特許第6041652号(P6041652)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6041652キャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041652
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】キャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 53/04 20060101AFI20161206BHJP
   B65D 85/72 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B65D53/04 A
   B65D85/72 F
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-270020(P2012-270020)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-114054(P2014-114054A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】ユニバーサル製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】花房 達也
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−032263(JP,A)
【文献】 特開2002−264155(JP,A)
【文献】 特開昭54−148687(JP,A)
【文献】 特許第4514119(JP,B2)
【文献】 特開2011−016570(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0006532(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0067842(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 53/04
B65D 85/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部を封じるキャップ本体の内部に設けられるキャップ用ライナーであって、
炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料で少なくとも一部が形成され
第1層と、
該第1層に積層され前記容器本体内に露出する第2層とを少なくとも備えた複数層で構成され、
前記第1層が、炭酸カルシウムを少なくとも含有した材料で形成され、
前記第2層が、炭酸カルシウムを含有しない材料でかつ前記第1層よりもガス透過性の高い材料で形成されていることを特徴とするキャップ用ライナー。
【請求項2】
請求項に記載のキャップ用ライナーにおいて、
前記第2層が、酸化亜鉛を含む材料で形成されていることを特徴とするキャップ用ライナー。
【請求項3】
請求項に記載のキャップ用ライナーにおいて、
前記第2層の酸化亜鉛の添加量が、1〜15質量%であることを特徴とするキャップ用ライナー。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のキャップ用ライナーにおいて、
前記容器本体が、ワイン液を収納するものであることを特徴とするキャップ用ライナー。
【請求項5】
容器本体の口部を封じるライナー付きキャップであって、
天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、
前記天板部の内面に設けられたライナーとを備え、
該ライナーが、請求項1からのいずれか一項に記載のキャップ用ライナーであることを特徴とするライナー付きキャップ。
【請求項6】
容器本体の口部にキャップを装着したキャップ付き容器であって、
前記キャップが、請求項のライナー付きキャップであることを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項7】
請求項に記載のキャップ付き容器において、
前記容器本体がワイン液を収納するものであって、アルミニウム合金で形成されていることを特徴とするキャップ付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワインを収納する容器に使用することが好適なキャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワインは、一般的に瓶詰めされており、その栓としてコルク栓が多く使用されている。この瓶詰めワインは、横倒しされて保管されることが推奨されてきた。この理由は、コルクに微細な穴が開いており、コルクを通して酸素がワインを酸化させ、味の劣化につながることを防ぐためである。すなわち、瓶詰めワインは、横倒し保管してコルクを常に濡れて膨潤させることにより、密栓させて酸化を防いでいる。
なお、ワインの愛飲家の中には、コルク栓抜きでコルクを抜くことを一つの楽しみとしている人もある。すなわち、コルク栓で密封されたワインは、開栓すると同時に臭いが立ち込めるが、広口のボトル缶に比べると僅かであり、それを補うために抜いたコルクを嗅ぐということがよく行われている。
【0003】
近年、コルクの生産の不安定化や価格の高騰により、ワイン用の容器の栓がコルクからアルミニウム製のPP(ピルファープルーフ)キャップが使用されてきている。使用されるPPキャップはコルク栓からの転換であるために比較的小口径のものが多い。
しかし、最近では広口のキャップを使用した容器、例えば大口径の容器(例えば38mm口径のボトル缶等)にワインを充填、販売されているものがある。これらの多くはコルク栓使用のガラス瓶と異なり、グラスに注がずに容器から直接、喫飲する場合が多い。すなわち、大口径の容器では、開栓すると同時にワインの香りが立ち込めて愛飲家の嗜好を刺激する、あるいは愛飲家が開栓したボトル缶のヘッドスペース部の臭いを直接嗅ぐことが行われる。
【0004】
この場合、ワインの香りを嗅ごうとすると、ヘッドスペース中に含まれる亜硫酸ガス,硫化水素の臭いも嗅ぐことになる。すなわち、金属缶を使用してワインを詰めた場合、硫化水素臭、亜硫酸ガス臭がするという問題がしばしば発生し、消費者に不快な感じを与えることがある。これはワインに添加されている亜硫酸がヘッドスペース部に残ったり、亜硫酸が金属(例えばアルミ缶のアルミニウム)と反応して硫化水素を発生させるためと考えられる。また、一部にはワイン原料由来の硫化水素もある。
【0005】
亜硫酸とアルミニウムとの反応は、一般に以下の通りの反応式とされる。
2Al+SO+6H→2Al3++HS↑+2H
ここで発生する硫化水素がワインのフレーバーに悪影響を与える。この原因物質である亜硫酸はワインの酸化劣化を防ぐために添加される必須成分である。これは一般にピロ亜硫酸塩の形で添加される。この亜硫酸はワインの原料であるブドウ果汁の酸化を防ぎ、ブドウに付着している腐敗菌などの有害微生物の繁殖を防ぎ、発酵段階で出てくる不快臭のあるアルデヒドを除き、ワイン自体の酸化を防ぐ働きがあるので必要成分であるが、ガス状態で大量に吸い込むと呼吸器系等に有害であり、日本ではワインへの添加量は350ppm以下に規制されている。
【0006】
この亜硫酸は前述のようにワインにとっては必須成分であるが、金属に対しても反応し、硫化水素を発生してワインの官能を著しく低下させることがある。特に安全性を考慮してワイン製造業者が亜硫酸を限度一杯あるいは、余分に添加した場合、異臭問題が発生する。
したがって、金属缶を使用してワインを詰めた場合、グラスに注がれたワインの香りを嗅ぐ場合に比べ、開栓時に、亜硫酸ガス,硫化水素の臭いがあることによる不快感を免れることはできない。
【0007】
従来、亜硫酸ガス臭を防ぐ方法として、塗料に亜硫酸吸収材を添加するという技術が、例えば特許文献1,2に提案されている。これらは、塗料、又はPET(ポリエステル)フィルムと金属板との接着材に、亜硫酸の吸収材として炭酸カルシウムを添加したものを使用することによって、ワイン中の亜硫酸を吸着する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−16570号公報
【特許文献2】特許第4514119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
特許文献1に記載の技術の場合、ワイン缶用塗料に炭酸カルシウムを添加して亜硫酸を吸着させているが、金属缶の内面に塗布されるために、炭酸カルシウムがワインへ溶出してしまう問題があった。また、特許文献2の技術では、缶内面のPETフィルムを接着するための接着剤に炭酸カルシウムを添加しているが、この方法では炭酸カルシウムのワインへの溶出は避けられるが、缶内面をバリア性の高いPETフィルムで覆っている形であるので、炭酸カルシウムが余分の亜硫酸を吸着する能力が著しく縮減されてしまう。さらに、これら従来の技術は、缶内面に炭酸カルシウムを塗料又は接着剤として塗布するため、ワイン液中の亜硫酸の一部を吸着することはできるが、ヘッドスペース内にガスとして含まれる亜硫酸や硫化水素を除去する効果があまり得られないという不都合があった。したがって、金属板を使用して広口のボトル缶に成型し、ワインを充填した場合など、ヘッドスペース内の亜硫酸ガス臭、硫化水素臭を除去することが困難であった。
【0010】
本発明は、ワイン液等を入れたアルミ缶のような容器において直接喫飲する場合でも、ほとんど亜硫酸ガス臭、硫化水素臭を感じさせないで内容物本来の味を味わうことを可能にするキャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のキャップ用ライナーは、容器本体の口部を封じるキャップ本体の内部に設けられるキャップ用ライナーであって、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料で少なくとも一部が形成されていることを特徴とする。
このキャップ用ライナーでは、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料で少なくとも一部が形成されているので、このライナーを付けたキャップを使用すれば、炭酸カルシウムが亜硫酸を吸着し、酸化亜鉛が硫化水素を吸着することで、ヘッドスペース部の残余の亜硫酸及び硫化水素のうち少なくとも一方を除去することが可能である。また、ワイン液等の内容物が常に接触している缶内面ではなく、キャップ内のライナーに炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方が含有されているので、内容物に炭酸カルシウムや酸化亜鉛が溶出し難い。
【0012】
第2の発明に係るキャップ用ライナーは、第1の発明において、第1層と、該第1層に積層され前記容器本体内に露出する第2層とを少なくとも備えた複数層で構成され、前記第1層が、炭酸カルシウムを少なくとも含有した材料で形成され、前記第2層が、炭酸カルシウムを含有しない材料でかつ前記第1層よりもガス透過性の高い材料で形成されていることを特徴とする。
第2層にも炭酸カルシウムが含有されていると、ワイン液が接触した際にワイン液に含まれるクエン酸等の酸によって炭酸カルシウムが溶け出すおそれがある。
しかしながら、このキャップ用ライナーでは、第1層が、炭酸カルシウムを少なくとも含有した材料で形成され、第2層が、炭酸カルシウムを含有しない材料でかつ第1層よりもガス透過性の高い材料で形成されているので、第1層が第2層に被覆されて容器本体内の内容物(ワイン液等)に直接触れることがないため、炭酸カルシウムが内容物に溶出することを防止でき、第1層よりもガス透過性の高い第2層をヘッドスペース内の亜硫酸及び硫化水素が透過することで、第1層の炭酸カルシウムで吸着することができる。
【0013】
第3の発明に係るキャップ用ライナーは、第2の発明において、前記第2層が、酸化亜鉛を含む材料で形成されていることを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーでは、第2層が、酸化亜鉛を含む材料で形成されているので、ワイン液等の内容物に直接接触する第2層の酸化亜鉛により、ヘッドスペース内に発生した硫化水素を効果的に吸着することが可能になる。
【0014】
第4の発明に係るキャップ用ライナーは、第3の発明において、前記第2層の酸化亜鉛の添加量が、1〜15質量%であることを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーでは、第2層の酸化亜鉛の添加量が、1〜15質量%であるので、十分な硫化水素の吸収能が得られると共に内容物への溶出を防ぐことができる。なお、第2層の酸化亜鉛の添加量が、1質量%未満であると、十分な硫化水素の吸収能が得られないと共に、15質量%を超えると、密封性が低くなってしまうと共に内容物に酸化亜鉛が溶出し易くなってしまう。
【0015】
第5の発明に係るキャップ用ライナーは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記容器本体が、ワイン液を収納するものであることを特徴とする。
すなわち、このキャップ用ライナーでは、容器本体がワイン液を収納するものであるので、ヘッドスペース内の亜硫酸及び硫化水素が除去されて、開栓時に良好なフレーバーを得ることができる。
【0016】
第6の発明に係るライナー付きキャップは、容器本体の口部を封じるライナー付きキャップであって、天板部と該天板部の周縁から垂下した筒状周壁部とからなるキャップ本体と、前記天板部の内面に設けられたライナーとを備え、該ライナーが、上記発明のキャップ用ライナーであることを特徴とする。
【0017】
第7の発明に係るキャップ付き容器は、容器本体の口部にキャップを装着したキャップ付き容器であって、前記キャップが、上記発明のライナー付きキャップであることを特徴とする。
【0018】
第8の発明に係るキャップ付き容器は、第7の発明において、前記容器本体がワイン液を収納するものであって、アルミニウム合金で形成されていることを特徴とする。
すなわち、このキャップ付き容器では、容器本体がワイン液を収納するものであって、アルミニウム合金で形成されているので、開栓時に亜硫酸ガス臭や硫化水素臭がしないワイン用のアルミ缶が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るキャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器によれば、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料で少なくとも一部が形成されているので、炭酸カルシウムや酸化亜鉛の溶出がほとんどなく、ヘッドスペース部の残余の亜硫酸及び硫化水素のうち少なくとも一方を除去することが可能である。
したがって、本発明のライナーによりヘッドスペース内の亜硫酸及び硫化水素を吸収して除去することができ、ワイン液を入れた容器本体に使用する場合、ヘッドスペース内にワイン本来の香りを濃縮できるので、開栓時に優れた官能性を有し、フレーバーの良好な高級感のあるワインを得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るキャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器の一実施形態において、ライナーを示す断面図である。
図2】本実施形態において、キャップを示す一部を破断した側面図である。
図3】本実施形態において、キャップ付き容器を示す要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るキャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器の一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態のキャップ用ライナー1は、図1から図3に示すように、例えばアルミニウム製ボトル缶(アルミ缶)用であって容器本体2の口部2aを封じるキャップ本体3の内部に設けられるキャップ用ライナーであって、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料で少なくとも一部が形成されている。
【0023】
このキャップ用ライナー1は、第1層4と、該第1層4に積層され容器本体2内に露出する第2層5とを少なくとも備えた複数層で構成され、第1層4が、炭酸カルシウムを少なくとも含有した材料で形成され、第2層5が、炭酸カルシウムを含有しない材料でかつ第1層4よりもガス透過性の高い材料で形成されている。なお、本実施形態のライナー1は、第1層4と第2層5との二層構造とされている。
また、上記第2層5は、酸化亜鉛を含む材料で形成されていることが好ましく、その際、第2層5の酸化亜鉛の添加量は、1〜15質量%に設定される。
【0024】
また、本実施形態のライナー付きキャップ6は、容器本体2の口部2aを封じるライナー付きキャップであって、天板部7と該天板部7の周縁から垂下した筒状周壁部8とからなるキャップ本体3と、天板部7の内面に設けられた上記ライナー1とを備えている。
さらに、本実施形態のキャップ付き容器10は、容器本体2の口部2aに上記ライナー付きキャップ6を装着したキャップ付きボトルであり、図3に示すように、上記ライナー付きキャップ6を容器本体2の口部2aに巻き締められている。
【0025】
上記容器本体2は、ワイン液を収納するものであって、アルミニウム合金で形成されている。
また、キャップ本体3は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金の板材から加工されたものである。
【0026】
上記ライナー1の第1層4は、天板部7の内面に接して配された摺動層として機能し、第2層5は、摺動層である第1層4よりも柔軟な密封層として機能する。すなわち、第1層4は、機能層であり、第2層5は被覆層となる。
上記第1層4の主材料は、例えばPP(ポリプロピレン)樹脂、HDPE(高密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)等が採用可能である。また、第1層4として、多層シート(例えばPP樹脂/EVOH樹脂(エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂)/PP樹脂)を採用しても構わない。なお、多層シートを採用する場合、少なくとも第2層5に接する層に炭酸カルシウムを含有することが好ましい。
【0027】
また、上記第2層5の主材料は、第1層4よりも柔軟な合成樹脂層又はエラストマー層であって、LDPE(低密度ポリエチレン)とEPR(エチレン・プロピレンゴム)とのブレンド樹脂、TPO(ポリオレフイン系エラストマー(低密度ポリエチレンとエチレン・プロピレン共重合体をブレンドしたもの)、TPS(スチレン系エラストマー(LDPEとスチレン・エチレン・プチレン・スチレン共重合体のブレンドしたもの)等が採用される。なお、第2層5の主材料は、スチレン系エラストマーで形成することが好ましく、第1層4よりも硬度の低い柔らかい材料で形成することが望ましい。
この第2層5は、第1層4よりもガス透過性に優れた材料で形成されるが、例えば酸素透過速度が100ml/m・24hr・atm以上であることが好ましい。
【0028】
なお、第1層4の炭酸カルシウムの含有量は、5〜30質量%の範囲内に設定することが好ましい。なお、機能材となる炭酸カルシウムの濃度が5質量%未満と少ないと十分な吸収能力が得られず、30質量%を超えて多すぎると機能層としての樹脂物性が大きく変わり、ライナーとしての物性が損なわれると共に、生産コストが上がることやシートとしての生産性が難しくなる。
【0029】
また、第1層4の厚さは、0.1〜1.0mmとすることが好ましく、0.2〜0.8mmとすることがより好ましい。なお、最適範囲は、0.3mm〜0.7mmである。
さらに、第1層4の硬度は、ショアD硬度で50以上であることが好ましい。
また、第2層5の酸化亜鉛の含有量は、1〜15質量%の範囲内に設定することが好ましい。すなわち、酸化亜鉛の含有量が1質量%未満であると硫化水素の吸収能が十分でなく、15質量%を超えるとその効果はほぼ平衡状態にあるので、これ以上の添加は無用である。
【0030】
また、第2層5の厚さは、0.01〜1.0mmとすることが好ましい。すなわち、第2層5が0.01mmより薄いと、積層された第2層5にピンホールができ、そこから炭酸カルシウムが溶出するおそれがある。また、第2層5が、1.0mmを超えて厚すぎると、亜硫酸や硫化水素の透過が悪くなり、保存期間にもよるがヘッドスペース部に有る亜硫酸や硫化水素を吸収が不十分になり、消費者に不快な臭いを感じさせることになる場合がある。
さらに、第2層5の硬度は、ショアD硬度で40以下であることが好ましい。なお、使用する樹脂の硬度が高いとガス透過度が低くなる場合が一般的であり、ヘッドスペース部の亜硫酸や発生した硫化水素を吸着、除去するのに時間がかかって、消費者に不快な臭いを感じさせるおそれがある。
【0031】
このように本実施形態のキャップ用ライナー1では、炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方を含有した材料で少なくとも一部が形成されているので、このライナー付きキャップ6を使用すれば、炭酸カルシウムが亜硫酸を吸着し、酸化亜鉛が硫化水素を吸着することで、ヘッドスペース部の残余の亜硫酸及び硫化水素のうち少なくとも一方を除去することが可能である。また、ワイン液等の内容物が常に接触している缶内面ではなく、ライナー付きキャップ6内のライナー1に炭酸カルシウム及び酸化亜鉛の少なくとも一方が含有されているので、内容物に炭酸カルシウムや酸化亜鉛が溶出し難い。
【0032】
また、第1層4が、炭酸カルシウムを少なくとも含有した材料で形成され、第2層5が、炭酸カルシウムを含有しない材料でかつ第1層4よりもガス透過性の高い材料で形成されているので、第1層4が第2層5に被覆されて容器本体2内の内容物(ワイン液等)に直接触れることがないため、炭酸カルシウムが内容物に溶出することを防止でき、第1層4よりもガス透過性の高い第2層5をヘッドスペース内の亜硫酸及び硫化水素が透過することで、第1層4の炭酸カルシウムで吸着することができる。
【0033】
また、第2層5が、酸化亜鉛を含む材料で形成されているので、ワイン液等の内容物に直接接触する第2層5の酸化亜鉛により、ヘッドスペース内に発生した硫化水素を効果的に吸着することが可能になる。
さらに、第2層5の酸化亜鉛の添加量が、1〜15質量%であるので、十分な硫化水素の吸収能が得られると共に内容物への溶出を防ぐことができる。
【0034】
したがって、容器本体2にワイン液を収納した場合、ヘッドスペース内の亜硫酸及び硫化水素が除去されて、開栓時に良好なフレーバーを得ることができる。
そして、本実施形態のキャップ付き容器10では、アルミニウム合金で形成されているので、開栓時に亜硫酸ガス臭や硫化水素臭がしないワイン用のアルミ缶が得られる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明に係るキャップ用ライナー及びライナー付きキャップ並びにキャップ付き容器を、実施例により評価した結果を、具体的に説明する。
本発明の実施例として、上記本実施形態のライナー付きキャップを次のようにして作製した。
【0036】
まず、ライナー材として、第1層(機能層)をショアD硬度80の共重合PP樹脂層(厚さ0.6mm)とし、第2層(被覆層)をショアD硬度30のLDPEとEPRとのブレンドの樹脂(厚さ0.4mm)とし、これらを貼合したシートを製作し、呼び径38mmのキャップのライナーとしてディスク状に打ち抜いた。このライナーを、第1層がキャップ内面に接するようにしてキャップに挿入した。なお、本発明の実施例として、第1層及び第2層の炭酸カルシウム又は酸化亜鉛の添加量を変えて複数を作製した。各層の添加量については、表1〜表7に示す。なお、表中において、第1層を機能層とし、第2層を被覆層として記載している。また、表中における数値は「質量%」である。
【0037】
次に、このライナー付きキャップをボトル缶(300ml入り、内面酒用のビニルオルガノゾル塗料を被覆したもの)にワイン疑似液(20%アルコールの酒石酸緩衝液に亜硫酸換算で350ppmのメタカリを添加したもの)を300ml充填した。これに液体窒素を滴下し、本発明の実施例であるライナー付きキャップで施栓した。このときの缶内圧はほぼl00KPaに設定した。
【0038】
このようにしたボトル缶を60℃で10分間加熱した後、密封性、開栓性、溶出性、開栓性について評価した。開栓性、官能性は、ボトル缶を正立で5℃、37℃で6カ月放置した後、開栓し官能評価を行った。
【0039】
各評価項目については、以下のように試験を実施した。
1)密封性
施栓した各充填品の内圧を測定した後、40℃の恒温器に1ヶ月間、放置し、放置前後の缶内圧を測定し、漏れの有無を確認した。内圧の差が10KPa以内のものを「◎」、10Kpaより大きく30KPa未満のものを「○」、30Kpa以上50KPa未満のものを「△」、50KPa以上のものを「×」とした。なお、各評価項目において、「◎」は良好、「○」はほぼ良好、「△」はやや劣るが使用可能、「×」は不良と判断している。
【0040】
2)開栓性
各温度で放置した充填品を6カ月後に開栓し、その開栓トルク値を測定した。
50N・cmより大きく120N・cm未満の値のものを「◎」、120N・cm以上180N・cm未満及び50N・cm以下のものを「○」、180N・cm以上240N・cm未満のものを「△」、240N・cm以上のものを「×」とした。
【0041】
3)溶出性
ワイン疑似液を充填したボトル缶に各ライナーを使用したキャップで施栓した後、60℃中に倒立で60分放置後、その液を蒸発乾固し、その残渣の重量を測定した。
その蒸発残留物の量が10ppm以下を「◎」、10ppmより大きく30ppm未満を「○」、30ppm以上50ppm未満を「△」、50ppm以上を「×」とした。
【0042】
4)官能性
ワイン液を充填したボトル缶に、各ライナーを使用したキャップで施栓した後、37℃で3カ月正立保管したものについて、内面傷をつけないで5℃保管したものを、コントロールとして2点識別法で各ライナーの評価を行った。なお、5%危険率で差が無いものを「◎」、5%危険率で差が有るが1%危険率で差のないものを「△」、1%危険率で差のあるものを「×」とした。
各項目について評価した結果を以下の表に示す。なお、本発明の比較例として、第1層及び第2層のどちらにも炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を添加していないものも同様に作製し、同様に評価した。
【0043】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0044】
これらの結果からわかるように、第1層(機能層)及び第2層(被覆層)のどちらにも炭酸カルシウム及び酸化亜鉛を添加していない比較例では、官能性評価が不良であったのに対し、本発明の実施例はいずれも官能性評価において良好又は使用可能であった。なお、第1層(機能層)に炭酸カルシウムを5質量%以下の少量しか添加していない実施例1、49は、使用可能であるが、やや官能性が低下していた。なお、いずれの実施例においても、溶出性、密封性及び開栓性で不良となるものはなかった。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0046】
例えば、上記本実施形態では、本発明をアルミニウム製ボトル缶に適用したが、PETボトル等に採用しても構わない。また、キャップ本体も、金属製ではなく、ポリオレフィン樹脂又はポリスチレン樹脂等の樹脂成形されたものでも構わない。
また、上記本実施形態では、ワインを入れる容器及びこれに適用するライナーやキャップに適用したが、ワインと同様にヘッドスペース内にガスとして亜硫酸や硫化水素が生じる内容物を入れる容器及びこれに適用するライナーやキャップに採用してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…キャップ用ライナー、2…容器本体、2a…容器本体の口部、3…キャップ本体、4…第1層、5…第2層、6…ライナー付きキャップ、7…天板部、8…筒状周壁部、10…キャップ付き容器
図1
図2
図3