(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、治療や検査のために、血管、消化管及び尿管等の管状器官や体内組織に挿入して使用されるカテーテル等を案内するガイドワイヤとして、様々なものが提案されている。
例えば、特許文献1には、先端部に設けられた円筒状の金属ケーシング内に圧力センサを収納し、金属ケーシングに形成された孔部からセンサに血流等を導入して血圧等を測定するセンサ付きガイドワイヤが開示されている。このセンサの感圧素子は、孔部に臨む位置に配置されている。
また、特許文献2には、コアシャフトに形成された凹部にセンサを嵌め入れたセンサ付きガイドワイヤが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1のセンサ付きガイドワイヤでは、センサの計測部位(感圧素子)が孔部に臨む位置に配置されているため、孔部を出入りする血流がセンサにより乱されて計測の精度が低下するという問題があった。
また、特許文献2のセンサ付きガイドワイヤでは、血流の少ない狭窄部や閉塞部等の血管部位で計測する場合に、センサの計測部位が血液に浸らずに計測が困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、センサによる計測を容易かつ高精度に行うことができるセンサ付きガイドワイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るセンサ付きガイドワイヤは、以下のような特徴を有する。
【0007】
<1>本発明の一態様に係るセンサ付きガイドワイヤは、
計測部位を有するセンサと、前記センサを覆うチューブ体と
、を備え、前記チューブ体は、前記センサの計測部位より基端側に形成された基端側閉塞壁と、前記センサの計測部位より先端側に形成された先端側閉塞壁と、前記センサの
前記計測部位に血流を流入又は流出させるために前記チューブ体に貫通形成された孔部と
、前記基端側閉塞壁と前記先端側閉塞壁とで形成された計測室と、を有し、前記センサ
の前記計測部位は、前記孔部より基端側に配置されて
おり、前記チューブ体の先端には、コイルと、前記コイルの内部に挿入された先端シャフトと、が配置されており、前記先端側閉塞壁は、前記チューブ体の前記先端と、前記コイルの基端と、前記先端シャフトの基端と、を接合し、前記チューブ体の前記計測室には、前記センサのみが配置されていることを特徴とする。
【0008】
<2>上記態様に係るセンサ付きガイドワイヤにおいて、
前記先端側閉塞壁は、ロウ材により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
<1>に係るガイドワイヤでは、チューブ体がセンサの計測部位より基端側に形成された基端側閉塞壁と、センサの計測部位より先端側に形成された先端側閉塞壁と、センサの計測部位に血流を流入又は流出させるためにチューブ体に貫通形成された孔部と
、先端側閉塞壁と後端側閉塞壁とで形成された計測室と、を有し、センサ
の計測部位が孔部より基端側に配置されて
おり、チューブ体の先端には、コイルと、コイルの内部に挿入された先端シャフトと、が配置されており、先端側閉塞壁は、チューブ体の先端と、コイルの基端と、先端シャフトの基端と、を接合し、チューブ体の計測室には、センサのみが配置されているので
、センサの計測部位を血液に確実に浸すとともに、孔部を出入りする血流がセンサにより乱されないため、センサによる計測を容易かつ高精度に行うことができる。
【0010】
<2>に係るガイドワイヤでは、
先端側閉塞壁がロウ材により形成されているので、計測室を容易に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤについて、
図1及び
図2を参照しながら説明する。
図1及び
図2において、右側が体内に挿入される先端側であり、左側が医師等の手技者によって操作される基端側である。なお、孔部の形状を解り易くするため、
図2には、ハイポチューブの孔部を含む平面で切った断面図を示している。
【0013】
図1に示すセンサ付きガイドワイヤ10は、心臓等の血管の治療に用いられるものであり、その全長は例えば1900mm程度である。このセンサ付きガイドワイヤ10は、コアシャフト20と、コアシャフト20に取り付けられたセンサ30と、センサ30を覆うハイポチューブ40とを備えている。
【0014】
<コアシャフト>
コアシャフト20は、円筒形状をなしており、内部に形成された中空部21と、先端に形成されたテーパ部22とを有している。中空部21は、コアシャフト20の先端から基端まで形成されている(図示略)。テーパ部22は、外径が先端へ向けて縮径している。コアシャフト20の材料は、特に限定されるものではないが、本実施形態の場合、ステンレス鋼(SUS)が用いられている。これ以外の材料としては、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が用いられる。
【0015】
<センサ>
センサ30は、センサ本体31と、センサ本体31の先端に位置する計測部位32と、センサ本体31から基端側へ延びる光ファイバ33とを有している。センサ本体31は、コアシャフト20の先端に取り付けられている。計測部位32は、ハイポチューブ40の先端側に位置しているが、詳細位置については後述する。光ファイバ33は、センサ本体31からコアシャフト20の中空部21を通過して外部装置(図示略)へと接続されている。このセンサ付きガイドワイヤ10では、センサ30により取得した情報が、各種手技や診断に活用される。なお、本実施形態のセンサ30は、血管内の血圧を測定するものであるが、これに限られず他の情報を取得するセンサを用いてもよい。
【0016】
<ハイポチューブ>
ハイポチューブ40の基端は、基端側ロウ付け部11により、コアシャフト20のテーパ部22の外周にロウ付けされている。このハイポチューブ40は、
図2に示すように、センサ30の計測部位32より基端側に形成された基端側閉塞壁43と、センサ30の計測部位32より先端側に形成された先端側閉塞壁44と、センサ30の計測部位32に血流を流入又は流出させるためにハイポチューブ40に貫通形成された孔部42とを有している。基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44は、ハイポチューブ40の内側に、センサ30の計測部位32を覆う計測室41を形成している。孔部42は、ハイポチューブ40の径方向における両側位置に、一対設けられている。この孔部42は、方形状をなしており、その周面はハイポチューブ40の径方向に沿っている。そして、この孔部42より基端側に、センサ30が配置されている。センサ30の計測部位32は、一対の孔部42,42を結ぶ経路上になく、その経路のすぐ基端側に位置している。これにより、孔部42間を流れる血流はセンサ30で乱されることがない。また、センサ30の計測部位32は、血流のすぐ基端側で血流をしっかりと感知することができる。特に、センサ30の計測部32の先端位置が、ハイポチューブ40の軸方向位置において、孔部42を形成する基端側の周面42aと同じ位置である場合に、センサ30の感度が高い。
【0017】
本実施形態のハイポチューブ40は、金属からなり、例えばステンレス鋼(SUS)により形成されている。また、本実施形態の基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44は、ロウ材により形成されている。すなわち、基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44は、形成時には流動性を有しており、その後に固化したものである。このロウ材としては、アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn−Pb合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag合金、Au−Sn合金又はAu−Si合金等の金属ハンダ等を用いることができる。
また、基端側閉塞壁43を形成するロウ材は、センサ30における計測部位32のすぐ基端側と、ハイポチューブ40の内壁面とを隙間なく接合している。これにより、センサ30の計測部位32は、基端側閉塞壁43によって支持されている。一方、先端側閉塞壁44を形成するロウ材は、ハイポチューブ40の先端を隙間無く接合するとともに、先端シャフト45の基端及びコイル46の基端をハイポチューブ40の先端に接合している。先端シャフト45は、先端側へ向けて外径が縮径するテーパ形状をなしている。コイル46は、先端シャフト45の全体を覆っている。先端シャフト45の先端及びコイル46の先端は、先端チップ13によりロウ付けされている。この先端チップ13は、先端側が湾曲した半球状をなしている。
【0018】
上記構成を有するセンサ付きガイドワイヤ10では、ハイポチューブ40がセンサ30の計測部位32より基端側に形成された基端側閉塞壁43と、センサ30の計測部位32より先端側に形成された先端側閉塞壁44と、センサ30の計測部位32に血流を流入又は流出させるためにハイポチューブ40に貫通形成された孔部42とを有し、センサ30が孔部42より基端側に配置されているので、基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44によってハイポチューブ40内部に計測室41を形成してセンサ30の計測部位32を血液に確実に浸すとともに、孔部42を出入りする血流がセンサ30により乱されないため、センサ30による計測を容易かつ高精度に行うことができる。
【0019】
ガイドワイヤ10では、基端側閉塞壁43によってセンサ30の計測部位32を支持することにより、別途センサ用の固定部材を設ける必要が無く、ガイドワイヤ10の構成を簡易なものとすることができる。
【0020】
ガイドワイヤ10では、基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44が、形成時に流動性を有して形成後に固化する材料からなるので、計測室41を容易に形成できるとともに計測室41に高い気密性を確保することができる。
【0021】
ガイドワイヤ10では、ハイポチューブ40が金属からなり、基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44がロウ材により形成されているので、金属のチューブ体に対して特に気密性の高い計測室41を形成することができる。
【0022】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤについて、
図3を参照しながら説明する。
図3において、右側が体内に挿入される先端側であり、左側が医師等の手技者によって操作される基端側である。なお、上記実施形態と同一の構成部品については、同符号を付して説明を省略し、以下では相違点を中心に説明する。
【0023】
第2実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤは、ハイポチューブの孔部の形状において、上記第1実施形態と相違する。
図3に示すように、本実施形態のハイポチューブ50では、孔部52を形成する周面の先端側が、内側から外側へ向けて孔径を拡大させる傾斜面52aになっている。
【0024】
本実施形態では、傾斜面52aによって孔部52の孔径を拡大させているため、第1実施形態の効果に加え、たとえ血流の少ない血管部位においても血流を計測室51に効率良く導くことができる。
【0025】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤについて、
図4を参照しながら説明する。
図4において、右側が体内に挿入される先端側であり、左側が医師等の手技者によって操作される基端側である。なお、上記実施形態と同一の構成部品については、同符号を付して説明を省略し、以下では相違点を中心に説明する。
【0026】
第3実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤは、ハイポチューブの孔部の形状において、上記第1及び第2実施形態と相違する。
図4に示すように、本実施形態のハイポチューブ60では、孔部62を形成する周面の基端側が、内側から外側へ向けて孔径を拡大させる傾斜面62aになっている。これは、血管内では、血液が基端側から先端側へと流れることを考慮して、孔部62を形成する周面のうち血流が流れてくる基端側の孔径を拡径したものである。
【0027】
本実施形態では、孔部62の傾斜面62aによって、血管内で血液が流れてくる基端側の孔径を拡径させているため、上記第1実施形態の効果に加え、血流を計測室62にさらに効率良く導くことができる。
【0028】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤについて、
図5を参照しながら説明する。
図5において、右側が体内に挿入される先端側であり、左側が医師等の手技者によって操作される基端側である。なお、上記実施形態と同一の構成部品については、同符号を付して説明を省略し、以下では相違点を中心に説明する。
【0029】
第4実施形態に係るセンサ付きガイドワイヤは、ハイポチューブの孔部の形状において、上記第1、第2及び第3実施形態と相違する。
図5に示すように、本実施形態のハイポチューブ70では、孔部72を形成する周面が、全周にわたって内側から外側へ向けて孔径を拡大させる傾斜面72aになっている。
【0030】
本実施形態では、孔部72を形成する周面が全周にわたって内側から外側へ向けて孔径を拡大させる傾斜面72aになっているので、上記第1〜第3実施形態と比較して最も効率よく計測室71に血流を導入することができる。
【0031】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、チューブ体40が金属からなり、基端側閉塞壁43及び先端側閉塞壁44がロウ材により形成されている場合について説明したが、チューブ体が樹脂からなり、基端側閉塞壁及び先端側閉塞壁が樹脂接着剤により形成されてもよい。これによれば、樹脂のチューブ体に対して特に気密性の高い計測室を形成することが可能となる。