(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のキャパシタセルを含む蓄電装置において、キャパシタセルの実効静電容量を測定する静電容量測定システムであって、
前記複数のキャパシタセルのセル電圧をそれぞれ検出するための電圧測定手段と、
前記複数のキャパシタセルのセル電圧を降下もしくは上昇させるための電圧調整手段と、
前記電圧測定手段を制御するための演算処理装置と、を備え、
前記演算処理装置が、
前記電圧測定手段によって測定された前記複数のキャパシタセルのセル電圧に基づいて、計測開始電圧及び計測終了電圧を決定し、
前記電圧測定手段によって前記キャパシタセルのセル電圧を測定するとともに、前記キャパシタセルのセル電圧が、前記電圧調整手段によって前記計測開始電圧から前記計測終了電圧まで降下もしくは上昇する電圧測定時間を計測し、
前記演算処理装置が、前記電圧測定時間に基づいて、前記キャパシタセルの静電容量を算出するとともに、前記キャパシタセル
と同じ試験用キャパシタセルの下記式2により求められる静電容量と、前記
試験用キャパシタセル
の定格容量との差である補正値
Cvによって前記静電容量を補正して、
下記式1に基づき、前記キャパシタセルの実効静電容量を算出するように構成されていることを特徴とする静電容量測定システム。
【数1】
【数2】
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどのキャパシタセルは、経年劣化などによって特性が変化し、キャパシタセルの静電容量が徐々に減少し、内部抵抗が徐々に増加することが知られている。
【0003】
このため、複数個のキャパシタセルを備えた蓄電装置は、キャパシタセルの経年劣化に伴って、蓄電容量が減少してしまうことになる。
このようなキャパシタセルの劣化状態は、蓄電装置の充放電中に、充電電流または放電電流を検出して、充電電流または放電電流とセル電圧の経時変化に基づいて測定された各キャパシタセルの静電容量から推定することが一般的である。
【0004】
このように、充電電流または放電電流を用いてキャパシタセルの静電容量を推定する方法を用いた場合、蓄電装置の充放電状態でなければキャパシタセルの劣化状態を推定することはできず、また、キャパシタセルの劣化状態を推定するために充放電電流を測定するための測定装置が必要となってくる。
【0005】
このため、例えば、特許文献1では、
図4に示すように、キャパシタセル102に対して並列に接続されたキャパシタセル102のセル電圧を検出する電圧検出手段104と、キャパシタセル102に対して並列に接続された検査回路106とを設けたキャパシタの寿命判定装置100が提案されている。
【0006】
検査回路106は、放電スイッチ108と、放電抵抗rが並列接続された短絡スイッチ110とが直列接続されている。
この寿命判定装置100では、キャパシタセル102が満充電の状態で、放電スイッチ108を入状態とし、短絡スイッチ110を切状態とすることによって、キャパシタセル102と放電抵抗rとの閉回路が形成され、キャパシタセル102の放電が開始される。
【0007】
そして、満充電状態から設定電圧までの定抵抗放電時間を測定することにより、キャパシタが劣化していない状態の初期定抵抗放電時間と、キャパシタが劣化した状態の経時定抵抗放電時間とに基づいて、電気二重層キャパシタの劣化状態を判定することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、キャパシタセルの静電容量には電圧依存性を有していることが知られており、例えば、
図5に示すように、セル電圧が3.8Vの時の静電容量と3.0Vの時の静電容量とは大きく異なっている。しかしながら、従来のキャパシタセルを備えた蓄電装置では、このようなキャパシタセルの静電容量の電圧依存性を考慮せずに、キャパシタセルの劣化状態を判定していた。
【0010】
このため、任意の電圧におけるキャパシタセルの劣化状態を判定した場合、本来であれば劣化していないキャパシタセルを劣化していると判定してしまうことがあり、キャパシタセルの劣化状態を判定する場合には、常に所定の電圧でキャパシタセルの静電容量を測定する必要があった。
【0011】
本発明では、キャパシタセルの静電容量を測定する際に、事前に測定された補正値を用いて測定されたキャパシタセルの静電容量を補正することによって実効静電容量を算出するように構成され、任意の電圧におけるキャパシタセルの静電容量を測定した場合にも、正確にキャパシタセルの実効静電容量を測定することができる静電容量測定システム及び静電容量測定方法を提供することを目的とする。
【0012】
また本発明では、実効静電容量を測定するための専用の回路を設けずに、均等化制御回路を用いてキャパシタセルの実効静電容量を測定する静電容量測定システム及び静電容量測定方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに本発明では、測定されたキャパシタセルの実効静電容量から、キャパシタセルの劣化状態を推定するキャパシタセルの劣化状態推定システム及び劣化状態推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前述したような目的を達成するために発明されたものであって、本発明の静電容量測定システムは、複数のキャパシタセルを含む蓄電装置において、キャパシタセルの実効静電容量を測定する静電容量測定システムであって、
前記複数のキャパシタセルのセル電圧をそれぞれ検出するための電圧測定手段と、
前記複数のキャパシタセルのセル電圧を降下もしくは上昇させるための電圧調整手段と、
前記電圧測定手段を制御するための演算処理装置と、を備え、
前記演算処理装置が、
前記電圧測定手段によって測定された前記複数のキャパシタセルのセル電圧に基づいて、計測開始電圧及び計測終了電圧を決定し、
前記電圧測定手段によって前記キャパシタセルのセル電圧を測定するとともに、前記キャパシタセルのセル電圧が、前記電圧調整手段によって前記計測開始電圧から前記計測終了電圧まで降下もしくは上昇する電圧測定時間を計測し、
前記演算装置が、前記電圧測定時間に基づいて、前記キャパシタセルの静電容量を算出するとともに、前記キャパシタセルと同じ試験用キャパシタセルの
下記式2により求められる静電容量と、前記キャパシタセルの静電容量の初期値である定格容量との差である補正値C
vによって前記静電容量を補正して、下記式1に基づき、前記キャパシタセルの実効静電容量を算出するように構成されていることを特徴とする。
【数1】
【数2】
【0015】
また、本発明のキャパシタセルの静電容量測定方法は、複数のキャパシタセルを含む蓄電装置において、キャパシタセルの実効静電容量を測定する静電容量測定方法であって、
前記複数のキャパシタセルのセル電圧を測定する工程と、
測定された複数のキャパシタセルのセル電圧に基づいて、計測開始電圧及び計測終了電圧を決定する工程と、
前記キャパシタセルのセル電圧が、電圧調整手段によって前記計測開始電圧から前記計測終了電圧まで降下もしくは上昇する電圧測定時間を計測する工程と、
前記電圧測定時間に基づいて、前記キャパシタセルの静電容量を算出する工程と、
前記キャパシタセルと同じ試験用キャパシタセルの
下記式2により求められる静電容量と、前記キャパシタセルの静電容量の初期値である定格容量との差である補正値C
vによって前記静電容量の補正を行い、下記式1に基づき、前記キャパシタセルの実効静電容量を算出する工程と、を含むことを特徴とする。
【数3】
【数4】
【0016】
このように構成することによって、静電容量に補正値を加えることにより、正確に実効静電容量を測定することができ、例えば、セルの劣化検出などもより正確に行うことができるため、蓄電装置を長寿命化することができる。
【0017】
さらに、例えば、蓄電装置に備えられている均等化制御回路を用いてキャパシタセルの静電容量を測定することができるため、専用の回路を設けずにキャパシタセルの静電容量を測定することができる。
【0018】
なお、本発明において「実効静電容量」とは、キャパシタセルの静電容量の電圧依存性を考慮しない場合の静電容量であって、劣化していないキャパシタセルの「実効静電容量」は定格容量となる。すなわち、キャパシタセルが劣化するにつれて、キャパシタセルの「実効静電容量」は降下することになる。
【0021】
また、本発明の静電容量測定システムは、前記電圧調整手段が、前記複数のキャパシタセルの電荷を消費するための電荷消費手段であり、
前記演算処理装置が、
前記キャパシタセルの電荷を消費するように、前記キャパシタセルから前記電荷消費手段へ電流を流すように制御を行い、
前記電圧測定手段によって前記キャパシタセルのセル電圧を測定するとともに、前記キャパシタセルのセル電圧が、前記計測開始電圧から前記計測終了電圧まで降下する電圧測定時間を計測するように構成されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の静電容量測定方法は、前記複数のキャパシタセルの電荷を消費させる工程をさらに含み、
前記キャパシタセルのセル電圧が、前記計測開始電圧から前記計測終了電圧まで降下する電圧測定時間を計測することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の静電容量測定システムは、前記電荷消費手段が、前記キャパシタセルに対して並列に接続された均等化制御用抵抗であるとともに、前記電圧測定手段が、セル電圧検出回路であり、
前記複数のキャパシタセルに対して並列に接続された均等化制御用スイッチと、
前記均等化制御用スイッチを制御するための均等化セル選択回路と、をさらに備え、
前記演算処理装置が、前記キャパシタセルの電荷を消費するように、前記キャパシタセルから前記均等化制御用抵抗へ電流を流すため、前記キャパシタセルに対して並列に接続された前記均等化制御用スイッチを入状態とするように前記均等化セル選択回路を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の静電容量測定システムは、前記キャパシタセルが、リチウムイオンキャパシタであることを特徴とする。
また、本発明の静電容量測定方法は、前記キャパシタセルが、リチウムイオンキャパシタであることを特徴とする。
【0025】
また、本発明のキャパシタセルの劣化状態推定システムは、上述するいずれかの静電容量測定システムを備え、
前記演算処理装置が、
前記電圧測定時間に基づいて算出された前記キャパシタセルの実効静電容量と、前記キャパシタセルの定格容量との容量比率を算出し、
前記容量比率に基づいて前記キャパシタセルの劣化状態を推定することを特徴とする。
【0026】
また、本発明のキャパシタセルの劣化状態推定方法は、上述するいずれかの静電容量測定方法によって、前記キャパシタセルの静電容量を測定する工程と、
前記キャパシタセルの実効静電容量と、前記キャパシタセルの定格容量との容量比率を算出する工程と、
前記容量比率に基づいて前記キャパシタセルの劣化状態を推定する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、任意の電圧におけるキャパシタセルの静電容量を測定した場合にも、静電容量に補正値を加えることにより、正確にキャパシタセルの実効静電容量を測定することができ、例えば、セルの劣化検出などもより正確に行うことができるため、蓄電装置の劣化状態を正確に判定することができる。さらに、正確にセルの劣化を検出することができるため蓄電装置の長寿命化を図ることができる。
【0028】
また、蓄電装置に備えられた均等化制御回路を用いて、キャパシタセルの静電容量を測定し、キャパシタセルの劣化状態を推定するように構成されているため、劣化状態の推定のための専用回路を設ける必要がない。
【0029】
さらに本発明によれば、測定されたキャパシタセルの実効静電容量から、キャパシタセルの劣化状態を推定することができ、劣化していないキャパシタセルを劣化していると判定してしまうようなことがない。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を、図面に基づいてより詳細に説明する。なお、本実施例の実施形態を以下に示すが、本発明はこの実施形態に限られるものではない。また、本発明に用いられる実施形態は、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタなどのキャパシタセルに好適に用いることができる。
【0032】
図1は、本発明の劣化状態推定システムを備える蓄電装置の回路構成図である。
本実施例の蓄電装置10は、キャパシタセルC
1〜C
nと、静電容量測定回路11とを備えている。
【0033】
静電容量測定回路11は、キャパシタセルC
1〜C
nのセル間電圧を測定するための電圧測定手段およびキャパシタセルC
1〜C
nの電荷を消費させるため電荷消費手段を含む測定用IC13と、測定用IC13を制御するための演算処理装置16と、キャパシタセルC
1〜C
nから演算処理装置16を動作させるための電力を供給するための電源回路18とから構成されている。
【0034】
なお、演算処理装置16は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)やRAM(Random Access Memory;ランダムアクセスメモリ)、演算処理プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory;リードオンリーメモリ)などによって構成されている。
【0035】
また、演算処理装置16と測定用IC13は、例えば、演算処理装置16から測定用IC13へ制御命令を送信したり、測定用IC13から演算処理装置16へセル電圧値や電流値などを送信したりするなど、双方向に通信するための通信手段20を備えている。
【0036】
一方、蓄電装置10の蓄電部22は、リチウムイオンキャパシタからなるn個のキャパシタセルC
1〜C
nが直列接続されて構成される。
蓄電部22の両端は電源回路18に接続されており、蓄電部22の電力を用いて演算処理装置16を動作させるように構成されている。すなわち、本実施例の静電容量測定回路11を備えた蓄電装置10は、蓄電装置10自身の電力を用いてキャパシタセルC
1〜C
nの静電容量を測定することができる。
【0037】
なお、本実施例では、蓄電装置10自身の電力を用いてキャパシタセルC
1〜C
nの静電容量を測定するために、蓄電部22の電力を用いて演算処理装置16を動作させる電源回路18を備えているが、蓄電装置10外部からの電力を用いて演算処理装置16を動作させるように構成する場合には、電源回路18を備えずに、演算処理装置16を動作させるための電力を演算処理装置16に外部から直接供給するように構成することもできる。
【0038】
以下、
図2に示すフローチャートに基づいて、本実施例のキャパシタセルの容量測定を行う場合の、静電容量測定回路11の動作の流れを説明する。
図2は、
図1の蓄電装置10において静電容量測定回路11を用いて、キャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量測定を行う流れを示すフローチャートである。
【0039】
図2に示すように、演算処理装置16から測定用IC13に対してキャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量を測定するように命令が送信されると(S10)、まず、電圧測定手段(測定用IC13)を用いて、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧が順次測定される(S20)。
【0040】
全てのキャパシタセルC
1〜C
nについてセル電圧が測定されたか否かが判断され(S25)、セル電圧が測定されていないキャパシタセルがある場合には、次のキャパシタセルのセル電圧が測定される。測定されたセル電圧の値は、キャパシタセルC
1〜C
nに関連づけて演算処理装置16のRAMに記憶される。
【0041】
次に、演算処理装置16のRAMに記憶されたキャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧値から、演算処理装置16によって、それぞれのキャパシタセルC
1〜C
nの計測開始電圧Vds及び計測終了電圧Vdeを決定する(S30)。
【0042】
計測開始電圧Vds及び計測終了電圧Vdeは、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧値よりも低い値であって、キャパシタセルC
1〜C
nが過放電とならない電圧値であれば特に限定されることはない。
【0043】
また、計測開始電圧Vds及び計測終了電圧Vdeは、キャパシタセルC
1〜C
nについて個別に決定することもできるし、キャパシタセルC
1〜C
nそれぞれのセル電圧値に基づく単一の電圧値、例えば、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧の最小値とすることができる。
【0044】
また、計測終了電圧Vdeは、計測開始電圧Vdsよりも低い値が選択され、例えば、計測開始電圧Vdsよりも0.1V低い値とすることができる。
【0045】
次いで、静電容量を測定するキャパシタセルC
m(mはセルの番号であって、1〜n(n≧2)の間の値)の電荷を電荷消費手段(測定用IC13)によって消費させる(S40)。
この状態で、キャパシタセルC
mのセル電圧を電圧測定手段(測定用IC13)によって測定し、セル電圧が計測開始電圧Vdsに達したか否かが判断される(S50)。
【0046】
キャパシタセルC
mのセル電圧が、計測開始電圧Vdsに達していない場合には、セル電圧の測定が継続され(S55)、達した場合には、キャパシタセルC
mのセル電圧が計測開始電圧Vdsから計測終了電圧Vdeまで降下するのに要する時間(以下、「電圧測定時間」という)を計測するためのタイマーを作動させる(S60)。
【0047】
なお、タイマーは、例えば、演算処理装置16や測定用IC13に備えられたタイマーやカウンタを用いることができ、カウンタを用いる場合には、計測終了時のカウンタと計測開始時のカウンタの差分に基づいて、計測時間を算出することができる。
【0048】
タイマーの動作中も、電圧測定手段(測定用IC13)を用いて、キャパシタセルCmのセル電圧が測定され(S70)、セル電圧が計測終了電圧Vdeに達したか否かが判断される(S75)。
【0049】
キャパシタセルC
mのセル電圧が、計測終了電圧Vdeに達していない場合には、セル電圧の測定が継続され、達した場合には、タイマーを停止させる(S80)。
このようにタイマーによって計測された電圧測定時間は、キャパシタセルC
1〜C
nに関連づけて演算処理装置16のRAMに記憶される。
【0050】
全てのキャパシタセルC
1〜C
nについて電圧測定時間が計測されたか否かが判断され(S90)、電圧測定時間が測定されていないキャパシタセルがある場合には、S40に戻って、次のキャパシタセルの電圧測定時間が計測される。
【0051】
全てのキャパシタセルC
1〜C
nについて電圧測定時間が計測された場合には、演算処理装置16のRAMに記憶されたキャパシタセルC
1〜C
nの電圧測定時間に基づいて、キャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量が算出される(S100)。
【0052】
キャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量は、例えば、以下の式1のように演算処理装置16によって算出することができる。
【数5】
【0053】
このように算出されたキャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量は、キャパシタセルC
1〜C
nに関連づけて演算処理装置16のRAMに記憶され、キャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量算出が完了する(S110)。
【0054】
そして、演算処理装置16によって、RAMに記憶されたキャパシタセルC
1〜C
nの実効静電容量と、キャパシタセルC
1〜C
nの定格容量との容量比率がそれぞれ算出され、容量比率が所定の劣化比率よりも小さい場合には、当該キャパシタセルが劣化していると判断される。
【0055】
なお、補正値C
vは、例えば、蓄電装置10で用いられるキャパシタセルC
1〜C
nと同じ試験用キャパシタセルC
tを用いて、上記S10〜S110に基づいて、複数の放電開始電圧Vdsと放電終了電圧Vdeとの組み合わせにおける放電時間t
mを測定することによって、下記式2から求められる静電容量と、試験用キャパシタセルC
tの定格容量との差を補正値C
vとすることができる。
【数6】
【0056】
なお、補正値C
vは、電圧値に関連づけたデータベースとして、演算処理装置16のRAMに記憶しておくことができる。
なお、本実施例では、電荷消費手段を用いて、キャパシタセルC
mのセル電圧が、計測開始電圧Vdsから計測終了電圧Vdeに降下するまでの電圧測定時間を計測しているが、例えば、充電手段などを用いて、キャパシタセルC
mのセル電圧が、計測開始電圧Vdsから計測終了電圧Vdeに上昇するまでの電圧測定時間を計測するようにしてもよい。
【0057】
この場合、計測開始電圧Vds及び計測終了電圧Vdeは、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧値よりも高い値であって、キャパシタセルC
1〜C
nが過充電とならない電圧値とすることができる。
【0058】
また、計測開始電圧Vds及び計測終了電圧Vdeは、キャパシタセルC
1〜C
nについて個別に決定することもできるし、キャパシタセルC
1〜C
nそれぞれのセル電圧値に基づく単一の電圧値、例えば、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧の最大値とすることができる。
【0059】
また、計測終了電圧Vdeは、計測開始電圧Vdsよりも高い値が選択され、例えば、計測開始電圧Vdsよりも0.1V高い値とすることができる。
このように、本発明では、電荷消費手段や充電手段などの電圧調整手段を用いて、キャパシタセルのセル電圧が、計測開始電圧Vdsから計測終了電圧Vdeに達するまでの電圧測定時間を計測し、この電圧測定時間に基づいて、キャパシタセルの静電容量を算出することができる。
【0060】
図3は、本発明の劣化状態推定システムを備える蓄電装置の別の実施例の回路構成図である。
この実施例の蓄電装置10は、キャパシタセルC
1〜C
nと、均等化制御回路12とを備えている。
【0061】
なお、この実施例の劣化状態推定システムを備える蓄電装置10は、基本的には
図1,2に示した蓄電装置10と同様な構成であり、同じ構成部材には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
均等化制御回路12は、キャパシタセルC
1〜C
nに対してそれぞれ並列に接続された均等化制御用抵抗R
1〜R
n(電荷消費手段)及びFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)からなる均等化制御用スイッチS
1〜S
nと、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧をそれぞれ検出するためのセル電圧検出回路(電圧測定手段)及び均等化制御を行うキャパシタセルに対して並列に接続された均等化制御用スイッチを制御するための均等化セル選択回路を含む均等化IC14と、均等化IC14を制御するための演算処理装置16と、キャパシタセルC
1〜C
nから演算処理装置16を動作させるための電力を供給するための電源回路18とから構成されている。
【0063】
キャパシタセルC
1〜C
nに対して並列に接続された均等化制御用スイッチS
1〜S
nを入状態にすることによって、キャパシタセルC
1〜C
nから均等化制御用抵抗R
1〜R
nに対して電流が流れ、キャパシタセルの電荷が消費されることになる。
【0064】
なお、本実施例では、均等化制御用スイッチS
1〜S
nとしてFETを用いているが、これに限定されず、ダイオードスイッチやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチなどの高周波スイッチなど、均等化セル選択回路(本実施例の場合は、均等化IC14)の出力に基づいて入切を制御できるスイッチを用いることができる。
【0065】
また、本実施例では、セル電圧検出回路及び均等化セル選択回路などを含む均等化IC14(例えば、リニアテクノロジー社製LTC6802)を用いているが、セル電圧検出回路及び均等化セル選択回路をそれぞれ独立して構成してもよい。
【0066】
なお、演算処理装置16と均等化IC14は、例えば、演算処理装置16から均等化IC14へ制御命令を送信したり、均等化IC14から演算処理装置16へセル電圧値を送信したりするなど、双方向に通信するための通信手段20を備えている。
【0067】
このように構成された均等化制御回路12を用いることによって、
図2に示すフローチャートと同様にして、キャパシタセルC
1〜C
nの実効容量測定を行うことができる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧や電圧測定時間を個別に測定しているが、全てのキャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧をセル電圧検出回路によって同時に検出するように構成して、キャパシタセルC
1〜C
nのセル電圧や電圧測定時間を同時に測定するようにしてもよい。
【0069】
また、キャパシタセルC
1〜C
nの温度を測定するための温度測定手段を設けて、キャパシタセルの温度が所定の温度よりも高い場合などに異常と判断してキャパシタセルの静電容量測定動作を中止するようにするなど、異常検知を行うようにしてもよい。
【0070】
さらに、このように温度測定手段を設ける場合には、測定時の温度を変えて、上記のように補正値C
vを求めておくことによって、測定温度に応じた補正値C
vを用いるようにしてもよいなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。