特許第6041388号(P6041388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041388
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】油圧モータ
(51)【国際特許分類】
   F03C 1/00 20060101AFI20161128BHJP
   F03C 2/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F03C1/00
   F03C2/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-85424(P2013-85424)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-206139(P2014-206139A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2015年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004330
【氏名又は名称】日本オイルポンプ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲 鉢 隆 次
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−184472(JP,A)
【文献】 実開平05−047628(JP,U)
【文献】 特開2003−127608(JP,A)
【文献】 特開平11−190412(JP,A)
【文献】 特開2009−293685(JP,A)
【文献】 実開昭63−177354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03C 1/00
F03C 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータハウジング(10)と、該モータハウジング(10)内に設けた出力軸(20)と、該モータハウジング(10)の端部に設けられ前記出力軸(20)をシールするオイルシール(OS)を嵌装したシールケース(40)とを有する油圧モータにおいて、前記シールケース(40)の外周部で且つ軸方向外側端部近傍にシールケース取り外し用凹部(40b)が形成されており、前記シールケース(40)は半径方向外方に突出した部分(40o)を有しており、該突出した部分(40o)の軸方向外側であるシールケース(40)の端部(40t)側にシールケース保持用のワイヤリング(8)が配置されており、前記モータハウジング(10)には該ワイヤリング(8)を装着するための溝(15)が形成され、当該溝(15)の軸方向位置は油圧モータ(100)の内圧が作用してもモータハウジング(10)が破損しない位置であり且つモータハウジング(10)の外側端面(14)よりも内側であり、モータハウジング(10)の端部(14)に円環状の隙間(δ)が設けられ、当該隙間(δ)の所に半径方向寸法が大きいざぐり部(16)が形成され、当該ざぐり部(16)からマイナスドライバ(Td)の先端をモータハウジング(10)内に侵入させてマイナスドライバ(Td)の先端をワイヤリング(8)の外側に当てることができ、前記シールケース取り外し用凹部(40b)の軸方向位置はワイヤリング(8)よりも外側の位置であることを特徴とする油圧モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧モータに関し、より詳細には油圧モータのシール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧モータにおける潤滑油の漏洩は、油圧モータ全体を交換しなければならない事態に直結する場合がある。その様な柔化露の漏洩を防止するためにオイルシールが設けられている。
そしてオイルシールの交換作業は、オイルシールの性能を維持して潤滑油の漏洩を防止のために、非常に重要な作業である。
【0003】
従来の油圧モータ100Jが図6で示されている。
油圧モータ100Jにおいて、シールSの交換に際しては、次の(1)〜(3)の手順が行われる。
(1)図6におけるボルトBを外し、
(2)図6におけるキーKを外し、
(3)図6におけるフランジFを、例えば、銅ハンマーで白抜きの矢印方向に叩いて、モータハウジングCから外す。
しかし、フランジFを外すと、部品(例えば、シャフトシールM)が落下して紛失の恐れがある。
また、軸受BRが外れて、シャフトSTが外れてしまう恐れもある。
さらに、ボルトBを外すに際しては六角レンチが必要となるが、油圧モータ100Jの設置場所に当該六角レンチが準備されていない場合が多い。
【0004】
図6で示す従来技術の欠点を解消するため、フランジとハウジングを一体化してモータハウジングを構成する油圧モータ100Kが存在する(図7)。
図7で示す油圧モータ100Kでは、フランジを外す必要がなく、シールケース40をモータハウジング10Jから外すことによりシール交換が可能である。
そして図7で示す油圧モータ100Kでは、シールケース40はスナップリングSRによりモータハウジング10Jに取り付けられている。
ここで、シールケース40をモータハウジング10Jから外すためには、スナップリングSRをモータハウジング10Jから取り外さなければならない。
しかし、スナップリングSRはプライヤ(図示せず)で取り外す必要がある。そして、スナップリングSRを図示しないプライヤによりモータハウジング10Jから取り外す作業は、モータハウジング10Jの端面(図7では上方の端面)に形成された微細な隙間からプライヤをモータハウジング10J内に入れなければならないため、非常に困難である。
【0005】
また、シールケース40をモータハウジング10Jから取り外す際に、シールケース40がモータハウジング10Jに対して傾斜してしまうと、傾斜したシールケース40の端部がモータハウジング10Jに当接して(いわゆる「こじれた」状態となり)、シールケース40が取り出せなくなってしまう。
従って、シールケース40がモータハウジング10Jに対して傾斜することなく取り出す必要があるが、そのためには、特別な治具が必要となり、少なからぬ労力が必要である。
【0006】
すなわち、油圧モータにおいて、フランジを外す手間が不必要で、且つ、シールケースが容易に取り外せるシール機構が望まれているが、その様なシール機構は未だに提案されていない。
【0007】
その他の従来技術として、慣性で回転している際のキャビテーションを防止して、作動油がハウジング外側に漏出することを防止する油圧モータが提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)は、作動油の通路および逆止弁の配置に関する技術であり、フランジを外す手間が不必要で且つシールケースが容易に取り外せるシール機構を提供するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−30547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、フランジを外す手間が不必要で、且つ、シールケースが容易に取り外せるシール機構を有する油圧モータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の油圧モータは、モータハウジング(10)と、該モータハウジング(10)内に設けた出力軸(20)と、該モータハウジング(10)の端部に設けられ前記出力軸(20)をシールするオイルシール(OS)を嵌装したシールケース(40)とを有する油圧モータにおいて、前記シールケース(40)の外周部で且つ軸方向外側端部近傍にシールケース取り外し用凹部(40b)が形成されており、前記シールケース(40)は半径方向外方に突出した部分(40o)を有しており、該突出した部分(40o)の軸方向外側であるシールケース(40)の端部(40t)側にシールケース保持用のワイヤリング(8)が配置されており、前記モータハウジング(10)には該ワイヤリング(8)を装着するための溝(15)が形成され、当該溝(15)の軸方向位置は油圧モータ(100)の内圧が作用してもモータハウジング(10)が破損しない位置であり且つモータハウジング(10)の外側端面(14)よりも内側であり、モータハウジング(10)の端部(14)に円環状の隙間(δ)が設けられ、当該隙間(δ)の所に半径方向寸法が大きいざぐり部(16)が形成され、当該ざぐり部(16)からマイナスドライバ(Td)の先端をモータハウジング(10)内に侵入させてマイナスドライバ(Td)の先端をワイヤリング(8)の外側に当てることができ、前記シールケース取り外し用凹部(40b)の軸方向位置はワイヤリング(8)よりも外側の位置となっている。
【0011】
ここで、シールケース取り外し用凹部(40b)はシールケース(40)の外周部の全周に形成された溝であっても良い。あるいは、円周方向に等間隔に配置された少なくとも2箇所の窪みであっても良い。
【0012】
して、溝(40b)の深さは、マイナスドライバが十分に引っ掛かり、且つ、シールケース(40)をモータハウジング(10)から外す際に、溝(40b)周辺部が破損しない深さであるのが好ましい。例えば、1mm〜3mm程度が好ましい
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明によれば、モータハウジング(10)は、図6の油圧モータ(100J)におけるハウジング(C)とフランジ(F)が一体になった構造であり、別途フランジを設ける必要がない。
そのため本発明によれば、シール交換の際にフランジが外れてしまうことがなく、油圧モータ内部の部品が落下して破損する恐れや、紛失する恐れがない。
また、フランジが外れた際に軸受が外れて、出力軸(20)が外れてしまう恐れもない。
さらに、フランジ固定用ボルトが不要であるため、フランジ固定用ボルトを取り外すために六角レンチを装備することが不要となる。
【0014】
また本発明によれば、ハウジング端面(14)における円環状の隙間(δ:図3参照)から2本のマイナスドライバ(Td)の先端をモータハウジング(10)内に侵入させて、シールケース取り外し用溝(40b)に引っ掛けて、2本のマイナスドライバ(Td)を回転或いは回動する(いわゆる「こじる」動作)ことにより、シールケース(40)を容易にモータハウジング(10)から取り外すことが出来る。
そして本発明によれば、2本のマイナスドライバ(Td)を同時に回転或いは回動することにより、シールケース(40)がモータハウジング(10)に対して傾斜することなく(いわゆる「こじれた」状態になることなく)、モータハウジング(10)から外すことが出来る
そのため、シールケース(40)を外す際に、特別な治具を用いる必要がない。
【0015】
本発明において、シールケース(40)に半径方向外方に突出した部分(シールケースの外周面40o)を形成し、当該突出した部分(40o)の半径方向外方と半径方向内方とに跨ってワイヤリング(8)を配置すれば、当該ワイヤリング(5)によりシールケース(40)がモータハウジング(10)に対して軸方向外側に移動することが防止される。そのため、シールケース(40)が油圧モータ(100)の内圧により軸方向外側に移動してしまうことはない。
そして、モータハウジングの端面(14)における円環状の隙間(δ)に半径方向寸法が大きい箇所(ざぐり部16)が形成されていれば、当該箇所(ざぐり部16)からマイナスドライバ(Td)の先端を油圧モータ内に侵入させて、前記ワイヤリング(8)を嵌合している溝(14)から容易に取り外すことが出来る。その結果、プライヤを用いる必要がなくなる。
【0016】
そして本発明によれば、オイルシール交換のために余計な部品や設備を備える必要がないので、オイルシール交換のためのコストを軽減することが出来る。
それと共に、部品点数を減少して、油圧モータの重量を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態の断面図である。
図2図1のY矢視図である。
図3図2のX1−X1矢視断面図であって、図1の要部拡大断面図である。
図4図2のX1−X1矢視断面図であって、ワイヤリングを取り外す状態を示す説明図である。
図5図2のX1−X1矢視断面図であって、シールケースを取り外す状態を示す説明図である。
図6】従来の油圧モータの断面図である。
図7】従来の油圧モータであって、図6とは異なるタイプの油圧モータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
先ず、図1図3を参照して、図示の実施形態に係る油圧モータのシール機構を説明する。
【0019】
図1において、本発明の実施形態を適用した油圧モータ100は、モータハウジング10と、出力軸20と、スペーサプレート50と、ジローラアッシ60と、エンドカバー70を備えている。
モータハウジング10は、出力軸挿入部11と、スラストベアリング5を収容するスラストベアリング装着部12と、シールケース装着部13を有している。これらの箇所は、出力軸挿入部11、スラストベアリング装着部12、シールケース装着部13の順に内径が大きくなる。そして、出力軸挿入部11、スラストベアリング装着部12、シールケース装着部13は連続して形成されている。
シールケース装着部13は、ハウジングの端面14(出力軸20が突出している側:図1の上方)に開口している。
【0020】
出力軸20は、ドライブ収容部21と、シールケース係合部22と、出力軸部23を有している。
出力軸20におけるドライブ収容部21の中心には、回転力を発生するドライブ7を収容するドライブ収容室21cが形成されている。
出力軸20におけるシールケース係合部22は、後述するシールケース40の内周面40iと回転自在に係合するように形成されている。
出力軸20における出力軸部23には、キー3と係合するキー溝23kが形成されている。
【0021】
図3において、シールケース40の内周面40i側の上端部(出力軸20が突出する側の端部図3)にはダストシール装着部41が形成され、シールケース40の内周面40i側の下端部(ダストシール装着部41から離隔した側)にはオイルシール装着溝42が形成されている。
シールケース40の外周側には、図3の上端面40tから下方に向って順番に、鍔部40a、シールケース取り出し用溝40b、第1のテーパー部40c、ワイヤリング当接面40d、外周面40o、第2のテーパー部40eが形成されている。
外周面40oの外径は、シールケース40における最大径である。
【0022】
第1のテーパー部40cは、シールケース取り出し用溝40bの図3における下方の側部からワイヤリング当接面40dに向って、径が大きくなる(拡径する)テーパー面として形成されている。
ワイヤリング当接面40dは、後述するワイヤリング8に当接することにより、例えばモータハウジング10の内圧によりシールケース40が(モータハウジング10の)シールケース装着部13から外れてしまうことを防止している。
第2のテーパー部40eは、シールケース40をモータハウジング10のシールケース装着部13に装着(嵌合)する際に、挿入し易いように設けられている。
【0023】
図示の実施形態では、従来技術におけるスナップリングに代えて、ワイヤリング(ストップリング)8を採用している。ワイヤリング8であれば、人手で簡単にモータハウジング10に嵌装することが出来る。
モータハウジング10におけるシールケース装着部(円筒状の内周面)13には、断面形状が半円のワイヤリング装着溝15が円周方向全周に亘って形成されている。そしてワイヤリング8がワイヤリング装着溝15に嵌合している。換言すれば、ワイヤリング8は、シールケース40の半径方向外方に突出した部分である外周面40oの軸方向外側(図3では上側)に配置されている。
図3において、スラストベアリング装着部12とシールケース装着部13の境界から、ワイヤリング装着溝15の中心点までの距離(図3における高さ方向寸法)Hwは、符号Hsで示す寸法にワイヤリング8の半径の寸法と公差を加えた値に等しいことが好ましい。ここで、符号Hsで示す寸法は、シールケース40における外周面40oの高さ方向寸法と、第2のテーパー部40eの高さ方向寸法を加算した数値である。
【0024】
図2図3において、モータハウジング10のシールケース装着部(円筒状の内周面)13とシールケース40の鍔部40aの外周の間には、円環状の隙間δが形成されている。
そして、シールケース装着部(円筒状の内周面)13の少なくとも1箇所(図示の実施形態では2箇所)にはざぐり部16が形成されており、ざぐり部16においては円環状の隙間δが拡大されている。
ざぐり部16のハウジング端面14からの深さは、図3において、ざぐり部16の底面がワイヤリング装着溝15の下端と面一となる様に設定されている。
【0025】
図示の実施形態においてシールケース40をモータハウジング10から外すには、ワイヤリング8をワイヤリング溝15から取り外さなくてはならない。ここで、ワイヤリング8は、シールケース40がモータハウジング10から脱落するのを防止するために設けられている部材である。
ワイヤリング8をワイヤリング溝15から取り外すには、最初に、図4で示すように、マイナスドライバTdの先端をざぐり部16からモータハウジング10内に侵入せしめ、マイナスドライバTdの先端をワイヤリング8の外側にあてがう。
その状態で、マイナスドライバTdの先端から離隔した箇所をざぐり部16の上縁16tに当接させ、マイナスドライバTdを矢印R方向に倒せば、マイナスドライバTdが「てこ」として作用し、ワイヤリング8を溝15から容易に外すことが出来る。
そのため図示の実施形態では、シールケース40をモータハウジング10から外す際に、プライヤを使用する必要がない。
【0026】
ここで、ざぐり部16はワイヤリング8を取り外すために、少なくとも一カ所形成されていれば良い。そして、図2で示すように、図示の実施形態ではざぐり部16は一カ所のみ形成されている。
図示はされていないが、ざぐり部16を複数(例えば2カ所)に形成することも可能である。
なお、ざぐり部16は基本的にはワイヤリング8を取り外すために形成されており、図5で後述するシールケース40の取り外しのために形成されたものではない。シールケース40の取り外しは、前述の環状隙間δから2本のマイナスドライバTdの先端を侵入させることにより行われる。ただし、シールケース40の取り外しのためにざぐり部16を用いることも可能である。
【0027】
発明者は、ワイヤリング8により、シールケース40がモータハウジング10内部の圧力(例えば、押圧力に換算して1.8t程度の内圧)に耐えて、図1で示す状態に維持出来るか否かを検討した。
その結果、ワイヤリング8を採用しても強度上問題がないことは確認できた。発明者の実験では、押圧力に換算して4t程度の内圧が作用しても、ワイヤリング8は破壊されず、シールケース40がモータハウジング10から外れてしまうことはなかった。
【0028】
ここで、モータハウジング10内部の圧力(内圧)は、ワイヤリング8を介して、モータハウジング10(鋳造製品)の端面側(図3では上端面側)に作用する。
ワイヤリング8を装着した箇所がハウジング上端面14に近接し過ぎていると、ワイヤリング8を介してモータハウジング10内の内圧がハウジング上端面14近傍の領域に作用して、モータハウジング10の端面(図3では上端面)における箇所14B(図3参照)が破損してしまう恐れがある。
【0029】
図示の実施形態においては、ワイヤリング8の軸方向位置は、(ワイヤリング8を介してモータハウジング10に作用する)内圧が作用してもモータハウジング10が破損しない様な位置となっている。換言すれば、ワイヤリング8の軸方向位置は、内圧が作用してもモータハウジング10が破損しない程度に、モータハウジング10における端面14(図3の上端面)よりもモータハウジング10の内側(図3では下側)に位置している。
【0030】
ワイヤリング8を外した後、図5で示すように、2本のマイナスドライバTdを用いてシールケース40をモータハウジング10から取り外す。
詳細には、2本のマイナスドライバTdの先端を環状隙間δ(図2参照)から侵入させて、ワイヤリング溝40bに引っ掛けて、矢印Rの方向にこじることにより、シールケース40がモータハウジング10から簡単に外すことが出来る。
発明者の実験では、9.8N〜29.4N程度の力でシールケース40がモータハウジング10から引き出されることを確認している。
【0031】
2本のマイナスドライバTdの先端は、図5の左側の領域で示すように、ハウジング端面14における円環状の隙間δ(図2参照)から侵入して、シールケース40に形成された溝40bに係合する。
ここで、単一のマイナスドライバTdのみを溝40bに係合した状態で、当該単一のマイナスドライバTdを矢印Rの方向にこじると、シールケース40がモータハウジング10に対して傾斜してしまい(いわゆる「こじれた」状態となり)、モータハウジング10から外れなくなる恐れがある。
そのため、少なくとも2本のマイナスドライバTdを用いて、同時にこじる必要がある。
【0032】
マイナスドライバTdの先端はモータハウジング端面14における円環状の隙間δから侵入させるが、図5の右側の領域で示すように、一方のマイナスドライバTdの先端を、ざぐり部16を経由してモータハウジング10内に侵入させることも出来る。
その場合には、ざぐり部16を経由する側のマイナスドライバTd(図5の右側)は、モータハウジング端面14に対する傾斜角度が小さくなるので、マイナスドライバTdを「てこ」として利用するのに好都合である。
図示はされていないが、ざぐり部16を、出力軸20の中心点に対して点対称の位置に2箇所形成して、シールケース40をモータハウジング10から外す際には、2本のマイナスドライバTdの先端が2カ所のざぐり部16をそれぞれ経由して溝40bに係合する様に構成することも可能である。
【0033】
ここで、溝40bは、浅すぎるとマイナスドライバTdが引っかからない。
一方、溝40bが深すぎるとシールケース40をモータハウジング10から外す際に、シールケース40における溝40b周辺の領域が破損する恐れがある。
すなわち、溝40bの深さは、マイナスドライバTdが十分に引っ掛かり、且つ、シールケース40をモータハウジング10から外す際に、溝40bの周辺部が破損しない深さであるのが好ましい。
発明者の実験によれば、例えば1mm〜3mm程度であれば、マイナスドライバTdが十分に引っ掛かり、マイナスドライバTdによりシールケース40を外す操作が良好に行われ、且つ、モータハウジング10の溝40bの周辺部が破壊しない程度の強度が得られることが確認されている。
【0034】
溝40bの軸方向位置については、ワイヤリング8よりも外側(図1図3図5では上方)の位置が適切である。
溝40bの軸方向位置がワイヤリング8よりも内側(図1では下方)であると、シールケース40の外周面40oが油圧モータの内側(図1の下方)にえぐれた形状となってしまい、強度が不足する可能性がある。
【0035】
シールケース取り外し用の溝40bは、シールケース40の半径方向外周面の円周方向に延在しているが、当該溝40bに代えて、円周方向に等間隔に配置された少なくとも2箇所の窪み(図示せず)を形成しても良い。
図示しない2箇所の窪みに2本のマイナスドライバTdの先端を引っ掛けても、シールケース40をモータハウジング10から外すことが出来る。
【0036】
図示の実施形態によれば、油圧モータ100のモータハウジング10は、図6におけるケーシングCとフランジFが一体になった構成なので、別途にフランジを設ける必要がない。
そのため、シール交換の際に、フランジが外れて油圧モータ内部の部品が落下して紛失する恐れがない。
また、フランジが外れた際に軸受が外れて、出力軸20が外れてしまう恐れもない。
さらに、フランジ固定用ボルトが不要であるため、フランジ固定用ボルトに用いられた六角レンチが不要となる。
【0037】
図示の実施形態において、シールケース40に半径方向外方に突出した部分(シールケースの外周面)40oを形成し、シールケースの外周面40oの軸方向外側(シールケース40の端面40t側)にワイヤリング8を配置しているので、当該ワイヤリング8により、シールケース40がモータハウジング10に対して軸方向外側に移動することが防止される。そのため、シールケース40が油圧モータ100の内圧により軸方向外側に移動してしまうことはない。
そして、モータハウジングの端面14における円環状の隙間δに半径方向寸法が大きい箇所(ざぐり部)16が形成されているので、当該箇所(ざぐり部)16からマイナスドライバTdの先端を油圧モータ内に侵入させて、前記ワイヤリング8を嵌合している溝15から容易に取り外すことが出来る。その結果、プライヤを用いる必要がなくなる。
【0038】
そして図示の実施形態によれば、ワイヤリング8を溝15から取り外した後、ハウジング端面14における円環状の隙間δから2本のマイナスドライバTdの先端をモータハウジング10内に侵入させて、シールケース取り外し用溝40bに引っ掛けて、2本のマイナスドライバTdを回転或いは回動する(いわゆる「こじる」動作)ことにより、シールケース40を容易にモータハウジング10から取り外すことが出来る。
そして、2本のマイナスドライバTdを同時に回転或いは回動することにより、シールケース40がモータハウジング10に対して傾斜することなく(いわゆる「こじれた」状態になることなく)、モータハウジング10から外すことが出来る
そのため、シールケース40を外す際に、特別な工具が不要となる。
【0039】
図示の実施形態によれば、オイルシール交換のために余計な部品や設備を備える必要がないので、オイルシール交換のためのコストを軽減することが出来る。
それと共に、部品点数を減少して、油圧モータの重量を軽減することが可能となる。
【0040】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0041】
8・・・ワイヤリング
10・・・モータハウジング
12・・・スラストベアリング装着部
13・・・シールケース装着部
14・・・ハウジング端面
15・・・ワイヤリング溝
16・・・ざぐり部
20・・・出力軸
40・・・シールケース
40a・・・鍔部
40b・・・シールケース取り出し用溝
40o・・・外周面
41・・・ダストシール装着部
42・・・オイルシール装着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7