(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記滞留空間形成部材には、前記滞留空間に滞留する空気を、前記滞留空間外の前記貯湯槽の内部へ放出可能な空気抜き孔が設けられている請求項4又は5に記載の貯湯式熱源装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示の貯湯式熱源装置では、加熱放熱運転を実行している時に、貯湯槽内にて、成層貯湯状態を維持すべく、放熱戻り路と加熱往き路との接続部に切換弁が必要となり、更に、切換弁の開閉状態を貯湯槽内の下層への湯水の通流を禁止する状態としているため、貯湯槽は、上方から加熱循環路を循環して昇温した湯水を受け入れることができず、貯留できない状態となっていた。
【0005】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱放熱運転を実行しているときに、貯湯槽の成層貯湯状態を維持しながら、加熱循環回路を循環して加熱された湯水を、貯湯槽に受け入れて貯留できると共に、中高温の放熱戻り湯水を積極的に加熱循環回路に導くことで熱効率の向上可能な貯湯式熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための貯湯式熱源装置は、
湯水を貯留する貯湯槽と、湯水を加熱する加熱手段と、
放熱用端末を通流して循環する熱媒と湯水との熱交換により、湯水を放熱させる放熱部とを備えると共に、
前記貯湯槽の下部の湯水を、前記加熱手段を通流させた後に、前記貯湯槽の上部に戻す
形態で湯水を循環させる加熱循環回路と、
前記貯湯槽の上部の湯水を、前記放熱部に通流させた後に、前記貯湯槽の下部に戻す形態で湯水を循環させる放熱循環回路とを備える貯湯式熱源装置であって、その特徴構成は、
前記加熱循環回路が前記貯湯槽の下層に対して加熱往き接続部を介して接続されていると共に、前記放熱循環回路が前記貯湯槽の下層に対して前記加熱往き接続部とは別の放熱戻り接続部を介して接続され、
前記貯湯槽の内部の下方にて、前記放熱戻り接続部から流入した放熱戻り湯水の上昇流を減衰させると共に当該放熱戻り湯水を前記加熱往き接続部へ導く誘導部を備え、
前記加熱循環回路及び前記放熱循環回路における湯水流量を制御する湯水循環状態制御手段を備え、
前記湯水循環状態制御手段が、前記加熱循環回路と前記放熱循環回路との両方に湯水を循環させて前記加熱手段による湯水の加熱と前記放熱部による湯水の放熱とを同時に行う加熱放熱運転時において、前記放熱戻り接続部から流入する放熱戻り湯水流量を、前記加熱往き接続部から流出する加熱循環流量以下に維持する成層貯湯維持流量制御を実行する点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、貯湯槽の下層に、放熱戻り湯水を戻す放熱戻り接続部と、加熱往き湯水を送り出す加熱往き接続部とを、個別に接続する構成において、貯湯槽の内部の下方に誘導部を設けることで、貯湯槽内において、放熱戻り湯水の上昇流を減衰できると共に、放熱戻り湯水の加熱往き接続部への流れを促すことができる。
これにより、貯湯槽の下層の比較的低温の湯水温度よりも高い中高温の湯水が、放熱戻り湯水として貯湯槽の下層に流入した場合でも、貯湯槽の内部において、上昇流が減衰された状態で、加熱往き接続部へ導かれるので、貯湯槽の内部での温度成層崩れを抑制できる。さらに、中高温の湯水を積極的に加熱循環回路に導いて加熱し昇温させて高温の湯水として利用できるので、中高温の湯水を貯湯槽の下層に流入させて利用できなくなる場合に比べて、熱効率を向上できる。
さらに、加熱循環回路と放熱循環回路との両方に湯水を循環させて加熱手段による湯水の加熱と放熱部による湯水の放熱とを同時に行う加熱放熱運転時において、湯水の循環状態によっては、貯湯槽の内部において、下方から上方へ向けた湯水の上昇流が生じる場合があり、当該上昇流は、成層貯湯崩れの原因になる。
上記特徴構成によれば、放熱戻り接続部から流入する放熱戻り湯水流量が、加熱往き接続部から流出する加熱循環流量以下に維持される。これにより、常に、貯湯槽において流入よりも流出が多くなるので、貯湯槽の内部にて、湯水の上昇流が生じることを抑制でき、成層貯湯崩れを防ぐことができる。
尚、上述の構成で、誘導部が設けられる貯湯槽の内部の下方とは、上下方向で貯湯槽の内部の中央部位より下方側の領域であり、具体的には、貯湯槽の底面から2〜20cmの領域であるとする。
尚、貯湯槽の内部の誘導部が設けられる位置の下限が、貯湯槽の底面から2cmより下方の場合、貯湯槽への湯水の流入が阻害されすぎて、湯水の循環状態が悪くなる。一方、貯湯槽の内部の誘導部が設けられる位置の上限が、貯湯槽の底面から20cmより上方の場合、放熱戻り湯水の上昇流を、適切に加熱往き路へ導くことができなくなる。
上記特徴構成において、貯湯槽の下部とは、貯湯槽の下層に接続される加熱往き接続部、及び放熱戻り接続部を含む部位を示す。
また、貯湯槽の上部とは、貯湯槽の上層に接続される加熱戻り路、及び放熱往き路を含む部位を示す。
【0008】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記誘導部が、前記貯湯槽の内部の下方にて、前記放熱戻り接続部と前記加熱往き接続部とを上方から覆う板状体で構成されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、貯湯槽の内部の下方にて、放熱戻り接続部と加熱往き接続部との双方を、上方から覆う板状体にて誘導部を構成することで、放熱戻り接続部から貯湯槽内に流入した放熱戻り湯水を、当該板状体に衝突させて上昇流を減衰させると共に、その板状体に沿わせて流動させて、加熱往き接続部まで導くことができる。
【0010】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記放熱戻り接続部が、前記貯湯槽の底部に対して上向き開口を有する状態で接続され、
前記貯湯タンクの内部の下方にて、上下方向において前記放熱戻り接続部の開口と前記誘導部との間に、当該放熱戻り接続部の開口からの上昇流を減衰させる邪魔板を備えている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、放熱戻り接続部の開口と誘導部との間に、誘導部とは別の邪魔板を設けているので、特に、放熱戻り接続部が、貯湯槽の底部に対して上向き開口を有して上昇流が強くなるような構成においても、その上昇流を邪魔板と誘導部との2段で減衰させて、温度成層崩れを一層良好に抑制できる。
【0012】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記誘導部は、その下方に放熱戻り湯水を一時的に滞留させる滞留空間を形成する滞留空間形成部材から構成されており、
当該滞留空間形成部材は、前記滞留空間の下方を前記貯湯槽の内部へ開放する底部開放形状である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、滞留空間には、中温、又は低温の放熱戻り湯水が流入されるが、滞留空間形成部材は、滞留空間の下方を貯湯槽の内部に開放する底部開放形状であるので、放熱戻り湯水のうち、温度の高い中温の湯水を優先して滞留空間に滞留させ、温度の低い低温の湯水は、下方から滞留空間の外部へ流出させることができる。
このように、滞留空間は、特に中温の放熱戻り湯水を一時的に滞留可能であるから、滞留させた放熱戻り湯水を、順次、加熱循環回路へ導くことができる。これにより、中温の放熱戻り湯水が、貯湯槽の内部へ拡散することを、より一層良好に抑制でき、貯湯槽の内部での温度成層崩れを防止できる。
また、中温の放熱戻り湯水を、加熱循環回路に循環させることで、低温の放熱戻り湯水を循環させる場合に比べ、放熱戻り湯水を高温にまで加熱するための熱量を低減できるから、熱効率を向上できる。
【0014】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記加熱循環回路での前記加熱手段への往き路である加熱往き路は、前記加熱往き接続部から前記貯湯槽の内部へ延設されており、
前記加熱往き路の湯水の流入端である加熱往き流入端が、前記滞留空間の上方側部位に配設されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、加熱往き流入端が、滞留空間の内でその上方側部位に設けられているから、滞留空間に滞留する放熱戻り湯水のうち、上方側部位に滞留している温度の高いものから、順次、加熱往き路へ導くことができる。
【0016】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記滞留空間形成部材には、前記滞留空間に滞留する空気を、前記滞留空間の外部へ放出可能な空気抜き孔が設けられている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、放熱循環回路から滞留空間へ流入することがある空気(気泡)を、滞留空間から滞留空間の外部へ逃がすこができる。これにより、空気(気泡)が、加熱循環回路へ導かれることを防止できる。結果、加熱循環回路に加熱手段として燃料電池等を備えている場合に、空気(気泡)が、加熱循環回路を通流することにより、加熱手段としての燃料電池等の冷却が不十分となることを防止できる。
【0020】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記湯水循環状態制御手段が、前記成層貯湯維持流量制御において、前記放熱戻り接続部から流入する放熱戻り湯水流量を、前記加熱往き接続部から流出する加熱循環流量に対し、所定の余裕幅分少なく設定する点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、成層貯湯維持流量制御において、貯湯槽において流入流量よりも流出流量を、所定の余裕幅分(例えば、0.1〜0.2l/min程度の流量)多くなる状態を維持できるので、貯湯槽の内部にて、湯水の上昇流が生じることを確実に抑制でき、成層貯湯崩れを防ぐことができる。
【0022】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記放熱循環回路での前記放熱部への往き路である放熱往き路を通流する湯水を加熱する補助加熱手段と、
前記放熱循環回路において、前記貯湯槽をバイパスするバイパス路を備えると共に、前記バイパス路を通じて前記貯湯槽をバイパスする湯水流量を調整可能なバイパス流量調整手段を備え、
前記湯水循環状態制御手段が、前記成層貯湯維持流量制御において、前記補助加熱手段の上流側の前記放熱往き路の湯水の温度に基づいて前記バイパス流量調整手段及び前記補助加熱手段を制御する点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、補助加熱手段の上流側の放熱往き路の湯水の温度が、放熱部にて必要とされる湯水温度よりも高く、当該高温の湯水が貯湯槽の上部から放熱往き路に導かれる場合、貯湯槽をバイパスするバイパス路を通流する湯水の流量を増加させることで、放熱循環回路を循環する湯水の温度を低下させ、放熱部にて必要とされる温度に維持できる。
また、補助加熱手段の上流側の放熱往き路の湯水の温度が、放熱部にて必要とされる温度よりも低い場合、当該低温の湯水を、放熱往き路に設けられた補助加熱手段にて加熱して、放熱部にて必要とされる温度にまで昇温させることができる。尚、この構成であれば、加熱手段が湯水の加熱を行っていない場合でも、独立して放熱運転を実行できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の貯湯式熱源装置100の特徴は、貯湯槽14に貯留される湯水を加熱すると共に、熱を必要とする放熱用端末30に湯水の熱を放熱する加熱放熱運転を行っているときに、貯湯槽14の成層貯湯状態を維持しながら、加熱循環回路C1により貯湯槽14内の上層へ高温の湯水を戻して蓄熱できると共に、貯湯槽14の下部に導かれた中高温の放熱戻り湯水を、積極的に加熱循環回路C1に導いて、熱効率を向上させる点にある。
以下、そのための構成を、
図1〜5に基づいて説明する。
【0026】
貯湯式熱源装置100は、湯水を貯留する貯湯槽14と、当該貯湯槽14に貯留される湯水を加熱するための加熱循環回路C1と、貯湯槽14に貯留される湯水の熱を床暖房装置や浴室暖房装置等の放熱用端末30へ放熱するための放熱循環回路C2とを備えている。
【0027】
〔加熱循環回路に係る構成〕
加熱循環回路C1は、その加熱往き路R1が加熱往き接続部60を介して貯湯槽14の下層に接続されると共に、その加熱戻り路R2が貯湯槽14の上層に接続されている。
加熱循環回路C1には、その上流側から順に、当該加熱循環回路C1に湯水を循環させる加熱循環ポンプ12と、加熱循環回路C1を循環する湯水をその排熱にて加熱する熱電併給装置11(加熱手段の一例)と、熱電併給装置11の排熱にて加熱された湯水の温度を測定する第1温度センサT1とが設けられている。
尚、貯湯槽14には、その上層に加熱循環回路C1の加熱戻り路R2から高温の湯水が供給されると共に、下方から加熱往き路R1へ低温の湯水が供給されることで、上層から下層に亘って、温度成層が形成される。これにより、成層貯湯状態が維持されることとなる。
【0028】
〔放熱循環回路に係る構成〕
放熱循環回路C2は、その放熱往き路R3が、加熱戻り路R2とは別に貯湯槽14の上層に接続されると共に、その放熱戻り路R4が、加熱往き接続部60とは別の放熱戻り接続部61にて貯湯槽14の下層に接続されている。放熱戻り接続部61の直前の放熱戻り路R4には、放熱戻り路R4と外部からの給水を供給する給水路R8との連通状態を切替可能な切換弁13が設けられている。
放熱循環回路C2には、その上流側から順に、当該放熱循環回路C2に湯水を循環させる放熱循環ポンプ16と、当該放熱循環回路C2を循環する湯水の温度を測定する第2温度センサT2と、バーナ燃焼装置17aにより湯水を加熱するバーナ加熱式熱交換器17と、湯水と熱媒とを熱交換する放熱熱交換器18(放熱部の一例)と、放熱循環回路C2の開閉状態を切り換える開閉弁19とを備えて構成されている。
尚、上記熱媒は、放熱熱交換器18と放熱用端末30との間に配設される熱媒循環回路C3を循環するものであり、放熱熱交換器18にて湯水の熱を回収すると共に、回収した熱を放熱用端末30にて放熱する。熱媒循環回路C3には、熱媒を循環する熱媒循環ポンプ32と、熱媒を貯留自在な大気開放型の熱媒タンク31とが設けられている。
以上の構成により、放熱循環回路C2を通流する湯水の温度、即ち、第2温度センサT2にて測定される温度が、放熱熱交換器18にて必要とされる設定温度よりも低い場合、バーナ燃焼装置17aを働かせてバーナ加熱式熱交換器17にて、湯水を設定温度にまで昇温させる。
尚、放熱循環回路C2でバーナ加熱式熱交換器17の下流側には、バーナ加熱式熱交換器17にて昇温された湯水の温度を測定する第3温度センサT3が設けられており、制御装置20は、第3温度センサT3の温度が設定温度となるように、バーナ燃焼装置17aの燃焼状態を制御する。
【0029】
一方、放熱循環回路C2には、貯湯槽14をバイパスする第1バイパス路R5(バイパス路の一例)が設けられており、当該第1バイパス路R5と放熱循環回路C2の放熱往き路R3との接続部位には、三方弁15が設けられている。当該三方弁15の開度状態を制御して、第1バイパス路R5を循環する湯水流量L3を増加させることで、貯湯槽14の側を通流する湯水の流量を減少させて、放熱熱交換器18に導かれる湯水の温度を低下させることができる。
これにより、放熱循環回路C2を通流する湯水の温度、即ち、第2温度センサT2にて測定される温度が、放熱熱交換器18にて必要される設定温度よりも高い場合、上記第1バイパス路R5を通流する流量L3を増加させるように、三方弁15の開度状態を制御して、湯水を設定温度にまで降温させる。
【0030】
〔給湯に係る構成〕
放熱循環回路C2を循環する湯水の一部は、バーナ加熱式熱交換器17を通流する非バイパス状態と、バーナ加熱式熱交換器17をバイパスするバイパス状態とを切り換える形態で、給湯利用箇所43へ供給可能に構成されている。
【0031】
説明を加えると、非バイパス状態を実現すべく、放熱循環回路C2には、バーナ加熱式熱交換器17と放熱熱交換器18との間において、放熱循環回路C2を通流する湯水の一部を給湯利用箇所43へ導く給湯路R9が接続されており、当該給湯路R9には、給湯用として導かれる湯水の流量を調整可能な流量調整弁41が設けられている。
非バイパス状態にあっては、バーナ加熱式熱交換器17を通流した湯水が、給湯路R9を介して給湯利用箇所43へ導かれる。
【0032】
一方、バイパス状態を実現すべく、放熱循環回路C2には、放熱循環回路C2を通流する湯水の一部を、上記バーナ加熱式熱交換器17をバイパスする状態で、給湯路R9へ導く第2バイパス路R6が設けられている。
バイパス状態にあっては、第2バイパス路R6を通流することで、バーナ加熱式熱交換器17をバイパスした湯水が、給湯路R9を介して給湯利用箇所43へ導かれる。
【0033】
以上の構成により、貯湯槽14内の上層の湯水の温度、即ち、第5温度センサT5にて測定される湯水の温度が、給湯利用箇所43にて必要とされる給湯設定温度未満の場合、非バイパス状態にて湯水を供給することで、バーナ加熱式熱交換器17にて湯水を加熱し昇温させた状態で、湯水を給湯利用箇所43へ供給することができる。
一方、貯湯槽14内の上層の湯水の温度、即ち、第5温度センサT5にて測定される湯水の温度が、給湯利用箇所43にて必要とされる給湯設定温度以上の場合、バイパス状態にて湯水を供給して、バーナ加熱式熱交換器17による不要な加熱をしない状態で、湯水を給湯利用箇所43へ供給する。
尚、給湯利用箇所43に導かれる湯水の温度が、給湯利用箇所43にて必要とされる給湯設定温度より高い場合には、図示しない給水路から湯水が混合されることで、給湯設定温度に調整された湯水が、給湯利用箇所43から供給されることとなる。
【0034】
〔誘導部に係る構成〕
貯湯槽14には、
図1に示すように、その内部の下方にて、放熱戻り接続部61と加熱往き接続部60との双方を、上方から覆う板状体からなる誘導板62(誘導部の一例)が設けられている。
ここで、貯湯槽14の内部の下方とは、貯湯槽14の上下方向でその中央部位より下方側であり、好ましくは、貯湯槽14の底部14aから2〜20cmまでの領域を指すものとする。
誘導板62は、図示は省略するが、その平面視において、放熱戻り接続部61の開口と加熱往き接続部60の開口との双方に重なる状態で設けられている。これにより、誘導板62は、放熱戻り接続部61の開口から貯湯槽14に流入した放熱戻り湯水の上昇流を減衰させ、その放熱戻り湯水を加熱往き接続部60の側へ導く誘導部として働く。
当該誘導板62は、その上下方向で、貯湯槽14内の湯水が、行き来可能な状態で設けられている。具体的には、誘導板62は、
図1に示すように、貯湯槽14の側面との間に間隙64を設ける状態で備えられている。
また、誘導板62は、
図2に示すように、貯湯槽14の上下方向に沿う断面視で、その下面が上方に引退する円弧形状であることが好ましい。これにより、放熱戻り接続部61から貯湯槽14に流入する放熱戻り湯水は、誘導板62の下面に沿う状態で、より良好に加熱往き接続部60へ導かれることとなる。
【0035】
また、
図1、2に示すように、放熱戻り接続部61が貯湯槽14の底部14aに対して上向き開口を有する状態で接続されている場合、放熱戻り接続部61から貯湯槽14への放熱戻り水や給水の上方側への勢いが強くなり、貯湯槽14内での成層貯湯が崩れ易くなる。
そこで、本発明にあっては、放熱戻り接続部61が貯湯槽14の底部14aに対して設けられる上向き開口と誘導板62との間に、放熱戻り湯水等の上昇流を減衰させる邪魔板63を設けている。
これにより、放熱戻り湯水等の上昇流を良好に減衰させて、成層貯湯崩れを抑制している。
【0036】
本発明の貯湯式熱源装置100は、加熱放熱運転時において、放熱戻り接続部61から貯湯槽14に導かれる中高温の放熱戻り湯水が、貯湯槽14の成層貯湯を崩すことなく、加熱往き接続部60へ導かれるように、湯水循環状態を制御するように構成されている。以下、その点について、説明を加える。
【0037】
制御装置20は、加熱放熱運転時において、放熱戻り接続部61から流入する放熱戻り湯水流量L2を、加熱往き接続部60から流出する加熱循環流量L1以下に維持する成層貯湯維持流量制御を実行する。これにより、中高温の放熱戻り湯水が、貯湯槽14の内部にて上昇流を形成することを防止して、貯湯槽14にて成層貯湯状態を維持できる。
ここで、制御装置20は、貯湯槽14での温度成層崩れをより良好に抑制するためには、放熱戻り接続部61から流入する放熱戻り湯水流量L2よりも、加熱往き接続部60から流出する加熱循環流量L1を、所定の余裕幅分(例えば、0.1〜0.2l/min程度)小さく設定する。
ここで、所定の余裕幅分は、0.1l/min未満となると、貯湯槽14内における上昇流を適切に抑制できなくなり、0.2l/min以上となると、加熱循環回路C1の湯水循環量に対して、放熱循環回路C2の湯水循環量が少なくなり、余計な貯湯が増えてしまうこととなる。
【0038】
制御装置20は、上述の成層貯湯維持流量制御を実現すべく、以下に示す加熱運転、放熱運転、及び加熱放熱運転を、並列に実行する。尚、ここで、並列に実行するとは、3つの運転のすべてを実行状態にすることであり、加熱運転及び放熱運転を実行しながら、加熱放熱運転を実行することを意味する。
【0039】
〔加熱運転〕
図3に示すように、制御装置20は、外部からの加熱運転の開始指令により、加熱運転開始処理を実行する(♯11)。
制御装置20は、加熱循環ポンプ12を最小流量で運転する(♯12)。
その後、制御装置20は、加熱循環回路C1を循環する湯水を加熱するべく、熱電併給装置11を働かせると共に、熱電併給装置11にて昇温された湯水の温度、即ち、第1温度センサT1の湯水の温度が貯湯温度になるように、加熱循環ポンプ12の回転数を制御して、加熱循環流量L1を調整する(♯13)。
制御装置20は、加熱運転の終了指令があるまで、♯13のステップを繰り返し実行する(♯14)。
一方、加熱運転の終了指令があった場合、制御装置20は、加熱運転を終了すべく、加熱循環ポンプ12等を停止させる加熱運転終了処理を実行する(♯15)。
【0040】
〔放熱運転〕
図4に示すように、制御装置20は、外部からの放熱運転の開始指令により、放熱運転開始処理を実行する(♯21)。即ち、三方弁15の開度状態を、湯水が第1バイパス路R5に導かれると共に貯湯槽14の側には導かれない状態とし、放熱循環回路C2に設けられる開閉弁19を開放状態とする。
制御装置20は、放熱循環ポンプ16を所定流量で運転する(♯22)。
その後、制御装置20は、バーナ加熱式熱交換器17(補助加熱手段の一例)を通過した湯水の温度、即ち、第3温度センサT3にて測定される温度が、設定温度となるように、バーナ燃焼装置17aを働かせる(♯23)。
制御装置20は、放熱運転の終了指令があるまで、♯23のステップを繰り返し実行する(♯24)。
一方、放熱運転の終了指令があった場合、制御装置20は、放熱運転を終了すべく、放熱循環ポンプ16等を停止させる放熱運転終了処理を実行する(♯25)。
【0041】
制御装置20は、以上の加熱運転及び放熱運転を実行しながら、以下の加熱放熱運転を実行する。
〔加熱放熱運転〕
図5に示すように、制御装置20は、外部からの加熱放熱運転の開始指令により、加熱放熱運転開始処理を実行する(♯31)。即ち、切換弁13を給水−両側とすることにより、三方とも開放状態とする。
このとき、制御装置20は、三方弁15の開度状態を、湯水が第1バイパス路R5に導かれると共に貯湯槽14の側には導かれない状態にしている。また、放熱循環回路C2の通流状態を制御する開閉弁19を、開放状態にしている。
【0042】
制御装置20(加熱循環流量推定手段20a)は、加熱循環ポンプ12の回転数に基づいて、加熱循環回路C1を循環する湯水流量L1、即ち、貯湯槽14から加熱往き路R1へ導かれる加熱循環流量L1を推定する(♯32)。
尚、加熱循環ポンプ12の回転数は、当該加熱循環ポンプ12への印加電圧及び印加周波数から推定することができる。
【0043】
さらに、制御装置20(放熱戻り流量推定手段20b)は、バーナ加熱式熱交換器17を通流する湯水の流量を測定する第1流量センサF1の測定結果と、三方弁15の開度比率から、放熱戻り路R4から貯湯槽14へ導かれる放熱戻り湯水流量L2を推定する(♯33)。
即ち、制御装置20は、三方弁15の貯湯槽14側の開度と、第1バイパス路R5側との開度の比率から、放熱循環回路C2の放熱熱交換器18を通流する湯水流量(第1流量センサF1にて測定される湯水流量)のうち、放熱戻り路R4を通流する放熱戻り湯水流量L2を推定する。
【0044】
制御装置20は、推定された放熱戻り湯水流量L2が加熱循環流量L1以下、且つ、放熱往き湯水の温度が設定温度以下(第2温度センサT2にて測定される温度が設定温度以下)の場合、三方弁15を、貯湯槽14側へ少し開く(♯34、35)。
このとき、放熱戻り湯水流量L2が加熱循環流量L1以下であるので、三方弁15を貯湯槽14側へ少し開いても、貯湯槽14の側へ導かれる放熱戻り湯水は、貯湯槽14の内部にて上昇流を形成することなく、加熱往き路R1に導かれることとなる。一方、放熱往き路R3には、加熱循環回路C1を循環して昇温した湯水が導かれることととなり、熱効率が向上する。
【0045】
一方、制御装置20は、放熱戻り湯水流量L2が加熱循環流量L1より大きい、又は、加熱往き湯水の温度が設定温度より高い(第2温度センサT2にて測定される温度が設定温度より高い)場合、三方弁15を、第1バイパス路R5側へ少し開く(♯36)。
これにより、貯湯槽14の内部の上昇流の流量を低減できると共に、放熱循環回路C2を循環する湯水の温度が、放熱熱交換器18にて必要とされる温度に維持される。
【0046】
制御装置20は、加熱放熱運転の終了指令があるまで、♯32〜♯36のステップを繰り返し実行する(♯37)。
一方、加熱放熱運転の終了指令があった場合、制御装置20は、加熱放熱運転を終了すべく、切換弁13を給水−貯湯槽14側に、三方弁15を、第1バイパス路R5側にする(♯38)。
【0047】
以上のごとく、制御装置20、加熱循環ポンプ12、放熱循環ポンプ16、三方弁15、第1温度センサT1、第2温度センサT2、第3温度センサT3、及び第1流量センサF1が、加熱放熱運転時において成層貯湯維持流量制御を実行する湯水循環状態制御手段として働く。
【0048】
〔別実施形態〕
(1)
上記実施形態では、加熱手段の一例として、熱電併給装置11を挙げて説明した。当該熱電併給装置11は、例えば、ガスエンジン発電機や燃料電池等、電力と共に熱を発生するものであれば、どのようなものでも含む。
また、加熱手段としては、熱電併給装置11に限らず、ヒートポンプや太陽熱回収パネル等を採用することもできる。
【0049】
(2)
上記実施形態では、誘導部の一例として、放熱戻り接続部61と加熱往き接続部60との双方を上方から覆う、一枚の板状体からなる誘導板62を挙げて説明したが、放熱戻り接続部61と加熱往き接続部60との各々を別々に上方から覆う、二枚の板状体からなる誘導板等を採用することもできる。
【0050】
(3)
上記実施形態では、放熱循環回路C2の放熱往き路R3は、貯湯槽14の上層に直接接続される構成を示したが、放熱循環回路C2の放熱往き路R3は、加熱戻り路R2に接続されるように構成しても良い。
当該構成によれば、加熱循環回路C1を循環する加熱循環流量L1と放熱循環回路C2を循環する湯水流量L2とを等しくして、加熱循環回路C1の加熱手段にて加熱された湯水を、貯湯槽14に貯湯することなく、放熱循環回路C2に直接循環する湯水循環状態を実現できる。
このような湯水循環状態において、加熱手段としてヒートポンプを採用する場合、床暖房装置等の放熱用端末30の負荷(例えば、熱媒の送り温度:40℃)に合わせる状態で、ヒートポンプを運転できる。この場合、ヒートポンプにて加熱する湯水の温度を、貯湯槽14に貯留する目標湯水温度(60〜75℃)まで昇温させる必要がないため、昇温させる場合に比べて、高いCOPで運転することができる。
【0051】
(4)
上記特徴構成では、加熱循環流量L1は、制御装置20(加熱循環流量推定手段20a)が加熱循環ポンプ12への印加電圧や印加周波数に基づいて推定したが、加熱循環回路C1に直接流量センサを設けて測定するように構成しても構わない。
【0052】
(5)
上記特徴構成では、放熱戻り湯水流量L2は、制御装置20(放熱戻り流量推定手段20b)が、バーナ加熱式熱交換器17を通流する湯水の流量を測定する第1流量センサF1の測定結果と、三方弁15の開度比率に基づいて推定したが、放熱戻り路R4に直接流量センサを設けて測定するように構成しても構わない。
【0053】
(6)
上記特徴構成では、制御装置20が1つで加熱運転、放熱運転、加熱放熱運転を行なう集中制御の形態となっているが、お互いの運転状況を通信する機能を備えて各運転を行なう制御装置を個別に備えた分散制御の形態でも構わない。
【0054】
(7)
上記実施形態では、放熱部の構成の一例として、床暖房装置や浴室暖房装置等の放熱用端末30と放熱熱交換器18との間に配設された熱媒循環回路C3を挙げて説明したが、浴槽の追焚循環回路等を採用することもできる。
【0055】
(8)
本願の更なる別実施形態を、
図6に基づいて説明する。
図6は、貯湯槽14の下部を含む一部の拡大図である。
当該別実施形態にあっては、誘導部62を、放熱戻り湯水による成層貯湯崩れをより効果的に防止すべく、その下方に放熱戻り湯水を一時的に滞留させる滞留空間S1を形成する滞留空間形成部材62(62a、62b)により構成し、当該滞留空間形成部材62(62a、62b)は、滞留空間S1の下方を、貯湯槽14の内部へ開放する底部開放形状を有する。つまり、滞留空間Sは、その下方にて、滞留空間Sの外部の貯湯槽14の内部と繋がっており、そこを通して、湯水の通流が可能となっている。
留空間形成部材62(62a、62b)は、貯湯槽14の内部にて、水平方向に広がる水平隔壁部位62aと、当該水平隔壁部位62aの外周縁から下方へ延びる側方隔壁部位62bとから構成されており、水平隔壁部位62aと側方隔壁部位62bとにより外囲される空間が、滞留空間S1となる。
【0056】
滞留空間Sには、放熱戻り路R4から空気(気泡)が流入することがある。そこで、滞留空間形成部材62(62a、62b)の水平隔壁部位62aには、当該空気(気泡)を、滞留空間Sの外部へ送り出す空気抜き孔70が設けられている。当該空気抜き孔70の口径は、空気(気泡)を滞留空間Sへ送り出し可能な口径であれば良く、0.5mm〜5mm程度であることが好ましい。
尚、空気抜き孔70は、滞留空間Sから空気(気泡)を抜くことができれば良いので、側方隔壁部材62bに設けることもできる。
【0057】
加熱循環回路C1での熱電併給装置11(加熱手段の一例)への往き路である加熱往き路R1は、加熱往き接続部60から貯湯槽14の内部へ延設されており、加熱往き路R1の湯水の流入端である加熱往き流入端R1aが、滞留空間S1の上方側部位、即ち、滞留空間S1で水平隔壁部位62aの近傍位置に配置されている。これにより、滞留空間S1に滞留される放熱戻り湯水のうち、温度の高いものから、順次、加熱往き路R1へ導くことができる。
一方、放熱循環回路C2での放熱熱交換器18(放熱部の一例)からの戻り路である放熱戻り路R4は、放熱戻り接続部61から貯湯槽14の内部へ延設されており、放熱戻り路R4の湯水の流出端である放熱戻り流出端R4aは、滞留空間S1の内部に配設されている。
尚、当該放熱戻り流出端R4aは、水平方向で、滞留空間S1の下方に位置されていれば、滞留空間S1の外部に配設されていても良い。
【0058】
次に、当該別実施形態の構成において、加熱放熱運転の実行により、放熱戻り路61から貯湯槽14の内部へ、中温の放熱戻り湯水が還流する場合における貯湯槽14の下層の温度状態を示すシミュレーション結果を、
図7に基づいて説明する。
図7は、中温の放熱戻り湯水の流入開始から1分後のシミュレーション結果である。
当該シミュレーション結果から、中温程度の放熱戻り湯水が、滞留空間Sに適切に滞留されて、貯湯槽14の内部へ拡散することが防止され、成層貯湯崩れを防止できていることがわかる。尚、
図7では、温度スケールの刻みに従って、その温度分布がモザイク状に示されているが、実際には連続的な温度分布を示す。