(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0017】
本発明で用いられる活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)は、活性エネルギー線照射により、アクリル系樹脂の一部分、または、アクリル系樹脂組成物中に含まれるその他硬化成分と反応しうる反応性構造部位を有するアクリル系樹脂である。
【0018】
活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)が含有する反応性構造部位としては、エチレン性不飽和
基であることが、反応性が高く、エージングを必要としない点で
必要である。
【0019】
以下、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)として、エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A1)および環状エーテル構造含有アクリル系樹脂(A2)について説明する。
【0020】
エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A1)は、分子内にエチレン性不飽和基を含有するアクリル系樹脂であればよく、例えば、分子内に官能基を有するアクリル系樹脂(x)に、分子内にかかる官能基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和化合物(y)(以下、「エチレン性不飽和化合物(y)」と記すことがある。)を反応させて得られる
ものである。
分子内に官能基を有するアクリル系樹脂(x)としては、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(x1)及び(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(x2)、必要に応じて更にその他の共重合性モノマー(x3)を共重合してなる重合体である。
【0021】
かかる官能基含有エチレン性不飽和モノマー(x1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、(メタ)アクリルアミドN−グリコール酸、ケイ皮酸、(メタ)アクリル酸のミカエル付加物(例えば、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸トリマー、(メタ)アクリル酸テトラマー、、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステル(例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、等)等のカルボキシル基含有不飽和モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、等の水酸基含有不飽和モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有不飽和モノマー、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブトキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド−3−メチルブチルメチルアミン、ジメチルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和モノマー、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸あるいはその塩等のスルホン酸基含有不飽和モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマー等が挙げられ、これらから選ばれる少なくとも1種が用いられる。中でも、カルボキシル基含有不飽和モノマー、水酸基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマー、イソシアネート基含有不飽和モノマー、アミド基含有不飽和モノマーが好適に用いられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(x2)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂環を含有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、特にはアルキル基の炭素数1〜12、好ましくは4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、具体例として、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
上記脂環を含有する(メタ)アクリル酸エステル、具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロペンテニル(メタ)アクリレート、それらのアルキレンオキシド基含有不飽和モノマー等が挙げられる。
【0025】
上記芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステル、具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレン(メタ)アクリレート、ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
その他の共重合性モノマー(x3)としては、例えば、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−(メタ)アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。
【0027】
上記の官能基含有エチレン性不飽和モノマー(x1)及びアクリル酸エステル系モノマー(x2)、必要に応じて更にその他の共重合性モノマー(x3)を共重合して、分子内に官能基を有するアクリル系樹脂(x)が得られる。
【0028】
かかる共重合に当たっては、有機溶媒中に、上記官能基含有エチレン性不飽和モノマー(x1)及びアクリル酸エステル系モノマー(x2)、必要に応じて更にその他の共重合性モノマー(x3)、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル等)を混合あるいは滴下し、還流状態あるいは50〜90℃で4〜20時間重合する。
【0029】
かかる官能基含有エチレン性不飽和モノマー(x1)、アクリル酸エステル系モノマー(x2)、その他の共重合性モノマー(x3)の含有割合としては、官能基含有エチレン性不飽和モノマー(x1)が0.1〜50重量%(好ましくは0.5〜10重量%)、アクリル酸エステル系モノマー(x2)が50〜99.9重量%(好ましくは90〜99.5重量%)、その他の共重合性モノマー(x3)が0〜40重量%(好ましくは0.1〜20重量%)であることが好ましい。
【0030】
エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A1)は、分子内に官能基を有するアクリル系樹脂(x)に、分子内にかかる官能基と反応する官能基を有するエチレン性不飽和化合物(y)を反応させるものであり、かかるエチレン性不飽和化合物(y)としては、前記のカルボキシル基含有不飽和モノマー、水酸基含有不飽和モノマー、グリシジル基含有不飽和モノマー、イソシアネート基含有不飽和モノマー、アミド基含有不飽和モノマー、アミノ基含有不飽和モノマー、スルホン酸基含有不飽和モノマー等が挙げられる。
【0031】
また、トリレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートあるいはそれらのアダクト体やイソシアヌレート体等のイソシアネート化合物と、上記水酸基含有不飽和モノマーや水酸基と複数の(メタ)アクリロイル基を持った化合物との反応物であるウレタンアクリレート型のイソシアネート基含有不飽和オリゴマーも使用できる。
【0032】
これらの中でも、イソシアネート基含有不飽和モノマー、イソシアネート基含有不飽和オリゴマー等のイソシアネート基含有不飽和化合物を用いることがアクリル樹脂(x)とエチレン性不飽和化合物(y)が反応しやすい点で好ましい。
【0033】
例えば、アクリル系樹脂(x)中の官能基がカルボキシル基の場合はグリシジル基含有不飽和モノマーやイソシアネート基含有不飽和モノマーが、該官能基が水酸基の場合はイソシアネート基含有不飽和モノマーが、該官能基がグリシジル基の場合はカルボキシル基含有不飽和モノマーやアミド基含有不飽和モノマーが、該官能基がアミノ基の場合はグリシジル基含有不飽和モノマーが、それぞれ選択され用いられるが、本発明においては特に、アクリル系樹脂(x)中の官能基が水酸基の場合で、エチレン性不飽和化合物(y)がイソシアネート基含有不飽和化合物であることが官能基の反応性に優れる点で好ましい。
但し、これらに限定されるものではない。
【0034】
エチレン性不飽和基含有アクリル系樹脂(A1)の調製にあたっては、上記の分子内に官能基をもつアクリル系樹脂(x)とエチレン性不飽和化合物(y)とを反応させるわけであるが、かかる反応は、通常20〜80℃で1〜100時間程度反応させればよく、必要に応じて適宜触媒を使用してもよい。
また、反応にあたっては、上記アクリル系樹脂(x)100重量部に対してエチレン性不飽和化合物(y)を0.001〜10重量部反応させることが好ましく、特に好ましくは0.02〜2重量部、更に好ましくは0.05〜0.5重量部である。エチレン性不飽和化合物(y)が少なすぎると凝集力不足により耐久性が低下する傾向があり、多すぎると架橋密度が上がりすぎて粘着性が低下する傾向がある。
【0035】
なお、不飽和基を含有させる方法として、効率的に出来る材料としては、官能基として、水酸基および/またはカルボキシル基を含有したアクリル系樹脂(x)と、イソシアネート基および/またはエポキシ基を含有した(メタ)アクリル系モノマーとを反応させて得られる方法が好ましく、特には、水酸基を含有したアクリル系樹脂(x)にイソシアネート基を含有した(メタ)アクリル系モノマーとを反応させることが好ましい。
【0036】
上記環状エーテル構造含有アクリル系樹脂(A2)は、上述した官能基含有アクリル系樹脂(x)における官能基含有モノマー(x1)として、環状エーテル構造含有モノマーを必須成分として用いたアクリル系樹脂であればよい。
【0037】
かかる環状エーテル構造含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等のグリシジル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸3−メチル−3−オキセタニルメチルアクリレート等のオキセタン環含有モノマーが挙げられ、これらモノマーを単独または2種以上を併用して用いればよい。
これらの中でも、オキセタン環含有モノマーが保存安定性に優れる点で好ましい。
【0038】
かかる環状エーテル構造含有モノマーの配合量としては、0.01〜30重量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量%であり、更に好ましくは0.5〜3重量部である。
かかる配合量が多すぎると凝集力が上がりすぎて粘着性が低下する傾向があり、少なすぎると凝集力が低下する傾向がある。
【0039】
環状エーテル構造含有アクリル系樹脂(A2)の製造方法は、上述した官能基含有アクリル系樹脂(x)の製造方法に準じて製造すればよい。
【0040】
本発明における活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、
30万〜500万
であり、好ましくは30万〜150万、特に好ましくは50万〜70万である。重量平均分子量が小さすぎると、耐久性能が低下する傾向があり、大きすぎると希釈溶剤を大量に必要とし、塗工性が低下し、厚塗り塗工をしにくくなる傾向がある。
【0041】
また、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、特には15以下が好ましく、更には10以下が好ましく、殊には7以下が好ましい。かかる分散度が高すぎると粘着剤層の耐久性能が低下し、発泡等が発生しやすくなる傾向にある。なお、分散度の下限は、製造の限界の点から、通常1.1である。
【0042】
更に、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度は、−80〜10℃、特には−60〜−10℃、更には−40〜−20℃であることが好ましく、ガラス転移温度が高すぎるとタックが不足する傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
【0043】
尚、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×10
7、分離範囲:100〜2×10
7、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法を用いることができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。またガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
【0044】
なお、本発明のアクリル系樹脂組成物から得られる粘着剤を、ITOや銅などの腐食しやすい金属や金属酸化物を基材、または被着体として使用する場合には、上記活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)が実質的に酸成分を含有していないものであることが好ましい。
【0045】
なお、酸成分を含有していないとは、具体的には、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
【0046】
本発明で用いられる有機溶媒(B)は、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)を溶液重合にて製造する際に使用する有機溶媒であってもよいし、製造した活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)を希釈するために使用する有機溶媒であってもよいし、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)と後述のエチレン性不飽和化合物(C)を混合する際に配合される有機溶媒であってもよいが、実質的には、経済性に優れる点で、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)を溶液重合にて製造する際に使用する有機溶媒であることが好ましい。
【0047】
有機溶媒(B)の沸点としては、塗工乾燥時に揮発しやすく乾燥性に優れる点で、120℃以下であることが
必要であり、特に好ましくは100℃以下、更に好ましくは85℃以下である。沸点が高すぎると粘着シートを作る際に溶剤が残りやすい傾向がある。また、下限値は、安全性の点で、通常40℃以上であることが好ましい。
なお、上記沸点は、常圧(1気圧)で測定したときの沸点とし、測定はJISK5601−2−3に従い行なえばよい。
【0048】
有機溶媒(B)として、具体的には、酢酸エチル(沸点77℃)、酢酸メチル(沸点54℃)、酢酸ブチル(沸点126℃)等のエステル系溶媒;アセトン(沸点56℃)、メチルエチルケトン(沸点79−81℃)、メチルイソブチルケトン(沸点114−117℃)等のケトン系溶媒;ヘプタン(沸点98℃)、ヘキサン(沸点67℃)、シクロヘキサン(沸点81℃)、メチルシクロヘキサン(沸点101℃)等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン(沸点111℃)、キシレン(沸点144℃)等の芳香族炭化水素系溶媒;メタノール(沸点65℃)、エタノール(沸点78℃)、イソプロピルアルコール(沸点83℃)、イソブタノール(108℃)、sec−ブタノール(100℃)等のアルコール系溶媒等があげられる(なお、沸点の値は、「塗料原料便覧第7版,日本塗料工業会」に記載の値である。)。
【0049】
これらの中でも、汎用性、塗工適正、重合適正の点で、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒であることが好ましく、特に好ましくは、エステル系溶媒、ケトン系溶媒であり、更に好ましくは、最適な沸点を持つこと及び安価に大量に入手できる点で、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンであることが好ましい。
【0050】
有機溶剤(B)の含有量としては、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、20〜1000重量部であることが好ましく、特に好ましくは40〜500重量部、更に好ましくは80〜250重量部、殊に好ましくは120〜180重量部である。
有機溶剤(B)の含有量が多すぎると塗工粘度が下がり過ぎることにより厚塗り塗工が困難になる傾向があり、少なすぎると溶液重合で活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)を製造する際に、製造の安全性や自由度が低下する傾向がある。
【0051】
本発明で用いられる引火点が100℃以上であるエチレン性不飽和基を1つ含有するエチレン性不飽和化合物(C)としては、引火点が100℃以上でエチレン性不飽和基を1つ有する化合物であればよい。
なお、かかる引火点は、クリーブランド開放法(JISK2265−4)で測定した際の引火点の値とする。
【0052】
本発明で使用される単官能性不飽和化合物(C)は、上記有機溶剤(B)の乾燥性を向上させるために、塗工乾燥時(特には厚膜塗工した際の乾燥時)に揮発せずに粘着剤層中にとどまりやすいものである。
例えば、一般的な単官能性のエチレン性不飽和化合物であるブチルアクリレート(引火点:47℃)や2−エチルヘキシルアクリレート(引火点:88℃)等は、その高い揮発性のために通常の塗工乾燥工程の乾燥条件では、有機溶剤と共に揮発してしまうものであるのに対し、本発明で用いられる単官能性不飽和化合物(C)は、引火点が100℃以上であるために、通常の乾燥条件では、有機溶剤と共には揮発しにくく、粘着剤層中にとどまることができるのである。
【0053】
なお、本来、化合物の揮発性については沸点や蒸発速度から求めるのが一般的であるが、不飽和モノマー(エチレン性不飽和化合物)については、常圧で温度をかけると重合してしまい沸点が正確に測れないことがあるために、本発明では揮発性を示す指標として、不飽和モノマーの揮発性と相関関係のある引火点を使用した。
【0054】
上記引火点としては、100℃以上であることが必要であり、特に好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。引火点が低すぎると乾燥工程で揮発してしまう傾向がある。なお、通常引火点の上限は350℃である。
【0055】
単官能性不飽和化合物(C)としては、エチレン性不飽和基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物(C1)(後述の(C2)を除く)や、窒素原子を含有したエチレン性不飽和化合物(C2)を用いることが好ましい。
【0056】
上記エチレン性不飽和基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物(C1)としては、長鎖脂肪族(メタ)アクリレート(C1−1)、脂環族(メタ)アクリレート(C1−2)、芳香族(メタ)アクリレート(C1−3)、および、これら(メタ)アクリレートのオキシアルキレン構造変性化合物(C1−4)等が挙げられる。
【0057】
長鎖脂肪族(メタ)アクリレート(C1−1)としては、例えば、デカン(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、イソミリスチルアクリレート(引火点:129℃)、イソミリスチルメタクリレート、n−ステアリルアクリレート(引火点:181℃)、n−ステアリルメタクリレート、イソステアリルアクリレート(引火点:154℃)、イソステアリルメタクリレート等が挙げられる。
【0058】
脂環族(メタ)アクリレート(C1−2)としては、例えば、イソボルニルアクリレート(113℃)、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート(132℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート(131℃)、ジシクロペンテニルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
芳香族(メタ)アクリレート(C1−3)としては、例えば、ビフェニル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
上記(C1−1)〜(C1−3)のオキシアルキレン構造変性化合物(C1−4)としては、(C1−1)のオキシアルキレン構造変性化合物として、例えば、2−エチルヘキシルジエチレングリコールアクリレート(151℃)、2−エチルヘキシルジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(143℃)、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート(113℃)、エトキシジエチレングリコールメタクリレート、アルキルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート(102℃)、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、アルキレングリコールモノアルキルエステル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、(C1−2)のオキシアルキレン構造変性化合物として、例えば、t-ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(166℃)、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、(C1−3)のオキシアルキレン(アルキル)構造変性化合物として、例えば、ベンジルアクリレート(108℃)、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート(141℃)、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルジエチレングリコールアクリレート(173℃)、フェニルジエチレングリコールメタクリレート、フェニルトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルテトラグリコール(メタ)アクリレート、ビフェニルオキシエチルアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(繰り返し4)アクリレート(223℃)、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(繰り返し4)メタクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(繰り返し8)アクリレート(304℃)、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(繰り返し8)メタクリレート等が挙げられる。
なお、アクリレート化合物について( )内に引火点を記載したが、引火点を記載したアクリレート化合物に対応するメタクリレート化合物については、通常、引火点は更に高いものである。
【0061】
これらエチレン性不飽和基を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系化合物(C1)の中でも、長鎖脂肪族(メタ)アクリレート(C1−1)、(C1−2)および(C1−3)のオキシアルキレン構造変性化合物(C1−4)を用いることが安定的に粘着力を得られる点で好ましく、特に好ましくは、イソミリスチルアクリレート、トリデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート、フェニルジエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートである。
【0062】
上記窒素原子を含有したエチレン性不飽和化合物(C2)は、使用することで粘着剤の粘着力を向上させることができ、例えば、アクリルアミド(134℃)、メタクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド(112℃),ヒドロキシエチルアクリルアミド(189℃)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(140℃)、ダイアセトンアクリルアミド(110℃)等のアクリルアミド系不飽和モノマー、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(190℃)、アクリロイルモルフォリン(130℃)、オキサゾリドンアクリレート等が挙げられるが、これらの中でも、アクリルアミド系不飽和モノマーを使用することが難揮発性、粘着性能にバランスよく優れる点で好ましく、特に好ましくはブトキシメチルアクリルアミドである。
【0063】
また、本発明のアクリル系樹脂組成物を用いて得られる粘着剤を強粘着用途に用いる場合には、単官能性不飽和化合物(C)全体に対する(C2)の含有割合が、1〜90重量%であることが好ましく、特に好ましくは5〜80重量%、更に好ましくは15〜70重量%、殊に好ましくは30〜65重量%である。(c2)の含有割合が多すぎても少なすぎても、粘着力が上昇しずらく、必要な粘着力を得られにくい傾向がある。
【0064】
単官能性不飽和化合物(C)の重量分子量としては、150〜2,000であることが好ましく、特に好ましくは200〜1,500、更に好ましくは250〜700である。
かかる重量平均分子量が大きすぎると、粘着物性が低下する傾向があり、小さすぎると乾燥工程で揮発しやすくなる傾向がある。
【0065】
また、単官能性不飽和化合物(C)は、後述の通り活性エネルギー線及び/又は熱により硬化させることで、粘着剤層中で(C)単独の重合物、(A)と(C)の重合物として存在するものであるが、かかる(C)単独の重合物のガラス転移温度(Tg)が−80〜40℃となるように単官能性不飽和化合物(C)を選択することが
必要である。
かかるガラス転移温度としては、特に好ましくは−60〜20℃、更に好ましくは−40〜10℃、殊に好ましくは−15〜5℃であり、ガラス転移温度が高すぎると粘着性能が出にくい傾向があり、低すぎると凝集力が不足する傾向がある。
なお、ガラス転移温度は上述したFoxの式より算出されるものである。
【0066】
本発明において、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)と単官能性不飽和化合物(C)の含有割合(重量比)は、(A):(C)=10:90〜75:25であることが好ましく、特に好ましくは(A):(C)=20:80〜70:30であり、更に好ましくは(A):(C)=25:75〜68:32であり、殊に好ましくは(A):(C)=30:70〜49:51である。
活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)に対する単官能性不飽和化合物(C)の含有量が少なすぎると、厚塗り塗工が難しくなり本発明の効果を十分に発揮しにくい傾向
があり、多すぎると粘度が下がりすぎて厚塗り塗工が難しくなる傾向がある。
【0067】
また、(A)〜(C)成分全体に対して、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)と単官能性不飽和化合物(C)の合計量が、20重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは40重量%以上、更に好ましくは60重量%以上であり、かかる含有割合の上限としては、通常98重量%である。
かかる(A)〜(C)成分全体に対する活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)と単官能性不飽和化合物(C)の合計量の割合が低すぎると、厚塗り塗工が困難になり厚膜の粘着剤層が得られにくい傾向がある。
【0068】
アクリル系樹脂組成物全体に対する活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)の含有割合は、通常5〜40重量%、好ましくは8〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。かかる含有割合が多すぎると粘度があがりすぎて塗工適正が低下する傾向があり、少なすぎると粘度が下がりすぎて塗工適性が低下する傾向がある。
【0069】
アクリル系樹脂組成物全体に対する有機溶剤(B)の含有割合は、通常10〜90重量%、好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは20〜35重量%である。かかる含有割合が多すぎると塗工濃度が下がりすぎて塗工適正が低下する傾向があり、少なすぎると粘度が上がりすぎて塗工適正が低下する傾向がある。
【0070】
アクリル系樹脂組成物全体に対する単官能性不飽和化合物(C)の含有割合は、
8〜85重量%
であり、好ましくは8〜60重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。かかる含有割合が多すぎると(A)の含有量が下がりすぎて、粘着物性が低下する傾向があり、少なすぎると乾燥性が落ち、厚膜での塗工が難しくなる傾向がある。
【0071】
また、本発明のアクリル系樹脂組成物は、粘度が20,000mPa・s/25℃以下であることが塗工性の点から好ましく、特に好ましくは15,000mPa・s/25℃以下、更に好ましくは10,000mPa・s/25℃以下である。通常、かかる粘度の下限値としては、10mPa・s/25℃である。
かかる粘度が高すぎると、塗工筋が出やすくなったりする等により、塗工が困難になる傾向がある。
【0072】
かくして、本発明の活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)、有機溶剤(B)、および単官能性不飽和化合物(C)を含有してなるアクリル系樹脂組成物が得られる。
【0073】
本発明においては、上記活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)、有機溶剤(B)、単官能性不飽和化合物(C)を含有してなるアクリル系樹脂組成物を硬化させることによってアクリル系粘着剤とすることができる(ただし、有機溶剤(B)を塗工後の乾燥工程で揮発させてから硬化させる場合には、硬化時のアクリル系樹脂組成物に、有機溶剤(B)は実質的に含まれていないものである。)。
【0074】
かかる硬化方法としては、活性エネルギー線により硬化する方法を用いればよく、更に熱による硬化を併用してもよいものであるが、エネルギー量および生産性の点で、活性エネルギー線(活性エネルギー線照射)による硬化が好ましい。
【0075】
更に、アクリル系樹脂組成物がエチレン性不飽和基を2つ以上含有するエチレン性不飽和化合物(D)(以下、「多官能性不飽和化合物(D)」と略すことがある。)を含有することが粘着剤層全体の凝集力を調整できる点で好ましく、重合開始剤(E)を含有することが、活性エネルギー線照射時および/または加熱時の反応を安定化させることができる点で好ましい。
【0076】
上記多官能性不飽和化合物(D)としては、例えば、1分子内に2つ以上のエチレン性不飽和基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、2官能モノマー、3官能以上のモノマーや、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物を用いることができる。これらの中でも、エチレン性不飽和モノマー、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることが硬化速度や到達物性の安定性に優れる点で好ましい。
【0077】
上記2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等があげられる。
【0078】
上記3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3つ以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0079】
上記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、水酸基を含有する(メタ)アクリル系化合物と多価イソシアネート系化合物(必要に応じて、ポリオール系化合物)を、公知一般の方法により反応させて得られるものを用いればよく、その重量平均分子量としては、通常300〜4,000のものを用いればよい。
【0080】
多官能性不飽和化合物(D)の含有量は、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜100重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部である。多官能性不飽和化合物(D)の含有量が多すぎると、凝集力が上がりすぎるため、粘着性能が低下する傾向があり、少なすぎると保持力が低下する傾向がある。
【0081】
また、多官能性不飽和化合物(D)の含有量は、単官能性不飽和化合物(C)100重量部に対して、0.01〜99重量部であることが望ましく、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部である。多官能性不飽和化合物(D)の含有量が多すぎると、粘着剤の凝集力が上がりすぎてしまい、粘着性能が低下する傾向があり、少なすぎると、凝集力が不足することにより耐久性が低下する傾向がある。
【0082】
上記重合開始剤(E)としては、例えば、光重合開始剤(e1)、熱重合開始剤(e2)等の種々の重合開始剤を用いることが可能であるが、特には光重合開始剤(e1)を使用することが、ごく短時間の紫外線等の活性エネルギー線照射により硬化させることが可能となる点で好ましい。
【0083】
また、上記光重合開始剤(e1)を用いるときは、活性エネルギー線照射によりアクリル系樹脂組成物を硬化させ、熱重合開始剤(e2)を用いるときは、加熱によりアクリル系樹脂組成物を硬化させるのであるが、必要に応じて、両方を併用することも好ましい。
【0084】
上記光重合開始剤(e1)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。なお、これら光重合開始剤(e1)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0086】
これらの中でも、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
【0087】
上記重合開始剤(E)の含有量については、前記単官能性不飽和化合物(C)100重量部(多官能性不飽和化合物(D)を使用する場合には、(C)と(D)の合計100重量部)に対して、0.01〜50重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜20重量部、更に好ましくは0.3〜12重量部、殊に好ましくは0.5〜3重量部であることが好ましい。上記重合開始剤(E)の含有量が少なすぎると、硬化性に乏しく物性が安定しにくくなる傾向がみられ、多すぎてもそれ以上の効果が得られない傾向がみられる。
【0088】
また、反応性アクリル系樹脂(A)が環状エーテル構造含有アクリル系樹脂(A2)の場合には、重合開始剤としてカチオン系の重合開始剤を併用することが好ましい。
【0089】
上記活性エネルギー線照射に際しては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。なお、電子線照射を行なう場合は、上記光重合開始剤(e1)を用いなくても硬化可能である。
【0090】
そして、上記紫外線照射を行なう時の光源としては、高圧水銀灯、無電極ランプ、超高圧水銀灯カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が用いられる。上記高圧水銀ランプの場合は、例えば、5〜3000mJ/cm
2、好ましくは50〜2000mJ/cm
2の条件で行われる。また、上記無電極ランプの場合は、例えば、2〜2000mJ/cm
2、好ましくは10〜1000mJ/cm
2の条件で行われる。そして、照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、塗工厚、その他の条件によっても異なるが、通常は、数秒〜数十秒、場合によっては数分の1秒でもよい。一方、上記電子線照射の場合には、例えば、50〜1000Kevの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜50Mradの照射量とするのがよい。
【0091】
また、上記重合開始剤(E)として、熱重合開始剤(e2)を用いる場合には加熱により重合反応を開始し、進行させる。加熱による硬化時の処理温度や処理時間は、使用する熱重合開始剤(e2)の種類によって異なるものであり、通常、開始剤の半減期より計算されるものであるが、処理温度は、通常70℃〜170℃であることが好ましく、処理時間は、通常0.2〜20分が好ましく、特には0.5〜10分が好ましい。
【0092】
また、本発明のアクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、シランカップリング剤、帯電防止剤、その他のアクリル系粘着剤、その他の粘着剤、ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂等の粘着付与剤、着色剤、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、機能性色素等の従来公知の添加剤や、紫外線あるいは放射線照射により呈色あるいは変色を起こすような化合物を配合することができるが、これら添加剤の配合量は、組成物全体の30重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは20重量%以下であり、添加剤として分子量が1万よりも低い低分子成分は極力含まないことが耐久性に優れる点で好ましい。
【0093】
また、上記添加剤の他にも、アクリル系樹脂組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであっても良い。
【0094】
なお、上記アクリル系樹脂組成物から得られる粘着剤を、ITOや銅などの腐食しやすい金属や金属酸化物等の基材、または被着体に使用する場合には、アクリル系樹脂組成物
は、実質的に酸成分を含有していないものであることが好ましい。
【0095】
なお、酸成分を含有していないとは、具体的には、酸価が10mgKOH/g以下であることが好ましく、特に好ましくは1mgKOH/g以下、更に好ましくは0.1mgKOH/g以下である。
【0096】
上記のとおり、アクリル系樹脂組成物が、硬化(架橋)されてアクリル系粘着剤が得られるのである。
【0097】
本発明のアクリル系粘着剤は、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層と基材とを含有する粘着シートとして用いることが好ましい。
【0098】
かかる粘着シートの製造方法としては、公知一般の粘着シートの製造方法に従って製造することができ、例えば、アクリル系樹脂組成物を基材上に設けた後、乾燥後、熱および/または活性エネルギー線を照射することにより得られるものである。
【0099】
上記アクリル系樹脂組成物を設ける基材としては、例えば、ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン等のポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリイミド等の合成樹脂シート,アルミニウム、銅、鉄の金属箔,上質紙、グラシン紙等の紙,硝子繊維、天然繊維、合成繊維等からなる織物や不織布が挙げられる。これらの基材は、単層体として又は2種以上が積層された複層体として用いることができる。
【0100】
また、本発明においては、上記アクリル系粘着剤を光学部材用粘着剤として用いることが好ましく、かかるアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
【0101】
かかる光学部材としては、ITO電極膜やポリチオフェン等の有機系導電幕等の透明電極膜、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、電磁波シールドフィルム、近赤外線吸収フィルム、AR(アンチリフレクション)フィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明電極膜であるときが本発明の効果を顕著に発揮でき、高い粘着力が得られる点で好ましく、特に好ましくはITO(インジウムチンオキサイド)電極膜である。
ここで、反応性アクリル系樹脂(A)および単官能性不飽和化合物(C)が、酸性基を含有しない場合には、特に腐食が起こりにくく好ましい。
【0102】
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、さらに離型シートを設けることが好ましく、実用に供する際には、上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体を貼合することとなる。かかる離型シートとしては、シリコン系の離型シートを用いることが好ましい。
【0103】
上記離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を作製するに際して、アクリル系樹脂組成物を硬化させる方法については、〔1〕光学部材上に、樹脂組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、樹脂組成物を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なう方法、〔3〕光学部材上に樹脂組成物を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、離型シートを貼合する方法、〔4〕離型シート上に樹脂組成物を塗布、乾燥し、さらに活性エネルギー線照射および加熱の少なくとも一方による処理を行なった後、光学部材を貼合する方法、により製造することできる。これらの中でも、〔2〕の方法で活性エネルギー線照射のみを行なう場合が基材を痛めない点、作業性や安定製造の点で好ましい。
【0104】
上記乾燥工程における乾燥条件については、乾燥温度が、通常50℃〜250℃、好ましくは60℃〜150℃、更に好ましくは65℃〜120℃、殊に好ましくは70℃〜95℃であり、乾燥時間は、通常10秒〜10分であるが、低温で長い時間乾燥するほうが有機溶剤(B)をきっちりと揮発させ除去でき、かつ単官能性不飽和化合物(C)を揮発させずに粘着剤層中にとどまらせることが可能となる点で好ましい。また、経済性、生産効率性を考慮すると、乾燥時間は短い方が好ましい。
【0105】
上記アクリル系樹脂組成物の塗布に際しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
【0106】
ここまで、一旦離型シートが貼合された粘着剤層付き光学部材を製造した後に、かかる上記離型シートを剥離してから粘着剤層と被着体(その他光学部材)を貼合する粘着剤の使用方法について説明したが、本発明においては、上記アクリル系粘着剤を用いて両面粘着シートを作製することも好ましく、かかる両面粘着シートを用いて光学部材どうしを貼合する方法を用いてもよい。
【0107】
かかる両面粘着シートとしては、上記アクリル系粘着剤を用いて公知一般の構成の両面粘着シートを適用すればよいが、特には透明性に優れ、構成する厚みに対しての粘着力が高い点で基材レス両面粘着シートとすることが好ましい。かかる基材レス両面粘着シートは、離型シート上に上記アクリル系粘着剤からなる粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の離型シートのない側に、更に別の離型シートを貼合することにより得ることができる。使用方法は、一方の離型シートを剥がして被着体に貼合した後、他方の離型シートを剥がして被着体に貼合すればよい。
【0108】
上記粘着シート、粘着剤層付き光学部材の粘着剤層、および両面粘着シートの粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と粘着力の点から30〜98%であることが好ましく、特には50〜90%が好ましく、殊には60〜80%であることが好ましい。ゲル分率が低すぎると凝集力が不足することに起因する耐久性不足になる傾向がある。また、ゲル分率が高すぎると凝集力の上昇により粘着力が低下してしまう傾向がある。
【0109】
なお、粘着シート、光学部材用粘着剤及び両面粘着シートのゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、例えば、エチレン性不飽和基を2つ以上含有するエチレン性不飽和化合物(D)の種類と量を調整すること等により達成される。
【0110】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材となる高分子シート(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等)に粘着剤層が形成されてなる粘着シート(セパレーターを設けていないもの)を200メッシュのSUS製金網で包み、トルエン中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。ただし、基材の重量は差し引いておく。
【0111】
上記粘着シート、粘着剤層付き光学部材、両面粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、通常、5〜3000μmであることが好ましく、特には50〜1000μmであることが好ましく、更には100〜500μmがあることが好ましい。
かかる粘着剤層の厚みが薄すぎると衝撃吸収性に不足する傾向があり、厚すぎると光学部材全体の厚みが増しすぎてしまう傾向がある。
【0112】
なお、本発明のアクリル系樹脂組成物においては、前述の通り、一般の乾燥条件では揮発しにくいエチレン性不飽和モノマーを含有しているために、厚塗り時の乾燥適正に優れるものであり、従来の溶剤系アクリル系粘着剤組成物では塗工、乾燥して得ることが不可能であった厚膜の粘着剤層を得ることが可能となるのである。
【0113】
上記厚膜の粘着剤層を得る場合には、100μm以上の膜厚で塗工することが好ましく、特に好ましくは200μm以上、更に好ましくは300μm以上であり、乾燥後に得られる粘着剤層の膜厚で、50μm以上であることが好ましく、特に好ましくは100μm以上、更に好ましくは200μm以上である。
かかる膜厚の上限としては、塗工時の膜厚で通常3000μm、乾燥後の膜厚で通常2000μmである。
また、特に衝撃吸収や空気層等の空隙を埋めるための用途に用いる場合には、乾燥後の粘着剤層の膜厚が100μm以上であることが好ましく、特に好ましくは200μm以上であり、上限としては通常2000μmである。
【0114】
本発明の粘着剤層の粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定されるが、例えば、ガラス基板、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、ITO層を蒸着したPETシートに貼着する場合には、5N/25mm〜500N/25mmの粘着力を有することが好ましく、更には10N/25mm〜100N/25mmが好ましい。
【0115】
なお、上記粘着力は、つぎのようにして算出される。厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート上に厚み100μmの粘着剤層が形成された粘着剤層付きPETを、幅25mm幅に裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側を上記被着体に25mm×100mmの上記粘着シートを23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0116】
本発明の粘着剤層の全線透過率は、90%以上であることが好ましく、特に好ましくは92%以上である。かかる全線透過率が低すぎると、透過性が低いためディスプレイ用途で使用しにくい傾向がある。なお、全光線透過率の上限は通常95%である。
【0117】
本発明の粘着剤層のヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、特に好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。かかるヘイズが高すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、画像が不鮮明になる傾向がある。なお、ヘイズ値の下限は通常0.00%である。
【0118】
ここで、上記の全線透過率およびヘイズ値はJIS K7361−1に準拠したヘイズメーターを使用して測定した値である。
【0119】
本発明の粘着剤層の色差b値は、1以下であることが好ましく、特に好ましくは0.5以下である。かかる色差b値が高すぎると、ディスプレイ用として使用したときに、本来の色が出にくくなる傾向がある。なお、色差b値の下限は通常−1である。
ここで、かかる色差b値は、JIS K7105に準拠して測定したものであり、測定は、色差計(Σ90:日本電色工業社製)を用いて、透過条件で行なった。
【0120】
なお、本発明における、ヘイズ、全光線透過率、色差b値の測定は、粘着剤層のみを、無アルカリガラス(全光線透過率=93、ヘイズ=0.06、b値=0.16)に貼着し測定した値である。
【0121】
また、本発明のアクリル系樹脂組成物を硬化させた場合には、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)、有機溶媒(B)、引火点が100℃以上であるエチレン性不飽和基を一つ含有するエチレン性不飽和化合物(C)、引火点が100℃以上であるエチレン性不飽和基を一つ含有するエチレン性不飽和化合物(C)を単量体主成分として含有する重合物、を含有してなる粘着剤剤層を有することを特徴とする粘着シートとなることが好ましい。
【0122】
この場合、粘着剤層全体に対する有機溶媒(B)の含有割合は0.0001〜1重量%であることが好ましく、粘着剤層全体に対する引火点が100℃以上であるエチレン性不飽和基を一つ含有するエチレン性不飽和化合物(C)の含有割合は0.01〜3重量%であることが好ましい。
【0123】
本発明のアクリル系樹脂組成物からなるアクリル系粘着剤は、ガラスやITO透明電極シート、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の光学シート類、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学部材貼り付け用途に有用である。更に、これら光学部材を含んでなるタッチパネル等の画像表示装置に対して好適に用いることができる。
【実施例】
【0124】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0125】
まず、下記のようにして各種活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)溶液(有機溶媒(B)を含む)を調製した。なお、アクリル系樹脂の重量平均分子量、数平均分子量、ガラス転移温度の測定に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
【0126】
なお、固形分濃度の測定に関しては、アルミ箔にアクリル樹脂溶液1〜2gを取り、ケット(赤外線乾燥機、185W、高さ5cm)で45分間加熱乾燥し、乾燥前後の重量変化を測定し、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
【0127】
〔活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)溶液)(有機溶媒(B)を含む)の調製〕(表1参照。)
【0128】
[活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−1)溶液]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、メチルアクリレート(x2)40部、n−ブチルアクリレート(x2)、59部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(x1)1部及び酢酸エチル120部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(x−1)溶液(重量平均分子量55万、分散度4.3、ガラス転移温度−34℃、固形分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
得られたアクリル系樹脂(x−1)溶液100部(樹脂分)に、ジブチルヒドロキシトルエン0.08部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(y−1)0.07部を仕込み、50℃で30時間反応させた。側鎖にエチレン性不飽和基をヒドロキシエチルアクリレート(x1)に対して5モル%付加した活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−1)溶液(樹脂分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0129】
[活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−2)]
上記アクリル系樹脂(x−1)溶液100部(樹脂分)に、ジブチルヒドロキシトルエン0.08部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(y−1)0.14部を仕込み、50℃で30時間反応させた。側鎖にエチレン性不飽和基を、ヒドロキシエチルアクリレート(x1)に対して10モル%付加した活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−2)溶液(樹脂分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0130】
[活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−3)]
上記アクリル系樹脂(x−1)溶液100部(樹脂分)に、ジブチルヒドロキシトルエン0.08部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(y−1)0.28部を仕込み、50℃で30時間反応させた。側鎖にエチレン性不飽和基を、ヒドロキシエチルアクリレート(x1)に対して20モル%付加した活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−3)溶液(樹脂分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0131】
[活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−4)]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、トリレンジイソシアネート48部、ジ−t−ブチルヒドロキシフェノール0.05部、トルエン20部、ジブチルスズジラウレート0.02部を仕込み、50℃以下で2−ヒドロキシエチルアクリレート32部を約3時間で滴下し、50℃で反応を継続し、残存イソシアネート基が11.6%となった時点で反応を終了し、不飽和基含有化合物(y−2)(固形分80%、粘度280mPa・s(25℃))を得た。
上記アクリル系樹脂(x−1)溶液(樹脂分)100部に、不飽和基含有化合物(y−2)0.14部を仕込み、50℃で30時間反応させた。側鎖にエチレン性不飽和基を、ヒドロキシエチルアクリレート(x1)に対して6モル%付加した活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−4)溶液(樹脂分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0132】
[活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−5)溶液]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、n−ブチルアクリレート(x2)、92部、アクリル酸(x1)8部及び酢酸エチル120部を仕込み、加熱還流開始後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加え、酢酸エチル還流温度で3時間反応後、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル20部を加え、更に4時間反応し、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(x−2)溶液(重量平均分子量69万、分散度5.2、ガラス転移温度−50℃、固形分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
得られたアクリル系樹脂(x−2)溶液100部(樹脂分)に、ジブチルヒドロキシトルエン0.08部及び2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(y−1)0.14部を仕込み、50℃で30時間反応させた。側鎖にエチレン性不飽和基をヒドロキシエチルアクリレート(x1)に対して5モル%付加した活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A−5)溶液(樹脂分38%、粘度8000mPa・s(25℃))を得た。
【0133】
[有機溶剤(B)]
有機溶剤(B)として、以下のものを用意した。
・B−1:酢酸エチル(沸点:77℃)
【0134】
[単官能性不飽和化合物(C)]
単官能性不飽和化合物(C−1)として、以下のものを用意した。
・イソミリスチルアクリレート(C1−1;共栄社化学製、「ライトアクリレートIM−A」)
単官能性不飽和化合物(C−2)として、以下のものを用意した。
・イソステアリルアクリレート(C1−1;大阪有機化学社製、「ISTA」)
単官能性不飽和化合物(C−3)として、以下のものを用意した。
・ブトキシメチルアクリルアミド(C2;笠野興産社製、「NBM−2」)
単官能性不飽和化合物(C−4)として、以下のものを用意した。
・N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(C2;東亞合成社製、「M−140」)
単官能性不飽和化合物(C−5)として、以下のものを用意した。
・フェニルジエチレングリコールアクリレート(C1−4;共栄社化学製、「ライトアクリレートP2HA」)
単官能性不飽和化合物(C−6)として、以下のものを用意した。・ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート(C1−4;日立化成工業製、「FA−512AS」)
【0135】
なお、上記単官能性不飽和化合物(C−1)〜(C−6)の引火点、及び分子量は下記表2の通りである。
【0136】
【表2】
【0137】
[エチレン性不飽和基を二つ以上含有する化合物(D)]
D−1:トリメチロールプロパントリアクリレート
【0138】
[光重合開始剤(E)]
E−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの1:1の混合物(チバジャパン社製、「イルガキュア500」)
【0139】
〔実施例1〜8、比較例1〜3〕
上記のようにして調製,準備した各配合成分を、下記の表3に示す割合で配合することによりアクリル系樹脂組成物溶液を調製した。
【0140】
そして、上記で得られたアクリル系樹脂組成物溶液を、ポリエステル系離型シートに、乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布し、100℃で5分間乾燥し、粘着剤層を形成させた。
粘着剤層を形成させる際の塗工適正を下記の通り評価した。
【0141】
[塗工適正]
上記乾燥条件により粘着剤層を形成させた際の、粘着剤層の外観を目視で評価した。
◎:きれいな粘着剤層が得られた
○:わずかに微小な気泡が確認される
△:はっきりと気泡が確認される
×:大量の気泡を噛み込んでいることが確認される
【0142】
実施例1〜8、および比較例1,2では、得られた粘着剤層をポリエステル系離型シートではさみ、高圧水銀UV照射装置にてピーク照度:150mW/cm
2,積算露光量:1000mJ/cm
2で紫外線照射を行ない(500mJ/cm
2×2パス)基材レス両面粘着シートを得た。
比較例3では、得られた粘着剤組成物層をポリエステル系離型シートではさみ、23℃×65%R.H.の条件下で10日間エージングさせて基材レス両面粘着シートを得た。
【0143】
上記で得られた基材レス両面粘着シートを用いて、以下の通り粘着剤層付きPETフィルムを作製し、ゲル分率、促進ゲル分率、粘着力、保持力を下記に示す各方法に従って測定・評価した。
なお、促進ゲル分率以外の各測定は、ポリエステル系離型シートへの塗工後、23℃×18〜30時間経過後に測定したものであるが、比較例3については粘着シートを作成する際に10日間エージングしているので、エージング後の測定値である。
これらの結果を下記の表3に併せて示した。
【0144】
[粘着剤層付きPETフィルムの作製]
前記基材レス両面粘着シートの粘着剤から一方の面の離型シートを剥がし、100μmPETフィルムに押圧し、粘着剤層付きPETフィルムを得た。
【0145】
〔ゲル分率〕
上記粘着剤層付きPETフィルムを40×40mmに裁断した後、離型シートを剥がし、粘着剤層側を50×100mmのSUSメッシュシート(200メッシュ)に貼合してから、SUSメッシュシートの長手方向に対して中央部より折り返してサンプルを包み込んだ後、トルエン250gの入った密封容器にて浸漬した際の重量変化にてゲル分率(%)の測定を行なった。
【0146】
〔促進ゲル分率〕
上記粘着層付きPETフィルムを作成後、40℃で7日間放置した後に、上記ゲル分率の測定と同様の評価を行った。
【0147】
[粘着力]
上記粘着剤層付きPETフィルムについて、幅25mm×長さ100mmに裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側をソーダガラスに23℃、相対湿度50%の雰囲気下で2kgゴムローラー2往復で加圧貼付し、同雰囲気下で30分放置した後、常温で剥離速度300mm/minで180度剥離強度(N/25mm)を測定した。
【0148】
[保持力]
上記粘着剤層付きPETフィルムを、25mm×25mmになるよう裁断し、離型シートを剥離して、粘着剤層側を研磨SUS板に貼着し、80℃の条件下にて1kgの荷重をかけて、JIS Z 0237の保持力の測定法に準じてズレを評価した。評価基準は下記の通りである。
(評価)
○・・・1440分経過後でズレを生じない
△・・・1440分経過後でズレを生じる
×・・・1440分経過するまでに落下する
【0149】
上記で得られた基材レス両面粘着シートを用いて、以下の通り粘着剤層付き無アルカリガラス板を作製し、全光線透過率、ヘイズ、色鎖b値を下記に示す各方法に従って測定・評価した。これらの結果を下記の表3に併せて示した。
【0150】
[粘着剤層付き無アルカリガラス板の作製]
上記基材レス両面粘着シートを3cm×4cmに切り抜き、軽剥離離型シートを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、イーグルXG)に押圧して、さらに重剥離離型シートを剥離して、粘着剤層付き無アルカリガラス板を得た。
【0151】
[全光線透過率]及び[ヘイズ]
上記粘着剤層付き無アルカリガラス板の拡散透過率及び全光線透過率を、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定した。なお、本機はJIS K7361−1に準拠している。
得られた拡散透過率と全光線透過率の値を下記式に代入して、ヘイズを算出した。
ヘイズ値(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
【0152】
[色差b値]
上記粘着剤層付き無アルカリガラス板の色差b値をJIS K7105に準拠して測定した。測定は、色差計(Σ90:日本電色工業社製)を用いて、透過条件で行なった。
【0153】
なお、ガラス板のみについて、上記全光線透過率、ヘイズ、色差b値を測定した際の値は、全光線透過率93%、ヘイズ0.1%、色差b値0.2であった。
【0154】
【表3】
【0155】
上記表3中において、(A)〜(E)及び架橋剤の数字は重量部を示し、「※」は粘着剤層に発泡があるため測定不能であることを示す。また、比較例1および3の架橋剤は、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の55%酢酸エチル溶液(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)を用いた。
【0156】
実施例1〜8のアクリル系樹脂組成物は、乾燥後の厚みが100μmとなるように厚膜の粘着剤層を形成させた場合においても、きれいな粘着剤層が得られており、塗工適正に優れ、更には保持力や光学特性にも優れるものであることがわかる。
また、活性エネルギー線反応性アクリル系樹脂(A)を使用することで、エージングの必要がないために、塗工直後に粘着シートとして利用することが可能となっている。
【0157】
一方、アクリル系樹脂(x−1)を架橋剤で架橋させた比較例1では、塗工直後には特に保持力に劣る結果となり、また、促進試験によりゲル分率が変化しており、エージングが必要で、塗工後一定期間は物性が安定しないために、粘着シートとして使用することが難しいことがわかり、アクリル系樹脂(x−1)を架橋剤で架橋させない比較例2では、保持力、粘着力に劣るものであることがわかる。
【0158】
また、単官能性不飽和化合物(C)を含有しないアクリル系樹脂組成物を用いて得られた比較例3の粘着剤層では、大量の気泡の噛みこみが確認され、厚膜塗工時にきれいな粘着剤層を得ることはできずに、乾燥適正に劣るものであった。
その結果、これら粘着剤層は、粘着物性は優れるものの、粘着剤層に生じた気泡のために光学用途には実用的ではないことがわかる。