特許第6041421号(P6041421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041421液体材料吐出機構および液体材料吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041421
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】液体材料吐出機構および液体材料吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20161128BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B05C11/10
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-59488(P2012-59488)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-192972(P2013-192972A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(72)【発明者】
【氏名】生島 和正
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−028906(JP,A)
【文献】 特開昭52−050340(JP,A)
【文献】 特開2003−300000(JP,A)
【文献】 特開2008−018310(JP,A)
【文献】 特開2004−181286(JP,A)
【文献】 特開2009−119352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00〜 3/18
7/00〜 9/08
B05C 5/00〜 5/04
7/00〜21/00
F16K 1/32
27/02
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを往復動作させる駆動部と、ロッドが軸通される液室およびノズルと連通するバルブシートを有する吐出部とを備え、バルブシートとロッド先端を離間することによりノズルから固体粒子混合液体を線状または滴状に吐出するディスペンサである吐出機構であって、
吐出部が、固体粒子混合液体を液室に流入させる流入路と、液室内の固体粒子混合液体を流出させる流出路を有し、
流入路および流出路がバルブシート近傍でV字状に接続され、
液室がV字の谷部に配置され、バルブシートがV字の下端をなす液室の下端に配置されること、
バルブシートの上面には、ロッド先端が当接される面積よりも広いすり鉢状面が形成されていることを特徴とする吐出機構。
【請求項2】
液室中心軸と流入路中心軸とがなす角と、液室中心軸と流出路中心軸とがなす角が同じ角度であることを特徴とする請求項1の吐出機構。
【請求項3】
流入路および/または流出路とバルブシートとが、実質的に段差が無く接続されていることを特徴とする請求項1または2の吐出機構。
【請求項4】
液室中心軸と流入路中心軸とがなす角と比べ、液室中心軸と流出路中心軸とがなす角が大きく、流出路とバルブシートとが、実質的に段差が無く接続されていることを特徴とする請求項1または2の吐出機構。
【請求項5】
液室中心軸と流入路中心軸とがなす角と比べ、液室中心軸と流出路中心軸とがなす角が小さく、流入路とバルブシートとが、実質的に段差が無く接続されていることを特徴とする請求項1または2の吐出機構。
【請求項6】
流入路、流出路およびロッドよりも幅広の液室が三つ股を構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの吐出機構。
【請求項7】
流入路中心軸と流出路中心軸とが上から見たときに直線状に接続されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの吐出機構。
【請求項8】
流入路中心軸と流出路中心軸とが上から見たときに角度をもって接続されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの吐出機構。
【請求項9】
液体配管と固定具で接続される前記流入路および前記流出路、並びに、前記液室を有する吐出ブロックを備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの吐出機構。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかの吐出機構と、
固体粒子混合液体を貯留する容器と、
固体粒子混合液体を圧送するポンプと、
前記吐出機構、容器およびポンプを接続して循環路を形成する液体配管と、を備える液体材料吐出装置。
【請求項11】
前記吐出機構の流入路と前記ポンプとが複数のレギュレータを介して接続され、前記吐出機構の流出路と前記容器とがレギュレータを介して接続されることを特徴とする請求項10の液体材料吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
固体粒子を混合した液体を均一に混合した状態に保つための構造を備える吐出機構および液体材料吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種液体材料を所定量ずつ取り分ける装置として、液体材料を貯留する容器を有し、この容器と接続するノズルから気体圧力または機械的圧力の作用により所定量ずつ吐出を行う「ディスペンサ」という装置が知られている。
ディスペンサで吐出を行う様々な種類の液体材料の中でも、特に、液体よりも比重の大きい固体粒子を混合した液体を吐出しようとした場合、時間が経過するにつれ固体粒子が容器の底部へ沈降したり、ノズル口付近へ凝集したりといったことが発生してしまう。これを防ぐためには、固体粒子が液体内に均一に混合した状態を保つように攪拌を行う必要がある。
【0003】
攪拌は、容器に攪拌装置を設けて実施することが一般的である。しかし、容器やそのすぐ近くにノズルを有する吐出機構を設けられず、容器と吐出機構とが離れている場合、容器と吐出機構とをつなぐ配管の途中で固体粒子の沈降などが発生してしまい、容器での攪拌では十分な効果が得られないことが多い。そこで、採用される別の攪拌方法の一つとして、容器と吐出機構との間に循環路を形成し、この循環路内で液体を常に流動させておくという方法がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、液状体を貯留する容器と、その容器内の液状体を攪拌する手段と、容器内の液状体を常時循環させるためのループ配管と、そのループ配管内に設けられ、液状体を圧送するためのポンプと、吐出口を有するノズルと、ループ配管とノズルとの連通を開閉するバルブとを備える循環式液状体吐出装置であって、バルブは、ループ配管の一部をなすほぼ水平に延在したほぼ直線の流路を有すると共に、流路の下側の内壁面に形成された弁座であって、弁座付近がその周辺の流路の内壁面よりも下方に位置することなく、流路の内壁面の最下端よりも高いレベルにある弁座を有し、さらに、流路とノズルとの連通を開閉し、その先端が流路を横切って弁座に接触するように形成されたリフト弁を有することを特徴とする循環式液状体吐出装置、が開示される。
【0005】
また、特許文献2には、インクが吐出されるノズル孔と、ノズル孔に加圧されたインクを供給するインク室と、インク室内に設けられていて、ノズル孔を開閉するニードル弁と、ニードル弁を駆動する駆動機構と、駆動機構を収容する駆動機構収容空間と、インク室と駆動機構収容空間とを隔離する弾性体隔膜とを備え、インク室内のインクに加えられる圧力と同程度の圧力が駆動機構収容空間内の気体又は液体に加えられるように構成されたことを特徴とするインクジェットノズルにおいて、加圧されたインクタンクが循環路を介してインク室と連結され、ポンプによりインクを循環させること、が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4377153号公報
【特許文献2】特許第4123897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の装置では、インク室の底面がインク入出力通路より低い位置にあるので、インク成分(固体粒子)が沈降、堆積しやすい。そして、これら沈降、堆積した固体粒子がノズル孔に達すれば、ノズル孔の詰まりや濃度の不均一、ニードル弁やノズル孔の損傷を引き起こすという問題がある。
この点、特許文献1の装置では、弁座が流路最下端よりも高いレベルにあるので、弁座の部分に対する沈降、堆積には一定の効果が認められる。しかしながら、弁座より低い位置にある部分へ固体粒子の沈降、堆積が生じ、沈降、堆積した固体粒子が剥離ないし舞い上げられ弁座の部分に到達することが考えられる。固体粒子の沈降、堆積は、弁座部分を急峻に隆起させた場合により顕著となる。
【0008】
また、ノズルと連通する液室(空間)にほぼ水平な流入管および流出管を接続して液体を循環させる構成においては、流入管および流出管を接続するための固定具(ナット等)が吐出作業に干渉する場合がある。すなわち、吐出口と液室との距離とが近い場合には、上記の固定具(ナット等)が吐出口より低い位置または吐出口と同等の高さに位置することとなり、例えば基板上の搭載素子に衝突するという問題が生じる場合がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決することができる液体材料吐出機構および液体材料吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、ロッドを往復動作させる駆動部と、ロッドが軸通される液室およびノズルと連通するバルブシートを有する吐出部とを備え、バルブシートとロッド先端を離間することによりノズルから固体粒子混合液体を線状または滴状に吐出するディスペンサである吐出機構であって、吐出部が、固体粒子混合液体を液室に流入させる流入路と、液室内の固体粒子混合液体を流出させる流出路を有し、流入路および流出路がバルブシート近傍でV字状に接続され、液室がV字の谷部に配置され、バルブシートがV字の下端をなす液室の下端に配置されること、バルブシートの上面には、ロッド先端が当接される面積よりも広いすり鉢状面が形成されていることを特徴とする吐出機構である。
第2の発明は、第1の発明において、液室中心軸と流入路中心軸とがなす角と、液室中心軸と流出路中心軸とがなす角が同じ角度であることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1または2の発明において、流入路および/または流出路とバルブシートとが、実質的に段差が無く接続されていることを特徴とする。
第4の発明は、第3の発明において、液室中心軸と流入路中心軸とがなす角と比べ、液室中心軸と流出路中心軸とがなす角が大きく、流出路とバルブシートとが、実質的に段差が無く接続されていることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明において、液室中心軸と流入路中心軸とがなす角と比べ、液室中心軸と流出路中心軸とがなす角が小さく、流入路とバルブシートとが、実質的に段差が無く接続されていることを特徴とする。
第6の発明は、第1ないし5のいずれかの発明において、流入路、流出路およびロッドよりも幅広の液室が三つ股を構成することを特徴とする。
【0012】
第7の発明は、第1ないし6のいずれかの発明において、流入路中心軸と流出路中心軸とが上から見たときに直線状に接続されることを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし6のいずれかの発明において、流入路中心軸と流出路中心軸とが上から見たときに角度をもって接続されることを特徴とする。
【0013】
第9の発明は、第1ないし8のいずれかの発明において、液体配管と固定具で接続される前記流入路および前記流出路、並びに、前記液室を有する吐出ブロックを備えることを特徴とする。
10の発明は、第1ないしのいずれかの発明に係る吐出機構と、固体粒子混合液体を貯留する容器と、固体粒子混合液体を圧送するポンプと、前記吐出機構、容器およびポンプを接続して循環路を形成する液体配管と、を備える液体材料吐出装置である。
11の発明は、第10の発明において、前記吐出機構の流入路と前記ポンプとが複数のレギュレータを介して接続され、前記吐出機構の流出路と前記容器とがレギュレータを介して接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出部内循環路における固体粒子の沈降、堆積の問題を解消することができる吐出機構および料吐装置を提供することが可能となる。
また、流入管および流出管を接続するための固定具(ナット等)が吐出作業に干渉する問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の循環機構を備える吐出装置を説明するブロック図である。
図2】実施形態で用いられる吐出機構を説明する断面図である。
図3】実施形態の循環機構を備える吐出装置の操作を説明するフローチャートである。
図4】吐出部内循環路の第一の変形例を説明する断面図である。ここで、(a)は液室中心軸と流入路中心軸とがなす角より液室中心軸と流出路中心軸とがなす角の方が大きい場合、(b)は、液室中心軸と流入路中心軸とがなす角より液室中心軸と流出路中心軸とがなす角の方が小さい場合を示す。
図5】吐出部内循環路の第二の変形例を説明する断面図である。ここで、(a)は流入路と流出路のなす角が180度の場合、(b)は流入路と流出路のなす角が鈍角の場合、(c)は流入路と流出路のなす角が直角の場合、(d)は流入路と流出路のなす角が鋭角の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
なお、以降の説明中で用いる「液体材料」は、特に断りのない限り、固体粒子が混合した状態の液体材料とする。
【0017】
[循環機構]
図1は、本実施形態の循環機構を備える吐出装置を説明するブロック図を示す。
本実施形態の循環機構2を備える吐出装置1は、液体材料5を貯留する容器4と、液体材料5を定量的に吐出する吐出機構3と、液体材料5を圧送するためのポンプ8とから主に構成されている。そして、これら機器の間は液体配管6で接続され、液体材料5が循環できるよう循環路を形成する。
【0018】
容器4は、循環路に組み込まれるために、流入口26と流出口27とを別々に有している。流出口27の先には、二方弁7が接続され、連通と閉鎖の切換を行う。容器4には、液体材料5を攪拌する攪拌機を設けてもよい。
本実施形態の吐出機構3は、弁体30を駆動してノズル48の連通孔46を開閉することにより液体材料5の吐出を行うニードルバルブ型の吐出機構を用いている。吐出機構3には、弁体30を駆動するための作動気体が、圧縮気体源18から第五のレギュレータ21により調圧された後に供給されている。また、動作を制御するために制御装置16と制御配線17によって接続されている。そして、液体材料5を循環させるため、流入路52と流出路53とを別々に有し、内部でノズル48へと連通する流路を形成している。吐出機構3のより詳細な説明は後述する。
【0019】
本実施形態のポンプ8は、ダイヤフラムポンプを用いている。ダイヤフラムポンプは、作動気体を供給することで作動し、作動気体の圧力を調整することで圧送する液体材料5の圧力を調整することができる。そのため、供給および停止や、調圧を自在に行える制御装置16を介して作動気体の供給を行う。作動気体の元となる圧縮気体源18は第六のレギュレータ22を介して制御装置に接続されている。本実施形態では、ダイヤフラムポンプを用いたが、これに限定されない。例えば、スクリューポンプ、ギアポンプ、プランジャポンプなどの(容積式)ポンプを用いることができる。
【0020】
ポンプ8と吐出機構3との間には、レギュレータが2つ(11、12)設けられている。これらのうち、第一のレギュレータ11は、弁の開度を調整することで圧力を調整する通常の減圧弁であるが、第二のレギュレータ12は、外部から作動気体を内部流路に面するダイヤフラムに作用させ、内部流路の開度を調整することで圧力を調整するレギュレータである。そのため、作動気体の元となる圧縮気体源18が第四のレギュレータ20を介して第二のレギュレータ12に接続されている。したがって、第四のレギュレータ20の圧力を調整することで、第二のレギュレータ12の圧力を調整することができる。そして、吐出機構3に流入する液体材料5の圧力(いわゆる吐出圧)の調整は、第二のレギュレータ12を調整することで行う。調整後の液体材料5の圧力を確認するには、第二のレギュレータ12と吐出機構3との間に設けた第一の圧力計14を用いる。上述の第二のレギュレータ12は内部にダイヤフラムを備えているため、ポンプ8による液体圧力の脈動をダイヤフラムの柔軟性により抑制することができ、液体圧力を安定させることができる。さらに、第一のレギュレータ11を第二のレギュレータ12の上流側に配設しているので、(減圧弁が元から備える作用により、)ポンプ8による液体圧力の脈動を抑制した液体材料5を第二のレギュレータ12へ導入することができ、より液体圧力を安定させることができる。液体圧力が安定することで、安定した定量吐出を行うこと、安定した循環を行うこと、固体粒子が液体に均一に混合した状態を保つことができる。
【0021】
ここで、前述の2つのレギュレータ(11、12)とポンプ8との間に三方弁9を設け、3つの口のうち1つを外部へと連通する口10としている。この外部へ連通する口10は、作業が終わった後や、違う種類の液体材料に入れ替える場合など、液体配管6内部を空にする際の排出口として用いる。また、空の液体配管6に液体材料5を入れる際の気泡抜き口として用いてもよい。通常は、この外部へ連通する口10は閉じておく。
【0022】
吐出機構3と容器4との間には、第三のレギュレータ13が設けられている。第三のレギュレータ13は、弁の開度を調整することで圧力を調整する通常の減圧弁である。この第三のレギュレータ13は、第三のレギュレータ13よりも吐出機構3側(上流側)に位置する液体配管6内の液体材料5の圧力を安定させる役割を果たす。これは、第三のレギュレータ13が液体材料5の流れをせき止めるように働き、流れを遅くさせることでポンプ8や吐出機構3による液体圧力の変動を抑制するという作用によるものである。調整後の液体材料5の圧力を確認するには、第三のレギュレータ13と吐出機構3との間に設けた第二の圧力計15を用いる。前述の2つのレギュレータ(11、12)の場合と同様に、液体圧力が安定することで、安定した定量吐出を行うこと、安定した循環を行うこと、固体粒子が液体に均一に混合した状態を保つことができる。
【0023】
[吐出機構]
本実施形態の吐出機構3の詳細について説明する。図2は、本実施形態で用いる吐出機構3の断面図である。以下の説明では、ストローク調整ネジ34側を「上」、ノズル48側を「下」ということがある。
本実施形態の吐出機構3は、弁体30を駆動してノズル48の連通孔46を開閉することにより液体材料5の吐出を行うニードルバルブ型の吐出機構であり、大きく分けて、弁体30を上下方向に駆動させる駆動部28と、駆動された弁体30の作用により液体材料5を吐出する吐出部29とから構成される。
【0024】
駆動部28は、弁体であるロッド30に固設されたピストン31が駆動部28内を上下方向に摺動自在になっており、ピストン31上側にはロッド30を下降駆動させるためのバネ32を収容するバネ室33が形成され、ピストン31下側にはロッド30を上昇駆動させるための圧縮空気を流入させる空気室38が形成されている。上記バネ32には圧縮コイルばねを用いている。また、バネ室33上部にはロッド30の移動を規制し、移動距離であるストロークを調整するためのストローク調整ネジ34が設けられている。ロッド30のストロークの調整は、調整ネジ34の外部に露出しているつまみ部35を回し、調整ネジ34の先端36を上下方向に移動させて、ロッド上端37と衝突するまでの距離を変えることで行う。ピストン31下側で、空気室38へ流入させる圧縮空気は、圧縮空気源18から切換弁39を介して駆動部28の空気流入口40より流入させる。圧縮気体源18と切換弁39との間には圧力調整のための第五のレギュレータ21が設けられている。また切換弁39には、電磁弁や高速応答弁などを用い、制御装置16にて開閉の制御をしている。ピストン31側面および空気室38下部のロッド30が貫通する部分には、空気室38に流入した圧縮空気が漏出しないようシール部材(41、42)がそれぞれ設けられている。
【0025】
吐出部29は、ロッド30が内部を昇降動可能な液室44、流入路52および流出路53を有する吐出ブロック59を備える。吐出ブロック59の上部にはロッド30が貫通する孔が設けられ、この部分には、液室44の液体材料5が漏出しないよう第三のシール部材43が設けられている。吐出ブロック59の下部には弁座であるバルブシート45と液体材料5を排出するノズル48が取り付けられている。バルブシート45には液室44とノズル48とを連通する連通孔46が中央を貫通して設けられている。また、バルブシート45上面にはすり鉢状面47が形成されており、ロッド先端51がこの面47の再奥部に当接或いはこの面47から離間して上記連通孔46を開閉することによって液体材料5がノズル48を通じて吐出される。すり鉢状面47は、ロッド先端51が当接する面積よりも広い面積とすることが好ましく、これにより固体粒子の沈降、堆積の問題は緩和される。
ノズル48には、バルブシート45の連通孔46と連通する管状部材49が貫設しておりバルブシート45の連通孔46を通って流れてきた液体材料5が、この管状部材49の内部を通って外部に排出される。上記バルブシート45とノズル48は、キャップ状部材50により液室44下端に着脱自在に固定されており、交換が容易になっている。
【0026】
流入路52および流出路53は、液体材料5を循環させるための流路であり、液室44および液体配管6に連通する。なお、以下では、流入路52と流出路53をまとめて吐出部内循環路ということがある。流入路52は、その一端がバルブシート45寄りの液室44側面へと連通しており、そこから液室中心軸56と流入路中心軸57とが鋭角をなすよう上に向かって延びている。そして、流入路52の他端は、流入管54を介して液体配管6と接続している。一方、流出路53は、その一端がバルブシート45寄りの液室44側面で、流入路52が連通している側面と対向する面と連通しており、そこから液室中心軸56と流出路中心軸58とが鋭角をなすように上に向かって延びている。そして、流出路53の他端は、流出管55を介して液体配管6と接続している。別の言い方をすると、流入路52と流出路53とがバルブシート45近傍を交点とするV字状をなして、V字の谷部分で液室44と連通している。本実施の形態では、液室中心軸56と流入路中心軸57とがなす角と、液室中心軸56と流出路中心軸58とがなす角とは同じ角度となるように形成している。加えて、上から見たとき、流入路52と流出路53とは同じ向きになるよう一直線に形成されている(図4(a)参照)。吐出部内循環路(流入路52と流出路53)が鋭角をなすよう上向きに形成されていることから、吐出ブロック59と液体配管6とを接続する固定具(ナット等)がワークに衝突するおそれがない。すなわち、流入路52の入口開口および流出路53の出口開口がノズル48よりも充分に高い位置にあるので、ノズルが短い吐出機構を採用することもできる。
【0027】
流入路52と流出路53の内部での液体材料5の流れは次のようになる。まず、流入側の液体配管6を通ってきた液体材料5は流入管54から流入路52へ流れていく。そして、液体材料5は流入路52中をバルブシート45へ向かって流れ下っていく。液体材料5の流れがバルブシート45上に到達すると、下りから上りへ向きを変え、流出路53へと流れていく。そして、液体材料5は流出路53中をバルブシート45から遠ざかるよう流れ上がっていき、流出管55を通って流出側の液体配管6へと流れ込む。このように、液体材料5をバルブシート45へ向かって角度をつけて流動させることで、バルブシート45近傍の液体材料5を舞い上げたり、押し流したりするよう作用し、バルブシート45や連通孔46に固体粒子が沈降、堆積することがなく、均一に混合した状態を保つことができる。
以上に説明した本実施形態の吐出機構3には、切換弁39のON/OFFや、ポンプ8への作動気体の供給/停止(図1参照)などを制御する制御装置16が接続される。
【0028】
上述した吐出機構3は、概略、次のような動作をする。ここで、ロッド30がバルブシート45に接し、連通孔46を閉鎖している状態(図2に図示した状態)を初期状態とする。
まず、切換弁39へ動作開始信号が送信されると(ONになると)、弁が切り換わって圧縮空気が空気室38へ流入し、バネ32を圧縮しながら、ピストン31を持ち上げ、それに伴いロッド30が連通孔46を開放する。すると、液体材料5は、管状部材49を通ってノズル48先端から排出される。そして、設定時間経過後、切換弁39への動作信号が切られると(OFFになると)、弁が切り換わって空気室38内の圧縮空気を大気中へ放出し始め、バネ32の反発力によってピストン31が下がり、そしてロッド30が連通孔46を閉鎖する。すると、ノズル48先端から排出された液体材料5がノズル48から離れ、対象へと吐出される。以上が、本実施形態の吐出機構3による一回の吐出における一連の動作の流れである。
【0029】
この吐出機構3では、上述した液体圧力(ダイヤフラムポンプ8の作動圧力)、ストローク、連通孔46を開放している時間などを変更することで、連続的に線状に吐出することや、滴状になってノズル48から飛翔吐出することが可能である。
【0030】
本実施形態では、吐出機構3にニードルバルブ型を用いたが、これに限定されず、他の形式のバルブにも適用可能である。例えば、ポペットバルブ、スライドバルブ、ロータリバルブなどが挙げられる。
【0031】
[操作フロー]
実施形態の循環機構2を備える吐出装置1の操作を図1を参照しながら、図3のフローチャートに従い説明する。
始めに、二方弁7を閉鎖状態に切り換え、かつ排出口10を閉鎖する方向へ三方弁9を切り換え(STEP101)、容器4に固体粒子混合液体5を入れる(STEP102)。次いで、二方弁7を連通状態に切り換える(STEP103)とともに、制御装置16を操作してポンプ8に圧縮気体を供給し、ポンプ8を始動させる(STEP104)。ポンプ8が動作すると液体材料5は液体配管6内を符号24の方向に循環を開始する。次いで、第四のレギュレータ20調整し、第二のレギュレータ12を調整する(STEP105)。この際、第四のレギュレータ20に第三の圧力計23を設け、その目盛りを見ながら調整を行うとよい。また、第四のレギュレータ20の圧力の大きさと、ポンプ8から排出される液体圧力大きさとの関係を予め求めておき、調整の際の目安とするとよい。次いで、第一のレギュレータ11を調整して、一次側の液体圧力を目標圧力へと調整する(STEP106)。また、第二のレギュレータ12を調整して、二次側の液体圧力を目標圧力へと調整する(STEP107)。ここで、一般には、吐出機構3の一次側(上流側;第一の圧力計14)と二次側(下流側;第二の圧力計15)の圧力は同じになるように調整することで、安定した吐出および循環が行える。ただし、液体材料5の粘度が高い場合は、圧力損失が大きいので一次側圧力を大きくすることが好ましい。実験では、粘度1[cps]のときは、設定圧力は一次側、二次側とも20[kPa]で良好な循環が得られ、粘度1000[cps]のときは、設定圧力は一次側が170[kPa]、二次側が60[kPa]で良好な循環が得られた。全ての圧力計について圧力の調整を終えたら、吐出前の準備は完了である。そして、制御装置16より吐出信号を発信して、吐出を実行する(STEP108)。なお、循環を開始したら、作業が終わるまで循環させたままにしておくことが好ましい。
【0032】
[吐出部内循環路の変形例]
ここでは、吐出機構3の吐出部29に形成される吐出部内循環路(流入路52および流出路53)の変形例について説明する。
(1)液室中心軸に対する角度を異ならせる態様
液室中心軸56と流入路中心軸57とがなす角と、液室中心軸56と流出路中心軸58とがなす角とを異ならせる態様を図4を用いて説明する。ここで、図4(a)は液室中心軸56と流入路中心軸57とがなす角より液室中心軸56と流出路中心軸58とがなす角の方が大きい場合、図4(b)は、液室中心軸56と流入路中心軸57とがなす角より液室中心軸56と流出路中心軸58とがなす角の方が小さい場合を示す。
【0033】
図4(a)では、液室中心軸56と流入路中心軸57とがなす角より液室中心軸56と流出路中心軸58とがなす角の方が大きくなるよう吐出部内循環路を形成している。流入路52側の角度が小さく、液体材料5がバルブシート45に向かって垂直に近い状態で流れ込むので、バルブシート45近傍の液体材料5を舞い上げるように作用し、固体粒子の沈降、堆積を防ぐ。そして、流出路53側の角度が大きく、流入路52側と比べ水平に近い状態になっているので、液体材料5が流れ出やすく、円滑な循環を実現できる。ここで、すり鉢状面47は、流出路53の下面と水平面がなす角度と同じ角度の傾斜面で構成し、すり鉢状面47と流出路53とが実質的に段差が無く接続されるようにすることが好ましい。
【0034】
図4(b)では、液室中心軸と56流入路中心軸57とがなす角より液室中心軸56と流出路中心軸58とがなす角の方が小さくなるよう吐出部内循環路を形成している。流入路52側の角度が大きく、液体材料5がバルブシート45の上面(すり鉢状面47)をなぞるように流れるので、バルブシート45近傍の液体材料5を押し流すように作用し、固体粒子の沈降、堆積を防ぐ。そして、流出路53側の角度が小さく、流入路52側と比べ垂直に近い状態になっているので、液体材料5が素早く上方へと運ばれ、固体粒子が液室44内に長く留まることを防ぐ。ここで、すり鉢状面47は、流入路52の下面と水平面がなす角度と同じ角度の傾斜面で構成し、流入路52とすり鉢状面47とが実質的に段差が無く接続されるようにすることが好ましい。
【0035】
(2)上から見たときの向きを異ならせる態様
上から見たときの流入路52と流出路53の向きを異ならせる態様を図5を用いて説明する。図5は、図2で示すA−A断面を表す。図5(a)では流入路中心軸57と流出路中心軸58とが直線状に接続され、図5(b)〜(d)では流入路中心軸57と流出路中心軸58とが角度をもって接続される。より詳細には、上から見た際に、図5(a)は流入路52と流出路53のなす角が180度の場合(図2の場合)、図5(b)は流入路52と流出路53のなす角が鈍角の場合、図5(c)は流入路52と流出路53のなす角が直角の場合、図5(d)は流入路52と流出路53のなす角が鋭角の場合を示す。
図5(b)から(d)のように、流入路52と流出路53の向きを異ならせて角度をつけることにより、液体材料5の流れが液室44内でロッド30周囲を回り込むような流れとなり、同じ向きで直線的に流れる場合(図5(a))よりも、攪拌作用を強くすることができる。
図5(b)から(d)では、紙面下方(吐出機構3の手前)側へ角度をつけるようにしたが、逆方向(紙面上方、吐出機構3の奥側)へ角度をつけるようにしてもよい。ただし、吐出機構3の奥側は、使用時に図示しないスタンドやXYZ移動機構に固定するため、図5のように手前に角度をつけるようにする方が好ましい。
【0036】
上記(1)の角度を異ならせる態様と上記(2)の向きを異ならせる態様は、それぞれ独立に実施してもよいし、組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:液体材料吐出装置 2:循環機構 3:吐出機構 4:容器 5:固体粒子混合液体、液体材料 6:液体配管 7:二方弁 8:ポンプ 9:三方弁 10:外部へ連通する口(排出口) 11:第一のレギュレータ 12:第二のレギュレータ 13:第三のレギュレータ 14:第一の圧力計 15:第二の圧力計 16:制御装置 17:制御配線 18:圧縮気体源 19:気体配管 20:第四のレギュレータ 21:第五のレギュレータ 22:第六のレギュレータ 23:第三の圧力計 24:液体の流れ 25:気体の流れ 26:流入口(容器) 27:流出口(容器) 28:駆動部 29:吐出部 30:ロッド(弁体) 31:ピストン 32:バネ 33:バネ室 34:ストローク調整ネジ 35:つまみ部 36:調整ネジ先端 37:ロッド上端 38:空気室 39:切換弁 40:空気流入口 41:第一のシール部材 42:第二のシール部材 43:第三のシール部材 44:液室 45:バルブシート(弁座) 46:連通孔 47:すり鉢状面 48:ノズル 49:管状部材 50:キャップ状部材 51:ロッド先端 52:流入路 53:流出路 54:流入管 55:流出管 56:液室中心軸 57:流入路中心軸 58:流出路中心軸 59:吐出ブロック
図1
図2
図3
図4
図5