特許第6041371号(P6041371)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041371フィルタ、このフィルタを備えたリザーバタンク、およびこのリザーバタンクを備えた液圧ブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041371
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】フィルタ、このフィルタを備えたリザーバタンク、およびこのリザーバタンクを備えた液圧ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/01 20060101AFI20161128BHJP
   B60T 11/26 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B01D29/04 520Z
   B01D29/04 510E
   B01D29/04 530A
   B60T11/26 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-560696(P2014-560696)
(86)(22)【出願日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】JP2014050618
(87)【国際公開番号】WO2014122955
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-22068(P2013-22068)
(32)【優先日】2013年2月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 慎一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 孝行
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭54−177483(JP,U)
【文献】 実開昭53−98238(JP,U)
【文献】 実開平03−070709(JP,U)
【文献】 特開2009−101855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 29/04
B01D 35/02
B01D 35/22
B60T 11/26
B60K 15/04
B62J 35/00
F02M 37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧送充填機でフィルタの軸方向に少なくとも伸張可能な筒状の変形可能部と、
前記変形可能部の一端に設けられるとともに、支持部に前記フィルタの軸方向に係合する環状の係合フランジ部と、
前記変形可能部の他端の底部に設けられるとともに、作動液の流動時に前記作動液に混入する異物を除去するメッシュ部と、
を少なくとも備え
前記圧送充填機が前記底部に当接するとき、前記メッシュ部を保護するガード部を有す
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項2】
前記変形可能部は、少なくとも伸張可能な蛇腹形状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記圧送充填機で前記底部を押圧することで前記変形可能部を所定量伸張させた状態で前記圧送充填機を除去したとき、前記変形可能部が所定量伸張させた状態に保持される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記変形可能部は、前記フィルタの軸方向に収縮可能な伸縮可能部である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記圧送充填機で前記底部を押圧することで前記変形可能部を所定量伸張させた状態で前記圧送充填機を除去したとき、前記変形可能部が所定量伸張させた状態から第2の所定量収縮する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載のフィルタ。
【請求項6】
作動液を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体に突設されるとともに前記作動液を前記タンク本体内に注入するための作動液注入部と、
前記作動液注入部に配設されて前記作動液に混入する異物を除去するフィルタとを少なくとも備え、
前記フィルタは、請求項1ないしのいずれか1に記載のフィルタである
ことを特徴とするリザーバタンク。
【請求項7】
作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧で作動するブレーキシリンダとを少なくとも備え、
前記リザーバタンクが請求項に記載のリザーバタンクである
ことを特徴とする液圧ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置において作動液中のコンタミ等の異物を除去するフィルタの技術分野、作動液を貯留するとともにこのフィルタを備えたリザーバタンクの技術分野、およびこのリザーバタンクを備えた液圧ブレーキ装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、油圧等の液圧を利用した液圧作動装置として液圧ブレーキ装置を採用した車両がある。この液圧ブレーキ装置には、液圧を発生させるマスタシリンダに供給する作動液を貯留するリザーバタンクが用いられている。
【0003】
この種のリザーバタンクとして、従来、タンク本体内に作動液を注入するために円筒状の作動液注入部を有するとともに、この作動液注入部に配設されて、作動液をタンク本体内に注入する際に作動液に混入するコンタミ等の異物を除去するフィルタを有するリザーバタンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9に示すように、この特許文献1に記載のリザーバタンク91では、円筒状の作動液注入部92の内周面に段差部93が設けられるとともに、この段差部93に円筒状のフィルタ94の係合フランジ95が上方から係合支持されることで、フィルタ94が作動液注入部92内に装着される。なお、図示例のフィルタ94では、異物を捕獲するメッシュ部96がフィルタ94の円筒状側壁97に設けられている。しかし、この種のリザーバタンクにおいては、メッシュ部96がフィルタ94の底部98に設けられる場合もある(図9は特許文献1に記載のリザーバタンク91を示すものであるが、説明の便宜上、この図9を用いて、従来の他のリザーバタンクについても説明する。)。
【0005】
そして、特許文献1に記載のリザーバタンクを始め、この種のリザーバタンクにおいては、一般に、作動液をリザーバタンクに注入する際、作動液充填用の圧送充填機(圧送ガン)を上方から作動液注入部内に所定量挿入降下させて、この状態でこの圧送ガンにより作動液をリザーバタンクに注入している。その際、作動液に混入するコンタミ等の異物がフィルタによって除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2908206号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のリザーバタンクに用いられるフィルタには、一般に圧送ガンが降下した際の作動液充填口の先端位置に応じた軸方向の長さのフィルタが採用されている。この先端位置は、リザーバタンクによって種々異なるため、装着されたフィルタの底面の位置がリザーバタンク毎に異なる。このため、種々の異なる長さのフィルタを用意しなければならなく、圧送ガンの先端位置が種々異なる多くのリザーバタンクに対してフィルタを共通化することが難しいという問題がある。
【0008】
また、作動液注入口から圧送ガンの先端位置までの距離が長いリザーバや圧送ガンの先端位置が下方に深いリザーバタンクでは、使用されるフィルタの長さが長くなるため、フィルタが大型になる。このため、フィルタを搬送する場合、一度に多くのフィルタを搬送することが難しいという問題もある。更に、底部にメッシュ部が設けられるフィルタでは、圧送ガンの先端位置が規定値以上、深くストロークすると、圧送ガンの先端がフィルタのメッシュ部に当接し、メッシュ部が損傷するという問題も考えられる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、作動液を充填する圧送充填機(圧送ガン)の異なる降下ストロークに対して共通に使用可能なフィルタ、このフィルタを備えたリザーバタンク、およびこのリザーバタンクを備えた液圧ブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために、本発明のフィルタは、外部部材でフィルタの軸方向に少なくとも伸張可能な筒状の変形可能部と、前記変形可能部の一端に設けられるとともに、支持部に前記フィルタの軸方向に係合する環状の係合フランジ部と、前記変形可能部の他端の底部に設けられるとともに、作動液の流動時に前記作動液に混入する異物を除去するメッシュ部とを少なくとも備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明のフィルタは、前記変形可能部が少なくとも伸張可能な蛇腹形状に形成されていることを特徴としている。
更に、本発明のフィルタは、前記外部部材である圧送充填機で前記底部を押圧することで前記変形可能部を所定量伸張させた状態で前記圧送充填機を除去したとき、前記変形可能部が所定量伸張させた状態に保持されることを特徴としている。
【0012】
更に、本発明のフィルタは、前記変形可能部が前記フィルタの軸方向に収縮可能な伸縮可能部であることを特徴としている。
更に、本発明のフィルタは、前記外部部材である圧送充填機で前記底部を押圧することで前記変形可能部を所定量伸張させた状態で前記圧送充填機を除去したとき、前記変形可能部が所定量伸張させた状態から第2の所定量収縮することを特徴としている。
更に、本発明のフィルタは、前記外部部材が前記底部に当接するとき、前記メッシュ部を保護するガード部を有することを特徴としている。
【0013】
また、本発明のリザーバタンクは、作動液を貯留するタンク本体と、前記タンク本体に突設されるとともに前記作動液を前記タンク本体内に注入するための作動液注入部と、前記作動液注入部に配設されて前記作動液に混入する異物を除去するフィルタとを少なくとも備え、前記フィルタが、前述の本発明のフィルタのいずれか1つであることを特徴としている。
【0014】
一方、本発明のブレーキ装置は、作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンク内の作動液が供給されるとともに作動時にブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからのブレーキ液圧で作動するブレーキシリンダとを少なくとも備え、前記リザーバタンクが前述の本発明のリザーバタンクであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明のフィルタ、リザーバタンク、およびブレーキ装置によれば、フィルタが軸方向に少なくとも伸張可能とされているので、フィルタの装着時に外部材である圧送充填機でフィルタを軸方向に伸張させることで、フィルタの装着状態でフィルタの底面の位置を異ならせることができる。したがって、フィルタの底面の位置がそれぞれ異なる種々のリザーバタンクに対して同じフィルタが使用できる。すなわち、圧送充填機のストロークの異なる種々のリザーバタンクに対してフィルタの共通化が可能となる。これにより、従来のように種々の異なる長さのフィルタを用意しなくても済むようになり、コストを低減できるとともに取扱管理が容易となる。その結果、本発明のフィルタを用いることで、リザーバタンクおよび液圧ブレーキ装置の製造を効率よく行うことが可能となる。
【0016】
また、圧送充填機のストロークが大きいリザーバタンクに使用されるフィルタを最初収縮させておくことで、フィルタの軸方向長さをより短くすることができる。これにより、フィルタがより小型コンパクトになるため、一度に多くのフィルタを搬送することが可能となる。
【0017】
更に、フィルタにメッシュ部を保護するガード部が設けられることで、外部部材である圧送充填機がストロークしたとき圧送充填機の先端がメッシュ部に当接することをこのガード部で保護することができる。なお、圧送充填機以外の外部部材が前記底部に当接しても、外部部材の先端がメッシュ部に当接することをガード部で保護することができる。また、ガード部が設けられない場合でも、圧送充填機がストロークしたとき圧送充填機の先端がメッシュ部には当接する可能性があるが、この場合にはフィルタが伸張することでメッシュ部の損傷を抑制することが可能となる。
【0018】
更に、圧送充填機により変形可能部を所定量伸張させた状態で圧送充填機を除去したとき、変形可能部が所定量伸張させた状態から第2の所定量収縮するようにする。これにより、メッシュ部を、変形可能部が所定量伸張されたときの位置より上方に位置させることが可能となる。したがって、メッシュ部を必要最大量の作動液の液面より上方に位置させることが可能となる。その結果、メッシュ部が作動液に浸ることがないので、メッシュ部で捕獲されたコンタミ等の異物が作動液に再び混入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るリザーバタンクの実施の形態の一例を備える液圧ブレーキ装置を、模式的に示す図である。
図2図1に示す例の液圧ブレーキ装置に用いられるリザーバタンクにおける作動液注入部の一部を示す部分断面図である。
図3図3(A)は、図2に示す例の作動液注入部の作動液注入部本体の上部を示す縦断面図、図3(B)は図3(A)におけるIIIB−IIIB線に沿う断面図である。なお、図3(A)は図3(B)におけるIIIA−IIIA線に沿う断面図に相当する。
図4図4(A)は、フィルタを示す縦断面図、図4(B)は図4(A)におけるIVB−IVB線に沿う断面図である。なお、図4(A)は図4(B)におけるIVA−IVA線に沿う断面図に相当する。
図5】フィルタの挙動を説明し、図5(A)は非挙動状態のフィルタを示す縦断面図、図5(B)は最大伸張到達前の所定量伸張した状態のフィルタを示す縦断面図、図5(C)は最大に伸張した状態のフィルタを示す縦断面図である。
図6】フィルタの装着を説明し、図6(A)は装着開始の状態のフィルタを示す縦断面図、図6(B)は装着途中の状態のフィルタを示す縦断面図、図6(C)は装着終了直後の状態のフィルタを示す縦断面図である。
図7】圧送ガンの降下ストロークが図2に示すリザーバタンクと異なるリザーバタンクへのフィルタの装着状態を示す、図2と同様の部分断面図である。
図8】本発明のフィルタの実施の形態の他の例を示し、図8(A)は図6(A)に対応する断面図、図8(B)は図6(C)に対応する断面図、図8(C)は圧送ガンが引き抜かれた状態を示す断面図である。
図9】特許文献1に記載のリザーバタンクを模式的に示す、図2と同様の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係るリザーバタンクの実施の形態の一例を備える液圧ブレーキ装置を、模式的に示す図である。
【0021】
図1に示すように、この例の液圧ブレーキ装置1は、基本的には従来公知の一般的な2系統の液圧ブレーキ装置と同じである。すなわち、液圧ブレーキ装置1は、ブレーキペダル2、倍力装置3、タンデムマスタシリンダ4、リザーバタンク5、およびブレーキシリンダ6,7,8,9を備えている。
【0022】
そして、運転者がブレーキペダル2を踏み込むと、倍力装置3が作動してペダル踏力に応じた入力を所定のサーボ比で倍力して出力する。この倍力装置3の出力でタンデムマスタシリンダ4の図示しないプライマリピストンが作動してプライマリ液圧室の作動液であるブレーキ液を一方の系統の各ブレーキシリンダ6,7に送給するとともに、図示しないセカンダリピストンが作動してセカンダリ液圧室のブレーキ液を他方の系統のブレーキシリンダ8,9に送給する。各ブレーキ系統のロスストロークが消滅すると、タンデムマスタシリンダ4が液圧を発生する。このタンデムマスタシリンダ4の液圧が各ブレーキシリンダ6,7,8,9に伝達されて各ブレーキシリンダ6,7,8,9がそれぞれブレーキ力を発生し、このブレーキ力により各車輪10,11,12,13にブレーキがかけられる。
【0023】
リザーバタンク5には必要量のブレーキ液が貯留される。このリザーバタンク5は、作動液を貯留する容器であるタンク本体14と、タンク本体14に上方に向けて一体に突設されて作動液をタンク本体14内に注入するための作動液注入部15とを有している。
【0024】
図2は、この例のリザーバタンクにおける作動液注入部の一部を示す部分断面図である。
図2に示すように、リザーバタンク5の作動液注入部15は、上端に作動液注入口16を有して上方に開口するほぼ円筒状の作動液注入部本体17と、作動液注入口16を閉塞するキャップ18とを有している。これらの作動液注入口16およびキャップ18は詳細に示さないが、それぞれ従来公知の作動液注入口およびキャップである。作動液注入部本体17の上部19内にはフィルタ20が配設されている。
【0025】
図3(A)は、この例の作動液注入部本体の上部を示す縦断面図、図3(B)は図3(A)におけるIIIB−IIIB線に沿う断面図である。なお、図3(A)は図3(B)におけるIIIA−IIIA線に沿う断面図に相当する。
【0026】
図3(A)に示すように、ほぼ円筒状の作動液注入部本体17の上部19の内周面には、支持用段差部21が設けられている。この支持用段差部21は、図示例では円環状に形成されている。しかし、支持用段差部21は必ずしも円環状に形成される必要はなく、所定数の段差部を作動液注入部17の内周面に円周方向に所定の間隔を置いて設けることもできる。図3(B)に示すように、作動液注入部17の上部19の下端には十字状のフィルタ当接部22が設けられている。このフィルタ当接部22により、上部19の下端には下方に開口する4つの扇形の開口部23,24,25,26が形成されている。このフィルタ当接部22は必ずしも十字状に形成される必要はなく、上部19の下端が下方に開口するようにされていさえすれば、I字状やY字状等の任意の形状に形成することができる。フィルタ当接部22がI字状に形成された場合には2つの半月形の開口部が形成され、また、フィルタ当接部22がY字状に形成された場合には3つの扇形の開口部が形成される。
【0027】
図4(A)は、この例のフィルタを示す縦断面図、図4(B)は図4(A)におけるIVB−IVB線に沿う断面図である。なお、図4(A)は図4(B)におけるIVA−IVA線に沿う断面図に相当する。
【0028】
図4(A)に示すように、フィルタ20は上下方向のいずれにも開口するほぼ円筒状に形成されている。このフィルタ20は、上端部外周に形成された係合フランジ部27と、上下方向中間部に蛇腹形状に形成されてフィルタ20の軸方向(図4(A)において上下方向)に伸縮可能な伸縮可能部28(本発明の変形可能部に相当)と、下端開口部に張設されたメッシュ部29と、伸縮可能部28の下端部内周にフィルタ20の底部であるとともに十字状に形成されてメッシュ部29を支持するメッシュ支持部30と、メッシュ支持部30における伸縮可能部28の内周面側の4個所にそれぞれ形成されてメッシュ部29を保護するガード部31とを有する。
【0029】
十字状のメッシュ支持部30により、伸縮可能部28の下端には下方に開口する4つの扇形の開口部32,33,34,35が形成されている。メッシュ部29はこれらの開口部32,33,34,35の全領域にわたってメッシュが張設されて形成されている。その場合、1枚のメッシュが4つの開口部32,33,34,35の全領域にわたって張設されてもよいし、4枚のメッシュが各開口部32,33,34,35毎に張設されてもよく、更には、2枚のメッシュの一方のメッシュが2つの開口部32,33に張設されるとともに他方のメッシュが他の2つの開口部34,35に張設されてもよい。
【0030】
なお、このメッシュ支持部30は必ずしも十字状に形成される必要はなく、フィルタ20の下端が下方に開口するようにされていさえすれば、例えばI字状やY字状等の任意の形状に形成することができる。メッシュ支持部30がI字状に形成された場合には2つの半月形の開口部が形成され、また、メッシュ支持部30がY字状に形成された場合には3つの扇形の開口部が形成される。そして、それらの開口部にメッシュが張設される。ガード部31はメッシュ支持部30の他の部分36より厚肉に形成されているとともに伸縮可能部28の下端から内方にかつその上面がメッシュ部29の上面より上方に突設されている。
【0031】
フィルタ20が作動液注入部本体17の上部19に装着される前は、図5(A)に示すように伸縮可能部28が軸方向(図5(A)において上下方向)に最小に伸縮した状態となっている。そして、フィルタ20が軸方向に引っ張られることで、図5(B)に示すように伸縮可能部28が伸張する。そして、図5(C)に示すように伸縮可能部28は最大に伸張すると、その蛇腹形状が消滅するようになっている。
【0032】
次に、このように構成されたこの例のフィルタ20の作動液注入部本体17への装着について説明する。
最も収縮した図4(A)および図5(A)に示す状態のフィルタ20が図2において作動液注入口16から作動液注入部本体17内に挿入される。その場合、伸縮可能部28が係合フランジ部27より下方となるようにされる。そして、図2に示すように係合フランジ部27が作動液注入部本体17の支持用段差部21に上方から係合することで、フィルタ20が作動液注入部本体17に支持される。
【0033】
このようにフィルタ20が作動液注入部本体17に支持された状態で、従来公知のブレーキ液充填用の圧送充填機(圧送ガン)37(本発明の外部部材に相当)が作動液注入口16から作動液注入部本体17内に挿入されると、図6(A)に示すように圧送ガン37の先端(図6(A)において下端)がフィルタ20のガード部31の上面に当接する。このとき、圧送ガン37の先端はフィルタ20のメッシュ部29に当接しない。すなわち、ガード部31によってメッシュ部29が圧送ガン37から保護される。また、圧送ガン37の先端部の径が最も収縮した状態の伸縮可能部28の最小内径より小さく設定されている。これにより、圧送ガン37の先端部の外周が伸縮可能部28の最小内径の内周面にほとんど接触(干渉)しない。更に、圧送ガン37の中間部に設けられたOリング等のシール部材38が作動液注入部本体17の内周面に液密にかつ摺動可能に嵌合する。
【0034】
圧送ガン37が作動液注入部本体17内に更に挿入されると、ガード部31が圧送ガン37の先端によって下方へ押圧されるので、図6(B)に示すようにフィルタ20の伸縮可能部28が伸張する。そして、図6(C)に示すようにフィルタ20の下面がフィルタ当接部22の上面に当接すると、圧送ガン37が作動液注入部本体17内への挿入が停止される。
【0035】
このとき、リザーバタンク5が、最大に伸張したフィルタ20において、その係合フランジ部27の下面よりフィルタ20の下面までの長さL1mm(図5(C)に図示)が、作動液注入部本体17の支持用段差部21から作動液注入部17のフィルタ当接部22の上面までの長さL2mm(図3(A)に図示)と同じかほぼ同じに設定されているリザーバタンク5であるとする(L1=L2、または、L1≒L2)。すると、フィルタ20は最大に伸張した状態となり、蛇腹形状が消滅する。こうして、フィルタ20が作動液注入部本体17に装着される。そして、この例のリザーバタンク5では、圧送ガン37の降下ストロークは、フィルタ20が最大に伸張して蛇腹形状が消滅する位置となるように設定されている。
【0036】
図6(C)に示す状態で、ブレーキ液が圧送ガン37によりリザーバタンク5内に送給されて所定量充填される。このとき、圧送ガン37のシール部材38により、ブレーキ液が作動液注入口16から外部に漏出することが防止される。ブレーキ液の充填作業が終了すると、圧送ガン37が作動液注入部本体17から引き抜かれる。このように、圧送ガン37が作動液注入部本体17から引き抜かれても、フィルタ20は最大に伸張した図6(C)に示す状態に保持される。その後、キャップ18が作動液注入部本体17の上端に装着されて、作動液注入口16が閉じられる。なお、フィルタ20は最大に伸張した状態で作動液注入部本体17から引き抜かれるとともに、係合フランジ部27が上方から押さえられた状態でメッシュ支持部30が所定の力で上方に押圧されることで所定量収縮させるようにすることもできる。
【0037】
また、リザーバタンク5が、最大に伸張したフィルタ20において、前述の長さL1mmが、前述の長さL2mmより長く設定されているリザーバタンク5であるとする(L1>L2)。その場合、用いられるフィルタ20は、前述の図2に示すリザーバタンク5に用いられたフィルタ20と同じフィルタである。そして、フィルタ20の下面がフィルタ当接部22の上面に当接した状態では、図7に示すようにフィルタ20は最大に伸張しなく、蛇腹形状が存在した状態となる。こうして、フィルタ20が作動液注入部本体17に装着される。このように、同じフィルタ20が圧送ガン37の降下ストロークが互いに異なる図2に示すリザーバタンク5と図7に示すリザーバタンク5とに共通して使用される。そして、この例のリザーバタンク5では、圧送ガン37の降下ストロークは、フィルタ20が伸張しても蛇腹形状が存在する位置となるように設定されている。
【0038】
この状態で、前述のように圧送ガン37が作動液注入部本体17から引き抜かれても、フィルタ20は、蛇腹形状が存在する図7に示す状態に保持される。したがって、この場合のリザーバタンク5では、蛇腹形状が存在する状態でフィルタ20が作動液注入部本体17に装着されるので、蛇腹形状によりブレーキ液の脈動が抑制される。これにより、ブレーキ液の波打ちが抑制される。
【0039】
この例のフィルタ20によれば、フィルタ20が軸方向に伸縮可能とされているので、フィルタ20の装着時にフィルタ20を軸方向に伸張させることで、フィルタ20の装着状態で、フィルタ20の底面の位置を異ならせることができる。したがって、フィルタ20の底面の位置がそれぞれ異なる種々のリザーバタンク5に対して同じフィルタ20が共通して使用できる。すなわち、圧送ガン37の降下ストロークの異なる種々の複数のリザーバタンク5に対してフィルタ20の共通化が可能となる。これにより、従来のように種々の異なる長さのフィルタを用意しなくても済むようになり、コストを低減できるとともに取扱管理が容易となる。その結果、この例のフィルタ20を用いることで、リザーバタンク5および液圧ブレーキ装置1の製造を効率よく行うことが可能となる。
【0040】
なお、種々の複数のリザーバタンク5に対してフィルタ20を共通して使用する場合、フィルタ20の最大伸張時のフィルタ20の軸方向の長さが、これらの複数のリザーバタンク5のうち、圧送ガン37の降下ストロークが最大であるリザーバタンク5に対してリザーバタンク5が使用されるときに図6(C)に示すように蛇腹形状が消滅するように設定することが好ましい。もちろん、これに限定されることはない。
【0041】
また、圧送ガン37の降下ストロークが大きいリザーバタンク5に使用されるフィルタ20を最初収縮させておくことで、フィルタ20の軸方向長さをより短くすることができる。これにより、フィルタ20がより小型コンパクトになるため、一度に多くのフィルタ20を装着現場に搬送することが可能となる。
【0042】
更に、前述の各例のリザーバタンク5に示されるフィルタ20の底部にメッシュ部29が設けられるフィルタ20では、圧送ガン37が降下ストロークしたとき圧送ガン37の先端がフィルタ20のガード部31に当接するだけでメッシュ部29には当接することはない。これにより、メッシュ部29を保護することができる。なお、圧送ガン37以外の外部部材がフィルタ20の底部に当接しても、この外部部材の先端がメッシュ部29に当接することをガード部31で保護することができる。また、ガード部31が設けられない場合には、圧送ガン37が降下ストロークしたとき圧送ガン37の先端がメッシュ部29には当接する可能性があるが、この場合にはフィルタ20が伸張することでメッシュ部29の損傷を抑制することができる。
【0043】
図8は本発明のフィルタの実施の形態の他の例を示し、図8(A)は図6(A)に対応する断面図、図8(B)は図6(C)に対応する断面図、図8(C)は圧送ガンが引き抜かれた状態を示す断面図である。
【0044】
前述の例のフィルタ20では、圧送ガン37により最大に伸張された後、圧送ガン27が作動液注入部本体17から引き抜かれたとき最大に伸張された状態に保持されるようになっている。これに対して、この例のフィルタ20では、図8(A)および(B)に示すように伸縮可能部28が圧送ガン37により最大(所定量)に伸張された後、圧送ガン27が作動液注入部本体17から引き抜かれたとき、図8(C)に示すように伸縮可能部28はその弾性力で第2の所定量自然に収縮するようになっている。したがって、メッシュ部29が、伸縮可能部28が最大に伸張されたときの位置より上方に位置する。
【0045】
これにより、図8(C)に示すようにメッシュ部29が必要最大量のブレーキ液Fの液面より上方に位置することが可能となる。したがって、メッシュ部29がブレーキ液Fに浸ることがないので、メッシュ部29で捕獲されたコンタミ等の異物がブレーキ液Fに再び混入することが抑制される。そして、この例のリザーバタンク5では、圧送ガン37の降下ストロークは、フィルタ20が最大に伸張する位置となるように設定されている。
この例のフィルタ20およびリザーバタンク5の他の構成および他の作用効果は、前述の例と同じである。
【0046】
なお、本発明は前述の各例に限定されることはなく、例えば前述の各例ではリザーバタンク5が伸縮可能部28により軸方向に伸縮するものとしているが、伸縮可能部28に代えて、伸張のみ可能な伸張可能部とすることもできる。要は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係るフィルタは、液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置に用いられて作動液中のコンタミ等の異物を除去するフィルタに好適に利用することができる。
本発明に係るリザーバタンクは、油圧等の液圧を利用した液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置に用いられて、作動液を貯留するリザーバタンクに好適に利用することができる。
また、本発明に係る液圧ブレーキ装置は、リザーバタンクに貯留された作動液を用いて車輪にブレーキをかける液圧ブレーキ装置に好適に利用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9