の側壁16a,16bと、側壁16a,16bを接続する接続壁16cとを有し、第1アーム8,9の基部側リンク金具6への連結と同様に、連結軸22を介して第1アーム8,9の先端部が中間リンク金具16の後端側に旋回自在に連結され、連結軸22の軸線が第1アーム8,9の先端部の旋回中心P2(第2旋回中心)となる。
【0043】
中間リンク金具16の先端部は、連結軸30を介して第2アーム18の後端部に対し水平方向に旋回自在に連結されている。より具体的に、連結軸30は、中間リンク金具16の先端部と、中間リンク金具16の先端部下方に位置する第2アーム18の後端部に挿通され、取付ナット31に螺着されて保持される。かかる構成により、連結軸30の軸線が第2アーム18の後端部の旋回中心P3(第3旋回中心)となり、第2アーム18は旋回中心P3を中心に水平方向に旋回自在とされる。
【0044】
図1及び
図6を参照して、第2アーム18の先端部は、先端側リンク金具26に対して水平方向に旋回自在に連結されている。より具体的に、先端側リンク金具26は、下壁26aと、上壁26bと、これら下壁26aと上壁26bとを接続する接続壁26cとを有する。第2アーム18の先端部は、連結軸40を介して先端側リンク金具26の下壁26a及び上壁26bに旋回自在に連結される。かかる構成により、連結軸40の軸線が第2アーム18の先端部の旋回中心P4(第4旋回中心)となり、先端側リンク金具26は旋回中心P4を中心に水平方向に旋回自在とされる。
【0045】
図6及び
図7を参照して、先端側リンク金具26には機具類保持部材25が取り付けられる。機具類保持部材25は、機具類取付本体25aと、機具類取付キャップ25bとを有し、機具類取付本体25aは、一対のボルト42により先端側リンク金具26の接続壁26cに着脱可能に取り付けられ、機具類取付キャップ25bは、複数個(本実施形態では4個)のボルト43により機具類取付本体25aに取付られる。本実施形態において、作業工具Tは、機具類取付本体25a及び機具類取付キャップ25bにより規定された保持空間Hに挿通された状態で保持される。なお、以下の説明において、機具類保持部材25により保持された作業工具Tの中心軸(保持空間Hの中心軸)を特に機具類中心軸P5と称する。
【0046】
このような構成により、基部側リンク金具6と中間リンク金具16とは一対の第1アーム8,9を介して旋回自在に連結され、一対の第1アーム8,9は基部側リンク金具6と中間リンク金具16との間を上下方向に間隔をおいて実質上平行に延びる。中間リンク金具16と先端側リンク金具26とは第2アーム18を介して旋回自在に連結される。そして、
図1に示す様に、第2アーム18の水平姿勢を維持した状態で、基部側リンク金具6に対して一対の第1アーム8,9が旋回中心P1(第1旋回中心)を中心として上下方向に旋回動することが許容される。
【0047】
この機具類保持用バランサ装置1における動きは、次の通りである。
図1を参照して、機具類保持部材25に保持された作業工具Tを下方(又は上方)に移動すると、一対の第1アーム8,9は第1旋回中心P1を中心として下方(又は上方)に旋回され、またこの作業工具Tを前側(又は後側)(
図1における左右方向)に移動すると、第2アーム18は第3旋回中心P3を中心として前方(又は後方)に旋回される。また、作業工具Tを大きく前側(又は後側)に移動すると、基部側リンク金具6が旋回中心P6を中心として前側(又は後側)に旋回され、かかる旋回動によって、基部側リンク金具6と一体的に一対の第1アーム8,9、中間リンク金具16、第2アーム18、先端側リンク金具26、及び機具類保持部材25も一体的に前側(又は後側)に旋回される。更に、作業工具Tを小さく前側(又は後側)に移動すると、機具類保持部材25が先端側リンク金具26と共に旋回中心P4を中心として前側(又は後側)に旋回される。実際の組付作業においては、作業工具Tは複雑な動きで移動されるために、機具類保持用バランサ装置1の動きは、上述した動きの組み合わさったものとなる。
【0048】
ここで、第1アーム8,9の後端部の旋回中心P1,P1を通る軸線C2(第1軸線)、及び第1アーム8,9の先端部の旋回中心P2,P2を通る軸線C3(第2軸線)は、支柱3の軸線C1に実質上平行となるように構成されている。また、軸線C2と軸線C3間の距離L1が第1アーム8,9の長さであり、L1=300mmであるのが好ましい。更に、旋回中心P6とP3との間の距離R1は平行四辺形リンク機構Mの旋回長さであり、旋回中心P3とP4との間の距離R2は第2アーム18の旋回長さであり、旋回中心P4と機具類中心軸P5との間の距離R3は機具類保持部材25の旋回長さである。本実施形態においては、R1>R2>R3となるように設定され、例えばR1=382mmである。また、R2=100mm〜150mm、R3=50〜70mmであるのが好ましく、R2=140mm、R3=60mmであるのが更に好ましい。このように各値を設定することにより、作業領域を過度に制限することなく装置全体のコンパクト化が図られると共に、無駄な動作(空動作)を減らして作業性を向上できる。
【0049】
図1及び
図4を参照して、上側の第1アーム8の下面には規制手段としての当接片81が設けられ、この当接片81が下側の第1アーム9の上面に当接することによって、一対の第1アーム8,9の上限位置を越える旋回移動が阻止される。尚、この当接片81は、上側の第1アーム8に代えて、下側の第1アーム9の上面に設けるようにしてもよい。また、当接片81を上下方向に位置調整可能とすることにより、一対の第1アーム8,9の上限位置を調節可能とすることもできる。
【0050】
図4及び
図7を参照して、この機具類保持用バランサ装置1には、第1アーム8,9に作用する負荷とバランスをとるための付勢手段86が更に設けられている。図示の形態では、付勢手段86は一対の第1アーム8,9間に介在された4本のコイルばね86a〜86dから構成されている。これらコイルばね86a〜86dは、第1アーム8,9に設けられた貫通孔(図示せず)に挿入された支持ピン87a〜87dによって第1アーム8,9に対して回動可能に支持されている。そして、
図4に示すように、支持ピン87aの装着位置(即ちコイルばね86a,86bの一端側の上側第1アーム8への装着位置)が支持ピン87bの装着位置(即ちコイルばね86a,86bの他端側の下側第1アーム9への装着位置)よりも基部側リンク金具6側に配置され、支持ピン87cの装着位置(即ちコイルばね86c,86dの一端側の上側第1アーム8への装着位置)が支持ピン87dの装着位置(即ちコイルばね86c,86dの他端側の下側第1アーム9への装着位置)よりも基部側リンク金具6側に配置されている。
【0051】
このような位置関係に配置することによって、コイルばね86a〜86dの戻り弾性力を利用して第1アーム8,9を第1旋回中心P1を中心として上方に偏倚させることができ、この戻り弾性力は、第1アーム8,9を下方に旋回させるほど大きくなる。このようなことから、第1アーム8,9が上記上限位置となる旋回角度位置を待機位置とすることができ、作業者が作業工具Tを離すと、第1アーム8,9はコイルばね86a〜86dの作用によって待機位置に戻る。
【0052】
そして、第1アーム8,9の後端部の旋回中心P1,P1を通る軸線C2、及び第1アーム8,9の先端部の旋回中心P2,P2を通る軸線C3は、支柱3の軸線C1に実質上平行即ち実質上垂直方向に延びるように構成されていることから、
図1に実線で示す位置が第1アーム8,9の待機位置となる。即ち、第1アーム8,9が待機位置にあるとき、その先端部は後端部よりも上方に位置する(中間リンク金具16が基部側リンク金具6よりも上方に位置する)。そして、第1アーム8,9を待機位置から下方に旋回させ、第1アーム8,9が実質上水平方向に延びる水平位置(
図1に二点鎖線で示す位置)が、実際に作業を行う作業位置とされる。
【0053】
ここで、機具類保持用バランサ装置1を用いた組立作業等においては、作業工具Tの工具先端部を被組立物W(
図1)の目標点Gに当接させるが、工具先端部の目標点Gへの当接は上述した従来技術の場合と同様に、次のように行われる。まず、作業工具Tを予備位置(例えば、目標点の上方20mmの位置)まで下降させ、目標点Gを定める。次に、作業工具Tを作業位置まで更に下降させ、工具先端部を目標点Gに当接させる。このとき、本実施形態においては、上述したように第1アーム8,9が実質上水平に延びる状態を作業位置としているため、作業工具Tを予備位置から作業位置へ移動させても、作業工具Tの水平方向における移動量を、
図15に示す従来の構造におけるものと比較して小さくできる。
【0054】
従って、作業者は、工具先端部と目標点Gとを容易に当接させることができ、作業性が向上すると共に、機具類保持用バランサ装置に不慣れな者であっても、比較的容易に所望の作業を行うことができる。
【0055】
また、第2アーム18の旋回長さR2は、平行四辺形リンク機構Mの旋回長さR1より短いので、作業工具Tを保持した状態で作業工具Tを水平方向へ移動させる際の作業性を向上できる。より具体的に、例えば機具類保持用バランサ装置1に保持された作業工具Tを、
図7に示す位置E1から位置E2へ移動させるためには、作業者は作業工具Tを把持して、これを手前に引く。すると、先端側リンク金具26は機具類保持部材25と共に旋回中心P4を中心に図中時計周りに旋回する。この状態で作業者が作業工具Tを更に手前に引くと、第2アーム18は旋回中心P3を中心に図中時計周りに旋回し、例えば
図8に示す状態となる。次に、作業工具Tを位置E2へ向けて矢印A方向へ押すと、平行四辺形リンク機構Mが旋回中心P6を中心に図中反時計回りに旋回し、これにより作業工具Tを位置E2へ位置づけることができる。
【0056】
ここで、
図15に示す従来の構造では、第1アーム208の旋回長さR21よりも平行四辺形リンク機構M20の旋回長さR22の方が長いため、第1アーム208を例えば
図15(a)において反時計回りに確実に旋回させるためには、平行四辺形リンク機構M20を
図15(a)に示す状態から図中時計回りに大きく旋回させる必要があった。これに対し、本実施形態においては、第2アーム18の旋回長さR2は平行四辺形リンク機構Mの旋回長さR1より短いので、
図8において第2アーム18の旋回角度θ1が比較的小さくても、平行四辺形リンク機構Mを確実に図中反時計回りに旋回させることができる。
【0057】
このように、本実施形態によれば、第2アーム18を大きく旋回させなくても平行四辺形リンク機構Mを確実に所望の通りに旋回させることができ、従って少ない動作量で作業工具Tを所望の位置へ移動させることができ、無駄な動作を減らしたスムーズな移動を実現できる。また、平行四辺形リンク機構Mを旋回させる際に要する力の大きさも小さくできる。
【0058】
以上、詳述したように、本実施形態における機具類保持用バランサ装置1では、目標点を容易に定めることができると共に、作業工具Tの水平方向への移動をスムーズに行うことができるため、微細/精密な作業を行うに際して好適に用いられ、また機具類保持用バランサ装置の扱いに不慣れな者であっても、比較的容易に使いこなすことができる。更に、構成がシンプルなため、製造コストを抑えることができる。
【0059】
なお、本実施形態においては、第1アーム8,9が実質上水平方向に延びる位置を作業位置としたが、「実質上水平方向」は厳密に水平方向である必要はなく、例えば水平方向に対して±5°の範囲であれば、水平方向を作業位置とした場合と同様の効果を問題なく得ることができる。
【0060】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る機具類保持用バランサ装置について、
図9〜
図12を参照して説明する。なお、以下の説明において、上述した第1実施形態に係る機具類保持用バランサ装置1と実質同一の部材には同一の参照番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0061】
図9〜
図11を参照して、図示の機具類保持用バランサ装置1Aは、平行四辺形リンク機構M1と、平行四辺形リンク機構M1に対して水平方向に旋回自在に連結された機具類支持手段N1とを備える。平行四辺形リンク機構M1には、コイルばね86c,86dに代えてブレーキユニット90が設けられている。このブレーキユニット90の作用により、作業者が機具保持用バランサ装置1Aから手を離しても、第1アーム8,9はコイルばね86a,86bの作用によって待機位置に戻ることはなく、第1アーム8,9は作業者が手を離した状態(位置)で維持される。
【0062】
機具類支持手段N1は、平行四辺形リンク機構M1に対して水平方向に旋回自在に連結された第2アーム18Aから構成されている。この第2アーム18Aは側面視略コ字型に構成され、連結軸30を介して平行四辺形リンク機構M1の中間リンク金具16に連結されている。また、この連結軸30にはブレーキ機構91が設けられている。このブレーキ機構91は、旋回ブレーキハンド91a、ブレーキ板91b、及び皿スプリング91cを備え、旋回ブレーキハンド91aを所定方向へ旋回させることにより、第2アーム18Aの中間リンク金具16に対する水平方向における角度位置が固定され、反対方向へ旋回させることにより、第2アーム18Aが中間リンク金具16に対して旋回できるように構成されている。
【0063】
第2アーム18Aの先端には、図示しない連結部材を介して機具類が連結されて保持される。本実施形態においては、機器類として撮影機材Sを用いた。
図12をも参照して、この撮影機材Sは、第2アーム18Aの先端に固定された雲台71と、雲台71に固定支持されたガイドバー72と、ガイドバー72に対してスライド自在に支持された複数個(
図12の例では3個)の連結金具73と、連結金具73の各々に固定されたカメラ74及び一対の照明機材75とを備える。カメラ74は、レンズ74aを下に向けて取り付けられ、作業者はカメラモニタ74bで被写体Oを確認しながら撮影できるようにされている。なお、
図12に示す例では、第2アーム18Aの上部にTVモニタ76を固定し、作業者はカメラモニタ74bだけでなく、TVモニタ76をも用いて被写体Oを確認できるようにしている。
【0064】
この機具類保持用バランサ装置1Aにおける動きは、次の通りである。
図9を参照して、第2アーム18Aに固定された撮影機材Sを下方(又は上方)に移動すると、一対の第1アーム8,9は第1旋回中心P1を中心として下方(又は上方)に旋回され、またこの撮影機材Sを前側(又は後側)(
図9における左右方向)に移動すると、第2アーム18Aは第3旋回中心P3を中心として前方(又は後方)に旋回される。また、撮影機材Sを大きく前側(又は後側)に移動すると、基部側リンク金具6が旋回中心P6を中心として前側(又は後側)に旋回され、かかる旋回動によって、基部側リンク金具6と一体的に一対の第1アーム8,9、中間リンク金具16、第2アーム18Aも一体的に前側(又は後側)に旋回される。
【0065】
本実施形態においても、
図9に示す位置が第1アーム8,9の待機位置となり、第1アーム8,9が実質上水平方向に延びる水平位置が、実際に作業(撮影等)を行う作業位置とされるので、上述した第1実施形態の場合と同様に、機具類を予備位置から作業位置へ移動させても、機具類の水平方向における移動量を、
図15に示す従来の構造におけるものと比較して小さくでき、これにより目標点を容易に定めることができる。
【0066】
また、本実施形態における機具類保持用バランサ装置1Aは、旋回中心P4を有しない機具類支持手段N1を備えるため、旋回中心P4を有する機具類支持手段Nを備えた第1実施形態の機具類保持用バランサ装置1と比較して、構成を簡単にできる。
[実施例と比較例]
本発明の効果を確認するために、実施例として
図1に示す機具類保持用バランサ装置を用いると共に、比較例として
図15に示す従来の工具保持用バランサ装置を用い、仮に設定した予備位置から仮に設定した作業位置への作業工具の移動に伴う作業工具の水平方向への移動量の例を、次の条件で算出した。
【0067】
予備位置から作業位置までの上下方向における距離:20mm
第1アーム8,9の長さL1:300mm
作業位置における第1アーム8,9の水平方向に対する傾き角度:0°
第2アーム218,219の長さL21:300mm
作業位置における第2アーム218,219の水平方向に対する傾き角度θ2:70°
上記条件より、実施例における作業工具の水平方向への移動量X1は式1より求められる。
【0068】
【数1】
一方、比較例における作業工具の水平方向への移動量X25は式2より求められる。
【0069】
【数2】
このように、実施例では作業工具の水平方向への移動量X1は約0.7mm、比較例では作業工具の水平方向への移動量X25は約43.7mmであり、実施例の方が水平方向への移動量が大幅に少ないことが確認できた。
【0070】
なお、比較例における水平方向の移動量X25は、第2アーム218,219の先端側旋回中心の中間点が
図16に示す位置P37から位置P38へ移動した際の移動量と等しいが、当該中間点が位置P31から位置P32へ上下方向へ20mm移動した際における水平方向の移動量X21、位置P32から位置P33へ上下方向へ20mm移動した際における水平方向の移動量X22、位置P34から位置P35へ上下方向へ20mm移動した際における水平方向の移動量X23、及び位置P35から位置P36へ上下方向へ20mm移動した際における水平方向の移動量X24についても同様に算出したところ、結果は次の通りであった。
X21≒2.4mm
X22≒3.8mm
X23≒12.5mm
X24≒14.9mm
実施例における移動量X1は何れの値(X21〜X24)もよりも小さく、本発明の効果が確認できた。
【0071】
以上、本発明の実施形態に係る機具類保持用バランサ装置について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0072】
例えば、
図13に示す様に、組立工場の天井C等に基台2を取り付け、支柱3がこの基台2から実質上垂直下方に延びるように構成することもできる。
【0073】
また、上記実施形態においては、軸線C2及び軸線C3が実質上垂直方向に延びるように構成したが、機具類(作業工具T等)の待機位置が作業位置の上方に位置し、作業位置において一対の第1アーム8,9が実質上水平方向に延びる構成であれば、軸線C2及び軸線C3は必ずしも実質上垂直方向に延びる必要はない。
【0074】
更に、上述した第1及び第2実施形態からも理解されるように、第2アーム(18、18A)の形状に制限はなく、例えば、上述した第1実施形態において、第2アーム18に代えて側面視略コ字型の第2アームを用いることもできる。