特許第6041625号(P6041625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タチエスの特許一覧

<>
  • 特許6041625-車両用シート 図000002
  • 特許6041625-車両用シート 図000003
  • 特許6041625-車両用シート 図000004
  • 特許6041625-車両用シート 図000005
  • 特許6041625-車両用シート 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041625
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   B60N2/68
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-243507(P2012-243507)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-91439(P2014-91439A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100086195
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179855
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 えりか
(72)【発明者】
【氏名】山元 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀口 貴史
(72)【発明者】
【氏名】太田 洋平
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−047021(JP,A)
【文献】 特開2012−121465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックがリクライニング可能とされ、シートバックは、アッパーフレーム、ロアフレーム、第1、第2のサイドフレームを有する略矩形のシートバックフレームを備え、ロック機構によってその端が解除可能にロックされるリクライニング装置のリクライニングシャフトの左右の端をそれぞれ保持する第1、第2のブラケットが対応する第1、第2のサイドフレームにそれぞれ固着され、少なくとも、第1のサイドフレームとロアフレームとがアール付折曲部で連結されたパイプ材からなる車両用シートにおいて、
シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、第1、第2のサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、
第1のブラケットは、第1のサイドフレームに沿って延びるとともに、第1のサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状に形成され、
パイプ材の断面が円形から楕円に変形する第1のサイドフレームとロアフレームとのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し、
第1のブラケットは第1のサイドフレームに沿って溶接されるとともに、長楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとして第1のサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部に溶接されて第1のサイドフレームに固着された車両用シート。
【請求項2】
シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックがリクライニング可能とされ、シートバックはアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームを有する略矩形のシートバックフレームを備え、リクライニング装置のリクライニングシャフトの外端、内端をそれぞれ保持するインナー、アウターのブラケットがインナー、アウターのサイドフレームにそれぞれ固着され、少なくとも、インナーサイドフレームとロアフレームとがアール付折曲部で連結されたパイプ材からなる車両用シートにおいて、
シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、
インナーブラケットは、インナーサイドフレームに沿って延びるとともに、インナーサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状に形成され、
パイプ材の断面が円形から楕円に変形するインナーサイドフレームとロアフレームとのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し
インナーサイドブラケットはインナーサイドフレームに沿って溶接されるとともに、楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとしてインナーサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部に溶接されてインナーサイドフレームに固着された車両用シート。
【請求項3】
シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックがリクライニング可能とされ、シートバックはアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームを有する略矩形にパイプ材から一体に形成されたシートバックフレームを備え、リクライニング装置のリクライニングシャフトの外端、内端をそれぞれ保持するインナー、アウターのブラケットがインナー、アウターのサイドフレームにそれぞれ固着され、インナー、アウターのサイドフレームとロアフレームとの折曲部がアール付に成形された車両用シートにおいて、
シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、
インナー、アウターのブラケットは、インナー、アウターのサイドフレームに沿って延びるとともに、インナー、アウターのサイドフレームとロアフレームとをそれぞれの連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状にそれぞれ形成され、
パイプ材の断面が円形から楕円に変形するインナー、アウターのサイドフレームとロアフレームとのそれぞれのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し
インナー、アウターのサイドブラケットは、インナー、アウターのサイドフレームに沿って溶接されるとともに、長楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとしてインナー、アウターのサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部にそれぞれ溶接されてインナー、アウターのサイドフレームに固着された車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックをリクライニング可能とした車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックをリクライニング可能としたシートが、自動車などの車両用シートとして知られている。リクライニング装置は、リクライニングシャフトと、シートクッションの後端、シートバックの下端の間に配置されてリクライニングシャフトをその一端でロックするロック機構と、リクライナのロックを解除するリクライニングレバーなどのロック解除手段とを有して構成されている。
【0003】
リクライニングシャフトは、シートバックのフレーム(シートバックフレーム)の左右のサイドフレームにブラケットを介して保持され、リクライニングシャフトの回動に伴ってシートバックフレームが揺動されてシートバックがリクライニング可能(前後に傾動可能)となっている。リクライニングシャフトの端を保持するブラケットは、対応するサイドフレームにボルト止め、溶着(溶接)などによってそれぞれ固着されている。
シートバックフレームはアッパーフレーム、ロアフレーム、左右のサイドフレームを有する略矩形に形成され、ブラケットはプレート材から形成されている。
【0004】
アッパーフレーム、ロアフレーム、左右のサイドフレームをパイプ材から一体に形成したシートバックフレーム(パイプフレーム)が知られおり(たとえば、特開2002−059770号公報、特開2010−110430号公報)、パイプ材から一体成形することにより、シートバックフレームの構成が簡単化、軽量化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−059770号公報
【特許文献2】特開2010−110430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アッパーフレーム、ロアフレーム、左右のサイドフレームをパイプ材から一体に成形したシートバックフレーム(パイプフレーム)においては、サイドフレームへのブラケットの固着は、通常、溶接(溶着)とされる。そして、所定の溶接強度を確保するように、ブラケットはサイドフレームに沿って延ばされる。
【0007】
リクライニングのロック機構、ロック解除手段は、通常、車外側(ドア側)に配置され、設計上、車外側(ドア側)では配置スペースが比較的容易に確保できる。そのため、外側のサイドフレーム(アウターサイドフレーム)に溶接されるブラケット(アウターブラケット)はサイドフレームに沿って長く形成できる。これに対して、内側のサイドフレーム(インナーサイドフレーム)に溶着されるブラケット(インナーブラケット)は、設計上から配置スペースが制約されて長く形成できず、サイドフレームとロアフレームとの連結部にも溶接する必要がある。
【0008】
パイプフレームでは、それぞれのフレームの連結部は折曲されてアール付折曲部となり、アール付折曲部においてパイプ材の断面が円形から楕円に変形する。ブラケット(インナーブラケット)は、ロアレール、サイドフレーム(インナーサイドフレーム)の連結部(アール付折曲部)を相反する方向から挟みながら、たとえばアール付折曲部の長楕円を挟みながらサイドフレームに沿って延ばされてサイドフレームに溶接される。
アール付折曲部においては、長楕円の相反する2つの位置(溶接ポイント)でサイドフレームにブラケットは溶接されるが、円形から変形される楕円の形状(長楕円の直径;長径)を一定となるようにロアレール、サイドフレームの連結部を折曲することが容易でなく、2つの溶接ポイントの距離(長径)が安定化(一定化)しない。そして、2つの溶接ポイントの距離が安定化しないと、一定の溶接強度のもとでの溶接が難しい。
【0009】
本発明は、パイプ材からなるロアレール、サイドフレームの連結部(アール付折曲部)においても2つの溶接ポイントの距離を安定化できる車両用シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、アール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し長楕円の頂点の一対の平坦面をアール付折曲部での溶接ポイントとしている。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックがリクライニング可能とされ、シートバックは、アッパーフレーム、ロアフレーム、第1、第2のサイドフレームを有する略矩形のシートバックフレームを備え、ロック機構によってその端が解除可能にロックされるリクライニング装置のリクライニングシャフトの左右の端をそれぞれ保持する第1、第2のブラケットが対応する第1、第2のサイドフレームにそれぞれ固着され、少なくとも、第1のサイドフレームとロアフレームとがアール付折曲部で連結されたパイプ材からなる車両用シートにおいて、シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、第1、第2のサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、第1のブラケットは、第1のサイドフレームに沿って延びるとともに、第1のサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状に形成され、パイプ材の断面が円形から楕円に変形する第1のサイドフレームとロアフレームとのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し、第1のブラケットは第1のサイドフレームに沿って溶接されるとともに、長楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとして第1のサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部に溶接されて第1のサイドフレームに固着されている。
また、請求項2に係る本発明によれば、シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックがリクライニング可能とされ、シートバックはアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームを有する略矩形のシートバックフレームを備え、リクライニング装置のリクライニングシャフトの外端、内端をそれぞれ保持するインナー、アウターのブラケットがインナー、アウターのサイドフレームにそれぞれ固着され、少なくとも、インナーサイドフレームとロアフレームとがアール付折曲部で連結されたパイプ材からなる車両用シートにおいて、シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、インナーブラケットは、インナーサイドフレームに沿って延びるとともに、インナーサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状に形成され、パイプ材の断面が円形から楕円に変形するインナーサイドフレームとロアフレームとのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し、インナーサイドブラケットはインナーサイドフレームに沿って溶接されるとともに、楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとしてインナーサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部に溶接されてインナーサイドフレームに固着されている。
さらに、請求項3に係る本発明によれば、シートクッションの後端にシートバックの下端がリクライニング装置を介在して取付けられてシートバックがリクライニング可能とされ、シートバックはアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームを有する略矩形にパイプ材から一体に形成されたシートバックフレームを備え、リクライニング装置のリクライニングシャフトの外端、内端をそれぞれ保持するインナー、アウターのブラケットがインナー、アウターのサイドフレームにそれぞれ固着され、インナー、アウターのサイドフレームとロアフレームとの折曲部がアール付に成形された車両用シートにおいて、シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、インナー、アウターのブラケットは、インナー、アウターのサイドフレームに沿って延びるとともに、インナー、アウターのサイドフレームとロアフレームとをそれぞれの連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状にそれぞれ形成され、パイプ材の断面が円形から楕円に変形するインナー、アウターのサイドフレームとロアフレームとのそれぞれのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形し、インナー、アウターのサイドブラケットは、インナー、アウターのサイドフレームに沿って溶接されるとともに、長楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとしてインナー、アウターのサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部にそれぞれ溶接されてインナー、アウターのサイドフレームに固着されている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3のいずれにおいても、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して、長楕円の頂点に成形される相反する一対の平坦面が溶接ポイントとなり、長楕円の頂点の一対の平坦面の距離、すなわち、2つの溶接ポイントの距離が安定化され、アール付折曲部において一定の溶接強度のもとでの溶接が容易に行える。また、断面において線でなく面(平坦面)で溶接され、平坦面(溶接ポイント)の幅の許容誤差が拡大されるため、パイプ材の折曲誤差、ブラケットの成形誤差があっても誤差を吸収して一定の溶接強度で溶接できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る車両用シートの概略右側面図を示す。
図2】車両用シートのシートバックフレームの正面図を示す。
図3】車両用シートのシートバックフレームの背面図を示す。
図4】シートバックフレームの背面斜視図を示す。
図5】(A)(B)は図2の線X−Xに沿ったインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)の断面図であり、(A)は潰し加工前、(B)は潰し加工後の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
シートバックは、アッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームを有する略矩形のシートバックフレームを備えている。シートバックフレームは、円形断面のパイプ材を折曲してアッパーフレーム、ロアフレーム、インナー、アウターのサイドフレームが一体に形成されたパイプフレームとされ、たとえば、少なくともインナーサイドフレームとロアフレームとがアール付折曲部で連結される。また、インナーブラケットはインナーサイドフレームに沿って延びるとともに、インナーサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部ではそのアール付折曲部を覆う形状に形成される。パイプ材の断面が円形から楕円に変形するインナーサイドフレームとロアフレームとのアール付折曲部で、パイプ材のアール付折曲部の長楕円を挟んで長楕円の2つの頂点に潰し加工を施して相反する一対の平坦面を長楕円の2つの頂点に成形している。そして、インナーサイドブラケットはインナーサイドフレームに沿って溶接されるとともに、長楕円の頂点の一対の平坦面を溶接ポイントとしてインナーサイドフレーム、ロアフレームを連結するアール付折曲部に溶接される。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略右側面図、図2図3は車両用シートのシートバックフレームの正面図、背面図をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12と、シートバック14とを有し、シートクッションの後端、シートバックの下端の間にリクライニング装置16を配置してシートバックがリクライニング可能に構成されている。
図2に示すように、リクライニング装置16は、リクライニングシャフト16aと、シートクッションの後端、シートバックの下端の間に配置されてリクライニングシャフトをその一端でロックするロック機構16bと、リクライナのロックを解除するリクライニングレバーなどのロック解除手段(図示しない)とを有して構成されている。
【0016】
図2図3に示すように、シートバック14の骨格をなすシートバックフレーム24はアッパーフレーム24u、ロアフレーム24w、インナー、アウターのサイドフレーム24is、24osを有する略矩形に形成され、実施例では、パイプ材を折曲して一体に形成されたパイプフレームとなっている。4つのフレームを連結するその折曲部(連結部)はいずれもアール付(カーブ付、円弧付)折曲部とされ、ロアフレーム24wの中央でパイプ材の2つ端が相互に連結されている。
【0017】
インナー、アウターのブラケット(ヒンジブラケット)25i,25oは、その一端でリクライニングシャフト16aの外端、内端をそれぞれ保持するとともに、その他端は、インナー、アウターのサイドフレーム24is,24osにそれぞれ固着され、パイプ材からシートバックフレーム24を成形した実施例の構成では、溶接によってサイドフレームに固着(溶着)されている。
【0018】
リクライニング装置のロック機構16bは、通常、車外側(ドア側)で車両用シート10に装着されるため、アウターサイドブラケット(アウターブラケット)25oは設計上の制約を受けることなくアウターサイドフレーム(アウターフレーム)24osに沿って長く延ばすことができる(図2図3参照)。そのため、アウターフレーム24osに沿って(アウターフレームの直線部に沿って)溶接面を長く確保でき、必要な強度のもとでアウターブラケット25oをアウターフレーム24osに溶接(溶着)できる。すなわち、アウターブラケット25oは、アウターフレーム24os、ロアフレーム24wを連結するアール付折曲部(連結部;外側下のコーナー)24−1を利用することなく、アウターフレームに沿って溶接される。
【0019】
これに対して、インナーサイドフレーム(インナーフレーム)24isには他部品27a、27b、27cなどが設けられるため、設計上の制約を受け、インナーフレーム24isに沿って長く延ばすことが難しく、長く形成できない。そのため、インナーフレーム24isに沿って(インナーフレームの直線部に沿って)溶接面を確保するだけでなく、インナーフレーム24is、ロアフレーム24wを連結するアール付折曲部(連結部;内側下のコーナー)24−2も利用しアール付折曲部にも溶接面を確保して、インナーブラケット25iはインナーフレームに溶接(溶着)される。
【0020】
図4はシートバックフレームの背面斜視図、図5(A)(B)は図2の線X−Xに沿ったインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)の断面図であり、図5(A)は潰し加工前、図5(B)は潰し加工後の断面を示す。
【0021】
インナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)24−2は、折曲されることによって、円形断面のパイプ材においては、図5(A)に示すように、パイプ材の断面が円形から楕円に変形する。ここで、インナーブラケット25iは、長楕円を挟むように、底板25iaから2つの縁25ibが延びた略コ字形状の断面に形成される。この構成では、長楕円の直径(長径)方向で2つの溶接ポイントSが得られる。
【0022】
本発明では、溶接ポイントSが設定される長楕円に潰し加工に施して、相反する2つの平坦面を長楕円の直径(長径)方向でインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)24−2に成形して、平坦面を溶接ポイントとしている。
【0023】
インナーフレーム、ロアフレームの連結部24−2を折曲してアール付折曲部とすると、パイプ材の断面が円形から楕円に変形するが、長楕円の頂点に設定される2つの溶接ポイントSの位置が一定になるように(安定化されるように)、つまりは2つの溶接ポイントSの距離aが一定になって安定化するようにパイプ材を折曲することが難しい。
しかしながら、潰し加工によって相反する2つの平坦面24sを長楕円の直径(長径)方向に成形すれば、長楕円に設定される2つの溶接ポイントS(平坦面)の位置が容易に一定となり、2つの溶接ポイントSの距離aが一定になって安定化される。そして、縁25ibが長楕円を挟んで長楕円の平坦面24sを覆うように、インナーブラケット25iが図5(B)に矢視で示す方向からアール付折曲部24−2に被せられ、平坦面を溶接ポイントSとしてアール付折曲部に溶接される。
【0024】
このように、潰し加工によって平坦面24sを成形して平坦面を溶接ポイントSとすることにより、2つの溶接ポイントの距離が安定化され、一定の溶接強度(溶着強度)のもとでの溶接が容易に行える。また、平坦面24が溶接ポイントSとなり、平坦面(溶接ポイント)の幅bが広く設定されるため、パイプ材の折曲誤差、ブラケットの成形誤差があってもそれらの誤差を吸収して一定の溶接強度で溶接できる。さらに、平坦面24sに沿った面接触での溶接となり、大きな溶接強度が得られる。
そのため、インナーフレーム24isに沿って長く延ばすことなく、短いインナーブラケット25iでも一定の強度のもとでインナーフレームに溶接(溶着、固着)できる。
【0025】
シートバックフレーム24をパイプ材から一体に形成した実施例のパイプフレームでは、アウターフレーム24os、ロアフレーム24wの連結部24−1もアール付折曲部となり、このアール付折曲部にアウターブラケット25oを溶接させてもよい。すなわち、アール付折曲部(連結部)24−1と重複する部分でパイプ材の長楕円を覆うように2つの縁を底板から延ばした略コ字形状にアウターブラケット25oを形成し、潰し加工を施して成形された長楕円方向の相反する2つの平坦面を挟んでアール付折曲部にアウターブラケット25oが溶接される。
このようにアウターブラケット25oをアウターフレーム24os、ロアフレーム24wの連結部(アール付折曲部)24−1にも溶接すれば、従来より短い長さにアウターブラケットを形成できる。
【0026】
シートバックフレーム24をパイプ材から一体に形成したパイプフレームとすることなく、インナーブラケット25isがインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)24−2に溶接する構成であれば足りる。すなわち、連結部(アール付折曲部)24−2にかけてインナーフレーム、ロアフレームが少なくともパイプ材から形成されていればよい。
【0027】
上記のように、本発明によれば、アール付折曲部に潰し加工を施して相反する2つの平坦面を成形し、この平坦面を溶接ポイントとすることにより、溶接ポイントの距離が安定化して、一定の溶接強度(溶着強度)のもとでの溶接が容易に行える。また、断面において面で溶接され、平坦面の幅の許容誤差が拡大されるため、パイプ材、ブラケットの誤差を吸収して一定の溶接強度で溶接できる。さらに、平坦面に沿った面接触での溶接となり、大きな溶接強度が得られる。
【0028】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0029】
たとえば、通常は実施例のように長楕円に潰し加工を施して長径方向に平坦面(溶接ポイント)を成形するが、平坦面を成形する方向はこれに限定されず、短楕円に潰し加工を施して短楕円の直径(短径)方向に平坦面を成形してもよい。
また、2つの縁付の略コ字の横断面形状にブラケットを形成したが、ブラケットの横断面形状はこれに限定されず、潰し加工によって成形された2つの平坦面を挟んで溶接される横断面形状を持てば足りる。たとえば、アール付折曲部を覆うブラケットの断面が、平坦面以外の部分でパイプの円弧形状となった略U字形状でもよい。
【0030】
実施例では、リクライニング装置のロック機構をドア側に設け、インナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)に潰し加工を施している。しかしながら、ロック機構を車内側に設け、アウターフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)に潰し加工を施して平坦面を成形し、アウターブラケットを平坦面に溶接してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、通常、自動車のシートに応用されるが、自動車以外の車両用シート、たとえば、電車、飛行機などの広範囲なシートにも応用できる。
【符号の説明】
【0032】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
16 リクライニング装置
16a リクライニングシャフト
16b ロック機構
24 シートバックフレーム
24is インナーサイドフレーム(インナーフレーム)
24os アウターサイドフレーム(アウターフレーム)
24w ロアフレーム
24−1,24−2 サイドフレーム、ロアレールの連結部(アール付折曲部)
24s 平坦面
S 溶接ポイント
a 2つの平坦面の距離(長径方向での長さ)
b 平坦面の幅(短径方向での長さ)
25i インナーブラケット
25o アウターブラケット
図1
図2
図3
図4
図5