(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記演算部は、前記加速度値と、当該加速度値に応じて定められた時間と、を加速度値ごとに予め記憶部に記憶し、前記鉛直加速度センサの測定した前記鉛直方向の加速度値に基づいて前記記憶部より時間を抽出し、抽出した時間を前記所定時間に設定することを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加速度センサを用いて測位を行う方法においては、落下衝撃のような非常に大きな加速度がかかった場合に当該加速度センサが一時的に機能しなくなるために、その機能しない時間内での移動を検出できなくなって正確な測位ができない、という課題があった。具体的には、電子機器は、屋内で用いられGPSが機能しない状況において、壁などに衝突したり、床に落下した場合に、一時的に加速度センサの出力が不安定になってしまうため、それに基づく測位ができずに正確な現在位置が検出できなくなる。
【0006】
本発明はこのような事情に考慮してなされたもので、その目的は、屋内などのGPSが機能しない場所で衝撃を受けた場合であっても正確な測位ができる電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る電子機器は、水平方向の加速度を測定する水平加速度センサと、鉛直方向の加速度を測定する鉛直加速度センサと、外気圧を測定する気圧センサと、前記水平加速度センサと前記鉛直加速度センサと前記気圧センサの出力信号を取得し、取得した出力信号より現在の位置の推定を行う演算部と、を備え、前記演算部は、前記鉛直加速度センサの測定した前記鉛直方向の加速度が予め定めた範囲を超えた場合に、当該超えた時点より所定時間、前記鉛直加速度センサの出力信号に替えて前記気圧センサの出力信号を用いた前記現在の位置の推定を行うことを特徴とする。
本発明に係る電子機器によれば、落下や衝突などの衝撃を受けて鉛直加速度センサの出力信号が信頼できない時間においても、気圧センサの出力信号を利用することによって正確な測位ができる。
【0008】
また、本発明に係る電子機器において、前記所定時間は、前記演算部により前記鉛直加速度センサの測定した前記鉛直方向の加速度の値に基づいて設定されることを特徴とする。
また、本発明に係る電子機器において、前記演算部は、前記加速度値と、当該加速度値に応じて定められた時間と、を加速度値ごとに予め記憶部に記憶し、前記鉛直加速度センサの測定した前記鉛直方向の加速度値に基づいて前記記憶部より時間を抽出し、抽出した時間を前記所定時間に設定することを特徴とする。
本発明に係る電子機器によれば、鉛直加速度センサの出力が衝撃等により信頼できない時間のみ気圧センサの出力信号を利用して測位するため、より正確な測位ができる。
【0009】
また、本発明に係る電子機器において、前記演算部には、あらかじめ前記鉛直方向の加速度の上限値と下限値とが設定され、前記所定時間は、前記鉛直加速度センサの測定した前記鉛直方向の加速度が前記上限値と下限値とで構成される数値範囲外の値を示す時間と等しいことを特徴とする。
本発明に係る電子機器によれば、鉛直加速度センサの機能が回復するとすみやかに鉛直加速度センサの出力信号を利用して測位するため、より正確な測位ができる。
【0010】
また、本発明に係る電子機器において、人工衛星からの信号を受信することで位置を測定するGPS装置を備え、前記演算部は、前記GPS装置からの信号を取得可能な場合に、前記出力信号とともに当該GPS装置からの信号に基づいて現在の位置を測定し、前記GPS装置からの信号を取得できない場合に、直前に前記GPS装置から取得した信号に基づいて測定した位置を基準位置として、当該基準位置から前記現在の位置までの移動量を前記出力信号に基づいて推定することを特徴とする。
本発明に係る電子機器によれば、人工衛星からの信号を受信できない場合においてのみ、衝撃直後に気圧センサの出力信号を利用するため、より正確な測位ができる。
【0011】
本発明に係る電子機器は、気圧センサが大気圧の変動を測定する気圧変動センサであることを特徴とする。
本発明に係る電子機器によれば、海抜高度によらず急激な上下方向の変位に対応して鉛直加速度センサに代わって気圧変動センサの出力信号によって測位するため、より正確な測位ができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る電子機器によれば、強い衝撃を受けて一時的に加速度センサの出力信号が信頼できない場合であっても、気圧センサの出力信号を利用することで、常に正確な現在位置の測位ができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る電子機器の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電子機器1のブロック図である。電子機器1は、例えば、携帯用の通信機器やパーソナルコンピュータであって、鉛直加速度センサ2と水平加速度センサ3と気圧センサ4を含んで構成されるセンサ部10と、制御部5と、アンテナ6と、GPS受信部7と、演算部8と、で構成される。センサ部10とアンテナ6を持つGPS受信部7とは、制御部5に接続される。また、制御部5は演算部8に接続される。
【0015】
鉛直加速度センサ2、水平加速度センサ3は、例えば、静電容量式、ピエゾ抵抗式、等各種の加速度センサからなり、それぞれ電子機器1に作用する鉛直方向、水平方向の加速度を検出し、制御部5に対して検出した加速度の信号を出力する。
【0016】
気圧センサ4は、例えば、静電容量式、振動式、等各種の外気圧を検出可能なセンサからなり、制御部5に対して検出した外気圧の信号を出力する。また、気圧センサ4は、一部に外気と連通する開口を持つキャビティを持ち、その開口を覆うようにカンチレバーが配置され、そのカンチレバーは基部側が開口内壁に固定され先端側が自由になることで先端と開口内壁の隙間が微小な空気ギャップとなっている構造を持つ差圧センサであっても良い。
【0017】
なお、以下の説明において、センサ部10からの出力信号と表現した場合には、鉛直加速度センサ2,水平加速度センサ3,気圧センサ4の全ての出力信号、又は全てのセンサのうちの(特定されない)何れか一つの出力信号を示唆するものとする。
【0018】
GPS受信部7は、アンテナ6を介して人工衛星から発せられるGPS信号を受信する受信機であり、制御部5に対して受信したGPS信号を出力する。
制御部5は、例えば、CPU,RAM,ROM等を備えて構成され、電子機器1の各種機能・動作を統括的に制御する。また、制御部5は、センサ部10からの出力信号と、GPS受信部7からのGPS信号を入力し、それら入力した各種の信号を演算部8に送信する。
【0019】
演算部8は、制御部5より受信した各種の信号に対して次の処理を行う。まず直近に得られたGPS信号から、直近にGPS信号が得られたときの時刻と、その時刻における電子機器1の位置をRAMに格納する。GPS信号は、複数のGPS衛星から発信される電波を受信し、それらの衛星の軌道情報と時刻から電子機器1の現在位置を求めた信号である。次に、現在の時刻と上記直近にGPS信号が得られた時刻との差を求めて、直近にGPS信号が得られてからの経過時間をRAMに格納する。次に鉛直加速度センサ2からの信号と、水平加速度センサ3からの信号を、上記経過時間に亘って積分する。このとき鉛直加速度センサ2からの信号は、場合によっては気圧センサ4の信号によって置換されるが、これについては後述する。この演算によって得られた電子機器1の位置情報を制御部5に返信する。
【0020】
次いで、当該電子機器1の位置推定動作について
図2を用いて説明する。
まず、電子機器1が鉛直方向上向きに衝撃を受けた際の、センサ部10に備わる鉛直加速度センサ2と気圧センサ4それぞれの出力変化について述べる。ここで、
図2は、本実施形態に係るセンサ部10の出力信号の時間変化を示す図である。
図2(a)は鉛直加速度センサ2の出力である鉛直加速度aの時間tに対する変化の様子を、
図2(b)は気圧センサ4の出力である気圧pの時間tに対する変化の様子をそれぞれ示す。
【0021】
電子機器1は、初期状態(t=0)において、鉛直加速度a1、気圧p1を検出しているものとする。ここで初期状態は静止状態とし、鉛直加速度a1を重力加速度とする。そして、時刻t1において電子機器1が鉛直方向上向きに大きな衝撃を受けると、鉛直加速度センサ2の出力信号は大きく変動する。そのため、
図2(a)に示すように、当該時刻t1〜時刻t2までの間、鉛直加速度センサ2の出力信号は正確な鉛直加速度を示さない。これは、上記衝撃によって極めて短時間に大きな加速度が電子機器1に加わるため、鉛直加速度センサ2が当該加速度の急峻な変化に対応できないためである。他方、
図2(b)に示す気圧センサ4は、上記時刻t1〜時刻t2において、電子機器1が鉛直方向に移動したことによる外気圧の変化に基づき、気圧p1から気圧p2への変化を検出する。つまり、気圧センサ4は、電子機器1が大きな衝撃を受けても、当該衝撃によって外気圧そのものが変動するわけではないので、安定して外気圧を示す信号を出力する。
【0022】
次に、上記鉛直加速度センサ2と気圧センサ4それぞれの出力変化に基づく、電子機器1の位置推定動作を
図3に基づいて説明する。ここで
図3は、演算部8の動作フローを示す。
【0023】
はじめに、制御部5は、センサ部10及びGPS受信部7からの出力信号を受信し、演算部8に送信する(ステップS1)。すると、演算部8は、ステップS1にてGPS信号を取得できたか否か、つまり、電子機器1が屋外等のGPS信号を受信できる位置にあるか否かを判断する(ステップS2)。そして、演算部8は、ステップS2にて取得できたと判断する場合(ステップS2;Yes)、当該GPS信号に基づく電子機器1の位置推定の演算処理を実行する(ステップS3)。
【0024】
一方、演算部8は、ステップS2にて取得できなかったと判断する(つまり、電子機器1が屋内等にある)場合(ステップS2;No)、加速度センサ(鉛直加速度センサ2及び水平加速度センサ3)の出力に基づく電子機器1の位置推定の演算処理を実行する(ステップS4)。
【0025】
次いで、演算部8は、
図2で述べた衝撃に基づく鉛直加速度センサ2の出力信号の変動を検知したか否かを判断する(ステップS5)。
そして、演算部8は、ステップS5にて出力信号の変動を検知したと判断する場合(ステップS5;Yes)、鉛直加速度センサ2の出力を破棄するとともに、気圧センサ4の出力に基づく位置推定処理を実行する(ステップS6)。具体的には、演算部8は、制御部5を介して受信したGPS信号によって最も直近に把握した位置情報(すなわち、ステップS3にて最後に実行した位置推定処理に基づく位置情報)を基準位置とし、その基準位置からの移動量を、水平加速度センサ3、気圧センサ4からの出力を組み合わせて現在の位置を推定する。
【0026】
次いで、演算部8は、ステップS6の処理を開始してから所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS7)、経過していないと判断した場合(ステップS7;No)、ステップS6以降の処理を繰り返す。一方、演算部8は、ステップS7にて経過したと判断した場合(ステップS7;Yes)、及び、ステップS5にて出力信号の変動を検知しなかったと判断する場合(ステップS5;No)、加速度センサの出力に基づく電子機器1の位置推定の演算処理を実行し、本フローを終了する。
【0027】
ここで、上述した演算部8による、電子機器1が衝撃を受けたか否かを判断する手順(
図3のステップS5)と、気圧センサ4の出力に基づく位置推定処理を実行する時間(所定時間)を設定する手順(
図3のステップS7)と、について説明する。演算部8は、衝撃時に相当する鉛直加速度の大きさと各鉛直加速度の大きさに応じた時間(所定時間)とを対応付けたルックアップテーブルを、内部に備わるメモリに記憶している。そして、演算部8は、鉛直加速度を取得する都度、当該ルックアップテーブルを参照する。つまり、演算部8は、取得した鉛直加速度がルックアップテーブルに記載の鉛直加速度よりも小さい場合、電子機器1が衝撃を受けていないと判断する(ステップS5;No)。一方で、演算部8は、取得した鉛直加速度がルックアップテーブルに存在する場合(予め定めた範囲を超えた場合)、電子機器1が衝撃を受けたと判断し(ステップS5;Yes)、当該鉛直加速度に対応する時間をルックアップテーブルより抽出して、当該時間をステップS7に係る所定時間に設定する。なお、所定時間は、上述のように、演算部8が衝撃によって発生した鉛直加速度の大きさに応じてその都度自動的に最適な値をルックアップテーブルより抽出することで、最も適切な時間に設定することも可能であるし、あらかじめユーザが適宜に設定できるようにしておいても良い。
【0028】
このような構成と駆動方法を組み合わせることで本実施形態に係る電子機器1は、屋内などでGPSによる位置推定が不可能な場所で使用され、且つ衝撃を受けて鉛直加速度センサ2の出力が正しい加速度を示さない時間帯においても、気圧センサ4の出力を利用することで高精度での現在位置推定が可能となる。
【0029】
(第2の実施形態)
次いで、本発明の第2の実施形態に係る電子機器について
図3から
図5を用いて説明する。ここで、第2の実施形態に係る電子機器の構成は、
図1に示した第1の実施形態に係る電子機器と同一であるので、説明を省略する。
図4は、第2の実施形態に係るセンサ部10の出力信号の時間変化を示す図である。
図4(a)は鉛直加速度センサ2の出力である鉛直加速度aの時間tに対する変化の様子を、
図4(b)は気圧センサ4の出力である気圧pの時間tに対する変化の様子をそれぞれ示す。
【0030】
本実施形態に係る電子機器1では、鉛直加速度センサ2の出力である鉛直加速度aの値が位置推定に利用可能な値であるかどうかを演算部8が判定する基準、すなわち
図3におけるステップS5を実行する基準として、加速度の上限amaxと下限aminがあらかじめメモリ等に設定される。つまり、通常の駆動時には鉛直加速度センサ2の出力がaminからamaxのあいだで推移する一方、電子機器1が衝撃を受けた瞬間、上記出力がaminを下回る、あるいはamaxを上回る場合(予め定めた範囲を超えた場合)がある。この場合、その後の鉛直加速度センサ2の出力は、実際に電子機器1が受けている加速度とは無関係な値を示してしまう。そこで、本実施形態に係る電子機器1において、演算部8は、上記
図3のステップS5にて、上記鉛直加速度センサ2の出力がaminからamaxのあいだで推移するか否かの判断を行うものとする。
【0031】
なお、加速度の上限amaxと下限aminは、電子機器1を製造した時点で設定することも可能であるが、電子機器1を駆動する際に適宜変更できるようにすることも可能である。また、演算部8は、amaxとaminの設定値に関する所定の学習機能を有し、電子機器1の駆動中にamaxとaminの値の変更を繰り返すことで、位置推定に利用可能な鉛直加速度の数値範囲を最適化させることも可能である。
【0032】
ここで、
図5は電子機器1の駆動中にamaxとaminの値の変更を繰り返す場合の演算フローを示す。
図3と同一の処理には同一符号を与える。
図3との差異は、演算部8が位置推定を行うステップ(S8)の後で、amaxとaminの値の変更が必要か判断し、必要であれば変更する(ステップS9)点である。
【0033】
このような構成と駆動方法を組み合わせることで本実施形態に係る電子機器1においては、第1の実施形態に係る電子機器に比べて一層高精度での位置推定が可能となる。
【0034】
(第3の実施形態)
次いで、本発明の第3の実施形態に係る電子機器について説明する。ここで、第3の実施形態に係る電子機器の構成は、
図1に示した第1の実施形態に係る電子機器と同一であるので、説明を省略する。
図6は、第3の実施形態に係るセンサ部10の出力信号の時間変化を示す図である。
図6(a)は鉛直加速度センサ2の出力である鉛直加速度aの時間tに対する変化の様子を、
図6(b)は気圧センサ4の出力である気圧pの時間tに対する変化の様子をそれぞれ示す。
【0035】
図6に示すように、電子機器1は、初期状態t=0で第1の実施形態と同じく静止状態にあるものとする。そして、この静止状態の後、時刻t1において電子機器1の自由落下が始まったものとする。ここで、
図6(a)において、時刻t1以降〜時刻t3では鉛直加速度aがゼロになり、電子機器1が自由落下状態にあることを示す。
【0036】
そして、電子機器1は、時刻t3において何らかの物体(たとえば床等)に衝突することで鉛直加速度aが瞬間的に大きな値を持ったものとする。すると、当該時刻t3〜時刻t2(時間帯dt)までは、鉛直加速度センサ2の出力が正しい加速度を示さなくなる。ただし、この時間帯dtにおいても気圧センサ4は床の外気圧p2を出力し続けているので、演算部8はこの気圧センサ4の出力値を利用することで正しい位置推定ができる。
【0037】
つまり、本実施形態に係る電子機器1において、演算部8は、鉛直加速度センサ2の出力がゼロとなる状態,当該ゼロとなる時間,当該時間経過後の気圧センサ4の出力,を検出することで、電子機器1の自由落下状態,当該自由落下の時間,落下後の気圧,に関する情報を把握ができるため、それらの情報を組み合わせることにより、落下距離を正確に算出することができる。
【0038】
このような構成と駆動方法を組み合わせることにより、電子機器1が自由落下した場合に衝撃に備える動作ができるだけでなく、落下後の位置推定が正確にできる。
【0039】
(第4の実施形態)
次いで、本発明の第4の実施形態に係る電子機器について説明する。ここで、第4の実施形態に係る電子機器の構成は、
図1に示した第1の実施形態に係る電子機器と同一であるので、説明を省略する。
【0040】
図7は、第4の実施形態に係るセンサ部10の出力信号の時間変化を示す図である。
図7(a)は鉛直加速度センサ2の出力である鉛直加速度aの時間tに対する変化の様子を、
図7(b)は気圧センサ4の出力である気圧pの時間tに対する変化の様子をそれぞれ示す。
図7に示すように、電子機器1は、初期状態t=0で第1の実施形態と同じく静止状態にあるものとする。そして、この静止状態の後、時刻t1において電子機器1の自由落下が始まったものとする。
図7(a)において、時刻t1以降〜時刻t3では鉛直加速度aがゼロになり、電子機器1が自由落下状態にあることを示す。
【0041】
そして、電子機器1は、時刻t3において何らかの物体(たとえば床等)に衝突することで鉛直加速度aが瞬間的に大きな値を持ったものとする。すると、当該時刻t3〜時刻t2(時間帯dt)までは、鉛直加速度センサ2の出力が正しい加速度を示さなくなる。さらに、本実施形態においては、
図7(b)に示すように、時刻t3以降に電子機器1が再度の落下を始め、時刻t4までは当該自由落下を継続する。この際、演算部8は、鉛直加速度センサ2が、
図7(b)に示すように、衝撃によって正確な鉛直加速度を示さない状態を継続しているため、当該鉛直加速度センサ2の出力から上記再度の落下を検出できずに落下時間も把握できない。他方、
図7(b)に示す気圧センサ4の出力は、この再度の落下の間であっても正確に高さ変化に対応した外気圧、すなわち初期位置ではp1、最初の落下位置ではp2、その後再度の落下位置ではp3、からなる有意な値を検出する。そのため、演算部8は、これらp1〜p3の値を利用することで、電子機器1が連続的に複数回の落下を行った場合であっても正しい位置推定ができる。
【0042】
このような構成と駆動方法を組み合わせることにより、電子機器1が短時間に繰り返し衝撃受けた場合であっても、衝撃後の位置推定が正確にできる。
【0043】
(第5の実施形態)
次いで、本発明の第5の実施形態に係る電子機器について説明する。ここで、第5の実施形態に係る電子機器の構成は、
図1に示した第1の実施形態に係る電子機器と同一であるので、説明を省略する。
【0044】
図8は、第5の実施形態に係るセンサ部10の出力信号の時間変化を示す図である。
図8(a)は鉛直加速度センサ2の出力である鉛直加速度aの時間tに対する変化の様子を、
図8(b)は気圧センサ4の出力である気圧pの時間tに対する変化の様子をそれぞれ示す。
図8に示すように、電子機器1は、初期状態t=0で第1の実施形態と同じく静止状態にあるものとする。そして、この静止状態の後、時刻t1において電子機器1の自由落下が始まったものとする。
図8(a)において、時刻t1以降〜時刻t3では鉛直加速度aがゼロになり、電子機器1が自由落下状態にあることを示す。
【0045】
そして、電子機器1は、時刻t3において何らかの物体(たとえば床等)に衝突することで鉛直加速度aが瞬間的に大きな値を持ったものとする。すると、当該時刻t3〜時刻t2(時間帯dt)までは、鉛直加速度センサ2の出力が正しい加速度を示さなくなる。さらに、第4実施形態(
図7)と同様に、時刻t3以降に電子機器1が再度の落下を始め、時刻t4までは当該自由落下を継続する。
【0046】
さらに、本実施形態においては、電子機器1は、時刻t4以降において、例えば、摩擦のある斜面を滑り落ちる場合などによって等速落下状態になるものと仮定する。ただし、
図8(a)に示すように、電子機器1が等速落下を開始した時刻t4において、鉛直加速度センサ2の出力が上記衝突の影響によってまだ正しい加速度を示さない状態にあるため、演算部8は電子機器1が等速落下していることを検出できない。鉛直加速度センサ2の出力が再び正しい加速度を示し始めるt2では初期状態と同じ出力を与えるが、電子機器1は落下し続けている。そのため、演算部8は、鉛直加速度センサ2の出力のみで位置推定処理を行うと、時間の経過とともに正しい位置からのずれ量が増加してしまう。他方、
図8(b)に示す気圧センサ4の出力は、自由落下や衝撃にも関わらず高さ変化に対応した外気圧、すなわち初期位置ではp1、最初の落下位置ではp2、その後再度の落下位置ではp3、更にはその後の等速落下状態においても正しい高さに対応した値を示す。そのため、演算部8は、電子機器1が衝撃を受けた後に等速移動状態になった場合、これらの気圧センサ4の出力値を利用することで正しい位置推定ができる。
【0047】
このような構成と駆動方法を組み合わせることにより、電子機器1が衝撃を受けた後に等速移動状態になった場合であっても、位置推定が正確にできる。