特許第6041365号(P6041365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041365
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】食品生地の分割装置
(51)【国際特許分類】
   A21C 5/02 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   A21C5/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-27812(P2015-27812)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-149950(P2016-149950A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年8月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516245139
【氏名又は名称】株式会社工揮
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 信行
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−167(JP,A)
【文献】 米国特許第5897203(US,A)
【文献】 米国特許第4616990(US,A)
【文献】 米国特許第5269674(US,A)
【文献】 米国特許第3979173(US,A)
【文献】 米国特許第5775804(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0171337(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第2364594(EP,A1)
【文献】 実公昭58−031515(JP,Y2)
【文献】 実公昭56−039323(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主モータと、
前記主モータによって一定の回転角の揺動が与えられる基準駆動軸と、
生地を収容するホッパーと、
前記ホッパーの下端に設けられた生地導入口を介して当該ホッパーから生地を受け入れるシリンダと、
前記シリンダの一端に配置されると共に当該シリンダから生地を同時に受け入れる複数の分割ポケットを有し、前記シリンダから前記分割ポケットに生地を受け入れる第一位置と前記分割ポケットから生地を排出する第二位置との間を上下動自在なスライドヘッドと、
前記基準駆動軸の揺動を前記スライドヘッドの上下動に変換する第一リンク機構と、
前記シリンダ内を往復運動し、当該シリンダ内に受け入れられた生地を前記第一位置に設定されたスライドヘッドの分割ポケットに押し込む主ラムと、
前記基準駆動軸の揺動を前記主ラムの往復運動に変換する第二リンク機構と、
前記ホッパーと前記シリンダとの間で前記主ラムと平行に往復運動し、前記生地導入口を開閉するナイフと、
前記基準軸の揺動を前記ナイフの往復運動に変換する第三リンク機構と、
を備えたことを特徴とする食品生地の分割装置。
【請求項2】
前記第三リンク機構は、前記ナイフによる前記生地導入口の開放タイミングを前記基準駆動軸の揺動に対して調整可能なタイミング調整部材を含んでいることを特徴とする請求項1記載の食品生地の分割装置。
【請求項3】
前記第三リンク機構は、前記基準駆動軸に固定されたクランクと、前記ナイフに結合されたレバーと、前記クランクと前記レバーの端部同士を結合する前記タイミング調整部材としてのコンロッドと、を備え、
前記コンロッドは軸方向への引っ張り過重に対する全長を変更可能となっていることを特徴とする請求項2記載の食品生地の分割装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば混錬されたパン生地等の食品生地をホッパーから受け入れ、それを所定量に分割して供給する分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製パン工程においては、混錬された大量のパン生地を所定量の生地玉に小分けした後、焼成工程前の中間発酵へと工程を進めており、パン生地から生地玉に小分けにする自動化機械として、例えば特許文献1〜3示される分割装置が用いられている。
【0003】
これら分割装置は、生地を収容するホッパーと、前記ホッパーから生地を受け入れるシリンダと、前記シリンダの一端に配置されると共に当該シリンダから生地を同時に受け入れる複数の分割ポケットを有するスライドヘッドと、前記シリンダ内を往復運動して生地を前記スライドヘッドの分割ポケットに押し込む主ラムと、生地を前記分割ポケットに押し込む際に前記ホッパーと前記シリンダとの間を仕切るナイフとを備えている。
【0004】
前記スライドヘッドは前記分割ポケットに生地を受け入れる第一位置と前記分割ポケットから生地を排出する第二位置との間を上下動自在であり、前記主ラムは前記スライドヘッドが第一位置に設定されるタイミングに合わせてシリンダ内を前進し、当該シリンダ内に存在する生地を前記分割ポケットに向けて押圧する。これによって生地が前記分割ポケットに押し込まれる。また、前記主ラムが生地を前記スライドヘッドに向けて押圧している際、前記ナイフは前記ホッパーとシリンダとの間に前進し、両者の間で生地を切断する。
【0005】
分割ポケットに対する生地の押し込みが完了すると、前記スライドヘッドは第二位置へと下降し、当該位置において各分割ポケットから小分けにされた生地玉を排出した後、再び第一位置へ上昇し、空になった分割ポケットに対する次の生地の押し込みの準備をする。また、前記スライドヘットが第二位置へ下降し更に第一位置へ復帰してくる間、前記主ラムと前記ナイフは後退して、前記ホッパー内の生地を新たに前記シリンダに受け入れる。そして、前記スライドヘッド、主ラム及びナイフがこれら動作を繰り返すことにより、前記ホッパー内の生地を前記分割ポケットの大きさに合わせた生地玉に小分けにすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−000167
【特許文献2】特開2005−204596
【特許文献3】特開2014−168447
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような分割装置では、生地に与えるストレスを抑えながら単位時間当たりの処理速度を高めることが重要であり、そのためには前記スライドヘッド、前記主ラム及び前記ナイフの三者の連動を最適化することが必要となる。従来では、前記スライドヘッド、前記主ラム及び前記ナイフのそれぞれに対して別々の駆動手段を設けており、特に、前記主ラムや前記ナイフについてはサーボモータを利用し、前記スライドヘッドの上下動をセンサで監視し、当該センサの検出結果に基づいて主ラムやナイフの動作の最適化を行っていた。
【0008】
また、前記センサの検出結果に基づいてサーボモータを制御することにより、生地をスライドヘッドの分割ポケットに押し込む際の主ラムの速度や押圧力、前記ナイフが前記ホッパーと前記シリンダとの間に進出するタイミング等を自由に調整することができるので、例えば生地の種類が変更になり、前記スライドヘッド、前記主ラム及び前記ナイフの三者の連動に調整が必要になった場合でも、柔軟に対応することができるという利点があった。
【0009】
しかし、モータ等の駆動手段を複数設けると、部品点数が増加して装置の生産コストが嵩む他、装置を運転する際の電力消費が大きくなるといった課題があり、低コスト化、省エネ化が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、一つのモータでスライドヘッド、主ラム及びナイフの三者を駆動しつつも、これら三者の連動を最適化することができ、生地に与えるストレスを抑えながら単位時間当たりの生地玉の生産能力を高めることが可能な食品生地の分割装置を提供することにある。
【0011】
すなわち、本発明の分割装置は、主モータと、前記主モータによって一定の回転角の揺動が与えられる基準駆動軸と、生地を収容するホッパーと、前記ホッパーの下端に設けられた生地導入口を介して当該ホッパーから生地を受け入れるシリンダと、前記シリンダの一端に配置されると共に当該シリンダから生地を同時に受け入れる複数の分割ポケットを有し、前記シリンダから前記分割ポケットに生地を受け入れる第一位置と前記分割ポケットから生地を排出する第二位置との間を上下動自在なスライドヘッドと、前記基準駆動軸の揺動回転を前記スライドヘッドの上下動に変換する第一リンク機構と、前記シリンダ内を往復運動し、当該シリンダ内に受け入れられた生地を前記第一位置に設定されたスライドヘッドの分割ポケットに押し込む主ラムと、前記基準軸の揺動回転を前記主ラムの往復運動に変換する第二リンク機構と、前記ホッパーと前記シリンダとの間で前記主ラムと平行に往復運動し、前記生地導入口を開閉するナイフと、前記基準軸の揺動回転を前記ナイフの往復運動に変換する第三リンク機構と、を備えている。
【0012】
このような本発明によれば、前記主モータの回転によって前記基準駆動軸には前記スライドヘッド、前記主ラム及び前記ナイフの運動の基準となる揺動運動が与えられ、この揺動運動が第一リンク機構を介して前記スライドヘッドの上下動に変換される。このため、前記基準駆動軸の揺動を第二リンク機構によって前記主ラムの往復運動に変換し、また、前記基準駆動軸の揺動を前記第三リンク機構によって前記ナイフの往復運動に変換すれば、前記主ラム及び前記ナイフの運動は前記スライドヘッドの運動に正しく連動することになる。
【0013】
従って、一つのモータで前記スライドヘッド、前記主ラム及び前記ナイフの連動を最適化することができ、生地に与えるストレスを抑えながら当該生地を連続的に生地玉に分割することが可能となる。
【0014】
また、生地に与えるストレスを一層軽減するといった観点からすれば、前記第三リンク機構にタイミング調整部材を含め、このタイミング調整部材によって前記ナイフによる前記生地導入口の開放タイミングを前記スライドヘッドの上下動に対して調整可能とするのが好ましい。
【0015】
一つのモータで前記スライドヘッド及び前記主ラムを駆動する場合、前記スライドヘッドの上下動に対して前記主ラムの往復運動は一義的となり、当該スライドヘッドの上下動とは無関係に主ラムの移動スピードや押圧力を自由に調整することは困難となる。このため、前記シリンダからスライドヘッドの分割ポケットに生地を押し込む際に、当該生地に余分なストレスが作用する懸念がある。
【0016】
しかし、前記第三リンク機構にタイミング調整部材を含め、前記ナイフによる前記生地導入口の開放タイミングを前記スライドヘッドの上下動に対して調整可能とすれば、前記主ラムは前記スライドヘッドに対して連動することから、当該主ラムの動きに対して前記生地導入口の開放タイミングを調整することができる。これにより、主ラムがシリンダ内を前進して生地を押圧する際に、生地に作用する圧力の一部を逃がすことができ、当該生地に与えるストレスを軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明を適用したパン生地の分割装置の実施形態の一例を示す斜視図である。
図2図1に示したパン生地の分割装置の右側面図である。
図3図1に示したパン生地の分割装置の左側面図である。
図4】第三リンク機構に設けられたタイミング調整用コンロッドを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明を適用した食品生地の分割装置の実施形態を説明する。
【0019】
図1乃至図3は本発明をパン生地の分割装置に適用した実施形態の一例を示すものである。この分割装置は混錬されたパン生地を小分けにして搬出するものであり、ホッパー1から投入されたパン生地を所定重量の生地玉に分割し、かかる生地玉を側面のベルトコンベア2から次々に搬出するように構成されている。生地玉の重量や時間当たりの生成個数は操作パネル3から装置制御部へ入力することができる。
【0020】
前記分割装置は、装置ハウジング4の上部に設けられたホッパー1と、このホッパー1の直下で水平方向に延びると共に生地導入口10を介して当該ホッパー1連通しているシリンダ5と、このシリンダ5内を水平方向へ往復運動する主ラム6と、この主ラム6と対向して前記シリンダ5の一端開口を塞ぐようにして設けられたスライドヘッド7と、前記生地導入口10を開閉するように前記主ラム6と平行に往復運動する平板状のナイフ8とを備えている。
【0021】
前記ホッパー1は混錬されたパン生地の投入口であり、投入されたパン生地は前記ホッパー1の下端に設けられた生地導入口10を介して直下に位置する前記シリンダ5に受け入れられる。また、前記生地導入口10は前記ナイフ8によって適宜開閉され、前記ホッパー1から前記シリンダ5へパン生地が垂下した状態で前記ナイフ8が前進して前記生地導入口10を閉塞することにより、前記シリンダ5内のパン生地がホッパー1内のパン生地と分断されるようになっている。
【0022】
前記スライドヘッド7は前記シリンダ5に向けて開口した複数の分割ポケットを有している。この分割ポケットは図2の紙面奥行き方向へ一列に配列されており、そのために前記シリンダ5は高さが前記分割ポケットの1個分、幅が前記分割ポケットの個数分に対応している。このスライドヘッド7は後述する第一リンク機構によって上下にストロークし、最上位の第一位置と最下位の第二位置との間を移動する。前記第一位置では前記分割ポケットが前記シリンダ5に正対する一方、前記第二位置では前記分割ポケットが前記シリンダ5から退避し、当該分割ポケットが前記シリンダ5の下方空間において前記ベルトコンベア2上に開放される。
【0023】
前記第一位置は前記分割ポケットに対するパン生地の受け入れ位置であり、前記スライドヘッド7が第一位置に設定された状態で前記主ラム6が前記シリンダ5内をスライドヘッド7に向けて前進すると、前記シリンダ5内に存在するパン生地が主ラム6に押圧されて各分割ポケットに押し込まれるようになっている。また、この状態から前記スライドヘッド7が第二位置へ下降することにより、分割ポケットに充填されたパン生地は前記シリンダ5内に残るパン生地から分断される。
【0024】
各分割ポケット内には前記シリンダ5内の主ラム6と向かい合わせにピストンが設けられており、これらのピストンは前記スライドヘッド7の裏側(図2における紙面左側)から各分割ポケットに挿入されている。前記ピストンは前記分割ポケット内におけるストローク量を任意に設定できるようになっており、これによってパン生地を充填した際の分割ポケットの深さ、換言すれば分割ポケットに充填されるパン生地の容量が調整できるようになっている。すなわち、前記操作パネルで目標とする生地玉の重量を設定すると、図示外のアクチュエータが動作して前記ピストンのストローク量が変更される。
【0025】
これらピストンは前記スライドヘッド7に連動して動作し、前記スライドヘッド7が第二位置へ下降する際に前記分割ポケット内を前進し、当該分割ポケットからパン生地を押し出す。これにより、前記分割ポケットの容量に応じた大きさの生地玉が各分割ポケットから排出される。排出された生地玉は先端にスクレーパーを装着したフリッカー9によって前記スライドヘッド7から掻き落とされ、前記ベルトコンベア2上に落下する。これにより、前記スライドヘッド7の一回の上下動に対応して、前記分割ポケットの個数分の生地玉が前記ベルトコンベア2上に成形される。
【0026】
前記主ラム6は後述する第二リンク機構によって前記シリンダ5内を水平方向へ往復運動する。この主ラム6は、前記スライドヘッド7が第二位置から最上位の第一位置へ上昇する際に前進し、第一位置に達した際に前記シリンダ5内で最もスライドヘッド7に近接した位置に存在する。すなわち、前記スライドヘッド7が第一位置へ上昇し、前記分割ポケットが前記シリンダ5と連通した状態で、当該シリンダ5内のパン生地を押圧し、パン生地を分割ポケットに押し込む。また、前記スライドヘッド7が生地玉の排出のために第二位置へ下降する際に、前記主ラム6は前記スライドヘッド7から離れる方向へシリンダ5内を後退する。
【0027】
一方、前記ナイフ8は前記シリンダ5の上部に配置され、後述する第三リンク機構によって主ラム6と平行に往復運動して、前記生地導入口10を前記シリンダ5に対して閉塞又は開放する。このナイフ8は先端辺が尖塔状の刃となっており、前記スライドヘッド7に向けて前進して前記生地導入口10を閉塞する際には、当該生地導入口10からシリンダ5内に垂下したパン生地を切断する。また、前記ナイフ8が前記スライドヘッド7から離れる方向へ最も後退した状態では、当該ナイフ8は前記生地導入口10から完全に退避しており、前記ホッパー1内のパン生地が前記シリンダ5内に自重で垂下してくるようになっている。
【0028】
前記ナイフ8が前進を開始するタイミングは前記主ラム6が前記シリンダ5内を前記スライドヘッド7に向けて前進を開始するタイミングよりも早く、前記主ラム6がスライドヘッド7に最接近する以前に、前記ナイフ8は前記生地導入口10を閉塞してパン生地を切断している。また、前記主ラム6が前記スライドヘッド7に最接近した状態では、既に前記ナイフ8の後退が開始されており、前記スライドヘッド7の分割ポケットに入りきらずに前記シリンダ5内に残ったパン生地に対して、主ラム6からの押圧力が過度に作用しないようになっている。
【0029】
次に、この分割装置の駆動系について説明する。
【0030】
この分割装置の駆動系は、主モータ40と、前記装置ハウジングに対して回転自在に保持されると共に前記主モータ40によって一定角度の揺動が与えられる基準駆動軸41と、この基準駆動軸41の揺動を前記スライドヘッド7の上下動に変換する第一リンク機構72と、前記基準駆動軸41の揺動を前記主ラム6の往復運動に変換する第二リンク機構60と、前記基準駆動軸41の揺動を前記ナイフ8の往復運動に変換する第三リンク機構80と、前記主モータ40の回転運動を前記基準駆動軸41の揺動運動に変換する基準リンク機構42とを含んでいる。すなわち、この分割装置では生地玉を生産するための重要な要素である前記スライドヘッド7、主ラム6及びナイフ8の三者が同一のモータで駆動されている。
【0031】
前記基準リンク機構42は所謂レバークランク機構であり、前記主モータ40によってクランク43を回転させ、かかるクランク43の回転運動をコンロッド44によってレバー45の揺動運動に変換している。前記レバー45は前記基準駆動軸に固定されており、前記主モータ40を回転させると、前記基準駆動軸41に対して一定角度の揺動運動が与えられることになる。この基準駆動軸41の一定角度の揺動運動が前記第一乃至第三リンク機構72,60,80を介して前記スライドヘッド7、主ラム6及び前記ナイフ8の運動に変換されることから、当該基準駆動軸41の揺動運動はこの分割装置の動作の基準となっている。また、前記基準駆動軸41の揺動範囲の両端にはセンサが設けられており、これらセンサの検出信号は前記フリッカー9による生地玉の掻き落とし動作の基準となっている。
【0032】
前記第一リンク機構72は所謂スライダクランク機構であり、前記基準駆動軸41に固定されたクランク73と前記スライドヘッド7とをコンロッド74で連結している。これにより、前記主モータの回転によって前記基準駆動軸41及び前記クランク73が揺動すると、前記スライドヘッドが一定量のストロークで上下動することになる。
【0033】
一方、前記第二リンク機構60は所謂レバークランク機構であり、図2に示すように、前記基準駆動軸41の揺動運動をクランク61及びコンロッド62を介して主ラム用レバー63に伝達している。前記主ラム用レバー63は前記装置ハウジング4に固定された軸46によって揺動自在に保持されており、一端には前記コンロッド62が、多端には前記主ラム6が連結されている。このため、前記基準駆動軸41が揺動すると、その揺動運動がコンロッド62を介して前記主ラム用レバー63に伝達され、当該主ラム用レバー63が揺動することにより、前記主ラム6が前記シリンダ5内を往復運動することになる。
【0034】
このように基準駆動軸41の揺動が第一リンク機構72を介してスライドヘッド7の上下動に、第二リンク機構60を介して主ラム6の往復運動に変換されることから、前記主ラム6の動きは前記スライドヘッド7の動きに対して完全に連動し、スライドヘッド7が止まることなく上下動を繰り返すと、前記主ラム6も止まることなく往復運動を繰り返すことになる。
【0035】
その一方、前記主ラム6の動作に注目してみると、当該主ラム6は前記シリンダ5内をスライドヘッド7に向けて前進し、当該シリンダ5内のパン生地を前記スライドヘッド7の分割ポケットに向けて押圧した後、止まることなく反転して前記シリンタ5内を後退し始めるので、前記分割ポケットに対して最大の圧力でパン生地を押し込んでいる時間は極めて短くなってしまう。
【0036】
このため、前記主ラム6がシリンダ5内で前記スライドヘッド7に最接近した位置(以下、「加圧限界点」という)に所定時間だけ止まるよう、前記主ラム6の加圧限界点は前記基準駆動軸41の揺動範囲の端に対応させておらず、それよりも僅かに手前に設定されている。また、前記第二リンク機構60のコンロッド62にはバネが内蔵されており、前記主ラム6が加圧限界点に達すると、前記基準駆動軸41の揺動が前記バネの圧縮によって吸収され、前記コンロッド62の全長が短くなるように構成されている。
【0037】
これにより、前記スライドヘッド7の動きと主ラム6の動きを完全に連動させつつも、前記主ラム6を加圧限界点に一定時間だけ保持しておくことが可能となり、前記分割ポケットに対する生地の押し込みを確実に行うことが可能となる。また、前記バネの強さの調整により、前記主ラム6がシリンダ5内のパン生地を押圧する力の上限を設定することが可能となり、加圧限界点における主ラム6の保持時間とも相まって、パン生地を低めの押圧力でじんわりと分割ポケットに押し込むことができ、分割工程でパン生地に与えるストレスを軽減することが可能となる。
【0038】
更に、前記スライドヘッド7の位置に対する前記主ラム6の位置を微調整可能とするため、前記第二リンク機構60のクランク61は取り付け角度を数度刻みで調整可能なハブを用いて前記基準駆動軸41に固定されている。
【0039】
前記第三リンク機構80は所謂レバークランク機構であり、前記主モータ40及び前記基準リンク機構42を挟んで前記第二リンク機構60と反対側に配置されている。図3に示すように、前記第三リンク機構80は、前記基準駆動軸41の揺動運動をクランク81及びコンロッド82を介してナイフ用レバー83に伝達している。前記ナイフ用レバー83は前記主ラム用レバー63と共通の軸46によって揺動自在に保持されており、一端には前記コンロッド82が、多端には前記ナイフ8が連結されている。このため、前記基準駆動軸41が揺動すると、その揺動運動がコンロッド82を介して前記ナイフ用レバー83に伝達され、当該ナイフ用レバー83が揺動することにより、前記ナイフ8が前記シリンダの上部で往復運動し、前記生地導入口10の開閉を行うことになる。
【0040】
このように基準駆動軸41の揺動が第三リンク機構80を介して前記ナイフ8の往復運動に変換されることから、当該ナイフ8の運動は同じく前記基準駆動軸41の揺動を基準とする前記スライドヘッド7及び前記主ラム6の動きに対して完全に連動する。
【0041】
その一方、前記スライドブロック7の分割ポケットに対するパン生地の押し込みを円滑に行いつつ、当該パン生地に与えるストレスを可及的に軽減するためには、前記スライドヘッド7及び前記主ラム6それぞれの動作に対して前記ナイフ8による生地導入口0の開閉タイミングを最適化する必要があり、前記第三リンク機構80のコンロッド82はタイミング調整部材としての機能を担っている。
【0042】
図4は前記第三リンク機構80のコンロッド82を示すものである。このコンロッド82は、前記クランク81に対して回転自在に連結される第一ブラケット84と、前記ナイフ用レバー83の一端に回転自在に連結される第二ブラケット85と、これら第一ブラケット84と第二ブラケット85を連結して当該コンロッド82の全長を制限する規制ロッド86と、前記第一ブラケット84と第二ブラケット85との間に押し縮められた状態で挿入されたバネ87と、を備えている。前記規制ロッド86はその一端が前記第ニブラケット85に対してネジ止めされる一方、多端は前記第二ブラケット85のフランジ部85aに設けられた軸受スリーブ85bを貫通して前記第二ブラケット85に対してスライド自在である。また、第二ブラケット85のフランジ部85aを貫通した前記規制ロッド86の端部にはロックナット88が螺合しており、かかるロックナット88と前記軸受スリーブ85bの間にはスペーサ89(図4中に黒塗りで表示)が挟み込まれている。
【0043】
すなわち、このコンロッド82は、軸方向の圧縮荷重に関してはバネ87の弾性力に抗して全長を押し縮めることができる一方、軸方向の引っ張り荷重に関しては前記ロッド86によってその全長が制限されることになる。特に、引っ張り荷重に関しては、前記第二ブラケット85のフランジ部85aとロックナット88との間に挿入するスペーサ89の厚さを変更することにより、全長を微調整することが可能となっている。
【0044】
この第三リンク機構80では、前記主ラム6が加圧限界点に向けて前記シリンダ5内を前進している最中に、前記ナイフ8が当該シリンダ5とホッパー1とを連通する生地導入口10を完全に閉塞するように、前記基準駆動軸41に対する前記クランク81の取り付け角度を設定している。この際、前記ナイフ8が生地導入口10を完全に閉塞した状態を所定時間だけ維持するよう、前記ナイフ8の最前進位置は前記基準駆動軸41の揺動範囲の端に対応させておらず、それよりも僅かに手前に設定されている。このため、前記ナイフ8が最前進位置に達して生地導入口を閉塞すると、前記基準駆動軸41の揺動が前記コンロッド82のバネ87の圧縮によって吸収され、前記コンロッド62の全長が短くなるように構成されている。
【0045】
これにより、前記スライドヘッド7及び主ラム6の動きに対して前記ナイフ8の動きを完全に連動させつつも、前記ナイフ8によって生地導入口を一定時間だけ閉塞しておくことが可能となり、前記シリンダ内のパン生地に対して前記主ラム6の押圧力を確実に作用させることができる。
【0046】
その一方、前記コンロッド82は引っ張り過重に対して全長が制限されているので、前記ナイフ8を最前進位置から後退させて前記生地導入口を開放する際には、前記バネ87の弾性力に関係なく素早くナイフ9を後退させることができる。そして、前記スペーサ89の厚さを変更することによって前記コンロッド82の全長を微調整することが可能なので、前記基準駆動軸41に対する前記クランク81の取り付け角度を変更することなく、前記ナイフ8を最前進位置から後退させるタイミングを調整することができる。
【0047】
従って、この第三リンク機構80では、タイミング調整部材としての前記コンロッド82を含むことにより、前記ナイフ8の基本的な動きに関しては前記スライドヘッド7及び前記主ラム6に連動させつつも、当該ナイフによる生地導入口の閉塞タイミングと開放タイミングの双方を前記スライドヘッド7及び前記主ラムの動きに対して調整可能である。
【0048】
そして、このような構成を有する本実施形態の分割装置によれば、一つの主モータ40によって前記スライドヘッド7、前記主ラム6及び前記ナイフ8を駆動しつつも、これら三者の連動のタイミングを調整することができ、パン生地を前記スライドヘッド7の分割ポケットに押し込んで分割するに際し、当該パン生地に対して与えるストレスを可及的に小さくすることが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1…ホッパー、2…ベルトコンベア、3…操作パネル、4…装置ハウジング、5…シリンダ、6…主ラム、7…スライドヘッド、8…ナイフ、40…主モータ、41…基準駆動軸、42…第一リンク機構、60…第二リンク機構、80…第三リンク機構


図1
図2
図3
図4