特許第6041445号(P6041445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041445ランニングシミュレータ、制御装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041445
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ランニングシミュレータ、制御装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20161128BHJP
   A63B 22/02 20060101ALI20161128BHJP
   A63B 24/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A63B69/00 A
   A63B22/02
   A63B24/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-54026(P2014-54026)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-173916(P2015-173916A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2014年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】304026009
【氏名又は名称】株式会社オオバ
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一男
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 好二
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−121592(JP,A)
【文献】 特開平11−258973(JP,A)
【文献】 特開2013−102813(JP,A)
【文献】 特開2002−162894(JP,A)
【文献】 特開2011−085770(JP,A)
【文献】 特開2011−097988(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0209393(US,A1)
【文献】 特表2014−518723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 22/00 − 24/00
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データを用いるランニングシミュレータであって、
駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角を変更するランニングマシンと、
前記3次元点群データから抽出される路面点群データに基づいて、進行方向の勾配である縦断勾配および横方向の勾配である横断勾配からなる勾配変化情報を含むように作成されたコース形状データを格納するMMSデータベースと、
前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する取得部と、
前記取得した距離データに対応するコース形状データを前記MMSデータベースから抽出する抽出部と、
前記抽出したコース形状データに示される勾配変化情報に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を決定し、前記決定した進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記コース形状データにユーザの視点の高さを追加することで得られる視点高さデータ、予め定められた映像投影視野角および予め定められたユーザの目線の角度に基づいて映像開始位置を設定し、前記設定された映像開始位置から前記距離データが示す距離にユーザの視点が移動したとして、その視点の位置を基準とした3次元点群データからなる映像を、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力し、
前記ランニングマシンは、前記制御データに基づいて、前記駆動装置を駆動し、前記踏み台の進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を変更することを特徴とするランニングシミュレータ。
【請求項2】
画像を表示するディスプレイを備えると共に、駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角を変更するランニングマシンを制御する制御装置であって、
前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する取得部と、
前記取得した距離データに対応し、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データから抽出される路面点群データに基づいて、進行方向の勾配である縦断勾配および横方向の勾配である横断勾配からなる勾配変化情報を含むように作成されたコース形状データをMMSデータベースから抽出する抽出部と、
前記抽出したコース形状データに示される勾配変化情報に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を決定し、前記決定した進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記コース形状データにユーザの視点の高さを追加することで得られる視点高さデータ、予め定められた映像投影視野角および予め定められたユーザの目線の角度に基づいて映像開始位置を設定し、前記設定された映像開始位置から前記距離データが示す距離にユーザの視点が移動したとして、その視点の位置を基準とした3次元点群データからなる映像を、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力し、
前記ランニングマシンに対し、前記駆動装置を駆動させ、前記踏み台の進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を変更させることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
画像を表示するディスプレイを備えると共に、駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角を変更するランニングマシンを制御するプログラムであって、
前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する処理と、
前記取得した距離データに対応し、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データから抽出される路面点群データに基づいて、進行方向の勾配である縦断勾配および横方向の勾配である横断勾配からなる勾配変化情報を含むように作成されたコース形状データをMMSデータベースから抽出する処理と、
前記抽出したコース形状データに示される勾配変化情報に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を決定し、前記決定した進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する処理と、
前記コース形状データにユーザの視点の高さを追加することで得られる視点高さデータ、予め定められた映像投影視野角および予め定められたユーザの目線の角度に基づいて映像開始位置を設定し、前記設定された映像開始位置から前記距離データが示す距離にユーザの視点が移動したとして、その視点の位置を基準とした3次元点群データからなる映像を、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力する処理と、
前記ランニングマシンにおいて、前記制御データに基づいて、前記駆動装置を駆動し、前記踏み台の進行方向に対する傾斜角および横方向の傾斜角を変更する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データを用いてランニングマシンを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両を走行させながら3次元座標データと画像データとを取得することができる車載型移動計測システム(Mobile Mapping System:以下、「MMS」と呼称する)が知られている。MMSは、GPS(Global Positioning System)で自車の位置情報を取得し、レーザスキャナで車両周辺の3次元情報を取得し、ディジタルカメラまたはディジタルビデオカメラで画像を取得し、IMU(Inertial Measurement Unit)とオドメータで位置情報を補正する機能を備えている。MMSで取得されたデータは、例えば、路線測量に利用されている(非特許文献1)。
【0003】
一方、従来から、ランニングマシンが知られている。ランニングマシンは、主にユーザが屋内で有酸素運動を行なうことを目的として作られたものであり、踏み台としてのウォーキングベルトをモータの駆動力で駆動する。ユーザは、好みに応じて走行速度を調整することができる。特許文献1には、カーブ走行を考慮したランニングマシンが開示されている。また、特許文献2には、道路の画像を表示するランニングマシンが開示されている。また、特許文献3には、ウォーキングベルトの駆動速度を自動的に調整することが可能なランニングマシンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−102813号公報
【特許文献2】特開2006−326248号公報
【特許文献3】特開2001−198234号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】太田、渡邊、今井著 “モービルマッピングシステム(MMS)を利用した路線測量について”http://www.hrr.mlit.go.jp/library/happyoukai/h23/ino_kosuto/1-18.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、MMSで取得した高精度の3次元点群データは、路線測量に使用されていたが、これがランニングマシンの制御に用いられることはなかった。ランニングマシンの踏み台の傾斜角度が可変となるように構成し、アクチュエータ等の駆動装置によって踏み台に駆動力を与えることによって、自動的に踏み台の傾斜角度を変更させることができるが、その傾斜角度の制御を、3次元点群データを用いて行なうことによって、実際の道路の状態に近い状態をランニングマシンに付与することができると考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、実際に道を走行するときに近い状況を作り出し、臨場感の高いランニングシミュレータを実現することができるランニングシミュレータ、制御装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成させるため、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のランニングシミュレータは、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データを用いるランニングシミュレータであって、駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角度を変更するランニングマシンと、前記3次元点群データに基づいて作成されたコース縦断データを格納するMMSデータベースと、前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する取得部と、前記取得した距離データに対応するコース縦断データを前記MMSデータベースから抽出する抽出部と、前記抽出したコース縦断データに示される傾斜角に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の傾斜角度を決定し、前記決定した傾斜角度を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する制御部と、を備え、前記ランニングマシンは、前記制御データに基づいて、前記駆動装置を駆動し、前記踏み台の傾斜角度を変更することを特徴とする。
【0009】
(2)また、本発明のランニングシミュレータにおいて、前記MMSデータベースは、MMSで取得され前記3次元点群データに対応する動画データを格納し、前記制御部は、前記取得した距離データに対応する動画データを前記MMSデータベースから抽出し、前記抽出した動画データを、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力することを特徴とする。
【0010】
(3)また、本発明の制御装置は、画像を表示するディスプレイを備えると共に、駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角度を変更するランニングマシンを制御する制御装置であって、前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する取得部と、前記取得した距離データに対応すると共に、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データに基づいて作成されたコース縦断データをMMSデータベースから抽出する抽出部と、前記抽出したコース縦断データに示される傾斜角に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の傾斜角度を決定し、前記決定した傾斜角度を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する制御部と、を備え、前記ランニングマシンに対し、前記駆動装置を駆動させ、前記踏み台の傾斜角度を変更させることを特徴とする。
【0011】
(4)また、本発明の制御装置において、前記MMSデータベースは、MMSで取得され前記3次元点群データに対応する動画データを格納し、前記制御部は、前記取得した距離データに対応する動画データを前記MMSデータベースから抽出し、前記抽出した動画データを、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力することを特徴とする。
【0012】
(5)また、本発明のプログラムは、画像を表示するディスプレイを備えると共に、駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角度を変更するランニングマシンを制御するプログラムであって、前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する処理と、前記取得した距離データに対応すると共に、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データに基づいて作成されたコース縦断データをMMSデータベースから抽出する処理と、前記抽出したコース縦断データに示される傾斜角に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の傾斜角度を決定し、前記決定した傾斜角度を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する処理と、前記ランニングマシンにおいて、前記制御データに基づいて、前記駆動装置を駆動し、前記踏み台の傾斜角度を変更する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0013】
(6)また、本発明のプログラムは、前記取得した距離データに対応すると共に、MMSで取得され前記3次元点群データに対応する動画データを前記MMSデータベースから抽出し、前記抽出した動画データを、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力する処理を更に含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実際に道を走行するときに近い状況を作り出し、臨場感の高いランニングシミュレータを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本実施形態に係るランニングシミュレータの概略構成を示すブロック図である。
図1B】制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】MMSで3次元点群データを取得し、取得した3次元点群データに基づいて、ランニングマシンを制御するためのデータを作成する動作を示すフローチャートである。
図3】点群データの作成の詳細を示すフローチャートである。
図4】コース形状データの作成の詳細を示すフローチャートである。
図5A】勾配データベースを作成する際の概念を示す図である。
図5B】ランニングマシンの走行距離に応じた勾配変化情報のデータベースを示す。
図5C】傾斜角度(%)、換算走行距離(km)、消費カロリー(cal)、METS、走行距離比、およびベルト回転数減少量比の対応関係を示すテーブルである。
図6】動画データ作成の詳細を示すフローチャートである。
図7】本実施形態に係るランニングシミュレータにおいて、ランニングマシンの機械的制御を示すフローチャートである。
図8】本実施形態に係るランニングシミュレータの使用時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、MMSで取得した高精度の3次元点群データに着目し、これをランニングマシンの傾斜角度の制御と、走行時に再現する映像に用いることによって、臨場感の高いランニングシミュレータを実現できることを見出し、本発明をするに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データを用いるランニングシミュレータであって、駆動装置から得られる駆動力によって踏み台の傾斜角度を変更するランニングマシンと、前記3次元点群データに基づいて作成されたコース縦断データを格納するMMSデータベースと、前記ランニングマシンから、走行距離を示す距離データを取得する取得部と、前記取得した距離データに対応するコース縦断データを前記MMSデータベースから抽出する抽出部と、前記抽出したコース縦断データに示される傾斜角に応じて、前記ランニングマシンの踏み台の傾斜角度を決定し、前記決定した傾斜角度を示す制御データを前記ランニングマシンに出力する制御部と、を備え、前記ランニングマシンは、前記制御データに基づいて、前記駆動装置を駆動し、前記踏み台の傾斜角度を変更することを特徴とする。
【0018】
また、本発明において、前記MMSデータベースは、MMSで取得され前記3次元点群データに対応する動画データを格納し、前記制御部は、前記取得した距離データに対応する動画データを前記MMSデータベースから抽出し、前記抽出した動画データを、前記取得した距離データと同期するように前記ランニングマシンが備えるディスプレイに出力することを特徴とする。
【0019】
これにより、本発明者らは、実際に道を走行するときに近い状況を作り出し、臨場感の高いランニングシミュレータを実現することを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0020】
図1Aは、本実施形態に係るランニングシミュレータの概略構成を示すブロック図であり、図1Bは、制御装置の概略構成を示すブロック図である。図1Aに示すように、本実施形態に係るランニングシミュレータは、MMSデータベース10と、制御装置20と、ランニングマシン30と、から構成されている。MMSデータベース10は、MMS(Mobile Mapping System)で取得した3次元点群データに基づいて作成されたコース縦断データを格納する。また、コース横断データを格納しても良い。また、MMSデータベース10は、MMSで取得され3次元点群データに対応する動画データを格納する。
【0021】
制御装置20は、図1Bに示す構成を採る。すなわち、取得部20aは、ランニングマシン30から、走行距離を示す距離データを取得する。抽出部20bは、取得部20aが取得した距離データに対応するコース縦断データを、MMSデータベース10から抽出する。制御部20cは、抽出部20bが抽出したコース縦断データに示される傾斜角に応じて、ランニングマシン30の踏み台の傾斜角度を決定し、決定した傾斜角度を示す制御データをランニングマシン30に出力する。また、制御部20cは、ランニングマシン30から取得した距離データに対応する動画データを、MMSデータベースから抽出する。そして、抽出した動画データを、取得した距離データと同期するようにランニングマシン30が備えるディスプレイに出力する。
【0022】
ランニングマシン30は、踏み台としてのウォーキングベルトをモータの駆動力で駆動する。また、踏み台に対して駆動力を与える駆動装置を備え、制御装置20から入力される制御データに基づいて、駆動装置が踏み台に駆動力を与え、踏み台の傾斜角度を変更する。また、ランニングマシン30は、画像を表示するディスプレイを備える。さらに、音声を出力するスピーカを備えていても良い。
【0023】
図2は、MMSで3次元点群データを取得し、取得した3次元点群データに基づいて、ランニングマシンを制御するためのデータを作成する動作を示すフローチャートである。すなわち、点群データの作成(Step D)、コース形状データの作成(Step R)、および動画データの作成(Step C)である。
【0024】
図3は、図2に示した点群データの作成(Step D)の詳細を示すフローチャートである。まず、MMSで道路を走行し、コースを計測する(ステップD1)。このステップD1において、点群データおよび画像(動画データ)を取得することができる。次に、点群データへ地理座標情報を付与すると共に、カラー情報を付与する(ステップD2)。次に、ゴーストおよびエラーデータのチェックをする(ステップD3)。ゴーストとは、映像撮影時に映り込んでしまったハレーション、影または障害物などのことである。ステップD3において、エラーがある場合は、ゴーストまたはエラーを修正する(ステップD4)。ステップD3において、ゴーストおよびエラーが無ければ、終了する。
【0025】
図4は、図2に示したコース形状データの作成(Step R)の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップR1において、車両の自己位置データを入力し(ステップR2)、始点から終点まで、順に線分で接続する。すなわち、線データ化を行なう。次に、作成した線データをコース形状に整形し、コース2次元線形データの作成を行なう(ステップR3)。次に、ステップR4において、バッファ半径を2mに設定し(ステップR5)、コース線形データよりバッファを発生させて、コース領域を作成する。次に、ステップR6において、点群データを入力し(ステップR7)、コース領域を利用して、入力した点群データ内より、路面に相当する点群を抽出する。
【0026】
次に、路面点群データから、道路地形TINモデルの生成を行なう(ステップR8)。次に、地形TINモデルから地表高さをコースデータに付与する(ステップR9)。そして、コースの縦断データを作成する(ステップR10)。次に、コースの縦断データより、道路縦断勾配と、勾配変化地点までの追加距離を算出し(ステップR11)、コース線形データに対し、横断方向の勾配を、道路地形TINモデルを利用して算出し、横断方向の勾配変化地点までの追加距離を算出する(ステップR12)。そして、勾配データベースを作成して(ステップR12)、終了する。
【0027】
図5Aは、勾配データベースを作成する際の概念を示す図である。まず、進行方向の勾配設定、すなわち、縦断勾配について説明する。道路構造令で規定されている道路最大勾配は、普通道路では、9%、小型道路では12%となっている。このため、MMSで取得できる最大勾配は12%となる。従って、本実施形態に係るランニングシミュレータにおいては、設定する縦断勾配の範囲を「−12%〜12%」とする。また、ランニングマシンの制御機構を単純化するために、取り扱う縦断勾配の変化量は、1%ピッチに分類し、全部で25段階の勾配を設定可能とする。
【0028】
次に、横方向の勾配設定、すなわち、横断勾配について説明する。道路構造令で規定されている舗装道の勾配は、1.5%〜2%となっているため、MMSで取得できる勾配も、この範囲となる。従って、本実施形態に係るランニングシミュレータにおいては、設定する横断勾配の範囲を「−2%〜2%」とする。また、ランニングマシンの制御機構を単純化するために、取り扱う横断勾配の変化量は、0.5%ピッチに分類し、全部で9段階の勾配を設定可能とする。
【0029】
このような方法で、コース内の縦断勾配および横断勾配を、MMSデータより作成した3D路面データから計測し、ランニングマシンの走行距離に応じた勾配変化情報を作成し、データベース化する。図5Bは、ランニングマシンの走行距離に応じた勾配変化情報のデータベースを示す。
【0030】
次に、走行時の酸素摂取量を求める手法について説明する。「A=分速×0.2」を水平成分とし、「B=分速×0.9×%(斜度)」を垂直成分とし、「C=3.5」を安静時成分とすると、次式で求めることができる。
酸素摂取量(ml/kg/分)=(分速×0.2)+(分速×0.9×%(斜度))+3.5
また、消費カロリーは、次式で求めることができる。
消費カロリー(cal/kg/分)=5×酸素摂取量(ml/kg/分)
また、エネルギー消費量は、次式で求めることができる。
エネルギー消費量(cal/kg/分)=METS×体重(g)×運動時間(h)、ただし、「METS」とは、「Metabolic equivalents」であり、また、1kcal=4.184kjである。
【0031】
図5Cは、傾斜角度(%)、換算走行距離(km)、消費カロリー(cal)、METS、走行距離比、およびベルト回転数減少量比の対応関係を示すテーブルである。例えば、体重65kgのユーザが、平坦地を平均時速10km/hで、60分のランニングを行なった場合を基準として、各勾配の酸素摂取量より、換算走行距離を算出する。基準値と各傾斜における算出値の走行距離比を運動負荷量とし、ランニングマシンの回転数制御に用いる。
【0032】
図6は、図2におけるStep Cの動画データ作成の詳細を示すフローチャートである。まず、ランニングマシンに利用者(ユーザ)情報を入力する(ステップC1)。利用者情報には、利用者名や利用者IDなどの利用者を特定する情報と共に、利用者の身長を入力する。利用者の身長が入力されると、「視点高さデータ」を算出する。具体的には、利用者の視点の高さは、統計的に、人の目から額、頭頂部まで、概ね8cm〜11cmであることが分かっているため、入力された身長から10cmを減算した値を、「視点高さ」とする。
【0033】
次に、ランニングマシンから利用者情報を映像制御機器(ディスプレイ)へ送信する(ステップC2)。次に、映像制御機器内でコースデータ(地表高さ)に視点の高さを追加し、映像中心位置をセットする(ステップC3)。次に、ランニングマシンから距離データを取得し(ステップC4)、コース縦断データ内において、ランニングマシンから取得した距離データを検索する(ステップC5)。そして、検出した距離データに対応した位置の映像を出力する(ステップC7)。
【0034】
図7は、本実施形態に係るランニングシミュレータにおいて、ランニングマシンの機械的制御を示すフローチャートである。まず、ランニングマシンから距離データを取得する(ステップS1)。次に、コース縦断データ内において、ランニングマシンから取得した距離データに対応するコース縦断データを検索する(ステップS2)。そして、検索結果としてのコース縦断データに示される傾斜角を利用して、ランニングマシンの踏み台の傾斜角度を決定する(ステップS3)。
【0035】
図8は、本実施形態に係るランニングシミュレータの使用時の動作を示すフローチャートである。まず、コースデータの読み込みを行なう(ステップT1)。ここでは、「1.映像データ」および「2.ランニングコースデータ」を読み込む。また、ユーザによって、ランニングマシンの初期設定が行なわれる(ステップT2)。ここでは、「1.コース選択」、「2.走行者情報(身長)」および「3.ランニング速度」が入力される。次に、視点高さデータを算出する(ステップT3)。すなわち、入力された身長から10cmが減算される。そして、3次元ランニングコースデータの地表から視点までの高さを設定する(ステップT3)。
【0036】
次に、動画データとしての映像開始位置を設定する(ステップT4)。ここでは、基本データとして、映像投影視野角を60度とし、目線の角度を下方向に45度とし、ランナーの姿勢を地球中心に対して垂直であるとする(ステップT5)。ここで、映像投影視野角を60度とするのは、人の注視点が安定して見える視野が60度〜90度であるためである。また、目線の角度を下方向に45度とするのは、長距離ランナーの一般的な目線が、下方向に45度であることが経験的に分かっているからである。また、ランナーの姿勢を地球中心に対して垂直であるとするのは、統計的な人の走行姿勢が地球中心に対して垂直だからである。
【0037】
次に、ユーザがランニングを開始すると、ゴールに到達したかどうかを判断する(ステップT6)。ゴールに到達していない場合は、3次元ランニングコースデータ上で、開始点からの追加距離に視点が移動したとして、その視点位置からの映像をディスプレイに投影する(ステップT7)。そして、視点位置から進行方向に対する傾斜角および視点位置の進行方向に対する横方向の傾斜角をランニングマシンに出力し(ステップT8)、ステップT6に遷移する。これにより、ランニングマシンの踏み台に、視点位置から進行方向に対する傾斜角および視点位置の進行方向に対する横方向の傾斜角が付くこととなる(ステップT9)。
【0038】
一方、ランニングマシンにおける走行が継続されると、ランニングマシンから走行距離データが出力され(ステップT11)、ステップT7に遷移する。ステップT6において、ゴールに到達すると、ランニングが終了となる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、実際に道を走行するときに近い状況を作り出し、臨場感の高いランニングシミュレータを実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
10 MMSデータベース
20 制御装置
20a 取得部
20b 抽出部
20c 制御部
30 ランニングマシン
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8