特許第6041484号(P6041484)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041484
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】中性子検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/00 20060101AFI20161128BHJP
   H01J 47/12 20060101ALI20161128BHJP
   H01J 47/06 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   G01T3/00 C
   H01J47/12
   H01J47/06
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-273078(P2011-273078)
(22)【出願日】2011年12月14日
(65)【公開番号】特開2013-124899(P2013-124899A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100137383
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 清志
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 隆由
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113970(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0294946(US,A1)
【文献】 実開昭56−122968(JP,U)
【文献】 実開昭61−135282(JP,U)
【文献】 特開昭55−067674(JP,A)
【文献】 特開昭60−172155(JP,A)
【文献】 特開平04−142489(JP,A)
【文献】 特開2000−149864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/00
G01T 1/18
G01T 1/185
G01T 3/02
H01J 47/06
H01J 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが、所定の圧力で封入された3フッ化ホウ素ガス中に張架して設けられた陽極線を有し、中性子数に応じたパルス信号を発生する、複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管と、
前記複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管の陽極線が接続される1つのケーブルと、
それぞれの前記3フッ化ホウ素ガス比例計数管の陽極線と前記1つのケーブルを電気的に接続する信号線と、
前記信号線の周囲を覆う固体の電気絶縁体と、
前記複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管、前記ケーブル、前記信号線および前記電気絶縁体を収容する外筒と、
前記外筒と前記複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管の間に充填される窒素と、
を備える中性子検出器。
【請求項2】
前記電気絶縁体は、複数の円筒形状の部材を組み合わせた構造を有する請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項3】
前記円筒形状の部材はそれぞれ、前記信号線の隣り合う屈曲部に挟まれる区間を覆い、1つの部材の端部が他の1つの部材の側面を貫通している請求項2に記載の中性子検出器。
【請求項4】
前記電気絶縁体は、セラミックスから形成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の中性子検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子を計数するための3フッ化ホウ素ガス比例計数管を備える中性子検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
比例計数管はガス入り検出器の一種であり、放射線とガスが反応することにより電気信号として取り出すことができる。比例計数管の構造は、ガス中に高電界をかけ放射線とガスが反応すると高電界により雪崩現象が発生して電荷を増幅し、少ない放射線下でも放射線の測定が可能である。
【0003】
中性子を検出する比例計数管として、3フッ化ホウ素ガス比例計数管が用いられる(特許文献1参照)。また、約80℃以上の高温度の雰囲気中で使用可能な、3フッ化ホウ素ガス比例計数管が提案されている。特許文献2の3フッ化ホウ素ガス比例計数管は、高電圧印加および信号取り出し用ケーブルとしてMIケーブル(Mineral Insulated Cable)、シリカ絶縁同軸ケーブルもしくはテフロン(登録商標)絶縁同軸ケーブルを使用する。
【0004】
3フッ化ホウ素ガス比例計数管は、入射した中性子と3フッ化ホウ素ガスとの反応によって発生したフッ素ガスが、3フッ化ホウ素ガス比例計数管エレメントの寿命を短くする。特許文献3には、3フッ化ホウ素ガスを封入するガス圧を下げて、発生するフッ素ガスを減少させる技術が開示されている。特許文献3の中性子検出器は、また、ガス圧を下げることにより劣化した中性子検出感度を補償するために、3フッ化ホウ素ガス比例計数管エレメントを並列に接続して3フッ化ホウ素ガス比例計数管を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−133047号公報
【特許文献2】特開平4−121687号公報
【特許文献3】特開2000−149864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3の中性子検出器は、特許文献1に開示された3フッ化ホウ素ガス比例計数管を2本、並列に接続した構造となっている。このような構造では、2本の3フッ化ホウ素ガス比例計数管の接続部が電離箱を形成し、計測対象以外の放射線が電気信号として検出され検出精度が低下する問題があった。3フッ化ホウ素ガス比例計数管は中性子を検出するが、計測対象外の放射線とは原子炉から放出されるγ線、検出器自身の部品が放射化して放出されるγ線等の放射線である。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、中性子検出器において、計測対象外の放射線の反応により発生する、中性子検出の誤差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の観点に係る中性子検出器は、それぞれが、所定の圧力で封入された3フッ化ホウ素ガス中に張架して設けられた陽極線を有し、中性子数に応じたパルス信号を発生する、複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管を含む。そして、中性子検出器は、複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管の陽極線が接続される1つのケーブルと、それぞれの3フッ化ホウ素ガス比例計数管の陽極線と1つのケーブルを電気的に接続する信号線と、信号線の周囲を覆う固体の電気絶縁体と、複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管、ケーブル、信号線および電気絶縁体を収容する外筒と、外筒と複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管の間に充填される窒素と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の3フッ化ホウ素ガス比例計数管の陽極線と1つのケーブルを接続する信号線をそれぞれ、電気絶縁体で覆うので、信号線の周囲で発生する電子を検出することがない。その結果、中性子検出の誤差を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る中性子検出器の構造を示す斜視図である。
図2】実施の形態に係る中性子検出器の断面図である。
図3】実施の形態に係る信号線保護の為の絶縁体の断面図である。
図4】実施の形態に係る信号線保護の為の他の絶縁体の断面図と側面図である。
図5】実施の形態に係る絶縁体の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。各図において、同一または相当の部材、部位については、同一符号を付して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る中性子検出器の構造を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る中性子検出器の断面図である。図1では、中性子検出器20の外筒を省略している。中性子検出器20は、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1を2つ備える。3フッ化ホウ素ガス比例計数管1は、中性子検出器20の中心軸に対称の位置に配置される。図2の断面図は、上下対称である。
【0013】
3フッ化ホウ素ガス比例計数管1は、所定の圧力で封入された3フッ化ホウ素ガス中に張架して設けられた陽極線を有し、中性子線を検出する部分である。計数管保持金属2はチタン材等の金属で形成され、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1を2本組み合わせる為に保持する機構である。
【0014】
3フッ化ホウ素ガス比例計数管1は、陰電極を兼ねた管の内部に3フッ化ホウ素ガス等の電離ガスを兼ねた中性子有感ガスが封入されている。管の内部には、陽極線が、管の軸方向に張架して設けられている。陰電極である管と陽極線の間に高電圧を印加する。管内に入射した中性子は、電離ガスを兼ねた中性子有感ガスと核反応を起こし、正イオンと電子を生成する。さらに、生成された電子は陽極線の近傍で電離ガスを兼ねた中性子有感ガスを電離し正イオンを発生させる。この正イオンが陰電極を兼ねた管に到達することで陽極線に誘導電荷が発生する。陽極線に発生する誘導電荷によるパルス信号を、信号線12(図2参照)で3フッ化ホウ素ガス比例計数管1の外部に導き、増幅してパルスを計数することによって、中性子を検出することができる。
【0015】
3フッ化ホウ素ガス比例計数管1から出る信号線12(図2参照)は、外筒13を有するニッケル等の金属で形成され、MIケーブル8に接続される。図2の断面図に、信号線12とMIケーブルの接続状態を示す。両側の信号線12は、撚り合わされてMIケーブル8に接続される。
【0016】
絶縁体4、絶縁体5および絶縁体6はセラミック等の電気絶縁物を材料とした電気絶縁体であり、形は円筒形で内部を信号線12が通る。絶縁体4は、信号線12が3フッ化ホウ素ガス比例計数管1から出るところから、少なくとも信号線12のはじめの屈曲部までの部分を覆う。絶縁体5は、絶縁体4の側面を貫通し、信号線12のはじめの屈曲部から次の屈曲部までの部分を覆う。絶縁体5の他方の端部は、絶縁体6の側面を貫通している。絶縁体6は、新合繊12の2つ目の屈曲部からMIケーブルに接続するまでの部分を覆う。
【0017】
絶縁体4は、チタン等の金属を材料とした絶縁体保持部材3および絶縁体止まり部品7に保持される。絶縁体保持部材3は内部に絶縁体4がはまるような通り孔が形成されており、絶縁体4がまっすぐに立つようにしている。絶縁体止まり部品7は絶縁体4が絶縁体保持部材3からの抜け落ち防止の部品である。
【0018】
図2に示す外筒11はチタン等の金属でできた円筒状の部材である。上蓋9はチタン等の金属で形成され、外筒11のMIケーブル8側を封止する。下蓋10はチタン等の金属で形成され、外筒11の底を封止する。上蓋9、下蓋10、外筒11で密封容器を構成し、窒素等のガスが中に充填されている。MIケーブル8は、上蓋9を貫通し、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1で発生する電気信号を、中性子検出器20の外部に伝送する。
【0019】
図3は、実施の形態に係る信号線保護の為の絶縁体の断面図である。図3は、絶縁体4を示す。絶縁体4は、セラミック等の電気絶縁物を材料として円筒形状に形成される。絶縁体4の側面には、横穴41が形成される。横穴41に絶縁体5の一方の端部が貫入する。絶縁体5は、セラミック等の電気絶縁物を材料として円筒形状に形成される(図2参照)。
【0020】
図4は、実施の形態に係る信号線保護の為の他の絶縁体の断面図と側面図である。図4は、絶縁体6を示す。図4の(a)は、断面図、(b)は側面図である。絶縁体6は、セラミック等の電気絶縁物を材料として円筒形状に形成される。絶縁体6の端部の両側の側面にU字の切り欠き61が形成される。切り欠き61に絶縁体5の他方の端部が嵌まる。
【0021】
中性子検出器20は、上蓋9を上部とした縦向きで使用されるため、絶縁体6は絶縁体5に支えられ、また絶縁体5は絶縁体4の横穴41で支えられる。そのため、信号線12に負担がかからない構造となっている。以下、絶縁体4、5および6の作用を説明する。
【0022】
図5は、実施の形態に係る絶縁体の作用を説明する図である。図5では、中性子検出器20の3フッ化ホウ素ガス比例計数管1を、代表して1つで示す。また、絶縁体4、5および6をまとめて1つの絶縁体21で示す。信号線12は、絶縁体4、5および6で完全に覆われるので、電気的には1つの絶縁体21で覆われていると考えることができる。
【0023】
3フッ化ホウ素ガス比例計数管1から信号線12を経由して、MIケーブル8へ信号が送られる。高圧電源23は、信号線12を介して、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1の陽極に約1kVの電圧を印加している。アンプ22は、中性子検出器20の信号を増幅する。外筒13の電位はアースとする。
【0024】
ここで実際に使用されている状況を考える。3フッ化ホウ素ガス比例計数管1とMIケーブル8の接続部周辺に充填されている窒素が、γ線との反応により電子を放出する。信号線12によって発生する電界で電子が集められる。集められる電子は障害がなければそのまま信号線12へ吸収され、ノイズ信号として検出されることになる。ノイズ信号は、中性子検出の信号と区別できないので、ノイズ信号によって中性子検出の誤差を生じる。
【0025】
しかし、絶縁体21は十分に抵抗が高い電気絶縁物であるので、電子の捕獲断面積が大きい。そのため発生した電子は絶縁体21に吸収されノイズ信号の発生が抑えられる。その結果、中性子検出の誤差を低減できる。
【0026】
本実施の形態の構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1を2つ備える構成に限らず、3つ以上並列に接続される構成でも、信号線12を絶縁体で覆うことによって、同様の効果がある。3フッ化ホウ素ガス比例計数管1を3つ以上備える場合、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1は、中性子検出器20の軸に回転対称に配置されてもよいし、平面上に並べて配置されてもよい。3フッ化ホウ素ガス比例計数管1が回転対称に配置される場合は、例えば、絶縁体5を絶縁体6の周りに回転対称に配置して、信号線12を覆うことができる。3フッ化ホウ素ガス比例計数管1が平面上に配置される場合は、例えば、絶縁体5が絶縁体4と絶縁体6に貫通する位置をそれらの長手方向にずらせて配置して、信号線12を覆うことができる。
【0027】
信号線12を覆う電気絶縁体は、実施の形態の絶縁体4、5および6の構造に限らない。例えば、絶縁体4および5に相当する電気絶縁体を、3フッ化ホウ素ガス比例計数管1の軸に対して傾斜させてもよい。また、電気絶縁体は円筒状に限らず、さまざまな断面の管状でもかまわない。信号線12を完全に覆って、周囲の電子が発生する部分から電気的に絶縁できれば、同様の効果が得られる。電気絶縁体を構成する材質は、セラミックに限らず、フッ素樹脂またはシリコーンなどの電気絶縁物を用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 3フッ化ホウ素ガス比例計数管
2 計数管保持部材
3 絶縁体保持部材
4、5、6 絶縁体
7 絶縁体止まり部品
8 MIケーブル
9 上蓋
10 下蓋
11 外筒
12 信号線
13 外筒
20 中性子検出器
21 絶縁体
22 アンプ
23 高圧電源
図1
図2
図3
図4
図5