【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の測定方法で、ESRはスペクトルから活性酸素種の同定ができ、強度から濃度の測定ができる半面、装置が高価かつ大型であるために導入が容易ではない。かつ、寿命の短い活性酸素を固定するためにスピントラップ剤による煩雑な前処理を必要とするなどの欠点がある。
その他、発光や蛍光を利用した活性酸素計測手法においても、試薬の反応の場が液体を原則としているために、採血が必要であるかプローブを穿刺して生体内に入れて血液等の体液に接触させる必要があるなど観血的または侵襲的な手法である。
【0007】
皮膚などの生体組織に塗布する方法では非侵襲的ではあるが局所的な情報であり、生体内全体の活性酸素を測定する方法ではない。また、上記課題を解決するために、水素水を飲んで呼気から排気される方法も考案されているが、計測に60分以上の時間がかかること、水分負荷が300〜500mL程度で大きいこと、さらに安定した水素濃度での投与ができないことが難点であった。
【0008】
そこで、非侵襲的、簡便、且つ安定的に生体内の活性酸素量を測定する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の現状に鑑み本発明者等は鋭意研究の結果、本発明測定方法を完成したものであり、その特徴とするところは、既知濃度の水素ガスを含む試験ガスを吸入し、一定時間後の呼気中の水素ガス量を求め、吸気と呼気の水素ガス量の差が生体内で活性酸素によって消費されたものとして算出する点にある。
【0010】
本発明の原理は、生体内で水素が活性酸素を消去する作用を利用して、低濃度水素ガスを吸入した後の呼気水素排気量を計測することにより、投与量と排気量の差から生体内活性酸素産生量を推定するものである。本発明は、呼気水素排気量を算出するために、間欠的あるいは連続的に呼気水素濃度を測定する。
即ち、一定時間の吸気と呼気とに含まれる水素ガスの量の差が、1モルとすると、その1モルはすべて活性酸素によって消費され、それも1モル対1モルで消費されるとして、その一定時間の体内活性酸素発生量は1モルであると判断するのである。
【0011】
試験ガスとは、既知濃度の水素ガスを含むガスであり、水素ガス以外は通常の空気とほぼ同様である。水素ガス濃度は、50〜200ppmが、生体内呼気水素濃度を十分上昇させ、かつガス分析や費用、危険性等の問題から最も効果的である。しかし、200ppm〜2%でも発明としては問題はなかった。
【0012】
この水素ガス以外の成分としては、酸素20.9%(安全性が確保できる範囲ならばよい)で、窒素バランスとしたものがよい。勿論、通常の空気に上記の割合で水素ガスを混合してもよい。
【0013】
この試験ガスは、吸入時に高濃度水素ガスと人工空気又は天然空気と混合して所定の濃度にしてもよいが、予め所定の濃度に調整したガスを用いてもよい。
【0014】
本発明では、試験ガスを吸入し始めてから、一定時間経過後の呼気中の水素ガス量を求めるのである。一定時間とは、通常は1分〜5分程度である。水素ガス量の求めかたは、水素ガス濃度と、呼気量を測定して求めるものである。
【0015】
呼気水素ガス濃度の計測方法は、呼気が連続的に流れる流路(呼吸回路)を設けて、その流路内又は流路出口に水素ガスセンサーを設ければよい。また、バッチ式としては、間欠的に呼気をバッグ等に採取し、そのバッグ内水素ガス濃度を別途測定装置で測定してもよい。
【0016】
呼気水素ガス濃度の計測方法は、呼気が連続的に流れる流路(呼吸回路)を設けて、その流路内又は流路出口に水素ガスセンサーを設ければよい。また、バッチ式としては、間欠的に呼気をバッグ等に採取し、そのバッグ内水素ガス濃度を別途測定装置で測定してもよい。バッグの大きさは所定時間内の呼気を採取できる容量であればよく、100mL〜10Lの範囲が好適であり、測定精度や保管のし易さから、呼吸回路の出口で採取する場合で5L,呼吸回路を使用しない場合で300mL程度の容量がより望ましい。
【0017】
呼吸回路の素材としてはテフロン(登録商標)などの合成樹脂や金属などのような水素の透過性の低い素材を用いるのがよい。また、呼吸相による水素濃度の変動を平均化するため蛇腹管を用いるのが望ましい。呼気を採取する際に使用するバッグの材質は、ポリエチレン、ポリフッ化ビニル、アルミニウムなどが考えられるが、水素が透過しにくい材質、例えばアルミニウム製のバッグやダグラスバッグを用いることが望ましい。
【0018】
間欠的に呼気採取を行う場合の時間的間隔は、例えば30秒から10分間隔であってもよく、水素ガス摂取量が安定するまでの時間は長ければ長いほどいいが、生体内活性酸素量を推定する際の結果の精度ならびに生体への負担を考慮すると水素ガス吸入開始から10〜20分程度以内での計測が望ましい。
【0019】
バッグ等を用いて採取した呼気の水素ガス濃度は、例えば半導体ガスセンサーや質量分析装置により測定する。低濃度水素ガスを投与した結果得られる呼気を対象とする場合は0.1ppmレベルの分解能を有する検出器(例えば,ガスクロマトグラフ半導体検知装置、質量分析装置)を使用することが望ましい。
【0020】
吸入気量や呼気量の測定には、熱線型や超音波型などの流量計を用いればよいが、限定するものでなくどのような方法、どのような装置でもよい。
【0021】
水素ガスを吸入した場合、皮膚表面から放出される水素ガスは無視できるほどきわめて微量である(非特許性文献4)。従って、水素ガス摂取量は、吸入水素量と呼気として排気した呼気水素排気量の差であるから下記式1のように求められる。
VH
2=VI×FIH
2−VE×(FEH
2−baseline FEH
2) ・・・式1
VH
2:水素摂取量
VI:分時吸気量(吸入量)
FIH
2:吸気水素ガス濃度
VE:分時呼気量
FEH
2:呼気水素ガス濃度
baselineFEH
2:室内気呼吸中における呼気水素ガス濃度
【0022】
また、水素ガス吸入前から室内気吸入を行ったときの呼気水素濃度を計測しておくのが好ましい。なぜならば、腸内嫌気性発酵が亢進し、かつ室内気呼吸中の呼気中水素濃度が10ppm以上の場合、安定した結果が得られるかどうかが問題であるためである。
呼気水素ガスは摂取した食品の未消化物の腸内醗酵により水素濃度が大きく上昇または下降する場合があるため、できるだけ消化のよい食品摂取か、あるいは前夜の夕食以降の食事摂取をひかえた状態で行うと安定した水素摂取量が計測できる。室内空気吸入時の呼気中水素濃度が10ppm以下であればほぼ安定した結果が得られる。
【0023】
ここで、ベースライン(室内気吸入を行ったときの呼気水素濃度)は、短時間であれば(10分、20分又は1時間以内等)、計測中も持続的に一定濃度で呼気中に出てくるものとみなすことができるため、試験ガスを吸入した後の呼気水素濃度からベースラインを差し引いたものが上記のFEH
2(呼気水素ガス濃度)となる。
【0024】
更に、吸入気量は計器では測定せず、呼気量から簡易法として計算で求めることも可能である。
その計算法を述べる。不活性ガスは呼吸を介するマスバランスはゼロであり、また、酸素や二酸化炭素と比較すると他の低濃度微量ガス物質についても無視できるため、次の式2が成り立つ。
VI×(1−FIO
2−FICO
2)=VE×(1−FEO
2−FECO
2) ・・・式2
VI:分時吸気量
FIO
2:吸入気酸素濃度
FICO
2:吸入気二酸化炭素濃度
VE:分時呼気量
FEO
2:呼気酸素濃度
FECO
2:呼気二酸化炭素濃度
【0025】
よって、分時吸気量は、次の式3
【数1】
となり、計算で求められる。
【0026】
ここで1例を示すと、既知水素ガス濃度FIH
2(例えば、50〜200ppm)、吸入酸素濃度20.9%、吸入二酸化炭素濃度0.3%(これらの数値は実験によって異なる)を採用し、呼気量、呼気水素濃度、呼気酸素濃度、呼気二酸化炭素濃度を計測することにより、上記の式3から容易に分時水素摂取量Vを求めることができる。