(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定レート刺激発生部は、前記制御部及び前記電気刺激発生部のうち少なくとも一方の動作異常を監視する監視部を有し、この監視部により前記動作異常を検出した際に、前記固定レートで前記電気刺激を発生する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の体外式ペースメーカ装置。
前記制御部及び前記電気刺激発生部の動作を監視し、前記制御部及び前記電気刺激発生部のうち少なくとも一方の動作異常を検知した際に、前記固定レート刺激発生部に、前記固定レートで前記電気刺激を発生させる監視制御部を更に備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の体外式ペースメーカ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る体外式ペースメーカ装置10の外観を示す図である。
【0014】
図1に示す体外式ペースメーカ装置10は、患者1の体外に配置されるペースメーカ本体100と、ペースメーカ本体100に接続されるペーシングリードシステム20と、を有している。
【0015】
ペーシングリードシステム20は、ペースメーカ本体100から患者1の心臓へ電気刺激を供給(ペーシング)するものであり、ここでは、患者(詳細には患者の身体)1の心拍を測定し、この心拍に基づいてペーシングする。ペーシングリードシステム20は、先端が心腔2内に留置されたリード22、23と、リード22、23をペースメーカ本体100に接続する中継コード24、25とをそれぞれ備えたペーシングリード部20A、20Bを有する。ここでは、リード22と中継コード24とでペーシングリード部20Aを構成し、リード23と中継コード25とでペーシングリード部20Bを構成している。これら一対のペーシングリード部20A、20Bのそれぞれを介して、ペースメーカ装置10は、心室と心房ペーシングの双方をペーシング可能となっている。
【0016】
ペースメーカ装置10では、ペースメーカ本体100は、心腔2内のリード22、23を介して心房又は心室が自発的に動き出す際の電気信号(所謂、自己心拍)を感知(センシング)する。また、リード22、23を介して、心房又は心室の心筋(心房筋または心室筋)へ短い電気刺激パルスを送り出す(ペーシングする)。ペーシングは、ここでは、ペースメーカ本体100側で心房又は心室からの自己心拍を感知しない場合に行う。
【0017】
図2は、本発明の一実施の形態に係るペースメーカ装置10の要部構成を示す図である。
【0018】
ペースメーカ本体100は、心電図信号増幅部111、A/D変換部(図では「ADC」で示す)112、パルス増幅部114、SRAM115、発光部(LED)116、報音部(Buzzer)117、スイッチ部(図では「Switch」で示す)118、RTC119、表示部(図では「LCD」で示す)120、電源回路122、CPU(制御部)130、CPLD(電気刺激発生部)140、固定レート回路(固定レート刺激発生部)150、切り替え部160を有する。これら各部111、112、114、116、117、118、120、160、SRAM115、RTC119、電源回路122、CPU(制御部)130、CPLD(Programmable Logic Device)140及び固定レート回路150は、ペースメーカ本体100の筐体100a内に収容されている。
【0019】
ペーシングリードシステム20におけるペーシングリード部20A、20Bの各々は、心電図信号増幅部111、パルス増幅部114に接続されている。つまり、心電図信号増幅部111には、ペーシングリード部20A、20Bのリード22、23のそれぞれを介して患者1の心内心電図信号(心房内心電図信号及び心室内心電図信号)が入力される。また、パルス増幅部114から出力される電気刺激パルスは、ペーシングリード部20A、20Bのリード22、23のそれぞれを介して心房筋、心室筋に供給される。このようにペースメーカ本体100は、ペーシングリード部20A、20Bのそれぞれを用いて、心房、心室のそれぞれに対して個別にセンシング及びペーシングを行う。
【0020】
具体的には、リード22、23の先端に設けられた電極が、患者1の心内心電図信号(心室内心電図信号、心房内心電図信号)を検出すると、その信号は、心電図信号増幅部111に入力される。
【0021】
心電図信号増幅部111は、心内心電図信号を増幅して、A/D変換部112に出力する。
【0022】
A/D変換部112は、入力されるアナログ信号である心内心電図信号をディジタル信号に変換して、心内心電図情報としてCPU(中央処理装置)130に出力する。
【0023】
SRAM(Static Random Access Memory)115は、CPU130が行う処理の過程で必要なデータを記憶するために用いられる。具体的に、SRAM115は、各種プログラムを記憶するプログラムメモリや、設定値(ペーシングタイミングを含む)を記憶する設定記憶メモリ、CPU130がデータ処理を行う際に使用するワークメモリ等として使用するメインメモリである。このSRAM115は、CPU130からの情報を、表示部120の表示画面に表示する表示パターンデータとして記録描画するといった所謂VRAMとしての機能を有しても良い。なお、このSRAM115の代わりに、SDRAM、DRAMを使用してもよい。
【0024】
発光部116は、LED(Light Emitting Diode)などで形成され、CPU130の制御により又はハードウェア(CPLD140)により強制的に点灯或いは点滅する。例えば、発光部116は、電源ランプ、心房刺激パルス同期ランプ、心室刺激パルス同期ランプ、心房センシング同期ランプ、心室センシング同期ランプ等を有し、CPU130の指示に基づいて、電源ON、心房刺激パルス同期状態、心室刺激パルス同期状態等のときに点灯する。また、発光部116は、CPU130或いはCPLD140からの指示により、発光し、患者1の周囲(例えば、医療従事者、付添人など)に動作異常である旨を知らせる警報部131として機能する。
【0025】
報音部117は、ブザーとCPU130の制御でブザーの鳴動制御を行うブザー制御回路とを有する。報音部117は、CPU130或いはCPLD140からの指示により、発音し、患者1の周囲(例えば、医療従事者、付添人など)に動作異常である旨を知らせる警報部131として機能する。動作異常とは、CPU130の故障、ソフトウェアのハングアップなどによるCPU130の暴走、CPLD140の故障等によって、ペーシング動作に異常を来す状態である。このとき、発光部116の点灯或いは点滅とともに、発音(警報音を発生)してもよい。
【0026】
スイッチ部118は、各種の設定を行うためのスイッチ回路を有し、電源スイッチ(ON/ENTER)、設定項目を切り替えるセレクトスイッチ、カーソルスイッチ、ペーシング設定スイッチ等より構成されている。ペーシング設定スイッチは、ペーシングを行う際の所定の設定値(ペーシング設定)、センシングを行う際の設定を行うものである。ペーシングの設定は、心房出力値(例えば、0.1〜10V又は0.1〜20mA)設定スイッチ、心室出力値(例えば、0.1〜10V又は0.1〜20mA)設定スイッチ、AV間隔(例えば、0〜300ms)設定スイッチ、レート(例えば、30〜180ppm)設定スイッチ等により設定される。また、センシングを行う際の設定は、心室感度(例えば、1〜20mV〜非同期)設定スイッチ、心房感度(例えば、0.2〜20mV〜非同期)設定スイッチにより行われる。なお、スイッチ部118で設定した設定情報は、CPU130を介して表示部120に表示される。
【0027】
RTC(Real Time Clock)119は、時計回路であり、年月日時分を出力する。体外式ペースメーカの動作情報及び状態を時系列情報として記録するためにも用いられる。
【0028】
表示部120は、スイッチ部118の操作によってセンシング及びペーシングする際の設定された情報を表示する。この表示部120は、ここでは、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)を用いているが、これに限らず、有機ELディスプレイ等を用いてもよい。なお、表示部120は、CPU130を介して入力される波形(リード22、23から検出した心電図波形やページングにおける出力パルス波形等)を画面表示してもよい。例えば、表示部120は、CPU130からの心内心電図情報として、心房心電図、心室心電図に加えて、ペースマーカーを表示してもよい。また、表示部120としてのLCDの表示面には、感圧式座標入力装置であるタッチパネルを設け、このタッチパネルとして表示される表示機能に対応してキー機能を割当ててもよい。キー機能としては、イベントスイッチの機能を有するイベントキー等が割り当てられる。これらキーを選択することによって、心電図を表示する表示画面に変更したり、心電図測定開始などのイベントを選択したりできる。また、表示部120は、CPU130或いはCPLD140からの指示により、警報を示す表示を行い、患者1の周囲(例えば、医療従事者、付添人など)に動作異常である旨を知らせる警報部131として機能する。
【0029】
電源回路122は、バッテリ122a、DC/DC変換部(図では「DC/DC」で示す)122b等から構成される。電源回路122は、ペースメーカ本体100の各構成要素に必要な電力を供給する。なお、バッテリ122aは、DC/DC変換部122bとともに固定レート回路150に接続されている。
【0030】
CPU130は、本ペースメーカ装置全体を統括制御するものである。例えば、CPU130は、図示しないROM等に記憶されている制御プログラムに従って
図2に示す主要な機能ブロックの各種制御を行う。
【0031】
CPU130には、A/D変換部112、DC/DC変換部122b、SRAM115、発光部116、報音部117、スイッチ部118、RTC119、表示部120、電源回路122、固定レート回路150が接続されている。
【0032】
CPU130は、スイッチ部(設定部)118によって、CPLD140を介してペーシングを行う際のペーシングタイミング(心拍調整パルスの幅、振幅及び拍動数特性)が入力される。ペーシングタイミングは、具体的には、心房出力値(例えば、0.1〜10V又は0.1〜20mA)、心室出力値(例えば、0.1〜10V又は0.1〜20mA)、AV間隔(例えば、0〜300ms)、レート(例えば、30〜180ppm)等により構成される。また、CPU130には、スイッチ部(設定部)118によって、心内心電図を測定(センシング)する際の設定値として心室感度(例えば、0.2〜20mV〜非同期)、心房感度(例えば、0.2〜20mV〜非同期)等が入力される。これにより、CPU130は、リード22、23を介して、心房、心室をセンシングする。
【0033】
CPU130は、心房又は心室からの自己心拍を感知しない場合、つまり、心内心電信号が所定のタイミングで測定されない場合に、CPLD140を介して、ペーシングタイミングに基づいた電気刺激パルスを発生させる。このように、CPU130は、入力される心内心電信号に応じたタイミングで、CPLD140を介して、電気刺激パルスを発生させてページングを行うとともに、自己心拍を感知するとページングを停止したりする。
【0034】
なお、これらセンシングする際の設定及びペーシングタイミングは、表示部120であるLCDの表示面に、感圧式座標入力装置であるタッチパネルを配置し、このタッチパネルによって入力されるようにしてもよい。この場合、LCDの画面上において、タッチパネルとして表示される表示機能に対応したキー機能を割当て、このキーに触れることで選択されたキー情報がCPU130に入力されるようにする。
【0035】
また、CPU130は、自身の動作を監視する機能を有し、この機能を実現するブロックとして、例えば、ウォッチドッグタイマ(Watch Dog Timer、以下「WDT」という)を備える。CPU130は、WDTによって、定期的に自身の動作を監視する。CPU130は、WDTにおいて、自身の動作を示すCLRWDT(タイマクリア)命令がかからずタイムアウトした場合、固定レート回路150に、固定レート出力指示を示す信号(固定レート出力指示信号)を送る。この固定レート出力指示信号は、自身の動作異常を示す信号である。
【0036】
また、CPU130は、WDTを用いて、固定レート回路150(詳細には固定レート回路150のWDT)に、CPU130の動作を示す信号を定期的に送る。なお、一定周期を経過してもCPU130が固定レート回路150のWDTに信号を送らなかった場合、固定レート回路150では、CPU130の動作異常を検出して、CPU130が故障或いはソフトウェアのハングアップ等による動作異常に陥っている、と判断する。
【0037】
さらに、CPU130は、スイッチ部118からの操作信号の入力によって、ペースメーカ装置自体(各部)の電源のオンオフを行う。CPU130は、図示しないROMに格納された各部を駆動する際に用いるデータやプログラムを読み出して、SRAM115等に展開して実行することによって、体外式ペースメーカ装置10の各部を制御する。
【0038】
CPLD140は、複雑なプログラマブルロジックデバイス(Complex Programmable Logic Device)であり、複数の機能ブロックを有する。CPLD140は、ここでは、予め設定されたプログラムにより、CPU130からの入力に基づいて電気刺激パルス(ペースパルス)を発生する刺激パルス発生機能と、CPLD140自体の動作に異常が有るかどうかを常に機械レベルで監視して検出するための監視機能とを有する。
【0039】
具体的には、CPLD140は、CPU130からペーシングタイミング(心拍調整パルスの幅、振幅及び拍動数特性等であり詳細は後述する)を受けて、心室及び心房への電気刺激パルス(ペースパルス)を発生する。CPLD140で発生した電気刺激パルス(ペースパルス)は、パルス増幅部114に出力されて増幅され、ペーシングリード部20A、20Bのリード22、23に印加される。これにより、心臓内に留置されたリード22、23先端部の電極を介して、心室、心房にはペーシングタイミングに基づいた電気刺激パルス(ペースパルス)が供給される。例えば、CPLD140は、30〜180bpm(2sec〜300msec間隔)で心臓(心室、心房)に電気刺激を規則的に供給する。
【0040】
また、CPLD140は、自身の動作を監視する機能を有し、この機能を実現する機能ブロックとして、例えば、ウォッチドッグタイマ(Watch Dog Timer、以下「WDT」という)を備える。CPLD140は、WDTによって、定期的に自身の動作を監視する。CPLD140は、WDTにおいて、自身の動作を示すCLRWDT命令がかからずタイムアウトした場合、固定レート回路150に、固定レート出力指示を示す信号(固定レート出力指示信号)を送る。この固定レート出力指示信号は、自身の動作異常を示す信号である。
【0041】
また、CPLD140は、WDTを用いて、固定レート回路150(詳細には固定レート回路150のWDT)に、CPLD140の動作を示す信号を定期的に送る。なお、一定周期を経過してもCPLD140が固定レート回路150のWDTに信号を送らなかった場合、固定レート回路150では、CPLD140の動作異常を検出して、CPLD140が故障或いはソフトウェアのハングアップ等による動作異常に陥っている、と判断する。なお、CPLD140に替えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル論理回路部(PLD)を用いてもよい。
【0042】
なお、CPU130のWDTと、CPLD140のWDTとを用いて、相互に定期的に信号を送ることで互いの動作を監視するようにしてもよい。例えば、CPLD140のWDTからCPU130のWDTに定期的に信号(自身の動作を示すCLRWDT命令)を送る。一定周期を経過してもCPLD140からCPU130に信号を送らなかった場合、CPU130では、CPLD140の動作異常を検出して、CPLD140が故障或いはソフトウェアのハングアップ等による動作異常に陥っている、と判断する。このように、CPU130は、CPLD140から信号の入力がない場合、固定レート回路150に、固定レート出力指示を示す信号(固定レート出力指示信号)を送る。他方、CPU130のWDTからCPLD140のWDTに定期的に信号を送る。一定周期を経過してもCPU130からCPLD140に信号を送らなかった場合、CPLD140では、CPU130の動作異常を検出して、CPU130が故障或いはソフトウェアのハングアップ等による動作異常に陥っている、と判断する。このように、CPLD140は、CPU130から信号の入力がない場合、固定レート回路150に、固定レート出力指示を示す信号(固定レート出力指示信号)を送る。
【0043】
固定レート回路150は、CPU130及びCPLD140うち少なくとも一方で動作異常がある場合、所定のレート(固定レート)で電気刺激を発生して、リード22、23先端部の電極を介して患者1に供給する。
【0044】
ここでは、固定レート回路150は、CPU130及びCPLD140のうち少なくとも一方からの固定レート出力指示信号に基づいて、切り替え部160に、一定のレートで電気刺激パルスを発生して出力する。
【0045】
具体的には、固定レート回路150は、CPU130或いはCPLD140から固定レート出力指示信号を受けると、切り替え部160に一定レート(固定レート)で電気刺激パルスを発生して出力する。加えて、固定レート回路150は、CPU130或いはCPLD140の動作に割り込みをかける。さらに、固定レート回路150は、発光部116、報音部117、LCD(表示部)120を介して警報を報知する。
【0046】
例えば、固定レート回路150は、CPU130或いはCPLD140から固定レート出力信号を受けると、CPU130或いはCPLD140の動作異常とみなし、CPU130或いはCPLD140の故障と判断する。そして、固定レート回路150は、切り替え部160に切り替え制御信号を出力するとともに、一定レート(固定レート)の電気刺激パルスを発生して切り替え部160に出力する。加えて、固定レート回路150は、発光部116、報音部117、LCD(表示部)120を介して警報を報知する。更に、固定レート回路150は、CPU130及びCPLD140を停止して、CPU130及びCPLD140を用いたパルス発生動作を停止する。なお、固定レートの電気刺激パルスの出力、CPU130及びCPLD140を用いたパルス発生動作の停止、警報は、略同時に行われる。
【0047】
また、この固定レート回路150は、CPU130及びCPLD140の動作を示す信号の入力を常に監視する機能(監視部)を備え、この機能の監視結果に基づいて、切り替え部160を介して電極に、一定のレートで電気刺激パルスを発生して出力する。
【0048】
ここでは、固定レート回路150は、WDT機能によって、CPU130及びCPLD140のWDTから送信される信号(CPU130及びCPLD140の動作を示す信号)を常に監視する。
【0049】
すなわち、固定レート回路150では、WDTは、CPU130及びCPLD140の双方から一定間隔で送信される信号(CPU130及びCPLD140の動作を示す信号)の入力によってカウンタクリアされる。このWDTに、CPU130及びCPLD140のうち少なくとも一方から信号(CPU130及びCPLD140の動作を示す信号)が入力されない場合、固定レート回路150は、CPU130或いはCPLD140の動作異常を検出する。つまり、固定レート回路150は、CPU130或いはCPLD140の故障と判断して、切り替え部160に切り替え制御信号を出力するとともに、一定レートの電気刺激パルスを発生して切り替え部160に出力する。加えて、CPU130からCPLD140へのペーシング指示を停止して、CPU130及びCPLD140を用いたパルス発生動作を停止する。加えて、固定レート回路150は、警報部131として機能する発光部116、報音部117、LCD(表示部)120を介して警報を報知する。なお、固定レートの電気刺激パルスの出力、CPU130及びCPLD140を用いたパルス発生動作の停止、警報は略同時に行われる。
【0050】
このように、固定レート回路150は、CPU130或いはCPLD140が故障した場合、切り替え部160に一定レートで電気刺激パルスを発生しつつ、患者1の周囲(例えば、医療従事者、付添人など)にペースメーカ装置10の動作異常(CPU130或いはCDLD140の故障)の旨を知らせる。
【0051】
なお、切り替え部160に出力された固定レートの電気刺激パルスは、パルス増幅部114により増幅されて、ペーシングリードシステム20を介して患者1に供給される。例えば、固定レート回路150は、60〜70bpm前後の固定レートで電気刺激を出力する。バッテリ122aから供給される電力のみによって、ペースメーカ本体100内において独立で駆動可能となっている。
【0052】
切り替え部160は、CPLD140或いは固定レート回路150から入力される電気刺激パルスをパルス増幅部114に出力する。切り替え部160は、例えば、マルチプレクサ(multiplexer)等のディジタル回路により構成される。切り替え部160を介してパルス増幅部114に出力された電気刺激パルスは、ペーシングリードシステム20を介して患者1に供給される。
【0053】
<ペースメーカ装置における異常検出動作>
次いで、上記構成を有するペースメーカ装置10の異常検出動作について、
図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0054】
ペースメーカ装置10により患者1にペーシングが開始されると、まず、ステップS11では、固定レート回路150が、CPU130に異常があるか否かを判定し、異常が無ければ、ステップS12に移行し、異常があれば、ステップS13に移行する。
【0055】
具体的には、ステップS11では、固定レート回路150は、WDTを用いて、CPU130から周期的に送信される信号(CPU130の動作を示す信号)が入力されない場合、CPU130の動作は異常であると判定する。また、固定レート回路150におけるCPU130の動作異常は、CPU130、CPLD140からの固定レート出力指示信号の入力によっても判定される。固定レート出力指示信号は、CPU130、CPLD140から周期的に送信される信号以外の信号である。CPU130の動作異常を示す固定レート出力指示信号は、CPU130から送られるCPU130自体の動作異常を示す信号であったり、また、CPLD140から送られるCPU130の動作異常を示す信号であったりもする。
【0056】
ステップS12では、固定レート回路150が、CPLD140に異常があるか否かを判定し、異常が無ければ、ステップS11に戻り、異常があれば、ステップS13に移行する。
【0057】
具体的には、ステップS12では、固定レート回路150は、WDTを用いて、CPLD140から周期的に送信される信号が入力されない場合、CPLD140の動作は異常であると判定する。また、固定レート回路150におけるCPLD140の動作異常は、CPU130、CPLD140からの固定レート出力指示信号の入力によっても判定される。固定レート出力指示信号は、CPU130、CPLD140から周期的に送信される信号以外の信号である。CPLD140の動作異常を示す固定レート出力指示信号は、CPLD140から送られるCPLD140自体の動作異常を示す信号であったり、また、CPU130から送られるCPLD140の動作異常を示す信号であったりもする。
【0058】
ステップS13では、固定レート回路150は、固定レートのパルスを発生させるとともに、発光部116、報音部117及び表示部120のいずれかを用いて、その旨を周囲の人或いは医療従事者に警報する。具体的には、CPU130及びCPLD140のうち一方が他方の動作異常を検知した場合、一方から切り替え部160に切り替え制御信号を出力し、固定レート回路150は、固定レートのパルスを発生する。加えて、一方は、発光部116、報音部117及び表示部120のいずれかを制御して、ペースメーカ装置10の動作が異常である旨を、患者1の周囲(例えば、医療従事者、付添人など)に警報する。ここでは、固定レート回路150は、発光部116、報音部117及び表示部120を用いて、警報光、警報音、警報表示等によって警報している。警報は警報光を用いるのがより好適である。
【0059】
このように、本実施の形態のペースメーカ装置10では、CPLD140及びCPU130の少なくとも一つは、CPLD140及びCPU130の少なくとも一つの動作異常を検出し、この検出した動作異常に基づいて、固定レート回路150は、固定レートで電気刺激を発生する。
【0060】
本実施の形態のペースメーカ装置によれば、CPU130及びCPLD140は、電気刺激パルスのタイミングの生成等、電気刺激パルス発生の設定が可能である。これらCPU130及びCPLD140は、それぞれの動作(ソフトウェア動作)を自己監視するとともに、固定レート回路150により動作(ハードウェア動作)を監視されるといった二重の監視形態で監視されている。
【0061】
このため、CPU130及びCPLD140のうち一方に、ハードウェア的な故障、ソフトウェアの暴走等のような動作異常が生じた場合でも、警報しつつ一定の心拍で心室を刺激する動作を継続することができる。すなわち、CPU130及びCPLD140の動作異常を、自己監視によるソフトウェア的及びハードウェア的な面と、固定レート回路150によるハードウェア的な面とから監視する。これにより、刺激出力タイミングが無くなったり或いは刺激出力タイミングが増加したりしても、固定レートの電気刺激パルスを出力して、患者1の安全を担保できる。
【0062】
よって、ペースメーカ装置10によれば、故障等の動作異常が発生しても、患者監視装置(心電図モニター)、除細動器等の他装置を用いること無く、ペーシングを行いつつ患者の安全を担保できる。
【0063】
上記実施の形態のペースメーカ装置102では、固定レート回路150は、CPU130とCPLD140の双方のハードウェア的な動作異常を検出する機能を有する構成としたがこれに限らない。例えば、
図4の変形例に示すように、更に別の検出機能を有する監視制御部180を設けた構成としても良い。
【0064】
<ペースメーカ装置の変形例>
図4に示す本発明の実施の形態に係るペースメーカ装置の変形例は、ペースメーカ装置10に、更にCPU130とCPLD140の動作状態を監視する監視制御部180を設けたものである。すなわち、
図4に示す変形例としてのペースメーカ装置10Aは、
図2に示す本実施の形態に対応するペースメーカ装置10と同様の基本的構成を有し、これら基本的構成による同様の効果を有している。具体的には、CPU130とCPLD140は、各々のWDTを用いて、相互に定期的に信号を送ることで互いの動作を監視する構成を有する。また、CPU130とCPLD140は、各々のWDTを用いて、各々自身の動作を監視する構成を有する。これらCPU130、CPLD140が、監視により動作異常の発生を検知した場合、固定レート回路(固定レート刺激発生部)150Aは、CPU130、CPLD140から出力される固定レート出力指示信号を受けて、固定レートの電気刺激パルスを出力する効果を有する。その他
図2と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。ペースメーカ装置10Aにおける固定レート回路150Aは、固定レート回路150の構成においてウォッチドックタイマを除いた回路であり、監視制御部180により制御されるものである。
【0065】
監視制御部180は、ペースメーカ装置10Aのペースメーカ本体100Aの筐体101内に設けられている。この監視制御部180は、CPU130及びCPLD140の動作を監視し、CPU130及びCPLD140の双方で動作の異常を検出した際に、固定レート回路150Aに、所定のレートで電気刺激を発生させる。
【0066】
具体的には、監視制御部180は、WDTを有し、CPU130とCPLD140の双方の動作を監視する。監視制御部180は、WDTによって、CPU130とCPLD140の双方に定期的に信号(自身の動作を示す信号)を送らせている。監視制御部180では、これらCPU130及びCPLD140の双方が一定周期を経過しても監視制御部180に信号を送らなかった場合、双方が同時に異常状態に陥っていると判断する。そして、監視制御部180は、CPU130及びCPLD140の動作に割り込みをかけて、その動作を停止し、固定レート回路150A、警報部131を制御する。
【0067】
すなわち、監視制御部180は、固定レート回路150Aから電気刺激パルスが出力されるように固定レート回路150Aを駆動させるとともに、警報部131のうち少なくとも報音部117を介して警報を鳴らす。加えて、CPU130及びCPLD140の動作に割り込みをかけて、その動作を停止する。これにより、患者1の周囲に警報を発しながら一定の心拍で心室を刺激する動作を継続することができる。
【0068】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。