【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る車両用シートの概略右側面図、
図2、
図3は車両用シートのシートバックフレームの正面図、背面図をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12と、シートバック14とを有し、シートクッションの後端、シートバックの下端の間に
リクライニング装置16を配置してシートバックがリクライニング可能に構成されている。
図2に示すように、リクライニング装置16は、リクライニングシャフト16aと、シートクッションの後端、シートバックの下端の間に配置されてリクライニングシャフトをその一端でロックするロック機構16bと、リクライナのロックを解除するリクライニングレバーなどのロック解除手段(図示しない)とを有して構成されている。
【0016】
図2、
図3に示すように、シートバック14の骨格をなすシートバックフレーム24はアッパーフレーム24u、ロアフレーム24w、インナー、アウターのサイドフレーム24is、24osを有する略矩形に形成され、実施例では、パイプ材を折曲して一体に形成されたパイプフレームとなっている。4つのフレームを連結するその折曲部(連結部)はいずれもアール付(カーブ付、円弧付)折曲部とされ、ロアフレーム24wの中央でパイプ材の2つ端が相互に連結されている。
【0017】
インナー、アウターのブラケット(ヒンジブラケット)25i,25oは、その一端でリクライニングシャフト16aの外端、内端をそれぞれ保持するとともに、その他端は、インナー、アウターのサイドフレーム24is,24osにそれぞれ固着され、パイプ材からシートバックフレーム24を成形した実施例の構成では、溶接によってサイドフレームに固着(溶着)されている。
【0018】
リクライニング装置のロック機構16bは、通常、車外側(ドア側)で車両用シート10に装着されるため、アウターサイドブラケット(アウターブラケット)25oは設計上の制約を受けることなくアウターサイドフレーム(アウターフレーム)24osに沿って長く延ばすことができる(
図2、
図3参照)。そのため、アウターフレーム24osに沿って(アウターフレームの直線部に沿って)溶接面を長く確保でき、必要な強度のもとでアウターブラケット25oをアウターフレーム24osに溶接(溶着)できる。すなわち、アウターブラケット25oは、アウターフレーム24os、ロアフレーム24wを連結するアール付折曲部(連結部;外側下のコーナー)24−1を利用することなく、アウターフレームに沿って溶接される。
【0019】
これに対して、インナーサイドフレーム(インナーフレーム)24isには他部品27a、27b、27cなどが設けられるため、設計上の制約を受け、インナーフレーム24isに沿って長く延ばすことが難しく、長く形成できない。そのため、インナーフレーム24isに沿って(インナーフレームの直線部に沿って)溶接面を確保するだけでなく、インナーフレーム24is、ロアフレーム24wを連結するアール付折曲部(連結部;内側下のコーナー)24−2も利用しアール付折曲部にも溶接面を確保して、インナーブラケット25iはインナーフレームに溶接(溶着)される。
【0020】
図4はシートバックフレームの背面斜視図、
図5(A)(B)は
図2の線X−Xに沿ったインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)の断面図であり、
図5(A)は潰し加工前、
図5(B)は潰し加工後の断面を示す。
【0021】
インナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)24−2は、折曲されることによって、円形断面のパイプ材においては、
図5(A)に示すように、パイプ材の断面が円形から楕円に変形する。ここで、インナーブラケット25iは、長楕円を挟むように、底板25iaから2つの縁25ibが延びた略コ字形状の断面に形成される。この構成では、長楕円の直径(長径)方向で2つの溶接ポイントSが得られる。
【0022】
本発明では、溶接ポイントSが設定される長楕円に潰し加工に施して、相反する2つの平坦面を長楕円の直径(長径)方向でインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)24−2に成形して、平坦面を溶接ポイントとしている。
【0023】
インナーフレーム、ロアフレームの連結部24−2を折曲してアール付折曲部とすると、パイプ材の断面が円形から楕円に変形するが、長楕円の頂点に設定される2つの溶接ポイントSの位置が一定になるように(安定化されるように)、つまりは2つの溶接ポイントSの距離aが一定になって安定化するようにパイプ材を折曲することが難しい。
しかしながら、潰し加工によって相反する2つの平坦面24sを長楕円の直径(長径)方向に成形すれば、長楕円に設定される2つの溶接ポイントS(平坦面)の位置が容易に一定となり、2つの溶接ポイントSの距離aが一定になって安定化される。そして、縁25ibが長楕円を挟んで長楕円の平坦面24sを覆うように、インナーブラケット25iが
図5(B)に矢視で示す方向からアール付折曲部24−2に被せられ、平坦面を溶接ポイントSとしてアール付折曲部に溶接される。
【0024】
このように、潰し加工によって平坦面24sを成形して平坦面を溶接ポイントSとすることにより、2つの溶接ポイントの距離が安定化され、一定の溶接強度(溶着強度)のもとでの溶接が容易に行える。また、平坦面24が溶接ポイントSとなり、平坦面(溶接ポイント)の幅bが広く設定されるため、パイプ材の折曲誤差、ブラケットの成形誤差があってもそれらの誤差を吸収して一定の溶接強度で溶接できる。さらに、平坦面24sに沿った面接触での溶接となり、大きな溶接強度が得られる。
そのため、インナーフレーム24isに沿って長く延ばすことなく、短いインナーブラケット25iでも一定の強度のもとでインナーフレームに溶接(溶着、固着)できる。
【0025】
シートバックフレーム24をパイプ材から一体に形成した実施例のパイプフレームでは、アウターフレーム24os、ロアフレーム24wの連結部24−1もアール付折曲部となり、このアール付折曲部にアウターブラケット25oを溶接させてもよい。すなわち、アール付折曲部(連結部)24−1と重複する部分でパイプ材の長楕円を覆うように2つの縁を底板から延ばした略コ字形状にアウターブラケット25oを形成し、潰し加工を施して成形された長楕円方向の相反する2つの平坦面を挟んでアール付折曲部にアウターブラケット25oが溶接される。
このようにアウターブラケット25oをアウターフレーム24os、ロアフレーム24wの連結部(アール付折曲部)24−1にも溶接すれば、従来より短い長さにアウターブラケットを形成できる。
【0026】
シートバックフレーム24をパイプ材から一体に形成したパイプフレームとすることなく、インナーブラケット25isがインナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)24−2に溶接する構成であれば足りる。すなわち、連結部(アール付折曲部)24−2にかけてインナーフレーム、ロアフレームが少なくともパイプ材から形成されていればよい。
【0027】
上記のように、本発明によれば、アール付折曲部に潰し加工を施して相反する2つの平坦面を成形し、この平坦面を溶接ポイントとすることにより、溶接ポイントの距離が安定化して、一定の溶接強度(溶着強度)のもとでの溶接が容易に行える。また、断面において面で溶接され、平坦面の幅の許容誤差が拡大されるため、パイプ材、ブラケットの誤差を吸収して一定の溶接強度で溶接できる。さらに、平坦面に沿った面接触での溶接となり、大きな溶接強度が得られる。
【0028】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0029】
たとえば、通常は実施例のように長楕円に潰し加工を施して長径方向に平坦面(溶接ポイント)を成形するが、平坦面を成形する方向はこれに限定されず、短楕円に潰し加工を施して短楕円の直径(短径)方向に平坦面を成形してもよい。
また、2つの縁付の略コ字の横断面形状にブラケットを形成したが、ブラケットの横断面形状はこれに限定されず、潰し加工によって成形された2つの平坦面を挟んで溶接される横断面形状を持てば足りる。たとえば、アール付折曲部を覆うブラケットの断面が、平坦面以外の部分でパイプの円弧形状となった略U字形状でもよい。
【0030】
実施例では、リクライニング装置のロック機構をドア側に設け、インナーフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)に潰し加工を施している。しかしながら、ロック機構を車内側に設け、アウターフレーム、ロアフレームの連結部(アール付折曲部)に潰し加工を施して平坦面を成形し、アウターブラケットを平坦面に溶接してもよい。