(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6041413
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】まくわうりの果実を使用した冷菓の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 9/32 20060101AFI20161128BHJP
A23G 9/44 20060101ALI20161128BHJP
A23G 9/52 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
A23G9/02
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-76148(P2016-76148)
(22)【出願日】2016年3月17日
【審査請求日】2016年3月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316003092
【氏名又は名称】渡辺 恵美
(74)【法定代理人】
【識別番号】316003081
【氏名又は名称】渡辺 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恵美
(72)【発明者】
【氏名】堀江 紗希
(72)【発明者】
【氏名】林 咲良
(72)【発明者】
【氏名】中田 真佑
(72)【発明者】
【氏名】大竹 菜海
(72)【発明者】
【氏名】久保田 莉彩
(72)【発明者】
【氏名】河崎 くるみ
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 菜己
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 恭子
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 鼓太朗
【審査官】
小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】
タカナシ「北海道アイスクリームメロン」2リットル,[online],2011年8月6日,2016年 6月 7日,検索日,インターネット,<URL: http://www.takanashi-milk.com/shopdetail/026000000014/>
【文献】
「マクワウリ」アイスできた!今春販売へ、岐阜農林高生が開発/岐阜県,朝日新聞,2014年 1月 9日,朝刊,p.29
【文献】
マクワウリをアイスに 甘い香り さわやかな味 岐阜農林高が栽培、開発=岐阜,中部読売新聞,2014年 1月10日,朝刊,p.21
【文献】
遠景近景 この一週間の地域ニュース 中濃版 ふるさとテーマ 親子展,中日新聞,2014年 1月12日,朝刊 地方版(岐阜総合版),p.23
【文献】
メロンアイスクリーム,[online],2015年9月23日,2016年 6月 7日,検索日,インターネット,<URL: http://cookpad.com/recipe/3420909/>
【文献】
フルーツアイスクリーム 親子でたのしく 明治デイリーズレシピ,[online],2008年12月1日,2016年 6月 7日,検索日,インターネット,<URL: http://www.meiji-recipe.jp/recipe/0310.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00− 9/52
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
まくわうりの果実を急速冷凍させ、−18℃以下で保存して−3〜−5℃の状態に解凍して果皮を除去し、果肉、ワタ(繊維)、種子の部分をカットし、該カットしたものをスムージー状のペーストにした後に種子を除去し、乳製品、糖類を調合したアイスの原料に15〜25%混合し、凍結・攪拌したことを特徴とするまくわうりの果実を使用した冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はまくわう
りの果実を使用した冷
菓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、メロン等の果実は、食味の悪化などのため、加工する前に種子を除去する方法が一般的であった。また、果肉よりワタ(繊維)部の方が味や香りなどが強いが、ワタ(繊維)は、異物感がある種子の部分と一体になっており種子のみを除去するのは困難である。そのため、種子を除去することで香りの強いワタ(繊維)の部分も同時に除去されていた。
【0003】
いちごやみかんなど果物の多くは特許文献2に開示されているように、凍結して使用することもできる。しかし、中心に種子があるメロン等の果実は種子を除去してから加工・冷凍することが一般的である。
【0004】
また、タンパク質分解酵素を含むメロン等の果実は、アイスクリームやヨーグルトなどの乳製品の原料に混合すると、酵素が乳製品のタンパク質を分解して苦味のあるペプチドに変化するため、加熱して使用する。
【0005】
まくわうりもメロンの
近縁種であるため、メロンと同様にアイスクリームやヨーグルトなどの乳製品の原料に混合すると、酵素が乳製品のタンパク質を分解して苦味のあるペプチドに変化するため、加熱して使用する。
【0006】
一般的に、まくわうりを含むメロン類は上述した理由によりシャーベットとして製造される。一部アイス類はあるが、熱を加えタンパク質分解酵素の働きを失活させる方法である。加熱する事で味や香り、食感などのいわゆる風味が劣化し、特に香りが大きく損なわれる。そこで、加熱により損なわれた味や香りなどの風味を補うために人工香料などの添加物を使用することが一般的な技術である。
【0007】
タンパク質分解酵素は氷点下の温度になると酵素が働かなくなる。しかし、氷点下ではなくなると酵素が働き出すため、味や香りなどのいわゆる風味が変化する。そのため製造・輸送・販売時に大きく温度変化した場合、品質の変化の可能性がある。また、凍結させると加工性が悪くなるため、凍結して製造する方法は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−063246号公報
【特許文献2】特表2000−504589号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】牛乳やヨーグルトに混ぜてはいけない果物 パイナップルなど http://news.livedoor.com/article/detail/10042550/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
まくわう
りの果肉とワタ(繊維)の全てを使用し、種子のみ除去することでまくわう
りの果実の特徴である香りを生かした、香りや味などのいわゆる風味を最大限に引き出した冷菓(この場合アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス
)の製造方法。
【0011】
タンパク質分解酵素を含むまくわう
りの果実を凍結させて使用することで、酵素の働きを抑え、乳製品に混合しても苦味の発生を防ぐことができる冷
菓の製造方法。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は乳製品、糖類を調合したアイスの原料の重量に対して、スムージー状のペーストにしたまくわう
りの果実を15〜25%配合することで、まくわう
りの果実を使用した冷菓を構成している。
【0013】
まくわう
りの果実を急速冷凍させ、−18℃以下で保存し、−3〜−5℃の状態に解凍して果皮を除去し、果肉、ワタ(繊維)、種子の部分をカットする。カットしたものをスムージー状のペーストにした後に種子を除去し、乳製品、糖類を調合したアイスの原料に15〜25%混合することで、まくわう
りの果実を使用した冷菓の製造方法を構成している。
【0014】
具体的に上記発明は以下の通りである。
【0015】
洗浄したまくわう
りの果実を−35℃で120分急速冷凍した後、−18℃以下の状態で保存する。
【0016】
まくわう
りの果実の果皮以外の果肉、ワタ(繊維)、種子を含む全ての部分を使用する。
【0017】
凍結したまくわう
りの果実を−3〜−5℃の状態にして皮を剥き、カットしたものをブレンダーなどで粉砕・攪拌し、スムージー状のペーストを製造する。
【0018】
凍結する前に果実の皮を剥くことも可能だが、凍結する前に皮を剥くと、スムージー状のペーストを製造する際に果汁の損失が増えるため、凍結した後に皮を剥いた方が、加工性が高くなる。
【0019】
スムージー状のペーストにした後に、裏ごしして種子を除去する。
【0020】
アイスの原料に、上記の条件を満たしたまくわう
りの果実のスムージー状のペーストを20%配合し、凍結・攪拌する。
【発明の効果】
【0021】
まくわう
りの果実を凍結させ、冷菓に使用するためタンパク質分解酵素の働きを抑えることができる。
【0022】
なおかつ本来廃棄するワタ(繊維)を無駄なく使用することで、まくわう
りの果実の味や香りなどのいわゆる風味を生かした冷菓が製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】まくわうりの果実の風味を生かした冷菓の製造工程を示した説明図である。
【
図2】まくわうりの風味を生かした冷菓の製造に使用されるまくわうりの切断された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の製造工程を、
図1のまくわうりの冷菓の製造方法の一例を示したフローチャートに従って説明する。
【0025】
まくわうりを−35℃で120分急速冷凍処理し、−18℃以下の低温状態で保存した後、凍結した状態で加工し冷菓を製造することで、急速冷凍の本来の目的である、品質を保つだけでなくタンパク質分解酵素の働きが停止した状態で加工することができる
。
【0026】
急速冷凍させた果実は、加工するまで−18℃以下で保存しておく。タンパク質分解酵素を含む果実は酵素の働きを停止するために加熱するが、加熱すると味や香りなどの風味が損なわれる。損なわれた味や香りなどの風味補うのに添加物や人工香料を使うため、自然な味や香りが得られない。凍結させることでタンパク質分解酵素の働きを抑える事ができる。また、氷点下の温度で保存することで香りの揮発、味や香りなどの風味の変質を防ぐことができるため、添加物や人工香料を使わずにまくわう
りの果実の自然な味や香りなどの風味を生かした冷菓が得られる。
【0027】
冷菓を製造する際、−18℃以下で保存されていた果実を次亜塩酸ナトリウム100ppmの入った水に10分間浸し、殺菌するのと同時に−3〜−5℃の状態にする。−3℃〜−5℃の状態にすることで皮むきや果実の裁断の加工が可能となる。
図2のまくわうりの斜視図を用いて説明する。皮むきは果皮1を剥くことである。また、ワタ(繊維)3と種子4が果肉2と分離しないまま、冷菓を製造することができる。そのため、常温で使用する場合よりも果汁の損失が軽減され、味や香りなどの風味が強化することができる。−6℃以下では凍結しているため、皮むきやカットなどの加工性が悪い。−2℃以上の温度では果汁の損失が多く、味や香りなどの風味が弱くなる。これは表1まくわうりを使用した温度の変化による加工性と風味を示した実験結果に基づくものである。
【0029】
まくわう
りの果実の香りは、中心部にあるワタ(繊維)3の方が強いため、果肉2とワタ(繊維)3の部分を使用することで、冷菓中のまくわうりなどの味や香りなどの風味が向上する。ワタ(繊維)3を除去した場合、味や香りなどの風味が、ワタ(繊維)3を使用した場合よりも弱くなる。これは表2のまくわうりを使用したワタ(繊維)の有無による評価を示した実験結果に基づくものである。
【0031】
−3〜−5℃の状態になった、まくわう
りの果実の果皮1を除去し、果肉2、ワタ(繊維)3種子4を含む全ての部分を分離させず、50mm程度にカットする。
【0032】
カットした果実をブレンダーなどでスムージー状のペーストになるまで粉砕・攪拌する。
【0033】
まくわう
りの果実のスムージー状のペーストを裏ごしして、種子4を除去する。スムージー状のペーストに加工した後に種子4を除去することで、風味の強いワタ(繊維)3の部分を余すことなく使用し、異物感の原因である種子も除去できるため、まくわう
りの果実の風味が向上する。
【0034】
まくわう
りの果実のスムージー状のペーストをアイスの原料の重量に対して15〜25%の重量を計量する。
【0035】
乳製品、糖類を調合して作られるアイスの原料に、まくわう
りの果実のスムージー状のペーストを15〜25%配合することで、風味と味のバランスが良い冷菓となる。特に20%の場合では、風味と味のバランスが最も良い。5%の場合は味や香りが弱く、10%の場合も香りが弱いという結果になった。これは表3のまくわうりの配合割合による食味調査の実験結
果によるものである。
【0038】
混合する際は、アイスクリームフリーザーにアイスの原料投入後スイッチを入れ、アイスの原料の温度が−3〜−5℃になったら、計量したまくわう
りの果実のスムージー状のペーストを入れる。このことは果実とアイスの原料の温度と同じなので、酵素が反応するのを防ぐことができる。
【0039】
さらに攪拌・凍結させ約−7.5℃程度まで凍結し、機械から取り出す。
【0040】
容器に詰め、ふたをして急速冷凍で−35℃の状態で硬化させる。
【0041】
本発明は製造工程中にタンパク質分解酵素を含む果実が常温になることがなく、酵素がアイスの原料中のタンパク質と反応しない。また、保存・輸送・販売における状況で、輸送技術の発展により、タンパク質分解酵素が反応しない温度を維持したまま移動することが可能となるため、苦味が生じるのを防ぐことができる。
【0042】
上記の製造方法によれば、−18℃以下で保存し、−3〜−5℃の状態にしたまくわうりをカットし、果皮1以外の果肉2、ワタ(繊維)3、種子4を含む全ての部分を、ブレンダーなどでスムージー状のペーストにした後に裏ごしして種子4を除去することで、まくわうりの果実の味や香りなどの風味を引き出した冷菓となる。また、まくわうりを凍結させることでタンパク質分解酵素の働きを抑え、アイスの原料に混合しても苦味の発生を防ぎ、まくわうりの果実を使用した冷菓の製造ができる
。
【0043】
メロンは甘味などの味が特徴のため、メロンの味を引き出すことを目的とした冷菓の製造をするが、まくわうりは味よりも強い香りが特徴のため、香りを生かすことを目的に冷菓の製造をする。味は冷たいと感じにくくなるので、甘味は冷菓にすると生の状態の時よりも弱く感じる。また、香りは冷菓にすることで揮発を防ぐことができるため、冷菓にした方が生の状態より香りを長く保持できる。そのためメロンは冷菓にした場合、味や香りなどの風味が弱くなり人工香料などで補う必要があるので、冷菓の製造には向いていない。まくわうりはメロンよりも甘味が少ないが、メロンよりも香りが強いので、冷菓の製造に向いている。
【実施例】
【0044】
生乳70.5%、生クリーム11.7%、グラニュー糖11.7%、脱脂粉乳5.9%、安定剤0.2%調合したアイスの原料を30〜70℃で加熱、68℃で30分間殺菌、0〜5℃に冷却し保管(エイジング)する。本技術を用いた、まくわう
りの果実のスムージー状のペーストを作成する。アイスの原料をアイスクリームフリーザーに投入し、−3〜−5℃になるまで凍結・攪拌する。作成したまくわう
りの果実のスムージー状のペーストをアイスクリームフリーザーに投入する。−7.5℃まで攪拌・凍結し、まくわう
りの果実の冷菓を製造する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明はまくわう
りの果実を使用した冷菓を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0046】
1 果皮
2 果肉
3 ワタ(繊維)
4 種子
【要約】
【課題】通常タンパク質分解酵素を含むまくわうりやメロン類はアイスを製造する際、原料中のタンパク質と反応し苦味が生じる。ワタは、味や香りが良いが種子と結合しており、種子を除去する際に合わせて除去するため使用することは困難である。アイスの原料中のタンパク質との反応を抑え苦味が生じるのを防ぎ、さらに味や香りが強いワタの部分を使用しまくわうりを含むメロン類の果実の風味を引き出した冷菓とその製造方法を提供する。
【解決手段】アイスの原料に凍結させたまくわうりを含むメロン類の果実を−3〜−5℃の状態に加工して配合する。果皮以外の果肉、ワタを含む全ての部分をブレンダーなどでスムージー状のペーストに粉砕・攪拌する。スムージー状のペーストにした後種子を除去し、アイスの原料に配合して製造することを特徴とする。また、アイスの原料にまくわうりを含むメロン類のスムージー状のペーストを20%配合する。
【選択図】
図1