【実施例】
【0056】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0057】
[実施例1]
<易接着層塗料の調製>
まず、スチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分100%、東亜合成株式会社製、ガラス転移温度58℃)60部を、攪拌機を用いて酢酸エチル140部中へ攪拌しながら少量ずつ添加し樹脂溶解を行い濃度30%の溶解液を作製した。
次いで、ポリオレフィン系樹脂「サーフレンP−1000(商品名)」(固形分20%、三菱化学株式会社製)70部と上記のスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分30%)20部とを配合し、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度5%となるまで希釈し易接着層塗料を調製した。
【0058】
<ハードコート層塗料の調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:6、重量平均分子量:2200、日本合成化学株式会社製)100部を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)3.5部と、ヒンダードアミン系光安定化剤「TINUVIN 292(商品名)」(BASF社製)2.5部と、レベリング剤RS75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.3部を酢酸ブチル/n−プロピルアルコール=50/50(重量部)で紫外線硬化型樹脂の塗料中の固形分濃度が45%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料を調製した。
なお、該ハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm
2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は11.5%であった。
【0059】
<ハードコートフィルムの作製>
シクロオレフィンフィルムとして厚さ60μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製)の片面に上記の易接着層塗料をバーコーターを用いて塗工し、90℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ乾燥固化し、塗膜厚み0.3μmの易接着層を形成させ、易接着層付きフィルムを得た。
次に、その易接着層付きフィルムの易接着層上に、上記のハードコート層塗料を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み5.0μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量150mJ/cm
2にて硬化させてハードコート層を形成し、本実施例のハードコートフィルムを作製した。
【0060】
[実施例2]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を95部/5部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を40部/60部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0062】
[実施例4]
実施例1の易接着層の塗膜厚みを0.1μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0063】
[実施例5]
実施例1の易接着層の塗膜厚みを1.0μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0064】
[実施例6]
実施例1の易接着層に用いたポリオレフィン系樹脂サーフレンP−1000の替わりに「ポリオレフィン系樹脂ユニストールP−901(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0065】
[実施例7]
実施例1のシクロオレフィンフィルムを厚さ100μmの「ARTON FILM FEKP100(商品名)」(JSR株式会社製)に替えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0066】
[実施例8]
実施例1のハードコート層に用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B」の替わりに「UA−306H(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:3、重量平均分子量:732、共栄社化学株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本実施例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm
2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は8.2%であった。
【0067】
[実施例9]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を97部/3部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0068】
[実施例10]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を37部/63部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0069】
[実施例11]
実施例2の易接着層で用いたスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」の替わりに「ARUFON UG−4035(商品名)」(固形分30%、ガラス転移温度52℃、東亜合成株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0070】
[実施例12]
実施例2の易接着層で用いたスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」の替わりに「ARUFON UG−4040(商品名)」(固形分30%、ガラス転移温度63℃、東亜合成株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0071】
[実施例13]
実施例1のハードコート層で用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」の替わりに「EBECRYL−5129(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:6、重量平均分子量:800、ダイセル・オルネクス株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本実施例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm
2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は8.5%であった。
【0072】
[実施例14]
実施例1のハードコート層で用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」の替わりに「NKオリゴ U−6LPA(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:6、重量平均分子量:760、新中村化学工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本実施例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm
2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は44.5%であった。
【0073】
[比較例1]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を100部/0部(つまり、スチレンアクリル系樹脂を使用しなかった)としたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0074】
[比較例2]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を0部/100部(つまり、ポリオレフィン系樹脂を使用しなかった)としたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0075】
[比較例3]
実施例1のハードコート層で用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」の替わりに「Art−Resin UN−904(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:10、重量平均分子量:4900、根上工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本比較例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm
2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は7.8%であった。
【0076】
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
(1)塗膜の厚み
易接着層及びハードコート層の塗膜の形成厚みは、Thin−Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
【0077】
(2)透明性
各実施例、比較例で作製したハードコートフィルムについて、JIS K7136に示される試験法により全光線透過率を測定した。
【0078】
(3)密着性(初期密着性および経時密着性)
密着性は、JIS−K5600−5−6に準じて評価した。また、易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性、及び易接着層とハードコート層との密着性を各々確認するため、シクロオレフィンフィルムに易接着層を形成したもので易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性を確認し、シクロオレフィンフィルムに易接着層、及びハードコート層を形成したもので易接着層とハードコート層との密着性を評価した。
まず、易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性(初期密着性)については、通常条件下、すなわち恒温恒湿条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mm
2のクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、90度方向に剥離し、易接着層の残存個数を4段階評価した。
次に、同様にして易接着層とハードコート層との密着性(初期密着性)を評価した。
評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品を密着性は合格と判定した。
評価基準
◎:100個 ○:99〜95個 △:94〜50個 ×:49〜0個
【0079】
更に、経時密着性については、実施例、及び比較例で作製した各ハードコートフィルム(易接着層上にハードコート層が塗設されたもの)を、温度90℃の送風乾燥機中でサンプル吊り具に仕掛け30日間保存した後、サンプルを取り出し、上述のJIS−K5600−5−6に準じて密着性の評価を行った。評価基準は上記の初期密着性の場合と同じである。この経時密着性は、基材と易接着層、及びハードコート層との全ての界面において密着性を評価した。
【0080】
(4)耐熱クラック
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムを、100℃の乾燥機中でサンプル掛けを用い5分間吊るし保存した後、ハードコートフィルムサンプルを取り出し、クラックの発生の有無を目視評価した。クラックの発生程度を次の基準で評価した。○評価品を耐熱クラックは良好とした。
評価基準
○:クラックの発生なし ×:クラックの発生あり
【0081】
(5)耐擦傷性
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、JIS−K5600−5−10に準じた試験方法にて、ハードコート層面を、スチールウール#0000を用い、荷重1kgをかけ10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好としたが、△評価品も製品として使用可能である。
評価基準
○:傷の発生なし。△:傷が少し発生する。×:傷が無数に発生する。
【0082】
(6)鉛筆硬度
各実施例、比較例で作製したハードコートフィルムについて、JIS K5600−5−4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を表記した。
【0083】
(7)カール特性(カール高さ)
各実施例、比較例で作製したハードコートフィルムについて、
図2のように塗布方向(図示のMD方向)を基軸とした1辺10cmの正方形菱形状の試験片を切り出し、水平面にハードコート層面を上にして設置し、23℃、50%RH環境下に30分間保存した後、反り立っている4頂点(A,B,C,D)の水平面からの高さを測定し、その平均値をカール高さとし、以下の基準で評価した。△以上を実用上問題無い範囲とする。
評価基準
◎:カール高さが30mm以下
○:カール高さが30mm超、40mm以下
△:カール高さが40mmを超えるが、筒状にはならない。
×:カールが大きく、各頂点から反り返り、試験片が筒状になる。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂の混合物を含有する(併用する)易接着層によって、シクロオレフィンフィルムとハードコート層の双方との密着性を改善でき、通常条件下、及び耐湿熱条件下における経時密着性に優れ、且つ耐熱条件下におけるクラックの発生のないハードコートフィルムが得られる。また、ハードコート層に含まれる電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものを使用すると、表面硬度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れたハードコートフィルムを得ることができる。さらに、ハードコート層に特定の電離放射線硬化型樹脂を用いてハードコート層の伸度(伸び率)を所定の範囲にコントロールすることにより、カールを十分抑制し加工適正に優れるハードコートフィルムを得ることができる(特に実施例13、14)。
また更に、易接着層におけるポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)が、95/5〜40/60の範囲であることにより、本発明の効果はより顕著に発揮されることが示される。
【0086】
これに対し、易接着層にポリウレタン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂を併用しない比較例1,2では、耐熱条件下でクラックが発生し易い問題点(比較例1)や、とくにシクロオレフィンフィルムとの密着性、耐湿熱条件下での経時密着性が劣る問題点(比較例2)があった。また、ハードコート層に、重量平均分子量4900の電離放射線硬化型樹脂を用いた比較例3では、耐熱条件下でクラックが発生し易く、さらにカールが大きく加工適正が悪い。