(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
油焚き小型蒸気ボイラは、A重油や灯油等の油を燃料としてオイルバーナーに供給し、ボイラ本体の燃焼室で噴霧燃焼させて、該燃焼室の周りを取り囲むように配置された水管群を加熱させることで、該水管群内に供給された水を過熱蒸気にするものである。オイルバーナーには、圧力噴霧ノズルが使用されているが、その圧力噴霧ノズルから噴霧される燃料の粒径には5〜100[μm]程度のバラツキがある。そのうち、大きい粒子は局部的な燃え残りとなり、燃焼率を低下させるとともに最終的にススとなる。発生したススは水管表面に付着するため、経年とともに断熱作用が増大し、使用年数が経過する程、ボイラ効率を低下させる。
【0003】
そこで、ボイラ燃料として加水燃料を使用することが行われている。この加水燃料は、燃料の連続相に水粒子を分散させて製造されるものである。この加水燃料を前記した噴霧ノズルから噴霧燃焼させると、油膜に包まれた水粒子が燃焼火炎にさらされることにより瞬間的膨張・気化(ミクロ爆発)し、油膜を微細化させる。これにより、発生していた局部的な燃え残りを減らし、燃料の燃焼率を100[%]に近づけ、燃料削減とスス発生を抑制することが可能となる。また、含有水粒子が気化することで、A重油や灯油等の油の燃焼火炎温度がより低下し、火炎温度分布も均一化され、窒素酸化物の発生も大幅に抑制することが可能となる。
【0004】
従来の加水燃料は乳化型と呼ばれている。この乳化型加水燃料は、長期間にわたって油水分離の防止を追求するために添加剤(界面活性剤)を加えた非透明の高粘度の液体であり、O/W(Oil in Water:水中油滴)乳化型と、W/O(Water in Oil:油中水滴)乳化型とがある。乳化型加水燃料は油、水、添加剤(界面活性剤)で構成され、添加剤が水と油のミセル、又は燃料と水の逆ミセルを構成する。
【0005】
O/W乳化型加水燃料のミセル構成は、加水がA重油、灯油等の油滴を包み込む形で形成され、水の連続相に油滴を分散させた形となる。一方、W/O乳化型加水燃料のミセル構成は、油が水滴を包みこむ形で形成され、油の連続相に水滴を分散させた形となる。O/W乳化型加水燃料は油に比べ加水量が多いため、安定した着火および単独燃焼は難しく、パイロット燃焼等の補助的燃焼を用いる必要があり、加水燃料単独で燃焼させる用途には向かない。そのため、現在流通している加水燃料は、加水燃料製造装置での製造を含め、W/O乳化型加水燃料だけとなっている。
【0006】
W/O乳化型加水燃料は、乳化作用が発生するため、50〜200[mPa・S]程度の高粘度になる。油焚き小型蒸気ボイラは、前述のように圧力噴霧ノズルを使用しており、その圧力噴霧ノズルは粘度が高いと流量が増加する傾向を持っている。言わば、粘度が高いと定格より燃料を多く消費し、燃料削減の観点から好ましくない。また、粘度が高いと噴霧粒子も大きくなり、且つ加水燃料供給経路に異物等を取り除く目的で取り付けてあるストレーナーに目詰まりが発生し、燃料の供給が阻害されるなど問題点があった。
【0007】
また、W/O乳化型加水燃料は、油の連続相に水滴を分散させたミセルの粒径が1〜20[μm]程度に分布するため、分散状態が疎らになりがちであった。実際、ミセル粒径が20[μm]程度のW/O乳化型加水燃料をボイラで燃焼させた場合、燃焼時に水分がはぜ、ボイラの定格蒸気発生量を得るために当該燃料の流量を増加させて行くと、ボイラの煙道が音を立て振動するとともに、爆風がオイルバーナーの燃焼空気供給ファンの負荷となって、大きな騒音が発生する現象が発生していた。
【0008】
そこで近年、低粘度でミセル粒径が小さく且つ長期間にわたって油水分離しないW/O加水燃料として、W/O可溶化型加水燃料が開発されてきている。このW/O可溶化型加水燃料は、透明に近いため、加水のミセル粒子の粒径が光の通過を阻害しない程に小さく、可視光の波長の1/10以下の40[nm]程度と推定される(ミセルが小さすぎて顕微鏡撮影ができない。)。
【0009】
このようなW/O可溶化型加水燃料として、特許文献1〜5に記載がある。これらの特許文献を見ると、添加剤の界面活性剤や薬品は最低4種類以上を要し、10種類を使用する製造方法も見られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ボイラ技士の資格がなくても取扱いのできる油焚き貫流蒸気ボイラの換算蒸発量は、2000[kg/h]が最大で、そのときの燃料消費量は、A重油タイプで約130[L/h]、灯油タイプで約140[L/h]である。ボイラ技士の資格を持たないユーザにおいて、換算蒸発量が2000[kg/h]以上必要なときは、不足蒸気量を補うため、換算蒸発量1000[kg/h]や1500[kg/h]の貫流蒸気ボイラを併設し、又は2000[kg/h]ボイラを2台、3台並列運転し、必要蒸気量を発生させている。
【0018】
従って、このような貫流蒸気ボイラ用のW/O可溶化型加水燃料の製造装置としては、最低140[L/h]以上が製造が可能な製造装置が必要となる。W/O可溶化型加水燃料を製造する場合、界面活性剤や薬品を投入してから可溶化状態にするためには、攪拌させ均一に混合させるとともに、所定の反応時間が必要となる。そのため、界面活性剤や薬品の種類を少なくし、1つの工程で安定してW/O可溶化型加水燃料の製造を行う必要がある。
図1にその製造装置の構成を示す。
【0019】
図1において、1は複数の材料を外部から順次供給する配管、2は配管1の途中に設けられた流量制御弁、3は複数の材料を混合する容量20[L]の混合層、4はその混合層3内に配置された4枚羽プロペラ、5はその4枚羽プロペラ4を60〜1200[rpm]で回転駆動させるためのインバータ制御モータ、6は混合材料を取り出す配管、7はその配管7の途中に設けられた電磁弁、8は容量100[L]の攪拌槽、9は攪拌槽8内に配置された4枚羽の2層プロペラ、10はその2層プロペラ9を回転駆動するモータ、11は攪拌材料を取り出して貫流蒸気ボイラに供給する配管である。
【0020】
配管1から、A重油、水、2種類の非イオン系界面活性剤を、それぞれ流量制御弁2を介して混合槽3に所定の混合比率で投入し、モータ5によって4枚羽プロペラ4を約400[rpm]で約8分間回転し攪拌して、約20[L]のW/O可溶化型加水燃料を製造する。このW/O可溶化型加水燃料は、攪拌槽8内のW/O可溶化型加水燃料の量が半分(50[L])以下になると配管6と電磁弁7を介し、攪拌槽8に供給される。攪拌槽8に供給されたW/O可溶化型加水燃料はモータ10によって回転する2層プロペラ9で攪拌される。攪拌槽8で攪拌されたW/O可溶化型加水燃料は配管11から、蒸気貫流ボイラ(換算蒸発量750[kg/h]、A重油消費量49.8[L/h]、ボイラ効率88[%]以上の規格)のオイルバーナーオイルポンプ、噴霧用電磁バルブを介して噴霧ノズルに供給され、当該ボイラの燃焼シーケンスにより噴霧燃焼される。
【0021】
2種類の非イオン系界面活性剤として、HLB値が13の第1の非イオン系界面活性剤とHLBが4.3の第2の非イオン系界面活性剤を用いた。なお、非イオン化系界面活性剤とは、水に溶けてもイオン性を示さないが、界面活性を呈する界面活性剤である。また、HLBは、Hydrophile-Lipophile Balanceの略で、界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値である。HLBの値が大きいほど水への親和性が高い。HLB値が13の界面活性剤としてヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを使用し、HLB値が4.3の界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを使用し、これにより混合比率を異ならせた2種類の添加剤を製造し、この添加剤をA重油と水に添加して2種類のW/O可溶化型加水燃料を製造し、それぞれ上記ボイラで燃焼させる実験を行いボイラ効率を得た。
【0022】
<実施例1>(W/O可溶化型加水燃料使用:
図2参照)
配管1から、1バッチ分として、A重油=14[L]、水=4[L]、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド=1.8[L]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート=0.2[L](つまり、A重油:水:添加剤の容量比%=70:20:10)を、流量制御弁2を介して混合槽3に供給し混合攪拌した。
【0023】
このとき、A重油に水を加え、攪拌させながらヤシ油脂肪ジエタノールアミドを加え、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを徐々に加えてゆくと、混合液は突然透明度の高い可溶化液に変化する。
【0024】
ただし、この状態にさらにポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを加えると、再度乳化状態に戻る。そして、粘度が増加し、それ以上ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを追加しても粘度が増加するだけで、可溶化状態には戻らない。乳化状態になると時間経過とともに油水分離が発生するが、可溶化状態になれば、長期間放置しても油水分離は発生しない。
【0025】
本実施例では、製造したW/O可溶化型加水燃料の粘度は、約12[mPa・S]であった。
図2に示すように、このW/O可溶化型加水燃料を綿棒に染みこませて燃焼させても、加水粒子がはじけることはなかった。また、製造後約7ケ月経過しても状態に変化は無く安定し、分離しなかった。
【0026】
混合槽3内で攪拌プロペラ4で約400[rpm]で混合攪拌して製造後、攪拌槽8を介して配管11からボイラオイルバーナーに供給し、蒸気発生後1時間以上噴霧燃焼させ、1時間分のボイラ効率を算出した。このときの使用ボイラは、日本サーモエナー製のEQS−751KSII、蒸気圧力1[kg/cm
2]、蒸気温度120[℃](過熱蒸気の比エンタルピは2706.54[kJ/kg])である。
【0027】
なお、攪拌槽8に貯蔵されたW/O可溶化型加水燃料が50[L]まで低下すると、混合槽3でW/O可溶化型加水燃料を20[L]製造して攪拌槽8に供給することを繰り返し、攪拌槽8の貯蔵量が100[L]になると、混合槽3での加水燃料製造を停止するシステムとした。
【0028】
ボイラ効率ηは、
η=G×(h2−h1)×100/(A×B) ・・・(1)
で求められる。Gは実際蒸発量(実際給水量ブロー無しの場合は給水量)[kg]、h2は蒸気の比エンタルピ[kJ/kg]、h1は給水の比エンタルピ[kJ/kg]、Aは燃料消費量[kg]、Bは燃料低発熱量[kJ/kg]である。
【0029】
ここで、比エンタルピとは、単位質量がもつ全エネルギー[kJ/kg]であり、温度(圧力)によって決まる。また、燃料発熱量には低発熱量と高発熱量があり、ボイラ効率算出には低発熱量が使用される。燃料には水分が含まれており、その水分が加熱され水蒸気(過熱蒸気)になるが、その水蒸気が100℃以下の低い温度の水管などで冷やされると凝縮して水となり、凝縮潜熱が発生する。この凝縮潜熱も含めた発熱量は高発熱量と呼ばれている。低発熱量は、水蒸気のまま排出され凝縮潜熱の発生がない場合の発熱量であるが、凝縮潜熱を利用するボイラ構造の場合、凝縮潜熱が加わるために、低発熱基準で考えるボイラ効率では、100[%]を超えることがある。
【0030】
本実施例では、添加剤(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド=1.8[L]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート=0.2[L])を熱量として加えないときは、
図2から、
G=262[kg]
h2=2706.54[kJ/kg]
h1=117.21[kJ/kg]
A=16.161[kg](A重油消費量)
B=42300[kJ/kg](燃料低発熱量=A重油低発熱量)
であった。
【0031】
よって、添加剤を熱量として加えないときのボイラ効率ηは、
η=262×(2706.54−117.21)×100/(16.161×42300)
=99.24[%]
となった。
【0032】
また、添加剤を2.15[kg]としてそれを熱量として加えた場合は、
A=16.161+2.15
=18.311[kg]
となる。
【0033】
さらに、
図2に示したように、重油含有量が16.161[kg/h]、その低発熱量が42300[kJ/kg]、添加剤含有量が2.15[kg/h]、その低発熱量が25000[kJ/kg]であったので、A重油と添加剤の平均発熱量である燃料低発熱量Bは、
B=(16.161×42300+2.15×25000)/(16.161+2.15)
=40268[kJ/kg]
となる。
【0034】
よって、添加剤を加えたときのボイラ効率ηは、
η=262×(2706.54−117.21)×100/(18.311×40268)
=92.00[%]となった。
【0035】
<実施例2>(W/O可溶化型加水燃料使用:
図3参照)
配管1から、1バッチ分として、A重油=12[L]、水=4.6[L]、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド=3[L]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート=0.3[L](つまり、A重油:水:添加剤の容量%=60:23:17)を、流量制御弁2を介して混合槽3に供給し混合攪拌した。
【0036】
このとき、A重油に水を加え、攪拌させながらヤシ油脂肪ジエタノールアミドを加え、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを徐々に加えてゆくと、混合液は突然透明度の高い可溶化液に変化する。ただし、この状態にさらにポリオキシエチレンソルビタンモノオレートを加えると、再度乳化状態に戻る。
【0037】
本実施例では、製造したW/O可溶化型加水燃料の粘度は、約10[mPa・S]であった。
図3に示すように、このW/O可溶化型加水燃料を綿棒に染みこませて燃焼させても、加水粒子がはじけることはなかった。また、製造後約7ケ月経過しても状態に変化は無く安定し、分離しなかった。
【0038】
以下、実施例1と同様、このW/O可溶化型加水燃料をボイラオイルバーナーに供給し、蒸気発生後1時間以上噴霧燃焼させ、1時間分のボイラ効率を算出した。このときの使用ボイラは、日本サーモエナー製のEQS−751KSII、蒸気圧力0.75[kg/cm
2]、蒸気温度116[℃](過熱蒸気の比エンタルピは2700.04[kJ/kg])である。
【0039】
本実施例では、添加剤(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドが3[L]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートが0.3[L])を熱量として加えないときは、
G=239[kg]
h2=2700.04[kJ/kg]
h1=117.21[kJ/kg]
A=12.879[kg](A重油消費量)
B=42300[kJ/kg](燃料低発熱量=A重油低発熱量)
であった。
【0040】
よって、添加剤を熱量として加えないときのボイラ効率ηは、
η=239×(2700.04−117.21)×100/(24.96×42300)
=113.31[%]
となった。このように、凝縮潜熱を利用するボイラ構造の場合、凝縮潜熱が加わるために、低発熱基準で考えるボイラ効率は、113.31[%]になった。
【0041】
また、添加剤を3.40[kg]としてそれを熱量として加えた場合は、
A=12.879+3.40
=16.279[kg]
となる。
【0042】
さらに、
図3に示したように、重油含有量が12.879[kg/h]、その低発熱量が42300[kJ/kg]、添加剤含有量が3.40[kg/h]、その低発熱量が25000[kJ/kg]であったので、A重油と添加剤の平均発熱量である燃料低発熱量Bは、
B=(12.879×42300+3.40×25000)/(12.879+3.40)
=38688[kJ/kg]
となる。
【0043】
よって、添加剤を熱量として加えたときのボイラ効率ηは、
η=239×(2700.04−117.21)×100/(16.279×38688)
=98.02[%]
となった。
【0044】
<参考例1>(W/O乳化型加水燃料使用:
図4参照)
参考までに、A重油:水:添加剤の容量%=80:20:0.2のW/O乳化型加水燃料を使用した。このW/O乳化型加水燃料は、粘度が75[mPa・S]であって、
図4に示すように、約2週間放置すると油と水が分離した。一般滴に、W/O乳化型加水燃料は、加水のミセル粒子の粒径が2〜20[μm]程度に分布し、粒径が10[μm]以上になると
図4に示したように燃焼時にパチパチと音を立てて水分がはぜる現象が発生する。これをボイラ燃料として燃焼させた場合は、25[L/h]程度の流量まではA重油燃焼と変わらないが、30[L/h]を越える流量になるとボイラの煙道が音を立て振動を始め、さらに流量を増してミクロ爆発量が増大すると振動と音が激しくなる。また、爆風がオイルバーナーの燃焼空気供給ファン側にも戻るため、空気供給ファンの負荷が増大し当該ファンからも大きな騒音が発生し、運転は不可能となる。
【0045】
そこで、W/O乳化型加水燃料での運転は、ボイラ煙道が振動しない程度の流量に合わせ運転を実施した。このときの使用ボイラは、日本サーモエナー製のEQS−751KSII、蒸気圧力1.1[kg/cm
2]、蒸気温度122.2[℃](過熱蒸気の比エンタルピは2709.1[kJ/kg])である。ここでは、添加剤を熱量として加えない場合は
G=280[kg]
h2=2709.13[kJ/kg]
h1=87.906[kJ/kg]
A=19.49[kg]
B=42300[kJ/kg]
であった。
【0046】
よって、添加剤を熱量として加えないときのボイラ効率ηは、
η=280×(2709.13−87.906)×100/(19.49×42300)
=89.01[%]
となった。
【0047】
また、添加剤を0.45[kg]としてそれを熱量として加えた場合は、
A=19.49+0.45
=19.94[kg]
となる。
【0048】
さらに、
図4に示したように、重油含有量が19.49[kg/h]、その低発熱量が42300[kJ/kg]、添加剤含有量が0.45[kg/h]、その低発熱量が25000[kJ/kg]であったので、A重油と添加剤の平均発熱量である燃料低発熱量Bは、
B=(19.49×42300+0.45×25000)/(19.49+0.45)
=41906[kJ/kg]
となる。
【0049】
よって、添加剤を熱量として加えたときのボイラ効率ηは、
η=280×(2709.13−87.906)×100/(19.94×41906)
=87.8[%]
となった。
【0050】
<参考例2>(A重油のみ使用:
図5参照)
A重油のみを使用した場合のボイラ効率を以下に記す。このときの使用ボイラは、日本サーモエナー製のEQS−751KSII、蒸気圧力1.2[kg/cm
2]、蒸気温度127.7[℃](過熱蒸気の比エンタルピは2711.24[kJ/kg])である。
G=295[kg]
h2=2711.24[kJ/kg]
h1=117.21[kJ/kg]
A=20.27149[kg](A重油消費量)
B=42300[kJ/kg](A重油発熱量)
であった。
【0051】
よって、ボイラ効率ηは
η=295×(2711.24−117.21)×100/(20.27149×42300)
=89.24[%]
となった。
【0052】
さらに、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドのHLB値(=13)とほぼ同じHLB値を示す液状非イオン界面活性剤の代替え剤として、松本油脂製薬のマーポンCS−40K(HLB=13.0)、松本油脂製薬のマーポンNP−10(HLB=13.3)、三洋化成工業のサンノニックSS−70(HLB=12.1)、三洋化成工業のナロアクテイCL−85(HLB=12.6)を、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートと水とA重油を混合加算した加水燃料を作成してみたので、以下に記す。ここでは、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレートとして、第1工業製薬のソルゲン40を使用した。
【0053】
<参考例3>(加水燃料:
図6参照)
本参考例3の加水燃料は、A重油:水:添加剤の容量%=70[mL]:20[mL]:10.5[mL]である。ただし添加剤は、マーポンCS−40K:ゾルゲン40=10[mL]:0.5[mL]である。この参考例3では、
図6に示すように、粒子の粗さは見えず、W/O乳化型に近い状態まで持って行けるが、6時間で油水分離が発生した。
【0054】
<参考例4>(加水燃料:
図7参照)
本参考例4の加水燃料は、A重油:水:添加剤の容量%=70[mL]:20[mL]:10.5[mL]である。ただし添加剤は、マーポンNP−10:ゾルゲン40=10[mL]:0.5[mL]である。この参考例4では、
図7に示すように、粒子が粗く2層に分離し、下部がゲル(団子)状態となった。
【0055】
<参考例5>(加水燃料:
図8参照)
本参考例5の加水燃料は、A重油:水:添加剤の容量%=70[mL]:20[mL]:10.5[mL]である。ただし添加剤は、サンノニックSS−70:ゾルゲン40=10[mL]:0.5[mL]である。この参考例5でも、
図8に示すように、粒子が粗く2層に分離した。
【0056】
<参考例6>(加水燃料:
図9参照)
本参考例6の加水燃料は、A重油:水:添加剤の容量%=70[mL]:20[mL]:10.5[mL]である。ただし添加剤は、ナロアクテイCL−85:ゾルゲン40=10[mL]:0.5[mL]である。この参考例6でも、
図9に示すように、粒子が粗く2層に分離した。
【0057】
<まとめ>
実際に燃焼試験を行った前記の実施例1,2と参考例1,2をまとめると、
図10に示す通りとなる。本発明のW/O可溶化型加水燃料は、実施例1,2ともに、参考例1,2と比べてボイラ効率が優れており、燃料削減および化石燃料削減の観点から有益である。参考例3〜6の加水燃料は使用に適しなかった。特に、HLB値がヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドとほぼ同じであっても、マーポンCS−40K、マーポンNP−10、サンノニックSS−70、ナロアクテイCL−85等の材料ではW/O可溶化ができないことが確認された。
【0058】
以上説明したように、本発明のW/O可溶化型加水燃料を製造する際に必要な添加剤は、2種類の非イオン系界面活性剤で構成される。このため、A重油又は灯油等の油と水にこの添加剤を加えて混合攪拌する1工程でW/O可溶化型加水燃料を製造することが可能であり、ボイラを運転しながら当該のW/O可溶化型加水燃料をリアルタイムで製造し当該ボイラに供給することが可能となる。
【0059】
また、これらのW/O可溶化型加水燃料は、加水のミセル粒子の粒径が40[nm]程度と非常に小さく均等に油中に分散している。このため、個々の加水粒子のミクロ爆発は小さく且つその加水粒子の周りを取り囲む油膜を効率よく微細化させるので、重油と同様の燃焼が行われる。このW/O可溶化型加水燃料を綿棒等に染み込ませて燃焼させた時に、加水分がはぜることなくA重油や灯油と同一火炎燃焼することを確認している。
【0060】
なお、以上の実施例1,2では添加剤として、第1の非イオン系界面活性剤としてHLB=13のヤシ油脂肪酸ジエタノールアミドを使用し、第2の非イオン系界面活性剤として、HLB=4.3のポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(製品名:ソルゲン40、第1工業製薬)を使用した例を説明した。
【0061】
しかし、第2の非イオン系界面活性剤としては、これに限られず、HLB=4〜8のものを使用出来る。例えば、HLB=6.5のポリオキシアルキレンラウリエーテル(製品名:DASH403、第1工業製薬)、HLB=8.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル(製品名:エマルミン40、三洋化成工業)、その他を使用しても本発明の効果を得ることができる。
【0062】
また、第1の非イオン系界面活性剤と第2の非イオン系界面活性剤の容量比(%)は、実施例1では1.8:0.2、実施例2では3:0.3のように、ほぼ90:10であったが、第1の非イオン系界面活性剤が80〜95[%]、第2の非イオン系界面活性剤が20〜5[%]程度の範囲であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0063】
さらに、W/O可溶化型加水燃料の材料の容量比[%]は、実施例1ではA重油:水:添加剤=70:20:10であり、実施例2では60:23:17であったが、これについても、A重油等の油:水:添加剤=(60〜80):(20〜25):(3〜20)の範囲であれば、本発明の効果を得ることができる。