(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のガイド溝は、前記背凭れを後方へ傾動させる際、前記メインフレーム全体を前方に移動させることによって、前記背凭れの後方への傾動量を小さくする形状に形成されたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の座席装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したクレイドル方式のリクライニング機構を備えた座席装置では、背凭れの回転支点が定位置に固定されてないため、前記アームを介して定位置にテーブルを支持することが困難であった。そのため、アームを介さず背凭れの背面に直にテーブルを取り付けたり、あるいは座席側方の袖と称されるアームレスト内部に大型のテーブル(インアームテーブルと称される)を装着しなければならなかった。
【0007】
ここで、背凭れの背面に直にテーブルを取り付ける場合は、背凭れの傾動に伴いテーブルの位置が変化するため、乗客にとって使い勝手が良くないという問題があった。また、インアームテーブルの場合は、テーブルの取り出しや収納が面倒であるため、やはり使い勝手が良くないだけでなく、重量増加を招くと共にコストも嵩むという問題があった。なお、座席の背後に固定式のバックシェルを備えたものでは(特許文献3参照)、バックシェルにアームを支持することも考えられるが、このように限られた構成にしか適用できないということ自体が問題であった。
【0008】
また、クレイドル方式のリクライニング機構を備えた座席装置に対して、仮にアームの基端を定位置に定めた回転支点により支持するとした場合、座席全体の動きに応じて、背凭れ背面とアーム先端のテーブルとの相対的な位置ズレが生じてしまう。このような位置ズレを許容できる範囲で、座席とテーブルが干渉しないように設計する必要があり、設計上の制約が大きかった。さらに、収納したテーブルを背凭れの背面に沿わせることが困難であり、ガタつきの原因になるという問題もあった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、クレイドル方式のリクライニング機構を備えた場合でも、通常のリクライニング機構を備えたものと同様に、背凭れの背面に対して起倒するテーブルを何ら設計上の制約なくアームを介して支持することを可能とし、テーブルの使い勝手が良く重量増加やコスト高を招くことがない座席装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]座部(30)が移動可能に据え付けられると共に、背凭れ(40)が傾動可能に支持され、背凭れ(40)の傾動に伴い座部(30)が連動する座席装置(10)において、
背凭れ(40)を起立位置より後方へ傾動させる際、傾動する背凭れ(40)とこれに連動する座部(30)との相対姿勢の変化を所定範囲内に制限する規制機構と、
背凭れ(40)の背面に沿って起立させた収納位置、ないし後方に向けて水平に倒した使用位置に起倒可能なテーブル(50)と、
前記テーブル(50)を起倒可能に支持し、該テーブル(50)を背凭れ(40)の傾動位置の変化に拘わらず、前記使用位置が一定になると共に、背凭れ(40)の傾動位置に応じた前記収納位置に保持する起倒機構と、を備え
、
前記規制機構は、前記背凭れ(40)のバックフレーム(400)と前記座部(30)の座枠(300)とを互いに連動可能に連結したメインフレーム(200)、および前記バックフレーム(400)と前記座枠(300)の連結角度がなす前記相対姿勢の変化を所定範囲内に制限する複数のガイド溝(101〜103)が形成されたガイドフレーム(100)からなり、
前記メインフレーム(200)には、前記ガイドフレーム(100)の複数のガイド溝(101〜103)にそれぞれ移動可能に係合して案内される複数の係合部(311,411,412)が設けられ、前記複数のガイド溝(101〜103)は、前記メインフレーム(200)全体の移動を揺りかごが揺動するような状態に案内する形状に形成されて配置され、
前記起倒機構は、前記ガイドフレーム(100)、および該ガイドフレーム(100)に対して基端部(502)が変位可能に支持されると共に、先端部(501)には前記テーブル(50)が回動可能かつ使用位置にて水平な状態に保持可能に枢支されたアーム(500)からなり、該アーム(500)の基端部(502)には複数の軸支部(511,512)が設けられ、
前記ガイドフレーム(100)には、前記アーム(500)の基端部(502)にある複数の軸支部(511,512)がそれぞれ移動可能に係合し、該アーム(500)の基端部(502)の支持位置を背凭れ(40)の傾動に応じて変位させつつ、該アーム(500)の基端部(502)とは別に設定された前記テーブル(50)全体の仮想の起倒支点を一定位置に保ち、かつ該起倒支点より後方に倒した前記テーブル(50)の使用位置を一定に保つように案内する複数の他ガイド溝(103,104)が前記ガイド溝(101〜103)とは別に形成されて配置されたことを特徴とする座席装置(10)。
【0012】
[
2]前記ガイドフレーム(100)は2つで1組をなし、前記メインフレーム(200)を両側から挟む位置に平行に配設され、
前記アーム(500)も2つで1組をなし、各アーム(500)の先端部(501)は前記テーブル(50)の両側端に枢支されると共に、各アーム(500)の基端部(502)は前記メインフレーム(200)の両側に沿った位置に平行に支持されたことを特徴とする[1
]に記載の座席装置(10)。
【0013】
[
3]前記ガイド溝(101〜103)と前記他ガイド溝(103,104)のそれぞれ少なくとも何れか1つは、共用となる同一の溝として形成されて配置されたことを特徴とする[1]
または[2
]に記載の座席装置(10)。
【0014】
[
4]前記ガイドフレーム(100)の代わりに該ガイドフレーム(100)に近接して配設された他のフレームに、前記ガイド溝(101〜103)ないし前記他ガイド溝(103,104)を設けたことを特徴とする[1],[2]
または[3
]に記載の座席装置(10)。
【0015】
[
5]前記複数のガイド溝(101〜103)は、前記背凭れ(40)を後方へ傾動させる際、前記メインフレーム(200)全体を前方に移動させることによって、前記背凭れ(40)の後方への傾動量を小さくする形状に形成されたことを特徴とする[1],[2],[3]
または[4
]に記載の座席装置(10)。
【0016】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の座席装置(10)によれば、座部(30)が移動可能に据え付けられると共に、背凭れ(40)が傾動可能に支持され、背凭れ(40)の傾動に伴い座部(30)が連動する。背凭れ(40)を起立位置より後方へ傾動させると、規制機構によって、傾動する背凭れ(40)と連動する座部(30)との相対姿勢の変化が所定範囲内に制限される。その結果、背凭れ(40)の後方への傾動に伴って座部(30)はその前部が上方に向かうように前進し、座席全体は揺りかごが揺動するように連動する。
【0017】
背凭れ(40)の背面にはテーブル(50)が設けられており、テーブル(50)は、背凭れ(40)の背面に沿って起立した収納位置ないし後方に向けて水平に倒れた使用位置とに起倒可能に支持されている。ここでテーブル(50)は起倒機構によって、単に起倒可能に支持されるだけでなく、背凭れ(40)の傾動位置の変化に拘わらず常に一定の使用位置に保持され、かつ背凭れ(40)の傾動位置に応じた収納位置に保持されることになる。
【0018】
このような起倒機構によって、背凭れ(40)の回転支点が定位置に固定されることなく、前述したように座席全体が揺りかごのように揺動するクレイドル方式の場合であっても、テーブル(50)は、その使用位置が常に一定に保たれるように連動することになり、また、背凭れ(40)の背面に沿った収納位置に何時でも戻すことが可能となる。
【0019】
さらに詳しくは、背凭れ(40)のバックフレーム(400)と座部(30)の座枠(300)とは、互いに連動可能に連結されてメインフレーム(200)をなす。このメインフレーム(200)は、バックフレーム(400)と座枠(300)の連結角度がなす前記相対姿勢の変化が所定範囲内に制限される状態でガイドフレーム(100)に支持され、ガイドフレーム(100)には複数のガイド溝(101〜103)が形成されている。
【0020】
前記ガイドフレーム(100)は、例えば板状のフレームから成り、前記[
2]に記載したように、左右2つで1組をなし、前記メインフレーム(200)を両側から挟む状態で平行に配設される。ここでガイドフレーム(100)は、メインフレーム(200)の補強部材を兼ねるように構成しても良い。
【0021】
前記メインフレーム(200)には、前記ガイドフレーム(100)の複数のガイド溝(101〜103)にそれぞれ移動可能に係合して案内される複数の係合部(311,411,412)が設けられている。ここで複数のガイド溝(101〜103)は、メインフレーム(200)全体の移動を揺りかごが揺動するような状態に案内する形状に形成されて配置される。
【0022】
さらに、前記[
5]に記載したように、複数のガイド溝(101〜103)は、背凭れ(40)を後方へ傾動させる際に、メインフレーム(200)全体を前方に移動させることによって、背凭れ(40)の後方への傾動量を小さくする形状にすると良い。
【0023】
これにより、リクライニングの際には、着座者が始めに背中を背凭れ(40)に押し付けて背凭れ(40)を傾動させる際にやや力を要するが、背凭れ(40)の傾倒が大きくなるに従って体重が自然に背凭れ(40)にかかるので、力の弱い着座者や小柄で体重の軽い着座者であっても比較的容易に背凭れ(40)を傾動させることができる。
【0024】
さらに、前記ガイドフレーム(100)には、前記起倒機構をなすアーム(500)の基端部(502)が変位可能に支持されている。アーム(500)の先端部(501)には、前記テーブル(50)が回動可能かつ使用位置で水平な状態に保持可能に枢支され、アーム(500)の基端部(502)には、複数の軸支部(511,512)が設けられている。ガイドフレーム(100)には、アーム(500)の基端部(502)にある複数の軸支部(511,512)にそれぞれ対応した複数の他ガイド溝(103,104)が、前記ガイド溝(101〜103)とは別に形成されて配置されている。
【0025】
アーム(500)の基端部(502)にある複数の軸支部(511,512)が、それぞれ複数の他ガイド溝(103,104)に移動可能に係合することで、該アーム(500)の基端部(502)の支持位置を背凭れ(40)の傾動に応じて変位させることができる。
【0026】
これにより、アーム(500)の基端部(502)とは別に設定されたテーブル(50)全体の仮想の起倒支点(P)は、常に一定位置に保たれる。その結果、背凭れ(40)の傾動位置の変化に拘わらず、前記起倒支点(P)より後方に倒したテーブル(50)の使用位置を一定に保つことができると共に、何時でもテーブル(50)を背凭れ(40)の背面に沿った収納位置まで戻すこともできる。
【0027】
ここでアーム(500)は、前記[
2]に記載したように、左右2つで1組をなし、各アーム(500)の先端部(501)を前記テーブル(50)の両側端に枢支すると共に、各アーム(500)の基端部(502)を前記メインフレーム(200)の両側に沿った位置に平行に支持すると良い。これにより、テーブル(50)の充分な支持強度を得ることができる。
【0028】
また、前記[
3]に記載したように、前記ガイド溝(101〜103)と前記他ガイド溝(103,104)のそれぞれ少なくとも何れか1つを、共用となる同一の溝として形成して配置すると良い。これにより、構成を簡易化することが可能となる。
【0029】
さらに、前記[
4]に記載したように、前記ガイドフレーム(100)の代わりに該ガイドフレーム(100)に近接して配設された他のフレームに、前記ガイド溝(101〜103)ないし前記他ガイド溝(103,104)を設けても良い。例えば、座席の両側に配置する袖と称されるアームレスト(12)のフレーム構造を利用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る座席装置によれば、クレイドル方式のリクライニング機構を備えた場合についても、通常のリクライニング機構を備えたものと同様に、背凭れの背面に対して起倒するテーブルを何ら設計上の制約なくアームを介して支持することを可能とする。これにより、通常のリクライニング機構の場合と同様の操作感覚でテーブルを使用することができ、極めて使い勝手が良く、また、大型のインアームテーブルを装着した場合に比べて、重量やコストを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づき本発明を代表する一実施の形態を説明する。
図1〜
図10は、本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る座席装置10は、鉄道車両等の乗物の客室内に装備されるものであり、フロア上に座部30が移動可能に据え付けられると共に、座部30の後端側に背凭れ40が傾動可能に支持され、背凭れ40の傾動に伴い座部30が連動するように構成されている。以下、鉄道車両用の座席に適用した例について説明する。
【0033】
図1に示すように、座席装置10は、客室内のフロア上に固定される脚台11に台枠20(
図3参照)が支持され、台枠20上に座部30および背凭れ40が支持されている。座部30の両側には、それぞれ袖状のアームレスト12が設けられている。また、座部30の前端部の下方には、レッグレスト32が足載位置および収納位置の間で変位可能に支持されている。さらに、背凭れ40の背面側には、収納位置ないし使用位置に起倒可能なテーブル50が設けられている。
【0034】
図4に示すように、前記台枠20は、前記脚台11の上方に固設された前後一対のシャフト21,22と、各シャフト21,22の端部間を結ぶように溶接された左右一対のフレーム23,23から略長方形の枠形状に構成されている。各シャフト21,22は、金属製で円形閉断面のパイプ材から成り、各フレーム23は、金属製で角形閉断面のパイプ材からなる。台枠20上には、2座席分の座部30がそれぞれ前後方向に移動可能に据え付けられると共に、各座部30毎に背凭れ40が傾動可能に支持されている。
【0035】
このような台枠20には、背凭れ40を起立位置より後方へ傾動させる際、傾動する背凭れ40とこれに連動する座部30との相対姿勢の変化を所定範囲内に制限する規制機構が設けられている。かかる規制機構は、背凭れ40のバックフレーム400と座部30の座枠300とを互いに連動可能に連結したメインフレーム200、および前記台枠20に一体に固設されたガイドフレーム100からなる。
【0036】
ガイドフレーム100は、2つで1組をなしており、前記メインフレーム200を両側から挟む位置に平行に配設されている。2つのガイドフレーム100は、それぞれ金属製の板材により前記アームレスト12の下半部に沿うような同一形状に形成されており、前後のシャフト21,22間の上方に立て架けるように固設されている。ここでガイドフレーム100は、メインフレーム200の補強部材を兼ねている。
【0037】
各ガイドフレーム100には、バックフレーム400と座枠300の連結角度がなす前記相対姿勢の変化を所定範囲内に制限する複数のガイド溝101,102,103が形成されている。各ガイド溝101,102,103は、何れもガイドフレーム100を板厚方向に貫通した長孔である。詳しく言えばガイド溝101は、ガイドフレーム100の前端側で後方に向かい下方にやや傾斜しつつ若干湾曲するように形成されている。
【0038】
ガイド溝102は、ガイドフレーム100の中間位置より後方に向かい上方に傾斜し、直線状に延びるように形成されている。ガイド溝103は、前記ガイド溝102の後端の下方より後方に向かい上方に傾斜し、湾曲しながら延びる弧状に形成されている。このうちガイド溝101は、座部30の座枠300の移動を案内するものである。また、ガイド溝102は、座部30の座枠300のほか、背凭れ40のバックフレーム400の移動を案内するものである。また、ガイド溝103は、背凭れ40のバックフレーム400のほか、後述するテーブル50の起倒を案内するものである。
【0039】
これらガイド溝101,102,103の位置や形状によって、座枠300の前後方向の移動行程とバックフレーム400の傾動行程が制限され、傾動する背凭れ40と連動する座部30との相対姿勢の変化を所定範囲内に制限することができる。ここでの所定範囲は、着座者が相対姿勢の変化を感じられない程度であれば良く、バックフレーム400と座枠300とからなるメインフレーム200全体の変位態様が揺りかごの揺動のように弧状になるように設定されている。
【0040】
背凭れ40は、フレーム構造であるバックフレーム400にクッション体41を装着し、クッション体41の表面を表皮材で被覆してなる。また、クッション体41の前方上部には、別体のマクラ42も装着されている。
図4に示すように、バックフレーム400は、左右一対の側部フレーム401,401と、各側部フレーム401の上端間に架設した上部フレーム402等を備え、略四角形の枠形状に形成されている。
【0041】
各フレーム401,402は、何れもアルミニウム合金等の金属材料により略四角形等の閉断面形状に成形されたものであり、互いに溶接されて連結されている。また、各側部フレーム401間の途中には、両側方向に延在するパネルフレーム403等が固設されている。このようなバックフレーム400に装着するクッション体41は、発泡ウレタン等の弾性材質により人間工学に基づいて着座者の背中に安楽感をもたらす形状に成形されている。
【0042】
図9に示すように、各側部フレーム401の下端部は前後に分岐して延びており、その前後である前方下端部401aと後方下端部401bには、それぞれ前記ガイドフレーム100にあるガイド溝102,103に対して移動可能に係合する軸支部411,412が側方に向けて突設されている。ここで軸支部411は、後述する座枠300の後端両側に突設されており、前方下端部401aを回動可能に枢支した状態で、ガイドフレーム100のガイド溝102に移動可能に係合している。
【0043】
すなわち、軸支部411を回転中心として、バックフレーム400は座枠300に傾動可能に枢支され、バックフレーム400と座枠300とは互いに連動可能に連結されている。もう一方の軸支部412は、片側の側部フレーム401の後方下端部401bにのみ突設された状態で、ガイドフレーム100のガイド溝103の上端側に対して移動可能に係合している。
【0044】
各軸支部411,412は、円柱形の軸状に突出したものであれば何でも良いが、軸方向の両側から組み付けないし取り外しが可能な構造であれば、分解ないし再組み立てを容易に行うことができる。具体的には例えば、本出願人が既に提案している特願2012−169212号に記載された発明を利用すると良い。
【0045】
背凭れ40の背面側にはテーブル50が、背凭れ40の背面に沿って起立させた収納位置、ないし後方に向けて水平に倒した使用位置に起倒可能に、起倒機構を介して配設されている。テーブル50は、合成樹脂の成形品からなる板状の略長方形状に形成され、テーブル50の基端縁の両端には、左右一対の連結部51,51が凹設されている。各連結部51には、次述する起倒機構をなす左右一対のアーム500の先端部501が回動可能に枢支されている。
【0046】
起倒機構は、テーブル50を収納位置と使用位置とに起倒可能に支持すると共に、該テーブル50を背凭れ40の傾動位置の変化に拘わらず、使用位置が常に一定となるように保持するものである。かかる起倒機構は、前記ガイドフレーム100のほか、該ガイドフレーム100に対して基端部502が変位可能に支持されると共に、先端部501には前記テーブル50の連結部51が回動可能かつ使用位置にて水平な状態に保持可能に枢支された左右一対のアーム500,500からなる。
【0047】
アーム500も前記ガイドフレーム100と同様に2つで1組となる。各アーム500の先端部501にはテーブル50の連結部51が枢支され、各アーム500の基端部502は前記メインフレーム200の両側に沿った位置に平行に支持されている。詳しく言えばテーブル50の連結部51は、アーム500の先端部501にあるヒンジピンにより回動可能に支持され、当該回動部位に設けられたロック機構によって、使用位置におけるテーブル50を水平な状態に保持できるように設定されている。
【0048】
ここでロック機構は、カムやリンク等から構成されているが、その構成は一般的であるので詳細な説明は省略する。なお、本実施の形態の場合は、アーム500によってテーブル50全体の使用位置が常に一定に保たれる、言い換えればテーブル50の使用時におけるアーム500の傾斜角度は常に一定となるため、当該角度に対してテーブル50が水平な状態に保たれる所定角度のみにロックできる簡易な構成のもので足りる。なお、背凭れ40の背面側には、収納位置にあるテーブル50の先端縁に係脱して収納位置にテーブル50を保持するロック機構43(
図1参照)も設けられている。
【0049】
図10に示すように、アーム500の基端部502には、一体に延びるブラケット502aが継ぎ足されており、その前後にそれぞれ、ガイドフレーム100にある後述の他ガイド溝104と前記ガイド溝103に対して移動可能に係合する軸支部511,512が側方に向けて突設されている。ここで軸支部511,512は、それぞれアーム500の基端部502に突設された状態で、ガイドフレーム100のガイド溝104,103に対して移動可能に係合している。
【0050】
各軸支部511,512も、前記軸支部411,412と同様に円柱形の軸状に突出したものであれば何でも良く、具体的には例えば、本出願人が既に提案している特願2012−169212号に記載された発明が適している。なお、
図6に示すように、一対のアーム500,500における各先端部501間には、補強用の連結ロッド503が一体に架設されており、同様に各基端部502間にも、補強用の連結ロッド504が一体に架設されている。
【0051】
前記各ガイドフレーム100には、前述した複数のガイド溝101,102,103とは別に、前記アーム500の基端部502にある前方の軸支部511が移動可能に係合する他ガイド溝104が形成されている。アーム500の基端部502には、軸支部511より上方に軸支部512もあり、これら2つの軸支部511,512は、それぞれ他ガイド溝104と前記ガイド溝103に移動可能に係合する。ここでガイド溝103は、アーム500を支持するための他ガイド溝と共用であり、同一の溝として形成され配置されている。
【0052】
他ガイド溝104は、前記各ガイド溝101,102,103と同様にガイドフレーム100を板厚方向に貫通した長孔である。詳しく言えば他ガイド溝104は、前記ガイド溝103の下方でその前端前方より後方に向かって上方に傾斜し、緩やかに湾曲して延びるように形成されている。この他ガイド溝104とガイド溝103の位置ないし形状によって、テーブル50の起倒行程は制限されるように設定されている。
【0053】
すなわち、アーム500の基端部502にある2つの軸支部511,512と、ガイドフレーム100にある他ガイド溝104とガイド溝103との係合関係により、アーム500の基端部502の支持位置は背凭れ40の傾動に応じて変位しつつ、該アーム500の基端部502とは別に設定されたテーブル50全体の仮想の起倒支点P(
図1参照)を一定位置に保ち、かつ該起倒支点Pより後方に倒したテーブル50の使用位置を一定に保つ状態に案内するように設定されている。
【0054】
座部30は、フレーム構造である座枠300にクッション体31を装着し、クッション体31の表面を表皮材で被覆してなる。
図4に示すように、座枠300は、左右一対の側部フレーム301,301と、各側部フレーム301の前端側に架設した前方フレーム302と、各側部フレーム301の後端間に架設した後部フレーム303等を備え、略四角形の枠形状に形成されている。
【0055】
各側部フレーム301は、アルミニウム合金等の金属材料により略四角形等の閉断面形状に成形され、前後のフレーム302,303は、同様の金属材料からなるパイプ材により成形されている。また、各側部フレーム301間には、枠形状の開口部分を覆うようにして、複数本の略S字状のスプリング304が前後に並ぶように張設されている。このような座枠300に装着するクッション体31は、発泡ウレタン等の弾性材質により人間工学に基づいて着座者の臀部に安楽感をもたらす形状に成形されている。
【0056】
各側部フレーム301の前端側には、それぞれ前記ガイドフレーム100にあるガイド溝101に対して移動可能に係合する軸支部311が側方に向けて突設されている。また、各側部フレーム301の後端側には、それぞれ前記ガイドフレーム100にあるガイド溝102に対して移動可能に係合すると共に、前記バックフレーム400を回動可能に枢支する軸支部411が側方に向けて突設されている。
【0057】
このような前後の軸支部311,411により、座枠300は前後方向に揺りかごが揺動するように変位可能に支持される。また、座枠300は、主に軸支部411を介してバックフレーム400に互いに回動可能に連結され、全体として1つに組み合わされたメインフレーム200を形成している。
【0058】
次に、本実施の形態に係る座席装置10の作用を説明する。
図1に示した座席装置10は、背凭れ40が起立位置にある状態を示している。かかる状態の座席装置10では、着座者は自然に多少前屈するような安楽な姿勢で着座することができ、長時間着座しても疲れが生じにくい着座姿勢となる。起立した背凭れ40の背面側にあるテーブル50は、通常はロック機構43によって背凭れ40の背面に沿った収納位置にある。
【0059】
ロック機構43によるテーブル50の拘束を解除して、テーブル50ごとアーム500を後方に倒すと、アーム500の基端部502側にある軸支部511,512は、それぞれガイドフレーム100の他ガイド溝104,103内の
図1中で点線で示した可動域を下方へ移動する。これにより、アーム500の基端部502とは別に設定されたテーブル50全体の仮想の起倒支点P(
図1参照)が一定位置に保たれる。
【0060】
この起倒支点Pを回動中心としてテーブル50が倒れる角度範囲は、各軸支部511,512が他ガイド溝104,103(の可動域)の下端に当接するまでの範囲に規制されるため、後方に倒したテーブル50の使用位置を一定に保つことができる。かかる使用位置にて、アーム500の先端部501に枢支されたテーブル50は、その連結部51にある図示省略したロック機構により水平な状態に保持することができる。
【0061】
本座席装置10では、脚台11上に固設された台枠20に対して、座部30は前後方向に移動可能に据え付けられ、背凭れ40は傾動可能に支持され、背凭れ40の傾動に伴い座部30が連動する。背凭れ40を起立位置より後方へ傾動させると、規制機構によって、傾動する背凭れ40と連動する座部30との相対姿勢の変化が所定範囲内に制限される。その結果、背凭れ40の後方への傾動に伴って座部30はその前部が上方に向かうように前進し、座席全体は揺りかごが揺動するように連動する。
【0062】
詳しく言えば、バックフレーム400の傾動行程は、その下端部にある2つの軸支部411,412がそれぞれ係合するガイドフレーム100側のガイド溝102,103によって制限される。ここで起立位置から背凭れ40を傾倒する時に後方に向かう背凭れ40の上部の傾動量は極力抑えられる。また、バックフレーム400と連動する座枠300の移動行程は、その前後にある軸支部311と軸支部411がそれぞれ係合するガイドフレーム100側のガイド溝101,102によって制限される。
【0063】
ここで複数のガイド溝101〜103は、背凭れ40を後方へ傾動させる際に、メインフレーム200全体を前方に移動させることによって、背凭れ40の後方への傾動量を小さくする。メインフレーム200全体の動きは、揺りかごの揺動のように弧状に制限される。すなわち、背凭れ40を後方へ傾動させると、背凭れ40が起立している通常時と同姿勢をほぼ維持した状態で、全体的に揺りかごが揺動するように、背凭れ40は下方へ移動すると共に座部30は前方へ移動する。
【0064】
従って、背凭れ40をリクライニング状態にしても、座部30の座面が僅かに高くなると共に着座者がやや上向きになるだけであり、着座者の姿勢は起立位置での安楽な着座姿勢とほぼ同じ姿勢が常に維持され、安楽感がそのまま持続される。従って、リクライニング状態での着座が長時間に亘っても、着座者にかかる負担が少ないので、着座者に蓄積する疲労が少ない。
【0065】
背凭れ40をリクライニングするには、背凭れ40を所望の傾動角度に保持するロック機構(図示省略)による拘束を解除した状態で、着座者は背中を背凭れ40に押し付けてそのまま傾動させる。この時、背凭れ40の傾倒が大きくなるに従って着座者の体重が自然に背凭れ40にかかるので、無理な力を加えることなく身体を後方へ傾けるだけの動きで、背凭れ40は自然と後傾しつつ下方へスライド、座部30は前上方へ移動することになる。
【0066】
図2に示した座席装置10は、背凭れ40が最大限まで倒れたリクライニング状態を示している。このように背凭れ40を後方へ傾動させても、アーム500を介して使用位置に保持されているテーブル50は、常に一定の使用位置に保持されることになる。しかも、使用位置にあるテーブル50を上方に持ち上げると、アーム500の基端部502にある軸支部511,512は、それぞれガイドフレーム100の他ガイド溝104,103内の
図1中に点線で示した可動域を上方へ移動する。
【0067】
これにより、アーム500の基端部502とは別に設定されたテーブル50全体の仮想の起倒支点P(
図1参照)が一定位置に保たれる。その結果、背凭れ40の傾動位置の変化に拘わらず、前記起倒支点Pより後方に倒したテーブル50の使用位置を一定に保つことができるだけでなく、何時でもテーブル50を背凭れ40の背面に対して、相対的な位置ズレが生じることなく重なり合うように沿った収納位置まで戻すことができる。
【0068】
テーブル50を支持するアーム500は、左右2つで1組をなしている。この各アーム500の先端部501をテーブル50の基端縁の両端に枢支すると共に、各アーム500の基端部502を前記メインフレーム200の両側に沿った位置に平行に支持したことにより、テーブル50の充分な支持強度を得ることができる。
【0069】
また、前記ガイドフレーム100にあるガイド溝101〜103と他ガイド溝103,104のうち、それぞれ少なくとも何れか1つとして、本実施の形態ではガイド溝103を共用となる同一の溝として形成して配置した。これにより、構成を簡易化することが可能となる。
【0070】
ここでガイドフレーム100は、前記アームレスト12のフレーム構造(の一部)として構成しても良い。また、前記ガイドフレーム100の代わりに、該ガイドフレーム100に近接して配設された他のフレームに、前記ガイド溝101〜103ないし前記他ガイド溝103,104を設けても良い。
【0071】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、本実施の形態では2人掛け用として構成したが、1人掛け用あるいは3人掛け用であってもかまわない。また、鉄道車両用の座席に限られるものでもない。