特許第6041362号(P6041362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041362
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】固体酸化物燃料電池を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20161128BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20161128BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALI20161128BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01M8/02 E
   H01M8/12
   H01M8/02 K
   H01M8/02 Y
   H01M4/86 T
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-534816(P2014-534816)
(86)(22)【出願日】2012年10月7日
(65)【公表番号】特表2014-528636(P2014-528636A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2012059157
(87)【国際公開番号】WO2013052938
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年5月27日
(31)【優先権主張番号】61/544,367
(32)【優先日】2011年10月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】アラヴィンド・モハンラム
(72)【発明者】
【氏名】イエシュワンス・ナレンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハンソン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ガンヨン・リン
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−321706(JP,A)
【文献】 特表2009−522748(JP,A)
【文献】 特開2010−177187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/02
H01M 8/08 − 8/24
H01M 4/86
H01M 8/0202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物燃料電池(SOFC)物品を形成する方法であって、前記方法が、
電解質層と、
相互接続層と、
前記電解質層及び前記相互接続層の間に配設された第1の電極層とを含んだSOFCユニットセルを単一の焼結プロセスにおいて形成する工程と、
前記単一の焼結プロセスから分離した第2の焼結プロセスにおいて形成され、前記相互接続層を覆う第2の電極層を接合する工程と、を含み、
前記電解質層が、電解質焼結温度を有し、
前記相互接続層が、相互接続焼結温度を有し、
前記第1の電極が、第1の電極焼結温度を有し、
前記SOFCユニットセルを単一の焼結プロセスで形成する工程が、前記第1の電極焼結温度未満で、前記電解質焼結温度を超え、前記相互接続焼結温度を超える焼結温度にて焼結する工程を含む、方法。
【請求項2】
電解質層が、前記第1の電極層と直接接触し、前記相互接続層が、前記第1の電極層と直接接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の電極層が、イットリア安定化ジルコニアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
形成する工程が、第1の焼結温度において前記SOFCユニットセルを等温で保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の電極層は、前記電解質層と直接接する第1の機能性層部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電極層は、前記第1の機能性層部分に直接接する第1のバルク層部分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
拡散接合が、前記相互接続層及び前記第1の電極層の構成要素間に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記単一の焼結プロセスが、大気圧の圧力にて行われる焼結プロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記焼結されたSOFCユニットセル上に第2の電極層の部分を形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質層がジルコニアを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記SOFCユニットセルが、150μm以下の平均反りを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電解質層が、1mm以下の平均厚さを含み、前記相互接続層が、1mm以下の平均厚さを含み、前記電解質層が理論密度の少なくとも95%の密度を含み、前記電解質層が、5体積%以下の多孔性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電解質層が、前記第1の電極層のCTE未満の熱膨張(CTE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記相互接続層が、前記第1の電極層のCTE未満の熱膨張(CTE)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記電解質層が、前記相互接続層のCTEと同じ熱膨張(CTE)を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、固体酸化物燃料電池(SOFC)及びSOFCを形成する方法を対象とし、特にSOFCユニットセルを形成する単一の自由焼結プロセスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、化学反応によって電気を発生させるデバイスである。種々の燃料電池のうち、固体酸化物燃料電池(SOFC)は、硬質のセラミック化合物金属(例えばカルシウム又はジルコニウム)酸化物を電解質として使用する。通常、固体酸化物燃料電池において、酸素ガス、例えばOは、カソードにおいて酸素イオン(O2−)に還元され、燃料ガス、例えばH2ガスは、アノードにおいて酸素イオンで酸化されて、水を形成する。
【0003】
場合によっては、燃料電池アセンブリはスタックとして設計されており、これは、カソード、アノード、及びこのカソードとアノードとの間の固体電解質を含む。各スタックはサブアセンブリと考えられることができ、これは他のスタックと組み合わせて、完全なSOFC物品を形成できる。SOFC物品を組み立てる際、電気的な相互接続が、一方のスタックのカソードと、別のスタックのアノードとの間に配設され得る。
【0004】
しかし、個々の燃料電池のスタックは、それらの形成又は使用中の温度変動によって生じる損傷を受け易いことがある。特に、種々の構成要素を形成するために使用される材料(異なる組成のセラミックを含む)は、明らかに異なる本質的な化学的及び電気的特性を示し、それがSOFC物品の故障及び欠陥を生じ得る。特に、燃料電池は、温度変化に対する耐性が限られている。温度変化によって生じる機械的ストレスに関連する問題は、個々の燃料電池が積み重ねられる場合に悪化する。燃料電池、特にスタックに組み立てられた燃料電池の限られた熱衝撃抵抗性は、製造収率を制限し、作動中は欠陥のリスクが増す。
【0005】
更に、SOFC物品の製作には独自の懸念がある。組成が異なる層の層化及び焼結に関連する懸念は、SOFC製造の最も厄介な問題の1つである。現在の手法は、複数工程の焼成プロセス又は一工程のホットプレス加工、及び金属の相互接続材料の使用に集中している。この産業では、改善されたSOFC物品及び形成方法が求め続けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様によれば、固体酸化物燃料電池(SOFC)物品を形成するための方法は、SOFCユニットセルを単一の自由焼結プロセスにおいて形成する工程を含み、このSOFCユニットセルは、電解質層、相互接続層、及びこの電解質層と相互接続層との間に配設される第1の電極層で構成され、ここでこの電解質層は形成後に圧縮状態である。
【0007】
別の態様において、固体酸化物燃料電池(SOFC)物品を形成するための方法は、グリーン電解質層、グリーン相互接続層、及びこの電解質層と相互接続層との間に配設される第1のグリーン電極層を有するグリーンSOFCユニットセルを形成する工程を含む。この方法は更に、単一焼結プロセスにおいてグリーンSOFCユニットセルを焼結して、焼結されたSOFCユニットセルを形成する工程を含み、ここで拡散結合が、相互接続層の構成要素と第1の電極層の構成要素との間に形成される。
【0008】
更に別の態様において、固体酸化物燃料電池(SOFC)物品を形成するための方法は、電解質層、相互接続層、及びこの電解質層と相互接続層との間に配設され、それらと直接接触したアノード層を有するグリーンSOFCユニットセルを、このアノード層と相互接続層との間及びこの電解質層とアノード層との間に介在緩衝剤層なしで形成する工程を含む。この方法は更に、単一の自由焼結プロセスにおいてグリーンSOFCユニットセルを焼結する工程を含む。
【0009】
別の態様によれば、固体酸化物燃料電池(SOFC)物品を形成するための方法は、電解質焼結温度を有する電解質層を形成し、相互接続焼結温度を有する相互接続層を形成し、電解質層と相互接続層との間に配設される第1の電極層を形成することによってSOFCユニットセルを形成する工程を含み、この第1の電極が第1の電極焼結温度を有する。単一焼結プロセスにおいてSOFCユニットセルを製造する間、焼結は、第1の電極焼結温度未満で、電解質焼結温度を超え、相互接続焼結温度を超える焼結温度にて行われる。
【0010】
別の態様によれば、固体酸化物燃料電池(SOFC)物品を形成するための方法は、単一の自由焼結プロセスにおいてSOFCユニットセルを形成する工程を含み、このSOFCユニットセルが、第1のカソード層、第1のカソード層を覆う電解質層、電解質層を覆うアノード層、アノード層を覆う相互接続層、及び相互接続層を覆う第2のカソード層を有する。
【0011】
本開示は、良好に理解されることができ、添付の図面を参照することによって当業者に、明らかなその多数の特徴及び利点を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に従うSOFCユニットセルの例示である。
図2】実施形態に従うSOFCユニットセルの例示である。
図3】実施形態に従うSOFCユニットセルの例示である。
図4】実施形態に従うSOFCユニットセルの例示である。
図5】実施形態に従うSOFCユニットセルの例示である。
図6】実施形態に従って形成されるユニットセルの一部の断面SEM画像を含む。
図7】実施形態に従って形成されたユニットセルの一部の断面SEM画像を含む。
図8】実施形態に従って形成されたユニットセルの一部の断面SEM画像を含む。
図9】実施形態に従って形成されたユニットセルの一部の断面SEM画像を含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
異なる図面において同じ参照記号の使用は、同様の又は同一のアイテムを示す。
【0014】
以下に、SOFCユニットセルを含む固体酸化物燃料電池(SOFC)物品及びSOFCユニットセルを形成する方法が記載される。図1は、実施形態に従うSOFCユニットセルの例示を含む。SOFCユニットセル100は、電解質層101、相互接続層107、及び電解質層101と相互接続層107との間に配設された電極層103を含み得る。特に、電解質層101は、電極層103に直接接触でき、相互接続層107は、電極層103と直接接触できる。
【0015】
図1に例示されるようにユニットセル100の構成要素の層を組み立てる前に、各層を、個々に形成できる。すなわち、これらの層は、グリーン層として別個に形成でき、ユニットセル100に共に組み立てられることができる。あるいは、層は、互いに連続してグリーン状態で形成されてもよく、こうして第1のグリーン電解質層101が形成され、その後グリーン電極層103は、グリーン電解質層101を覆って形成されることができ、その後グリーン相互接続層107は、グリーン電極層103を覆って形成できる。
【0016】
本明細書において、「グリーン」物品についての言及は、緻密化又はグレインの成長に影響を与える焼結が行われない材料を参照する。グリーン物品は、乾燥され、低含水量を有していてもよいが、不焼成の未仕上げの物品である。グリーン物品は、それ自体及びその上に形成された他のグリーン層を支持するのに好適な強度を有することができる。
【0017】
本明細書の実施形態に従って記載される層は、注型成形、堆積、印刷、押出、積層、ダイプレス加工、ゲル注型成形、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ロール圧密、射出成形及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない技術を通して形成できる。1つの特定の場合において、それぞれの層はスクリーン印刷を介して形成できる。別の実施形態において、それぞれの層は、テープキャスティングプロセスを介して形成できる。
【0018】
電解質層101は、無機材料、例えばセラミック材料を含むことができる。例えば、電解質層101は酸化物材料を含むことができる。一部の好適な酸化物は、ジルコニア(Zr0)、より詳細には安定剤又はドーパントのような他の元素を組み込むことができるジルコニア系材料を含むことができ、これはイットリア(Y)、イッテルビウム(Yb)、セリウム(Ce)、スカンジウム(Sc)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ランタン(La)、プラセドミウム(Pr)、ネオジミウム(Nd)、及びこれらの組み合わせのような元素を含むことができる。好適な電解質材料の特定の例としては、ScドープされたZrO、YドープされたZrO、YbドープされたZrO、Scドープされた及びCeOドープされたZrO、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。電解質層はまた、セリア(CeO)、及びより詳細にはセリア系材料、例えばSmドープされたCeO、GdドープされたCeO、YドープされたCeO、及びCaOドープされたCeOを挙げることができる。電解質材料としてはまた、ランダニド系材料、例えばLaGaOを挙げることができる。ランダニド系材料は、特定の元素(Ca、Sr、Ba、Mg、Co、Ni、Fe、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)でドープできる。特に、電解質材料としては、ランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)材料を挙げることができる。一部の代表的な電解質材料としては、La0.8SrGa0.8Mn、La0.8Sr0.2Ga0.8Mn0.15Co0.5、La0.9Sr0.1Ga0.8Mn、LaSrGaO、LaSrGa、又はLa0.90.1GaOが挙げられ、ここでAは、Sr、Ca、又はBaの群からの元素の1つを表す。1つの特定実施形態によれば、電解質層101は、8mol%のYでドープされたZrO(すなわち8mol%のYドープされたZrO)で構成できる。8mol%のYは、特定のドーパント、例えばAl及び/又はMnを有することができ、熱反応特徴を促進し、電解質材料の加工処理特徴を改善する。他の代表的な電解質材料としては、ドープされたイットリウム−ジルコネート(例えば、YZr)、ドープされたガドリニウム−チタネート(例えばGdTi)及びブラウンミラライト(brownmillerites)(例えばBaIn又はBaIn)を挙げることができる。
【0019】
電解質層101は、材料の特定の薄い平面層であることができる。例えば、電解質層101は、約1mm以下、例えば約500μm以下、例えば約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約50μm以下又は更には約25μm以下の平均厚さを有することができる。それでもなお、電解質層101は、少なくとも約1μm、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約5μm、少なくとも約8μm、又は少なくとも約10μmの平均厚さを有することができる。電解質層101の平均厚さは、上記で記述された最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内にある平均厚さを有することができることが理解される。
【0020】
電解質層101は、注型成形、堆積、印刷、押出、積層、ダイプレス加工、ゲル注型成形、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ロール圧密、射出成形、及びこれらの組み合わせを介して形成できる。電解質層101は、個々に、又は他の層の形成に続いて形成できる。例えば、電解質層101は、他の予め形成された層(例えば電極層103)の1つの上に形成できる。特に、特定の実施形態において、電解質層101の形成は、グリーンユニットセル100を形成する前に必ずしも焼結されない材料のグリーン層の形成を含み、これは次いで単一の自由焼結プロセスにおいて焼結される。
【0021】
電解質層101は、本明細書の実施形態に従うユニットセルの形成を促進する特定の粒径を有する粉末電解質材料から形成できる。例えば、粉末電解質材料は、約100μm未満、例えば約50μm未満、約20μm未満、約10μm未満、約5μm未満、又は更には約1μm未満の平均粒径を有することができる。それでもなお、特定の場合において、粉末電解質材料の平均粒径は、少なくとも約0.01μm、少なくとも約0.05μm、少なくとも約0.08μm、少なくとも約0.1μm、又は更には少なくとも約0.2μmであることができる。粉末電解質材料は、上記で記述された最小値及び最大値のいずれかを含む範囲内の平均粒径を有することができることが理解される。
【0022】
相互接続層107は、無機材料を含むセラミック材料を含むことができる。特に、相互接続層は、酸化物材料を含むことができ、より詳細には亜クロム酸塩又は酸化ニッケル材料であることができる。より詳細には、相互接続層107は、ランタン(La)、マンガン(Mn)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ニオビウム(Nb)、カルシウム(Ca)、ガリウム(Ga)、コバルト(Co)、イットリア(Y)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される元素を含むことができる。特定の場合において、相互接続層107は、酸化クロム系材料、酸化ニッケル系材料、酸化コバルト系材料、及び酸化チタン系材料(例えばランタニウムストロンチウムチタネート)を含むことができる。特に、相互接続層107は、材料、例えばLaSrCrO、LaMnCrO、LaCaCrO、YCrO、LaCrO、LaCoO、CaCrO、CaCoO、LaNiO、LaCrO、CaNiO、CaCrO、及びこれらの組み合わせで構成できる。特に、相互接続層107は、LST(又はYST)を含むことができ、本質的に、NbドープされたLST、例えば1つ以上のドーパントを有するLa0.2Sr0.8TiOからなってもよい。相互接続材料はAサイト欠陥材料を含んでいてもよいことが理解され、ここで例えば、ランタン又はストロンチウムカチオンによって通常占有される格子サイトは空であり、故にこの材料は、非化学量論的組成を有する。
【0023】
相互接続層107は、特に材料の薄い平面層であることができる。例えば、相互接続層107は、約1mm以下、例えば約500μm以下、例えば約300μm以下、約200μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約50μm以下、又は更には約25μm以下の平均厚さを有することができる。それでもなお、相互接続層107は、少なくとも約1μm、例えば少なくとも約2μm、少なくとも約5μm、少なくとも約8μm、又は少なくとも約10μmの平均厚さを有することができる。相互接続層107の平均厚さは、上記で記述された最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内の平均厚さを有することができることが理解される。
【0024】
相互接続層107は、電解質層101の形成と同様のプロセスを用いて形成でき、それらとしては、例えば注型成形、堆積、印刷、押出、積層、ダイプレス加工、ゲル注型成形、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ロール圧密、射出成形及びこれらの組み合わせが挙げられる。相互接続層107は、個々に形成されることでき、又は他の層の形成に続いて形成でき、こうして相互接続層107は、他の予め形成された層(例えば電極層103)の1つの上に形成できる。特に、特定の実施形態において、相互接続層107の形成は、材料のグリーン層の形成を含み、これは、グリーンユニットセル100の形成の前に必ずしも焼結されず、これが次いで単一の自由焼結プロセスにおいて焼結される。
【0025】
相互接続層107は、電解質層101のCTEと実質的に同じであってもよい熱膨張係数(CTE)を有することができる。特定の場合において、相互接続層107のCTEは、電解質層101のCTEと本質的に同じであることができる。
【0026】
相互接続層107は、本明細書の実施形態に従うユニットセルの形成を促進する特定の粒径を有する粉末相互接続材料から形成できる。例えば、粉末相互接続材料は、約100μm未満、例えば約50μm未満、約20μm未満、約10μm未満、約5μm未満、又は更には約1μm未満の平均粒径を有することができる。それでもなお、特定の場合において、粉末相互接続材料の平均粒径は、少なくとも約0.01μm、少なくとも約0.05μm、少なくとも約0.08μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.2μm、又は更には少なくとも約0.4μmであることができる。粉末相互接続材料は、上記で記述された最小値及び最大値のいずれかを含む範囲内の平均粒径を有することができることが理解される。
【0027】
SOFCユニットセル100は、電解質層101と相互接続層107との間に配設された電極層103を含むことができ、それはまた焼結されていなくてもよい(すなわちグリーン)。特に、電極層103は、電解質層101と直接接触できる。加えて、電極層103は、相互接続層107と直接接触できる。事実、特定の場合において、電極層103と電解質層101との間、又は電極層103と相互接続層107との間には必ずしも介在緩衝剤層が存在しなくてもよい。
【0028】
電極層103は、相互接続層107のCTEとは異なる熱膨張係数(CTE)を有することができる。更に、電極層103のCTEは、電解質層101のCTEとは異なることができる。特定の場合において、電極層103のCTEは、電解質層101のCTEを超えることができる。特定の他の例において、電極層103のCTEは、相互接続層107のCTEを超えることができる。
【0029】
1つの実施形態によれば、電極層103はアノードであることができる。特定の場合において、アノードは、サーメット材料、すなわちセラミックと金属性材料との組み合わせであることができる。一部の好適な金属としては、遷移金属種(例えばニッケル又は銅を含む)を含むことができる。アノードは、イオン性伝導体を含むことができ、それらとしては、例えばセラミック材料、特に酸化物材料が挙げられる。例えばアノードは、ニッケル及びジルコニア系材料で形成されてもよく、それらとして例えばイットリア安定化ジルコニアが挙げられる。あるいは、アノードはセリア系材料を含むことができ、それらとしては例えば酸化ガドリニウム安定化セリアが挙げられる。ニッケルは、アノードグリーン材料に含まれる酸化ニッケルの還元を通して製造できる。あるいは、特定の他のタイプの酸化物材料が電極層103に使用されてもよく、特にアノード、例えばチタナイト、マンガナイト、クロマイト、これらの組み合わせなどが使用されてもよいことが理解される。こうした酸化物はまたペロブスカイト材料であってもよいことが理解される。
【0030】
電極層103は、薄く、実質的に平面の材料層であることができる。電極層103は、電解質層101又は相互接続層107の平均厚さを超える平均厚さを有することができる。例えば、電極層103は、少なくとも約100μmの平均厚さを有することができ、こうして少なくとも約300μm、少なくとも約500μm、少なくとも約700μm又は更には少なくとも約1mmの平均厚さを有することができる。それでもなお、電極層103は、約5mm以下、例えば約2mm以下、約1.5mm以下、又は更には約1mm以下の平均厚さを有することができる。電極層103の平均厚さは、上記で記述された最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内の平均厚さを有することができることが理解される。
【0031】
電極層103は、本明細書の実施形態に従うユニットセルの形成を促進する特定の粒径を有する粉末電極材料から形成できる。例えば、粉末電極材料は、約100μm未満、例えば約50μm未満、約20μm未満、約10μm未満、約5μm未満、又は更には約1μm未満の平均粒径を有することができる。それでもなお、特定の場合において、粉末電極材料の平均粒径は、少なくとも約0.01μm、少なくとも約0.05μm、少なくとも約0.08μm、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.2μm、又は更に少なくとも約0.4μmであることができる。粉末電極材料は、上記で記述された最小値及び最大値のいずれかを含む範囲内の平均粒径を有することができることが理解される。
【0032】
電極層103は、多孔質層であることができる。多孔性は、チャンネルの形態であってもよく、これはSOFC物品に燃料を送達するために利用できる。チャンネルは、電極層103の体積全体を通して規則的な繰り返しパターンのような特定の様式で配列されてもよい。いずれかの好適な技術は、多孔性及び/又はチャンネルを形成するために使用されてもよく、それらとして例えば成形された消散性物(fugitives)を組み込み、エンボス加工し、チャンネルをテープに切断し、次いでテープを積層してチャンネルを規定し、プレフォームを通す押出を用い、パターニングされたロールを用いてロール圧密することを含む。
【0033】
消散性物のための可能性として種々の材料、例えばカソード層及びアノード層内のチャンネル又は通路を形成するために使用できるグラファイト又は繊維が存在する。消散性物は、SOFC物品を形成するための熱処理の間に揮発する又はガス放出する材料から選択できる。1つの実施形態において、消散性物は有機材料であることができる。消散性物の特定の好適な例としては、天然繊維、綿、靭皮繊維、縄索繊維、又は動物性繊維、例えば羊毛が挙げられる。あるいは、消散性物は、製造された材料、例えば再生セルロース、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、デンプン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル系、ポリビニル、ポリオレフィン樹脂、炭素繊維又はグラファイト繊維、又は液晶ポリマーであることができる。消散性物はまた、バインダー材料、例えば合成ゴム、熱可塑性材料、又はポリビニル及び可塑剤材料、例えばグリコール及びフタレート基であってもよい。別の実施形態において、材料は、パスタ、例えばスパゲッティであることができる。
【0034】
1つの実施形態によれば、SOFCユニットセル100は、グリーン相互接続層107、グリーン電極層103(すなわちアノード)、及びグリーン電解質層101を含むことができ、これらは焼成プロセスにおいて共に形成され、構成要素の層のそれぞれが共に焼結されて、統合された一体型の共焼結SOFCユニットセルを形成できる。1つの特定実施形態において、焼成プロセス(すなわち共焼成プロセス)は、自由焼結プロセスであることができ、ここでグリーンSOFCユニットセル100は、周囲圧力下で焼成される。すなわち、外部圧力は、焼結の間にSOFCユニットセル100に必ずしも適用されない。自由焼結プロセスは、温度変化及び焼結中に使用される雰囲気を考慮して、実質的に大気圧である圧力にて行われることができる。
【0035】
1つの実施形態において、自由焼結プロセスは、少なくとも約800℃、例えば少なくとも約900℃、少なくとも約1000℃、又は更に少なくとも約1100℃の焼結温度にSOFCユニットセルを加熱する工程を含むことができる。特定の場合において、焼結温度は、約1500℃以下、約1400℃以下、又は更には約1300℃であることができる。焼結温度は、上記で記述された最小温度と最大温度とのいずれかの間の範囲内にあることができることが理解される。
【0036】
自由焼結プロセスは、等温処理を含むことができる。例えば、SOFCユニットセル100は、特定の期間にわたって焼結温度にて保持されることができる。等温処理の期間は、少なくとも約10分、例えば少なくとも約20分、例えば少なくとも約30分、例えば少なくとも約40分、少なくとも約50分、少なくとも約60分、又は更には約90分であることができる。それでもなお、等温処理の期間は、約600分以下、約500分以下、約400分以下、約300分以下、約200分以下、又は更には約120分以下であることができる。焼結温度にて保持される等温期間は、上記で記述される最小期間と最大期間とのいずれかの間の範囲内であることができることが理解される。
【0037】
自由焼結プロセスは、特定の焼結雰囲気を利用できる。好適な雰囲気は、不活性種を含むことができ、こうしてSOFCユニットセル100の構成要素の層との反応が制限される。自由焼結の間、雰囲気は、約1atm以下の圧力に保持されてもよい。従って、等温処理中のユニットセルの圧力は、約10−20atmから約1atm、例えば約10−10atm〜約1atm、又は更には約10−4atmから約1atmの範囲内であってもよい。他の場合において、自由焼結プロセスは、周囲条件未満の酸素分圧を有する雰囲気にて行われることができる。別の実施形態において、自由焼結プロセスは、還元剤を含むことができ、より詳細には、SOFCユニットセルに対して還元雰囲気であってもよい。
【0038】
より詳細には、自由焼結プロセスは焼結温度にて行われることができ、ここで電解質層101は、圧縮状態であることができ、電極層103は張力下であることができる。特に、グリーン電解質層101、グリーン電極層103、及びグリーン相互接続層107の特定の特徴(例えば材料のモルホロジー特徴、物理的特徴及び化学的特徴の組み合わせを含む)は、自由焼結プロセスを促進し、ユニットセル、及び最終的には本明細書に記載される特徴を有するSOFCスタックの形成を促進するために使用できる。特定の理論に束縛されることを望まないが、特徴の組み合わせ、例えば粉末構成要素の粒径分布、パッキング因子、多孔性、構成要素の層それぞれの化学組成、熱膨張特性などは、自由焼結プロセスを促進でき、ここで電解質層101は、等温処理の間に圧縮状態であると考えられる。
【0039】
特に、電解質層101は、特定の焼結温度を有することができ、これは特定温度にて層の寸法に関連できる。例えば、1つの実施形態によれば、電解質層101は、電極層103の材料の焼結温度(すなわち電極焼結温度)とは異なり、相互接続層107の焼結温度(すなわち相互接続焼結温度)とも異なる電解質焼結温度を有することができる。特定の場合において、電解質層101は、電極層103の焼結温度未満であり、相互接続層107の焼結温度未満の焼結温度を有することができる。
【0040】
より特定の場合において、特に等温で保持された自由焼結プロセスは、電解質焼結温度を超える焼結温度にて行われることができる。すなわち、例えば自由焼結温度は、電解質焼結温度を超え、より詳細には電極焼結温度未満である温度であることができる。別の実施形態において、自由焼結は、電解質焼結温度を超え、電極焼結温度未満であり、相互接続焼結温度未満である温度にて行われることができる。なお更なる実施形態において、1つの実施形態に従う自由焼結は、電解質焼結温度を超え、電極焼結温度未満であり、相互接続焼結温度を超える温度にて行われることができる。
【0041】
自由焼結プロセスの完了時、相互接続層107、電極層103、及び電解質層101は、一体化SOFCユニットセル100を形成する。追加の工程は、一体化SOFCユニットセル100に追加の層を接合させ、機能化SOFC物品を形成するために行われてもよい。例えば、第2の焼結プロセスを完了して、これらに限定されないが、電極層103とは異なる電極層が挙げられる他の層と一体化SOFCユニットセル100を接合できる。第2の焼結プロセスは、第1の自由焼結プロセスから分離できる。
【0042】
例えば、特定の実施形態において、ポスト自由焼結プロセスは、一体化SOFCユニットセル100を覆う第2の電極層、又は第2の電極層の一部の形成を含むことができる。第2の電極層は、電極層103とは異なることができ、特にカソード層であってもよい。カソードは、最終的なSOFC物品を形成するために一体化SOFCユニットセル100と共に接合される前に、別個の焼結プロセスを通して、一体化カソードユニットセルにプレ形成されることができる。あるいは、カソード又は他の層はグリーン層であってもよく、これは一体化SOFCユニットセル100上に形成され、それらと共に接合されてもよく、一体化SOFCユニットセル100上に直接第2の焼結プロセスにおいて熱処理加工されてもよい。第2の焼結プロセスは自由焼結プロセスであることができる。第2の焼結プロセスは、第1の焼結温度を大きく下回る結合又は接合焼結温度にて行われることができる。例えば、接合温度は、SOFCユニットセルを形成するために使用される焼結温度(すなわち第1の自由焼結温度)未満であることができる。更に、接合温度は、一体化カソードユニットセルを形成するために使用される焼結温度未満であることができる。特定の場合において、接合温度は、カソード一体化ユニットセルを形成するために使用される焼結温度よりも少なくとも約5℃、例えば少なくとも約8℃、少なくとも約10℃、又は更には少なくとも約12℃を下回ることができる。
【0043】
先行するパラグラフに記述される接合プロセスは、代替化工処理経路に従って行われてもよい。例えば、接合プロセスは、2工程プロセスであることができ、ここでSOFCユニットセルは、単一の自由焼結プロセスにおいて本明細書に記載されるように形成されることができるが、第2の電極層(例えばカソード部分)は、焼結されたSOFCユニットセルと共に形成されることができ、グリーン状態で接合されることができる。2工程プロセスの接合プロセスは焼結温度とは異なる接合温度、特にSOFCユニットセルを形成するための自由焼結プロセスにおいて使用される焼結温度とは異なる焼結温度、特にその温度よりも低い接合温度である接合温度を利用できる。
【0044】
別の実施形態において、接合プロセスは、3工程プロセスであることができ、ここでSOFCユニットセルは、単一の自由焼結プロセスにおいて本明細書に記載されるように形成されることができるが、第2の電極層(例えばカソード部分)は、SOFCユニットセルから別個に形成でき、焼結できる。焼結されたSOFCユニットセル及び焼結された第2の電極層は、第3の熱処理において接合できる。第3の熱処理は、SOFCユニットセル又は第2の電極を形成するために使用される焼結温度とは異なる接合温度を利用できる。特に、接合温度は、SOFCユニットセルを形成するために自由焼結プロセスに使用される焼結温度よりも低い温度、焼結された第2の電極層を形成する際に使用される焼結温度よりも低い温度であることができる。
【0045】
第2の電極(例えばカソード)又は第2の電極の部分は、相互接続層107を覆うように形成できる。事実、第2の電極は、相互接続層107に直接接触し、結合できる。あるいは又は加えて、第2の電極は、電解質層101を覆うことができ、こうして電解質層101を、電極層103(例えばアノード)及び第2の電極層(例えばカソード)との間に配設されることができる。第2の電極層103は、電解質層101で直接接触できる。
【0046】
1つの実施形態において、第2の電極はカソードであることができ、これは無機材料で構成できる。特定の好適な無機材料は、酸化物を含むことができる。カソードは、レアアース元素を含むことができる。少なくとも1つの実施形態において、カソードは、ランタン(La)、マンガン(Mn)、ストロンチウム(Sr)のような元素、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0047】
1つの特定実施形態において、カソードのための材料はランタンマンガナイト材料を含むことができる。カソードは、ドープされたランタンマンガナイト材料で構成されることができ、カソード組成にペロブスカイトタイプの結晶構造を与える。従って、ドープされたランタンマンガナイト材料は、式(La1-xMnO3−δによって表される一般組成を有し、ここでドーパント材料は、「A」で表され、ペロブスカイト結晶構造のAサイトにおけるランタン(La)と材料内で置換される。ドーパント材料は、アルカリ土類金属、鉛、又は一般に約0.4〜0.9オングストロームの原子比を有する二価カチオンから選択できる。そういうものとして、1つの実施形態によれば、ドーパント材料は、Mg、Ba、Sr、Ca、Co、Ga、Pb、及びZrからなる元素の群から選択される。特定の実施形態によれば、ドーパントはSrであり、カソード材料は、LSMとして一般に知られているランタンストロンチウムマンガナイト材料である。
【0048】
ドープされたランタンマンガナイトカソード材料の化学量論について、1つの実施形態によれば、パラメータ、例えば存在する原子のタイプ、結晶構造内の空孔のパーセンテージ、及び原子比、特にカソード材料内のLa/Mn比は、燃料電池の作動中にカソード/電解質界面の伝導度を制限する組成物の形成を管理するように提供される。伝導度を制限する組成物の形成は、セルの効率を低下させ、SOFCの寿命を短縮する。1つの実施形態によれば、ドープされたランタンマンガナイトカソード材料は、(La1−xMnO3−δを含み、ここでxは約0.5以下であり、yは約1.0以下であり、La/Mn比は約1.0以下である。ドープされたランタンマンガナイト組成内のxの値は、構造内のLaについて置換されたドーパントの量を表す。1つの実施形態によれば、xは約0.5以下、例えば約0.4又は0.3以下である。それでもなお、カソード材料内に提供されるドーパントの量は、xが約0.2以下となる、又は更には約0.1以下、特に約0.4〜0.05の範囲内となるように小さくてもよい。
【0049】
特定の実施形態において、ドーパント材料は、Sr(LSMカソード)であり、こうしてカソード組成は、(La1−xSrMnO3−δとなり、ここでxは約0.5以下、例えば約0.4、0.3、0.2以下、又は更には約0.1以下であり、特に約0.3〜約0.05の範囲内である。先行する実施形態に記載されるようなドーパント濃度を有するカソードは、燃料電池の作動中、カソード/電解質界面にて伝導度を制限する組成物の形成を低減することが望ましい。
【0050】
カソードの化学量論を更に参照して、一般式(La1−xMnO3−δにおけるyの値は、結晶格子内のAサイトにおける原子の%占有率を表す。別の考え方として、yの値はまた1.0から差し引かれてもよく、結晶格子内のAサイトにおける空孔のパーセンテージを表してもよい。この開示の目的のために、1.0未満のyの値を有するドープされたランタンマンガナイト材料は、結晶構造内のAサイトが100%占有されていないので、「Aサイト欠陥」構造と名付けられる。1つの実施形態によれば、yは約0.95以下、例えば約0.90以下、0.88以下、又は更には約0.85以下である。特定の実施形態において、カソード材料は、LSMである(ドーパント材料は、(La1−xSrMnO3−δの組成を有するSrであり、yの値は、約1.0以下、例えば約0.95以下、約0.93以下又は更には0.90以下、特に約0.70〜0.99の範囲内である。)先行して記載された実施形態に提供されるように、Aサイト欠陥のドープされたランタンマンガナイト組成を有するカソードは、燃料電池の作動中にカソード/電解質界面において伝導度を制限する組成物の形成を低減するために望ましい。
【0051】
ドープされたランタンマンガナイトカソード材料の組成を更に参照して、1つの実施形態によれば、La/Mn比は約1.0以下である。カソード材料内のLa/Mn比は、ドーパント(一般式のxの値)の添加によって、並びにランタンマンガナイト結晶構造内においてAサイト空孔(yの値に関連する)の創出によって変更できる。そういうものとして、別の実施形態において、La/Mnの比は、1.0未満、例えば約0.97、0.95未満、又は更には約0.93未満である。特定の実施形態によれば、カソード材料は、(La1−xSrMnO3−δの一般組成を有するLSMであり、ここでxは約0.5以下であり、yは約1.0以下であり、La/Mn比は1.0以下である。従って、LSMカソード材料内のLa/Mn比は、約1.0未満、例えば約0.97、0.95未満又は更には0.90未満であってもよい。一般に、1.0以下、特に1.0未満のOLa/Mn比は、SOFCの作動中にカソード/電解質界面において伝導度を制限する組成物の形成を低減する所望の化学量論条件を提供する。こうした伝導度を制限する組成物の形成は、SOFCの効率及び操作性寿命を低減し得る。
【0052】
あるいは又は更には、カソード材料は、La−フェライト系材料を含むことができる。通常、La−フェライト系材料は、1つ以上の好適なドーパント、例えばSr、Ca、Ba、Mg、Ni、Co又はFeでドープされることができる。ドープされたLa−フェライト系材料の例としては、LaSrCo−フェライト(LSCF)(例えば、La1−gSrCo1−jFe、ここでq及びjのそれぞれは、独立に、0.1以上及び0.4以下であり、(La+Sr)/(Fe+Co)は約1.0〜約0.90の範囲である(モル比))を含む。1つの特定実施形態において、カソードは、La−マンガナイト及びLa−フェライト材料の混合物を含むことができる。例えば、カソードは、LaSr−マンガナイト(LSM)(例えばLa1−kSrMnO)及びLaSrCo−フェライト(LSCF)を挙げることができる。共通の例としては、(La0.8Sr0.20.98Mn3+−Δ(Δは、0以上であり、0.3以上である)及びLa0.6Sr0.4C042Fe0.8が挙げられる。
【0053】
図2は、実施形態に従うSOFCユニットセルの例示を含む。SOFCユニットセル200は、電解質層101、相互接続層107、及び電解質層101と相互接続層107との間にある電極層103を含むことができる。特に、電解質層101は、電極層103と直接接触できる。相互接続層107は、電極層103と直接接触できる。特に、先行して記載された実施形態のように、ユニットセル200は、熱処理の前に共にスタックされた複数のグリーン層及び単一の自由焼結プロセスを行った後に、共に一体的に形成された複数の層を表すことができる。
【0054】
特に、アノード層103は、機能性層部分203、バルク層部分202、及び結合層部分201を含む複数の層で構成できる。アノード機能性層部分203は、電解質層101と直接接触できる。より詳細には、アノード機能性層部分203は、電解質層101に直接結合できる。アノード機能性層部分203は、本明細書で記載されるようなアノード層103と同じ材料を含むことができる。アノード機能性層部分203は、最終仕上げされたSOFC物品の好適な電気的特徴及び電気化学的特徴を促進でき、アノード層103と電解質層101との間の電気的及び機械的接続を改善できる。
【0055】
1つの実施形態によれば、アノード機能性層部分203は、多孔質層であることができ、これはアノード機能性層部分203の総体積について約20体積〜50体積の範囲内の多孔性を有する。アノード機能性層203は、アノードバルク層202内の孔の平均孔サイズよりも顕著に小さい平均孔サイズを有することができる。
【0056】
特定の場合には、アノード機能性層部分203のグリーン材料は、相対的に微細なアグロメレートされた粉末の形態であることができる。あるいは、粉末材料は非アグロメレートであってもよい。粉末は、約100μm以上、例えば約75μm以下、特定の実施形態においては約45μm以下の平均粒径を有することができる。加えて、粉末は、アグロメレートされた粉末及び非アグロメレート粉末の混合物であることができ、ここで非アグロメレート粉末は、特に微細な粒径を有していてもよい。こうしたサイズは、好適な孔径及びグレインサイズをアノード機能性層部分203内に形成することを促進できる。
【0057】
アノード機能性層部分203は、薄く、実質的に平面の材料層であることができ、約1mm以下、例えば約700μm以下、約500μm以下、約200μm以下、約150μm以下、例えば約100μm以下、又は更には約50μm以下の平均厚さを有する。それでもなお、アノード機能性層部分203は、少なくとも約0.5μm、例えば少なくとも約1μm、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約15μm、又は更には少なくとも約20μmの平均厚さを有することができる。アノード機能性層部分203は、上記で記述された最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内にある平均厚さを有することができることが理解される。
【0058】
アノードバルク層部分202は、機能性層部分203及び結合性層部分201と直接接触できる。より詳細には、バルク層部分202は、機能性層部分203及び結合性層部分201と直接接触できる。アノードバルク層部分202は、本明細書において記載されるアノード層103と同じ材料を含むことができる。
【0059】
アノードバルク層部分202は、多孔質層であることができ、アノードバルク層部分202の総体積に関して約30体積〜約60体積の範囲内の多孔性を有する。アノードバルク層202は、アノード機能性層部分層203又はアノード結合性層部分201内の孔の平均孔サイズよりも顕著に大きい平均孔サイズを有することができる。特に、バルク層部分202は、アノード層103に、特に機能性層部分203に燃料を送達するためにチャンネルを含有できる。
【0060】
アノードバルク層部分202のグリーン材料は、機能性層部分203又は結合性層部分201よりも一般に粗い材料で形成できる。特定の場合には、アノードバルク層部分202は、アグロメレートされた粉末で形成できる。アグロメレートは、約1μm〜約300μm、例えば約1μm〜約200μm、又は更には約1μm〜約100μmの平均粒径を有していてもよい。特定の実施形態において、粗い粒子は、アグロメレートされた粉末の代わりに、又はそれに加えて使用されてもよい。粗い粒子は、約0.1μm〜約100μm、例えば約0.1μm〜約50μm、又は更には約0.1μm〜約15μmの範囲の内の平均粒径を有することができる。
【0061】
アノードバルク層部分202は、薄く、実質的に平面の材料層であることができアノード機能性層部分203又はアノード結合性層部分201の平均厚さよりも厚い平均厚さを有する。特に、アノードバルク層部分202は、約2mm以下、例えば約1mm以下、又は約800μm以下の平均厚さを有することができる。それでもなお、アノードバルク層部分202は、少なくとも約50μm、例えば少なくとも約100μm、少なくとも約200μm、又は少なくとも約500μmの平均厚さを有することができる。アノードバルク層部分202は、上記で記述された最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内の平均厚さを有することができることが理解される。
【0062】
アノード結合性層部分201は、アノードバルク層部分202及び相互接続層107と直接接触できる。より詳細には、結合性層部分201は、バルク層部分202及び相互接続層107に直接結合できる。アノード結合性層部分202は、本明細書に記載されるアノード層103と同じ材料を含むことができる。
【0063】
アノード結合性層部分201は多孔質層であることができ、アノード結合性層部分201の総体積に関して約0体積〜約40体積の範囲の多孔性を有する。アノード結合性層部分201は、アノードバルク層部分202内の孔の平均孔径よりも顕著に小さい平均孔径を有することができる。アノード結合性層部分201は、最終仕上げされたSOFC物品の好適な電気的特徴を促進でき、アノード層103と相互接続層107との間の機械的接続を改善できる。
【0064】
アノード結合性層部分201のグリーン材料は、アノードバルク層部分202よりも一般に微細な材料で形成できる。特定の場合において、アノード結合性層部分201のグリーン材料は、相対的に微細なアグロメレートされた粉末で形成できる。微細なアグロメレートされた粉末は、約100μm以下、例えば約75μm以下、約45μm以下、又は更には約20μm以下の平均アグロメレートサイズを有することができる。それでもなお、微細なアグロメレートされた粉末の平均粒径は、少なくとも約0.5μm、例えば少なくとも約1μm、又は少なくとも約5μmであることができる。微細なアグロメレートされた粉末の平均粒径は、上記で記述された最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内であることができることが理解される。加えて、微細なアグロメレートされた粉末は、特に微細な粒径を有する主に非アグロメレート粉末と混合できる。あるいは、微細なアグロメレートされた粉末は、非アグロメレート粒子で部分的に又は全体的に置換されてもよい。粉末材料の粒径は、アノード結合性層部分201内の好適な孔径及びグレインサイズの形成を促進できる。
【0065】
アノード結合性層部分201は、アノードバルク層部分202の平均厚さ未満の平均厚さを有する材料の薄く、実質的に平面の材料層であることができる。特に、アノード結合性層部分201は、約1mm以下、例えば約700μm以下、約500μm以下、又は更には約200μm以下の平均厚さを有することができる。それでもなお、アノード結合性層部分201は、少なくとも約1μm、例えば少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約20μm、少なくとも約50μm、少なくとも約75μm、少なくとも約100μmの平均厚さを有することができる。アノード結合性層部分201は、上記で記述された最小値と最大値のいずれかの間の平均厚さを有することができることが理解される。
【0066】
SOFCユニットセル200の層は、本明細書の実施形態に従って形成でき、それらとしては、注型成形、堆積、印刷、押出、積層、ダイプレス加工、ゲル注型成形、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ロール圧密、射出成形及びこれらの組み合わせを含む技術が挙げられる。
【0067】
SOFCユニットセル200は、本明細書の実施形態に記載されるプロセスに従って形成できる。特に、形成のプロセスは、SOFCユニットセル200に例示されるような材料のグリーン層を組み立てる工程、及び単一の自由焼結プロセスを行い、一体化SOFCユニットセル200を形成する工程を含み、ここで各層は互いに結合されて、材料層の界面における拡散結合によって特徴付けられる。更に、一体化SOFCユニットセル200を形成するための自由焼結後に、他の構成要素の層を添加でき、それらとしては、これらに限定されないが、1つ以上の第2の電極層(例えばカソード層)が挙げられることが理解される。
【0068】
図3は、実施形態に従うSOFCユニットセルの例示を含む。SOFCユニットセル300は、電解質層101、相互接続層107、及び電解質層101と相互接続層107との間に配設された電極層103を含むことができる。加えて、SOFCユニットセル300は、電解質層101の下層の電極層301の部分を含むことができる。電極層301の部分は、電解質層101と直接接触できる。加えて、SOFCユニットセル300は、相互接続層107を覆う電極層303の部分を含むことができる。電極層303部分は、相互接続層107と直接接触できる。
【0069】
特に、先行して記載される実施形態と同様に、SOFCユニットセル300は、熱処理の前に共にスタックされた複数のグリーン層を表すことができる。あるいは又は加えて、SOFCユニットセル300は、単一の自由焼結プロセスを行った後に共に一体的に形成された複数の層を表すことができる。
【0070】
1つの実施形態によれば、電極層301の部分は、カソード機能性層部分であることができる。特に、カソード機能性層部分301は、グリーン電解質層101と直接接触したグリーン機能性層部分であることができる。カソード機能性層部分301は、本明細書に記載されるカソードと同じ材料を含むことができる。更に、カソード機能性層部分301は、材料の組み合わせ、例えばカソードバルク層部分及び電解質層又は相互接続層からの材料の組み合わせを含むことができる。例えば、カソード機能性層部分301は、LSM及びYSZの組み合わせを含むことができる。カソード機能性層部分301は、本明細書に記載されるように他の機能性層部分と同じ特徴を有することができる。更に、カソード機能性層部分301は、最終仕上げされたSOFC物品の好適な電気的特徴を促進して、電解質層101とカソードとの間の電気的、電気化学的及び機械的接続を改善してもよい。
【0071】
電極層301の部分は、アノード203の平均厚さ未満の平均厚さを有する薄く、実質的に平面の材料層であることができる。特に、電極層301の部分は、約1mm以下、例えば約700μm以下、約500μm以下、約200μm以下、約150μm以下、例えば約100μm以下、又は更には約50μm以下の平均厚さを有することができる。それでもなお、電極層301の部分は、少なくとも約0.5μm、例えば少なくとも約1μm、少なくとも約5μm、少なくとも約10μm、少なくとも約15μm、又は更には少なくとも約20μmの平均厚さを有することができる。電極層301の部分は、上記で記述された最小値と最大値のいずれかの間の範囲内の平均厚さを有することができることが理解される。
【0072】
電極層301の部分は多孔質層であることができる。特定の実施形態において、電極層301の部分は、電極層301の部分の総体積について約20体積〜約50体積の範囲内の多孔性を有することができる。電極層301の部分は、アノード103のバルク層部分内の孔の平均孔径よりも顕著に小さい平均孔径を有してもよい。
【0073】
相互接続層107を覆う電極303部分は、電極301の部分と同じ属性を有することができることが理解される。特に、電極303の部分は、カソード機能性層部分303であることができる。
【0074】
SOFCユニットセル300の層、特に電極303及び301の部分は、本明細書の実施形態に従って形成でき、それらとしては、注型成形、堆積、印刷、押出、積層、ダイプレス加工、ゲル注型成形、スプレーコーティング、スクリーン印刷、ロール圧密、射出成形及びこれらの組み合わせのような技術が挙げられる。
【0075】
SOFCユニットセル300は、本明細書の実施形態において記載されるプロセスに従って形成できる。特に、SOFCユニットセル300の形成は、グリーンSOFCユニットセル300に例示されるように材料のグリーン層を組み立てる工程、及び単一の自由焼結プロセスを行い、一体化SOFCユニットセル300を形成する工程を含むことができる。一体化SOFCユニットセル300は、互いに結合している隣接層のそれぞれによって特徴付けられ、材料層間の界面にて拡散結合領域を形成している。更に、一体化SOFCユニットセル300を形成するための自由焼結の後、他の構成要素の層が添加でき、それらとしては、1つ以上の第2の電極層(例えばバルクカソード層及び/又は結合性カソード層)が挙げられるが、これらに限定されていないことが理解される。
【0076】
一体化SOFCユニットセル300の形成は、作用SOFC物品を形成するのに好適な主にすべての構成要素の層(すなわちカソード/相互接続/アノード/電解質)が単一自由焼結プロセスにおいて形成されるので、特に望ましい。故に、層のすべては、単一の自由焼結プロセスにおいて形成でき、一体的に結合されたSOFCユニットセル300を形成でき、ポスト加工処理(すなわち自由焼結プロセス後の熱処理)は限られている。加えて、単一の自由焼結プロセスは、電解質層101が焼結温度にて保持される等温中では圧縮状態であるように完了される。電解質層101はまた、焼結プロセスの完了後に圧縮状態であることができる。
【0077】
更に、一体化SOFCユニットセル300の残りの加工処理は制限でき、一般に同様の又は同じ組成を有する層の接合を含む。すなわち、例えばバルクカソード層は、別個の第2の焼結プロセスにおいてカソード部分301又は303のいずれかに結合できる。更に、ポスト加工処理が同様の組成の層間の結合に制限され得ないので、別個の第2の焼結プロセスは、第1の自由焼結プロセスにおいて利用されるよりも顕著に低い焼結温度にて行われることができる。更に、ポスト自由焼結加工処理は、同様の材料層に制限され得るので、層間の機械的ひずみ(例えばCTEミスマッチによる)も制限され、結果として改善された機械的及び電気的特徴を有するSOFC物品が得られる。
【0078】
図4は、実施形態に従うSOFCユニットセルの例示を含む。SOFCユニットセル400は、SOFCユニットセル200と同様の構成を含み、それぞれ電解質層101及び相互接続層107を覆う電極層301及び303の部分の添加を伴う。特に、SOFCユニットセル400は、電解質層101、相互接続層107、及び電解質層101と相互接続層107との間に配設された電極層103を含む。特に、電解質層101は、電極層103と直接接触でき、相互接続層107は電極層103と直接接触できる。
【0079】
電極層103は、アノード層であることができ、機能性層部分203、バルク層部分202、及び結合性層部分201を含む複数の層で構成され、本明細書の他の実施形態に記載される特徴を有する。
【0080】
SOFCユニットセル400はまた、電解質層101の下層の電極層301の部分を含む。電極層301の部分は電解質層101と直接接触できる。加えて、SOFCユニットセル400は、相互接続層107を覆う電極層303の部分を含むことができる。電極層303の部分は、相互接続層107と直接接触できる。1つの実施形態によれば、電極層301の部分は、本明細書の実施形態に記載されるようなカソード機能性層部分のいずれかの特徴を有するカソード機能性層部分であることができる。同様に、電極層303の部分は、本明細書の実施形態に記載されるようなカソード機能性層部分のいずれかの特徴を有するカソード機能性層部分であることができる。カソード機能性層部分301及び303は、最終仕上げされたSOFC物品の好適な電気的特徴を促進でき、電気的及び機械的接続を改善できる。
【0081】
SOFCユニットセル400は、本明細書の実施形態に記載されるようなプロセスに従って形成できる。特に、SOFCユニットセル400の形成は、グリーンSOFCユニットセル400に例示されるように材料のグリーン層を組み立てる工程、及び単一の自由焼結プロセスを行って、一体化SOFCユニットセル400を形成する工程を含むことができる。一体化SOFCユニットセル400は、互いに結合して、材料層間の界面において拡散結合領域を形成する隣接層のそれぞれによって特徴付けられる。更に、一体化SOFCユニットセル400を形成するための自由焼結後、他の構成要素の層が添加できることが理解される(それらとしては、1つ以上の第2の電極層(例えばバルクカソード層及び/又は結合性カソード層が挙げられるが、これらに限定されない)。
【0082】
図5は、別の実施形態に従うSOFCユニットセルの例示を含む。SOFCユニットセル500は、本明細書の実施形態に記載されるように、同じ構成を有する第1のSOFCユニットセル400及び製造方法を含む。SOFCユニットセル500は、電極又は電極部分であることができる第2のSOFCユニットセル501を含むことができる。SOFCユニットセル501は、結合性層部分504、結合性層部分504を覆うバルク層部分503、及びバルク層部分502を覆う結合性層部分502を含むことができる。特定の場合において、SOFCユニットセル501はカソードであることができ、これらの層は、カソード結合性層部分504、カソード結合性層部分504を覆うカソードバルク層部分503、及びカソードバルク層部分502を覆うカソード結合性層部分502を含む。カソード結合性層部分504、カソードバルク層部分503、及びカソード結合性層部分502は、本明細書の実施形態に記載されるように他のカソード層の特徴のいずれかを有することができる。
【0083】
SOFCユニットセル501は、本明細書の実施形態に記載されるようなプロセスに従って形成できる。特に、SOFCユニットセル501の形成は、グリーンSOFCユニットセル501に例示されるように材料のグリーン層を組み立てる工程、及び単一自由焼結プロセスを行い、一体化SOFCユニットセル501を形成する工程を含むことができる。一体化SOFCユニットセル501は、互いに結合して、材料層間の界面において拡散結合領域を形成する隣接層のそれぞれによって特徴付けることができる。
【0084】
更に、一体化SOFCユニットセル501を形成するためのフリーの焼結後、SOFCユニットセル501は、一体化SOFCユニットセル400に接合されて、SOFC物品を形成できることが理解される。1つの実施形態によれば、一体化SOFCユニットセル400及び501の接合は、電極層部分502と電極層部分301を直接接触させ、SOFCユニットセル400及び501を接合温度に加熱する工程を含むことができる。特に、電極層部分502及び電極層部分301は、同じ材料を含むことができ、それらとしては、例えば特定のカソード材料が挙げられ、2つの層の結合性、及び最終的にはSOFCユニットセル501及び400は、異なる組成の層を接合する他のプロセスよりも複雑でない。
【0085】
特定の実施形態において、接合プロセスは、SOFCユニットセルに熱を適用する工程を含むことができる。上述のように、接合プロセスは、焼結温度未満の特定の温度にて熱処理を含むことができ、接合している構成要素SOFCユニットセルを形成できる。
【0086】
更に、接合プロセスは、プレス加工操作を含んでいてもよく、ここで圧力は、SOFC物品の形成を促進するために構成要素SOFCユニットセルに適用される。例えば、圧力は、一軸プレス加工を介して適用されてもよく、より詳細には一軸ホットプレス加工であってもよい。あるいは、圧力は平衡に適用されてもよく、接合プロセスは熱等温プレス加工を利用してもよい。接合プロセス中に圧力を利用する特定の実施形態において、好適な圧力は、約0.1〜50MPa、例えば約0.2〜20MPaの範囲内であることができる。
【0087】
形成する方法は、特定の特徴を有する一体化SOFCユニットセルの形成を促進する。例えば、1つの実施形態によれば、電解質層は、SOFCユニットセルの形成後であり、SOFC物品の形成後に、特定の圧縮状態であることができる。特に、本明細書に開示される特徴(材料の特定のタイプ、層の順序、及び焼結温度を含む)の組み合わせの利用は、SOFCユニットセル及びSOFCスタックの自由焼結形成を促進し、ここで電解質層は圧縮状態である。これは、試験時の電解質層内においてクラックがほとんど又は全く生じないことからも部分的に証明される。
【0088】
特定の場合において、本明細書の実施形態に従って形成されるSOFCユニットセルは、ユニットセルが約2000倍の倍率にて断面を見る場合に、60μmの長さあたり1クラック未満を有すると定量できる。図6は、実施形態に従って形成されたSOFCユニットセル(CFL−E−A−IC−CFL)の部分の断面図を含む。特に、図6は、ユニットセルの電解質(E)及びカソード機能層(CFL)の界面に沿って長さは約90μmの部分を例示する。例示されるように、約2000倍の倍率において電解質及びカソード機能性層部分のランダムに選択された部分の試験時、電解質層(E)は、長さ10μmあたり1クラック未満、例えば長さ20μmあたり1クラック未満、長さ30μmあたり1クラック未満、長さ40μmあたり1クラック未満、長さ50μmあたり1クラック未満、長さ60μmあたり1クラック未満、又は更には長さ90μmあたり1クラック未満を有する。特定の場合において、本明細書の実施形態のユニットセルは、適切な倍率にて見られる場合に、長さ100μmあたり1クラック未満、長さ500μmあたり1クラック未満、又は更には長さ1cmあたり1クラック未満を有することができる。更に、電解質層(E)を通して全体的に延びる視覚可能なフィールドにクラックはない。
【0089】
本明細書の実施形態に従って形成されたユニットセルの相互接続層はまた、電解質層の同じ制限されたクラック特徴を示すことができる。従って、少なくとも電解質層、アノード層、及び相互接続層のユニットセルは、単一自由焼結プロセスにおいて形成でき、ここで電解質層、アノード層、及び相互接続層は、クラックをほとんど又は全く示さず、改善された加工処理性及び性能を促進する。
【0090】
更に、本明細書の実施形態に従って形成されるSOFCユニットセル及びSOFCスタックは、特に改善された反りを示し、これはMalzbender et al.,「Curvature of Planar Solid Oxide Fuel Cells during Sealing and Cooling of Stacks」,FUEL CELLS 06,2006,No.2,123−129に与えられるように、中点の偏位として測定される。例えば、本明細書の実施形態に従うSOFCユニットセルの平均反りは、約200μm以下であることができる。平均反りは、白色光色収差技術を利用するMicro Measure 3D Surface Profilometerを用いて測定でき、ここで反りは、サンプリング長さにおける波形パラメータを規定するためのISO4287標準に従って測定される。次いでサンプリング長さにおいて見積もられるパラメータをISO4288標準において示されるように利用可能なサンプリング長さすべてについて平均する。1つの実施形態において、SOFCユニットセルは、約150μm以下、約125μm以下、約100μm以下、約80μm以下、約50μm以下、約40μm以下、又は更には約30μm以下の平均反りを有することができる。他の場合において、SOFCユニットセルの平均反りは、少なくとも約0.1μm、少なくとも約0.5μm、又は更には少なくとも約1μmであってもよい。平均反りは、上記で記述される最小値及び最大値のいずれかの間でそれらを含む範囲内であることができることが理解される。
【0091】
更に、実施形態に従う一体化SOFCユニットセルの電解質層101は、特に高密度の層であることができる。例えば、密度は、少なくとも約95%の理論密度であることができる。他の実施形態において、密度は、より多く、例えば少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は更には少なくとも約99%の理論密度であることができる。従って、電解質層の多孔性は、約5%以下、約3%以下、約2%以下、又は更には約1%以下に限定され得る。
【0092】
特定の場合において、実施形態に従う一体化SOFCユニットセルの電解質層101は、一体化SOFCユニットセルの第1の電極層103(例えばアノード)のCTE未満の熱膨張係数(CTE)を有することができる。別の実施形態によれば、相互接続層107は、一体化SOFCユニットセルの第1の電極層103(例えばアノード)のCTE未満の熱膨張係数(CTE)を有することができる。
【0093】
1つの実施形態によれば、SOFCユニットセルは、本明細書に記載されるような操作性SOFCスタックに形成でき、特定の電気化学特徴を示すことができる。例えば、本明細書の実施形態のSOFC物品は、理論の少なくとも約95%の無負荷電圧(OCV)を有することができ、ここで無負荷電圧は、100%Hにおいて800℃のテストパラメータに従って測定される。他の場合において、(OCV)は、理論の少なくとも約95%、理論の少なくとも約97%、又は更には理論の少なくとも約98%であることができる。より詳細な観点では、OCVのテストパラメータは、初期のセットアップ、及び空気側及び燃料側のリーク割合の確認を含む。スタックがリークテストに合格した場合、2℃/分にて800℃まで加熱される場合に、水素濃度は徐々に増大し、NiOの存在は低減される。OCVが100%Hで安定である場合、電流、電圧及びインピーダンスの測定が、3つのI−V曲線及びインピーダンスプロットを得るために行われる。
【0094】
1つの特定の実施形態によれば、本明細書に形成されるSOFC物品の操作温度は、約600℃〜約1000℃の範囲内であることができる。
【実施例】
【0095】
実施例1
SOFCユニットセルは、以下の方法に従って形成される。アノード材料(Praxair NiO−YSZ; 50:50重量%)のグリーンテープは、Zehntner Testing Instruments(Zehntner,Switzerland)からZAA2300モデルとして入手可能な携帯型テーブルトップテープキャスターを用いて、0.5μm〜5μmの平均粒径を有するアノード粉末材料を含有するスラリーから注型成形される(約100μm厚さ)である。いくつかのアノードテープ(5又は10)は、注型成形され、0.2μm〜5μmの平均粒径を有する電解質粉末材料を含有するスラリーから形成されたAl−Mn 8YSZ電解質材料の単一グリーンテープと、0.5μm〜6μmの平均粒径を有する相互接続粉末材料を含有するスラリーから形成されるドープされたLST相互接続材料の単一グリーンテープとの間に配設されて(すなわち、積層されて)、グリーンSOFCユニットセルを形成する。ドープされた8YSZ電解質材料及びLST相互接続材料の熱膨張係数は、それぞれ−10.8ppm/℃及び11.1ppm/℃である。チャンネルは、グリーンAB及びCBテープにレーザー切断し、消散性チャンネルフォーマーを、ガスチャンネルを有する電極の作製のために使用した。
【0096】
グリーンSOFCユニットセルは、1280℃の焼結温度で単一の自由焼結プロセスにて共焼結され、約1時間等温で保持され、電解質/アノード/相互接続構成を含む一体化SOFCユニットセルを形成する。小さいアルミナプレートを、自由焼結プロセスの間にSOFCユニットセル上に置く。一体化SOFCユニットセルは、約500〜600μmの厚さを有する平面形状を有し、ここで電解質層は、約30μmの近似厚さを有し、アノードは、約500μmの近似厚さを有し、相互接続は、約20〜30μmの近似厚さを有する。
【0097】
一体化SOFCユニットセルはクラックを含まず、層間の界面は、他の構成、例えば相互接続が二次熱処理において電極に取り付けられる構成に比べて、優れた接着及び強い結合を実証した。ユニットセルの反りは、100μm未満であった。
【0098】
そういうものとして、等温保持の間、電解質材料及び相互接続材料は圧縮状態であることができる。
【0099】
実施例2
SOFCユニットセルは以下の方法に従って形成される。Praxair NiO−YSZ;50:50重量として市販されているアノード材料(AB)のグリーンテープは、Zehntner Testing Instruments (Zehntner, Switzerland)からZAA2300モデルとして入手可能な携帯型テーブルトップテープキャスターを用いて、0.5μm〜5μmの平均粒径を有するアノード粉末材料を含有するスラリーから注型成形される(約100μm厚さ)。いくつかのアノードテープ(5又は10)は注型成形され、0.2μm〜5μmの平均粒径を有するTosohから市販されている電解質粉末材料を含有するスラリーから形成されたAl−Mnドープされた8YSZ電解質材料(E)の単一グリーンテープに置く(すなわち積層される)。American Elementsから入手可能なドープされたLa0.2Sr0.8TiO相互接続材料(IC)の単一グリーンテープは、電解質テープからアノードの反対側に置く。相互接続材料のグリーンテープは、0.5μm〜約6μmの平均粒径を有する相互接続粉末材料を含有するスラリーから形成される。カソード機能性層(CFL)のグリーンテープを形成し、相互接続及び電解質材料を覆い、こうして構造(CFL−E−A−IC−CFL)を有するグリーンユニットセルを形成する。カソード機能性層の1つのテープは、それぞれの層について注型成形される。カソード機能性層のテープは、カソード機能性層粉末材料を含有するスラリーから注型成形され、Praxairから市販されているLSM粉末[(La0.8Sr0.20.98MnO]及びUnitecから市販されている8YSZ材料の混合物である。カソード機能性層粉末材料は、1〜10μmの平均粒径を有する。構成要素の層E、IC、CF、及びABの熱膨張係数は、それぞれ−10.8、11.1、11.5、12.5ppm/℃であった。
【0100】
CFL−E−A−IC−CFLユニットセルは、1時間の等温保持を伴い、1280℃の焼結温度まで小負荷(<2kPa)を用いて単一自由焼結プロセスにて共焼結される。クラックはなく、高密度の電解質及び相互接続層が首尾よく製作された(図6〜9参照)。電解質とアノード及び相互接続とアノード層の界面が十分結合されていた。共焼結されたCFL−E−A−IC−CFLユニットセルは、約10〜40μmの反りを有する。
【0101】
バルクカソード(CB)ユニットセルは、いくつかのテープ(10〜14テープ)を共にテープ注型成形及び積層することによって形成される。バルクカソード材料(CB)のグリーンテープは、(La0.8Sr0.20.98MnOとしてNexTechから市販されている25体積PMMAポアフォーマー及びカソード粉末材料を含有するスラリーから形成される。CBユニットセルは、1時間の等温保持を伴う、1120℃の焼結温度での単一の自由焼結プロセスにおいて共焼結される。
【0102】
CFL−E−A−IC−CFL及びCBユニットセルは、CB及びCFL表面上にマンガナイトスラリー(例えばLSMスラリー)を堆積させ(例えばステンシル又は印刷し)、1.5MPa〜2.0MPaの圧力にて1120℃に焼成させて、結合されたスタックを形成することによって共に結合される。結合したスタックは2×2cmのスタックに機械加工し、これをシールし、リーク確認する。スタックは、理論値の>95%の無負荷電圧(OCV)を有する例外的な性能を実証した。
【0103】
本明細書の実施形態は、最新技術からの脱却である。SOFCスタックの複数層の焼結が開示されているが(例えば米国特許第5,922,486号又は米国特許第6,228,520号を参照のこと)、いずれのプロセスも、本明細書に開示される特徴の組み合わせを含む自由焼結プロセスを実現も、利用もしていない。特に、本明細書の実施形態によれば、こうした特徴としては、構成要素の層の特定組成(すなわち、カソード、電解質、アノード、及び相互接続)、成分層の配置、成分層の物理的特徴(例えば厚さ及び密度)、成分層の焼結温度に関連する自由焼結温度、ポスト自由焼結加工処理及び結合技術、反り、熱サイクリング復元力などが挙げられるが、これらに限定されない。本願は、改善されたSOFCユニットセルを促進する新しいプロセス特徴を含むSOFC物品、及び改善された機械的及び電気的特徴を有するSOFC物品を形成するための最新のプロセスを開示する。
【0104】
上記で開示された主題は、例示として考慮されるべきであり、限定とは考慮されず、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内にあるこうした変更、増強、及び他の実施形態のすべてをカバーすることを意図する。故に、法則によって許される最大限まで、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、以上の詳細な説明によって制限又は限定されるべきでない。
【0105】
開示の要約書は、特許法に準拠するように与えられ、特許請求の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないことを理解して与えられる。加えて、以上の発明を実施するための形態において、種々の特徴が、共にグループ化され、又は開示を合理化するために単一の実施形態に記載されてもよい。この開示は、特許請求される実施形態が、各請求項に明確に記載されるものよりも多くの特徴を必要とすることを意図するものとして解釈されるべきではない。更に、以下の特許請求の範囲にある通り、本発明の主題は、開示された実施形態のいずれかの特徴のすべてよりも少ないものを対象としてもよい。故に、以下の特許請求の範囲は、発明を実施するための形態に組み込まれ、それぞれの請求項は、別個に特許請求された主題を規定するものとしてそれ自体で成り立つ。
図1
図2
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図9