(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水蒸気噴流が,2000〜3500℃の過熱水蒸気の噴流であり,1機またそれ以上の前記電気アークプラズマジェットを通じて前記反応炉の内壁の周方向における接線方向に前記水蒸気噴流を吹き込むことにより反応炉内を周方向に循環する前記水蒸気噴流の循環流を形成し,
前記循環流が形成された部分における反応炉内壁を1000〜1600℃まで加熱することを特徴とする請求項1又は2記載の固形有機原料のガス化方法。
前記酸化剤の供給を行った領域を通過した固形有機原料の温度を900〜1100℃の範囲に維持すると共に,ガス化における酸化剤消費率を0.90〜0.95の範囲に維持することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の固形有機原料のガス化方法。
前記酸化剤の供給を行った領域において前記酸化剤に過熱水蒸気を混合して導入し,該領域を通過した固形有機原料の温度を900〜1100℃の範囲に維持し,ガス化における酸化剤消費率を1.05〜1.20の範囲とすることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の固形有機原料のガス化方法。
前記蒸気プラズマ導入路を前記第1円形空洞の内壁の周方向における接線方向に,内壁面に沿った水蒸気噴流の循環流を生じるように配置したことを特徴とする請求項8記載の固形有機原料のガス化装置。
前記酸化剤導入路を,前記第2円形空洞の内壁の周方向における接線方向であって,前記第1円形空洞で生じた水蒸気噴流の循環流と同一回転方向の循環流が生じるように配置することを特徴とする請求項9記載の固形有機原料のガス化装置。
前記排出ガス通路を二重管構造とし,該排出ガス通路の一方の通路を介して前記反応炉内を吸引すると共に,他方の通路を介して前記酸化剤導入路を酸化剤供給源に連通することを特徴とする請求項8〜10いずれか1項記載の固形有機原料のガス化装置。
前記第2円形空洞の出口側の直径を,入口側の直径の0.7〜0.9倍の直径に狭めた形状としたことを特徴とする請求項8〜11いずれか1項記載の固形有機原料のガス化装置。
前記第2円形空洞の出口から,前記反応炉の前記他端に至る領域を,前記第2円形空洞の出口から前記反応炉の前記他端に向かって徐々に内径を拡大する形状に形成したことを特徴とする請求項8〜12いずれか1項記載の固形有機原料のガス化装置。
【背景技術】
【0002】
固形有機原料,一例として石炭を燃料として利用する方法としては,石炭を直接燃焼させて熱エネルギーを取り出す方法と,石炭を一旦熱分解してガス化することにより可燃性の燃料ガスを得,この燃料ガスを燃焼させることによりエネルギーを取り出す方法がある。
【0003】
一例として,このような石炭を火力発電の燃料として使用する場合を例に挙げて説明すると,前者の方法では,石炭をボイラ内で直接燃焼させて燃焼時の熱により水蒸気を発生させ,この水蒸気の圧力で蒸気タービンを回転させて発電を行う,旧来型の火力発電となる。
【0004】
これに対し,後者の例では石炭を先ずガス化炉内で熱分解し,この熱分解よって発生させた燃料ガスをガスタービン内で燃焼させた際に得られる膨張力によってガスタービンを回して発電が行われる。
【0005】
この場合,ガスタービンからの排気熱を更に利用して水蒸気を発生させ,この水蒸気によって蒸気タービンを回転させることで,ガスタービンからの排熱からも電力を回収する複合発電を行うことも可能で,より効率的なエネルギーの回収を行うことができるようになっている。
【0006】
なお,上記の例では一例として石炭を使用した火力発電を例に挙げて説明したが,熱分解によって固形有機原料をガス化して燃料ガスを得ることは,廃棄物の焼却によって電力や熱等のエネルギーを得る,ゼロエミッション型の廃棄物焼却施設等においても利用が期待されている技術である。
【0007】
ここで,一般に固相の形態を取る廃棄物等の原料の燃焼は不安定であり,固形有機原料に直接点火した場合,反応領域におけるガス化工程に必要とされる温度に迄,温度を上昇させることが困難である。
【0008】
特に,水分を多く含む廃棄物の燃焼では,水分の蒸発によって熱が奪われるために,発熱量が低くなり,燃焼自体を継続させることが難しくなる。
【0009】
また,固形廃棄物の直接焼却では,熱分解領域において有害性及び毒性成分を効率的に燃焼させる温度の達成が困難で,低い燃焼温度(一例として850℃以下)では,ダイオキシンやこれと類似の化学構造をもつ塩素化ベンゾフラン(以下,「フラン」と略称する。)を排出する可能性が高く,この点からも,固形有機原料を直接燃焼することなく,一旦,ガス化して利用することの有利性が指摘されている。
【0010】
このような固形有機原料のガス化に関し,熱エネルギーの利用効率の最大化及び灰・スラグ残物量の最小化を目的とし,プラズマアークを利用して廃棄物の有機性燃料成分をガス化する方法とその装置は既に提案されている(米国特許第5,958,264号公報:特許文献1)。
【0011】
この発明では,2つまた3つの可変電極を使った加熱ゾーンを設けたシャフト炉内に廃棄物を投入し,電気入力エネルギーを最小化させるように流量及び比率が最適化された空気及び水蒸気を前記高炉内の加熱ゾーンに供給する。
【0012】
ここでガス化工程におけるガス化速度,生成ガス成分,有機物からの炭素取除き,スラグのガラス化等は加熱ゾーンの温度によって左右され,炉内で必要とされる温度条件を確保する為の主要なエネルギー源はプラズマアークであるが,既存設備に関し公開されているデータより算出したプラズマアークによる炉内入力エネルギー分は0.1〜1.2kWh/原料kgで,最新の商業化プラント(後掲の非特許文献1記載の北海道歌志内のゴミ処理施設)においても0.3kWh/原料kg程度である。
【0013】
プラズマ式熱分解・ガラス化システムも既に提案されている (米国特許第7,665,407 В2号公報:特許文献2)。この発明では,プラズマ熱分解で生成するガスと一緒に出てくる揮発性灰量を減少させるために,プラズマトーチが主反応器内の排ガスを循環させる。揮発性灰の粒子は溶融し,遠心力で炉内壁に吸着される。
【0014】
プラズマ式ガス化反応炉も既に提案されており(米国出願公開第2010/0199557 А1号公報:特許文献3),ここにおいて高発熱量の固形有機原料層,例えばコークスの位置する底部においてプラズマを発生させ,上部に行くに従い広がる側壁形状の上蓋のある反応容器が開示されている。この発明に於いては反応容器形状,そして生成ガス出口管及び原料投入管の形状に関する3点に特徴がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上で説明したように,固形有機原料をガス化して燃料ガスを得る方法及び装置は,従来より種々提案されているものの,このようなガス化方法及びガス化装置の工業的,商業的な利用は依然として進んでいない。
【0018】
このような固形有機原料のガス化方法やガス化装置の工業的あるいは商業的な利用が進んでいない主な原因は,ガス化装置の製作費が高いこと,及びガス化装置のランニングコストが,得られた燃料ガスを利用して得られる電気エネルギーや熱エネルギーの販売益を上回ることにある〔参照:「Technical and economic analysis of Plasma-assisted Waste-to-Energy processes」Caroline Ducharme, Columbia University September 2010 (http://www.seas.columbia.edu/earth/wtert/sofos/ducharme_thesis.pdf#search='Technical+and+economic+analysis+of++Plasmaassisted+WastetoEnergy+processes+By+Caroline+Ducharme')〕。
【0019】
ここで,それぞれの国や地方の経済的な条件に拘わらず,ガス化装置の製作費及びランニングコストは,ガス化装置に装備するプラズマ発生装置の出力に比例し,高出力のプラズマ発生装置を装備する程,ガス化装置の製作費及びランニングコストは高くなり,また,ガス化装置自体も大型化する。
【0020】
従ってガス化装置全体の処理能力を低下させることなく,ガス化装置に装備するプラズマ発生装置として,より小型で低出力のものを使用することができれば,ガス化装置の製作費とランニングコストを減少させることができるだけでなく,ガス化装置全体の小型,軽量化をも実現することが可能となる。
【0021】
なお,既存の装置におけるプラズマによるガス化の平均的な効率(原料の保有エネルギー量と合成ガス生成に使われたエネルギー量の総和に対する,生成された合成ガスの熱エネルギー量の比率)は42%程度であり,また,プラズマ以外での一般的なガス化による平均的な効率は72%程度であり,未だ改善の余地は大きい。
【0022】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,ガス化における上記平均的な効率を前提とし,この効率を高めることができるようにすることで,従来の処理装置と同等以上の処理能力の実現を,従来の処理装置に比較してより小型,低出力のブラズマ発生装置を使用して行うことができるようにすることで,プラズマ方式によるガス化のメリットと能力を維持しながら,装置全体の小型軽量化,製作費やランニングコストの抑制を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本願発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0024】
上記目的を達成するために,本発明の固形有機原料のガス化方法は,
円筒形の反応炉10内の一端(上端)側より乾燥した粒状の固形有機原料を導入し,前記反応炉10内に前記一端(上端)側から他端(下端)側に向かって前記反応炉10の軸線方向に移動する原料柱を形成し,
前記反応炉10の中間領域(第1円形空洞11)において電気アークプラズマジェット30で発生した高温度の水蒸気噴流を噴射して前記固体有機原料中の有機成分を一部ガス化させて燃料ガスを発生させ,
前記燃料ガスを発生させた領域(第1円形空洞11)に対し前記他端(下端)寄りの領域(第2円形空洞12)において反応炉10内に酸化剤(空気,富酸素空気,又は酸素)を吹き込んで,前記燃料ガスを燃焼させ,前記酸化剤の供給を行った領域(第2円形空洞12)の内部平均温度を1100〜1600℃に加熱して,この酸化剤の導入を行った領域(第2円形空洞12)と該領域に対し前記他端(下端)寄りにある領域(ガス化促進領域13)において前記固形有機原料中に残留する有機分を完全にガス化し,
前記他端(下端)側において前記反応炉10内を(排出ガス通路21を介して)吸引し,固形有機原料より生成した燃料ガスを850℃以上,一例として850〜1000℃の温度で取り出すことを特徴とする(請求項1)。
【0025】
上記固形有機原料のガス化において,前記酸化剤の吹き込みを,燃料当量比が0.7〜3.0の混合気とすることが好適である(請求項2)。
【0026】
上記固形有機原料のガス化において,前記水蒸気噴流が,2000〜3500℃の過熱水蒸気の噴流であり,1機またそれ以上の前記電気アークプラズマジェット30を通じて前記反応炉10の内壁の周方向における接線方向に前記水蒸気噴流を吹き込むことにより反応炉内を周方向に循環する前記水蒸気噴流の循環流を形成し,
前記循環流が形成された部分における反応炉内壁(第1円形空洞11の内壁)を1000〜1600℃まで加熱する(請求項3)。
【0027】
更に,前記酸化剤は,200〜600℃に加熱した状態で前記反応炉10内に吹き込む(請求項4)。
【0028】
前記酸化剤の供給を行った領域(第2円形空洞12)を通過した固形有機原料の温度(ガス化促進領域13における固形有機原料の温度)を900〜1100℃の範囲に維持すると共に,ガス化における酸化剤消費率αoを0.90〜0.95の範囲に維持するようにする(請求項5)。
【0029】
又は,前記酸化剤の供給を行った領域(第2円形空洞12)において前記酸化剤に過熱水蒸気を混合して導入する場合,該領域(第2円形空洞12)を通過した固形有機原料の温度(ガス化促進領域13における固形有機原料の温度)を900〜1100℃の範囲に維持し,ガス化における酸化剤消費率αoを1.05〜1.20の範囲とする(請求項6)。
【0030】
前記酸化剤の供給を行う領域(第2円形空洞12)において,該領域を通過する前記原料柱の移動速度を減速させる(請求項7)。
【0031】
また,本発明の固形有機原料のガス化装置1は,
一端(上端)より投入された原料を他端(下端)側に移動させつつ処理する円筒形の反応炉10内の中間領域に,該反応炉10の内径を拡張して形成した第1円形空洞11と,
前記第1円形空洞11に対し前記反応炉10の内径の0.1〜0.5倍の距離を隔てた前記他端寄りの位置で前記反応炉の内径を拡張して形成した第2円形空洞12を設け,
前記反応炉10外に配置された電気アークプラズマジェット30が噴射した高温の水蒸気噴流を導入する蒸気プラズマ導入路22を前記第1円形空洞11において前記反応炉10内の空間に連通し,
加熱された酸化剤を導入する酸化剤導入路23を前記第2円形空洞12において前記反応炉10内の空間に連通すると共に,
前記反応炉10内を吸引する排出ガス通路21を,前記他端側において前記反応炉10内に連通したことを特徴とする(請求項8)。
【0032】
上記構成の固形有機原料のガス化装置1において,前記蒸気プラズマ導入路22は,これを前記第1円形空洞11の内壁の周方向における接線方向に,内壁面に沿った水蒸気噴流の循環流を生じるように配置する(請求項9)。
【0033】
また,前記酸化剤導入路23を,前記第2円形空洞12の内壁の周方向における接線方向であって,前記第1円形空洞11で生じた水蒸気噴流の循環流と同一回転方向の循環流が生じるように配置する(請求項10)。
【0034】
更に,前述の排出ガス通路21は,これを二重管構造とし,該排出ガス通路21の一方の通路(内側通路21a)を介して前記反応炉10内を吸引すると共に,他方の通路(外側通路21b)を介して前記酸化剤導入路23を酸化剤供給源(図示せず)に連通する(請求項11)。
【0035】
なお,前記第2円形空洞12は,その出口(下端)側の直径を,入口(上端)側の直径の0.7〜0.9倍の直径に狭めた形状とする(請求項12)。
【0036】
また,前記第2円形空洞12の出口から,前記反応炉10の前記他端に至る領域(ガス化促進領域13)を,前記第2円形空洞12の出口から前記反応炉10の前記他端に向かって徐々に内径を拡大する形状に形成する(請求項13)。
【発明の効果】
【0037】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の固体有機原料のガス化方法及びガス化装置1によれば,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0038】
反応炉10の中間領域に設けられた第1円形空洞11において蒸気プラズマにより固形有機原料中の有機成分の一部をガス化して,高反応性の燃料ガスを生成すると共に,この燃料ガスを第2円形空洞12において酸化剤(空気,富酸素空気,又は酸素)と合流させて燃焼させることで,蒸気プラズマによるエネルギー量の数倍(約2〜5倍)の熱量を発生させ,これらのエネルギーの総和(プラズマの電気エネルギーと,高反応性の燃料ガスを燃焼させることにより得られる熱エネルギーの総和)によって,固体有機原料中に残留している有機成分の完全なガス化を行うことで,従来のプラズマ型のガス発生装置に比較して,小型のプラズマ発生装置を使用した場合であっても,効率的に燃料ガスを発生させることができた。
【0039】
このように,本発明では,より小型のプラズマ発生装置を使用することが可能となった結果,ガス化装置の製造費,ランニングコストを低く抑えることができると共に,ガス化装置全体を小型,軽量化することができた。
【0040】
また,ガス化装置の製造費及びランニングコストを低く抑えることで,ガス化で得た燃料ガスによって得られる電力や熱等の販売益が相対的に高まり,その結果,工業的,あるいは商業的なベースに乗り得る,固体有機原料のガス化方法及びガス化装置を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0042】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0043】
〔ガス化装置の構成〕
図1〜4中の符合1は,本発明のガス化装置であり,このガス化装置1は,断熱材3によって囲まれた,耐火材料から成る円筒形の反応炉10と,前記反応炉10内に固形有機原料を投入する供給装置40,前記反応炉10内に蒸気プラズマを導入するプラズマジェット30(
図3,4参照),及び,前記反応炉10内に空気,富酸素空気,あるいは酸素等の酸化剤を導入する,図示せざる酸化剤供給源を備えている。
【0044】
前述の反応炉10上には,電動機41付きの供給装置40が設けられており,この供給装置40により,反応炉10内に破砕した廃棄物,木材,木炭,石炭等の粒状の固形有機原料が,電動機41によって回転する攪拌羽根42によって定量ずつ供給できるようになっている。
【0045】
この反応炉10の中間領域には,反応炉10の内径を拡張して形成された第1円形空洞11が形成されていると共に,この第1円筒空洞11に対し,反応炉10の内径を0.2〜0.5倍した距離を介した下方に,同様に反応炉10の内径を拡張して形成された第2円形空洞12が設けられている。
【0046】
この第2円形空洞12は,その底部において徐々に直径を狭める形状に形成されており,最狭部となる第2円形空洞12の出口は,第2円形空洞12の入口の直径に対し0.7〜0.9倍の直径にまで狭められている。
【0047】
そして,前述の第2円形空洞12の出口は,第2円形空洞12の出口の直径から下方に向かって直径を拡大する形状に形成されたガス化促進領域13に連通されている。
【0048】
このように形成された反応炉10の外部には,少なくとも1機の電気アークプラズマジェット30が設けられており,この電気アークプラズマジェット30で発生した蒸気プラズマを,蒸気プラズマ導入路22を介して前述した第1円形空洞11内に導入することができるようになっている。
【0049】
この蒸気プラズマ導入路22は,前述の第1円形空間11の内壁面において,該内壁面の円周方向に対する接線方向に蒸気プラズマを導入することができるように設けられており,蒸気プラズマ導入路22を介して第1円形空洞11内に蒸気プラズマを導入することで,過熱水蒸気の噴流を第1円形空洞11内で循環させることができるようになっている。
【0050】
反応炉10の底部には,反応炉10内に水蒸気を供給することができるよう,導入された水を熱交換によって加熱して水蒸気を発生させる円形交換器9が取り付けられており,ここで発生させた水蒸気をプラズマジェットや,必要に応じて第2円形空洞12に導入される酸化剤に混入し,あるいは,ガス化促進領域13の下部より流入させる蒸気として使用することで,水蒸気発生の際の熱交換により反応炉下部の冷却が図られていると共に,この円形交換器9の下に,残灰を強制排出するための電動機51を備えた残灰排出装置50を取り付けている。
【0051】
反応炉10内の下部付近には,反応炉10内の生成ガス(燃料ガス)を排出するための排出ガス通路21が設けられている。この排出ガス通路21は,図示の実施形態において二重管によって構成されており,内側通路21aを介して反応炉10内で生成した燃料ガスを吸引して排出することができる他,外側通路21bを介して第2円形空洞12に対し酸化剤(空気,富酸素空気,酸素)を導入するために使用できるようになっている。
【0052】
このような酸化剤の導入を可能とするために,排出ガス通路21の反応路10とは反対側の端部付近に酸化剤供給用の継手21cが設けられており,この継手21cに図示せざる酸化剤供給源からの配管等を接続可能にしていると共に,反応炉10寄りの位置において,外側通路21bに第2円形空洞12に酸化剤を導入する酸化剤導入路23を連通することで,図示せざる酸化剤供給源より供給された酸化剤は,排出ガス通路21の外側通路21bを通過する際に,内側通路21aを通過する燃料ガスとの熱交換によって加熱され,このようにして加熱された酸化剤を第2円形空洞12内に導入することができるようになっている。
【0053】
前述の酸化剤導入路23は,第2円形空洞12の内壁面において,該内壁の周方向に対する接線方向に開口されており(
図2参照),この酸化剤導入路23を介して酸化剤を導入することで,前述した第1円形空洞11内で生じる水蒸気噴流の循環方向と同一の回転方向を成す酸化剤の循環流が生じるように構成されている。
【0054】
〔ガス化方法〕
以上のように構成された本発明のガス化装置1を使用して,下記の方法で固形有機原料のガス化が行われる。
【0055】
含有水分量を15〜20%にまで乾燥し,破砕した固体有機原料を供給装置40に投入すると,供給装置40は,電動機41によって回転される攪拌羽根42によって原料を定量ずつ反応炉10内に供給する。
【0056】
反応炉10内で熱分解されて生じた固形有機原料の残灰は,反応炉10の下部に設けられた残灰排出装置50によって機外に強制的に排出されることから,反応炉10内に投入された固形有機原料は,重力によって固形有機原料の粒子同士に隙間が形成された状態で折り重なって,全体として多孔質体に類似した状態で,反応炉10内を軸線方向に通過する,原料柱を形成する。
【0057】
電気アークプラズマジェット30において発生した高温度(2000〜3500℃)の蒸気プラズマは,蒸気プラズマ導入路22を介して第1円形空洞11内に接線方向に導入された後,固形有機原料の粒子間の隙間を介して前方へ流れて,第1円形空洞11内を循環する渦状の流れを形成する。
【0058】
この蒸気プラズマの渦流によって,第1円形空洞11の内壁面は1000〜1600℃に加熱され,蒸気プラズマによる直接の過熱と,反応炉の赤熱壁との接触によって第1円形空洞11内の固形有機原料中の有機成分の一部(15〜30質量%)がガス化すると共に,水蒸気と反応して下記の総括反応式で示される反応によって燃料ガスが生成される。
【化1】
【0059】
2000℃以下の蒸気プラズマを反応炉10内に噴射する場合,反応炉壁の過熱温度が低下すると共に原料柱に対する加熱量も減少するためガス化速度も低下する一方,第1円形空洞11内に導入する過熱蒸気の温度を3500℃以上とする場合,解離再結合が起こり水蒸気の熱伝導が急激に上昇することで,電気アークプラズマジェット30及び蒸気プラズマ導入路22の冷却にかかるロスが急速に増加することから,前述したように第1円形空洞11内に導入する蒸気プラズマの温度は2000〜3500℃とする。
【0060】
また,反応炉壁の加熱温度が1000℃未満では有機物の反応速度が低下して変換率が低下する一方,反応炉壁温度が1600℃を越えると,反応炉の寿命や耐久性に関して深刻な問題が生じ得ることから,反応炉壁の加熱温度が1000〜1600℃の範囲となるよう,第1円形空洞11に対し導入する蒸気プラズマの温度を,前述した2000〜3500℃の範囲内で調整する。
【0061】
反応炉10内の空間は,排出ガス通路21を介して機外より吸引されていることから,この影響によって第1円形空洞11において生成された燃料ガスは,1100〜1200℃程度の温度で反応炉10の内壁に沿って下方へ移動し,第2円形空洞12(
図1参照)内に導入される。
【0062】
この第2円形空洞12には,前述した第1円形空洞11で発生させた水蒸気噴流の循環(回転)方向と同一の循環(回転)方向の渦流が生じるように,第2円形空洞12の内壁面の円周方向に対する接線方向に,符合23(
図2参照)で示す酸化剤導入路を介して酸化剤(空気,富酸素空気,又は酸素)が吹き込まれる。
【0063】
この酸化剤は,継手21cを介して二重管として構成された排出ガス通路21の外側流路21bを介して前述の酸化剤導入路23に導入されるように構成されており,排出ガス通路21において,排出ガス通路21の内側通路21aを通って排出される燃料ガスとの熱交換によって200〜600℃に加熱され,このようにして加熱された酸化剤を第2円形空洞12内に導入することで,第1円形空洞11内で発生し,その後,第2円形空洞12内に導入された燃料ガスは,酸化剤の噴流と合流後においても点火温度(650℃以上)を越えており,酸化剤と激しく反応して燃焼し,これにより第2円形空洞12内において局部温度2227℃以上の火炎流が発生する。
【0064】
酸化剤の加熱温度が200℃未満の場合では酸化及びガス化のプロセスに殆ど影響を及ぼさず,600℃を越えるように加熱する場合,熱交換によって燃料ガスの熱を過剰に奪い,排出される燃料ガスの温度が許容温度である850℃よりも低下して,反応炉を出た後,ハロゲンと炭化水素との結合により,ダイオキシンやフランを発生させる可能性があり,導入する酸化剤の温度は200〜600℃とした。
【0065】
この燃料ガスの燃焼による出力の最高値を達成するには,燃料当量比(燃料ガスの質量/酸化剤の質量)αfを0.7〜3.0,好ましくは1.5〜3.0とする濃混合の状態で燃焼を行う。酸化における総括主反応は,
【化2】
となる。
【0066】
このようにして燃料ガスを燃焼させることで,反応炉の第2円形空洞12の周辺に存在する原料柱の部分には酸化領域が発生し,第2円形空洞12の内部平均温度は1100〜1600℃に達する。
【0067】
このようにして,第2円形空洞12で発生した熱の影響で,原料柱全体が,断熱された濾過燃焼条件の下で1100〜1600℃の平均温度にまで加熱された後,第2円形空洞12の下方に設けられたガス化促進領域13に導入される。
【0068】
反応炉内の第2円形空洞12の下方に位置するガス化促進領域13において,第2円形空洞12で酸化に使用されなかった過剰の酸化剤と燃料ガスの燃焼生成物とが,落下する原料柱に対し横方向に吹き付けられ,固形有機原料中に残留している主要な有機成分の熱分解が行われる。
【0069】
第2円形空洞12内で加熱された固形有機原料は,平均温度を900〜11000℃の範囲で,化学量論のガス化に対する酸化剤消費率αを0.90〜0.95の範囲に維持する。
【0070】
固形有機原料の温度が900℃未満の場合,残留炭分が増加し,1100℃を越える場合では,固形有機原料の溶けた塊が残留し,有機性不純物の焼却性能が悪化する。
【0071】
また,酸化剤消費率αが0.90未満の場合,熱分解にかかる消費電力が増加し,熱分解段階では,排ガスにおいて不完全燃焼が増加する一方,酸化剤消費率αが0.95を越えると,熱分解の温度レベルが上昇し,装置の底部に設けた火格子が燃えるおそれがある。
【0072】
なお,第2円形空洞12に対し導入する酸化剤としては,前述の空気,富酸素空気,酸素である酸化剤と共に,過熱水蒸気を導入するものとしても良い。この場合,ガス化促進領域13内における残留有機成分の熱分解段階における温度を,900〜1100℃の範囲で,酸化剤消費率αを1.05〜1.20の範囲に維持する。
【0073】
900℃以下の場合,スラグにおける未燃焼が増加し,1100℃以上の場合,灰分の溶解及び格子の汚染が起こす。
【0074】
酸素消費率αが1.05未満の場合,酸化剤の残留炭素との質量交換が悪化し,不完全燃焼が増加する。酸化剤消費率αが1.20を越える場合,プロセスにかかるエネルギー消費(燃料と電力)の増大に繋がる。
【0075】
反応炉10内に投入された原料柱の減少速度はガス化速度に比例し,ガス化された固形有機原料の有機分の質量は,揮発性成分の分離量,残留炭素がガス化された質量に等しく,固形有機原料の減少と残灰の排出に伴って原料柱が下方に移動して連続的な処理が行われると共に,生成された燃料ガスは,排出ガス通路21を介して通風機により吸引されて,排出ガス通路21を通過する際に酸化剤との熱交換が行われて850〜1000℃の温度で機外に排出される。
【0076】
第2円形空洞12における固形有機原料の平均温度範囲が1100〜1600℃,反応炉の出口における燃料ガスの温度範囲が850〜1000℃の範囲となるよう,プラズマにより生成した過熱蒸気により供給される熱量とこれにより生成された燃料ガスの燃焼による化学的熱量との比率を決定する。
【0077】
なお,本発明のガス化装置1では,原料柱の移動方向(反応炉の高さ方向)に沿って温度ゾーンが設定されることとなり,各温度ゾーンにおいて,前述したプロセスが行われる。
【0078】
反応炉の上部(第1円形空洞11よりも上方)では,内部の平均温度が100〜250℃となり廃棄物等である固形有機原料の乾燥が行われ,第1円形空洞11では内部平均温度1000〜1300℃にて原料の一部が蒸気プラズマによりガス化され,その下部の第2円形空洞12では1100〜1600℃の内部平均温度にて燃料ガスの一部の酸化(燃焼)による発熱が行われ,第2円形空洞12からその下方にあるガス化促進領域13において,固形有機原料中の残留有機分を濾過燃焼させると共に,固形有機原料の分解により生じた無機分の無酸素ガス化及び,完全燃焼生成物の還元による合成ガス生成が行われ,主にCO+H
2の成分となる。
【0079】
第1円形空洞11において,蒸気プラズマによって加えられた熱により,固形有機原料は吸熱反応を起こし,その一部が燃料ガスへと変換される。固形有機原料の化学的エネルギーはここでロスするものではなく,燃料ガスの化学的エネルギーと熱エネルギーに変換される。
【0080】
原料がバイオマスの場合,生成されるエネルギーは入力電力エネルギーのおよそ3倍となり,このエネルギーは第2円形空洞12において生成され,固形有機原料の全体を1100〜1600℃に加熱することで,固形有機原料の完全なガス化に使用される。
【0081】
本発明のガス化方法によれば,固形有機原料の処理能力を維持しつつ,電気アークプラズマジェット30に対して初期入力される電気エネルギー,及び稼働中の消費電力を3〜5分の1に迄減少させることができ,既存の工業プロセス(先に非特許文献1として紹介した北海道歌志内の処理施設)を基に比較すると,本発明のガス化装置1では,非特許文献1の処理装置において300kWのプラズマジェットを4機使用していたのに対し,同様の処理能力を,75kWのプラズマジェット4機の設計に変更することができ,プラズマジェットの小型化に伴い,ガス化装置の製作費を低減出来ると共に,使用電力が4分の1(75kW/300kW=1/4)程度に減少できることで,ランニングコストの削減に繋がり,商業ベースで考えた場合の大きな利点と成る。
【0082】
本発明において,ガス化装置1を構成する各部の新規な連通構造,形状,サイズ及びこれらの組み合わせは重要な特徴であり,既に説明したように本願のガス化装置1では,円筒状の反応炉10の中間部分に設けた第1円形空洞11が構成され,この第1円形空洞11の下方に,反応炉の直径の0.2〜0.5倍の距離を隔てて,第2円形空洞12を構成したこと,第2円形空洞12底部の直径を徐々に減じて最狭部(第2円形空洞12の出口)の直径を上端部(第2円形空洞12の入口)の直径の0.7〜0.9倍の直径に狭めたこと,さらに,第2円形空洞12の下方に形成したガス化促進領域13の形状を,前記最狭部から更に下方に向かって直径を拡大する形状に構成している。
【0083】
また,電気アークプラズマジェット30で発生した蒸気プラズマを,前記第1円形空洞11内に蒸気プラズマ導入路22を介して接線方向に導入して水蒸気噴流の循環流を発生させ,また,第2円形空洞12内に加熱した酸化剤を,第1円形空洞11における水蒸気噴流の循環流と同一の回転方向の循環流が生じる向きで,酸化剤導入路23を介して接線方向に導入する。
【0084】
このように各部を構成することにより,本発明のガス化装置1では,比較的燃え難い,粒状の固形有機原料の一部が,第1円形空洞11において主にCOとH
2を含有する高反応性の燃焼ガスとなり,その後,第2円形空洞12において,先に生じた燃料ガスが燃焼することにより,固形有機原料全体が激しく加熱され,これにより固形有機原料に残留する有機成分がガス化される。
【0085】
酸性環境において粒状の固形有機原料がガス化する速度,すなわち,燃焼のみでガス化する速度に比べ,本発明では,蒸気プラズマによる有機成分の一部ガス化と,このガス化により得られた燃料ガスの燃焼という混合プロセスによって,固体有機原料中に残留する有機分の完全なガス化を行うことから,ガス化速度を大幅に向上させることができ,その結果,固形有機原料の化学的エネルギー出力の効率上昇により,電気アークプラズマジェット30の消費電力を3〜5分の1にまで低減することができる。
【0086】
蒸気プラズマによるガス化を行う第1円形空洞11と,生成された燃料ガスの燃焼を行う第2円形空洞12間の距離を,反応炉の直径の0.1〜0.5倍の範囲に選定する理由は,0.1倍未満の距離で設ける場合,水蒸気噴流が第2円形空洞12に迄流れ込み,燃焼反応を抑制させるためであり,また,0.5倍を越える距離で設ける場合,第1円形空洞11で発生した燃料ガスが固形有機原料の粒子間の隙間に流れ込んでしまい,第2円形空洞12に導入される燃料ガスが減少して発熱量が大幅に低下してしまうためである。
【0087】
また,第2円形空洞12の底部直径を徐々に狭め,最狭部である第2円形空洞12の出口の直径を,第2円形空洞12の入口の直径に対し0.7〜0.9倍の範囲に迄狭めたこと,この第2円形空洞12の出口から更に下向きに直径を拡げる形状のガス化促進領域13を設けたことにより,固形有機原料の第2円形空洞12の出口通過が規制されることにより,最も熱出力が高い,第2円形空洞12内における固形有機原料の滞留時間が長くなり,原料の加熱が促進されると共に,第2円形空洞12において固形有機原料の量が一部ガス化する事により少なくなる事と,その下部にあるガス化促進領域13において,壁面温度がスラジ溶解温度より高くなることから,ガス化促進領域13の裾を広げることで,スラジが炉の内壁に付着することを防止している。
【0088】
また,過熱水蒸気の噴流,及び酸化剤の導入により発生する火炎流の噴流方向と原料の移動方向とが相互に直交方向の循環流を形成することにより,原料柱を取り囲むようにその外周側からの加熱が行われることで,原料柱内に熱を閉じ込めた断熱状態で効率的に濾過燃焼を行うことができる。
【0089】
反応炉の最大熱出力領域,すなわち第2円形空洞12の底部出口の直径は,固形有機原料の質量減少速度に適合させたもので,入口の直径に対し0.7未満の場合,原料の進み(落下)が遅くなりすぎて熱焼損発生の可能性がある。一方,上端部の直径に対し0.9を越える場合,原料の進みが早くなり,未反応の原料分が増加した状態でガス化促進領域13内に流れてしまうことになる。
【実施例】
【0090】
〔蒸気プラズマと他の方法によるガス化の比較〕
固形有機原料である鶏糞を本発明の方法によりガス化した。処理前の鶏糞の成分を表1に,ガス化により得られた燃料ガスの成分を表2にそれぞれ示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
本発明の方法により得られた燃焼ガスの低位発熱量(LHV)は12.09
MJ/kgであり,断熱燃焼温度は1937℃であった。
【0094】
鶏糞を原料とした場合,鶏糞1kg当たりを熱分解する際に使用される酸化剤消費量g(g/kg)は,それぞれ下記の通りとなる。
【0095】
【表3】
【0096】
上記表3の結果から,蒸気プラズマ式のガス化では,空気プラズマ式のガス化に比較して酸化剤(酸素)の消費量が大幅に少なくなっており,このことから,過熱蒸気が酸化剤としての機能を有していることが判る。
【0097】
すなわち,反応炉の第1円形空洞11において原料層に蒸気プラズマを与えることで,原料が加熱され,次第に水分や揮発分が固相からガス状に変換,つまり蒸発する。それと同時に,下記の主反応により,ガス状の揮発性分のホモジニアス変換が行われる。
【化3】
【0098】
反応炉内における原料柱の減少量は,原料中の水分及び揮発性成分の蒸発による消費比率である0.25に略対応する。原料柱が消費されるに従って,原料柱全体が下方に移動して,第1円形空洞11内にあった固形有機原料が第2円形空洞12に近づき,第1円形空洞11の上方にある乾燥領域にあった固形有機原料が第1円形空洞11に導入される。
【0099】
次に,残留炭素と水蒸気のヘテロジニアス反応が,下記の主反応により,行われる。
【化4】
【0100】
拡散動力学的モードにおいて,ヘテロジニアス反応が行われるため,蒸気の乱流・渦流により,反応剤(蒸気)は残留炭素に送られ,ガス化生成物が排出される。
【0101】
第1円形空洞11内の原料柱の外層部分における水素(H
2)及び酸化炭素(CO)の濃度プロファイルを調査することにより,それらの濃度と固相における炭素の質量濃度変化との間に相互関係があるという重要な事実が判明した。すなわち,本発明の方法において,水素及び酸化炭素の質量濃度変化の主な要因が,固形有機原料に含まれる炭素が蒸気化したものであることが判る。
【0102】
従って,炭素原子のモル流束に対する水蒸気のモル流束比率を調整することにより,ガス化生成物の成分を決定することができ,第1円形空洞11において,化学量論的な理想値に近いガス化を行うことができる。
【0103】
図5(A)〜(D)は,プラズマにより鶏糞のガス化を行った際の温度と,合成された燃料ガスの成分変化を示したグラフであり,
図5(A)は空気プラズマ245gを使用した例(比較例1),
図5(B)は空気プラズマを1200g使用した例(比較例2),(C)は蒸気プラズマを64g使用した例(実施例1),(D)は蒸気プラズマ314gを使用した例(実施例2)をそれぞれ示す。
【0104】
図6は,実施例1,2及び比較例1,2において単位質量(1kg)あたりの原料の処理に必要な電力消費量(MJ/kg)を,更に,
図7は実施例1,2及び比較例1,2において単位質量(1kg)の原料から得られる燃料ガスの出力エネルギー(MJ/kg)を示す。
【0105】
図5(A)〜(D)の結果から,蒸気プラズマを使用した本発明のガス化方法では,空気プラズマを使用した場合に比較して,より少量のプラズマによって同等成分の燃料ガスが得られることが確認できた。
【0106】
なお,ガス化において原料1kgあたりの処理に必要な蒸気プラズマの消費量は,原料である固形有機原料の材質によっても異なるが,前掲の鶏糞を処理対象とした場合で64g/kg(実施例1),乾燥木材を処理対象とした場合で326g/kg,廃タイヤを処理対象とした場合で1.2kg/kgであった。
【0107】
また,
図6及び
図7より,蒸気プラズマを使用した本発明のガス化では,空気プラズマを使用した場合に比較してより少ない電力消費量によって,より出力エネルギーの高い燃料ガスが得られることが確認されており,蒸気プラズマを使用してガス化を行う場合には,空気プラズマを使用してガス化を行う場合に比較して,最大で約3倍の効率の向上が得られることが確認された(
図6の実施例2と比較例2の比較)。
【0108】
なお,破砕した木材を原料とした蒸気プラズマによるガス化において,処理温度の変化によって生成されるガスの成分にどのような相違が生じるかを測定した結果を,
図8に示す。
【0109】
図8に示す結果より,約1300K(1026.84℃)を越えたあたりでH
2,COの発生量がピークを迎え,その後,H
2,COの発生量は温度の上昇によって殆ど変化せずに一定値を維持することから,固形有機原料の加熱温度が1100℃以上となるような条件で加熱を行うことが有利であり,このような温度は第1円形空洞11内の接線方向に2000〜3500℃に過熱された水蒸気を吹き込むことにより実現することができる。
【0110】
〔粒径の影響〕
反応ガスの温度変化に対する粒径別の木材粒子の表面温度の変化を
図9に,反応ガスの温度変化に対する粒径別のガス化率の変化を
図10にそれぞれ示す。
【0111】
図9及び
図10より明らかなように,反応ガス(過熱蒸気)の温度が同じであっても,処理対象とした木材の粒径が小さくなる程,木材の表面温度が上昇すると共に,ガス化率が上昇することが判り,粒径の減少に伴う原料の表面積の拡大に伴い,過熱蒸気によるガス化の促進を図ることができることが判る。
【0112】
原料である固体有機原料の粒子面において,発生するガス成分中における酸化炭素(CO)及び水素(H
2)の発生率を向上させるためには,反応炉壁から粒子面に向けた熱流を増やす必要があり,放射による熱流は表面積に比例するので,壁の温度上昇のみならず,固形有機原料の粒子径の減少に伴う表面積の増大によってもこれを達成することができ(
図9,10参照),破砕した状態の固形有機原料を処理対象とすることの有利性が裏付けられる。
【0113】
〔燃焼時における酸化剤との混合比(燃料当量比)〕
燃料ガスの燃焼時における燃焼速度,発熱速度(
図11参照),及び火炎伝播速度〔
図12(A)〜(C)参照〕は十分早いので,第2円形空洞12において,燃料ガスの燃焼による熱出力が,原料を遅滞なく加熱する。
【0114】
図12(A)〜(C)は,反応炉内に近い条件において,酸化炭素(CO)と水素(H
2)の配合が異なる3つの試料に対し燃料当量比(燃料ガスの質量/酸化剤の質量)の変化に伴う火炎速度の変化を測定した結果である。
【0115】
火炎伝播速度は酸化炭素(CO)の含有率が増加するに従い低下し,初期温度が上昇すれば,伝播速度も増加するが,いずれの例においても,燃料当量比αfが約2程度の高濃度のガスにおいて伝播速度はピークに達しており,この数値の前後を含めた,燃料当量比αfが0.7〜3.0,好ましくは1.5〜3.0の濃混合気の範囲であれば,いずれも高い熱伝播率を得られることが判る〔
図12(A)〜(C)〕。
【0116】
なお,燃料当量比は,第1円形空洞11においてガス化せずに残った固形有機原料の化学量論に基づき第1円形空洞11における燃料ガスの発生量を求めることにより算出した。
【0117】
〔効果確認試験〕
試験例1
実験装置を使用して,下記の表4に示す条件にて本発明の方法による固形有機原料のガス化を行った。このガス化によって生成された燃料ガスの成分を表5にそれぞれ示す。
【0118】
【表4】
【表5】
【0119】
上記試験例では,燃料当量比を1としたときに燃焼生成物の燃焼温度が最高値を達成し,バイオマスを処理した場合の燃焼生成物の最高燃焼温度は1900℃,廃棄物の混合モデルを処理した場合の燃焼生成物の最高燃焼温度は1700℃となった。尚,燃焼生成物中の酸化炭素(CO)は0.5%以下となった。
【0120】
バイオマスをガス化した試験例では,発熱量11.03MJ/m
3の燃料ガスが,12.5リットル/分で出力された。この燃料ガスの空気中における燃焼時の熱出力は2.3kWであった。
【0121】
すなわち,前述したバイオマスのガス化では,消費電力0.55kWに対し,生成ガスの燃焼により発生する化学的エネルギーは2.3kWとなる。従って,反応炉に入力した総合熱容量は,「0.55+2.3=2.85kW」であり,入力熱量(0.55kW)に対する増加は,「2.85/0.55≒
5.2倍」となり,高効率でのガス化を行うことができた。
【0122】
混合モデルをガス化した試験例では,発熱量8.17MJ/m
3の燃料ガスが,10.0リットル/分で出力された。この燃料ガスの空気中における燃焼時の熱出力は1.36kWであった。
【0123】
すなわち,前述した混合モデルのガス化では,消費電力0.55kWに対し,生成ガス燃焼により発生する化学的エネルギーは1.36kWとなる。従って,反応炉に入力した総合熱容量は「0.55+1.36=1.91kW」であり,入力(0.55kW)に対する増加分は,「1.91/0.55≒3.47倍」となり,いずれの原料を使用した場合においても,高効率でガス化を行うことができた。
【0124】
試験例2
プラズマジェット入力-100kW。ごみ(医療廃棄物)の処理能力-53kg/h,水流量-27kg/h。プラズマ噴流温度-2800℃。反応炉内温度 -1100℃。生成ガス成分,% 重量:Н
2- 65, СО- 35。発熱量 - 11,42 MJ/mn3。生成ガス出力 (1,5 mn3/kg) - 80,0 mn3。ガス燃焼時の熱量- 253 kW。炉内総合熱量353 kW。原料の化学的エネルギーにより,総合熱量は入力電力の3,53倍となる。なお,上記において「mn3」は,気温20℃における気体の立方メートルである。