特許第6041608号(P6041608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041608
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】切断装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/08 20060101AFI20161206BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B28D1/08
   E04G23/08 D
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-219233(P2012-219233)
(22)【出願日】2012年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-69529(P2014-69529A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】奥山 信博
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
(72)【発明者】
【氏名】大垣 博
(72)【発明者】
【氏名】藤原 進一郎
(72)【発明者】
【氏名】諸井 陽児
(72)【発明者】
【氏名】竹本 正治
(72)【発明者】
【氏名】椚 隆
(72)【発明者】
【氏名】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】三中 達雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 芳己
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−248102(JP,A)
【文献】 実開昭52−073034(JP,U)
【文献】 特開平07−164429(JP,A)
【文献】 特開平02−171423(JP,A)
【文献】 特開平08−194097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
E04G 23/08
B24B 27/06
B23D 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ループ状のワイヤーソーを駆動プーリーおよび一連のガイドプーリーに巻装して循環駆動しつつ被切断物に対して押し付けることにより該被切断物を押し切り操作により切断するワイヤーソー機構を有し、該ワイヤーソー機構をベースマシンの揺動アームの先端部に装着して該揺動アームの操作により前記ワイヤーソー機構を切断作業位置に配置して切断作業を行う構成の切断装置であって、
前記ワイヤーソー機構は前記駆動プーリーおよび一連の前記ガイドプーリーの全体がベースフレームに支持されて設置された構成とされて、該ベースフレームが前記揺動アームの先端部に対してガイドフレームを介して装着されているとともに、前記ベースフレームが第1の進退駆動機構によって前記ガイドフレームに対して進退可能に支持され、
かつ、前記ワイヤーソー機構における前記ガイドプーリーのうち、前記被切断物の両側に配置されて該被切断物に対して前記ワイヤーソーを押圧していく対のガイドプーリーの少なくともいずれか一方もしくは双方が、第2の進退駆動機構によって前記ベースフレームに対して進退可能な推進プーリーとして構成され
前記推進プーリーとして構成されているガイドプーリーを除く他のガイドプーリーのうち少なくともいずれか1台のガイドプーリーが、前記ワイヤーソーの張力を調整可能なテンションプーリーとして構成され、
前記ワイヤーソーの張力を検知しつつ前記テンションプーリーを進退させて、前記ワイヤーソーの張力を自ずと吸収する駆動機構を備えることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
請求項記載の切断装置であって、
前記ガイドフレームには、前記被切断物を把持するための把持機構が設置されていることを特徴とする切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の構造物の解体に際して、柱や梁等のコンクリート構造部材を切断するために用いて好適な切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、この種の切断装置としては、たとえば特許文献1,2に示されるようなワイヤーソーによるものが一般的である。これは、無端ループ状のワイヤーソーを駆動プーリーおよび一連のガイドプーリーに巻装して循環駆動しつつ被切断物に対して食い込ませていくことによって切断を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−42632号公報
【特許文献2】特開2000−141355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に示される切断装置は、いずれも無端ループ状のワイヤーソーを被切断物を取り囲むようにしてその外側に巻装し(つまり、被切断物は無端ループ状のワイヤーソーの内側に配置されることになる)、その状態でワイヤーソーを引き込んで被切断物に食い込ませていくといういわゆる「引き切り操作」によって切断を行うものであり、したがって柱や梁等を切断するに際してはそのつどワイヤーソーのループを解いて被切断物の外側に巻装しなければならないので、その作業が面倒で手間がかかるものである。
【0005】
また、ワイヤーソーを被切断物に対して単に一方向から引き込んでいくという単純な引き切り操作によることでは、ワイヤーソーが大きく湾曲した状態で食い込んでいくので必ずしも切断効率が良くなく、特に大断面のコンクリート部材を切断する際には切断線がかなり長くなるので長時間を要するばかりでなく、ワイヤーソーの破損や摩耗も生じ易いものである。
【0006】
さらに、特許文献1に示される切断装置は、切断作業に際して装置全体を被切断物である柱等に対してアンカーを用いて固定する必要があり、したがって切断作業のたびにクレーン等を用いて装置全体を切断位置に固定しかつ切断終了後にそこから取り外すという手間のかかる面倒な作業を繰り返さなければならず、この点においても十分な作業効率が得られないものである。
【0007】
また、特許文献2に示される切断装置は、ワイヤ式切断機を土木建築用作業機(いわゆる重機)の揺動アームの先端部に対して特殊なアダプタを介して取り付けたもので、その重機の揺動アームを操作することによって上記のような引き切り操作により切断を行うものであることから、切断作業に際しては揺動アームを精度良く厳密に操作する必要があり、そのために高度の熟練を要するので必ずしも容易に切断作業を行えるものではない。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明はコンクリート構造物の解体に際して柱や梁等のコンクリート構造部材をワイヤーソーにより切断するに際して、その切断作業をより効率的に行い得る有効適切な切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、無端ループ状のワイヤーソーを駆動プーリーおよび一連のガイドプーリーに巻装して循環駆動しつつ被切断物に対して押し付けることにより該被切断物を押し切り操作により切断するワイヤーソー機構を有し、該ワイヤーソー機構をベースマシンの揺動アームの先端部に装着して該揺動アームの操作により前記ワイヤーソー機構を切断作業位置に配置して切断作業を行う構成の切断装置であって、前記ワイヤーソー機構は前記駆動プーリーおよび一連の前記ガイドプーリーの全体がベースフレームに支持されて設置された構成とされて、該ベースフレームが前記揺動アームの先端部に対してガイドフレームを介して装着されているとともに、前記ベースフレームが第1の進退駆動機構によって前記ガイドフレームに対して進退可能に支持され、かつ、前記ワイヤーソー機構における前記ガイドプーリーのうち、前記被切断物の両側に配置されて該被切断物に対して前記ワイヤーソーを押圧していく対のガイドプーリーの少なくともいずれか一方もしくは双方が、第2の進退駆動機構によって前記ベースフレームに対して進退可能な推進プーリーとして構成され、前記推進プーリーとして構成されているガイドプーリーを除く他のガイドプーリーのうち少なくともいずれか1台のガイドプーリーが、前記ワイヤーソーの張力を調整可能なテンションプーリーとして構成され、前記ワイヤーソーの張力を検知しつつ前記テンションプーリーを進退させて、前記ワイヤーソーの張力を自ずと吸収する駆動機構を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項記載の切断装置であって、前記ガイドフレームには、前記被切断物を把持するための把持機構が設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の切断装置によれば、ワイヤーソー機構をベースマシンの揺動アームに対してガイドフレームを介して進退可能に装着しているので、揺動アームの操作によりワイヤーソー機構を切断作業位置に配置した状態でワイヤーソーを循環駆動するとともに第1の進退駆動機構によりワイヤーソー機構をガイドフレームに対して前進させることにより、ワイヤーソーによる押し切り操作によって被切断物を切断することが可能である。
また、被切断物の両側に配置される対のガイドプーリーの少なくともいずれか一方もしくは双方をベースフレームに対して進退可能な推進プーリーとしたことにより、揺動アームを操作することなく被切断物に対してワイヤーソーを適切な傾斜角度として切断を行うことが可能であるばかりでなく、切断作業中に適宜のタイミングで切断方向を変更することによっていわゆる「回し切り」が可能であり、したがって効率的な切断が可能であって切断時間を短縮し得るし、ワイヤーソーの摩耗や破損も生じ難くなる。
【0013】
また、ガイドプーリーのいずれかをワイヤーソーの張力を調整可能なテンションプーリーとすることにより、ワイヤーソーの張力を常に適切に維持することが可能である。
【0014】
さらに、ガイドフレームに被切断物を把持するための把持機構を設けることにより、その把持機構によって被切断物を把持して装置全体を被切断物に対して堅固に固定でき、したがって切断作業時に装置全体がぶれたり不用意に位置ずれが生じることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の切断装置の第1実施形態を示す図であって、切断作業開始時点の状態を示す平面図である。
図2】同、側面図である。
図3】同、切断作業終了時点の状態を示す平面図である。
図4】同、側面図である。
図5】本発明の切断装置の第2施形態を示す図であって、切断作業開始時点の状態を示す平面図である。
図6】同、側面図である。
図7】本発明の切断装置の第3施形態を示す図であって、(a)は切断作業開始時点の状態を示す側面図、(b)は把持機構を示す図((a)におけるb−b線視図)である。
図8】同、平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の切断装置の第1実施形態を図1図4に示す。
これは、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の構造物の解体に際してベースマシンの揺動アーム(図示せず)の先端部に装着されてその揺動アームの操作により切断作業位置に配置されることによって、被切断物1としてのコンクリート構造部材(図示例では柱)を対象として切断作業を行うものである。
なお、ベースマシンとしては特に限定されることなく揺動アームを備えたものであれば各種の重機が採用可能であるが、特に汎用の油圧ショベルが好適に採用可能である。
【0017】
本実施形態の切断装置は、揺動アームの先端部にブラケット2を介して装着したガイドフレーム3に対して、ワイヤーソー機構4を進退可能に支持したことを基本としている。
本実施形態におけるワイヤーソー機構4は、無端ループ状のワイヤーソー5を駆動プーリー6および一連のガイドプーリー7(図示例では2台の推進プーリー7aおよび1台のテンションプーリー7bを含めて5台のガイドプーリー7を有している)に巻装して、駆動プーリー6を回転駆動してワイヤーソー5を循環駆動しつつ被切断物1に対して押し付けることにより、その被切断物1を「押し切り操作」によって切断するものである。
すなわち、上述したように特許文献1,2に示されるような従来一般的な切断装置では、被切断物1を取り囲むようにしてワイヤーソー5を巻装してそのワイヤーソーを引き込んで「引き切り操作」により切断を行うのに対し、本実施形態では図示しているように被切断物1の外側においてワイヤーソー5を循環駆動しつつそれを被切断物1の側方から押しつけていくという「押し切り操作」によって被切断物を切断するようにしており、したがって、引き切り操作による場合には不可欠である被切断物1に対するワイヤーソー5の巻装操作(そのつどワイヤーソー5のループを解いて被切断物1の周囲に装着するための操作)を必要としない。
【0018】
本実施形態では、そのような押し切り操作によって効率的な切断を行うために、ワイヤーソー機構4の全体をベースマシンの揺動アームに対して進退可能に支持しているとともに、一連のガイドプーリー7のうちの2台を前後進可能な推進プーリー7aとし、さらに他の1台のガイドプーリー7をワイヤーソー5の張力を調整するためのテンションプーリー7bとしている。
【0019】
具体的には、本実施形態におけるワイヤーソー機構4は、駆動プーリー6および一連のガイドプーリー7の全体が、ワイヤーソー5の循環軌道にほぼ沿うような三方枠状(略コ状)とされているとともにその内側に被切断物1が配置可能な大きさのベースフレーム8に対して支持されて設置されている。
また、ベースマシンの揺動アームには、その先端が被切断物1に対して当接せしめられる長尺ロッド状のガイドフレーム3がブラケット2を介して連結されていて、そのガイドフレーム3に対して上記のベースフレーム8が進退可能(つまり、図中の太矢印で示す如くガイドフレーム3の長さ方向に沿って前後進可能)な状態で支持されて設置されている。
【0020】
そして、ベースフレーム8とガイドフレーム3との間には、ベースフレーム8をガイドフレーム3に対して進退させるための第1の進退駆動機構9が備えられていて、その第1の進退駆動機構9を駆動することによってワイヤーソー機構4の全体をガイドフレーム3に対して進退させることが可能とされている。
なお、第1の進退駆動機構9の具体的な構成は特に限定されず任意であるが、たとえば電動ないし油圧による各種のモータないしアクチュエータを駆動源とする送りねじ機構やラックピニオン機構、あるいは油圧ないし空気圧シリンダ機構等が好適に採用可能である。
【0021】
上記構成のもとに、本実施形態の切断装置では、切断作業開始時点では図1図2に示しているようにワイヤーソー機構4をガイドフレーム3の基端側(揺動アーム側)に配置し、かつガイドフレーム3の先端を被切断物1に当接させた状態として、ワイヤーソー5を切断予定線L(図2参照)の位置に臨ませて配置すれば良い。
そして、その状態から駆動プーリー6を回転させてワイヤーソー5を循環駆動するとともに、第1の進退駆動機構9を駆動してワイヤーソー機構4全体を前進させてワイヤーソー5を被切断物1に対して押し当てていくことにより、ワイヤーソー機構4が最終的に図3図4に示すように被切断物1の3方を取り囲む位置にまで前進していき、それにより上記のような押し切り操作によって被切断物1を切断することが可能である。
したがって、本実施形態の切断装置によれば、特許文献1に示される切断装置のように装置全体をそのつど被切断物1に対してアンカーにより固定する必要はないし、特許文献2に示される切断装置のように揺動アームを精度良く厳密に操作することで切断を行うものでもないから、それらによる場合に比べて容易にかつ効率的な切断作業が可能となる。
【0022】
ところで、上記のような押し切り操作により切断を行う場合、一連のガイドプーリー7をベースフレーム8に対して固定状態で設置しておくことでも切断は可能ではあるが、本実施形態ではより効率的に切断を行うために、一連のガイドプーリー7のうち被切断物1の両側に配置されて被切断物1に対してワイヤーソー5を押圧していく対のガイドプーリー7の双方を推進プーリー7aとしてそれらをそれぞれ図中の細矢印で示すようにベースフレーム8に対して進退可能に構成し、かつそれら推進プーリー7aをそれぞれ進退させるための第2の進退駆動機構10を備えている。
推進プーリー7aを進退させるための第2の進退駆動機構10の具体的な構成は特に限定されず任意であるが、上記の第1の進退駆動機構9と同様に、たとえば電動ないし油圧による各種のモータないしアクチュエータを駆動源とする送りねじ機構やラックピニオン機構、あるいは油圧ないし空気圧シリンダ機構等が好適に採用可能である。
【0023】
そのような推進プーリー7aを設けておくことにより、揺動アームの操作によってこの切断装置を切断作業位置に配置した以降は、その揺動アームを操作することなく単に固定した状態のままで、被切断物1に対してワイヤーソー5を適切な傾斜角度として切断を開始することが可能である。また、切断作業中にも揺動アームを操作することなく適宜のタイミングで切断方向を変更することによっていわゆる「回し切り」が可能であり、そのような回し切りを行うことにより切断線が過度に長くなってしまうことによる切断効率の低下を回避でき、単に一方向に切断していく場合に比較して効率的な切断が可能であって切断時間を短縮し得るし、ワイヤーソー5の摩耗や破損も生じ難くなる。
【0024】
たとえば、図1に実線で示しているように、一方の推進プーリー7aを前方位置に配置するとともに他方の推進プーリー7aをそれよりも後方位置に配置した状態として、ワイヤーソー5を被切断物1に対して所定の傾斜角度(たとえば25°程度)をもたせた状態でコーナー部から切断を開始し、その状態である程度まで切断を行った時点で、破線で示しているように一方の推進プーリー7aを後退させるとともに他方の推進プーリー7aを前進させるようなスイッチング操作を行ってそれ以降は傾斜角度を逆方向に切り換えてさらに切断を行い、さらにその後は適宜のタイミングで切断方向を交互に切り換えつつ切断を行うことが考えられる。
【0025】
なお、上記のように推進プーリー7aを進退させる際には一時的にワイヤーソー5の張力(テンション)が変化し、特にワイヤーソー5が過度に弛んでしまうと駆動プーリー6やガイドプーリー7から脱落してしまう事態も想定されるので、本実施形態ではその防止のために推進プーリー7aを除く他のガイドプーリー7のうちの少なくともいずれか1台をテンションプーリー7bとして構成しており、ワイヤーソー5の張力が変化した際にはそのテンションプーリー7bがベースフレーム8に対して進退することにより張力を常に適切に維持するように調整可能とされている。
テンションプーリー7bによりワイヤーソー5の張力を調整するためには、ワイヤーソー5の張力を検知しつつそれに応じてたとえば油圧シリンダ等の駆動機構によりテンションプーリー7bを適切に進退させるか、あるいはテンションプーリー7bをばねによって常にワイヤーソー5を緊張させる方向に付勢しておき、そのばねの弾性によって張力変化を自ずと吸収するようにしておくと良い。
【0026】
また、駆動プーリー6によるワイヤーソー5の循環駆動や、第1の進退駆動機構9によるワイヤーソー機構4全体の進退操作はもとより、上記のような推進プーリー7aのスイッチング操作やそれに伴うテンションプーリー7bによる張力の調整も含めた切断作業の全体を効率的に実施するために、被切断物1の断面形状や寸法も考慮して適切なタイミングで各構成要素を相互に関連づけて自動操作することが好ましい。
そして、そのためには、予め設定したプログラムに基づいて、あるいは監視カメラにより作業進捗状況を常時監視することにより、一連の操作を適切なタイミングで自動的に実施するように構成することが好ましく、そのような自動切断作業を行うために必要となる適宜の制御機構やセンサ類を備えておけば良い。
【0027】
以上で本発明の第1実施形態について説明したが、次に図5図6を参照して第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態の場合と同一の構成要素については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
上記第1実施形態においては、被切断物1に対してワイヤーソー5を押しつけるために被切断物1の両側に配置される対のガイドプーリー7の双方をいずれも推進プーリー7aとして、それら2台の推進プーリー7aの操作により切断方向を交互にスイッチング可能に構成したが、本第2実施形態ではそれら2台のガイドプーリー7のうちの片側のみを推進プーリー7aとしたものである。
すなわち、本第2実施形態の切断装置では、図5に示すように6台のガイドプーリー7のうち、被切断物1の一方側(図示上側)のガイドプーリー7は単にベースフレーム8に対して固定状態で設置して、他方側(同、下部側)のガイドプーリー7のみを推進プーリー7aとしてそれをその後方に配置されている他のガイドプーリー7とともに一体に進退可能に構成している。
【0029】
そして、切断開始時点では図5に示すように推進プーリー7aを実線で示す後退位置としておき、その状態でワイヤーソー機構4の全体を前進させてある程度の切断を行った後、推進プーリー7aを第2の進退駆動機構10によりベースフレーム8に対して前進させて破線で示す位置に配置することにより、切断方向を変更して回し切りを行うことが可能である。そして、推進プーリー7aを適宜進退させつつ最終的にワイヤーソー機構4の全体を図5図6に破線で示す位置まで前進させていくことにより、実質的に第1実施形態の場合と同様の押し切り操作による回し切りが可能である。
したがって本第2実施形態の切断装置は、実質的に上記第1実施形態の場合と同様に効率的な切断作業を可能としつつ、第1実施形態の切断装置に比べて構成の簡略化を実現し得るものである。
【0030】
図7図8は第3実施形態を示すものである。これは、上記第2実施形態の切断装置をベースとしてそれに被切断物1を把持するための把持機構15を付加した構成のものである。
なお、図7図8は被切断物1が梁の場合の例であって、予めその梁の上部に取り付いているスラブを殆ど解体撤去しておき、その状態から梁を切断予定線L(図7(b)、図8参照)において切断する状況を示している。
【0031】
本第3実施形態の切断装置では、ガイドフレーム3の先端部に被切断物1を把持するための把持機構15が備えられている。把持機構15は、被切断物1(図示例では梁)の前面に押し当てられるメインフレーム16と、その下部に設けられた補助バー17と、被切断物1の背面側を噛み込むように設けられたフック18を有しており、フック18をシリンダ機構19によって進退可能に構成したものである。
これによれば、上記第1、第2実施形態の場合と同様にガイドフレーム3の先端を切断作業位置に臨ませた状態において、把持機構15のメインフレーム16および補助バー17を被切断物1の前面側に押し当てるととともにフック18をその背面側に係止して引き寄せることにより、この把持機構15により被切断物1を把持して装置全体を被切断物1に対して堅固に固定でき、したがって切断作業時に装置全体がぶれたり不用意に位置ずれが生じることを確実に防止することができる。
【0032】
なお、図示例のようにフック18を進退可能のみならず旋回可能としておくことにより、そのフック18を被切断物1の背面側に配置する際には図7(b)に破線で示すようにフック18を横向きとして待避させておき、しかる後に実線で示すように90°旋回させることで被切断物1に係止させることが可能である。但し、必ずしもそうすることはなく、フック18を進退可能のみとして旋回可能に構成しない場合には、フック18を被切断物1としての梁のやや上方から(被切断物1が柱の場合にはやや側方から)装着すれば良い。
【0033】
また、把持機構15により把持することに加えて、図7(a),図8に示すようにガイドフレーム3に仮設の支柱20を設けておいて、その支柱20により装置全体を支持することも考えられる。
それら支柱20のうち、図7(a)に示す梁用支柱20aは、図示例のように被切断物1が梁の場合に装置全体を立て姿勢とした状態で作業を行う場合に、装置全体を適宜の作業架台21(あるいは床面)に対して支持するためのものであるが、被切断物1が柱の場合においては装置全体を水平姿勢として用いるから、その場合は図8に示す他の柱用支柱20b(上記の梁用支柱20aに対して直交状態で設置されている)により装置全体を床面から支持すれば良い。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態はあくまて好適な例であって本発明はそれら実施形態に限定されるものではなく、各要素の具体的な構成や仕様その他については、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば、上記各実施形態における構成要素を様々に組み合わせることを始めとして適宜の設計的変更や応用が可能であることがいうまでもない。
たとえば、図5図6に示した第2実施形態における符号30は切断部に向けて水を噴霧するノズルであり、図7図8に示した第3実施形態における符号31は監視カメラであるが、これらは他の実施形態においても共通に設置しておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 被切断物(コンクリート構造部材、柱、梁)
2 ブラケット
3 ガイドフレーム
4 ワイヤーソー機構
5 ワイヤーソー
6 駆動プーリー
7 ガイドプーリー
7a 推進プーリー
7b テンションプーリー
8 ベースフレーム
9 第1の進退駆動機構
10 第2の進退駆動機構
15 把持機構
16 メインフレーム
17 補助バー
18 フック
19 シリンダ機構
20 支柱
20a 梁用支柱
20b 柱用支柱
21 作業架台
30 ノズル
31 監視カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8