特許第6041382号(P6041382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041382
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】音響機器および発振ユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/40 20060101AFI20161128BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20161128BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20161128BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20161128BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H04R1/40 320A
   H04R1/40 310
   H04R1/02 102Z
   H04R3/00 310
   H04R3/00 320
   H04R3/12 Z
   H04R17/00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-525313(P2012-525313)
(86)(22)【出願日】2011年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2011004034
(87)【国際公開番号】WO2012011255
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2014年6月6日
【審判番号】不服2015-17954(P2015-17954/J1)
【審判請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-166544(P2010-166544)
(32)【優先日】2010年7月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】岸波 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 康晴
(72)【発明者】
【氏名】菰田 元喜
(72)【発明者】
【氏名】村田 行雄
(72)【発明者】
【氏名】黒田 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 重夫
【合議体】
【審判長】 森川 幸俊
【審判官】 関谷 隆一
【審判官】 酒井 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−266754(JP,A)
【文献】 特開2006−114990(JP,A)
【文献】 特開2010−148102(JP,A)
【文献】 特開2008−17433(JP,A)
【文献】 特開2006−67386(JP,A)
【文献】 特開平2−265398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M1/00
H04M1/24-1/82
H04M99/00
H04R1/00-1/02
H04R1/06
H04R1/20-1/40
H04R1/44
H04R3/00-3/14
H04R9/00
H04R13/00
H04R15/00
H04R17/00-17/02
H04R17/10
H04R19/00
H04R23/00
H04R29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指向性を有しているスピーカユニットと、
利用者が発声した音声が入力される複数のマイクロフォンと、
複数の前記マイクロフォンの入力結果から前記利用者の少なくとも方向を検出し、当該検出結果に基づいて前記スピーカユニットの音声出力の方向を制御する指向性制御手段と、
を有し、
前記マイクロフォンは、第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子を支持する第1の弾性部材とを有しており、
前記スピーカユニットにおいて、第2の圧電素子を第2の弾性部材で支持した圧電振動子が、複数、前記マイクロフォンとともにマトリクスを構成するように配列されており、
前記マトリクスの四隅のうち、第1の隅に第1の前記マイクロフォンが配置されており、前記第1の隅と異なる第2の隅に第2の前記マイクロフォンが配置されており、
前記マトリクスにおいて、第1の前記マイクロフォンと第2の前記マイクロフォンとの間には、前記マイクロフォンが配置されておらず、前記圧電振動子が配置されている音響機器。
【請求項2】
複数の前記マイクロフォンの間に前記スピーカユニットが配置されている請求項に記載の音響機器。
【請求項3】
前記マイクロフォンは、前記利用者の通話音声の入力を受け付け、
前記マイクロフォンに入力された前記通話音声を無線送信する通話送信手段を、さらに有し、
前記指向性制御手段は、無線送信された前記通話音声から前記利用者の発声位置を検出する請求項1又は2に記載の音響機器。
【請求項4】
第1の圧電素子を第1の弾性部材で支持した圧電振動子と、
第2の圧電素子を第2の弾性部材で支持したマイクロフォンと、
を備え、
複数の前記圧電振動子と、前記マイクロフォンとが、同一のマトリクスを構成するように配置されており、
前記マトリクスの四隅のうち、第1の隅に第1の前記マイクロフォンが配置されており、前記第1の隅と異なる第2の隅に第2の前記マイクロフォンが配置されており、
前記マトリクスにおいて、第1の前記マイクロフォンと第2の前記マイクロフォンとの間には、前記マイクロフォンが配置されておらず、前記圧電振動子が配置されている発振ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの音響機器に関し、特に、マイクロフォンとスピーカユニットとを備えた音響機器、その発振ユニット、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やノート型コンピュータなどの携帯型の電子機器の需要が拡大している。このような電子機器では、テレビ電話や動画再生、ハンズフリー電話などの音響機能を商品価値とした薄型の携帯端末の開発が進められている。このような開発の中、音響部品である電気音響変換器(スピーカ装置)に対して、高音質でかつ小型・薄型化への要求が高まっている。
【0003】
現在、携帯電話機等の電子機器には、電気音響変換器として動電型電気音響変換器が利用されている。この動電型電気音響変換器は、永久磁石とボイスコイルと振動膜から構成されている。
【0004】
しかし、動電型電気音響変換器は、その動作原理および構造から、薄型化には限界がある。一方、特許文献1、2には、圧電素子を電気音響変換器として使用することが記載されている。
【0005】
また、圧電素子を用いた発振ユニットの他の例としては、スピーカ装置のほか、圧電素子から発振された音波を用いて対象物までの距離などを検出する音波センサ(特許文献3)など、種々の電子機器が知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2007−026736号公報
【特許文献2】再表2007−083497号公報
【特許文献3】特開平03−270282号公報
【特許文献4】特開2005−165923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、音響機器である携帯電話機などは、通話以外の機能を有している。この機能の一つに、音楽や映画などを視聴する機能がある。このような携帯電話機は、通話時には頭部側面に近接配置されて利用されるが、音楽や映画などを視聴する場合には、頭部前面から離間した状態で利用されることになる。
【0008】
しかし、このような状態で携帯電話機から充分な音量の音声を出力することは容易ではない。一方、このような携帯電話機が充分な音量の音声を出力した場合には、周囲の迷惑となることになる。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、特定の利用者のみに充分な音量の音声を提供することができる携帯電話機などの音響機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の音響機器は指向性を有しているスピーカユニットと、利用者が発声した音声が入力される複数のマイクロフォンと、複数の前記マイクロフォンの入力結果から前記利用者の少なくとも方向を検出し、当該検出結果に基づいて前記スピーカユニットの音声出力の方向を制御する指向性制御手段と、を有する。前記マイクロフォンは、第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子を支持する第1の弾性部材とを有する。前記スピーカユニットにおいて、第2の圧電素子を第2の弾性部材で支持した圧電振動子が、複数、前記マイクロフォンとともにマトリクスを構成するように配列されている。前記マトリクスの四隅のうち、第1の隅に第1の前記マイクロフォンが配置されており、前記第1の隅と異なる第2の隅に第2の前記マイクロフォンが配置されている。前記マトリクスにおいて、第1の前記マイクロフォンと第2の前記マイクロフォンとの間には、前記マイクロフォンが配置されておらず、前記圧電振動子が配置されている。
【0011】
本発明の発振ユニットは第1の圧電素子を第1の弾性部材で支持した圧電振動子と、第2の圧電素子を第2の弾性部材で支持したマイクロフォンと、を備えている。複数の前記圧電振動子と、前記マイクロフォンとが、同一のマトリクスを構成するように配置されている。前記マトリクスの四隅のうち、第1の隅に第1の前記マイクロフォンが配置されており、前記第1の隅と異なる第2の隅に第2の前記マイクロフォンが配置されている。前記マトリクスにおいて、第1の前記マイクロフォンと第2の前記マイクロフォンとの間には、前記マイクロフォンが配置されておらず、前記圧電振動子が配置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特定の利用者のみに充分な音量の音声を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本発明の実施の形態の音響機器である携帯電話機の回路構造を示す模式的なブロック図である。
図2】携帯電話機の外観を示す模式的な正面図である。
図3】発振ユニットであるスピーカユニットの要部の構造を示す縦断側面図である。
図4】スピーカユニットの構造を示す模式的な正面図である。
図5】携帯電話機の処理動作を示すフローチャートである。
図6】一変形例のスピーカユニットの構造を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図1ないし図5を参照して説明する。本実施の形態の音響機器である携帯電話機100は、図1に示すように、指向性を有しているスピーカユニット110と、利用者が発声した音声が入力される複数のマイクロフォン121,122と、複数のマイクロフォン121,122の入力結果から利用者の発声位置の少なくとも方向を検出してスピーカユニット110の音声出力の方向を制御する指向性制御部130と、を有する。
【0016】
より具体的には、本実施の形態の携帯電話機100は、図2に示すように、縦長の本体ハウジング101の前面の上半部にディスプレイユニット102が配置されており、下半部にキーボードユニット103が配置されている。
【0017】
さらに、ハウジング101の下端左右にマイクロフォン121,122が一個ずつ配置されている。ハウジング101の上端中央にはスピーカユニット140が配置されている。スピーカユニット140は、通話用の一般的な動電型スピーカである。ハウジング101は、スピーカユニット140の側方に、スピーカユニット110を有している。スピーカユニット140は、パラメトリックスピーカであり、ハンズフリー通話や音楽視聴などに利用される。
【0018】
図1に示すように、マイクロフォン121,122は、増幅回路123,124を介して指向性制御部130に接続されている。指向性制御部130は、スピーカユニット110に接続されている。
【0019】
また、マイクロフォン121,122は、入力された通話音声を無線送信する通話送信回路にも接続されている。スピーカユニット140は、通話受信回路に接続されている(図示せず)。この通話受信回路は、通話音声を無線で受信し、受信した通話音声をスピーカユニット140に音声出力させる。
【0020】
指向性制御部130は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のLSI(Large Scale Integration)などからなり、二個のマイクロフォン121,122の出力から利用者の左右方向の位置を検出し、スピーカユニット110の音声出力を左右方向に制御する。
【0021】
スピーカユニット110は、図3に示すように、圧電素子111を弾性部材112で支持した圧電振動子113を有している。弾性部材112は高剛性のフレーム114で支持されている。
【0022】
そして、図4に示すように、スピーカユニット110において、複数の圧電振動子113は、マトリクス状に配列されている。指向性制御部130は、これら複数の圧電振動子113を個々に駆動制御することで、高指向性の音声を所望の方向に出力する。
【0023】
なお、圧電素子111を構成する材料は、圧電効果を有する材料であれば、無機材料、有機材料ともに特に限定されない。この材料は、例えば、電気機械変換効率が高い材料、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT:lead Zirco-titanate)や、チタン酸バリウム(BaTiO)などである。
【0024】
また、圧電素子111の厚みは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であることが好ましい。例えば、圧電素子111として、脆性材料であるセラミック材料であり厚み10μm未満の薄膜を使用した場合、取り扱い時に機械強度の弱さから、圧電素子111に欠けや破損などが生じる可能性があるため、圧電素子111の取り扱いが困難となる。
【0025】
また、圧電素子111として厚み500μmを超えるセラミックを使用した場合は電気エネルギから機械エネルギに変換する変換効率が著しく低下し、スピーカユニット110として充分な性能が得られない。
【0026】
一般的に、電気信号の入力により電歪効果を発生させる圧電セラミックにおいては、その変換効率は電界強度に依存する。この電界強度は(入力電圧)/(分極方向に対する厚み)で表されることから、厚みの増加は必然的に変換効率の低下を招いてしまう。
【0027】
本発明の圧電素子111には、電界を発生させるために主面に上部電極層及び下部電極層(図示せず)が形成されている。上部電極層及び下部電極層は、電気伝導性を有する材料であれば特に限定されないが、銀や銀/パラジウムを使用することが好ましい。銀は低抵抗な汎用的な電極層として使用されており、製造プロセスやコストなどに利点がある。
【0028】
また、銀/パラジウムは耐酸化に優れた低抵抗材料であるため、信頼性の観点から利点がある。また、上部/下部電極層の厚みについては、特に限定されないが、その厚みが1μm以上50μm以下であるのが好ましい。
【0029】
例えば、上部電極層及び下部電極層の厚みが1μm未満では、膜厚が薄いため、均一に成形できず、変換効率が低下する可能性がある。なお、薄膜状の上部電極層及び下部電極層を形成する技術として、導電体をペースト状にして塗布する方法もある。
【0030】
しかし、圧電素子111がセラミックのような多結晶である場合、圧電素子111の表面状態が梨地面であるため、塗布時の濡れ状態が悪くなり、電極膜がある程度の厚みを有していないと、電極膜の膜厚を均一にできない。
【0031】
一方、上部電極層及び下部電極層の膜厚が100μmを超える場合は、製造上は特に問題はないが、上部電極層及び下部電極層が圧電素子111である圧電セラミック材料に対して拘束面となり、エネルギ変換効率を低下させてしまう。
【0032】
本実施の形態のスピーカユニット110の圧電素子111は、その片側の主面が弾性部材112によって拘束されている。弾性部材112は、圧電素子111の基本共振周波数を調整する機能を持つ。機械的な圧電振動子113の基本共振周波数fは、以下の式で示されるように、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。
【0033】
[数1]
なお、"m"は質量、"C"はコンプライアンス、である。
【0034】
コンプライアンスは圧電振動子113の機械剛性であるため、圧電素子111の剛性を制御することで基本共振周波数を制御できる。
【0035】
例えば、弾性率の高い材料を選択したり、弾性部材112の厚みを低減することで、基本共振周波数を低域にシフトさせることが可能となる。この一方で、弾性率の高い材料を選択することや、弾性部材112の厚みを増加させることで基本共振周波数を高域にシフトさせることができる。
【0036】
従来は、圧電素子111の形状や材質により基本共振周波数を制御していたところから設計上の制約やコスト、信頼性に問題があった。これに対し、本実施形態では、構成部材である弾性部材112を変更することにより、基本共振周波数を容易に所望の値に調整できる。
【0037】
なお、弾性部材112を構成する材料は、金属や樹脂など脆性材料であるセラミックに対して高い弾性率を持つ材料であれば特に限定されないが、加工性やコストの観点からリン青銅やステンレスなどの汎用材料が好適である。
【0038】
また、弾性部材112の厚みは、5μm以上1000μm以下であることが好ましい。弾性部材112の厚みが5μm未満の場合、弾性部材112の機械強度が弱く、拘束部材として機能を損なう可能性がある。また、加工精度の低下により、製造ロット間で圧電素子111の機械振動特性の誤差が生じてしまう。
【0039】
また、弾性部材112の厚みが1000μmを超える場合は、剛性増による圧電素子111への拘束が強まり、振動変位量の減衰を生じさせてしまう。また、本実施の形態の弾性部材112は、材料の剛性を示す指標である縦弾性係数が、1GPa以上500GPa以下であることが好ましい。上述のように、弾性部材112の剛性が過度に低い場合や、過度に高い場合は、機械振動子として特性や信頼性を損なう可能性がある。
【0040】
以下に本実施の形態のスピーカユニット110の動作原理を説明する。本実施の形態のスピーカユニット110は、例えば、AM(Amplitude Modulation)変調やDSB(Double Sideband modulation)変調、SSB(Single-Sideband modulation)変調、FM(Frequency Modulation)変調をかけた超音波を空気中に放射する。すると、超音波が空気中に伝播する際の非線形特性により、可聴音が出現する。
【0041】
非線形特性の一例としては、流れの慣性作用と粘性作用の比で示されるレイノルズ数が大きくなると、層流から乱流に推移する現象が挙げられる。
【0042】
音波は流体内で微少にじょう乱しているため、音波は非線形で伝播している。低周波数帯域での音波の振幅は非線形でありながら、振幅差が非常に小さく、通常、線形理論の現象として取り扱っている。これに対して、超音波では非線形性が容易に観察でき、空気中に放射した場合、非線形性に伴う高調波が顕著に発生する。
【0043】
音波は空気中に分子集団が濃淡に混在する疎密状態であり、空気分子が圧縮よりも復元するのに時間が生じた場合、圧縮後に復元できない空気が、連続的に伝播する空気分子と衝突する。これにより、衝撃波が生じて可聴音が発生する。
【0044】
本実施の形態の携帯電話機100は、例えば、図5に示すように、通常の通話時には(ステップS1−Y)、頭部側面に近接配置され、下端の二個のマイクロフォン121,122によって利用者の発声が入力され、上端のスピーカユニット140から相手の利用者(図示せず)の発声を出力する(ステップS7)。
【0045】
ただし、本実施の形態の携帯電話機100は、上述のような一般的な利用方法だけでなく、例えば、スピーカユニット110を利用したパラメトリックモードにより(ステップS2−Y)、ハンズフリー通話や音楽の視聴などにも利用される。
【0046】
このような場合、携帯電話機100は、例えば、図1に示すように、利用者の頭部前方に所定距離に配置される。このような状態で、例えば、利用者がハンズフリー通話や音楽の視聴の開始を例えば音声で入力すると、この発声が二個のマイクロフォン121,122に入力される(ステップS3−Y)。
【0047】
すると、指向性制御部130は、二個のマイクロフォン121,122に対する入力音声の時間差を算出し、この時間差から発声位置の方向を検出する(ステップS4)。そして、この検出された方向にスピーカユニット110から高指向性の音声が出力される(ステップS5)。
【0048】
本実施の形態の携帯電話機100では、上述のようなスピーカユニット110の音声が高指向性なので、周囲に騒音となることなく、利用者に充分な音量の音声を提供することができる。
【0049】
特に、本実施の形態の携帯電話機100では、利用者の発声位置をリアルタイムで検出しつづけ、スピーカユニット110の音声の出力方向をリアルタイムに調節する。このため、音楽の視聴中などに利用者の位置が変動しても、その利用者に高指向性の音声を的確に提供することができる。
【0050】
また、本実施の形態の携帯電話機100では、二個のマイクロフォン121,122が左右に離間した位置に配置されている。このため、利用者の発声位置を左右方向で良好に検出することができる。
【0051】
さらに、本実施の形態の携帯電話機100では、上述のように二個のマイクロフォン121,122が左右に離間した位置に配置されているので、右手で把持して利用する場合でも左手で把持して利用する場合でも利用者の発声を良好に入力することができる。
【0052】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では二個のマイクロフォン121,122が左右に離間した位置に配置されており、スピーカユニット110の高指向性の音声が左右方向に制御されることを例示した。
【0053】
しかし、携帯電話機(図示せず)に三個以上のマイクロフォンが離間して配置されており、利用者の発声位置を三次元的に検出してスピーカユニット110の高指向性の音声の方向を制御してもよい。
【0054】
その場合、三個以上のマイクロフォンが互いに離間しているほど発声位置の検出精度が向上するので、例えば、携帯電話機の前面の上下左右の四隅にマイクロフォンを配置することが好適である(図示せず)。
【0055】
さらに、このような携帯電話機などにおいて、複数のマイクロフォンの間である略中央にスピーカユニット110が配置されていてもよい。そして、指向性制御部130は、複数のマイクロフォンの検出結果から発声位置の少なくとも方向を検出してもよい(図示せず)。
【0056】
例えば、上述のように携帯電話機の前面の上下左右の四隅にマイクロフォンを配置し、携帯電話機の前面中央にスピーカユニット110を配置すれば、発声位置を高い精度で検出することができる。そして、この位置に対して、高指向性の音声を高い精度で出力することができる(図示せず)。
【0057】
なお、上記形態ではスピーカユニット110とマイクロフォン121,122とが別体に形成されていることを例示した。しかし、図6に例示する発振ユニットであるスピーカユニット200のように、マトリクス状に配列されている複数の圧電振動子113の一部がマイクロフォン210と置換されていてもよい。
【0058】
この場合、指向性制御部130は、スピーカユニット200のマイクロフォン210により利用者の発声位置を検出する。このようなスピーカユニット200でも、発声位置の検出精度を向上させるためには、マトリクス状に配列されている複数の圧電振動子113の外縁部の一部がマイクロフォン121,122と置換されていることが好適である。なお、マイクロフォン121,122は、圧電振動子113と同一構造を有していても良い。
【0059】
より具体的には、図示するように複数の圧電振動子113からなるマトリクスの四隅にマイクロフォン210が配置されていてもよい。この場合、指向性制御部130は、四隅のマイクロフォン210の検出結果から発声位置を三次元的に検出することができる。
【0060】
この場合、前述した携帯電話機100などに比較して複数のマイクロフォン210の間隔は短縮されるので、発声位置の検出精度は低下する懸念がある。しかし、スピーカユニット200にマイクロフォン210が最初から組み込まれているので、発声位置の検出精度を事前に高精度にチューニングしておくことができる。しかも、携帯電話機100には折り畳み式などが多々あるが、上述のようなスピーカユニット200は、そのような携帯電話機100の構造の影響を受けない。
【0061】
さらに、上記形態では高指向性の音声の出力方向を制御自在なスピーカユニットとして、圧電素子111を弾性部材112で支持した圧電振動子113が複数マトリクス状に配列されているスピーカユニット110を例示した。
【0062】
しかし、一個の圧電振動子113を上下左右などの二軸方向に揺動自在に支持し、各方向にソレノイドなどで可動させるスピーカユニットなども実施可能である(図示せず)。
【0063】
なお、当然ながら、上述した複数の実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【0064】
この出願は、2010年7月23日に出願された日本出願特願2010−166544号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 指向性を有しているスピーカユニットと、
利用者が発声した音声が入力される複数のマイクロフォンと、
複数の前記マイクロフォンの入力結果から前記利用者の少なくとも方向を検出し、当該検出結果に基づいて前記スピーカユニットの音声出力の方向を制御する指向性制御手段と、
を有する音響機器。
2. 前記マイクロフォンは、第1の圧電素子と、前記第1の圧電素子を支持する第1の弾性部材とを有しており、
前記スピーカユニットにおいて、第2の圧電素子を第2の弾性部材で支持した圧電振動子が、複数、前記マイクロフォンとともにマトリクスを構成するように配列されている1.に記載の音響機器。
3. 前記マトリクスの最外周の一部に前記マイクロフォンが配置されている2.に記載の音響機器。
4. 前記マトリクスの四隅の少なくとも二つに前記マイクロフォンが配置されている3.に記載の音響機器。
5. 前記マイクロフォンが前記スピーカユニットとは別体に形成されている1.に記載の音響機器。
6. 複数の前記マイクロフォンが相互に離間した位置に配置されている5.に記載の音響機器。
7. 三個以上の前記マイクロフォンを有する6.に記載の音響機器。
8. 複数の前記マイクロフォンの間に前記スピーカユニットが配置されている1.ないし7.の何れか一つに記載の音響機器。
9. 前記マイクロフォンは、前記利用者の通話音声の入力を受け付け、
前記マイクロフォンに入力された前記通話音声を無線送信する通話送信手段を、さらに有し、
前記指向性制御手段は、無線送信された前記通話音声から前記利用者の発声位置を検出する1.ないし8.の何れか一つに記載の音響機器。
10. 第1の圧電素子を第1の弾性部材で支持した圧電振動子と、
第2の圧電素子を第2の弾性部材で支持したマイクロフォンと、
を備え、
複数の前記圧電振動子と、前記マイクロフォンとが、同一のマトリクスを構成するように配置されている発振ユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6