特許第6041373号(P6041373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041373
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】TNF−αに結合するアプタマー分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/115 20100101AFI20161128BHJP
【FI】
   C12N15/00 HZNA
【請求項の数】10
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2010-20650(P2010-20650)
(22)【出願日】2010年2月1日
(65)【公開番号】特開2011-155913(P2011-155913A)
(43)【公開日】2011年8月18日
【審査請求日】2012年12月11日
【審判番号】不服2015-8160(P2015-8160/J1)
【審判請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 嘉仁
(72)【発明者】
【氏名】堀井 克紀
(72)【発明者】
【氏名】古市 真木雄
(72)【発明者】
【氏名】和賀 巌
(72)【発明者】
【氏名】小見 和也
(72)【発明者】
【氏名】今井 有香
(72)【発明者】
【氏名】岡 麻子
(72)【発明者】
【氏名】谷本 徹二
【合議体】
【審判長】 田村 明照
【審判官】 長井 啓子
【審判官】 松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−532662(JP,A)
【文献】 特表2006−516288(JP,A)
【文献】 特表2007−525177(JP,A)
【文献】 特表2007−501615(JP,A)
【文献】 特表2007−513618(JP,A)
【文献】 特開2008−167688(JP,A)
【文献】 特表平11−506756(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059877(WO,A1)
【文献】 ARCH.BIOCHEM.BIOPHYS.,vol.296,p.137−143(1992)
【文献】 Immun.Lett.,vol.46,p135−141(1995)
【文献】 BIOCHEM.,vol.35,p.8216−8225(1996)
【文献】 J.Biol.Chem.,vol268,p.12526−12529(1993)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00 - 15/90
PubMed
CA/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対してMg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記I-1の塩基配列の一本鎖RNA分子である
(I-1) TNF-130
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCCCAUAUGGAUCCCUUUUCACCGGUACCAAUAGCAAAUACCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:1)
ことを特徴とするRNAアプタマー。
【請求項2】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、5mMのMg2+カチオンの存在下における解離定数Kが、K≦10nMである、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、各リボ核酸の2’−位のヒドロキシル基(−OH)をフッ素原子(−F)で置き換える修飾が施されている、下記のI-2〜I-5の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖修飾RNA分子である
(I-2) TNF-485 (2’F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2’F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2’F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2’F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
ことを特徴とするRNAアプタマー。
【請求項3】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記のII-3、II-4の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(II-3) TNF-675
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCGAAAUAUUACCCUUUUCACCGGCGAAAGUCGCAUGACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:8)
(II-4) TNF-100
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
ことを特徴とするRNAアプタマー。
【請求項4】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対してMg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記のIIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子である
(III) TNF-m013
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC-3’ (配列番号:10)
ことを特徴とするRNAアプタマー。
【請求項5】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、5mMのMg2+カチオンの存在下における解離定数Kが、K≦20nMである、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、3’−末端にPolyA配列が付加された、下記のII-4’の塩基配列からなる一本鎖RNA分子である
(II-4’) TNF-100+(A)24
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC
AAAAA AAAAA AAAAA AAAAA AAAA-3’ (配列番号:11)
ことを特徴とするRNAアプタマー。
【請求項6】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対してMg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、3’−末端にPolyA配列が付加された、下記のIII’の塩基配列からなる一本鎖RNA分子である
(III’) TNF-m013+(A)24
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC
AAAAA AAAAA AAAAA AAAAA AAAA-3’ (配列番号:12)
ことを特徴とするRNAアプタマー。
【請求項7】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法であって、
該選別方法は、下記の工程1と工程2とを具えており、
(工程1)
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と同じ、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’と同じ、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する、第一の選別工程;
(工程2)
前記第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーから、ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーを選別する、第二の選別工程;
該選別方法によって、前記第一のモチーフ配列第二のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされる
ことを特徴とするRNAアプタマーの選別方法。
【請求項8】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法であって、
該選別方法は、下記の工程1と工程2とを具えており、
(工程1)
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する、第一の選別工程;
(工程2)
前記第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーから、ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーを選別する、第二の選別工程;
該選別方法によって、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされる
ことを特徴とするRNAアプタマーの選別方法。
【請求項9】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーの選別に利用される、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーであって、
該部分ライブラリーは、
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と同じ、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’と同じ、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである
ことを特徴とする候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー。
【請求項10】
ホモ三量体型の可溶性ヒトTNF−αに対して、Mg2+カチオン依存性の結合能を有するRNAアプタマーの選別に利用される、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーであって、
該部分ライブラリーは、
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである
ことを特徴とする候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍壊死因子−α(Tumor Necrosis Factor−α:TNF−α)に結合するアプタマー分子に関する。特には、本発明は、ヒトTNF−αに結合するRNAアプタマー分子に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトTNF−αは、157アミノ酸残基、分子量17kDaのタンパク質であり、一般に、ヒトTNF−αはホモ3量体を形成し、血液中を循環する。TNF−αは、細胞外サイトカインであり、サイトカインや免疫調節分子の産生、細胞増殖および分化、アポトーシスなどを誘起する生物作用を示す。その他に、ヒトTNF−αが関与する生理作用として、胸腺細胞の増殖促進、B細胞の抗体産生促進、マクロファージの活性化、破骨細胞の活性化などが知られている。
【0003】
TNF−αは、細胞表面にあるTNF受容体(TNF−R)への結合を介して、その生物活性を発揮する。TNF受容体(TNF−R)には、分子量55kDのTNF−RIと、分子量が75kDのTNF−RIIの二種が存在している。TNF−RIとTNF−RIIの二種の受容体は、いずれも、TNF−αに対する高い親和性を有している。
【0004】
TNF−αと構造的な類似性を有する、TNFファミリーに含まれるタンパク質として、TNF−βが存在している。TNF−αおよびTNF−βファミリー内の配列同一性は、それぞれ71%および61%である。TNF−αおよびTNF−β間の配列同一性は29%であり、類似性は低いが、TNF−βは、TNF受容体(TNF−R)に、TNF−αと同等の親和性で結合する。従って、TNF−βは、TNF−αと類似した生物活性を発揮できる。
【0005】
免疫応答や炎症反応が生じていない、健康な個体では、TNF−αの血液中濃度は、5pg/ml未満である。TNF−αホモ3量体の過剰発現は、敗血症ショック、リウマチ関節炎などの疾患の発症を引き起こす。クローン病に関連した、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、デュシュンヌ型筋ジストロフィーなどの病態では、低濃度のTNF−αホモの上昇が起こる。その他、TNF−αは、破骨細胞の活性化に関与することから、骨粗鬆症との関連が示唆されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TNF−αは、敗血症ショック、リウマチ関節炎、移植拒絶反応、AIDS、カヘキシー(悪液質)、パーキンソン病などの病態に深く関与することが知られている。すなわち、TNF−αが深く関与する各種の病態について、その診断を進める際、TNF−αのホモ3量体の血液中濃度の測定が不可欠である。一方、クローン病に関連した、炎症性大腸炎、潰瘍性大腸炎、デュシュンヌ型筋ジストロフィーなどの病態では、TNF−αのホモ3量体の血液中濃度の上昇は起こるが、その濃度上昇は、通常、低濃度領域に留まっている。具体的には、敗血症ショックを誘起するTNF−αのホモ3量体の血液中濃度レベルと比較し、有意に低い濃度レベルに留まっている。従って、各種の病態について、その診断を進める際、ヒトTNF−αのホモ3量体の血液中濃度を、5pg/ml(ホモ3量体換算濃度0.1pM)程度の低い濃度でも高い定量性で測定可能な、高感度の測定手段が望まれている。
【0007】
ヒトTNF−αは、ホモ3量体の形状で産生細胞から放出される。このヒトTNF−αホモ3量体は、TNF受容体(TNF−R)に結合可能であるが、ヒトTNF−αの単量体は、TNF受容体(TNF−R)に結合することができない。従って、血液中に含有されている、ヒトTNF−αの単量体とホモ3量体を合計したタンパク質濃度ではなく、ヒトTNF−αホモ3量体の濃度を高い定量性で測定可能な、高感度の測定手段が望まれている。
【0008】
例えば、敗血症ショックを引き起こす、ヒトTNF−αホモ3量体の過剰発現が生じると、ヒトTNF−αのホモ3量体の血液中濃度は、少なくとも、1000pg/mlの水準(ホモ3量体換算濃度20pM)に達する。従って、ヒトTNF−αのホモ3量体の血液中濃度に関して、少なくとも、5pg/ml〜1000pg/mlの範囲(ホモ3量体換算濃度 0.1pM〜20pMの範囲)において、高い定量性で濃度の測定可能な、高感度の測定手段が望まれている。
【0009】
各種のタンパク質分子の高感度測定は、検出対象のタンパク質分子に対して、特異的で高い結合能を有する分子を利用することで達成できる。例えば、検出対象のタンパク質分子に対して、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子を利用して、アプタマー分子と検出対象のタンパク質分子の複合体を形成させ、検出対象のタンパク質分子の濃度を測定する手段が望まれている。すなわち、前記の目的に利用可能な、TNF−αに対して、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子の提供が望まれている。
【0010】
特に、上述のTNF−αが発揮する生理作用は、TNF−αのホモ3量体のTNF受容体(TNF−R)への結合を介して発揮されるため、血液中に存在するTNF−αのホモ3量体の濃度の検出に利用可能な、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子の提供が望まれている。
【0011】
例えば、血液試料から調製される血漿試料中には、ホモ3量体型のTNF−α以外に、種々の可溶性タンパク質や脂質分子が含まれている。その際、ホモ3量体型のTNF−α以外の、種々の可溶性タンパク質や脂質分子に対しては、実質的に結合能を有さず、ホモ3量体型のTNF−αに対して、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子を利用することで、ホモ3量体型のTNF−αを高感度で測定することが可能となる。
【0012】
具体的には、ホモ3量体型のTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子とを組み合わせることで、所謂、ELISA法と同様なホモ3量体型のTNF−αの定量的な検出系を構成することができる。例えば、ホモ3量体型のTNF−αに対する、平衡解離定数KD≦1pMの特異的なモノクローナル抗体を利用して、ホモ3量体型のTNF−αを固定化した上で、固定化されたホモ3量体型のTNF−αに、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子を結合させる。固定化されたホモ3量体型のTNF−αと結合しているアプタマー分子の量を測定することで、固定化されたホモ3量体型のTNF−αの量の定量が可能となる。
【0013】
さらには、ホモ3量体型のTNF−αに対して、結合部位が相違する、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子二種を組み合わせることで、所謂、ELISA法と同様なホモ3量体型のTNF−αの定量的な検出系を構成することもできる。
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するものである。すなわち、本発明の目的は、検出対象のTNF−αの濃度、特には、ヒトTNF−αホモ3量体の濃度を高い感度で測定する際に利用可能な、TNF−α、なかでも、ヒトTNF−αに対して、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子を提供することにある。特には、本発明の目的は、ヒトTNF−αホモ3量体に対して、特異的で高い結合能を有するアプタマー分子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、まず、ヒトTNF−αに対して、一定水準以上の結合能を示す「ヒトTNF−αに対するRNAアプタマー分子」が実際に存在するか否かに関して、選別を行った。さらに、仮に、一定水準以上の結合能を示す「ヒトTNF−αに対するRNAアプタマー分子」が存在する際には、その「ヒトTNF−αに対するRNAアプタマー分子」を構成する一本鎖核酸分子の塩基配列を特定することを試みた。
【0016】
一般に、対象分子に対する「RNAアプタマー分子」の探索には、「ランダム一本鎖核酸分子ライブラリー」を作製し、対象分子に対する結合能に関して、SELEX法を適用するスクリーニングが利用される。
【0017】
ヒトTNF−αは、157アミノ酸残基からなるタンパク質であり、そのホモ3量体と複合体を形成可能な「RNAアプタマー分子」は、5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域との間に、ランダムな塩基配列を有する、51塩基長の部分(N51)が挿入されている形態の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」中に存在していると予測した。
【0018】
本発明者らは、SELEX法を適用するスクリーニングに利用する、5’末端の固定領域と、3’末端の固定領域との間に、ランダムな塩基配列を有する、51塩基長の部分(N51)が挿入されている形態の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」として、
5’末端の固定領域:GGAAGACCAG CCUUAAGAGGG;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGUAUCCG GAACGUGAC;(19塩基) (配列番号:30)
を具える、全長90塩基長の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」を選択した。
【0019】
対象タンパク質として、市販のRecombinant Human TNF-α(PeproTech #300-01A)を利用して、該タンパク質に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を探索した。
【0020】
SELEX・スクリーニング・ラウンドを延べ10ラウンド繰り返し、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の選別を行った。
【0021】
各ラウンドでは、バインディング・バッファ溶液として、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClを用いて、該タンパク質・RNA分子の複合体形成を行っている。タンパク質ならびに形成された複合体の回収は、ニトロセルロースフィルターを用いたFilter分離法を利用した。ニトロセルロースフィルター上に回収されているタンパク質・RNA分子の複合体から、一本鎖RNA分子を、次の溶出条件で溶出させる。該ニトロセルロースフィルターを組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 7M Ureaの溶出バッファ溶液中に浸漬し、90℃で5分間加熱し、一本鎖RNA分子の“unfolding”処理を施す。該“unfolding”処理によって、一本鎖RNA分子の二次構造、ならびに三次構造は解消される結果、該一本鎖RNA分子は、変性剤の尿素の高濃度溶液中に溶出される。
【0022】
前記10ラウンドで採取された「RNAアプタマー分子」の一群から、逆転写によって調製されるcDNAを、それぞれ大腸菌に導入して、クローン化を行った。取得した各クローンについて、前記cDNAの塩基配列を特定した。各クローンについて、導入されているcDNAを鋳型として「RNAアプタマー分子」を調製し、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能の評価を行った。少なくとも、前記バインディング・バッファ溶液中における解離定数KDが、KD≦10nMの条件を満たす「RNAアプタマー分子」を選択した。さらに、前記の選択条件を満足する「RNAアプタマー分子」について、その塩基配列を解析した。
【0023】
その結果、KD≦10nMの条件を満たす「RNAアプタマー分子」として、選別された一群の「RNAアプタマー分子」中には、KD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」も存在することが判明した。
【0024】
前記10ラウンドで採取された「RNAアプタマー分子」の一群から、作製した一群のクローンにおいて、その「ランダムな塩基配列」部分が一致しているクローン数が2以上存在する、クローン・ファミリーを選別した。選別されたクローン・ファミリー中には、KD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」から作製されたクローンのファミリーも含まれている。このKD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」から作製されたクローンのファミリーの一つは、下記の塩基配列を有しており、そのcDNAを保持するクローンに、識別のための名称をTNF-130と付した。
【0025】
Clone:TNF-130中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
TCCCATATGGATCCCTTTTCACCGGTACCAATAGCAAATACCTAGACAGG
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:13)
「RNAアプタマー分子」 TNF-130:
5’−GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCCCAUAUGGAUCCCUUUUCACCGGUACCAAUAGCAAAUACCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC−3’ (配列番号:1)
さらに、前記10ラウンドで採取された「RNAアプタマー分子」の一群に対して、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能に関して、追加の2ラウンドのスクリーニングを行った。その際、RNA鎖を構成する各リボ核酸の2'−位のヒドロキシル基(−OH)をフッ素原子(−F)で置き換える修飾が施されている、2’F修飾RNA鎖型のアプタマー分子を作製した。追加の2ラウンドでは、2’F修飾RNA鎖型のアプタマー分子の一群をスクリーニングの対象としている。この追加の2ラウンドを含め、合計12ラウンドの選別を行った、Recombinant Human TNF-αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の群を回収した。
【0026】
前記合計12ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群についても、逆転写によって調製されるcDNAを、それぞれ大腸菌に導入して、クローン化を行った。取得した各クローンについて、前記cDNAの塩基配列を特定した。各クローンについて、導入されているcDNAを鋳型として「RNAアプタマー分子」を調製し、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能の評価を行った。
【0027】
その結果、前記合計12ラウンドで採取された「RNAアプタマー分子」の一群から、作製した一群のクローンにおいても、その「ランダムな塩基配列」部分が一致しているクローン数が2以上存在する、クローン・ファミリーを選別した。選別されたクローン・ファミリー中には、KD≦10nMと見積もられる、2’F修飾RNA鎖型「RNAアプタマー分子」の鋳型のcDNAを保持するクローンのファミリーも含まれている。このKD≦10nMと見積もられる、2’F修飾RNA鎖型「RNAアプタマー分子」の鋳型のcDNAを保持するクローンのファミリーは、下記の塩基配列を有しており、そのcDNAを保持するクローンに、それぞれ、識別のための名称を、TNF-458、TNF-505、TNF-508、TNF-510と付した。
【0028】
Clone:TNF-458中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
TGAGATATCGCTCCATTTTCAAATTTATCTATACAAACACTTTGATTCG
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:14)
TNF-485 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
Clone:TNF-505中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
TACAATATCTATCACCTTTTACTGGCTACGAGGAGCAAGTACCCAGACATG
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:15)
「RNAアプタマー分子」TNF-505 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
Clone:TNF-508中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
CTCCATATGGATCTCTGTTCCCCGCACCTGAGAGCCAATACCTTGACATC
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:16)
「RNAアプタマー分子」TNF-508 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
Clone:TNF-510中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
TCACATATGGATCCCTTTTCAACGGTACCAATAGCTTGCAGTTAAATACA
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:17)
「RNAアプタマー分子」TNF-510 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
なお、前記の各クローンのファミリーを鋳型として作製される「RNAアプタマー分子」も、合計10ラウンドの選別を経ており、前記2’F修飾RNA鎖型「RNAアプタマー分子」と同様に、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有すると、判断される。
【0029】
「RNAアプタマー分子」 TNF-458:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
「RNAアプタマー分子」 TNF-505:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
「RNAアプタマー分子」 TNF-508:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
「RNAアプタマー分子」 TNF-510:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
前記合計12ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群について、逆転写によって調製されるcDNAを、それぞれ大腸菌に導入して、クローン化を行った際、TNF-130と、上記のTNF-458、TNF-505、TNF-508、TNF-510は、いずれも、複数個のクローンを与えている。換言すると、前記合計12ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群中に、相当の比率で、これらの「RNAアプタマー分子」が含まれていることを示している。
【0030】
本発明者らは、KD≦10nMの条件を満たす「RNAアプタマー分子」である、TNF-130において、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成に関与する立体構造上の特徴を推定するため、先ず、その二次構造の推定を行った。図2に示す、TNF-130の推定された二次構造において、中心部に、内部ループ様の構造が構成されている点に着目した。TNF-130の「ランダム配列」領域において、この内部ループ様の構造の構成に関与している部分として、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」の二つの領域に着目した。
【0031】
一方、本発明者らは、選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群中に、相当の比率で含有されている「RNAアプタマー分子」は、そのRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能は、一定水準を超えたものであると判断した。本発明者らは、選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群について、そのcDNAの群を調製し、その塩基配列解析の結果に基づき、相当の比率で含有されている「RNAアプタマー分子」の有無を調べた。前記cDNAの群を対象とする、塩基配列解析は、Genome sequencer FLX systemを応用した、高速シークエンス解析を利用している。
【0032】
その結果、実際に、上記の選別条件を満たす「クローン・ファミリー」を構成していたTNF-130は、解析されたcDNAの群中に、「28/3153」程度の頻度で含有されていることが確認された。
【0033】
前記合計12ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群中に、TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を、同様な相対位置で具えている「RNAアプタマー分子」が、他にも含まれているか、否かを調査した。その結果、「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を具え、解析されたcDNAの群中に、「32/3153」の頻度で含有されている「cDNA」として、下記の「RNAアプタマー分子」TNF-100のcDNAが見出された。この「RNAアプタマー分子」TNF-100のcDNAを、大腸菌に導入して、クローン化を行った。
【0034】
Clone:TNF-100中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
ATAAGTTCGGATCACCGGCCCAAAGCCTAGACCTAGGGGCTATAAATAC
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:21)
「RNAアプタマー分子」 TNF-100:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
「RNAアプタマー分子」TNF-100は、上記バインディング・バッファ溶液中における解離定数KDが、KD≦10nMの条件は満たしていないが、その解離定数KDが、KD≦20nMの範囲である。
【0035】
二種の「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100について、その推定される二次構造を比較すると、図3に示すように、中心部に、内部ループ様の構造が構成されているという共通性が見出された。この内部ループ様の構造の構成に関与する部分塩基配列を対比したところ、TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と、TNF-100中の「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」との間で、明確な類似性が見出された。
【0036】
前記合計12ラウンドの選別を終えた「RNAアプタマー分子」の群中に、TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を、同様な相対位置で具えている「RNAアプタマー分子」が、他にも含まれていた。
【0037】
また、先の高速シークエンス解析を行ったcDNAの群中に、「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を、同様な相対位置で具えているものが、TNF-100のcDNA以外にも、下記の三種:TNF-673,TNF-674,TNF-675が見出された。解析されたcDNAの群中に、それぞれ、TNF-673は、「4/3153」の頻度で、TNF-674は、「2/3153」の頻度で、TNF-675は、「1/3153」の頻度で含まれていた。この三種のcDNAも、大腸菌に導入して、クローン化を行った。
【0038】
Clone:TNF-673中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
CCGACATCCGGTCTTCTTCACCGGTAGAGTATATATAACCGCCTAGACAGG
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:18)
「RNAアプタマー分子」 TNF-673:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CCGACAUCCGGTCTTCUUCACCGGUAGAGUAUAUAUAACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:6)
Clone:TNF-674中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
CGTTAAATCCTAAGCGGATGGCCCCTTCACCGATCATAGGATCTAGACAGG
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:19)
「RNAアプタマー分子」 TNF-674:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CGUUAAAUCCUAAGCGGAUGGCCCCUUCACCGAUCAUAGGAUCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:7)
Clone:TNF-675中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
TCGAAATATTACCCTTTTCACCGGCGAAAGTCGCATGACCGCCTAGACAGG
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:20)
「RNAアプタマー分子」 TNF-675:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCGAAAUAUUACCCUUUUCACCGGCGAAAGUCGCAUGACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:8)
本発明者らは、「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100の推定される二次構造において、共通して見出される、中心部に形成される、内部ループ様の構造が、実際に、Recombinant Human TNF-αとの複合体形成に関与することの検証を行った。すなわち、「RNAアプタマー分子」TNF-100に基づき、その中心部に形成される、内部ループ様の構造の構成が可能な部分塩基配列からなる、一本鎖RNA分子:TNF-m013を設計し、該TNF-m013のRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を測定した。図4に、一本鎖RNA分子:TNF-m013の推定される二次構造を、TNF-100の推定される二次構造と対比して示す。
【0039】
実際には、一本鎖RNA分子:TNF-m013の3’末端にPolyA鎖を付加してなる、3’末端PolyA鎖付加型RNA分子:TNF-m013+(A)24を作製した。ビオチン化PolydUを、SAセンサ・チップ上に固定化されているStreptavidinタンパク質との結合を介してチップ上に固定化し、このビオチン化PolydUに、作製されたTNF-m013+(A)24のPolyA鎖をハイブリダイズさせ、固定化する。この固定化されたTNF-m013+(A)24と、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成・解離過程における、平衡解離定数KDの測定を行った。また、TNF-100の3’末端に、ビオチン化PolydU鎖とハイブリダイズ可能なPolyA鎖を付加してなる、3’末端PolyA鎖付加型RNA分子:TNF-100+(A)24を作製した。ビオチン化PolydUを、SAセンサ・チップ上に固定化されているStreptavidinタンパク質との結合を介してチップ上に固定化し、このビオチン化PolydUに、作製されたTNF-100+(A)24をのPolyA鎖をハイブリダイズさせ、固定化する。この固定化されたTNF-100+(A)24と、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成・解離過程における、平衡解離定数KDの測定を行った。
【0040】
その結果、TNF-m013+(A)24と、TNF-100+(A)24で測定された、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成・解離過程における、結合速度定数ka、解離速度定数kd、平衡解離定数KD=kd/kaは、ほぼ等しい値であることが確認される。従って、TNF-m013と、TNF-100は、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成に関与する立体構造は、本質的に同じであると判断される。すなわち、TNF-m013と、TNF-100は、図4に示す推定二次構造、特には、その中心部に形成される、内部ループ様の構造を形成することで、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成を可能としていると、判断される。また、図3に示す推定二次構造を考慮すると、「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100においては、共通して見出される、中心部に形成される、内部ループ様の構造を構成することで、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成を可能としていると、推断された。
【0041】
本発明者らは、以上に述べた一連の検討の結果に基づき、本発明を完成するに至った。
【0042】
本発明の第一の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーは、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記のI-1〜I-5の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(I-1) TNF-130
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCCCAUAUGGAUCCCUUUUCACCGGUACCAAUAGCAAAUACCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:1)
(I-2) TNF-485
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
ことを特徴とするアプタマーである。
【0043】
さらには、本発明の第一の形態は、RNA鎖を構成する各リボ核酸の2’−位のヒドロキシル基(−OH)をフッ素原子(−F)で置き換える修飾が施されている、2’F修飾RNA鎖型のアプタマーをも包含している。
【0044】
本発明の第一の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する、2’F修飾RNA鎖型のアプタマーは、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、各リボ核酸の2’−位のヒドロキシル基(−OH)をフッ素原子(−F)で置き換える修飾が施されている、下記のI-2〜I-5の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖修飾RNA分子である
(I-2) TNF-485 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
ことを特徴とするアプタマーである。
【0045】
本発明の第二の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーの一例は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記のII-2〜II-4の塩基配列からなる群から選択される塩基配列の一本鎖RNA分子である
(II-2) TNF-674
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CGUUAAAUCCUAAGCGGAUGGCCCCUUCACCGAUCAUAGGAUCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:7)
(II-3) TNF-675
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCGAAAUAUUACCCUUUUCACCGGCGAAAGUCGCAUGACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:8)
(II-4) TNF-100
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
ことを特徴とするアプタマーである。
【0046】
また、本発明の第二の形態は、ヒトTNF−αに対する結合能を有する一本鎖RNA分子に対して、その3’末端にPolyA鎖を付加してなる、3’末端PolyA鎖付加型のアプタマーをも包含している。すなわち、付加されている3’末端PolyA鎖と、固相表面に固定化されている、PolydU鎖との間でハイブリッド体を形成した状態で、ヒトTNF−αに対する結合能を有する一本鎖RNA分子も包含している。
【0047】
本発明の第二の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する、3’末端PolyA鎖付加型のアプタマーの一例は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、3’−末端にPolyA配列が付加された、下記のII-4’の塩基配列からなる一本鎖RNA分子である
(II-4’) TNF-100+(A)24
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC
AAAAA AAAAA AAAAA AAAAA AAAA-3’ (配列番号:11)
ことを特徴とするアプタマーである。
【0048】
本発明の第三の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーの一例は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、下記のIIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子である
(III) TNF-m013
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC-3’ (配列番号:10)
ことを特徴とするアプタマーである。
【0049】
また、本発明の第三の形態は、ヒトTNF−αに対する結合能を有する一本鎖RNA分子に対して、その3’末端にPolyA鎖を付加してなる、3’末端PolyA鎖付加型のアプタマーをも包含している。すなわち、付加されている3’末端PolyA鎖と、固相表面に固定化されている、PolydU鎖との間でハイブリッド体を形成した状態で、ヒトTNF−αに対する結合能を有する一本鎖RNA分子も包含している。
【0050】
本発明の第三の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する、3’末端PolyA鎖付加型のアプタマーの一例は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、3’−末端にPolyA配列が付加された、下記のIII’の塩基配列からなる一本鎖RNA分子である
(III’) TNF-m013+(A)24
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC
AAAAA AAAAA AAAAA AAAAA AAAA-3’ (配列番号:12)
ことを特徴とするアプタマーである。
【0051】
加えて、本発明は、上記の本発明の第一の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマー、本発明の第二の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマー、本発明の第三の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用する方法の発明を提供している。
【0052】
本発明にかかる、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用する方法の発明の一例は、下記のヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法である。
【0053】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第一の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法であって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを具えており、
前記モノクローナル抗体を利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーとして、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCCCAUAUGGAUCCCUUUUCACCGGUACCAAUAGCAAAUACCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:1)
(I-2) TNF-485
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CGUUAAAUCCUAAGCGGAUGGCCCCUUCACCGAUCAUAGGAUCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:7)
(II-3) TNF-675
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCGAAAUAUUACCCUUUUCACCGGCGAAAGUCGCAUGACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:8)
(II-4) TNF-100
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC-3’ (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する
ことを特徴とするアプタマーの使用方法である。
【0054】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0055】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第二の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法であって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを具えており、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記モノクローナル抗体を反応させ、
固定化されたヒトTNF−αと反応し、抗原抗体複合体を形成した、前記モノクローナル抗体を検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーとして、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する
ことを特徴とするアプタマーの使用方法である。
【0056】
その際、例えば、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
該アプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。
【0057】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第三の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法であって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αの固定化に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第一のRNAアプタマーと、
固定化されたヒトTNF−αの検出に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第二のRNAアプタマーを具えており、
前記第一のRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記第二のRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、前記第二のRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有する、前記第二のRNAアプタマーとして、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する
ことを特徴とするアプタマーの使用方法である。
【0058】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有する、第二のRNAアプタマーは、
該第二のRNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0059】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第四の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法であって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αの固定化に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第一のRNAアプタマーと、
固定化されたヒトTNF−αの検出に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第二のRNAアプタマーを具えており、
前記第一のRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記第二のRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、前記第二のRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有する、前記第一のRNAアプタマーとして、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する
ことを特徴とするアプタマーの使用方法である。
【0060】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有する、第一のRNAアプタマーは、
該第一のアプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該第一のRNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。
【0061】
また、本発明にかかる、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用する方法の発明の他の一例は、上記の本発明の第一の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマー、本発明の第二の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマー、本発明の第三の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キットの発明である。
【0062】
本発明にかかる、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キットの発明の一例として、下記のヒトTNF−αの検出用キットを例示することができる。
【0063】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第一の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットであって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを具えており、
前記モノクローナル抗体を利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCCCAUAUGGAUCCCUUUUCACCGGUACCAAUAGCAAAUACCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:1)
(I-2) TNF-485
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CGUUAAAUCCUAAGCGGAUGGCCCCUUCACCGAUCAUAGGAUCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:7)
(II-3) TNF-675
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCGAAAUAUUACCCUUUUCACCGGCGAAAGUCGCAUGACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:8)
(II-4) TNF-100
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC-3’ (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーである
ことを特徴とする検出用キットである。
【0064】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0065】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第二の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットであって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを具えており、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記モノクローナル抗体を反応させ、
固定化されたヒトTNF−αと反応し、抗原抗体複合体を形成した、前記モノクローナル抗体を検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーである
ことを特徴とする検出用キットである。
【0066】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
該アプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。
【0067】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第三の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットであって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αの固定化に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第一のRNAアプタマーと、
固定化されたヒトTNF−αの検出に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第二のRNAアプタマーを具えており、
前記第一のRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記第二のRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、前記第二のRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有する、前記第二のRNAアプタマーは、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーである
ことを特徴とする検出用キットである。
【0068】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有する、第二のRNAアプタマーは、
該第二のRNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0069】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第四の態様は、
ヒトTNF−αの検出用キットであって、
該ヒトTNF−αの検出用キットは、
ヒトTNF−αの固定化に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第一のRNAアプタマーと、
固定化されたヒトTNF−αの検出に利用される、ヒトTNF−αに対する結合能を有する第二のRNAアプタマーを具えており、
前記第一のRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記第二のRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、前記第二のRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う検出用キットであり、
該ヒトTNF−αの検出用キットが具える、ヒトTNF−αに対する結合能を有する、前記第一のRNAアプタマーは、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーである
ことを特徴とする検出用キットである。
【0070】
その際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有する、第一のRNAアプタマーは、
該第一のアプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該第一のRNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。
【0071】
本発明者らは、図2に示す、TNF-130の推定された二次構造において、中心部に、内部ループ様の構造が構成されている点に着目した。TNF-130の「ランダム配列」領域において、この内部ループ様の構造の構成に関与している部分として、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」の二つの領域に着目した。
【0072】
さらに、本発明者らは、上述の二種の「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100について、その推定される二次構造を比較すると、図3に示すように、中心部に、内部ループ様の構造が構成されているという共通性が見出されることに着目した。この内部ループ様の構造の構成に関与する部分塩基配列を対比したところ、TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と、TNF-100中の「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」との間で、明確な類似性が見出されることに着目した。
【0073】
本発明者らは、SELEX法を適用するスクリーニングに利用する、
5’末端の固定領域:GGAAGACCAG CCUUAAGAGGG;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGUAUCCG GAACGUGAC;(19塩基) (配列番号:30)
を具える、全長90塩基長の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」中から、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製し、この第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーに対して、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、スクリーニングを行うことで、より効率的に、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされることに想到した。
【0074】
すなわち、上記の第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’を利用することで、予めスクリーニング対象の絞り込みを行うことで、より効率的なスクリーニングを行うことが可能となることに想到した。
【0075】
あるいは、前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製し、この第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーに対して、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、スクリーニングを行うことで、より効率的に、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされることに想到した。
【0076】
すなわち、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の形態は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法であって、
該選別方法は、下記の工程1と工程2とを具えており、
(工程1)
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する、第一の選別工程;
(工程2)
前記第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーから、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する、第二の選別工程;
該選別方法によって、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされる
ことを特徴とするアプタマーの選別方法である。
【0077】
その際、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することができる。
【0078】
また、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することができる。
【0079】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第二の形態は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法であって、
該選別方法は、下記の工程1と工程2とを具えており、
(工程1)
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する、第一の選別工程;
(工程2)
前記第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーから、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する、第二の選別工程;
該選別方法によって、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされる
ことを特徴とするアプタマーの選別方法である。
【0080】
その際、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することができる。
【0081】
また、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することができる。
【0082】
加えて、本発明は、上述する「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」において利用される、「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の発明を提供している。
【0083】
すなわち、本発明にかかる「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の第一の形態は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別に利用される、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーであって、
該部分ライブラリーは、
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである
ことを特徴とする候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーである。
【0084】
その際、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである形態を選択することができる。
【0085】
本発明にかかる「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の第二の形態は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別に利用される、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーであって、
該部分ライブラリーは、
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである
ことを特徴とする候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーである。
【0086】
その際、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである形態を選択することができる。
【0087】
さらに、本発明者らは、上述の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」を適用することで、下記の「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」を選別することは可能であることに想到した。
【0088】
すなわち、本発明は、その塩基配列中に含まれる、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成され、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの発明をも提供する。また、本発明は、その塩基配列中に含まれる、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成され、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの発明をも提供する。
【0089】
すなわち、本発明にかかる「第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第一の態様は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、51塩基長の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記51塩基長の配列部分中に、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第一の部分塩基配列と第二の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している
ことを特徴とするアプタマーである。
【0090】
その際、
前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0091】
さらに、前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0092】
また、本発明にかかる「第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第一の態様は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、51塩基長の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記51塩基長の配列部分中に、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第三の部分塩基配列と第四の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している
ことを特徴とするアプタマーである。
【0093】
その際、
前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0094】
さらに、前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0095】
さらには、本発明にかかる「第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第二の態様は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記中間領域の配列部分中に、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第一の部分塩基配列と第二の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している
ことを特徴とするアプタマーである。
【0096】
その際、
前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0097】
さらに、前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0098】
また、本発明にかかる「第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第二の態様は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記中間領域の配列部分中に、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第三の部分塩基配列と第四の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している
ことを特徴とするアプタマーである。
【0099】
その際、
前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0100】
さらに、前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0101】
さらに、本発明者らは、後述する、図4に示すRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−m013と「RNAアプタマー分子」TNF−100の推定される二次構造の対比結果に着目した。具体的には、その塩基配列中に含まれる、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成されると、ヒトTNF−αに対する結合能を発揮できることに想到した。また、その塩基配列中に含まれる、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成されると、ヒトTNF−αに対する結合能を発揮できることに想到した。
【0102】
すなわち、本発明にかかる「第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第三の態様は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、
第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでなる塩基配列からなる一本鎖RNA分子であり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第一の部分塩基配列と第二の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している
ことを特徴とするアプタマーである。
【0103】
その際、
前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0104】
さらに、前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0105】
また、本発明にかかる「第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第三の態様は、
ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーであって、
該RNAアプタマーは、
第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでなる塩基配列からなる一本鎖RNA分子であり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第三の部分塩基配列と第四の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している
ことを特徴とするアプタマーである。
【0106】
その際、
前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0107】
さらに、前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【発明の効果】
【0108】
本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、循環血液中に含まれる、ヒトTNF−αのホモ3量体と特異的な複合体形成が可能である。従って、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、ホモ3量体型のヒトTNF−αが関与する各種の疾患の診断を進める際、該疾患の病態の指標となる、ヒトTNF−αのホモ3量体の循環血液中の濃度について、特異的な複合体形成を利用して、高い感度で定量する目的に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1図1は、本発明の第一の実施態様にかかる、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−130に関して、Recombinant Human TNF-αとの複合体形成過程の速度定数ka、該複合体の解離過程の速度定数kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の第一の実施態様にかかる、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−130に関して、その二次構造の推定結果を示す図である。
図3図3は、本発明の第二の実施態様にかかる、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−100の推定される二次構造と、図2に示す「RNAアプタマー分子」TNF−130の推定される二次構造を対比して示す図である。
図4図4は、本発明の第三の実施態様にかかる、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−m013の推定される二次構造と、図3に示す「RNAアプタマー分子」TNF−100の推定される二次構造を対比して示す図である。
図5図5は、本発明の第三の実施態様にかかる、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−m013に関して、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成過程の速度定数ka、該複合体の解離過程の速度定数kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaについて、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」に関して、より詳細に説明する。
【0111】
(第一の形態)
本発明の第一の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーは、水溶液中において、ホモ3量体を構成していると報告されている、Recombinant Human TNF-αを利用して、該Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体形成可能な一本鎖RNA分子として、選別されたものである。
【0112】
具体的には、下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長の「ランダム配列部分(N51)」を具えた一本鎖RNA分子で構成される「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)」から、SELEX法を適用して、前記Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体形成可能な一本鎖RNA分子として、選択されたものである。
【0113】
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
SELEX法を適用した、前記Recombinant Human TNF-αのホモ3量体との複合体形成能に基づく、スクリーニング工程では、該Recombinant Human TNF-αのホモ3量体との複合体形成、ならびに、形成された複合体の解離は、下記の条件を採用している。
【0114】
(i) 「初回ラウンド」用の「RNAプール」の調製
上記の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)」を構成する一本鎖RNA分子は、下記の「ランダム二本鎖DNA分子ライブライー」を構成する、二本鎖DNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写によって調製する。
【0115】
「ランダム二本鎖DNA分子ライブライー」を構成する、各二本鎖DNA分子は、下記の「T7プロモーター領域」、5’末端の固定領域、30塩基長のランダム配列部分、3’末端の固定領域からなる塩基配列Rcandidate0を有している。
【0116】
5’末端の「T7プロモーター領域」:GATAATACGACTCACTATA;(19塩基) (配列番号:26)
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCTTA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:24)
51ランダム配列部分:NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN N;
3’末端の固定領域:CTAGT ATCCG GAACG TGAC;(19塩基) (配列番号:25)
そのN51ランダム配列部分は、GCの含有比率は、50%に選択されている。
【0117】
(ii) Recombinant Human TNF-αのホモ3量体との複合体形成条件
フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、下記の組成のバインディング・バッファ溶液中において、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に一本鎖RNA分子を作用させ、該Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と一本鎖RNA分子との複合体を形成させる。この複合体形成反応で使用されるバインディング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClである。また、液温度は、通常、25℃(室温)に選択されている。
【0118】
前記バインディング・バッファ溶液中では、対象タンパク質のRecombinant Human TNF-αは、含有濃度が10nM(170ng/ml)以上である場合、25℃(室温)では、通常、ホモ3量体を形成した状態で、溶解している。
【0119】
なお、Recombinant Human TNF-αでも、ホモ3量体とモノマーの間には、解離平衡が存在している。その解離平衡によって、Recombinant Human TNF-αの含有濃度が1nM(17ng/ml)未満になると、含有濃度の低下とともに、ホモ3量体の解離が進む傾向があるという報告もある。
【0120】
一方、該バインディング・バッファ溶液中に溶解している、一本鎖RNA分子は、作製後、一旦、加熱処理を施し、分子内の二本鎖構造を解消する“denaturing”処理を行い、その後、冷却して、三次構造を形成させる、“folding”処理を施す。すなわち、各一本鎖RNA分子は、その塩基配列に従って、内在する「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造を含む、二次構造の形成、ならびに、全体として、三次構造の形成がなされた状態とする。通常、“folding”処理を施すことにより、一本鎖RNA分子の鎖間における、「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造は解消され、各一本鎖RNA分子は、それぞれ、鎖内で形成される二本鎖構造のみを内在する、三次構造を有するものとなっている。
【0121】
なお、“folding”処理中、三次構造を形成する過程において、一本鎖RNA分子は、場合によっては、該バインディング・バッファ溶液中に存在する二価の金属カチオン種:Mg2+に対して、「ヌクレオチド錯体」型の配位結合を形成することもある。すなわち、“folding”処理で形成される一本鎖RNA分子の三次構造中に、二価の金属カチオン種:Mg2+に対して、「ヌクレオチド錯体」型の配位結合が形成されている部位が内在されていることもある。
【0122】
“folding”処理を施した一本鎖RNA分子と、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体を含む反応溶液を、所定の時間Incubation処理することで、複合体形成を行わせる。
【0123】
複合体形成反応を行った後、該反応溶液中に含まれる、対象タンパク質のRecombinant Human TNF-αのホモ3量体、ならびに、該Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と一本鎖RNA分子との複合体は、ニトロセルロースフィルターにより濾別する。濾別後、ニトロセルロースフィルターは、前記バインディング・バッファ溶液所定量で洗浄することにより、該ニトロセルロースフィルターの表面に非選択的に付着している一本鎖RNA分子を除去する。
【0124】
(iii) Recombinant Human TNF-αのホモ3量体との複合体の解離条件
フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、該ニトロセルロースフィルターにより濾別されている、該Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体を形成している、一本鎖RNA分子を回収するため、下記の条件で、該複合体の解離を行う。
【0125】
該ニトロセルロースフィルター上に濾別されている、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体を形成している一本鎖RNA分子が“denaturing”する条件を採用する。具体的には、下記の加熱処理を施すことで、一本鎖RNA分子の有する二次構造、ならびに三次構造を解消することで、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と一本鎖RNA分子との複合体の解離を行っている。
【0126】
前記洗浄処理を終えたニトロセルロースフィルターを、組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 7M Ureaの溶出バッファ溶液の所定量中の浸漬し、90℃で5分間加熱し、一本鎖RNA分子の“denaturing”処理を施す。該“denaturing”処理によって、一本鎖RNA分子の二次構造、ならびに三次構造は解消される結果、該一本鎖RNA分子は、変性剤の尿素の高濃度溶液中に溶出される。
【0127】
溶出された、一本鎖RNA分子を含有する溶出バッファ溶液は、ニトロセルロースフィルターと固液分離され、回収される。この回収された溶出バッファ溶液中に含まれる一本鎖RNA分子は、例えば、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。
【0128】
(iv) 表面プラズモン共鳴測定装置を利用する、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の分離条件
フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドを繰り返した後、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」が濃縮されたRNAプールから、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、センサ・チップ上に固定化されている、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を下記の条件で分離する。
【0129】
使用した表面プラズモン共鳴装置は、BIACORE 3000(Biacore)である。該表面プラズモン共鳴装置用のセンサ・チップ CM4(Biacore)表面に予め固定化されている、カルボキシルメチル基置換デキストランを利用して、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体を固定化する。
【0130】
このセンサ・チップ上に固定化された、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」が濃縮されたRNAプールを作用させる。その結果、該RNAプール中に含まれる、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、固定化されているRecombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体を形成する。該RNAプール自体は、前記バインディング・バッファ溶液中に一本鎖RNA分子を溶解したものであり、前記「RNAアプタマー分子」と、固定化されているRecombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体形成は、該バインディング・バッファ溶液中において進行する。
【0131】
複合体形成過程を終えた後、RNAを含まないバインディング・バッファ溶液をセンサ・チップ上に流し、RNAプール液を流し出す。このRNAを含まないバインディング・バッファ溶液を用いた洗浄過程の間に、固定化されているRecombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体形成している、前記「RNAアプタマー分子」の一部も解離するが、大部分の「RNAアプタマー分子」は、複合体を形成した状態を維持している。
【0132】
洗浄過程の終了後、下記の組成の溶出液をセンサ・チップ上に流し、固定化されているRecombinant Human TNF-αのホモ3量体と複合体形成している、前記「RNAアプタマー分子」を溶出させる。この溶出過程で使用されるEDTA溶出液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAである。
【0133】
該EDTA溶出液は、キレート剤EDTAを含んでいるため、固定化されているRecombinant Human TNF-αのホモ3量体と「RNAアプタマー分子」との複合体中に含まれる、Mg2+カチオンの除去がなされる。Mg2+カチオンの除去に伴って、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体との結合能が低下する一本鎖RNA分子は、該EDTA溶出液中に溶出される。すなわち、Mg2+カチオン依存的な複合体形成を行っている、「RNAアプタマー分子」が選択的に溶出される。一方、Mg2+カチオン非依存的な複合体形成を行っている、「RNAアプタマー分子」は、EDTA溶出液中に極く僅かに溶出するが、実質的には、該EDTA溶出液中には回収されない。
【0134】
センサ・チップ上から該EDTA溶出液を回収し、該回収されたEDTA溶出液から、含有されている「RNAアプタマー分子」は、例えば、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。
【0135】
(v) ニトロセルロースフィルターに対して、非選択的な結合能を有する「一本鎖RNA分子」の除去条件
フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドでは、濾別に利用するニトロセルロースフィルターに対する、非選択的な結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮も、不可避的に進行する。
【0136】
Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」の濃縮を行う際、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を回避するため、「Pre-selection操作」を利用する。
【0137】
該「Pre-selection操作」は、フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドで利用するRNAプール溶液を、ニトロセルロースフィルターに予め作用させる操作である。ニトロセルロースフィルターに作用させると、該RNAプール溶液中に含まれる、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は、該ニトロセルロースフィルター自体に結合される。その結果、該ニトロセルロースフィルターと固液分離され、回収される、RNAプール溶液中に残余する、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃度は、大幅に低減されている。
【0138】
該「Pre-selection操作」を予め施した、RNAプール溶液を利用して、SELEX選択ラウンドを行うと、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は濃縮を受けるが、予め、RNAプール溶液中の含有濃度を低減している結果、回収される溶出バッファ溶液中に含まれる「一本鎖RNA分子」中における、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の比率は、相対的に低い水準となっている。
【0139】
従って、該「Pre-selection操作」を利用することで、フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドを繰り返しても、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を実質的に回避することが可能となる。
【0140】
(vi) 「2回ラウンド」以降で利用する「RNAプール」の調製
「2回ラウンド」以降で利用する「RNAプール」は、前段のラウンドで回収された「一本鎖RNA分子」より調製される、二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写によって調製する。
【0141】
回収された「一本鎖RNA分子」を鋳型として、二本鎖cDNA分子を調製する工程では、下記のForward Primer とReverse Primerを利用して、RT-PCR法を適用する。
【0142】
Forward Primer:(配列番号:22)
5'- GATAATACGACTCACTATA GGAAG ACCAG CCTTA AGAGG G -3'
Reverse Primer:(配列番号:23)
5'- GTCA CGTTC CGGAT ACTAG-3'
前記Reverse Primerは、回収される「一本鎖RNA分子」の3’末端の固定領域と相補的な塩基配列である。
【0143】
5'- CUAGU AUCCG GAACG UGAC -3' (配列番号:30)
3'- GATCA TAGGC CTTGC ACTG -5' (配列番号:23)
前記Forward Primerは、「T7プロモーター領域」として利用可能な塩基配列と、回収される「一本鎖RNA分子」の5’末端の固定領域に相当する部分とで構成されている。
【0144】
「T7プロモーター領域」:5'- GATAATACGACTCACTATA -3' (配列番号:26)
5’末端の固定領域に相当する部分:5'- GGAAG ACCAG CCTTA AGAGG G -3' (配列番号:24)
その結果、回収された「一本鎖RNA分子」を鋳型として調製される、二本鎖cDNA分子の塩基配列は、5’末端にForward Primerに起因する領域、3’末端にReverse Primerに相補的な領域、その間に、回収された「一本鎖RNA分子」の5’末端の固定領域の一部:AUUCと「ランダム配列部分」に由来する領域とで構成されている。
【0145】
Forward Primerに起因する領域:(配列番号:22)
GATAATACGACTCACTATA GGAAG ACCAG CCTTA AGAGG G
「ランダム配列部分(N51)」に由来する領域:
NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN
NNNNNNNNNN NNNNNNNNNN N
Reverse Primerに相補的な領域:(配列番号:25)
CTAGT ATCCG GAACG TGAC
調製された二本鎖cDNA分子を転写テンプレートとして利用して、T7RNAポリメラーゼを用いて、in vitro転写により調製される「一本鎖RNA分子」は、前段のラウンドで回収された「一本鎖RNA分子」とは、その「ランダム配列部分」の頻度分布は、本質的に同じ分布を示すものとなっている。
【0146】
調製された「一本鎖RNA分子」は、in vitro転写反応溶液から回収し、上記のバインディング・バッファ溶液中に、所定の濃度で溶解して、次段ラウンドで利用する「RNAプール」とする。なお、「一本鎖RNA分子」に対して、“folding”処理を施す。その結果、一本鎖RNA分子の鎖間における、「相補的な部分塩基配列」間で構成される二本鎖構造は解消され、各一本鎖RNA分子は、それぞれ、鎖内で形成される二本鎖構造のみを内在する、三次構造を有するものとなっている。
【0147】
(vii) 表面プラズモン共鳴装置用のセンサ・チップに対して、非選択的な結合能を有する「一本鎖RNA分子」の除去条件
表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、センサ・チップ上に固定化されている、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を選別する際、センサ・チップ CM4の表面に非選択的に結合する一本鎖RNA分子も不可避的に分取される。
【0148】
このセンサ・チップ CM4の表面に非選択的に結合する一本鎖RNA分子の混入比率を低減するため、「Pre-selection操作」を利用する。
【0149】
該「Pre-selection操作」は、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する選択ラウンドで利用するRNAプール溶液を、センサ・チップ CM4に予め作用させる操作である。センサ・チップ CM4に作用させると、該RNAプール溶液中に含まれる、センサ・チップ CM4の表面に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は、該センサ・チップ CM4の表面自体に結合される。その結果、該センサ・チップ CM4と固液分離され、回収される、RNAプール溶液中に残余する、センサ・チップ CM4自体に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃度は、大幅に低減されている。
【0150】
該「Pre-selection操作」を予め施した、RNAプール溶液を利用して、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する選択ラウンドを行うと、センサ・チップ CM4に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は濃縮を受けるが、予め、RNAプール溶液中の含有濃度を低減している結果、回収される溶出バッファ溶液中に含まれる「一本鎖RNA分子」中における、センサ・チップ CM4に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の比率は、相対的に低い水準となっている。
【0151】
従って、該「Pre-selection操作」を利用することで、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する選択ラウンドを繰り返しても、センサ・チップ CM4に対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を実質的に回避することが可能となる。
【0152】
(第一の実施態様)
第一の実施態様では、本発明の第一の形態にかかるRecombinant Human TNF-αに対する結合能を有するアプタマーを選別する一連の工程の一例を以下に説明する。
【0153】
第一の実施態様では、フィルター分離法を利用するSELEX法を適用し、下記の表1に記載する条件を採用して、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有するアプタマーの選別を行っている。
【0154】
【表1】
表1に示す選択条件では、フィルター分離法を利用するSELEX選択ラウンドを10ラウンド繰り返し、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対して結合能を有する一本鎖RNA分子の濃縮を行っている。なお、第一の実施態様では、市販されているRecombinant Human TNF-α(PeproTech,300−01A)を使用している。
【0155】
各ラウンドにおいて、回収された溶出液中に含まれる一本鎖RNA分子は、エタノール沈澱処理を施し、遠心して、沈澱画分として分離回収する。分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、RT-PCR法を応用して、次段のラウンドで使用する「RNAプール」の作製に利用される、in vitro 転写用テンプレートとなる、二本鎖cDNA分子を調製する。
【0156】
従って、各ラウンドにおいて、回収される「一本鎖RNA分子」を鋳型として、二本鎖cDNA分子を調製する工程では、上記のForward Primer とReverse Primerを利用して、RT-PCR法を適用する。
【0157】
2回目のラウンド以降では、利用するニトロセルロースフィルターを用いる「Pre-selection操作」を実施することで、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の濃縮を回避している。
【0158】
ラウンドが進むとともに、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」は、徐々に濃縮される傾向がある。従って、3回目のラウンド以降では、「Pre-selection操作」の回数を3回として、ニトロセルロースフィルターに対する結合能を有する「一本鎖RNA分子」の除去効率を高く設定している。
【0159】
なお、「Pre-selection操作」を実施する際も、その液温度は、25℃とし、各回の「RNAプール」とニトロセルロースフィルターの接触時間は、前記「Incubation Time」と等しい時間を選択している。
【0160】
各回のラウンドにおける、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と「RNAプール」を接触させる際、その液温度は、25℃とし、その時間:「Incubation Time」は、表1に示す。表1に示すように、Recombinant Human TNF-αの濃度は10nM以上の範囲に選択されており、Recombinant Human TNF-αは、ホモ3量体として存在している。
【0161】
4回目のラウンド以降では、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と「RNAプール」を接触させる際、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対して、選択的な結合能を有していない「tRNA」を、反応溶液中に添加している。該「tRNA」は、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に非選択的に付着する機能を有するので、「RNAプール」中に含まれる、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に非選択的に付着可能な一本鎖RNA分子と競合する。すなわち、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に非選択的に付着可能な一本鎖RNA分子の、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面への付着は、添加されている「tRNA」によって、競争的に阻害される。結果的に、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対して、選択的な結合能を示す「一本鎖RNA分子」の回収効率が相対的に増す。換言するならば、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に存在する、非選択的な付着が可能な領域を、添加されている「tRNA」を利用して、blockingすることに相当している。
【0162】
一方、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対して、選択的、かつ、高い結合能を示す「一本鎖RNA分子」は、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に存在する、該「一本鎖RNA分子」の結合部位に対して、安定な複合体形成するため、添加されている「tRNA」に因って、その複合体形成過程は、実質的な影響を受けない。
【0163】
各回のラウンドでは、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と「RNAプール」を接触させ、インキュベーションした後、濾過マニフォールド(ミリポア社)を使用して、13mmφニトロセルロースフィルターにより、反応溶液中に含まれる、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体、ならびに一本鎖RNA分子/Recombinant Human TNF-αのホモ3量体複合体を濾別する。次いで、該ニトロセルロースフィルター上に非選択的に付着している一本鎖RNA分子を洗浄除去するため、洗浄工程を設けている。該洗浄工程では、RNA分子を含まないバインディング・バッファ溶液を利用して、その液温度は、25℃としている。表1に記載する、液量を用いて、洗浄を行っている。該洗浄工程では、ニトロセルロースフィルター上に非選択的に付着している一本鎖RNA分子の脱着に加えて、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に非選択的に付着している一本鎖RNA分子の脱着も進行する。従って、該洗浄工程が終了した時点では、ニトロセルロースフィルター上に非選択的に付着している一本鎖RNA分子と、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の表面に非選択的に付着している一本鎖RNA分子の大半が除去される。
【0164】
さらに、4回目のラウンド以降では、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と「RNAプール」を接触させる際、反応溶液中に含有される、「RNAプール」のRNA濃度の総和に対する、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の濃度の比率を段階的に低下させている。4回目のラウンドでは、「RNAプール」のRNA濃度の総和:Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の濃度の比率は、1:0.62であるが、10回目のラウンドでは、1:020まで低下させている。その結果、ラウンドを重ねる毎に、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体と選択的に複合体形成して、フィルターにより濾別される、「一本鎖RNA分子」中において、その複合体の解離定数KDがより小さな値を示すものの比率が増す。すなわち、複合体の解離定数KDがより小さな値を示すものがより効率的に濃縮される。
【0165】
10回目のラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、同様に、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製する。
【0166】
調製された二本鎖cDNA分子を溶解する液の一部を使用して、含有される二本鎖cDNA分子を、市販のTAクローニング・キット(プロメガ株式会社)を利用して、クローニングする。具体的には、当該キットに添付される標準プロトコルに従って、RT−PCRによる増幅産物(二本鎖DNA分子)群を、クローニングベクター;pGEM−T Easy へ、ライゲーションする。このライゲーション後、クローニングベクターにより、大腸菌株Mach1(インビトロジェン)を形質転換させる。
【0167】
次いで、前記クローニングベクター由来の選択マーカーを利用し、定法に従って、クローニングベクターを保持する形質転換株をコロニー選別する。コロニー選別された、多数の形質転換株中から、34株を無作為に選択し、当該クローン株が保持する、cDNA分子の塩基配列を解析した。その結果、前記34株のクローン中、同じcDNAを保持するクローンが複数存在する、クローン・ファミリーが含まれることが確認された。
【0168】
具体的には、下記の表2に示す、一本鎖RNA分子をコードする部分の塩基配列を有するcDNAを保持するクローン:TNF-130は、前記34株のクローン中、3クローン存在している。
【0169】
【表2】
該クローン:TNF-130が保持するcDNAがコードしている、一本鎖RNA分子について、実際に、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体に対する結合能を有することを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。

具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ:Biacore SAチップ上のStreptavidinタンパク質による結合を介して、biotin修飾したポリdUを1000RU固定化する。3’末端にポリAが付加されている、一本鎖RNA分子を、該ポリA部分をチップ上に固定化されているポリdUとハイブリダイズさせ、2000RU固定化する。
【0170】
バインディング・バッファ溶液中にRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)を、37.5nM、18.8nM、25.0nM、12.5nM含有している、4種類のRecombinant Human TNF-α溶液を調製する。センサ・チップ上に、このRecombinant Human TNF-α溶液を、流速20μL/minで流し、固定化されている一本鎖RNA分子と、Recombinant Human TNF-αのホモ3量体の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上にRecombinant Human TNF-α溶液を流通させる時間は、2minとしている。
【0171】
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)を含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/minで、3min流し、センサ・チップ上のRecombinant Human TNF-α溶液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)を含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
【0172】
図1に、一本鎖RNA分子:TNF-130について、センサ・チップ上に固定化されている3’末端ポリA鎖付加型の一本鎖RNA分子とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成過程、ならびに、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した結果の一例を示す。液温度25℃における、該一本鎖RNA分子:TNF-130に対する測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、固定化された一本鎖RNA分子とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。算出された値は、ka=1.01×105 (M-1-1)、kd=2.75×10-7 (s-1)、KD=kd/ka=2.74(pM)であった。
【0173】
なお、チップ上にRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)を固定した状態において、測定される複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kdから算出される解離定数KD=kd/kaも、KD=kd/ka=2.74(pM)であった。
【0174】
一本鎖RNA分子:TNF-130は、下記表3に示す塩基配列を有しており、その推定される二次構造を、図2に示す。なお、この一本鎖RNA分子における、二次構造の推定には、特開2008−283943号公報に開示される手法を適用し、二次構造推定プログラム:VALFOLDを利用した。
【0175】
【表3】
一本鎖RNA分子:TNF-130の推定される二次構造では、その中心部に、ループ様の構造が構成されている。
【0176】
固定化された一本鎖RNA分子:TNF-130とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl)で洗浄した後、センサ・チップ上に、組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAのEDTA溶出液を注入し、2min保持すると、完全に解離される。すなわち、形成された複合体は、Mg2+カチオンを含有しており、キレート剤EDTAを作用させ、Mg2+カチオンを除去すると、該複合体は速やかに解離している。従って、固定化された一本鎖RNA分子:TNF-130とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)は、Mg2+カチオン依存性の複合体を形成していると、判断される。
【0177】
前記10回目のラウンドで分離回収された、一本鎖RNA分子の一群に対して、さらに、表面プラズモン共鳴測定装置を利用する、SELEX選択ラウンドを2回追加している。具体的には、この追加の選択ラウンドでは、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ CM4の表面上に、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)を固定化し、該固定化されたRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)と複合体を形成する一本鎖RNA分子を選別している。
【0178】
この追加の選択ラウンドは、表4に示す条件を使用している。
【0179】
【表4】
上述するように、10回目のラウンドにおいて分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製している。調製される二本鎖cDNA分子をテンプレートとして、in vitro 転写を行い、11回目のラウンドで使用する「RNAプール」液を作製する。
【0180】
11回目のラウンドで使用する「RNAプール」液は、バインディング・バッファ溶液中に一本鎖RNA分子を1μM含有している。11回目のラウンドで使用する「RNAプール」液に対して、下記の「Pre-selection」処理を3回施す。「Pre-selection」処理では、センサ・チップ CM4自体を利用して、該「RNAプール」液を、流速20μL/minで流し、前記センサ・チップ CM4の表面に、非選択的に結合する一本鎖RNA分子を結合させる。「Pre-selection」処理において、流出する液中では、センサ・チップ CM4の表面に対して、非選択的な結合能を有する一本鎖RNA分子の濃度が低減されている。該「Pre-selection」処理を3回繰り返すことで、最終的に得られる「RNAプール」液中には、センサ・チップ CM4の表面に対して、非選択的で高い結合能を有する一本鎖RNA分子が実質的に含有していない状態となる。
【0181】
11回目の選択ラウンドでは、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)が固定化されているセンサ・チップ CM4上に、該「RNAプール」液を、流速20μL/minで流し、固定化されているRecombinant Human TNF-αと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNAプール」液を流通させる時間は、5minとしている。
【0182】
洗浄過程では、RNA分子を含まないバインディング・バッファ溶液を、流速20μL/minで、5min流し、センサ・チップ上の「RNAプール」液を除去する。該洗浄過程において、その液温度は、25℃としている。
【0183】
洗浄過程の終了後、下記の組成のEDTA溶出液をセンサ・チップ上に満たし、インキュベーションすることで、固定化されているRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)と複合体形成している、一本鎖RNA分子を溶出させる。この溶出過程で使用されるEDTA溶出液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 10 mM EDTAである。
【0184】
該溶出過程では、該溶出液2μLを、センサ・チップ上に満たし、5minインキュベーションする間に、Mg2+カチオンをEDTA錯体として除去する。その結果、Mg2+カチオン依存的にRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)と複合体形成している、一本鎖RNA分子を選択的に解離させている。すなわち、該EDTA溶出液中には、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対して、Mg2+カチオン依存的な結合能を有する一本鎖RNA分子が回収されている。
【0185】
11回目の選択ラウンドにおいて分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製している。調製される二本鎖cDNA分子をテンプレートとして、in vitro 転写を行い、12回目のラウンドで使用する「RNAプール」液を作製する。
【0186】
12回目のラウンドで使用する「RNAプール」液は、バインディング・バッファ溶液中に一本鎖RNA分子を5μM含有している。12回目のラウンドで使用する「RNAプール」液に対しても、上記条件で「Pre-selection」処理を3回施す。
【0187】
12回目の選択ラウンドにおける操作は、前記11回目の選択ラウンドにおける操作と同じである。
【0188】
12回目の選択ラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、同様に、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製する。
【0189】
調製された二本鎖cDNA分子を溶解する液の一部を使用して、含有される二本鎖cDNA分子を、市販のTAクローニング・キット(プロメガ株式会社)を利用して、クローニングする。当該キットに添付される標準プロトコルに従って、RT−PCRによる増幅産物(二本鎖DNA分子)群を、クローニングベクター;pGEM−T Easy へ、ライゲーションする。このライゲーション後、クローニングベクターにより、大腸菌株Mach1(インビトロジェン)を形質転換させる。
【0190】
次いで、前記クローニングベクター由来の選択マーカーを利用し、定法に従って、クローニングベクターを保持する形質転換株をコロニー選別する。コロニー選別された、多数の形質転換株中から、42株を無作為に選択し、当該クローン株が保持する、cDNA分子の塩基配列を解析した。その結果、前記42株のクローン中、同じcDNAを保持するクローンが複数存在する、クローン・ファミリーが含まれることが確認された。
【0191】
具体的には、下記の表5に示す、一本鎖RNA分子をコードする部分の塩基配列を有するcDNAを保持するクローン:TNF-485、TNF-505、TNF-508、TNF-510は、前記42株のクローン中、2クローン以上存在している。
【0192】
【表5】
該クローン:TNF-485、TNF-505、TNF-508、TNF-510が保持するcDNAがコードしている、一本鎖RNA分子について、実際に、Recombinant Human TNF-αに対する結合能を有することを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、検証した。この検証では、評価する一本鎖RNA分子として、RNA鎖を構成する各リボ核酸の2’−位のヒドロキシル基(−OH)をフッ素原子(−F)で置き換える修飾が施されている、2’F修飾RNA鎖型の一本鎖RNA分子を使用している。
【0193】
具体的には、表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップ:Biacore CM4上に、Recombinant Human TNF-αを、10,000RU固定化する。なお、固定化されているRecombinant Human TNF-αは、ホモ3量体の形状を保持していると推断される。
【0194】
バインディング・バッファ溶液中に、該2’F修飾RNA鎖型の一本鎖RNA分子を所定の濃度で含有している、「RNA試料」液を調製する。センサ・チップ上に、この「RNA試料」液を、流速20μL/minで流し、固定化されているRecombinant Human TNF-αと、一本鎖RNA分子の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「RNA試料」液を流通させる時間は、2minとしている。
【0195】
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/minで、9min流し、センサ・チップ上の「RNA試料」液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。RNA分子を含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
【0196】
液温度25℃における、該センサ・チップ上に固定化されているRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成過程、ならびに、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定する。測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、固定化されたRecombinant Human TNF-αと該一本鎖RNA分子との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kdを決定し、解離定数KD=kd/kaを算出した。
【0197】
TNF-485、TNF-505、TNF-508、TNF-510に由来する2’F修飾RNA鎖型の一本鎖RNA分子について、算出された解離定数KDを、表6に示す。
【0198】
【表6】
また、TNF-485、TNF-505、TNF-508、TNF-510に由来する2’F修飾RNA鎖型の一本鎖RNA分子について、決定された複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kdを、表7に示す。
【0199】
【表7】
これらTNF-485、TNF-505、TNF-508、TNF-510に由来する2’F修飾RNA鎖型の一本鎖RNA分子も、一本鎖RNA分子:TNF-130と同様に、Mg2+カチオン依存的なRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体を形成している。
【0200】
TNF-485、TNF-505、TNF-508、TNF-510に由来する2’F修飾RNA鎖型の一本鎖RNA分子とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)の複合体の解離の速度定数kdは、一本鎖RNA分子:TNF-130とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)の複合体の解離の速度定数kdと比較すると、約104倍となっている。すなわち、形成された複合体の安定性に、顕著な差異があると判断される。
【0201】
(第二の形態)
本発明の第二の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーは、Recombinant Human TNF-α(ホモ三量体)と複合体形成可能な一本鎖RNA分子の一群中から、上記「RNAアプタマー」TNF-130に特徴的は塩基配列、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」のモチーフと類似する塩基配列を具えるものとして、選別されたものである。
【0202】
具体的には、上記のSELEX法を適用して、選択されたRecombinant Human TNF-α(ホモ三量体)と複合体形成可能な一本鎖RNA分子の一群中において、上記「RNAアプタマー」TNF-130において、複合体形成に関与すると推定される構造的特徴と、類似する構造を示す可能性が高い一本鎖RNA分子を、前記の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」のモチーフと類似する塩基配列の有無の判定によって、選別したものである。
【0203】
(第二の実施態様)
第二の実施態様では、本発明の第二の形態にかかるRecombinant Human TNF-α(ホモ三量体)に対する結合能を有するアプタマーを選別する工程の一例を以下に説明する。
【0204】
上記の第一の実施態様においは、12回目の選択ラウンドにおいて、分離回収された、一本鎖RNA分子を鋳型として、同様に、RT-PCR法を応用して、二本鎖cDNA分子を調製している。
【0205】
この二本鎖cDNA分子の一群中は、先にクローニングした、43株のクローン以外に、塩基配列が異なる多数種のcDNA分子が含まれている。
【0206】
本第二の実施態様では、これら塩基配列が異なる多数種のcDNA分子に関して、Genome sequencer FLX systemを応用した、高速シークエンス解析を利用して、その塩基配列解析を実施した。解析された3153のcDNA分子中には、同一の塩基配列を有するcDNA分子が複数存在する「ファミリー」が相当数存在していた。
【0207】
SELEX法を適用する「RNAアプタマー」の選択工程では、選択ラウンドを重ねる毎に、分離回収された、一本鎖RNA分子の一群中では、解離定数KDの値が小さな一本鎖RNA分子の含有比率が上昇する。従って、上記の塩基配列解析がなされた3153のcDNA分子の一群中に、高い頻度で存在している「クローン・ファミリー」に由来する一本鎖RNA分子が示す解離定数KDの値は、相対的に小さな値となっている。
【0208】
実際、第一の実施態様において、10回目のラウンドが終了した時点において、KD≦10pMの「クローン・ファミリー」として選別されている、クローン:TNF-130と同じ塩基配列を有するcDNA分子は、28/3153の頻度で存在していることが確認された。
【0209】
図2に示す「RNAアプタマー」TNF-130の推定二次構造は、その中心部に、ループ様の構造を含むという特徴を示す。そのループ様の構造の構成には、5’末端側の固定領域:5'- GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G -3'の“AG CCU”と“A AGAGG G”の部分が、それぞれRNA二本鎖を形成する配置を採ることを利用している。換言しますと、TNF-130中のランダム配列部分に存在する、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」の部分が、関与している。
【0210】
TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を、同様な相対位置で具えている「RNAアプタマー分子」は、その中心部に、ループ様の構造を含む二次構造を示す可能性が高いと推断される。上記の塩基配列解析がなされた3153のcDNA分子の一群中に、TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を、同様な相対位置で具えている「RNAアプタマー分子」が、他にも含まれているか、否かを調査した。その結果、「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を具え、解析されたcDNAの群中に、「32/3153」の頻度で含有されている「cDNA」として、下記の「RNAアプタマー分子」TNF-100のcDNAが見出された。この「RNAアプタマー分子」TNF-100のcDNAを、大腸菌に導入して、クローン化を行った。
【0211】
Clone:TNF-100中に保持されるcDNAの塩基配列:
5’-GGAAGACCAGCCTTAAGAGGG
ATAAGTTCGGATCACCGGCCCAAAGCCTAGACCTAGGGGCTATAAATAC
CTAGTATCCGGAACGTGAC-3’ (配列番号:21)
「RNAアプタマー分子」 TNF-100:
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
「RNAアプタマー分子」TNF-100について、推定される二次構造を、「RNAアプタマー」TNF-130の推定二次構造と対比させて、図3に示す。「RNAアプタマー分子」TNF-100のランダム配列部分に見出された、「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」は、その推定二次構造中において、その中心部の、ループ様の構造の構成に関与している。
【0212】
また、「RNAアプタマー分子」TNF-100は、上記バインディング・バッファ溶液中における解離定数KDが、KD≦10nMの条件は満たしていないが、その解離定数KDが、KD≦20nMの範囲であった。
【0213】
塩基配列解析を行った3153のcDNAの群中に、「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と類似性を示す部分配列を、同様な相対位置で具えているものが、TNF-100のcDNA以外にも、下記の三種:TNF-673,TNF-674,TNF-675が見出された。この三種のcDNAも、大腸菌に導入して、クローン化を行った。表8に、三種のクローン:TNF-673,TNF-674,TNF-675と、クローン:TNF-100、ならびに、クローン:TNF-130に関して、一本鎖RNA分子をコードする塩基配列を対比して示す。表8に、各クローンについて、3153のcDNAの群中における存在頻度(重複度)も記載している。
【0214】
【表8】
クローン:TNF-673のランダム配列部分に見出された、「5’−TCTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」は、クローン:TNF-130中の「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と、その相対的な位置も高い類似性を有している。また、クローン:TNF-675のランダム配列部分に見出された、「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」は、クローン:TNF-130中の「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と、その相対的な位置も高い類似性を有している。
【0215】
一本鎖RNA分子:TNF-100に関して、そのRecombinant Human TNF-αに対する結合能を有することを、表面プラズモン共鳴測定装置を利用して、評価した。
【0216】
表面プラズモン共鳴測定装置:BIACORE 3000を利用し、そのセンサ・チップSA上に、一本鎖RNA分子:TNF-100を、約2,000RU固定化する。実際には、一本鎖RNA分子:TNF-100の3’末端にPolyA鎖を付加してなる、3’末端PolyA鎖付加型RNA分子:TNF-100+(A)24を作製する。該TNF-100+(A)24のPolyA鎖を利用して、センサ・チップSA上に固定化されているStreptavidinタンパク質と結合している、biotin修飾したPolydU鎖とハイブリダイズさせることで、固定化する。
【0217】
バインディング・バッファ溶液中にRecombinant Human TNF-αを、250nM、125nM、62.5nMの2倍希釈系列で含有している、3種類の「ターゲット・タンパク質」溶液を調製する。センサ・チップ上に、この「ターゲット・タンパク質」溶液を、流速20μL/minで流し、固定化されている一本鎖RNA分子:TNF-100+(A)24とRecombinant Human TNF-αの複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「ターゲット・タンパク質」溶液を流通させる時間は、2minとしている。
【0218】
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、Recombinant Human TNF-αを含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/minで、3min流し、センサ・チップ上の「ターゲット・タンパク質」溶液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。Recombinant Human TNF-αを含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
【0219】
センサ・チップ上に固定化されている、一本鎖RNA分子:TNF-100+(A)24について、Recombinant Human TNF-αとの複合体形成過程、ならびに、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定する。液温度25℃における、該一本鎖RNA分子:TNF-100+(A)24に対する測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、固定化された該一本鎖RNA分子と、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。
【0220】
一本鎖RNA分子:TNF-100に加えて、一本鎖RNA分子:TNF-674、TNF-675、ならびに、TNF-130に関しても、同様にセンサ・チップSA上に固定化した上で、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成過程、ならびに、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定する。液温度25℃における、当該一本鎖RNA分子に対する測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、固定化された当該一本鎖RNA分子と、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。
【0221】
表9に、一本鎖RNA分子:TNF-100、TNF-674、TNF-675、ならびに、TNF-130について、上記の条件における測定結果に基づき、算出した解離定数KD=kd/kaの値を示す。
【0222】
【表9】
また、一本鎖RNA分子:TNF-100、TNF-674、TNF-675、ならびに、TNF-130について、上記の条件における測定結果に基づき、決定された複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kdを、表10に示す。
【0223】
【表10】
これら一本鎖RNA分子:TNF-100、TNF-674、TNF-675も、一本鎖RNA分子:TNF-130と同様に、Mg2+カチオン依存的なRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体を形成している。
【0224】
一本鎖RNA分子:TNF-100、TNF-674、TNF-675とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)の複合体の解離の速度定数kdは、一本鎖RNA分子:TNF-130とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)の複合体の解離の速度定数kdと比較すると、102倍以上となっている。すなわち、形成された複合体の安定性に、顕著な差異があると判断される。
【0225】
(第三の形態)
本発明の第三の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーは、上記の一本鎖RNA分子:TNF-130、TNF-100の推定二次構造における、特徴的な構造を保持しつつ、小型化を図るため、第一の形態、第二の形態にかかる「RNAアプタマー」に基づき、設計された小型化「RNAアプタマー」である。
【0226】
具体的には、第一の形態、第二の形態にかかる「RNAアプタマー」の塩基配列と、推定される二次構造を参照し、上記の一本鎖RNA分子:TNF-130、TNF-100の推定二次構造における、特徴的な構造を構成する上で必須でない部分塩基配列を除去し、小型化を図ったものである。前記の設計指針に基づき、例えば、一本鎖RNA分子:TNF-100を基礎として設計された、小型化「RNAアプタマー」TNF-m0113は、一本鎖RNA分子:TNF-100の示す二次構造を保持することで、ヒトTNF−αに対する結合能も保持したものとなっている。
【0227】
(第三の実施態様)
第三の実施態様では、本発明の第三の形態にかかるRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有するアプタマーを作製する工程を以下に説明する。
【0228】
図3に示す、一本鎖RNA分子:TNF-130とTNF-100の推定される二次構造において、共通して見出される、中心部に形成される、ループ様の構造が、実際に、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成に関与することの検証を行った。すなわち、一本鎖RNA分子:TNF-100に基づき、その中心部に形成される、ループ様の構造の構成が可能な部分塩基配列からなる、一本鎖RNA分子:TNF-m013を設計し、該TNF-m013のRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を測定した。図4に、一本鎖RNA分子:TNF-m013の推定される二次構造を、TNF-100の推定される二次構造と対比して示す。
【0229】
実際には、一本鎖RNA分子:TNF-m013の3’末端にPolyA鎖を付加してなる、3’末端PolyA鎖付加型RNA分子:TNF-m013+(A)24を作製した。作製されたTNF-m013+(A)24のPolyA鎖を利用して、センサ・チップSA上に固定化されているStreptavidinタンパク質と結合している、biotin修飾したPolydU鎖とハイブリダイズさせることで、固定化する。
【0230】
表11に、一本鎖RNA分子:TNF-m013とTNF-m013+(A)24、ならびに、TNF-100とTNF-100+(A)24の塩基配列を対比して示す。
【0231】
【表11】
バインディング・バッファ溶液中にRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)を、250nM、125nM、62.5nMの2倍希釈系列で含有している、3種類の「ターゲット・タンパク質」溶液を調製する。センサ・チップ上に、この「ターゲット・タンパク質」溶液を、流速20μL/minで流し、固定化されている一本鎖RNA分子:TNF-m013+(A)24とRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)の複合体を形成させる。この複合体形成過程は、その液温度は、25℃とし、センサ・チップ上に「ターゲット・タンパク質」溶液を流通させる時間は、2minとしている。
【0232】
次いで、複合体の解離過程では、下記の組成の、Recombinant Human TNF-αを含まないランニング・バッファ溶液を、流速20μL/minで、3min流し、センサ・チップ上の「ターゲット・タンパク質」溶液を除去し、複合体の解離を進める。該複合体の解離過程において、その液温度は、25℃としている。Recombinant Human TNF-αを含まないランニング・バッファ溶液の組成は、HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KCl + 0.005% Tween20である。
【0233】
センサ・チップ上に固定化されている、一本鎖RNA分子:TNF-m013+(A)24について、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成過程、ならびに、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定する。液温度25℃における、該一本鎖RNA分子:TNF-m013+(A)24に対する測定結果に基づき、液温度25℃、バインディング・バッファ溶液の組成:HBS (50 mM HEPES pH 7.4, 150 mM NaCl) + 5 mM MgCl2 + 5 mM KClの条件において、固定化された該一本鎖RNA分子と、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、解離定数KD=kd/kaを算出した。
【0234】
図5に、センサ・チップ上に固定化されている、一本鎖RNA分子:TNF-m013+(A)24について、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成過程、ならびに、複合体の解離過程における、表面プラズモン共鳴シグナル強度の時間的変化を測定した結果を示す。
【0235】
表12に、固定化された一本鎖RNA分子:TNF-m013+(A)24ならびに、TNF-100+(A)24について、上記の条件における測定結果に基づき、決定された複合体形成の速度定数:ka、複合体の解離の速度定数:kd、ならびに、算出した解離定数KD=kd/kaの値を対比して示す。
【0236】
【表12】
その結果、固定化された一本鎖RNA分子:TNF-m013+(A)24と、TNF-100+(A)24で測定された、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成・解離過程における、結合速度定数ka、解離速度定数kd、平衡解離定数KD=kd/kaは、ほぼ等しい値であることが確認される。従って、一本鎖RNA分子:TNF-m013と、TNF-100は、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成に関与する立体構造は、本質的に同じであると判断される。すなわち、TNF-m013と、TNF-100は、図4に示す推定二次構造、特には、その中心部に形成される、ループ様の構造を形成することで、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成を可能としていると、判断される。また、図2に示す推定二次構造を考慮すると、「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100においては、共通して見出される、中心部に形成される、ループ様の構造を構成することで、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体形成を可能としていると、推断された。
【0237】
勿論、第三の形態にかかるRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有するアプタマーの一例である、一本鎖RNA分子:TNF-m013は、その設計の基となっている、一本鎖RNA分子:TNF-100と全く同じ形態で、Recombinant Human TNF-α(ホモ3量体)との複合体を形成していることが判る。
【0238】
本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用する方法に関して、より詳細に説明する。
【0239】
上記の本発明の第一の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマー、本発明の第二の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマー、本発明の第三の形態にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーは、ヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出に利用することが可能である。
【0240】
例えば、血液中に含まれる目標タンパク質の検出を行う場合、血液中に含まれる種々の可溶性タンパク質や、脂質分子の影響を排除する必要がある。例えば、目標タンパク質に対する特異的なモノクローナル抗体を使用するELISA法による検出方法では、Sandwitch ELISA法が利用される。すなわち、固相表面に捕獲用モノクローナル抗体を固定化し、目標タンパク質に対する該捕獲用モノクローナル抗体の特異的反応性を利用して、固定化された捕獲用モノクローナル抗体に目標タンパク質を選択的に結合させる。その後、捕獲用モノクローナル抗体に結合されている、目標タンパク質に検出用モノクローナル抗体を反応させる。この目標タンパク質に結合している検出用モノクローナル抗体を検出することで、間接的に目標タンパク質を検出している。
【0241】
このSandwitch ELISA法をヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出に適用する場合、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、捕獲用モノクローナル抗体と、検出用モノクローナル抗体を利用する。
【0242】
前記のSandwitch ELISA法を適用するヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出に利用される、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、捕獲用モノクローナル抗体と、検出用モノクローナル抗体の一方に代えて、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用することで、Sandwitch ELISA法に類似するヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出を行うことが可能である。
【0243】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第一の態様は、前記検出用モノクローナル抗体に代えて、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用することで、Sandwitch ELISA法に類似するヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出用の検出用キットを構成する形態に相当している。すなわち、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、捕獲用モノクローナル抗体と、検出用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用している、ヒトTNF−αの検出用キットを作製する方法に相当している。
【0244】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第一の態様では、
作製する該ヒトTNF−αの検出用キットは、捕獲用モノクローナル抗体と利用する、ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを組み合わせている。
【0245】
対応する、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第一の態様は、
捕獲用モノクローナル抗体として利用する、ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、検出用「RNAアプタマー」として利用する、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを組み合わせて、検出用キットを構成している。
【0246】
該ヒトTNF−αの検出用キットを利用して、ヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出する際、
前記モノクローナル抗体を利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを結合させ、
固定化されたヒトTNF−αに結合した、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを検出する方式を採用する。
【0247】
検出用「RNAアプタマー分子」として、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCCCAUAUGGAUCCCUUUUCACCGGUACCAAUAGCAAAUACCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:1)
(I-2) TNF-485
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UGAGAUAUCGCUCCAUUUUCAAAUUUAUCUAUACAAACACUUUGAUUCG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UACAAUAUCUAUCACCUUUUACUGGCUACGAGGAGCAAGUACCCAGACAUG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CUCCAUAUGGAUCUCUGUUCCCCGCACCUGAGAGCCAAUACCUUGACAUC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F)
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCACAUAUGGAUCCCUUUUCAACGGUACCAAUAGCUUGCAGUUAAAUACA
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
CGUUAAAUCCUAAGCGGAUGGCCCCUUCACCGAUCAUAGGAUCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:7)
(II-3) TNF-675
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
UCGAAAUAUUACCCUUUUCACCGGCGAAAGUCGCAUGACCGCCUAGACAGG
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:8)
(II-4) TNF-100
5’-GGAAGACCAGCCUUAAGAGGG
AUAAGUUCGGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCCGGAACGUGAC-3’ (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013
5’-GGAUCACCGGCCCAAAGCCUAGACCUAGGGGCUAUAAAUAC
CUAGUAUCC-3’ (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する。
【0248】
なお、検出用「RNAアプタマー分子」として使用する、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、その検出に利用可能な標識を付した形態とすることが好ましい。例えば、該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0249】
検出用「RNAアプタマー分子」として使用する場合、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と該RNAアプタマーで形成される複合体の解離定数KDは、少なくとも、KD≦100nM、通常、KD≦10nMの範囲であることが好ましい。特には、KD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」を利用することが、より好ましい。
【0250】
実際の検出操作では、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に検出用「RNAアプタマー分子」を結合させた後、結合していない検出用「RNAアプタマー分子」を洗浄により、除去する。また、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に結合している検出用「RNAアプタマー分子」を検出する際には、通常、検出用「RNAアプタマー分子」を含まない液中に浸された状態とされる。この洗浄工程、あるいは、検出工程中、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と検出用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離が進行する。このヒトTNF−α(ホモ3量体)と検出用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離は、該複合体の解離の速度定数:kdにより支配される。従って、複合体の解離の速度定数:kdが、kd≧10-3-1である場合、洗浄工程と検出工程に要する時間が1000秒間に達すると、形成された複合体の(1−1/e)は、その間に解離することになる。
【0251】
洗浄工程と検出工程の要する時間に進行する、複合体の解離を無視できる水準(例えば、1/10以下)に留めるためには、複合体の解離の速度定数:kdが、通常、kd≦2×10-4-1の範囲、より好ましくは、kd≦10-4-1の範囲である、「RNAアプタマー分子」を利用することが望ましい。
【0252】
すなわち、複合体の解離定数KDは、KD≦10nMの範囲であり、複合体の解離の速度定数:kdは、kd≦10-4-1の範囲であるという二つの条件を満足する、「RNAアプタマー分子」を、検出用「RNAアプタマー分子」として利用することが、好ましい。
【0253】
勿論、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用モノクローナル抗体と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)と、選択的に結合する必要がある。すなわち、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用モノクローナル抗体との結合によって、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に対する結合能が阻害を受けないことが必要である。加えて、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用モノクローナル抗体に対して、結合能を示さないことも必要である。
【0254】
また、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用モノクローナル抗体と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)に対して、定量的に結合する必要がある。すなわち、捕獲用モノクローナル抗体と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに結合する、検出用「RNAアプタマー分子」の分子数の比率は、一定であることが望ましい。具体的には、捕獲用モノクローナル抗体と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに、検出用「RNAアプタマー分子」が一分子結合する比率であることが望ましい。
【0255】
その他、固体表面に捕獲用モノクローナル抗体を固定化する際に利用される、抗体の定常領域に結合性を有するタンパク質、例えば、Protein A、Protein A/G、Protein Gなどに対して、検出用「RNAアプタマー分子」は、高い結合能を有するものでないことも必要である。
【0256】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第二の態様は、上記の捕獲用モノクローナル抗体に代えて、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用することで、Sandwitch ELISA法に類似するヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出用の検出用キットを構成する形態に相当している。すなわち、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、検出用モノクローナル抗体と、捕獲用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用している、ヒトTNF−αの検出用キットを作製する方法に相当している。
【0257】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第二の態様では、
作製する該ヒトTNF−αの検出用キットは、検出用モノクローナル抗体として利用する、ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを組み合わせている。
【0258】
対応する、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第二の態様は、
検出用モノクローナル抗体として利用する、ヒトTNF−αに対して特異的な反応性を有するモノクローナル抗体と、捕獲用「RNAアプタマー」として利用する、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを組み合わせて、検出用キットを構成している。
【0259】
該ヒトTNF−αの検出用キットを利用して、ヒトTNF−α(ホモ3量体)を検出する際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、前記モノクローナル抗体を反応させ、
固定化されたヒトTNF−αと反応し、抗原抗体複合体を形成した、前記モノクローナル抗体を検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う方式を採用する。
【0260】
捕獲用「RNAアプタマー」として、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する。
【0261】
その際、捕獲用「RNAアプタマー」を固体表面に固定化するため、例えば、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
該アプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。すなわち、固体表面に、予め、PolydU鎖を固定化しておき、一本鎖核酸の3’−末端に連結されているPolyA鎖とハイブリダイズさせ、形成される核酸二本鎖によって、RNAアプタマーの固定化を行うことができる。付加されるPolyA鎖の塩基長は、20塩基以上、30塩基以下の範囲に選択することが望ましい。
【0262】
捕獲用「RNAアプタマー分子」として使用する場合、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と該RNAアプタマーで形成される複合体の解離定数KDは、少なくとも、KD≦100nM、通常、KD≦10nMの範囲であることが好ましい。特には、KD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」を利用することが、より好ましい。
【0263】
実際の検出操作では、ヒトTNF−α(ホモ3量体)を捕獲用「RNAアプタマー分子」を結合させた後、結合していないヒトTNF−α(ホモ3量体)を洗浄により、除去する。次いで、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合させた、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に、検出用モノクローナル抗体を反応させる。さらに、結合していない検出用モノクローナル抗体を洗浄により、除去する。
【0264】
また、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に結合している検出用「モノクローナル抗体」を検出する工程でも、ヒトTNF−α(ホモ3量体)を含まない液中に浸された状態とされる。
【0265】
捕獲操作後の洗浄工程、あるいは、検出工程中、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離が進行する。このヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離は、該複合体の解離の速度定数:kdにより支配される。従って、複合体の解離の速度定数:kdが、kd≧10-3-1である場合、捕獲操作後の洗浄工程と検出工程に要する時間が1000秒間に達すると、形成された複合体の(1−1/e)は、その間に解離することになる。
【0266】
捕獲操作後の洗浄工程と検出工程の要する時間に進行する、複合体の解離を無視できる水準(例えば、1/10以下)に留めるためには、複合体の解離の速度定数:kdが、通常、kd≦2×10-4-1の範囲、より好ましくは、kd≦10-4-1の範囲である、「RNAアプタマー分子」を利用することが望ましい。
【0267】
すなわち、複合体の解離定数KDは、KD≦10nMの範囲であり、複合体の解離の速度定数:kdは、kd≦10-4-1の範囲であるという二つの条件を満足する、「RNAアプタマー分子」を、捕獲用「RNAアプタマー分子」として利用することが、好ましい。
【0268】
勿論、検出用モノクローナル抗体は、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)と、選択的に結合する必要がある。すなわち、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」との結合によって、検出用「モノクローナル抗体」のヒトTNF−α(ホモ3量体)に対する結合能が阻害を受けないことが必要である。加えて、捕獲用「RNAアプタマー分子」は、検出用モノクローナル抗体に対して、高い結合能を有するものでないことも必要である。
【0269】
また、検出用「モノクローナル抗体」は、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)に対して、定量的に結合する必要がある。すなわち、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに結合する、検出用「モノクローナル抗体」の分子数の比率は、一定であることが望ましい。具体的には、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに、検出用「モノクローナル抗体」が一分子結合する比率であることが望ましい。
【0270】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第三の態様は、上記の捕獲用モノクローナル抗体と検出用モノクローナル抗体に代えて、捕獲用「RNAアプタマー分子」と検出用「RNAアプタマー分子」を使用することで、Sandwitch ELISA法に類似するヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出用の検出用キットを構成する際、検出用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用する形態に相当している。すなわち、検出用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用し、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、捕獲用「RNAアプタマー分子」と組み合わせることで、ヒトTNF−αの検出用キットを作製する方法に相当している。その際、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、捕獲用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」とは異なる、ヒトTNF−αに対する「RNAアプタマー分子」を使用することができる。
【0271】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第三の態様では、
作製する該ヒトTNF−αの検出用キットは、捕獲用「RNAアプタマー分子」である、第一のRNAアプタマーと、検出用「RNAアプタマー分子」である、第二のRNAアプタマーを組み合わせており、その第二のRNAアプタマーとして、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を利用する。
【0272】
対応する、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第三の態様は、
検出用「RNAアプタマー分子」として利用する、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」と、捕獲用「RNAアプタマー」として利用する、別の「ヒトTNF−αに対する特異的な結合能を有するRNAアプタマー」を組み合わせて、検出用キットを構成している。
【0273】
該ヒトTNF−αの検出用キットを利用して、ヒトTNF−α(ホモ3量体)を検出する際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有する、第一のRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、第二のRNAアプタマーを反応させ、
固定化されたヒトTNF−αと結合して、複合体を形成した、前記第二のRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う方式を採用する。
【0274】
検出用「RNAアプタマー」である、第二のRNAアプタマーとして、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する。
【0275】
なお、検出用「RNAアプタマー分子」として使用する、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、その検出に利用可能な標識を付した形態とすることが好ましい。例えば、該第二のRNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0276】
検出用「RNAアプタマー分子」として使用する場合、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と該第二のRNAアプタマーで形成される複合体の解離定数KDは、少なくとも、KD≦100nM、通常、KD≦10nMの範囲であることが好ましい。特には、KD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」を利用することが、より好ましい。
【0277】
実際の検出操作では、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に検出用「RNAアプタマー分子」を結合させた後、結合していない検出用「RNAアプタマー分子」を洗浄により、除去する。また、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に結合している検出用「RNAアプタマー分子」を検出する際には、通常、検出用「RNAアプタマー分子」を含まない液中に浸された状態とされる。この洗浄工程、あるいは、検出工程中、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と検出用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離が進行する。このヒトTNF−α(ホモ3量体)と検出用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離は、該複合体の解離の速度定数:kdにより支配される。従って、複合体の解離の速度定数:kdが、kd≧10-3-1である場合、洗浄工程と検出工程に要する時間が1000秒間に達すると、形成された複合体の(1−1/e)は、その間に解離することになる。
【0278】
洗浄工程と検出工程の要する時間に進行する、複合体の解離を無視できる水準(例えば、1/10以下)に留めるためには、複合体の解離の速度定数:kdが、通常、kd≦2×10-4-1の範囲、より好ましくは、kd≦10-4-1の範囲である、「RNAアプタマー分子」を利用することが望ましい。
【0279】
すなわち、複合体の解離定数KDは、KD≦10nMの範囲であり、複合体の解離の速度定数:kdは、kd≦10-4-1の範囲であるという二つの条件を満足する、「RNAアプタマー分子」を、検出用「RNAアプタマー分子」として利用することが、好ましい。
【0280】
勿論、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)と、選択的に結合する必要がある。すなわち、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」との結合によって、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に対する結合能が阻害を受けないことが必要である。
【0281】
また、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)に対して、定量的に結合する必要がある。すなわち、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに結合する、検出用「RNAアプタマー分子」の分子数の比率は、一定であることが望ましい。具体的には、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに、検出用「RNAアプタマー分子」が一分子結合する比率であることが望ましい。
【0282】
また、捕獲用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」を利用することもできる。その際、捕獲用「RNAアプタマー分子」と、検出用「RNAアプタマー分子」は、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」のうちから、互いに異なる部位に結合する「RNAアプタマー分子」を選択して、組み合わせる。
【0283】
また、捕獲用「RNAアプタマー分子」は、該アプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。すなわち、固体表面に、予め、PolydU鎖を固定化しておき、一本鎖核酸の3’−末端に連結されているPolyA鎖とハイブリダイズさせ、形成される核酸二本鎖によって、RNAアプタマーの固定化を行うことができる。付加されるPolyA鎖の塩基長は、20塩基以上、30塩基以下の範囲に選択することが望ましい。
【0284】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第四の態様は、上記の捕獲用モノクローナル抗体と検出用モノクローナル抗体に代えて、捕獲用「RNAアプタマー分子」と検出用「RNAアプタマー分子」を使用することで、Sandwitch ELISA法に類似するヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出用の検出用キットを構成する際、捕獲用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用する形態に相当している。すなわち、捕獲用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を使用し、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、検出用「RNAアプタマー分子」と組み合わせることで、ヒトTNF−αの検出用キットを作製する方法に相当している。その際、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に特異的な反応性を有する、検出用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」とは異なる、ヒトTNF−αに対する「RNAアプタマー分子」を使用することができる。
【0285】
本発明にかかる「ヒトTNF−αの検出用キットを作製するために、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを使用する方法」の第四の態様では、
作製する該ヒトTNF−αの検出用キットは、捕獲用「RNAアプタマー分子」である、第一のRNAアプタマーと、検出用「RNAアプタマー分子」である、第二のRNAアプタマーを組み合わせており、その第一のRNAアプタマーとして、本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」を利用する。
【0286】
対応する、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するアプタマーを使用することで作製される、ヒトTNF−αの検出用キット」の第四の態様は、
捕獲用「RNAアプタマー分子」として利用する、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」と、検出用「RNAアプタマー」として利用する、別の「ヒトTNF−αに対する特異的な結合能を有するRNAアプタマー」を組み合わせて、検出用キットを構成している。
【0287】
該ヒトTNF−αの検出用キットを利用して、ヒトTNF−α(ホモ3量体)の検出する際、
前記ヒトTNF−αに対する結合能を有する、第一のRNAアプタマーを利用して、ヒトTNF−αを固定化し、
固定化されたヒトTNF−αに、第二のRNAアプタマーを反応させ、
固定化されたヒトTNF−αと結合して、複合体を形成した、前記第二のRNAアプタマーを検出することで、ヒトTNF−αの検出を行う方式を採用する。
【0288】
捕獲用「RNAアプタマー」である、第一のRNAアプタマーとして、
下記I-1〜I-5の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(I-1) TNF-130 (配列番号:1)
(I-2) TNF-485 (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (配列番号:5)
下記I-2〜I-5の塩基配列からなる一本鎖修飾RNA分子:
(I-2) TNF-485 (2'F) (配列番号:2)
(I-3) TNF-505 (2'F) (配列番号:3)
(I-4) TNF-508 (2'F) (配列番号:4)
(I-5) TNF-510 (2'F) (配列番号:5)
下記II-2〜II-4の塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(II-2) TNF-674 (配列番号:7)
(II-3) TNF-675 (配列番号:8)
(II-4) TNF-100 (配列番号:9)
下記IIIの塩基配列からなる一本鎖RNA分子:
(III) TNF-m013 (配列番号:10)
からなる群から選択されるアプタマーを使用する。
【0289】
その際、捕獲用「RNAアプタマー」を固体表面に固定化するため、例えば、前記ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーは、
該アプタマー分子を担体に固定化するために利用される、PolyA鎖を、該RNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の3’−末端に連結してなる、3’−末端PolyA鎖付加RNAアプタマーである形態を選択することが好ましい。すなわち、固体表面に、予め、PolydU鎖を固定化しておき、一本鎖核酸の3’−末端に連結されているPolyA鎖とハイブリダイズさせ、形成される核酸二本鎖によって、RNAアプタマーの固定化を行うことができる。付加されるPolyA鎖の塩基長は、20塩基以上、30塩基以下の範囲に選択することが望ましい。
【0290】
捕獲用「RNAアプタマー分子」として使用する場合、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と該RNAアプタマーで形成される複合体の解離定数KDは、少なくとも、KD≦100nM、通常、KD≦10nMの範囲であることが好ましい。特には、KD≦10pMと見積もられる「RNAアプタマー分子」を利用することが、より好ましい。
【0291】
実際の検出操作では、ヒトTNF−α(ホモ3量体)を捕獲用「RNAアプタマー分子」を結合させた後、結合していないヒトTNF−α(ホモ3量体)を洗浄により、除去する。次いで、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合させた、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に、検出用「RNAアプタマー分子」を反応させる。さらに、結合していない検出用「RNAアプタマー分子」を洗浄により、除去する。
【0292】
また、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に結合している検出用「RNAアプタマー分子」を検出する工程でも、ヒトTNF−α(ホモ3量体)を含まない液中に浸された状態とされる。
【0293】
捕獲操作後の洗浄工程、あるいは、検出工程中、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離が進行する。このヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」の複合体の解離は、該複合体の解離の速度定数:kdにより支配される。従って、複合体の解離の速度定数:kdが、kd≧10-3-1である場合、捕獲操作後の洗浄工程と検出工程に要する時間が1000秒間に達すると、形成された複合体の(1−1/e)は、その間に解離することになる。
【0294】
捕獲操作後の洗浄工程と検出工程の要する時間に進行する、複合体の解離を無視できる水準(例えば、1/10以下)に留めるためには、複合体の解離の速度定数:kdが、通常、kd≦2×10-4-1の範囲、より好ましくは、kd≦10-4-1の範囲である、「RNAアプタマー分子」を利用することが望ましい。
【0295】
すなわち、複合体の解離定数KDは、KD≦10nMの範囲であり、複合体の解離の速度定数:kdは、kd≦10-4-1の範囲であるという二つの条件を満足する、「RNAアプタマー分子」を、捕獲用「RNAアプタマー分子」として利用することが、好ましい。
【0296】
勿論、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)と、選択的に結合する必要がある。すなわち、ヒトTNF−α(ホモ3量体)と捕獲用「RNAアプタマー分子」との結合によって、ヒトTNF−α(ホモ3量体)に対する結合能が阻害を受けないことが必要である。
【0297】
また、検出用「RNAアプタマー分子」は、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)に対して、定量的に結合する必要がある。すなわち、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに結合する、検出用「RNAアプタマー分子」の分子数の比率は、一定であることが望ましい。具体的には、捕獲用「RNAアプタマー分子」と結合しているヒトTNF−α(ホモ3量体)当たりに、検出用「RNAアプタマー分子」が一分子結合する比率であることが望ましい。
【0298】
また、検出用「RNAアプタマー分子」として、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」を利用することもできる。その際、捕獲用「RNAアプタマー分子」と、検出用「RNAアプタマー分子」は、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」のうちから、互いに異なる部位に結合する「RNAアプタマー分子」を選択して、組み合わせる。
【0299】
なお、検出用「RNAアプタマー分子」として使用する、第一のRNAアプタマーは、その検出に利用可能な標識を付した形態とすることが好ましい。例えば、該第一のRNAアプタマーを構成する一本鎖核酸の末端に標識が付されている形態を選択することができる。
【0300】
次に、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」に関して、より詳細に説明する。
【0301】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」は、下記の着想に基づき、「ヒトTNF−αに対する結合能」の発揮に関与する部位(例えば、内部ループ様の構造)の構成に、特定のモチーフ配列を利用すると推定される「RNAアプタマー」を効率的に選別する方法に相当している。
【0302】
まず、図2に示す、TNF-130の推定された二次構造において、中心部に、内部ループ様の構造が構成されている点、特に、TNF-130の「ランダム配列」領域において、この内部ループ様の構造の構成に関与している部分として、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」の二つの領域に着目した。
【0303】
さらに、上述の二種の「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100について、その推定される二次構造を比較すると、図3に示すように、中心部に、内部ループ様の構造が構成されているという共通性が見出されることに着目した。この内部ループ様の構造の構成に関与する部分塩基配列を対比したところ、TNF-130中の「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」と、TNF-100中の「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」との間で、明確な類似性が見出されることに着目した。
【0304】
なお、図3に示すように、「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100の推定される二次構造において、その中心部に見出される、内部ループ様の構造では、三つの二本鎖構造によって、該内部ループ様の構造が保持されていると推断される。
【0305】
通常、一本鎖RNAが二本鎖構造を形成すると、該二本鎖構造を構成する二つの部分に挟まれる領域は、何らかのループ構造を構成する。従って、内部ループ様の構造の形成に付随する、三つの二本鎖構造のうち、二つは、その先端部に、ループ構造を含む二次構造に由来する必要がある。「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100の推定される二次構造においては、その内部ループ様の構造中に、「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」が含まれ、その間に、ループ構造を含む二次構造の形成に関与する領域が存在している。特に、「5’−CUAGAC−3’」の5’末端側に、「5’−UCACCGG−3’」が存在することで、「5’−CUAGAC−3’」の5’末端のCと、「5’−UCACCGG−3’」の3’末端のGの間で、塩基対の形成が可能となっている。
【0306】
その点を考慮すると、「RNAアプタマー分子」TNF-130とTNF-100の推定される二次構造において、その中心部に見出される、内部ループ様の構造を形成する上で、前記の相対配置と、ループ構造を含む二次構造の形成に関与する領域の存在の二つの条件を満たすことが望ましい。
【0307】
具体的には、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」の二つの領域に相当する部分塩基配列を有し、その部分塩基配列を利用して、「RNAアプタマー分子」TNF-130の推定された二次構造において、中心部に見出される、内部ループ様の構造と同等の構造が形成されると、「RNAアプタマー分子」TNF-130と類似する結合部位を具える「RNAアプタマー分子」である可能性が高いと推断した。
【0308】
例えば、クローン:TNF-673のランダム配列部分に見出された、「5’−TCTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」は、クローン:TNF-130中の「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と、その相対的な位置も高い類似性を有している。また、クローン:TNF-675のランダム配列部分に見出された、「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」は、クローン:TNF-130中の「5’−TTTTCACCGG−3’」と「5’−CTAGACAGG−3’」と、その相対的な位置も高い類似性を有している。
【0309】
また、「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」と同じ部分塩基配列を有し、その部分塩基配列を利用して、「RNAアプタマー分子」TNF-100の推定された二次構造において、中心部に見出される、内部ループ様の構造と同等の構造が形成されると、「RNAアプタマー分子」TNF-100と類似する結合部位を具える「RNAアプタマー分子」である可能性が高いと推断した。
【0310】
例えば、表8に示す、三種のクローン:TNF-673,TNF-674,TNF-675と、クローン:TNF-100、ならびに、クローン:TNF-130に関して、何れも、「5’−TCACCGG−3’」と「5’−CTAGAC−3’」と同じ部分塩基配列を内在している。
【0311】
例えば、SELEX法を適用するスクリーニングに利用する、
5’末端の固定領域:GGAAGACCAG CCUUAAGAGGG;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGUAUCCG GAACGUGAC;(19塩基) (配列番号:30)
を具える、全長90塩基長の「ランダム一本鎖RNA分子ライブラリー」中から、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製し、この第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーに対して、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、スクリーニングを行うことで、より効率的に、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされることに想到した。
【0312】
すなわち、上記の第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’を利用することで、予めスクリーニング対象の絞り込みを行うことで、より効率的なスクリーニングを行うことが可能となることに想到した。
【0313】
あるいは、前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製し、この第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーに対して、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、スクリーニングを行うことで、より効率的に、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされることに想到した。
【0314】
従って、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の形態は、上記の第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’を利用することで、「5’−UUUUCACCGG−3’」と「5’−CUAGACAGG−3’」の二つの領域が、TNF-130の推定された二次構造において、中心部に存在する内部ループ様の構造を構成する可能性を有する一本鎖RNA分子の集団に、予めスクリーニング対象の絞り込みを行うことで、より効率的なスクリーニングを行う方法に相当している。
【0315】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の形態は、例えば、下記の工程1と工程2とを具える選別方法とすることができる。
【0316】
(工程1)
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する、第一の選別工程;
(工程2)
前記第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーから、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する、第二の選別工程;
該選別方法においては、前記第一のモチーフ配列と第二のモチーフ配列に相当する、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされる。
【0317】
図2に示す、TNF-130の推定された二次構造の中心部に見出される、内部ループ様の構造と同様な構造が、選別されるRNAアプタマーの予測される二次構造中に存在するためには、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列との間に、ヘアピン・ループ構造を形成可能な領域が存在することが好ましい。
【0318】
ヘアピン・ループ構造を形成可能な領域は、8塩基以上の塩基長である必要がある。その点を考慮すると、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することが好ましい。
【0319】
また、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列によって、図2に示す、TNF-130の推定された二次構造の中心部に見出される、内部ループ様の構造と同様な構造を構成する上では、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在していることが望ましいと考えられる。すなわち、内部ループ様の構造の一部に、5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG Gの一部が利用される態様では、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在していることが望ましい。その点を考慮すると、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することが望ましい。
【0320】
また、本発明にかかる「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の第一の形態は、上記の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の形態で利用される「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」に相当している。
【0321】
すなわち、本発明にかかる「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の第一の形態は、下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである。
【0322】
図2に示す、TNF-130の推定された二次構造の中心部に見出される、内部ループ様の構造と同様な構造が、予測される二次構造中に存在する、候補一本鎖RNA分子を高い頻度で含むためには、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列との間に、ループ構造を形成可能な領域が存在することが好ましい。
【0323】
ヘアピン・ループ構造を形成可能な領域は、8塩基以上の塩基長である必要がある。その点を考慮すると、前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している、一本鎖RNA分子を選択して、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することが好ましい。
【0324】
また、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列によって、図2に示す、TNF-130の推定された二次構造の中心部に見出される、内部ループ様の構造と同様な構造を構成する上では、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在していることが望ましいと考えられる。すなわち、内部ループ様の構造の一部に、5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG Gの一部が利用される態様では、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在していることが望ましい。その点を考慮すると、前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することが望ましい。
【0325】
また、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第二の形態は、上記の第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’を利用することで、「5’−UCACCGG−3’」と「5’−CUAGAC−3’」の二つの領域が、TNF-100、あるいは、TNF-130の推定された二次構造において、中心部に存在する内部ループ様の構造を構成する可能性を有する一本鎖RNA分子の集団に、予めスクリーニング対象の絞り込みを行うことで、より効率的なスクリーニングを行う方法に相当している。
【0326】
本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第二の形態は、例えば、下記の工程1と工程2とを具える選別方法とすることができる。
【0327】
(工程1)
下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する、第一の選別工程;
(工程2)
前記第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーから、ヒトTNF−αに対する結合能に基づき、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する、第二の選別工程;
該選別方法によって、前記第三のモチーフ配列、第四のモチーフ配列と同じ、二つの部分塩基配列を具え、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーの選別がなされる。
【0328】
図3に示す、TNF-100やTNF-130の推定された二次構造の中心部に見出される、内部ループ様の構造と同様な構造が、選別されるRNAアプタマーの予測される二次構造中に存在するためには、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’に相当する、第四の部分塩基配列との間に、ループ構造を形成可能な領域が存在することが好ましい。
【0329】
ヘアピン・ループ構造を形成可能な領域は、8塩基以上の塩基長である必要がある。その点を考慮すると、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することが好ましい。
【0330】
さらに、「RNAアプタマー」TNF-673,TNF-674,TNF-675、ならびに、TNF-100、TNF-130に相当する「候補一本鎖RNA分子」を含むものとするためには、上述する第一の形態と同様に、前記工程1において、
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、第一の候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することができる。
【0331】
また、本発明にかかる「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の第二の形態は、上記の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第二の形態で利用される「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」に相当している。
【0332】
すなわち、本発明にかかる「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」の第二の形態は、下記の5’末端の固定領域と3’末端の固定領域、それに挟まれる、51塩基長のランダム配列部分(N51)を具えた一本鎖RNA分子で構成されるランダム一本鎖RNA分子ライブラリー(RNAプール)中から、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)
51塩基長のランダム配列部分:(N51);
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)
前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に、それぞれ、第三のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’に相当する、第四の部分塩基配列を含んでいる、一本鎖RNA分子を選択して、作製される部分ライブラリーである。
【0333】
図3に示す、TNF-100やTNF-130の推定された二次構造の中心部に見出される、内部ループ様の構造と同様な構造が、選別されるRNAアプタマーの予測される二次構造中に存在するためには、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’に相当する、第四の部分塩基配列との間に、ループ構造を形成可能な領域が存在することが好ましい。
【0334】
ヘアピン・ループ構造を形成可能な領域は、8塩基以上の塩基長である必要がある。その点を考慮すると、前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している、一本鎖RNA分子を選択して、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することが好ましい。
【0335】
さらに、「RNAアプタマー」TNF-673,TNF-674,TNF-675、ならびに、TNF-100、TNF-130に相当する「候補一本鎖RNA分子」を含むものとするためには、上述する第一の形態と同様に、前記51塩基長のランダム配列部分(N51)中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している、一本鎖RNA分子を選択して、候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリーを作製する形態を選択することができる。
【0336】
さらに、本発明者らは、上述の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」を適用することで、下記の「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」を選別することは可能であることに想到した。
【0337】
すなわち、その塩基配列中に含まれる、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成され、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーである。あるいは、その塩基配列中に含まれる、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成され、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーである。
【0338】
すなわち、本発明にかかる「第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第一の態様は、上述の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の態様を適用することで選別されるRNAアプタマーである。
【0339】
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、51塩基長の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記51塩基長の配列部分中に、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第一の部分塩基配列と第二の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している。
【0340】
その際、
前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0341】
さらに、前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0342】
また、本発明にかかる「第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第一の態様は、上述の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第二の態様を適用することで選別されるRNAアプタマーである。
【0343】
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、51塩基長の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記51塩基長の配列部分中に、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第三の部分塩基配列と第四の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している。
【0344】
その際、
前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0345】
さらに、前記51塩基長の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0346】
上述の本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の態様、第二の態様では、利用される「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」では、前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、51塩基長の配列部分を具えた一本鎖RNA分子の集合となっている。その51塩基長の配列部分の塩基長を若干変更し、前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子の集合を、「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」として利用することでも、同様な「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の選別が可能であることに想到した。
【0347】
すなわち、本発明にかかる「第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第二の態様は、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の態様に準じて、前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子の集合を、「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」として利用することで選別されるRNAアプタマーに相当している。
【0348】
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記中間領域の配列部分中に、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第一の部分塩基配列と第二の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している。
【0349】
その際、
前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0350】
さらに、前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0351】
なお、上記中間領域の配列部分の塩基長は、通常、40塩基〜60塩基の範囲、好ましくは、45塩基〜55塩基の範囲に選択することが望ましい。
【0352】
また、本発明にかかる「第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第二の態様は、本発明にかかる「ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマーを選別する方法」の第一の態様に準じて、前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子の集合を、「候補一本鎖RNA分子の部分ライブラリー」として利用することで選別されるRNAアプタマーに相当している。
【0353】
該RNAアプタマーは、
5’末端の固定領域:GGAAG ACCAG CCUUA AGAGG G;(21塩基) (配列番号:29)と、
3’末端の固定領域:CUAGU AUCCG GAACG UGAC;(19塩基) (配列番号:30)と、
前記5’末端の固定領域と3’末端の固定領域に挟まれる、中間領域の配列部分を具えた一本鎖RNA分子であり、
前記中間領域の配列部分中に、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでおり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第三の部分塩基配列と第四の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している。
【0354】
その際、
前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0355】
さらに、前記中間領域の配列部分中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0356】
なお、上記中間領域の配列部分の塩基長は、通常、40塩基〜60塩基の範囲、好ましくは、45塩基〜55塩基の範囲に選択することが望ましい。
【0357】
さらに、図4に示すRecombinant Human TNF-α(ホモ3量体)に対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」TNF−m013と「RNAアプタマー分子」TNF−100の推定される二次構造の対比結果に着目した。具体的には、その塩基配列中に含まれる、第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成されると、ヒトTNF−αに対する結合能を発揮できることに想到した。また、その塩基配列中に含まれる、第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列によって、内部ループ構造が構成されると、ヒトTNF−αに対する結合能を発揮できることに想到した。
【0358】
すなわち、本発明にかかる「第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’と第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第三の態様は、下記の構成を有する「RNAアプタマー分子」である。
【0359】
該RNAアプタマーは、
第一のモチーフ配列:5’−UUUUCACCGG−3’に相当する、第一の部分塩基配列と、第二のモチーフ配列:5’−CUAGACAGG−3’に相当する、第二の部分塩基配列を含んでなる塩基配列からなる一本鎖RNA分子であり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第一の部分塩基配列と第二の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している。
【0360】
その際、
前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第一の部分塩基配列は、前記第二の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0361】
さらに、前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第一の部分塩基配列と、第二の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0362】
なお、上記のRNAアプタマーの塩基長は、通常、120塩基以下の範囲、好ましくは、100塩基以下の範囲に選択することが望ましい。
【0363】
また、本発明にかかる「第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’によって特徴付けられる、ヒトTNF−αに対する結合能を有するRNAアプタマー」の第三の態様は、下記の構成を有する「RNAアプタマー分子」である。
【0364】
該RNAアプタマーは、
第三のモチーフ配列:5’−UCACCGG−3’と同じ、第三の部分塩基配列と、第四のモチーフ配列:5’−CUAGAC−3’と同じ、第四の部分塩基配列を含んでなる塩基配列からなる一本鎖RNA分子であり、
前記一本鎖RNA分子の二次構造中において、前記第三の部分塩基配列と第四の部分塩基配列は、内部ループ構造を構成する要素として存在している。
【0365】
その際、
前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第三の部分塩基配列は、前記第四の部分塩基配列よりも、5’末端側に存在している形態を選択することができる。
【0366】
さらに、前記一本鎖RNA分子中に含まれる、前記第三の部分塩基配列と、第四の部分塩基配列との間に、少なくとも8塩基、例えば、8塩基以上25塩基以下の領域が存在している形態を選択することができる。
【0367】
なお、上記のRNAアプタマーの塩基長は、通常、120塩基以下の範囲、好ましくは、100塩基以下の範囲に選択することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0368】
本発明にかかるヒトTNF−αに対する結合能を有する「RNAアプタマー分子」は、ホモ3量体を構成している、ヒトTNF−αタンパク質について、その循環血液中の濃度を定量する目的に利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]