(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のパイプ切断装置は、6つの拡開刃をマンドレルで拡開することによってパイプに剪断力を与えるようにしている。このような構造上、拡開状態にすると隣り合う拡開刃の間に隙間が形成されるので、パイプの内面における周方向の一部には拡開刃が当接しない部分、即ち、拡開刃による剪断力が作用しない部分が生じる。拡開刃による剪断力が作用しない状態で無理に切断を行うと、パイプの端部にかえり、切り残し、切りくずの残留や半径方向の変形が発生してしまう。
【0006】
このことを防止するためには、パイプと拡開刃の周方向の相対位置を変えて拡開刃を拡開させる2度切りが必要になり、パイプ切断装置の構造が複雑になるとともに、工数が増加してしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、2度切りをしなくても、切断後のパイプの端部にかえり、切り残し、切りくずの残留や半径方向の変形が発生しないように切断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、拡開刃の隙間を埋める別の拡開刃を設け、拡開状態で周方向に連続する刃を形成できるようにした。
【0009】
第1の発明は、被切断パイプにおける切断予定部分に挿入される複数の拡開刃と、
上記被切断パイプにおける切断予定部分に挿入される方向に移動して上記拡開刃を拡開させる棒状の可動部材と、
上記被切断パイプの外面における切断予定部分以外の部分をクランプするとともに、上記被切断パイプの外面における切断予定部分とそれ以外の部分との境界部に対応するように配置される切断刃を有するクランプ装置とを備え、
上記可動部材を上記被切断パイプの切断予定部分への挿入方向に移動させることによって上記拡開刃を拡開させ、該拡開刃と上記クランプ装置の切断刃とで上記パイプに剪断力を与えて上記切断予定部分を切断するように構成されたパイプ切断装置において、
上記可動部材における上記被切断パイプへの挿入方向先端側は、該先端に向かって断面が縮小する角錐状に形成され、
上記拡開刃は、上記可動部材の周囲に設けられ
、上記可動部材における上記挿入方向先端側の軸線の径方向に移動することによって拡開する複数の第1の拡開刃と、
上記第1の拡開刃が拡開した際に、上記可動部材の周方向に隣り合う上記第1の拡開刃の間に形成される隙間を埋めるように
、上記可動部材の上記挿入方向先端側の軸線の径方向に移動することによって拡開する
複数の第2の拡開刃とを備え
、
上記第1の拡開刃及び上記第2の拡開刃が非拡開状態にあるときに、上記第2の拡開刃は、上記可動部材の上記挿入方向先端側の外面と上記第1の拡開刃との間に配置され、
上記第2の拡開刃には、上記可動部材の上記挿入方向先端側の外面に当接した状態で該可動部材の上記挿入方向に摺動する摺動面と、上記第1の拡開刃に当接する当接面とが設けられ、
上記可動部材の上記挿入方向への移動により上記第2の拡開刃の上記摺動面が上記可動部材の上記挿入方向先端側の外面を摺動して該外面により該挿入方向先端側の軸線の径方向に押動されて拡開し、上記第1の拡開刃が、上記第2の拡開刃の上記当接面により上記可動部材の上記挿入方向先端側の軸線の径方向に押動されて拡開するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
この構成によれば、被切断パイプの切断予定部分を切断する際には、まず、被切断パイプをクランプ装置でクランプする。このとき、クランプ装置の切断刃は、被切断パイプの外面における切断予定部分とそれ以外の部分との境界部に対応するように配置される。一方、第1の拡開刃及び第2の拡開刃は非拡開状態にしておき、切断予定部分に挿入する。そして、可動部材を切断予定部分への挿入方向に移動させていくと、第1の拡開刃及び第2の拡開刃が拡開していく。第1の拡開刃が拡開すると、隣り合う第1の拡開刃の隙間を埋めるように第2の拡開刃が拡開していき、第1の拡開刃と第2の拡開刃とが周方向に連続するようになる。
【0011】
これにより、被切断パイプの切断予定部分の全周に亘って剪断力が与えられるので、切断後のパイプの端部にかえりや切り残しが発生しない。
【0012】
また、非拡開状態で第2の拡開刃を第1の拡開刃よりも可動部材に近い側に配置しておくことが可能になるので、第1の拡開刃及び第2の拡開刃が非拡開状態でコンパクトにまとまり、構成もシンプルになる。また、可動部材を移動させるだけで、拡開力を第2の拡開刃、第1の拡開刃に確実に伝達して円滑な動作が可能になる。
【0013】
第
2の発明は、第
1の発明において、
上記可動部材を駆動する駆動装置を備え、
上記可動部材と上記駆動装置とは、接続部を介して着脱可能に接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によれば、例えば被切断パイプの径が変更になった場合には、駆動装置を装置本体に残したまま、可動部材及び拡開刃を容易に、かつ、迅速に交換することが可能になる。
【0015】
第
3の発明は、第1
または2の発明において、
複数の上記第1の拡開刃の刃先は、非拡開状態にあるときに連続した円形の刃を形成し、拡開状態にあるときに上記第2の拡開刃と連続した状態で該第2の拡開刃よりも径方向外方に位置する湾曲形状をなしていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によれば、拡開状態で第1の拡開刃が第2の拡開刃よりも径方向外方に位置する湾曲形状となっているので、被切断パイプに対して周方向の一部分に早いタイミングで剪断力を与え、その後、他の部位に徐々に剪断力を与えていくことが可能になる。これにより、被切断パイプの全周に同じタイミングで剪断力を与える場合に比べて小さい力でスムーズに切断することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、第1の拡開刃の間に形成される隙間を埋める第2の拡開刃を備えているので、2度切りをしなくても、切断後のパイプの端部にかえりや切り残しが発生しないようにすることができる。
【0018】
また、非拡開状態でコンパクトにまとめてシンプルな構成にすることができるとともに、可動部材による拡開力を第2の拡開刃、第1の拡開刃に確実に伝達して円滑な動作を実現できる。
【0019】
第
2の発明によれば、可動部材と、可動部材を駆動する駆動装置とが接続部を介して着脱可能に接続されているので、被切断パイプの径が変更になった場合に、可動部材及び拡開刃を容易に、かつ、迅速に交換することができ、これにより、段取り換え時間を短縮できる。
【0020】
第
3の発明によれば、第1の拡開刃が拡開状態にあるときに第2の拡開刃と連続した状態で該第2の拡開刃よりも径方向外方に位置する湾曲形状をなしているので、被切断パイプに対して周方向の一部分に早いタイミングで剪断力を与えて徐々に切断することができる。よって、切断に要する力を小さくしてスムーズに切断できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係るパイプ切断装置1の斜視図である。このパイプ切断装置1は、例えば自動車部品等の金属製パイプ(被切断パイプ)P(
図4に示す)を切断する場合に用いることができるものである。このパイプPの断面は円形となっており、途中が屈曲している。
【0024】
尚、この実施形態の説明では、
図4等において、切断前のパイプPのうち、切断する部分を切断予定部分として符号P1で示し、それ以外の部分を符号P2で示す。
【0025】
パイプ切断装置1は、
図3に示す2つのクランプ装置10,10と、2つの拡開刃ユニット20(
図1、
図2には1つのみ示す)と、各拡開刃ユニット20を駆動する駆動装置60とを備えており、2本のパイプPを同時に切断することができるようになっている。尚、クランプ装置10や拡開刃ユニット20は1つのみ設けてもよい。
【0026】
クランプ装置10は、パイプPの切断時に、パイプPを、その切断予定部分P1の軸線が略水平に延びる姿勢でクランプするためのものである。一方、拡開刃ユニット20は、パイプ切断装置1の装置本体に着脱可能に取り付けられ、クランプ装置10にクランプされたパイプPに対して剪断力を与えるためのものである。
【0027】
2つのクランプ装置10は水平方向に並んで配置されており、互いに同じ構造であるため、以下、一方のクランプ装置10の構造について説明する。
図3に示すように、クランプ装置10は、クランプ装置取付枠9に取り付けられており、下側クランプ部材11と、上側クランプ部材12と、上側クランプ部材12を上下方向(下側クランプ部材11に接離する方向)に駆動するシリンダ装置13とを備えている。
図4に示すように、クランプ装置10の下側クランプ部材11及び上側クランプ部材12は、拡開刃ユニット20と対向するように配置される。
【0028】
下側クランプ部材11は、クランプ装置取付枠9の下部に固定されている。下側クランプ部材11の上面には、
図4にも示すようにパイプPの外面に沿うように円弧状に延びる凹面11aが形成されている。また、下側クランプ部材11における拡開刃ユニット20と対向する側には、下側切断刃11bが設けられている。下側切断刃11bは、凹面11aと同様に円弧状に湾曲しており、パイプPをクランプした状態でパイプPの外面における切断予定部分P1とそれ以外の部分P2との境界部に対応するように配置されている。
【0029】
また、上側クランプ部材12の下面には、パイプPの外面に沿うように円弧状に延びる凹面12aが形成されている。この凹面12aと上記下側クランプ部材11の凹面11aとでパイプPの切断予定部分P1以外の部分P2が上下方向に挟持されてクランプされた状態となる。
【0030】
また、上側クランプ部材12における拡開刃ユニット20と対向する側には、上側切断刃12bが設けられている。上側切断刃12bは、凹面12aと同様に円弧状に湾曲しており、パイプPをクランプした状態でパイプPの外面における切断予定部分P1とそれ以外の部分P2との境界部に対応するように配置される。パイプPをクランプした状態で、上側切断刃12bは、上記下側クランプ部材11の下側切断刃11bと連続して円形の1つの刃を形成することになる。
【0031】
シリンダ装置13は、例えば流体圧の給排によって動作する流体圧シリンダ装置で構成することができ、ロッド13aが下側に進出する姿勢でクランプ装置取付枠9の上部に固定されている。シリンダ装置13のロッド13aは、
図3の左側に示す上昇端位置と、同図の右側に示す下降端位置との間で進退可能となっている。
【0032】
次に、拡開刃ユニット20の構造について説明する。2つの拡開刃ユニット20は互いに同じ構造であるため、以下、一方の拡開刃ユニット20について説明する。
【0033】
図5や
図6に示す拡開刃ユニット20は、
図1に示すようにパイプ切断装置1の装置本体に設けられた架台2上に載置された状態で、当該装置本体に着脱可能に取り付けられている。拡開刃ユニット20を装置本体から取り外した状態を
図2に示す。よって、拡開刃ユニット20は、パイプPの径が変わる場合に、そのパイプPの径に対応する拡開刃ユニット20に容易に交換することができるようになっている。
【0034】
図7〜
図9に示すように、拡開刃ユニット20は、芯棒材(可動部材)21と、芯棒材21の周囲に配置される4つの主拡開刃(第1の拡開刃)22,22,…と、同様に芯棒材21の周囲に配置される4つの補助拡開刃(第2の拡開刃)23,23,…と、主拡開刃22及び補助拡開刃23を保持する保持枠24(
図5〜
図6参照)とを備えている。尚、
図8、
図9では、保持枠24を省略し、芯棒材21、主拡開刃22及び補助拡開刃23の位置関係を示している。
【0035】
図8に示すように、芯棒材21は、パイプPの切断予定部分P1に挿入される側(先端側)が角錐状に形成された角錐部21aとされる一方、その反対側の基端側は円柱状に形成された円柱部21bとされている。芯棒材21の基端側には、芯棒材21を駆動するための駆動装置60と接続される接続部21cが設けられている。
【0036】
接続部21cを介して芯棒材21に接続される駆動装置60は、上記クランプ装置10が有するシリンダ装置と同様なもので構成することができる。駆動装置60は、ロッド60aは水平方向に進出する姿勢でパイプ切断装置1の装置本体に固定されている。ロッド60aの進退によって芯棒材21が水平方向に移動する。ロッド60aの先端部には、接続部21cに係脱自在に構成された係合部60bが設けられている。拡開刃ユニット20を交換する際には、駆動装置60の係合部60bを拡開刃ユニット20の接続部21cから離脱させることで容易に交換することが可能になっている。
【0037】
4つの主拡開刃22,22,…は、
図14や
図15に示すように拡開した状態(拡開状態)と、
図8や
図9に示すように拡開していない状態(非拡開状態)とに切り替えられるようになっている。尚、
図11及び
図12は、拡開状態と非拡開状態との間の状態を示している。
【0038】
4つの主拡開刃22,22,…は、互いに同じ構造であるため、1つの主拡開刃22について説明する。
図7に示すように、主拡開刃22は、芯棒材21の径方向に延びるとともに、保持枠24によって径方向に案内される被案内部22aと、被案内部22aの径方向内端部からパイプPへの挿入方向に突出する突出部22bとを備えている。被案内部22aの外周面には、周方向に延びる溝22cが形成され、該溝22cには主拡開刃22を径方向内側に付勢するための弾性バンド26が巻き掛けられている。被案内部22aにおける突出部22bと反対側の面には、案内溝22eが形成されている。
図8に示すように、案内溝22eは、芯棒材21の径方向に延びている。
【0039】
被案内部22aの芯棒材21側の面には、後述する補助拡開刃23に当接する一対の当接面22f,22fが形成されている。当接面22f,22fは、芯棒材21の中心を通る断面で対称形状を有し、かつ各面22f,22fはその面中心部で円周接線方向と傾斜を持ち、後述する補助拡開刃23が拡開するとその補助拡開刃23に対し内周方向へ相対変位するよう構成される。当接面22f,22fは、被案内部22aの周方向中心部に近づくほど径方向内方に位置するように傾斜した傾斜面で構成されている。一方の当接面22fは、1つの補助拡開刃23に当接し、他方の当接面22fは、一方の当接面22fが当接している補助拡開刃23に隣接する別の補助拡開刃23に当接するようになっている。
【0040】
また、
図7に示すように、主拡開刃22の突出部22bの突出方向先端部には、径方向外縁部において周方向に延びる刃先22dが設けられている。
図9に示すように、刃先22dは、パイプPの内径よりも小さな仮想の円を4等分したうちの1つの円弧を描くように延びている。
【0041】
主拡開刃22の被案内部22aは、非拡開状態で隣り合う別の主拡開刃22の被案内部22aの側面と接触するようになっている。この非拡開状態では、4つの主拡開刃22,22,…の刃先22d,22d,…が周方向に連続しており、このとき、1つの刃先22dの形状が上記したように円を4等分した形状であるため、4つの刃先22d,22d,…によって1つの円が形成されることになる。詳細は後述するが、4つの刃先22d,22d,…は非拡開状態でパイプPの切断予定部分P1に挿入可能な外径を構成する。
【0042】
一方、4つの主拡開刃22,22,…が拡開状態になると、
図15に示すように隣り合う主拡開刃22,22の側面の間に隙間が形成されるとともに、4つの刃先22d,22d,…の間にも隙間が形成されることになる。詳細は後述するが、4つの刃先22d,22d,…は、拡開状態でパイプPの切断予定部分P1を切断可能となるまで拡開する。
【0043】
4つの補助拡開刃23,23,…は、上記した拡開状態における4つの主拡開刃22,22,…の刃先22d,22d,…の隙間を埋めるためのものであり、主拡開刃22,22,…と同様に、
図14や
図15に示すように拡開した状態(拡開状態)と、
図8や
図9に示すように拡開していない状態(非拡開状態)とに切り替えられるようになっている。
【0044】
4つの補助拡開刃23,23,…は、互いに同じ構造であるため、1つの補助拡開刃23について説明する。
図4に示すように、補助拡開刃23は、芯棒材21の径方向に延びるとともに、保持枠24によって径方向に案内される被案内部23aと、被案内部23aの径方向内端部からパイプPへの挿入方向に突出する突出部23bとを備えている。
図9に示すように、被案内部23aの外周面には、主拡開刃22の当接面22fに当接する当接面23f,23fが形成されている。当接面23f,23fは、芯棒材21の中心を通る断面で対称形状を有し、かつ各面23f,23fはその面中心部で円周接線方向と傾斜を持ち、補助拡開刃23が拡開すると主拡開刃22に対し外周方向へ相対変位するよう構成される。当接面23f,23fは、被案内部23aの周方向中心部に近づくほど径方向外方に位置するように傾斜した傾斜面で構成されている。一方の当接面23fは、1つの主拡開刃22に当接し、他方の当接面23fは、一方の当接面23fが当接している主拡開刃22に隣接する別の主拡開刃22に当接するようになっている。
【0045】
被案内部23aの突出部23bとは反対側の面には、案内溝23eが形成されている。案内溝23eは、芯棒材21の径方向に延びている。
【0046】
また、
図4に示すように、補助拡開刃23の突出部23bの突出方向先端部には、径方向外縁部において周方向に延びる刃先23dが形成されている。
図15に示すように、刃先23dは、拡開状態の主拡開刃22,22,…の刃先22d,22d,…の隙間に入り込むことで該隙間を埋めて刃先22d,22d,…と連続して1つの略環状に連なった刃を形成するためのものである。
【0047】
主拡開刃22の刃先22d及び補助拡開刃23の刃先23dは、パイプPの切断時においてクランプ装置10の下側切断刃11b及び上側切断刃12bに対応する部位に配置されるようになっている。対応する部位とは、主拡開刃22の刃先22d及び補助拡開刃23の刃先23dと、下側切断刃11b及び上側切断刃12bとによって、パイプPの切断予定部分P1とP1以外の部分P2以外の部分との境界部に対して切断可能な剪断力を与えることができる位置のことである。
【0048】
図4に示すように、補助拡開刃23の径方向内面は、芯棒材21の角錐部21aの外面に当接した状態で摺動する摺動面23kとされている。
【0049】
図4〜
図6に示すように、各主拡開刃22の被案内部22a及び各補助拡開刃23の被案内部23aは、保持枠24内に収容され、さらに、芯棒材21は保持枠24内に挿入される。すなわち、保持枠24は、突出部22b,23bを囲む環状部材24aと、フロントプレート24bと、バックプレート24cと、円筒部材24dとを備えている。環状部材24aは、芯棒材21と同心上に配置される。環状部材24aの内部には、各補助拡開刃23を径方向内方へ付勢するためのスプリング24eが設けられている。
【0050】
フロントプレート24bは、環状部材24aにおける芯棒材21の挿入方向先端側に取り付けられるものであり、中心部には貫通孔24fが形成されている。各主拡開刃22の突出部22b及び各補助拡開刃23の突出部23bは、貫通孔24fから保持枠24の外方へ突出している。また、芯棒材21の角錐部21aも貫通孔24f内を挿通して保持枠24の外方へ突出可能になっている。
【0051】
バックプレート24cは、環状部材24aにおけるフロントプレート24bと反対側に取り付けられるものである。このバックプレート24cと上記フロントプレート24bとによって各主拡開刃22の被案内部22a及び各補助拡開刃23の被案内部23aは挟まれて芯棒材21の軸方向には移動しないようになっている。バックプレート24cには、各主拡開刃22の案内溝22eに挿入される第1案内レール24g(
図7に示す)と、各補助拡開刃23の案内溝23eに挿入される第2案内レール24h(
図4に示す)とが固定されている。バックプレート24cを仮想線で示した
図6にあるように、第1案内レール24g及び第2案内レール24hは放射状に延びている。第1案内レール24g及び第2案内レール24hにより、各主拡開刃22及び各補助拡開刃23が芯棒材21の径方向に案内されることになる。
【0052】
円筒部材24dはバックプレート24cに取り付けられており、芯棒材21の軸方向に延びている。円筒部材24dによって芯棒材21が軸方向に案内されるようになっている。
【0053】
また、
図5に示すように、保持枠24のフロントプレート24bの外面には、パイプPの切断予定部分P1を切断した後、その切断された部分(
図16、
図17に符号P3で示す)を拡開刃22,33から払い出すための払い出し具29が取り付けられている。払い出し具29は、コイルスプリング等からなる弾性部材29aと、払い出しプレート29bとを備えている。
【0054】
弾性部材29aの基端部はフロントプレート24bの外面に固定されている。弾性部材29aの先端部は、フロントプレート24bの貫通孔24f内へ向けて突出している。この弾性部材29aの先端部に払い出しプレート29bが取り付けられている。払い出しプレート29bは、
図4に示すようにパイプPの切断予定部分P1の端部に当接するように配置されている。詳細は後述するが、払い出しプレート29bがパイプPの切断後、切断された部分P3を弾性部材29aの弾性力によって除去することができるようになっている。
【0055】
次に、上記のように構成されたパイプ切断装置1を使用してパイプPの切断予定部分P1を切断する要領について説明する。尚、拡開刃ユニット20は、クランプ装置10から水平方向に離しておき、拡開刃ユニット20の主拡開刃22、補助拡開刃23及び芯棒材21が、クランプ作業中のパイプPと干渉しないように配置しておく。また、
図5、
図8、
図9に示すように、拡開刃ユニット20においては、芯棒材21を反挿入側に移動させ、主拡開刃22及び補助拡開刃23を非拡開状態としておく。
【0056】
まず、クランプ装置10を作動させてパイプPをクランプする。すなわち、
図3の左側に示すようにシリンダ装置13を作動させて上側クランプ部材12を上昇させる。そして、パイプPを下側クランプ部材11の凹面11aに載置し、シリンダ装置13を作動させて上側クランプ部材12を下降させ、パイプPを下側クランプ部材11の凹面11aと上側クランプ部材12の凹面12aとで挟持する(
図4に示す状態)。このクランプ状態では、上側切断刃12b及び下側切断刃11bが、パイプPの外面における切断予定部分P1とそれ以外の部分P2との境界部に対応するように配置される。
【0057】
その後、拡開刃ユニット20をクランプ装置10に接近させていき、主拡開刃22の刃先22d及び補助拡開刃23の刃先23dをパイプPに挿入する。このとき、払い出し具29の払い出しプレート29bがパイプPの切断予定部分P1の端部に当接して芯棒材21の基端側に押され、弾性部材29aの変形によって芯棒材21の基端側に変位した状態となる。つまり、払い出しプレート29bが切断予定部分P1の端部を払い出し方向(
図4の左側)に常時付勢した状態となる。
【0058】
しかる後、
図10に示すように、駆動装置60を作動させて芯棒材21をパイプPへの挿入方向に移動させる。すると、芯棒材21の角錐部21aの外面に、補助拡開刃23の摺動面23kが当接しているので、芯棒材21の挿入に伴って補助拡開刃23の摺動面23kを径方向外方へ押し、補助拡開刃23が第2案内レール24hによって案内されながら、スプリング24eの付勢力に抗して径方向外方へ拡開していく。一方、補助拡開刃23の当接面23fと主拡開刃22の当接面22fとが当接しているので、補助拡開刃23の拡開と同時に主拡開刃22の当接面22fには、径方向外方への力が作用することになる。これにより、主拡開刃22が第1案内レール24gによって案内されながら、弾性バンド26の付勢力に抗して径方向外方へ拡開していく。すなわち、芯棒材21を挿入すると、補助拡開刃23及び主拡開刃22が略同時に拡開し始める。
【0059】
主拡開刃22が拡開すると、主拡開刃22の刃先22dはパイプPの切断予定部分P1内面に接近していき、さらに隣り合う主拡開刃22,22の刃先22d,22dの間に隙間が形成され、その隙間は徐々に拡大していく。この隙間の拡大と同時に、補助拡開刃23が拡開しているので、補助拡開刃23の刃先23dが隣り合う主拡開刃22,22の刃先22d,22dの間に入り込んでいき、隙間を埋めるように作用する(
図15参照)。
【0060】
そして、主拡開刃22,22の刃先22d,22dがパイプPの切断予定部分P1内面に接触するタイミング(
図13に示す)で、補助拡開刃23の刃先23dが主拡開刃22,22の刃先22d,22dの間を埋めて、主拡開刃22の刃先22dと、補助拡開刃23の刃先23dとが環状に略連なった状態となる。
【0061】
主拡開刃22の刃先22dの曲率は、非拡開状態のときにパイプPの内径よりも小さい円を形成する曲率としているので、拡開状態では、当該刃先22dの周方向中央部が他の部位よりも先にパイプPの内面に接触することになる。よって、芯棒材21を更に挿入していくと、主拡開刃22の刃先22dの周方向中央部が他の部位よりも先にパイプPに剪断力を与え、その後、徐々にパイプPの全周に剪断力が与えられることになる。このように、パイプPの周方向の一部から剪断していくようにしているので、パイプPの切断に要する力を少なくしながらスムーズに行うことができる。
【0062】
そして、パイプPの全周に剪断力を与えることができるので、従来のように一部にかえりが発生したり、切り残しが発生することはない。
【0063】
図16に示すように、パイプPの切断された部分P3は、主拡開刃22及び補助拡開刃23によって一旦保持され、その後、拡開刃ユニット20をクランプ装置10から離すと、
図17に示すように、払い出し具29の払い出しプレート29bによって主拡開刃22及び補助拡開刃23の先端から払い出される。
【0064】
また、このパイプ切断装置1では、径の異なるパイプPを切断する場合には、拡開刃ユニット20を別の拡開刃ユニット(図示せず)と交換する。交換時には、駆動装置60の係合部60bを拡開刃ユニット20の接続部21cから離脱させて拡開刃ユニット20を装置本体から取り出せばよいので、作業性は良好である。これに合わせてクランプ装置10のクランプ部材11,12も交換する。
【0065】
以上説明したように、この実施形態に係るパイプ切断装置1によれば、主拡開刃22の間に形成される隙間を埋める補助拡開刃23を備えているので、2度切りをしなくても、切断後のパイプPの端部にかえりや切り残しが発生しないようにすることができる。
【0066】
また、芯棒材21が補助拡開刃23に当接し、主拡開刃22が補助拡開刃23に当接するようにしたので、非拡開状態でコンパクトにまとめてシンプルな構成にすることができる。さらに、芯棒材21による拡開力を補助拡開刃23、主拡開刃22に確実に伝達して円滑な動作を実現できる。
【0067】
また、芯棒材21と、芯棒材21を駆動する駆動装置60とが接続部21cを介して着脱可能に接続されているので、パイプPの径が変更になった場合に、芯棒材21及び拡開刃22,23を容易に、かつ、迅速に交換することができるので、段取り換え時間を短縮できる。
【0068】
また、主拡開刃22の刃先22dが拡開状態にあるときに、補助拡開刃23と連続した状態で補助拡開刃23よりも径方向外方に位置する湾曲形状をなすように該刃先22dの曲率をしているので、パイプPに対して周方向の一部分に早いタイミングで剪断力を与えて徐々に切断することができる。よって、切断をスムーズに行うことができる。
【0069】
また、パイプPの切断完了時、切断された部分P3は、外周が延ばされた状態で円環状を保持している場合と、軸方向の長さが短い外周部分で破断している場合とがある。一定部位で意識的に破断させかつその破断に要する動力を節減するために、主拡開刃22または補助拡開刃23の外周に、切断された部分P3の周方向の一部を切断するためのスクラップカッターを設けることも可能である。
【0070】
例えば、
図18に変形例として示すように、補助拡開刃23の外周にスクラップカッター28を設ければ、補助拡開刃23の拡開動作完了直前に、スクラップカッター28が、スクラップとなる部分、即ち、
図16において符号P3で示す部分にその内面から当接してスクラップとなる部分の外周の一定部位を所定のタイミングで切断する。補助拡開刃23はパイプPに拡開刃ユニット20を挿入する時点では非拡開状態となっているため、スクラップカッター28が拡開刃ユニット20の挿入を妨げることは無い。また、スクラップカッター28は、一定の高さで設けることも可能だが、
図18に示すように補助拡開刃23の刃先方向に向かって低くなるよう高さを設定すれば、刃先23dの機能を損なうことなく設定可能である。スクラップとなる部分の先端部にスクラップカッター28によって切れ目が入れば、その後、主拡開刃22及び補助拡開刃23の拡開動作との相互作用によりスクラップの外周が難なく切断される。
【0071】
尚、この実施形態では、屈曲しているパイプPを切断する場合について説明したが、これに限らず、真っ直ぐなパイプを切断することもできる。この場合は、クランプ装置10のクランプ部材11,12の形状を変更すればよい。
【0072】
また、主拡開刃22及び補助拡開刃23の数は、4つに限られるものではなく、任意の数に設定することができる。
【0073】
また、パイプPの断面形状についても円形に限らず、楕円、長円、矩形についても適用可能である。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。