特許第6041372号(P6041372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6041372-ハードコートフィルム 図000003
  • 特許6041372-ハードコートフィルム 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6041372
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20161128BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20161128BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B32B27/00 A
   B32B27/30 Z
   C08J7/04
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-552357(P2016-552357)
(86)(22)【出願日】2016年1月23日
(86)【国際出願番号】JP2016051943
【審査請求日】2016年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-11885(P2015-11885)
(32)【優先日】2015年1月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】松崎 盛雄
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖晃
(72)【発明者】
【氏名】角田 浩佑
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 成博
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−287123(JP,A)
【文献】 特開2004−284158(JP,A)
【文献】 特開2006−110875(JP,A)
【文献】 特表2010−514894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 7/04
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に易接着層を介してハードコート層が設けられたハードコートフィルムであって、
前記易接着層は、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有し、前記ハードコート層は、重量平均分子量が700以上3600以下の電離放射線硬化型樹脂を含有することを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記易接着層における前記ポリオレフィン系樹脂と前記スチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)が、95/5〜40/60の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記電離放射線硬化型樹脂は、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層が以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた前記電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、前記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率が8%以上45%以下である。
【請求項5】
前記易接着層の厚みは、0.1μm〜1.0μmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関し、更に詳しくは、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置等のフラットパネルディスプレイ、タッチパネル等の表示装置部品、及び建築物、自動車、電車の窓ガラス等の保護フィルムとして使用することができるシクロオレフィンフィルム上に易接着層を介してハードコート層を設けたハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)等のフラッドパネルディスプレイの表示面には、取り扱い時に傷が付いて視認性が低下しないように耐擦傷性を付与することが要求される。そのため、基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムを利用して耐擦傷性を付与することが一般的に行われている。近年、表示画面上で表示を見ながら指やペン等でタッチすることでデータや指示を入力できるタッチパネルの普及により、光学的視認性の維持と耐擦傷性を有するハードコートフィルムに対する機能的要求は高まっている。
【0003】
そのため、基材フィルムとして透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性に優れるシクロオレフィンフィルムは光学部材用途への利用が期待されており、このシクロオレフィンフィルム上にハードコート層を設けることが行われている。しかし、シクロオレフィンフィルムはアクリルフィルムやポリエステルフィルムと異なりフィルム表面に極性基の数が少ないため基材フィルムとハードコート層との密着性が劣る問題点があった。
そこで、従来、シクロオレフィンフィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法が特許文献1、特許文献2等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−147304号公報
【特許文献2】特開2006−110875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、シクロオレフィンフィルムにハードコート層との易接着性を付与する方法として、特許文献1では、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理等が開示されているが、これ等の方法ではシクロオレフィンフィルムとハードコート層との密着性は不十分であり特に経時的な密着不良が発生し易い問題点があった。
【0006】
また、特許文献2では、シクロオレフィンフィルム上にオレフィン系樹脂からなるアンカーコート剤を塗設することが開示されている。このアンカーコート処理により、シクロオレフィンフィルムとハードコート層との密着性はある程度改善されるが、塗膜が柔軟で伸びのあるアンカーコート層と塗膜が硬く伸びのないハードコート層では、耐熱条件下(例えば、温度100℃の乾燥機に5分間保存)における双方の塗膜の収縮差により、ハードコート層表面にクラック(膜割れ、ヒビなど)が発生し易い問題点があった。
【0007】
そのため、従来のハードコートフィルムでは、シクロオレフィンフィルムを基材として使用した場合のハードコート層との密着性(特に経時密着性)、及び耐熱条件下におけるクラック発生防止が課題となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、シクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に易接着層を介してハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、通常条件下、及び耐湿熱条件下における経時密着性に優れ、且つ耐熱条件下においてクラック発生のないハードコートフィルムを提供することを目的とする。また、カールが抑制され、加工適正にも優れたハードコートフィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の構成を有することにより上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
【0010】
第1の発明は、シクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に易接着層を介してハードコート層が設けられたハードコートフィルムであって、前記易接着層は、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有し、前記ハードコート層は、重量平均分子量が700以上3600以下の電離放射線硬化型樹脂を含有することを特徴とするハードコートフィルムである。
【0011】
また、第2の発明は、上記第1の発明において、前記易接着層における前記ポリオレフィン系樹脂と前記スチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)が、95/5〜40/60の範囲であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【0012】
また、第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記電離放射線硬化型樹脂は、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能アクリレートを含有することを特徴とするハードコートフィルムである。
【0013】
また、第4の発明は、上記第1乃至第3のいずれかの発明において、前記ハードコート層が以下の条件を満たすことを特徴とするハードコートフィルムである。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた前記電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、前記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率が8%以上45%以下である。
【0014】
また、第5の発明は、上記第1乃至第4のいずれかの発明において、前記易接着層の厚みは、0.1μm〜1.0μmの範囲であることを特徴とするハードコートフィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に易接着層を介してハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、通常条件下、及び耐湿熱条件下における経時密着性に優れ、且つ耐熱条件下におけるクラック発生のないハードコートフィルムを得ることができる。
【0016】
また、本発明によれば、さらにカールが抑制され、加工適正にも優れたハードコートフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るハードコートフィルムの一実施の形態の層構成を示す断面図である。
図2】ハードコートフィルムのカール高さの評価方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるわけではない。
なお、本明細書において、「○○〜△△」とは、特に断りのない限り、「○○以上△△以下」を意味するものとする。
【0019】
図1に示すように、本発明の一実施の形態のハードコートフィルム10の層構成は、基材フィルムであるシクロオレフィンフィルム1の少なくとも片面に易接着層2を介して、ハードコート層3が設けられており、上記易接着層2は、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有し、その易接着層2の上に電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層を形成したものである。
【0020】
[基材フィルム]
まず、ハードコートフィルムの基材フィルムについて説明する。
本発明において、ハードコートフィルム10の基材フィルムとしては、透明性、耐熱性、寸法安定性、低吸湿性、低複屈折性、及び光学的等方性等に優れるシクロオレフィンフィルムを用いることを特徴とする。具体的には、シクロオレフィン類単位がポリマー骨格中に交互に又はランダムに重合し分子構造中に脂環構造を有するものであり、ノルボルネン系化合物、単環の環状オレフィン、環状共役ジエンおよびビニル脂環式炭化水素から選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる(共)重合体であるシクロオレフィンコポリマーフィルム又はシクロオレフィンポリマーフィルムが対象となり何れかを適宜選択し使用される。
【0021】
また、本発明において、上記シクロオレフィンフィルム1の厚さは、ハードコートフィルムが使用される用途に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性等の観点から、10μm〜300μmの範囲であることが好ましく、更に好ましくは20μm〜200μmの範囲である。
【0022】
本発明において、上記シクロオレフィンフィルム1の耐熱性については、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、試料に温度変化を与えた時にその熱変化を測定する熱重量測定(TG)法や示差走査熱量測定(DSC)法等で測定されるガラス転移温度が、120℃から170℃程度のフィルムの使用が好ましい。
【0023】
本発明において、上記シクロオレフィンフィルム1は、ハードコートフィルム用途に用いる場合には、紫外線による塗膜の劣化、密着不良を防止する目的で、シクロオレフィン樹脂と紫外線吸収剤を混練した樹脂をフィルム状に製膜、或いはシクロオレフィンフィルムの片面或いは両面に熱可塑性或いは熱硬化性樹脂と紫外線吸収剤とを混合した塗料を塗設したフィルムを使用してもよい。紫外線カット性については、分光光度計による380nm波長における透過率が10%以下であることが好ましい。更に好ましくは7%以下である。
【0024】
[易接着層]
次に、上記易接着層2について説明する。
本発明において、上記易接着層2は、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有することが必要である。
【0025】
本発明において、上記易接着層2を構成するポリオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンフィルム1とハードコート層3との密着性の付与を目的に配合する樹脂である。本発明者らは、シクロオレフィンフィルム1とハードコート層3の双方に対し密着性の優れる易接着層用樹脂について鋭意検討を行った結果、柔軟性に優れるポリオレフィン系樹脂が適することを見出した。
【0026】
本発明における上記易接着層2に用いられるポリオレフィン系樹脂は特に限定されるものではないが、基材(シクロオレフィンフィルム)との密着性に優れるものとしてエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などの2種以上のモノマーで共重合体を構成するものが好ましく、特に共重合体中にプロピレンモノマーを含むものが好ましい。またその分子量についても特に限定されるものではないが、重量平均分子量10,000〜200,000の範囲にあるものが、柔軟性と密着性のバランスの点で好ましい。その様なポリオレフィン系樹脂としては、たとえば市販されているユニストール(商品名:三井化学株式会社製)、サーフレン(商品名:三菱化学株式会社製)、アローベース(商品名:ユニチカ株式会社製)、アウローレン(商品名:日本製紙株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
なお、このポリオレフィン系樹脂は、柔軟性に優れる樹脂であるため易接着層を形成しフィルムを巻き取った際に圧着し易い。そのため、フィルム同士のブロッキング防止の点から易接着層へ高硬度な樹脂や無機あるいは有機微粒子の配合、或いはシクロオレフィンフィルムの裏面に保護フィルムの貼着等による圧着防止を施すことが好ましい。
【0028】
無機あるいは有機微粒子の配合においては、配合量(重量部)は、易接着層2を形成する樹脂/無機或いは有機微粒子=99.8/0.2〜95.0/5.0の範囲であることが好ましい。上記微粒子の配合量が5.0重量部を超えると透明性の低下やシクロオレフィンフィルムとの密着性が低下するため好ましくない。一方、上記微粒子の配合量が0.2重量部未満であると十分な効果が発現しない懸念がある。
【0029】
無機微粒子としては、アルミナ、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム等の微粒子を例示することができ、有機微粒子としては、アクリル、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリエチレン、スチレンアクリル、ポリエステル等の微粒子を例示することができる。粒子径としては、例えば0.05μm〜0.20μmの微粒子の使用が好ましい。粒子径が0.05μm未満では、圧着防止効果が低いため好ましくない。一方、粒子径が0.20μmを超えると、それ以上の圧着防止効果は得られず、コスト高となること、外部ヘイズが高くなり透明性の低下を生じ易くなるため好ましくない。
【0030】
また、本発明において、上記易接着層2に含有されるスチレンアクリル系樹脂は、構成単位にアクリルモノマー及びスチレンモノマーを交互に、又はランダムに含んでなるポリマーである。このスチレンアクリル系樹脂は、易接着層2とハードコート層3との収縮差を少なくし、耐熱条件下におけるクラック発生の防止を目的に配合する樹脂であるため、比較的硬く伸びの少ない樹脂であることが要求される。本発明において、目安としてはガラス転移温度が50℃以上である樹脂の使用が望ましい。その様なスチレンアクリル系樹脂としては、たとえば市販されているARUFON樹脂(商品名:東亜合成株式会社製)や、アクリット樹脂(商品名:大成ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明において、上記易接着層2に含有される上記ポリオレフィン系樹脂と上記スチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)は、95/5〜40/60の範囲であることが望ましい。
ポリオレフィン系樹脂の配合比率が95重量部を超えると、形成される易接着層が軟らかく伸び易いため、硬く伸びないハードコート層との収縮差により、耐熱条件下(例えば、100℃で5分間保存)でクラックが発生し易い問題点や、易接着層上にハードコート層を形成した際、塗膜硬度(鉛筆硬度)が低下し易い問題点がある。一方、ポリオレフィン系樹脂の配合比率が40重量部未満では、易接着層とハードコート層との収縮差が小さくなり耐熱条件下でのクラックの発生は無く良好であるが、易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性が低下する問題点がある。
【0032】
また、上記易接着層2の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、シクロオレフィンフィルム及びハードコート層との密着性、或いはハードコート層の鉛筆硬度に悪影響を起こさない範囲の0.1μm〜1.0μmであることが望ましく、更に望ましくは0.2μm〜0.6μmの範囲である。上記易接着層2の厚みが0.1μm未満では、ハードコート層との密着性が低下するため好ましくない。一方、上記易接着層2の厚みが1.0μmを超えると、ハードコート層の下層に硬度が低い樹脂層からなる易接着層が形成されることになり、ハードコートフィルムの鉛筆硬度が低下(例えば、鉛筆硬度Hから鉛筆硬度HBに低下)し、また耐熱条件下においてクラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0033】
上記易接着層2には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の配合が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、たとえば易接着層の樹脂成分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。
【0034】
また、上記易接着層2には、耐光密着性の付与(紫外線による密着不良を防止)を目的に、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤の配合が可能である。配合量は、易接着層の樹脂成分100重量部に対し0.05重量部〜10.0重量部の配合が好ましい。特に好ましくは、1.0重量部〜5.0重量部である。
【0035】
また、上記易接着層2に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0036】
本発明において、上記易接着層2は、上記ポリオレフィン系樹脂と上記スチレンアクリル系樹脂の他に、その他の添加剤等を適当な有機溶剤に溶解、分散した塗料を上記シクロオレフィンフィルム1上に塗工、乾燥、或いはその後硬化し形成される。この場合の有機溶剤としては、含有される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であること、及び塗工時の作業性、乾燥性の観点から沸点が50℃〜160℃の有機溶剤の使用が好ましい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタン等の芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することも可能である。
【0037】
本発明において、上記の易接着層用塗料をシクロオレフィンフィルム1上に塗布する方法としては、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設することができる。シクロオレフィンフィルム1上に塗工された塗料は、通常50〜120℃程度の温度で乾燥し溶剤を除去した後、熱エネルギー又は紫外線や電子線等の外部エネルギーを与えることによって硬化させ塗膜を形成する。
【0038】
[ハードコート層]
次に、上記ハードコート層3について説明する。
本発明において、上記ハードコート層3に含まれる樹脂としては、被膜を形成する樹脂であれば特に制限なく用いることができるが、特にハードコート層の表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)を付与し、また、紫外線の露光量によって架橋度合を調節することが可能であり、ハードコート層の表面硬度の調節が可能になるという点で、電離放射線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
【0039】
本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、紫外線(以下、「UV」と略記する。)や電子線(以下、「EB」と略記する。)を照射することによって硬化する透明な樹脂であれば、特に限定されるものではないが、塗膜硬度及びハードコート層3が3次元的な架橋構造を形成するために1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEBにて硬化可能な多官能アクリレートからなるものが好ましい。分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するUVまたはEB硬化可能な多官能アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを挙げることができる。なお、多官能アクリレートは単独で使用するだけでなく、2種以上の複数を混合し使用してもよい。
【0040】
さらに、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が700〜3600の範囲内であるポリマーを用いることが好ましく、重量平均分子量700〜3000の範囲のものがより好ましく、重量平均分子量700〜2400がさらに好ましい。重量平均分子量が700未満であると、UVやEB照射により硬化した際の硬化収縮が大きく、ハードコートフィルムがハードコート層面側に反りかえる現象(カール)が大きくなり、その後の加工工程を経るに不具合が生じ、加工適正が悪い。また、重量平均分子量が3600を超えると、ハードコート層の柔軟性が高まるが、硬度が不足するため適さない。
【0041】
また、本発明に用いる電離放射線硬化型樹脂は、重量平均分子量が1500未満である場合は、1分子中の官能基数は3個以上10個未満であることが望ましい。また、上記電離放射線硬化型樹脂の重量平均分子量が1500以上である場合は、1分子中の官能基数は3個以上20個以下であることが望ましい。上記範囲内であれば、クラックの発生を抑えつつ、カールが抑制でき、適切な加工適正を維持できる。
【0042】
また、上記ハードコート層3に含まれる樹脂としては、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリル、スチレン−アクリル、繊維素等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、エポキシ、ケイ素樹脂等の熱硬化性樹脂をハードコート層の硬度、耐擦傷性を損なわない範囲内で配合してもよい。
【0043】
また、上記ハードコート層3に含まれる電離放射線硬化型樹脂の光重合開始剤としては、市販のIRGACURE 651やIRGACURE 184(いずれも商品名:BASF社製)などのアセトフェノン類、また、IRGACURE 500(商品名:BASF社製)などのベンゾフェノン類を使用できる。
【0044】
本発明においては、上記ハードコート層3に無機酸化物微粒子を含有させ、表面硬度(耐擦傷性)の更なる向上を図ることも可能である。この場合、無機酸化物微粒子の平均粒子径は5〜50nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは平均粒子径10〜20nmの範囲である。平均粒子径が5nm未満であると、十分な表面硬度を得ることが困難である。一方、平均粒子径が50nmを超えると、ハードコート層の光沢、透明性が低下し、可撓性も低下するおそれがある。
【0045】
本発明において、上記無機酸化物微粒子としては、例えばアルミナやシリカなどを挙げることができる。これらの中でも、アルミニウムを主成分とするアルミナは高硬度を有するため、シリカよりも少ない添加量で効果を得られることから特に好適である。
【0046】
本発明において、無機酸化物微粒子の含有量は、ハードコート層塗料組成物の固形分100重量部に対して0.1〜10.0重量部であることが好ましい。無機酸化物微粒子の含有量が0.1重量部未満であると、表面硬度(耐擦傷性)の向上効果が得られ難い。一方、含有量が10.0重量部を超えると、ヘイズが上昇するため好ましくない。
【0047】
上記ハードコート層3には、塗工性の改善を目的にレベリング剤の使用が可能であり、たとえばフッ素系、アクリル系、シロキサン系、及びそれらの付加物或いは混合物などの公知のレベリング剤を使用可能である。配合量は、ハードコート層の樹脂の固形分100重量部に対し0.03重量部〜3.0重量部の範囲での配合が可能である。また、タッチパネル用途等において、タッチパネル端末のカバーガラス(CG)、透明導電部材(TSP)、液晶モジュール(LCM)等との接着を目的に光学透明粘着剤OCRを用いた対接着性が要求される場合には、表面自由エネルギーの高い(凡そ40mJ/cm2以上)アクリル系レベリング剤やフッ素系のレベリング剤の使用が好ましい。
【0048】
上記ハードコート層3に添加するその他の添加剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、消泡剤、表面張力調整剤、防汚剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて配合してもよい。
【0049】
上記ハードコート層3は、上述の電離放射線硬化型樹脂の他に、重合開始剤、その他の添加剤等を適当な溶媒に溶解、分散した塗料を上記易接着層2上に塗工、乾燥して形成される。溶媒としては、配合される上記樹脂の溶解性に応じて適宜選択でき、少なくとも固形分(樹脂、重合開始剤、その他添加剤)を均一に溶解あるいは分散できる溶媒であればよい。そのような溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘプタンなどの芳香族系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸メチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール系等のアルコール系溶剤等の公知の有機溶剤を単独或いは適宜数種類組み合わせて使用することもできる。
【0050】
上記ハードコート層3の塗工方法については、特に限定はないが、グラビア塗工、マイクログラビア塗工、ファウンテンバー塗工、スライドダイ塗工、スロットダイ塗工、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の公知の塗工方式で塗設した後、通常50〜120℃程度の温度で乾燥する。
【0051】
さらに、上記ハードコート層3は、下記の条件を満たすことが好ましい。
条件:ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた前記電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、前記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率が8%以上45%以下である。
【0052】
上記条件を満たすことで、ハードコート層3は前述のカールが抑制され、加工適正に優れるハードコートフィルムを得ることができる。
ハードコート層3が上記条件を満たすために、ハードコート層3に含有される電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、EBECRYL−5129(ダイセル・オルネクス株式会社製)、NKオリゴ U−6LPA(新中村化学工業株式会社製)、Art−Resin UN−908(根上工業株式会社製)、ユニディック17−806(DIC株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
【0053】
上記ハードコート層3の塗膜厚さは、特に制約されるわけではないが、例えば1.0μm〜15.0μmの範囲であることが好適である。塗膜厚さが1.0μm未満では、必要な表面硬度が得られ難くなる。また、塗膜厚さが15.0μmを超えた場合は、カールが強く発生し製造工程などで取扱い性が低下するため好ましくない。なお、ハードコート層3の塗膜厚さは、マイクロメーターで実測することにより測定可能である。
【0054】
本発明においては、上記の電離放射線硬化型樹脂を含有するハードコート層用塗料を、易接着層を有するシクロオレフィンフィルムに塗工、乾燥後に、UVまたはEB照射することにより、光重合が起こりハード性に優れる塗膜を得ることができる。特に、JIS K5600−5−4に規定される鉛筆硬度がB〜2Hを有するハードコート層であることが好ましい。
【0055】
以上詳述したように、本発明のハードコートフィルムは、シクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に易接着層を介してハードコート層が設けられ、上記易接着層はポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂の混合物を含有することにより、シクロオレフィンフィルムとハードコート層との密着性を改善でき、特に通常条件下及び耐湿熱条件下における経時密着性に優れる。また、易接着層とハードコート層との収縮差を少なくすることにより耐熱条件下に保存した場合でも、クラック発生を防止することができる。更に、ハードコート層の伸度(伸び率)を所定の範囲にコントロールすることによりカールを抑制することも可能である。
【実施例】
【0056】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0057】
[実施例1]
<易接着層塗料の調製>
まず、スチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分100%、東亜合成株式会社製、ガラス転移温度58℃)60部を、攪拌機を用いて酢酸エチル140部中へ攪拌しながら少量ずつ添加し樹脂溶解を行い濃度30%の溶解液を作製した。
次いで、ポリオレフィン系樹脂「サーフレンP−1000(商品名)」(固形分20%、三菱化学株式会社製)70部と上記のスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」(固形分30%)20部とを配合し、酢酸ブチル/トルエン=85/15(重量%)にて固形分濃度5%となるまで希釈し易接着層塗料を調製した。
【0058】
<ハードコート層塗料の調製>
ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:6、重量平均分子量:2200、日本合成化学株式会社製)100部を主剤とし、イルガキュア184(光重合開始剤、BASF社製)3.5部と、ヒンダードアミン系光安定化剤「TINUVIN 292(商品名)」(BASF社製)2.5部と、レベリング剤RS75(フッ素系レベリング剤、DIC株式会社製)0.3部を酢酸ブチル/n−プロピルアルコール=50/50(重量部)で紫外線硬化型樹脂の塗料中の固形分濃度が45%となるまで希釈し十分攪拌してハードコート層塗料を調製した。
なお、該ハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は11.5%であった。
【0059】
<ハードコートフィルムの作製>
シクロオレフィンフィルムとして厚さ60μmのゼオノアフィルムZF14(日本ゼオン株式会社製)の片面に上記の易接着層塗料をバーコーターを用いて塗工し、90℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ乾燥固化し、塗膜厚み0.3μmの易接着層を形成させ、易接着層付きフィルムを得た。
次に、その易接着層付きフィルムの易接着層上に、上記のハードコート層塗料を、バーコーターを用いて塗工し、80℃の乾燥炉で1分間熱風乾燥させ、塗膜厚み5.0μmの塗工層を形成した。これを、塗工面より60mmの高さにセットされたUV照射装置を用い、UV照射量150mJ/cm2にて硬化させてハードコート層を形成し、本実施例のハードコートフィルムを作製した。
【0060】
[実施例2]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を95部/5部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0061】
[実施例3]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を40部/60部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0062】
[実施例4]
実施例1の易接着層の塗膜厚みを0.1μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0063】
[実施例5]
実施例1の易接着層の塗膜厚みを1.0μmとした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0064】
[実施例6]
実施例1の易接着層に用いたポリオレフィン系樹脂サーフレンP−1000の替わりに「ポリオレフィン系樹脂ユニストールP−901(商品名)」(固形分22%、三井化学株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0065】
[実施例7]
実施例1のシクロオレフィンフィルムを厚さ100μmの「ARTON FILM FEKP100(商品名)」(JSR株式会社製)に替えた以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0066】
[実施例8]
実施例1のハードコート層に用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B」の替わりに「UA−306H(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:3、重量平均分子量:732、共栄社化学株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本実施例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は8.2%であった。
【0067】
[実施例9]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を97部/3部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0068】
[実施例10]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を37部/63部とした以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0069】
[実施例11]
実施例2の易接着層で用いたスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」の替わりに「ARUFON UG−4035(商品名)」(固形分30%、ガラス転移温度52℃、東亜合成株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0070】
[実施例12]
実施例2の易接着層で用いたスチレンアクリル系樹脂「ARUFON UG−4070(商品名)」の替わりに「ARUFON UG−4040(商品名)」(固形分30%、ガラス転移温度63℃、東亜合成株式会社製)を使用した以外は、実施例2と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0071】
[実施例13]
実施例1のハードコート層で用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」の替わりに「EBECRYL−5129(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:6、重量平均分子量:800、ダイセル・オルネクス株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本実施例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は8.5%であった。
【0072】
[実施例14]
実施例1のハードコート層で用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」の替わりに「NKオリゴ U−6LPA(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:6、重量平均分子量:760、新中村化学工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本実施例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は44.5%であった。
【0073】
[比較例1]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を100部/0部(つまり、スチレンアクリル系樹脂を使用しなかった)としたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0074】
[比較例2]
実施例1の易接着層のポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合部数を0部/100部(つまり、ポリオレフィン系樹脂を使用しなかった)としたこと以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
【0075】
[比較例3]
実施例1のハードコート層で用いたウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂「紫光UV−7630B(商品名)」の替わりに「Art−Resin UN−904(商品名)」(固形分100%、(メタ)アクリロイルオキシ基数:10、重量平均分子量:4900、根上工業株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを得た。
なお、本比較例のハードコート層塗料を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、紫外線光量50〜1000mJ/cm2で硬化させた電離放射線硬化型樹脂からなるハードコート層を2μm厚の塗膜となるよう形成させたフィルムを作成する。次に、当該フィルムから幅15mm×長さ150mmの試験片を作成し、温度23℃、湿度50%RHの環境下で、当該試験片を引張速度50mm/分にて引張試験を行った際の、上記塗膜にクラックが発生するまでの伸び率は7.8%であった。
【0076】
以上のようにして作製した実施例及び比較例の各ハードコートフィルムを次の項目について評価し、その結果を纏めて表1に示した。
(1)塗膜の厚み
易接着層及びハードコート層の塗膜の形成厚みは、Thin−Film Analyzer F20(商品名)(FILMETRICS社製)を用いて測定した。
【0077】
(2)透明性
各実施例、比較例で作製したハードコートフィルムについて、JIS K7136に示される試験法により全光線透過率を測定した。
【0078】
(3)密着性(初期密着性および経時密着性)
密着性は、JIS−K5600−5−6に準じて評価した。また、易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性、及び易接着層とハードコート層との密着性を各々確認するため、シクロオレフィンフィルムに易接着層を形成したもので易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性を確認し、シクロオレフィンフィルムに易接着層、及びハードコート層を形成したもので易接着層とハードコート層との密着性を評価した。
まず、易接着層とシクロオレフィンフィルムとの密着性(初期密着性)については、通常条件下、すなわち恒温恒湿条件下(23℃、50%RH)で、碁盤目剥離試験治具を用い1mm2のクロスカットを100個作製し、積水化学工業株式会社製の粘着テープNo.252をその上に貼り付け、ヘラを用いて均一に押し付け後、90度方向に剥離し、易接着層の残存個数を4段階評価した。
次に、同様にして易接着層とハードコート層との密着性(初期密着性)を評価した。
評価基準は下記の通りであり、◎と○評価品を密着性は合格と判定した。
評価基準
◎:100個 ○:99〜95個 △:94〜50個 ×:49〜0個
【0079】
更に、経時密着性については、実施例、及び比較例で作製した各ハードコートフィルム(易接着層上にハードコート層が塗設されたもの)を、温度90℃の送風乾燥機中でサンプル吊り具に仕掛け30日間保存した後、サンプルを取り出し、上述のJIS−K5600−5−6に準じて密着性の評価を行った。評価基準は上記の初期密着性の場合と同じである。この経時密着性は、基材と易接着層、及びハードコート層との全ての界面において密着性を評価した。
【0080】
(4)耐熱クラック
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムを、100℃の乾燥機中でサンプル掛けを用い5分間吊るし保存した後、ハードコートフィルムサンプルを取り出し、クラックの発生の有無を目視評価した。クラックの発生程度を次の基準で評価した。○評価品を耐熱クラックは良好とした。
評価基準
○:クラックの発生なし ×:クラックの発生あり
【0081】
(5)耐擦傷性
実施例、比較例で作製した各ハードコートフィルムについて、JIS−K5600−5−10に準じた試験方法にて、ハードコート層面を、スチールウール#0000を用い、荷重1kgをかけ10往復摩擦し、傷のつき具合を次の基準で評価した。○評価品を耐擦傷性は良好としたが、△評価品も製品として使用可能である。
評価基準
○:傷の発生なし。△:傷が少し発生する。×:傷が無数に発生する。
【0082】
(6)鉛筆硬度
各実施例、比較例で作製したハードコートフィルムについて、JIS K5600−5−4に準じた試験法により鉛筆硬度を測定した。表面に傷の発生なき硬度を表記した。
【0083】
(7)カール特性(カール高さ)
各実施例、比較例で作製したハードコートフィルムについて、図2のように塗布方向(図示のMD方向)を基軸とした1辺10cmの正方形菱形状の試験片を切り出し、水平面にハードコート層面を上にして設置し、23℃、50%RH環境下に30分間保存した後、反り立っている4頂点(A,B,C,D)の水平面からの高さを測定し、その平均値をカール高さとし、以下の基準で評価した。△以上を実用上問題無い範囲とする。
評価基準
◎:カール高さが30mm以下
○:カール高さが30mm超、40mm以下
△:カール高さが40mmを超えるが、筒状にはならない。
×:カールが大きく、各頂点から反り返り、試験片が筒状になる。
【0084】
【表1】
【0085】
上記表1の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、ポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂の混合物を含有する(併用する)易接着層によって、シクロオレフィンフィルムとハードコート層の双方との密着性を改善でき、通常条件下、及び耐湿熱条件下における経時密着性に優れ、且つ耐熱条件下におけるクラックの発生のないハードコートフィルムが得られる。また、ハードコート層に含まれる電離放射線硬化型樹脂として、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものを使用すると、表面硬度(耐擦傷性、鉛筆硬度)に優れたハードコートフィルムを得ることができる。さらに、ハードコート層に特定の電離放射線硬化型樹脂を用いてハードコート層の伸度(伸び率)を所定の範囲にコントロールすることにより、カールを十分抑制し加工適正に優れるハードコートフィルムを得ることができる(特に実施例13、14)。
また更に、易接着層におけるポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との配合比率(重量部)が、95/5〜40/60の範囲であることにより、本発明の効果はより顕著に発揮されることが示される。
【0086】
これに対し、易接着層にポリウレタン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂を併用しない比較例1,2では、耐熱条件下でクラックが発生し易い問題点(比較例1)や、とくにシクロオレフィンフィルムとの密着性、耐湿熱条件下での経時密着性が劣る問題点(比較例2)があった。また、ハードコート層に、重量平均分子量4900の電離放射線硬化型樹脂を用いた比較例3では、耐熱条件下でクラックが発生し易く、さらにカールが大きく加工適正が悪い。
【符号の説明】
【0087】
1 シクロオレフィンフィルム
2 易接着層
3 ハードコート層
10 ハードコートフィルム
【要約】
本発明は、シクロオレフィンフィルムの少なくとも片面に易接着層を介してハードコート層を設けたハードコートフィルムであって、通常条件下及び耐湿熱条件下における経時密着性に優れ、且つ耐熱条件下においてクラック発生のないハードコートフィルムを提供する。
本発明のハードコートフィルム(10)は、シクロオレフィンフィルム(1)の少なくとも片面に易接着層(2)を介してハードコート層(3)が設けられている。上記易接着層(2)はポリオレフィン系樹脂とスチレンアクリル系樹脂との混合物を含有し、それらの配合比率(重量部)は例えば95/5〜40/60の範囲である。また、上記ハードコート層(3)は重量平均分子量が700以上3600以下の電離放射線硬化型樹脂を含有する。
図1
図2