(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の扉用ラッチ装置では、回動カムを施錠方向に回動してラッチボルトを突出させると、鍵が付勢ばねの付勢力で自動的に抜き差し位置まで復帰する構造になっている一方で、例えば開閉扉は防水用ゴムパッキンを挟んで固定枠に押し当て状態で閉止する構造のものが多いため、実際は開閉扉の閉鎖操作が不十分で、ラッチボルトと受具とが正しく係合していないにも拘らず、不注意でそれに気付かず、却って、鍵穴から鍵を抜き取れた事実を、ラッチが受具に係合している証しであると誤信し、開閉扉を完全に施錠しないまま立ち去ることがあり、
そのような施錠忘れや誤診による不完全施錠の問題が発生するという課題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決せんとする課題は、そのようなシリンダ錠付きの扉用ラッチ装置において、施錠忘れや誤信による不完全施錠を防止して開閉扉を常に確実に施錠することを実現することにある。
【0006】
この課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、
鍵Kを鍵穴32から抜き取って初めて開閉扉Dが施錠されるシリンダ錠付き扉用ラッチ装置で、平箱形の錠ケース15に受具Sと係脱するラッチボルト20・50を収容して直線移動可能に保持し、前記錠ケース15のケース本体16に被着する正面蓋板17に固設した
前記シリンダ錠35のプラグ33に、前記ラッチボルト20・50を作動させる回動カム40・65を連結し、前記ラッチボルト20・50が前記受具Sと係合して開閉扉Dを施錠した施錠位置にあるときに限り、前記プラグ33を、軸芯を貫通した鍵穴32から鍵Kが抜き取れる抜き差し位置としてなる扉用ラッチ装置であって、前記回動カム40・65の回動を規制するトリガ30・60を前記錠ケース15内に可動に配設し、前記ラッチボルト20・50が施錠位置又は前記受具Sから外れて後退した解錠位置にあるときは、前記トリガ30・60を動かしても前記回動カム40・65の回動に作用を及ぼさない一方、前記ラッチボルト20・50が前記受具Sに係止していても前記プラグ33が前記鍵Kの抜き差し位置にないときは、前記トリガ30・60を動かして直接又は間接に前記回動カム40・65の回動を規制するロック手段r1・r2を備えてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の扉用ラッチ装置において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記ロック手段r1は、前記トリガ30に規制突起29を凸設する一方、前記ラッチボルト20には、前記正面蓋板17側に前記トリガ30の可動域を形成する逃げ凹部45を直線移動方向と直交する方向に設け、前記錠ケース15には、前記トリガ30を、前記逃げ凹部45内に付勢ばね25を挟んで配置し、前記ケース本体16に被着する前記正面蓋板17で押えて、前記ラッチボルト20の直線移動方向と直交する方向に可動に内装し、前記正面蓋板17には、開閉扉Dの施錠時、前記ラッチボルト20が前記受具Sに係止していても、前記プラグ33が前記鍵Kの抜き差し位置にない施錠手前位置にあるときには、前記トリガ30の規制突起29が嵌り込んで前記ラッチボルト20の動きを拘束するロック穴39を設け、前記トリガ30で前記ラッチボルト20の動きを拘束することにより間接に前記回動カム40の回動を規制する構成としてなることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の扉用ラッチ装置において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記ロック手段r2は、前記トリガ60を、付勢ばね55で付勢して前記ラッチボルト50に沿って平行にのみ直線移動可能に前記錠ケース15内に並設し、該トリガ60には、直線移動方向前端に前記ラッチボルト50が施錠位置にあるときに前記受具Sに突き当たる突当て部49を設ける一方、後端には前記回動カム65の回動を規制するカム係合部69を設け、該回動カム65には、前記ラッチボルト50が前記受具Sに係止していても、前記プラグ33が前記鍵Kの抜き差し位置にないときは、前記トリガ60のカム係合部69と係合するトリガ係合部70を設け、前記トリガ60で前記回動カム65の回動を直接に規制する構成としてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
従って、請求項1に記載の発明では、ラッチボルトが受具と係合して開閉扉を施錠した施錠位置にあるときに限り、シリンダ錠のプラグを、軸芯を貫通した鍵穴から鍵が抜き取れる抜き差し位置とし、回動カムの回動を規制するトリガを錠ケース内に可動に配設し、ラッチボルトが施錠位置又は受具から外れて後退した解錠位置にあるときは、トリガを動かしても回動カムの回動に作用を及ぼさない一方、ラッチボルトが受具に係止していてもプラグが前記鍵の抜き差し位置にないときは、トリガを動かして直接又は間接に回動カムの回動を規制することから、ラッチボルトが受具に完全に係合する施錠位置まで突出し、差し込んだ鍵が鍵穴から抜き取れる抜き差し位置まで回動カムが回動しない限り、鍵を鍵穴から抜き取ることができず、鍵を抜き取れるということは、開閉扉が完全に閉止していることを意味するから、従来のような施錠忘れや誤信による不完全施錠が防止され、開閉扉を常に確実に施錠することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、開閉扉を閉止して施錠操作したとき、例えば受具にラッチボルトの先端部が誤って引っ掛ったりしてラッチボルトが受具に届いて僅かに係止状態にはあるが、十分な施錠状態にないと、そのような場合は、ラッチボルトが施錠位置に僅かに届かず、施錠手前位置にあるときなので、付勢ばねの付勢力でトリガがラッチボルトの直線移動方向と直交する向きに浮き上がって規制突起が正面蓋板のロック穴に嵌り込み、ラッチボルトの動きを拘束して回動カムの回転を規制する。すると、シリンダ錠のプラグが鍵穴に差し込んだ鍵の抜き差し位置になく、その抜き差し位置から手前にずれた抜き差し不能位置にあるために鍵穴から抜き取れないことから、いま、ラッチボルトは施錠位置になく開閉扉の施錠が不完全であることを報知する。従って、請求項2に記載の発明によれば、ラッチボルトが受具に完全に係合する施錠位置まで突出し、差し込んだ鍵が鍵穴から抜き取れる抜き差し位置まで回動カムが回動しない限り、鍵を鍵穴から抜き取ることができず、鍵を抜き取れるということは開閉扉が完全に閉止していることを意味するから、従来のような施錠忘れや誤信による不完全施錠が防止され、開閉扉を常に確実に施錠することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、開閉扉を閉止して施錠操作したとき、例えば受具にラッチボルトの先端部が誤って引っ掛ったりしてラッチボルトが受具に届いて係止状態ではあるが十分な施錠状態にないと、そのような場合は、ラッチボルトが施錠位置に届かず、施錠手前位置にあるときなので、たとえ施錠位置まで鍵を回そうにも、トリガはカム係合部と回動カムのトリガ係合部とが係合するロック位置にあるため、トリガで回動カムの回動が規制される。すると、シリンダ錠のプラグが鍵穴に差し込んだ鍵の抜き差し位置になく、その抜き差し位置からずれた抜き差し不能位置にあるため、鍵を鍵穴から抜き取れないことから、いま、ラッチボルトは、施錠位置になく開閉扉の施錠が不完全であることを報知する。従って、請求項3に記載の発明によれば、ラッチボルトが受具に完全に係合する施錠位置まで突出し、差し込んだ鍵が鍵穴から抜き取れる抜き差し位置まで回動カムが回動しない限り、鍵を鍵穴から抜き取ることができず、鍵を抜き取れるということは、開閉扉が完全に閉止していることを意味することから、従来のような施錠忘れや誤信による不完全施錠が防止され開閉扉を常に確実に施錠することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による第1例の扉用ラッチ装置を施錠状態で示す(A)はx−x断面図、(B)は正面図である。
【
図2】扉用ラッチ装置の装置本体を示す分解斜視図である。
【
図3】扉用ラッチ装置の装置本体を
図2とは向きを違えて示す分解斜視図である。
【
図4】開閉扉の開口部を閉止状態で示す斜視図である。
【
図5】開閉扉の開口部を開状態で示す斜視図である。
【
図6】扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて施錠状態で示す(A)はx−x断面図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
【
図7】(A)シリンダ錠の鍵抜き差し可能状態を示す説明図、(B)鍵差し込み状態を示す説明図である。
【
図8】(A)装置本体の施錠状態を示す説明図、(B)解錠状態を示す説明図、(C)鍵抜き取り不能状態で示す説明図である。
【
図9】装置本体を解錠状態で示す(A)はx−x断面図、(B)は正面図である。
【
図10】装置本体を施錠不完全状態で示す(A)はx−x断面図、(B)は正面図である。
【
図11】(A)第1例のシリンダ錠の鍵抜き差し不能状態を示す説明図、(B)第2例のシリンダ錠の鍵抜き差し不能状態を示す説明図である。
【
図12】扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて解錠状態で示す(A)はx−x断面図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
【
図13】扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて施錠不完全の開扉状態で示す(A)はx−x断面図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
【
図14】本発明による第2例の扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて施錠状態で示す(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。
【
図15】扉用ラッチ装置の装置本体を示す分解斜視図である。
【
図16】扉用ラッチ装置の装置本体を
図15と向きを違えて示す分解斜視図である。
【
図17】(A)装置本体の施錠状態を示すx−x断面図、(B)平面図、(C)正面図である。
【
図18】扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて解錠開始状態で示す(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。
【
図19】扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて解錠開扉状態で示す(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。
【
図20】(A)装置本体の解錠状態を示すx−x断面図、(B)平面図、(C)正面図である。
【
図21】扉用ラッチ装置を開閉扉の開口部に組み付けて施錠不完全の開扉状態で示す(A)は縦断面図、(B)は横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1、
図2および
図3に本発明による第1例の扉用ラッチ装置を示し、
図4、
図5および
図6には、その扉用ラッチ装置を組み付けた電気制御ボックス正面の開口部を示す。第1例の扉用ラッチ装置は、開閉扉Dに組み付けた装置本体Rと、固定枠Fに取り付ける受具Sとからなる。受具Sは、
図6に示すように、断面U形に曲げた掛止め部10を有し、開閉扉Dを閉じたとき、装置本体Rのラッチ出入口11と対向する高さ位置において、掛止め部10を手前の正面側に向けて固定枠Fの縦枠部に固着してなる。
【0015】
装置本体Rは、
図1、
図2および
図3に示すように、錠ケース15と、錠ケース15に組み付けるラッチボルト20、圧縮コイルスプリングの付勢ばね12、トリガ30、シリンダ錠35およびシリンダ錠35に取り付ける回動カム40を備えた構成になっている。
【0016】
錠ケース15は、例えば金属製で、片側を開放した浅底なケース本体16に正面蓋板17を被着して薄い平箱形に組み立てる。ケース本体16は、図中左右の前後方向一側の前板部16aにラッチ出入口11を設け、前後の板部16a・16b、上下の板部16c・16dの端縁にそれぞれ取付用に切欠凹部13を凹設している。底板部16eには、前後方向後側に上下に間隔をあけて一対のガイド突起18を凸設し、略中央に、ラッチボルト20の直線移動範囲を規制するストッパ凸部19を突設し、そのストッパ凸部19を間に挟んだ両側に筒軸21を突設してなる。他方、正面蓋板17は、中央にシリンダ錠35を取り付ける円形穴22を設け、円形穴22から四方に取付板部17a〜17dを延ばして十字形をなしている。前方の取付板部17aには、その先端に矩形な切欠き穴37を設け、切欠き穴37と共に三角形の頂点を形成する位置にそれぞれ矩形な一対のロック穴39・39を横に並べて設けている。上下の取付板部17c・17dには、ケース本体16側の筒軸21と対応する位置に一対の取付穴23が設けられている。
【0017】
ラッチボルト20は、横長矩形の金属製デッドボルトで、受具Sに係合させる先端部24に丸みを帯びたテーパ面24aを形成し、テーパ面24aと反対の正面蓋板17側の板面にトリガ30の可動域を形成する矩形な逃げ凹部45を、ラッチボルト20の直線移動方向Xと直交する方向Yに設けてなる。先端部24には、テーパ面24aと反対側の平面にトリガ30の一部形状に合わせてT形の嵌込み凹部24bを形成している。逃げ凹部45には、底面の略中央に錠ケース15側のストッパ凸部19が係合する矩形な窓穴26を穿設している。窓穴26には、カム係合穴26aが連設されている。
【0018】
トリガ30は、例えば樹脂で全体にT型に成形し、頭部30aの片面にラッチボルト20の嵌込み凹部24bと対応するガイド突起28を凸設し、脚部30bの同じ片面に正面蓋板17のロック穴39・39とそれぞれ対応する規制突起29・29を凸設している。ガイド突起28は、四方角縁を面取りしている。規制突起29・29は、それぞれ方形に突出するが、頭部30b側の片側端面が直角に立ち上がる突当て段部29aを形成する一方、他側端面がテーパのガイド斜面29bになっている。
【0019】
シリンダ錠35は、
図7でも示すように、軸芯にプラグ貫通穴のあいたシリンダ(外筒)31に、軸芯に鍵Kを抜き差しする鍵穴32が貫通したプラグ(内筒)33を嵌着し、プラグ33をシリンダ31に対し外周からピン穴を通して出入りするピン群のシアライン形成に応じて回動可又は不可とする、公知のピンタンブラ方式の錠前である。プラグ33の先端には、
図1、
図2および
図3に示すように回動カム40が連結されている。回動カム40は、卵形のカム板で、先端に係合ピン34を突設している。シリンダ錠35は、
図7(B)に示すように、プラグ33が鍵穴32に差し込んだ鍵Kが正確に図中12時方向に向いた回動位置にあるときに限り、鍵Kを鍵穴32から抜き取れる抜き差し位置となる錠前構造になっている。
【0020】
そこで、組立時、装置本体Rは、予めシリンダ錠35を、プラグ33が鍵穴32に差し込んだ鍵Kを鍵穴32から抜き取れる抜き差し自在な回動位置に設定し、プラグ先端の回動カム40を円形穴22に通して錠ケース15の正面蓋板17に固着する。ラッチボルト20は、ラッチ出入口11に先端部24を向けて、基端部27のばね受け穴36と後板部16b間に付勢ばね12を介装してケース本体16内のガイド突起18・18間に配置し、先端部24がラッチ出入口11から突出する方向に直線移動可能に付勢した状態で、ケース本体16内に組み込む。このラッチボルト20には、嵌込み凹部24bにピンスプリングの付勢ばね25を間に挟んでトリガ30の頭部30aを嵌め込み、脚部30bを付勢ばね25を間に挟んで逃げ凹部45に載置した状態で組み付け、窓穴26のカム係合穴26aに回動カム40の係合ピン34を係合させてケース本体16に正面蓋板17を被せる。即ち、切欠凹部13に取付板部17a〜17dを係合し、ねじを取付穴23に通して筒軸21にねじ込み、ケース本体16に正面蓋板17を被着して装置本体Rを組み立てる。
【0021】
従って、装置本体Rにおいて、ラッチボルト20は、錠ケース15内で長さ方向Xにガイド突起18・18で案内して直線移動可能に保持する一方、付勢ばね12でラッチ出入口11の突出方向に移動付勢し、先端部24がラッチ出入口11から突出して受具Sに係合可能な施錠位置に、
図8(A)に示すように、窓穴26の後側縁26bにストッパ凸部19を当てて位置決め保持する。装置本体Rは、このようにラッチボルト20が施錠位置にあるときは、シリンダ錠35のプラグ33が、
図7(B)に示すように、鍵Kが12時方向を向いた鍵穴32から抜き取れる抜き差し自在な回動位置にある。このようにラッチボルト20が施錠位置にあるとき、トリガ30は、ケース本体16に被着した正面蓋板17で逃げ凹部45内の可動域に付勢ばね25に抗して押え込まれた状態で、ラッチボルト20の直線移動方向Xと直交する方向Yに可動に内装されている。
【0022】
また、ラッチボルト20は、付勢ばね12に抗して先端部24が、
図9に示すように、錠ケース15内に押し込まれ、
図8(B)に示すように、窓穴26の前側縁26cがストッパ凸部19に当たる解錠位置にあるときも、トリガ30は、ケース本体16に被着した正面蓋板17で逃げ凹部45内の可動域に付勢ばね25に抗して押え込まれた状態で、ラッチボルト20の直線移動方向Xと直交する方向Yに可動に内装されている。
【0023】
そこで、装置本体Rは、ラッチボルト20を付勢ばね12でラッチ出入口11の方向に移動付勢し、先端部24がラッチ出入口11から突出するが、そのとき、
図8(C)に示すように、窓穴26の後側縁26bがストッパ凸部19に当たる施錠位置に届かずに施錠手前位置にあるときか、
図10に示すように、トリガ30の位置決め突起28と規制突起29・29が嵌り込む位置において、正面蓋板17の取付板部17aに切欠き穴37とロック穴39・39を設ける。従って、装置本体Rでは、ラッチボルト20が付勢ばね12の付勢力で先端部24をラッチ出入口11から突出しても、施錠手前位置に留まっていると、付勢ばね25の付勢力が働いて、トリガ30がラッチボルト20の直線移動方向Xと直交する向きYに浮き上がって位置決め突起28と規制突起29・29がそれぞれ切欠き穴37とロック穴39・39に嵌り込み、規制突起29・29の突当て段部29aをロック穴39・39の穴縁に当ててロックし、ラッチボルト20の動きを拘束する構造になっている。
【0024】
即ち、第1例の扉用ラッチ装置は、ラッチボルト20が施錠位置に僅かに届かず、施錠手前位置にあるときは、その施錠位置から手前にずれた位置で、ラッチボルト20の直線移動方向Xの動きを拘束して回動カム40の回転を規制し、つまり、トリガ30でラッチボルト20の動きを拘束することにより間接に回動カム40の回動を規制するように構成したロック手段r1を備える。従って、第1例の扉用ラッチ装置は、そのようにラッチボルト20が施錠位置に僅かに届かず、施錠手前位置にあるときは、ロック手段r1により、その施錠位置から手前にずれた位置で、ラッチボルト20の直線移動方向Xの動きを拘束して回動カム40の回転を規制するため、鍵穴32に差し込んだ鍵Kは12時方向の抜き差し位置になく、その抜き差し位置から手前にずれた抜き差し不能位置にロックされ、その結果、
図11(A)に示すように、ピン群のシアライン形成がプラグ33の回動を規制されるために鍵Kを鍵穴32から抜き取れないことから、ラッチボルト20が施錠位置にないことを報知する。
【0025】
そのようなロック手段r1を備えた第1例の扉用ラッチ装置は、
図6に示すように、固定枠F側の受具Sの掛止め部10に、施錠位置に突出した状態でラッチボルト20の先端部24が対向する高さ位置において、シリンダ錠35を透穴から扉正面に臨ませてケース本体16を扉背面戸先側にビス止めして装置本体Rを開閉扉Dに組み付ける。そこで、開いた開閉扉Dを閉方向に回転して閉止するとき、受具Sの掛止め部10にラッチボルト20の先端部24のテーパ面24aが当たり、ラッチボルト20は付勢ばね12に抗していったん後退してから、開閉扉Dが全閉すると、
図1に示すように、付勢ばね12の付勢力で前進し、先端部24が掛止め部10を乗り越えて係合し、開閉扉Dを施錠する。
【0026】
解錠時は、シリンダ錠35の鍵穴32に鍵Kを差し込んで解錠方向に回すと、回動カム40が一体に回動し、
図9に示すように、係合ピン34がカム係合穴26aに係合したラッチボルト20が付勢ばね12の付勢力に抗して後退し、それに応じて、ラッチボルト20の先端部24が受具Sの掛止め部10から外れて開閉扉Dの施錠が解除される。従って、開閉扉Dは、
図12および
図13に示すように、吊元側ヒンジ部14の枢軸14aを支点として開方向に回転して開かれる。
【0027】
さて、第1例の扉用ラッチ装置では、開閉扉Dを閉止して施錠操作したとき、例えば受具Sの掛止め部10にラッチボルト20の先端部24が誤って引っ掛ったりしてラッチボルト20が受具Sの掛止め部10に届いて僅かに係止状態にはあるが、十分な施錠状態にないと、そのような場合は、ラッチボルト20が施錠位置に僅かに届かず、施錠手前位置にあるときなので、
図8(C)および
図10に示すように、付勢ばね25の付勢力でトリガ30がラッチボルト20の直線移動方向Xと直交する向きYに浮き上がって位置決め突起28と規制突起29・29がそれぞれ正面蓋板17の切欠き穴37とロック穴39・39に嵌り込み、ラッチボルト20の動きを拘束して回動カム40の回動を規制する。すると、鍵穴32に差し込んだ鍵Kは、12時方向の抜き差し位置になく、その抜き差し位置から手前にずれた抜き差し不能位置にあるために鍵穴32から抜き取れないことから、いま、ラッチボルト20は施錠位置になく開閉扉Dの施錠が不完全であることを報知する。
【0028】
従って、第1例の扉用ラッチ装置では、ラッチボルト20が受具Sに完全に係合する施錠位置まで突出し、差し込んだ鍵Kが鍵穴32から抜き取れる12時方向の抜き差し位置まで回動カム40が回動しない限り、鍵Kを鍵穴32から抜き取ることができず、鍵Kを抜き取れるということは、開閉扉Dが完全に閉止していることを意味するから、従来のような施錠忘れや誤信による不完全施錠が防止され、開閉扉を常に確実に施錠することができる。
【0029】
ところで、上述した第1例の扉用ラッチ装置では、ロック手段r1を、ラッチボルト20が受具Sに十分に係合せず完全な施錠状態にないときは、トリガ30でラッチボルト20の動きを拘束することにより間接的に回動カム40の回動を規制して鍵穴32から鍵Kを抜けない構成にするが、本発明では、以下に示す第2例の扉用ラッチ装置のように、トリガで直接回動カムの回動を規制して鍵穴32から鍵Kを抜けないようにして不完全施錠を報知する構成にすることもできる。第2例の扉用ラッチ装置では、第1例と同一の構成のものには同じ符号を付して説明する。
【0030】
第2例の扉用ラッチ装置は、
図14、
図15および
図16に示すように、開閉扉Dに組み付けた装置本体R´と、固定枠Fに取り付ける受具Sとからなる。
【0031】
装置本体R´は、錠ケース15と、錠ケース15に組み付けるラッチボルト50、圧縮コイルスプリングの付勢ばね55、トリガ60、シリンダ錠35およびシリンダ錠35に取り付ける回動カム65を備えた構成になっている。
【0032】
ラッチボルト50は、細長い金属製デッドボルトで、受具Sに係合させる先端部24に丸みを帯びたテーパ面24aを形成し、テーパ面24aと反対の正面蓋板17側の板面に回動カム65の回動域を形成する逃げ段部51をラッチボルト50の直線移動方向Xと直交する向きYに凹設している。逃げ段部51には、略中央に直線移動方向Xに沿って横に長い矩形のガイド穴52と、ガイド穴52と直交する向きに縦長なカム係合穴53を穿設している。ガイド穴52寄りの片側側面54には、一部が斜面56aになったトリガ60との嵌め合せ部56を凹設している。他側側面の先端部24寄りには肩部58が形成されている。
【0033】
トリガ60は、例えば樹脂製で、ラッチボルト50に対応する長さと形状に成形し、直線移動方向X前端に丸みを帯びたテーパ面を形成した突当て部49を設け、突当て部49近くに係止段部59を設ける一方、後端には、凹状をなすカム係合部69と、ラッチボルト50の嵌め合せ凹部56に合わせて一部が斜面57aになった嵌め合せ部57を設けてなる。そして、トリガ60は、互いの嵌め合せ部56・57において、ラッチボルト50の片側側面54に摺動可能に嵌め合せて並設できる形状になっている。
【0034】
シリンダ錠35には、プラグ33の先端に卵形のカム板からなる回動カム65が連結されるが、回動カム65は、先端に係合ピン34が突設され、その係合ピン34の横の周縁に凸状をなすトリガ係合部70を設けてなる。シリンダ錠35は、
図7(B)に示すように、プラグ33が鍵穴32に差し込んだ鍵Kが図中12時方向に向いた回動位置にあるときに限り、鍵Kを鍵穴32から抜き取れる抜き差し位置となるように設定している。
【0035】
そこで、装置本体R´は、シリンダ錠35を、プラグ先端の回動カム65を円形穴22に通して錠ケース15の正面蓋板17に固着する。一方、ラッチボルト50とトリガ60を、互いの嵌め合せ部56・57において、片側側面54に摺動可能に嵌め合せて並設し、先端部24と突当て部49をそれぞれラッチ出入口11に向けてケース本体16内のガイド突起18・18間に配置する。そして、トリガ60の後端のばね受け穴48と後板部16b間に付勢ばね55を介装し、トリガ60は、付勢ばね55で突当て部49がラッチ出入口11から突出する方向に付勢した状態で、ケース本体16内に組み込む。それから、回動カム65の係合ピン34をラッチボルト50のカム係合穴53に係合させて、正面蓋板17をケース本体16に被着して装置本体R´を組み立てる。
【0036】
従って、この装置本体R´において、
図17に示すように、ラッチボルト50は、肩部58をラッチ出入口11の開口縁11aに当てて止め、先端部24がラッチ出入口11から突出して受具Sの掛止め部10に係合可能な施錠位置に位置決め保持する。一方、トリガ60は、ガイド突起18・18の案内で、ラッチボルト50に沿って平行に直線移動可能に錠ケース15内に並設する。即ち、トリガ60は、ガイド突起18・18間において、ラッチボルト50と平行な向きにのみ可動に拘持する。そして、装置本体R´では、ラッチボルト50がこのように施錠位置にあるときは、シリンダ錠35のプラグ33は鍵Kが鍵穴32から抜き取れる12時方向を向いた抜き差し位置にある。
【0037】
そこで、装置本体R´は、ラッチボルト50を、肩部58をラッチ出入口11の開口縁11aに当てて止め、先端部24がラッチ出入口11から突出して受具Sの掛止め部10に係合可能な施錠位置に位置決め保持するが、そのとき、ラッチボルト50が、例えば肩部58がラッチ出入口11の開口縁11aに当たる施錠位置に届かず施錠手前位置にあるときに、
図21(B)に示すように、トリガ60がカム係合部69と回動カム65のトリガ係合部70とが係合するロック位置にあり、このトリガ60で回動カム65の回動を規制する構造になっている。
【0038】
即ち、第2例の扉用ラッチ装置は、ラッチボルト50が施錠位置に届かず、施錠手前位置にあるときは、その施錠位置から手前にずれた位置で回動カム65の回転を規制し、つまり、トリガ60で直接回動カム65の動きを拘束して回動を規制する構成したロック手段r2を備える。従って、第2例の扉用ラッチ装置は、そのようにラッチボルト50が施錠位置に届かず、施錠手前位置にあるときは、ロック手段r2により、その施錠位置から手前にずれた位置で回動カム65の回転を規制するため、シリンダ錠35のプラグが鍵Kが抜き取れる12時方向の抜き差し位置になく、その抜き差し位置から手前にずれた抜き差し不能位置でロックされ、その結果、
図11(B)に示すように、ピン群のシアライン形成がプラグ33の回動を規制されるために鍵Kを鍵穴32から抜き取れないことから、ラッチボルト50が施錠位置にないことを報知する。
【0039】
そのようなロック手段r2を備えた第2例の扉用ラッチ装置も、
図14に示すように、固定枠F側の受具Sの掛止め部10に、施錠位置に突出した状態でラッチボルト50の先端部24が対向する高さ位置において、シリンダ錠35を透穴から扉正面に臨ませてケース本体16を扉背面戸先側にビス止めし装置本体R´を開閉扉Dに組み付ける。そこで、開いた開閉扉Dを閉方向に回転して閉止するとき、受具Sの掛止め部10にラッチボルト50の先端部24のテーパ面24aが当たり、開閉扉Dが全閉すると、先端部24がテーパ面24aにおいて掛止め部10を滑りながら係合し、開閉扉Dを施錠する。
【0040】
解錠時は、シリンダ錠35の鍵穴32に鍵Kを差し込んで解錠方向に回すと、回動カム65が一体に回動し、
図18、
図19および
図20に示すように、係合ピン34がカム係合穴53に係合したラッチボルト50が後退し、それに応じて、ラッチボルト50の先端部24が受具Sの掛止め部10から外れて開閉扉Dの施錠が解除される。従って、開閉扉Dは、吊元側ヒンジ部14の枢軸14aを支点として開方向に回転して開かれる。
【0041】
さて、第2例の扉用ラッチ装置では、開閉扉Dを閉止して施錠操作したとき、例えば受具Sの掛止め部10にラッチボルト50の先端部24が誤って引っ掛ったりしてラッチボルト50が受具Sの掛止め部10に届いて係止状態ではあるが十分な施錠状態にないと、そのような場合は、ラッチボルト50が施錠位置に届かず、施錠手前位置にあるときなので、
図21(B)に示すように、たとえ施錠位置まで鍵Kを回そうにも、トリガ60がカム係合部69と回動カム65のトリガ係合部70とが係合するロック位置にあるため、トリガ60で回動カム65の回動が規制される。すると、シリンダ錠35のプラグ33は鍵穴32に差し込んだ鍵Kが12時方向の抜き差し位置になく、その抜き差し位置からずれた抜き差し不能位置にあるため、鍵穴32から抜き取れないことから、いま、ラッチボルト50は、施錠位置になく開閉扉Dの施錠が不完全であることを報知する。
【0042】
従って、第2例の扉用ラッチ装置では、ラッチボルト50が受具Sに完全に係合する施錠位置まで突出し、差し込んだ鍵Kが鍵穴32から抜き取れる12時方向の抜き差し位置まで回動カム65が回動しない限り、鍵Kを鍵穴32から抜き取ることができず、鍵Kを抜き取れるということは、開閉扉Dが完全に閉止していることを意味することから、従来のような施錠忘れや誤信による不完全施錠が防止され開閉扉を常に確実に施錠することができる。