特許第6041424号(P6041424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041424
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】車両用コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20161128BHJP
   F25B 39/04 20060101ALI20161128BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20161128BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B60H1/32 613E
   F25B39/04 S
   F25B39/04 Y
   F25B43/00 M
   F28D9/02
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-145664(P2012-145664)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2013-119382(P2013-119382A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2015年5月14日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0131299
(32)【優先日】2011年12月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 載 然
(72)【発明者】
【氏名】趙 完 濟
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−142023(JP,A)
【文献】 特開2005−186879(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0071189(US,A1)
【文献】 特開2008−064455(JP,A)
【文献】 特開平10−132476(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0267169(US,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第03001796(FR,A1)
【文献】 特開2005−114353(JP,A)
【文献】 特開平02−298623(JP,A)
【文献】 特開平08−040054(JP,A)
【文献】 特開平06−137726(JP,A)
【文献】 特開2003−343943(JP,A)
【文献】 特開2005−106385(JP,A)
【文献】 特開2012−116462(JP,A)
【文献】 特開2012−240670(JP,A)
【文献】 特開2006−069383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F25B 39/04
F28D 9/00 − 9/04
F28F 3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張バルブ、蒸発器、圧縮器を含むエアコンシステムに使用され、前記圧縮器と前記膨張バルブとの間に備えられ、前記圧縮器から流入した冷媒を、ラジエータから供給された冷却水と熱交換させて、凝縮させる車両用コンデンサにおいて、
複数のプレートが積層されて、前記圧縮器からの冷媒を循環させ、前記ラジエータからの冷却水を循環させ、前記冷媒を、前記冷却水と熱交換させて凝縮させるメイン放熱部と、
前記メイン放熱部と一体に形成され、前記メイン放熱部と連通して、前記メイン放熱部で凝縮された冷媒を流入させて、冷媒の気液分離と水分除去を行うレシーバードライヤー部と、
前記メイン放熱部の下部に一体に形成され、前記蒸発器から供給された低温低圧の気体冷媒を循環させ、前記レシーバードライヤー部から流入した冷媒を、前記低温低圧の気体冷媒と熱交換させて過冷させる過冷放熱部と、
を有する構成であり、
前記メイン放熱部は、
前記メイン放熱部の中心部に長さ方向に沿って形成され、前記メイン放熱部の一端部に設けられた冷媒流入口を経て前記圧縮器から流入した冷媒が流れる第1冷媒流路、
前記メイン放熱部の内部他端部に形成されて、前記第1冷媒流路を流れた冷媒を気体冷媒と液体冷媒に分離させる気液分離部、
前記第1冷媒流路の上部に形成され、前記気液分離部で分離された気体冷媒が流れる少なくとも一つの第2冷媒流路、および
前記第1冷媒流路の下部に形成され、前記気液分離部で分離された液体冷媒が流れる少なくとも一つの第3冷媒流路、を有し、
前記メイン放熱部、レシーバードライヤー部、および過冷放熱部の上部には、上部カバー、下部には下部カバーがそれぞれ装着され、
前記下部カバーは、前記上部カバーに前記冷媒流入口が形成された端部に、前記膨張バルブと連結される冷媒排出口と、前記蒸発器と連結される気体冷媒流入口が形成され、その反対側端部には、前記圧縮器と連結される気体冷媒排出口が形成されることを特徴とする車両用コンデンサ。
【請求項2】
前記気液分離部は、上部で前記第2冷媒流路の1つと連通し、下部で前記第3冷媒流路の1つと連通して、他の第2冷媒流路と第3冷媒流路とは前記プレートにより直接の連通がないことを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項3】
前記メイン放熱部は、前記冷媒と前記冷却水が対向流して熱交換することを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項4】
前記メイン放熱部は、前記第2冷媒流路で凝縮された冷媒が第1連結流路により前記レシーバードライヤー部に送られ、前記第3冷媒流路で温度が下げられた冷媒が第2連結流路により前記レシーバードライヤー部に送られる、ことを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項5】
前記過冷放熱部は、前記レシーバードライヤー部からの冷媒と、前記蒸発器からの低温低圧の気体冷媒とが対向流して、熱交換することを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項6】
前記過冷放熱部は、第3連結流路を通じて前記レシーバードライヤー部と連結され、前記レシーバードライヤー部から気液分離および水分が除去された冷媒が流入することを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項7】
前記過冷放熱部は、
前記レシーバードライヤー部から前記第3連結流路を通じて流入した冷媒が流れる冷媒流路と、
前記冷媒流路と交互に形成され、前記蒸発器から供給された低温低圧の気体冷媒が流れる気体冷媒流路と、
を有し、
前記冷媒流路を流れる冷媒を、前記気体冷媒流路を流れる気体冷媒と熱交換して過冷させることを特徴とする請求項6に記載の車両用コンデンサ。
【請求項8】
前記メイン放熱部と前記過冷放熱部との間には、前記メイン放熱部を通過する冷媒と、前記過冷放熱部を通過する冷媒との熱伝達を防止するための熱伝達防止部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項9】
前記熱伝達防止部は、前記メイン放熱部と前記過冷放熱部との間で長さ方向に複数のブレイジングホールが形成され、前記ブレイジングホールを通して溶接時にその内部に窒素を注入できるようにしたことを特徴とする請求項8に記載の車両用コンデンサ。
【請求項10】
前記上部カバーは、その一端部に、前記ラジエータからの冷却水が入る冷却水流入口、他端部に、前記メイン放熱部から冷却水を排出するための冷却水排出口が形成され、さらに、前記冷却水排出口のある端部に、前記圧縮器からの冷媒が入る冷媒流入口が形成されることを特徴とする請求項に記載の車両用コンデンサ。
【請求項11】
前記第2冷媒流路を形成するプレートの一端部が折り曲げられて隔壁を形成することを特徴とする請求項に記載の車両用コンデンサ。
【請求項12】
前記第3冷媒流路を形成するプレートのうち最上部に位置するプレートによって、前記第3冷媒流路は、前記冷媒流入口と直接的に連通しないことを特徴とする請求項に記載の車両用コンデンサ。
【請求項13】
前記レシーバードライヤー部は、その内部に装着空間が形成され、前記装着空間に対応して前記下部カバーには挿入ホールが形成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項14】
前記装着空間には、前記挿入ホールを通じて乾燥剤が挿入されることを特徴とする請求項13に記載の車両用コンデンサ。
【請求項15】
前記挿入ホールには、前記装着空間に挿入された乾燥剤の離脱を防止し、前記レシーバードライヤー部に流入された冷媒が外部に漏れ出ることを防止する固定キャップが装着されることを特徴とする請求項14に記載の車両用コンデンサ。
【請求項16】
前記ラジエータは、リザーバタンクと連結され、後方には冷却ファンが備えられることを徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【請求項17】
前記コンデンサは、複数のプレートが積層されて形成される熱交換器を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用コンデンサに関し、より詳しくは、レシーバードライヤー部を一体に構成した積層式プレートタイプであり、冷却水を利用して冷媒を凝縮する水冷式車両用コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動車のエアコンシステムは、外部の温度変化に関係なく自動車室内の温度を適当な温度に維持して快適な室内環境を維持できるようにするものである。このようなエアコンシステムを概略的に述べれば、冷媒を圧縮する圧縮器と、圧縮器で圧縮された冷媒を凝縮して液化させるコンデンサと、コンデンサで凝縮されて液化した冷媒を急速に膨張させる膨張バルブと、膨張バルブで膨張された冷媒を蒸発させることで冷媒の蒸発潜熱を利用して空気を冷却する蒸発器とで構成されている。そして、冷却された空気を、対象の室内に送り込んでいる。
【0003】
ここで、コンデンサは、圧縮された高温高圧の気体冷媒を、走行中の車両内部に流入させて、外部空気で冷却して低温の液体冷媒に凝縮する。このようなコンデンサは、通常、気液分離をして凝縮効率を上げ、冷媒中の水分を除去するレシーバードライヤーが備えられ、コンデンサとレシーバードライヤーを配管で結んでいる〔例えば、特許文献1〕。
【0004】
車両用コンデンサは、外部空気により放熱される空冷式コンデンサが主に使用され、通常ピンチューブ構造を有するが、冷却性能を向上させるために全体的に大きくしなくてはならない。従って、空冷式コンデンサは、狭いエンジンルームに装着し難いという短所がある。
【0005】
この短所を解決するために、最近は、冷却水を冷却流体として利用する水冷式コンデンサが車両に適用されている〔例えば、特許文献2〕。しかし、水冷式コンデンサは、空冷式と比較して冷却流体の凝縮温度が約5〜15℃低いため、外部気温との温度差が小さい。したがって、サブクール効果の不足で凝縮効率が低下し、これによって、全体的な冷却効率が低下する問題点がある。
【0006】
また、このような水冷式車両用コンデンサは、凝縮効率を上げるためには、ラジエータのサイズを大きくしたり、冷却ファン容量を大きくしなければならない。従って、重量が増し、別途に構成されるレシーバードライヤーとの連結配管が複雑になり、製造コストが上がる問題点も有している。
【0007】
この観点から、車両用コンデンサにレシーバドライヤを一体構成にした構造の提案がなされた〔特許文献1参照〕。本発明は、車両用コンデンサにレシーバドライヤを一体構成にしつつ、さらに、圧縮器から供給された冷媒と冷却水との熱交換を改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−137726号公報
【特許文献2】特開2006−069383号公報
【特許文献3】特開2012−116462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題点を解決するためになされた本発明の目的は、圧縮器から供給された冷媒と冷却水との熱交換を改善すると共に、レシーバードライヤーを一体に構成した車両用コンデンサ(以降、単に「コンデンサ」と記す)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明の車両用コンデンサは、膨張バルブ、蒸発器、圧縮器を含むエアコンシステムに使用され、圧縮器と膨張バルブとの間に備えられ、圧縮器から流入した冷媒を、ラジエータから供給された冷却水と熱交換させて、凝縮させる車両用コンデンサであって、複数のプレートが積層されて、圧縮器からの冷媒を循環させ、ラジエータからの冷却水を循環させ、冷媒を冷却水と熱交換させて凝縮させるメイン放熱部と、メイン放熱部と一体に形成され、メイン放熱部と連通して、メイン放熱部で凝縮された冷媒を流入させて、冷媒の気液分離と水分除去を行うレシーバードライヤー部と、メイン放熱部の下部に一体に形成され、蒸発器から供給された低温低圧の気体冷媒を循環させ、レシーバードライヤー部から流入した冷媒を、低温低圧の気体冷媒と熱交換させて過冷させる過冷放熱部と、を有する構成であり、メイン放熱部は、メイン放熱部の中心部に長さ方向に沿って形成され、メイン放熱部の一端部に設けられた冷媒流入口を経て圧縮器から流入した冷媒が流れる第1冷媒流路、メイン放熱部の内部他端部に形成されて、第1冷媒流路を流れた冷媒を気体冷媒と液体冷媒に分離させる気液分離部、第1冷媒流路の上部に形成され、気液分離部で分離された気体冷媒が流れる少なくとも1つの第2冷媒流路、および第1冷媒流路の下部に形成され、気液分離部で分離された液体冷媒が流れる少なくとも1つの第3冷媒流路、を有して構成される。
【0011】
以下、本発明の車両用コンデンサの好ましい実施形態を挙げる。
気液分離部は、上部で第2冷媒流路の1つと連通し、下部で第3冷媒流路の1つと連通して、他の第2冷媒流路と第3冷媒流路とはプレートにより直接の連通がないよにする。
【0012】
メイン放熱部は、冷媒と冷却水が対向流して熱交換するようにする。
メイン放熱部は、第2冷媒流路で凝縮された冷媒が第1連結流路によりレシーバードライヤー部に送られ、第3冷媒流路で温度が下げられた冷媒が第2連結流路にレシーバードライヤー部に送られる。
【0013】
過冷放熱部は、レシーバードライヤー部からの冷媒と、蒸発器からの低温低圧の気体冷媒とが対向流して、熱交換する。
過冷放熱部は、第3連結流路を通じてレシーバードライヤー部と連結され、レシーバードライヤー部から気液分離および水分が除去された冷媒が流入する。
過冷放熱部は、レシーバードライヤー部から第3連結流路を通じて流入した冷媒が流れる冷媒流路と、冷媒流路と交互に形成され、蒸発器から供給された低温低圧の気体冷媒が流れる気体冷媒流路とを有し、冷媒流路を流れる冷媒を、気体冷媒流路を流れる気体冷媒と熱交換して過冷させる。
【0014】
メイン放熱部と過冷放熱部との間には、メイン放熱部を通過する冷媒と、過冷放熱部を通過する冷媒との熱伝達を防止するための熱伝達防止部が形成される。
【0015】
熱伝達防止部は、メイン放熱部と過冷放熱部との間で長さ方向に複数のブレイジングホールが形成され、ブレイジングホールを通して溶接時にその内部に窒素を注入できるようにしている。
【0016】
コンデンサは、メイン放熱部、レシーバードライヤー部、および過冷放熱部の上部に上部カバー、下部に下部カバーがそれぞれ装着される。
上部カバーは、その一端部に、ラジエータからの冷却水が入る冷却水流入口、他端部に、メイン放熱部から冷却水を排出するための冷却水排出口が形成され、さらに、冷却水排出口のある端部に、圧縮器からの冷媒が入る冷媒流入口が形成される。
下部カバーは、上部カバーに冷媒流入口が形成された端部に、膨張バルブと連結される冷媒排出口と、蒸発器と連結される気体冷媒流入口が形成され、その反対側端部には、圧縮器と連結される気体冷媒排出口が形成される。
【0017】
第2冷媒流路を形成するプレートの一端部が折り曲げられて隔壁を形成する。
第3冷媒流路を形成するプレートのうち最上部に位置するプレートによって、第3冷媒流路は、冷媒流入口と直接的に連通しない。
【0018】
レシーバードライヤー部は、その内部に装着空間が形成され、装着空間に対応して下部カバーには挿入ホールが形成される。
装着空間には、挿入ホールを通じて乾燥剤が挿入される。
挿入ホールには、装着空間に挿入された乾燥剤の離脱を防止し、レシーバードライヤー部に流入された冷媒が外部に漏れ出ることを防止する固定キャップが装着される。
【0019】
ラジエータは、リザーバタンクと連結され、後方には冷却ファンが備えられる。
コンデンサは、複数のプレートが積層されて形成される熱交換器を有している。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用コンデンサによれば、圧縮器から供給された冷媒と冷却水との熱交換効率を高くし、レシーバードライヤーの容積を小さく、放熱面積を大きくして冷却効率を上げることができる。また、冷却水を利用して冷媒を気体冷媒と液体冷媒に分離し、凝縮した液体冷媒を、蒸発器を通った後の比較的低温低圧の気体冷媒と熱交換して過冷させるので、凝縮された冷媒を追加的に過冷するための別途の装置をなくすことができ、構成部品を少なく、連結配管のレイアウトを簡素化することができ、さらに全体重量を減らし、原価低減に結びつけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るコンデンサが適用された車両のエアコンシステムの構成図である。
図2】本発明に係るコンデンサの斜視図である。
図3図2のA−A線断面図である。
図4図2のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るコンデンサについて、好ましい実施形態を挙げ、添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のコンデンサが適用された車両のエアコンシステムの構成図であり、図2は、本発明の実施形態によるコンデンサの斜視図であり、図3は、図2のA−A線断面図であり、図4は、図2のB−B線断面図である。尚、車両のエアコンシステムにおいて、冷媒は、場所により気体状態が多くあり、あるいは液体状態が主としており、以下の説明では、説明の都合上、特に気体状態であることを強調するときにのみ「気体冷媒」とし、液体状態であることを強調するときにのみ「液体冷媒」とし、それ以外では単に「冷媒」として記載する。
【0023】
コンデンサ100は、液体冷媒を膨張させる膨張バルブ101と、膨張バルブ101で膨張された冷媒を空気と熱交換して蒸発させる蒸発器103と、蒸発器103で気化して気体状態になった冷媒を圧縮する圧縮器105と共に、エアコンシステムに使用される。この中にあって、コンデンサ100は、圧縮器105と膨張バルブ101との間に設けられ、ラジエータ107から供給された冷却水により、圧縮器105からの冷媒を冷却して凝縮させている。
【0024】
ラジエータ107は、リザーバタンク108と連結し、ラジエータ107の後方には冷却ファン109が備えられて、コンデンサ100で高温になった冷却水を冷却している。
【0025】
本発明のコンデンサ100は、複数のプレートが積層された構造で、レシーバードライヤーが一体に設けられている。コンデンサ100は、冷却水を利用して冷媒を冷却すると共に、気体冷媒と液体冷媒に分離し、分離された液体冷媒を、蒸発器103からの比較的低温低圧の気体冷媒と熱交換させている。
【0026】
コンデンサ100を詳細に説明すると、図2図4に示したように、メイン放熱部110、レシーバードライヤー部130、および過冷放熱部140を有した構成になっている。以下、これら各部について詳しく説明する。
【0027】
コンデンサ100の上部と下部には、それぞれ上部カバー111と下部カバー113が取り付けられ、メイン放熱部110、レシーバードライヤー部130、および過冷放熱部140は、上部カバー111と下部カバー113の間に位置することになる。
【0028】
メイン放熱部110は、図3に示したように、複数の第1冷媒流路117a、複数の第2冷媒流路117b、複数の第3冷媒流路117c、および気液分離部118を含んで構成される。
【0029】
メイン放熱部110では、圧縮器105から流れてきた冷媒を、ラジエータ107から流れてきた冷却水と熱交換して凝縮させている。そこで、メイン放熱部110は、複数のプレート115が積層された構造で、冷却水と冷媒が交互に流れており、それぞれの流れ方向を反対の対向流(counterflow)にして熱交換効率を高めている。つまり、メイン放熱部110は、複数のプレート115が間隔をおいて積層され、プレート115の間は、冷媒流路117と冷却水流路119が交互に形成されている。冷媒流路117には冷媒が流れ、冷却水流路119には冷却水が流れ、冷媒と冷却水が互いに混合することなく、かつ互いに反対方向に流れ、互いに熱交換する。
【0030】
第1冷媒流路117aは、メイン放熱部110の中心部の長さ方向に沿って形成され、圧縮器105からの冷媒が、メイン放熱部110の一端部に設けられた冷媒流入口125から流入してくる。
【0031】
気液分離部118は、メイン放熱部110の内部一端部に形成されて、第1冷媒流路117aと連結し、第1冷媒流路117aを流れて一部凝縮した冷媒が、自重によって気体冷媒と液体冷媒に分けられる。気液分離部118の上部には軽い気体冷媒が、下部には重い液体冷媒が集まる。
【0032】
この実施形態では、第2冷媒流路117bが、第1冷媒流路117aの上部に気液分離部118と連通して形成され、気液分離部118で分離された気体冷媒が、第2冷媒流路117bに流れ、冷却水と熱交換して気体冷媒を凝縮させる。
【0033】
第3冷媒流路117cは、第1冷媒流路117aの下部に気液分離部118と連通して形成され、気液分離部118で分離された液体冷媒が、第3冷媒流路117cに流れ、冷却水と熱交換してその温度をさらに下げる。
【0034】
ここで、気液分離部118は、複数ある第2冷媒流路117bと複数ある第3冷媒流路117cのうち、気液分離部118の上部と下部に隣接した少なくとも1つの第2冷媒流路117b、少なくとも1つの第3冷媒流路117cにそれぞれ連結され、他の第2冷媒流路117b、第3冷媒流路117cとはプレート115により直接連結しないように閉鎖させている。
【0035】
すなわち、気液分離部118からの気体冷媒は、気液分離部118と連通する第2冷媒流路117bに入り、次いで他の第2冷媒流路117bに流れていき、その過程で冷却されて液体冷媒となり、第1連結流路126を通って後述するレシーバードライヤー部130へ流れる。一方、気液分離部118からの液体冷媒は、気液分離部118と連通する第3冷媒流路117cに入り、次いで他の第3冷媒流路117cを流れてさらに温度を下げて、第2連結流路127を通って後述するレシーバードライヤー部130に流れていく。
【0036】
そこで、この実施形態において、上部カバーは、その一端部にラジエータからの冷却水が入る冷却水流入口121が、他端部にメイン放熱部110から冷却水を排出するための冷却水排出口123が形成され、さらに、冷却水排出口123のある端部に、圧縮器105からの冷媒が入る冷媒流入口125が形成される。つまり、冷媒流入口125は、冷却水流入口121と反対側に形成され、冷却水排出口123と同じ側に形成されることで、冷却水と冷媒とが対向流となる。
【0037】
第2冷媒流路117bを形成するプレート115は、冷媒流入口125に隣接して配置された一端部を折り曲げて隔壁122を形成し、冷媒流入口125から流入した冷媒がメイン放熱部110の上部に形成された第2冷媒流路117bに直接流入しないようにしている。
【0038】
また、第3冷媒流路117cを形成するプレート115のうち最上部に位置するプレート115によって、第3冷媒流路117cは、冷媒流入口125と直接には連通しないようにされ、冷媒流入口125から入った冷媒は、直接第3冷媒流路117cに流れない。これにより、冷媒流入口125から入った冷媒は、全て先ず第1冷媒流路117aに流れるようになる。
【0039】
レシーバードライヤー部130は、メイン放熱部110で凝縮された冷媒を流入させ、残存する気体状の冷媒を分ける気液分離をし、かつ水分除去を行う。レシーバードライヤー部130は、メイン放熱部110の一端に一体に形成されていて、メイン放熱部110と連通している。詳細には、気液分離部118で気体冷媒と液体冷媒に分離し、気体冷媒は第2冷媒流路117bで、液体冷媒は第3冷媒流路117cでそれぞれ冷却水と熱交換してレシーバードライヤー部130に流れてくる。
このようなレシーバードライヤー部130は、コンデンサ100の側面に形成され、従来のレシーバードライヤーと比較して容積を小さくすることだでき、別途の配管をなくすことができる。
【0040】
レシーバードライヤー部130の内部には、装着空間131が形成され、装着空間131に対応して下部カバー113には挿入ホール133が形成される。
装着空間131には、乾燥剤135が装着され、メイン放熱部110で凝縮された冷媒中の水分を除去する機能を果たす。この乾燥剤135は、挿入ホール133を通して取出しと挿入ができ、交換が容易である。
【0041】
一方、乾燥剤135にはフィルターを一体に構成することができ、フィルターは、レシーバードライヤー部130を流れる冷媒に含まれた異物を除くことができる。つまり、レシーバードライヤー部130は、乾燥剤135により冷媒に残存する水分を除き、フィルターにより冷媒に含まれている異物を除くことによって、水分と異物のない冷媒を膨張バルブ101に送ることができる。これによって、膨張バルブ101での閉塞などの問題を防止することができる。
【0042】
挿入ホール133には、装着空間131に挿入された乾燥剤135の離脱を防止し、レシーバードライヤー部130に流入した冷媒が外部に漏れ出ることを防止するように固定キャップ137が装着される。
【0043】
過冷放熱部140は、メイン放熱部110の下部に一体に形成される。過冷放熱部140は、レシーバードライヤー部130からの液体冷媒を、蒸発器103から供給された比較的低温低圧の気体冷媒と熱交換して、過冷させる。このとき、蒸発器103からの低温低圧の気体冷媒とレシーバードライヤー部130からの液体冷媒は、対向流(counterflow)させて熱交換させるようにする。
【0044】
本実施形態において、過冷放熱部140は、レシーバードライヤー部130と第3連結流路128で連結され、レシーバードライヤー部130で水分除去が行われた液体冷媒が供給される。
【0045】
過冷放熱部140内には、冷媒が液体状態で流れる冷媒流路117と気体冷媒流路141が形成され、冷媒流路117には、レシーバードライヤー部130から第3連結流路128を通じて流入した液体冷媒が流れ、気体冷媒流路141には、蒸発器103から供給された低温低圧の気体冷媒が流れる。この過程で、液体冷媒と気体冷媒が互いに熱交換する。つまり、過冷放熱部140には、複数のプレート115が間隔をおいて積層され、(液体)冷媒流路117と気体冷媒流路141が交互に形成される。
【0046】
下部カバー113の一端部には、上部カバー111の冷媒流入口125とほぼ対応した位置に冷媒排出口129が形成され、冷媒排出口129は、膨張バルブ101と連結される。
【0047】
さらに、下部カバー113の一端部には気体冷媒流入口143が、他端部には気体冷媒排出口145が形成される。気体冷媒流入口143は蒸発器103と連結され、気体冷媒排出口145は圧縮器105に連結される。
【0048】
レシーバードライヤー部130は、メイン放熱部110と過冷放熱部140の端に一体に形成されている。レシーバードライヤー部130は、第1連結流路126、第2連結流路127および第3連結流路128を除いた残りの部分では、メイン放熱部110と過冷放熱部140に直接に流体が流れないように連結されている。
【0049】
本実施形態において、メイン放熱部110と過冷放熱部140との間には、メイン放熱部110を通過する冷媒と、過冷放熱部140を通過して過冷された冷媒との熱伝達を防止するための熱伝達防止部150が形成される。
【0050】
熱伝達防止部150は、複数のプレート115が積層される時に形成された複数のブレイジングホール151があり、ブレイジングホール151を通して溶接時にその内部に窒素を流し、溶接により発生したガスを外部に排出して溶接不良率を低下させることができる。そして、各ブレイジングホール151は、熱伝達防止部150を形成するための窒素の注入後、閉鎖される。
【0051】
上述したように、本発明のコンデンサ100は、複数のプレート115が積層されて形成される熱交換器を有している。つまり、コンデンサ100は、ラジエータ107で冷却された冷却水が冷却水流入口121からメイン放熱部110に流入される。この冷却水は、メイン放熱部110で複数のプレート115の間に形成された冷却水流路119に沿って循環し、冷却水排出口123からコンデンサ100を出て再びラジエータ107に供給される。
【0052】
一方、圧縮器105からの冷媒は、冷媒流入口125からメイン放熱部110に入り、冷却水流路119と交互に形成された冷媒流路117のうち第1冷媒流路117aを流れて気液分離部118に入る。気液分離部118で、気体冷媒と液体冷媒に分離され、気体冷媒は第2冷媒流路117bを流れ、液体冷媒は第3冷媒流路117cを流れ、それぞれ冷却水と熱交換する。
【0053】
この時、気液分離部118で分離された気体冷媒と液体冷媒は、それぞれ冷却水と対向流となるようにして熱交換が行われるようにする。そして、メイン放熱部110で冷却され凝縮した液体冷媒は、第1連結流路126あるいは第2連結流路127を通ってレシーバードライヤー部130へ流れる。
【0054】
冷却された冷媒は、レシーバードライヤー部130の内部で循環しながら気液分離が行われ、さらに乾燥剤135dにより冷媒中の水分が除かれ、第3連結流路128を通って過冷放熱部140に流入する。過冷放熱部140に流入した冷媒は、過冷放熱部140の冷媒流路117に沿って循環する。
【0055】
この時、過冷放熱部140の気体冷媒流路141には、蒸発器103から供給された低温低圧の気体冷媒が、冷媒流路117を流れる冷媒とは反対方向に流れて熱交換する。
過冷放熱部140の冷媒流路117を流れた冷媒は、冷媒排出口129を通って膨張バルブ101に供給される。
【0056】
一方、過冷放熱部140の気体冷媒流路141を流れた気体冷媒は、気体冷媒排出口145を通って圧縮器105に供給される。
【0057】
本発明では、レシーバードライヤー部130が、メイン放熱部110と過冷放熱部140の端部に一体に構成されることによって、レシーバードライヤー部130とメイン放熱部110および過冷放熱部140を連結するための別途の連結配管をなくすことができ、同時に、コンデンサ100と同じ形状にすることにより全体容積を小さくして冷媒を循環させることができる。そして、メイン放熱部110と過冷放熱部140は、熱伝達防止部150により冷媒の相互熱伝達を防止してコンデンサ100全体の冷却効率を向上させることができる。
【0058】
本発明のコンデンサ100を説明するに当たり、メイン放熱部110、レシーバードライヤー部130、および過冷放熱部140が、上部カバー111と下部カバー113の間に複数のプレート115が積層された実施形態で説明したが、これに限定されるものではない。上部カバー111と下部カバー113なしに積層された複数のプレート115のみでも、メイン放熱部110と過冷放熱部140、ならびにレシーバードライヤー部130を構成することができる。
【0059】
本発明のコンデンサ100は、レシーバードライヤーを一体に構成し、複数のプレートが積層されており、冷却水を利用して冷媒を気体冷媒と液体冷媒に分離して凝縮するようになっている。また、凝縮された冷媒を、蒸発器103を通って供給された低温低圧の気体冷媒との熱交換で過冷させるようになっている。したがって、構成部品を小さくし、連結配管レイアウトを簡素化することができ、全体重量を小さく、製造原価を低減させることができる。
【0060】
メイン放熱部110で凝縮された冷媒を再び過冷放熱部140で低温低圧の気体冷媒と熱交換して過冷させることができるので、冷媒を追加的に過冷するための別途の装置や配管をなくすことができる。従って、追加の費用がなくすることができる。
【0061】
コンデンサ100は、メイン放熱部110の第1冷媒流路117aを通った冷媒を気液分離部118で気体冷媒と液体冷媒に分離し、気体冷媒と液体冷媒をそれぞれ冷却水と熱交換させて凝縮させる。従って、熱交換効率を向上させることができる。
【0062】
レシーバードライヤーをメイン放熱部110と過冷放熱部140と一体に構成することによって、コンデンサ100内の容積を小さくすることができ、コンデンサ100の放熱面積が大きくなり、コンデンサ100の寸法を大きくせずに冷却効率を上げることができ、商品性を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明のコンデンサを、限定された実施形態と図面で説明したが、本発明はこれにより限定されず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正および変形が可能であることは当然である。
【符号の説明】
【0064】
100:コンデンサ
101:膨張バルブ
103:蒸発器
105:圧縮器
107:ラジエータ
108:リザーバタンク
109:冷却ファン
110:メイン放熱部
111:上部カバー
113:下部カバー
115:プレート
117:冷媒流路
117a:第1冷媒流路
117b:第2冷媒流路
117c:第3冷媒流路
118:気液分離部
119:冷却水流路
121:冷却水流入口
122:隔壁
123:冷却水排出口
125:冷媒流入口
126:第1連結流路
127:第2連結流路
128:第3連結流路
129:冷媒排出口
130:レシーバードライヤー部
131:装着空間
133:挿入ホール
135:乾燥剤
137:固定キャップ
140:過冷放熱部
141:気体冷媒流路
143:気体冷媒流入口
145:気体冷媒排出口
150:熱伝達防止部
151:ブレイジングホール
図1
図2
図3
図4