特許第6041663号(P6041663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本化薬株式会社の特許一覧

特許6041663フェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041663
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】フェノール樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物、およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20161206BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C08G61/02
   C08G59/06
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-279303(P2012-279303)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-122277(P2014-122277A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−183829(JP,A)
【文献】 特開平09−255758(JP,A)
【文献】 特開2013−112738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/02
C08G 59/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類、ナフトール類、および式(1)で表される化合物を縮合させて得られる式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、ナフトール類がα−ナフトールであり、フェノール類、ナフトール類のうちナフトール導入率が5〜35モル%であるフェノール樹脂。
【化1】
(式中、Xは塩素、水酸基、炭素数1〜 4 のアルコキシ基を表す。)
【化2】
(式中、nは繰り返し数で、1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【請求項2】
フェノール類、ナフトール類、および式(1)で表される化合物を縮合させて得られる式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、ナフトール類がβ−ナフトールであり、フェノール類、ナフトール類のうちナフトール導入率が5〜35モル%であるフェノール樹脂。
【化3】
(式中、Xは塩素、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
【化4】
(式中、nは繰り返し数で、1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【請求項3】
下記式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、ナフトール類がα−ナフトールおよびβ−ナフトールの混合物であり、フェノール類、ナフトール類のうちナフトール導入率が5〜35モル%であるフェノール樹脂。
【化5】
(式中、nは繰り返し数で、1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂に、エピハロヒドリンを反応させることにより得られる式(3)で表されるエポキシ樹脂。
【化5】
(式中、nは繰り返し数で1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【請求項5】
(a)エポキシ樹脂および(b)請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(a)請求項に記載のエポキシ樹脂および(b)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
(a)請求項に記載のエポキシ樹脂および(b)請求項1〜3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃性に優れたナフトール含有エポキシ樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。
【0003】
特にナフトール含有樹脂は、骨格の剛直性および疎水性から高耐熱、低吸水材料として期待されており、IC封止材料、積層材料、電気絶縁材料等などの電気・電子分野への応用が検討されてきた。
【0004】
一方で、電気・電子分野には、難燃性が要求されており、難燃性を達成するために、電気・電子部品用に使用されるエポキシ樹脂組成物にはハロゲン含有エポキシ樹脂やアンチモン系難燃剤が多用されてきたが、欧州諸国での規制強化の影響で、ハロゲン含有エポキシ樹脂やアンチモン系難燃剤の利用は制限され、ハロゲンを含有しない難燃性樹脂およびアンチモン系難燃剤を添加しない難燃性に優れた樹脂組成物の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3575776号
【特許文献2】特許第3992181号
【特許文献3】特許第4311597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電気・電子分野において機器の小型化、高性能化に伴い、用いられる樹脂に対しても、機械特性や耐熱性の向上のみならず、耐湿性、難燃性、電気絶縁性、低誘電性等の向上が益々強く求められるに至っており、エポキシ樹脂への要求が強くなっている。
【0007】
このような背景の中で有力な難燃性樹脂の候補として、特許文献1〜3でナフトール骨格とビフェニル骨格を含有するナフトール含有エポキシ樹脂が公開されているが、難燃性が十分では無く、またナフトール骨格の熱分解による難燃性の低下が見られ、電気・電子用部品への適用は限られている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のナフトール含有樹脂は高耐熱・低吸水であるナフトール骨格を含み、優れた難燃性を示すことから、本発明のフェノール樹脂、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物はIC封止材料、積層材料、電気絶縁材料等の電気・電子広範囲の用途に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、主骨格に特定の割合でナフトール骨格およびビフェニル骨格を導入することで、耐熱性・低吸水性を有しながら、優れた難燃性を示すナフトール含有エポキシ樹脂硬化物が得られることを見いだし、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)フェノール類、ナフトール類、および式(1)で表される化合物を縮合させて得られる式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、ナフトール類がα―ナフトールであり、フェノール類、ナフトール類のうちナフトール導入率が5〜40モル%であるフェノール樹脂。
【化1】
(上記式中、Xは塩素、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
【化2】
(式中、nは繰り返し数で、1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基等を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
(2)フェノール類、ナフトール類、および式(1)で表される化合物を縮合させて得られる式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、ナフトール類がβ―ナフトールであり、フェノール類、ナフトール類のうちナフトール導入率が5〜35モル%であるフェノール樹脂。

(式中、Xは塩素、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
(式中、nは繰り返し数で、1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基等を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
(3)(1)記載の式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、ナフトール類がα―ナフトールおよびβ―ナフトールの混合物であり、フェノール類、ナフトール類のうちナフトール導入率が5〜40モル%であるフェノール樹脂。
(4)(1)に記載の式(2)で表されるフェノール樹脂のうち、α−ナフトールの導入率が5〜25モル%、または、β−ナフトールが導入されているフェノール樹脂。
(5)(1)〜(3)のいずれか一項に記載の樹脂に、エピハロヒドリンを反応させることにより得られる式(3)で表されるエポキシ樹脂。
【化3】
(式中、nは繰り返し数で、1〜50の整数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基等を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
(6)(a)エポキシ樹脂および(b)(1)〜(3)のいずれか一項に記載の式(2)で表されるフェノール樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物。
(7)(a)(5)に記載の式(3)で表されるエポキシ樹脂および(b)硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
(8)(a)(5)に記載の式(3)で表されるエポキシ樹脂および(b)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のフェノール樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物。
(9)(6)〜(8)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
フェノール類とナフトール類の混合物、
に関する。
【0011】
本発明のフェノール樹脂は、下記式(2)
【化4】
(式中、nは繰り返し数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
で表される構造を有する。
本発明の上記式(2)で表されるフェノール樹脂において、nは通常1〜50であり、 1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。
また、Rとしては、水素原子または炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0012】
本発明のフェノール樹脂の水酸基当量としては、150〜500g/eqが好ましく、 180〜300g/eqがより好ましく、特に好ましくは200〜280g/eqである。
また重量平均分子量としては、500〜3000が好ましい。
【0013】
以下に本発明のフェノール樹脂の製造法の具体例を説明する。
本発明のフェノール樹脂は、フェノール類、ナフトール類、および式(1)で表される化合物を縮合させて得ることができる。
【0014】
本発明のフェノール樹脂の製造に用いうるフェノール類、ナフトール類としては各々下記式(4)、式(5)のものを使用することができる。
【化5】
(上記式中、Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
【化6】
(上記式中、Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
ここで、Rとしては、炭素数1〜10のアルキル基ないし水素原子のものが好適に使用できる。
【0015】
このような、フェノール類またはナフトール類の具体例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソブチルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、メチルブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール等の各種o−、m−、p−異性体、またはシクロペンチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、シクロヘキシルクレゾール等のシクロアルキルフェノール、またはフェニルフェノール等の置換フェノール、またはモノブロモフェノール、ジブロモフェノール等のハロゲン化フェノール等のフェノール類、またはα−ナフトール、β−ナフトール、メチルナフトール、エチルナフトール、モノブロムナフトール、ジブロムナフトール、アリルナフトール等のナフトール類が挙げられる。これらのフェノール類またはナフトール類は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合、フェノール類とナフトール類とからそれぞれ1種類以上を選択することが、優れた硬化物性を得る上で好ましい。より好ましくは、フェノールとα−ナフトールまたは/およびβ−ナフトールの混合物を使用することが好ましい。
【0016】
本発明のフェノール樹脂の製造には、下記式(1)
【化7】
(上記式中、Xは塩素原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。)
で表されるビフェニル化合物を使用する。
このようなビフェニル化合物の具体例としては、ビスメトキシメチルビフェニル、ビスクロロメチルビフェニル、ビスメチロールビフェニル等が挙げられる。
【0017】
フェノール類およびナフトール類の合計仕込み量は、式(1)で表される化合物1モルに対して通常0.3〜20モル、好ましくは0.4〜15モルである。フェノール類およびナフトール類の合計仕込み量が多すぎると、反応に関与しないフェノール類およびナフトール類が多くなり、廃棄物の観点からエネルギーの過剰利用となる可能性がある。フェノール類およびナフトール類の合計仕込み量が少なすぎると、分子量が大きくなり、ゲル化の恐れがある。
【0018】
フェノール類とナフトール類の使用割合はフェノール類とナフトール類との合計仕込み量のうち、ナフトール類が5〜95重量%の間で任意に選定できる。ナフトール類の割合が低すぎると、骨格中のナフトール導入率が低くなり、耐熱性および低吸水性が低下する可能性がある。一方で、ナフトール類の割合が高すぎると、骨格中のナフトール導入率が高くなり、難燃性が低下する恐れがある。また用いるナフトール類の種類により、好ましい使用割合が異なる。例えばナフトール類がα−ナフトールである場合、フェノール類、ナフトール類のうち、ナフトール類が5〜15重量%、ナフトール類がβ−ナフトールである場合、フェノール類、ナフトール類のうち、ナフトール類が5〜20重量%の範囲が好ましい。より好ましくは、ナフトール類がα−ナフトールである場合、フェノール類、ナフトール類のうち、ナフトール類が10〜15重量%、ナフトール類がβ−ナフトールである場合、フェノール類、ナフトール類のうち、ナフトール類が10〜20重量%の範囲が好ましい。なお、ナフトール類は難燃性を損なわない範囲で任意の割合でα−ナフトールとβ−ナフトールとを混合することができる。
【0019】
上記縮合反応において、必要により酸触媒を用いる。なお、式(1)の化合物の種類によっては、反応の際に酸が副生する場合があり、この場合は触媒の添加は必ずしも必要ない。酸触媒としては種々のものが使用できるが塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸等の無機あるいは有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸が挙げられる。また、酸の種類によってはフェノール樹脂の配向性が変わるため、必要に応じて適宜選択すべきである。例えば、オルト配向性が増すと溶剤への溶解性が向上する可能性が有る。また、パラ配向性が増すとエポキシ樹脂との硬化系において耐熱性が向上する傾向がある。本発明者らの知見によれば、酸性度の高いもの(例えば、臭化水素やフッ化水素等の酸性度が塩酸以上である酸触媒)の方がよりパラ配向性が強くなる傾向がある。これら酸触媒の使用量は触媒の種類により異なるが、式(1)で表される化合物の0.0005重量%〜200重量%の範囲内で適正量を添加すれば良い。好ましくは0.1〜30重量%の範囲で選択する。
【0020】
反応は無溶媒で行ってもよく、溶媒を使用してもよい。溶媒を使用する場合、溶剤の使用量は仕込んだ原料の総重量に対して50〜300重量%が好ましく、特に100〜250重量%が好ましい。使用しうる溶媒の具体例としては反応に不活性なメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が好ましいが、これらに限定されるものではない。これらの溶剤類は単独で、あるいは数種類を混合して用いることが出来る。また、反応中に生成する水あるいはアルコール類などを系外に分留管などを用いて留去することは、反応を速やかに行う上で好ましい。
【0021】
ナフトール導入率を上げるため、反応系に添加剤を併用しても差し支えない。添加剤を使用する場合、添加剤の使用量は仕込んだ原料の総重量に対して50重量%以下が好ましく、特に20重量%以下が好ましい。添加剤の量が多すぎると、水洗によって除去しにくくなる。添加剤としてはアルコール性化合物や塩基性化合物が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0022】
反応温度は通常40〜200℃、好ましくは50〜150℃である。反応時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜15時間である。反応は、全原料を一括投入して昇温しながら行っても、分割して逐次添加して行っても良い。
【0023】
反応終了後、洗浄液のpH値が3〜7、好ましくは5〜7になるまで水洗処理を行う。水洗処理を行う場合は必要により水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、アンモニア、リン酸二水素ナトリウムさらにはジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン、フェニレンジアミンなどの有機アミンなど様々な塩基性物質等を中和剤として用いてもよい。また、場合によっては、溶剤を追加しても良い。用いうる溶剤としては高分子量物を溶解し、水層との分離が良好であれば特に制限はなく、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。水洗処理は常法にしたがって行えばよく、例えば反応混合物中に上記中和剤を溶解した温水を加え、分液抽出操作をくり返す。
【0024】
得られた有機層をロータリーエバポレーターにより加熱減圧下、溶剤および未反応のフェノール類を除去することで本発明のフェノール樹脂を得た。
【0025】
こうして得られた本発明のフェノール樹脂におけるナフトールの導入率は、ナフトール類がα―ナフトールの場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜40モル%が好ましく、5〜25モル%がより好ましく、5〜20モル%が特に好ましい。ナフトール類がβ―ナフトールの場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜35モル%が好ましく、20〜35モル%がより好ましい。ナフトール類がα―ナフトールおよびβ―ナフトールの混合物の場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜40モル%が好ましく、20〜40モル%がより好ましい。
そして、β−ナフトールが導入された場合、またはα−ナフトールが導入されている場合には、導入率が5〜20モル%であることが難燃性向上の観点から好ましい。
尚、ナフトール導入率は骨格中に導入されたナフトールのモル量を、骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールの合計モル量で割ることで算出している。骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールのモル量はHPLCチャートの各モノマー割合から未反応モノマー量を算出し、フェノールおよびナフトール仕込みモル量から差し引くことで計算している。
【0026】
本発明のフェノール樹脂はアルカリ金属水酸化物の存在下エピハロヒドリンと反応させエポキシ樹脂としたり、そのままでエポキシ樹脂の硬化剤として使用したりすることが可能である。
【0027】
以下に本発明のエポキシ樹脂の製造法の具体例を説明する。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂は前記の式(2)で表されるフェノール樹脂を、公知のエポキシ化方法でエポキシ化して得られる。例えば前記で得られたフェノール樹脂と過剰のエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、a−メチルエピクロルヒドリン、g−メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンの溶解混合物に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加し、または添加しながら20〜120℃の温度で1〜10時間反応させることにより得ることが出来る。本発明のエポキシ樹脂において、ナフトールの導入率はナフトール類がα―ナフトールの場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜40モル%、ナフトール類がβ―ナフトールの場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜35モル%、ナフトール類がα―ナフトールおよびβ―ナフトールの混合物の場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜40モル%である。
尚、ナフトール導入率は骨格中に導入されたナフトールのモル量を、骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールの合計モル量で割ることで算出している。骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールのモル量はHPLCチャートの各モノマー割合から未反応モノマー量を算出し、フェノールおよびナフトール仕込みモル量から差し引くことで計算している。
【0029】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0030】
また、本発明のフェノール樹脂とエピハロヒドリンの溶解混合物にテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し50〜150℃で1〜5時間反応させて得られるハロヒドリンエーテル化物に、アルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加え、20〜120℃の温度で1〜10時間反応させ脱ハロゲン化水素(閉環)させる方法でもよい。この場合使用される4級アンモニウム塩の量は、本発明のフェノール樹脂の水酸基1個に対して、通常1〜10gであり、好ましくは2〜8gである。
【0031】
通常これらの反応において使用されるエピハロヒドリンの量は本発明のフェノール樹脂の水酸基1当量に対し通常1〜20モル、好ましくは2〜10モルである。アルカリ金属水酸化物の使用量は本発明のフェノール樹脂の水酸基1当量に対し0.8〜1.5モル、好ましくは0.9〜1.1モルである。更に、反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノールなどのアルコール類の他、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0032】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し5〜100重量%、より好ましくは10〜90重量%である。
【0033】
これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下、110〜250℃、圧力10mmHg以下でエピハロヒドリンや溶媒などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて更に反応を行い、閉環を確実なものにすることもできる。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した本発明のナフトール含有フェノール樹脂の水酸基1当量に対して好ましくは0.01〜0.3モル、特に好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0034】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより加水分解性塩素の少ない本発明のエポキシ樹脂が得られる。
【0035】
このようにして得られる本発明のエポキシ樹脂は、下記式(3)
【化8】
(式中、nは繰り返し数を表す。Rは水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、あるいは炭素数2〜10のアルケニル基等を表し、個々のRは互いに同一であっても異なっていても良い。)
で表される構造を有する。
ここで、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
nは通常1〜50であり、1〜20が好ましく、1〜10が特に好ましい。
【0036】
こうして得られる本発明のエポキシ樹脂は、ナフトールの導入率が、ナフトール類がα―ナフトールの場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜40モル%、ナフトール類がβ―ナフトールの場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜35モル%、ナフトール類がα―ナフトールおよびβ―ナフトールの混合物の場合、フェノール類、ナフトール類のうち5〜40モル%であり、難燃性を示し、かつ耐熱性・低吸水性に優れる。
また軟化点としては、60〜80℃が好ましい。
エポキシ当量としては、200〜600g/eqが好ましく、230〜380g/eqがより好ましく、特に好ましくは250〜340g/eqである。
尚、ナフトール導入率は骨格中に導入されたナフトールのモル量を、骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールの合計モル量で割ることで算出している。骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールのモル量はHPLCチャートの各モノマー割合から未反応モノマー量を算出し、フェノールおよびナフトール仕込みモル量から差し引くことで計算している。
【0037】
以下に本発明のエポキシ樹脂組成物について記載する。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記の式(2)のフェノール樹脂または/および前記の式(3)記載のエポキシ樹脂を含むことを特長とし、難燃性、耐熱性、低吸水性に優れた硬化物を与える。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は難燃性を損なわない限りで、電気・電子部品用に使用される他のエポキシ樹脂を併用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂としてはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF
型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加反応型エポキシ樹脂などが挙げられる。
具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、等シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
さらに、電気、電子部品用に使用されるため、加水分解性塩素濃度が小さいものが好ましい。即ちエポキシ樹脂をジオキサンに溶解し、1規定KOHで還流下30分処理した時の脱離塩素で規定される、加水分解性塩素が0.2重量%以下のものが好ましく、0.15重量%以下のものがより好ましい。
【0042】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤を含有する。硬化剤の具体例としては例えばフェノール樹脂、フェノール系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては フェノール樹脂、フェノール化合物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
好ましいフェノール樹脂としては、誘電率の面からフェノールアラルキル樹脂(芳香族アルキレン構造を有する樹脂)が挙げられ、特に好ましくはフェノール、ナフトール、クレゾールから選ばれる少なくとも一種を有する構造であり、そのリンカーとなるアルキレン部が、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする樹脂(具体的にはザイロック、ナフトールザイロック、フェノールビフェニレンノボラック樹脂、クレゾール−ビフェニレンノボラック樹脂、フェノール−ナフタレンノボラック樹脂などが挙げられる。)である。
アミン系化合物、アミド系化合物;ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物
酸無水物系化合物、カルボン酸系化合物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂;
その他;イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられる
これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0043】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂のエポキシ基に対し、フェノール性水酸基が通常0.55〜1.0当量、好ましくは0.6〜0.95当量となる量使用する。硬化剤が0.55当量未満の場合、未反応のエポキシ基が多くなり、特にトランスファー成型時の作業性が低下する。1.0当量を越える場合、未反応硬化剤量が多くなり、熱的及び機械的物性が低下し好ましくない。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要により硬化促進剤を添加しても良い。硬化促進剤の具体例としては、トリフェニルフォスフィン、ビス(メトキシフェニル) フェニルフォスフィン等のフォスフィン類、2―メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2―エチル,4―メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ等の金属化合物等が例示される。
【0045】
硬化促進剤の使用量は、エポキシ樹脂100重量部当たり、通常0.2〜5.0重量部、好ましくは、0.2〜4.0重量部である。
【0046】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−ジキシリレニルホスフェート、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4−フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4'−ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量はリン含有化合物/全エポキシ樹脂=0.1〜0.6(重量比)が好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0047】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に対して100重量部に対して、通常0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部である。
【0048】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤の具体例として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0049】
イオウ系酸化防止剤の具体例として、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルル−3,3’−チオジプロピオネート等が例示される。
【0050】
リン系酸化防止剤の具体例として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
【0051】
これらの酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0052】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。
光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0053】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ−ナイロン系樹脂、NBR−フェノール系樹脂、エポキシ−NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100重量部に対して通常0.05〜50重量部、好ましくは0.05〜20重量部が必要に応じて用いられる。
【0054】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じ、無機充填材、顔料、離型剤、シランカップリング剤、柔軟剤等を添加することができる。特に、不燃性無機充填材の添加は、さらに本組成物の難燃性を向上させる効果があり、作業性、硬化後の物性に支障がない限り、難燃性の点では、多く添加することが望ましい。不燃性無機充填材としては、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の水酸化物。錫酸亜鉛、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、窒化アルミ、窒化珪素等が例示される。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を所定の割合で均一に混合することにより得ることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂と硬化剤を予め、100〜200℃
に加温し、少なくともエポキシ樹脂または硬化剤のどちらか一方を溶融させ、この溶融液に他方を溶解させた後、押出機、ロール、ニーダー等で必要により無機充填材、顔料、離型剤、難燃剤、シランカップリング剤等及び硬化促進剤を添加、混合することにより得ることが出来る。また、場合により溶融工程を経ずに上記各成分を押出機、ロール、ニーダー等で混合しても良い。得られたエポキシ樹脂組成物は通常トランスファー成型機等を用いて成型し、硬化させるが、更に80〜200℃で2〜10時間後硬化を行うと性能が向上する。また、液状封止材とする場合には液状エポキシ樹脂を用い、本発明のエポキシ樹脂組成物を室温で混合し製造できる。
【0056】
また、溶剤に溶解した形で使用することもできる。本発明の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、硬化性樹脂組成物ワニスとし、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物Aの硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するエポキシ樹脂硬化物を得ることもできる。
【0057】
また本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0058】
本発明の硬化物は成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。特に本発明のエポキシ樹脂硬化物は優れた難燃性を示すため、IC封止材料、積層材料、電気絶縁材料等などの電気・電子分野に有用である。
【実施例】
【0059】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において部は特に断わりのない限り重量部である。なお、水酸基当量、エポキシ当量、軟化点、ICI粘度は以下の条件で測定した。尚、ナフトール導入率は骨格中に導入されたナフトールのモル量を、骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールの合計モル量で割ることで算出している。骨格中に導入されたフェノールおよびナフトールのモル量はHPLCチャートの各モノマー割合から未反応モノマー量を算出し、フェノールおよびナフトール仕込みモル量から差し引くことで計算している。
・水酸基当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K−7234に準拠した方法で測定。
・ICI粘度 JIS K−7117−2に準拠した方法で測定
・HPLC
カラム;Inertsil ODS−2(4.6mm×150mm)
(ジーエル サイエンス(株)製)
カラム温度;40℃
溶離液:水/アセトニトリル
グラジエント:30%(アセトニトリル)→100%(28分/グラジエント)
流速:1ml/min.
検出:UV(274nm)
【0060】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながらフェノール207
部、α−ナフトール28.8部、パラトルエンスルホン酸(PTS)0.3部を仕込み撹拌下で8 0 ℃ まで昇温し、溶解させた。ビスクロロメチルビフェニル(BCMB)201部を2時間かけて添加し、さらに6時間撹拌した。撹拌中結晶が析出し始めたがそのまま撹拌を続けた。反応終了後、リン酸水素二ナトリウム0.2部加えてクエンチした。メチルエチルケトン200部と温水100部を加え廃水が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターを使用して加熱減圧下、溶剤および未反応のフェノール類を除去することでフェノール樹脂を得た。得られたフェノール樹脂中、ナフトール導入率は16モル%、軟化点は86℃、ICI粘度は0.43Pa・s、水酸基当量は223g/eq.であった。
【0061】
実施例2〜5、比較例1、2
以下の表に記載の通り、原料仕込み量を変えた以外は実施例1と同様のフローによりフェノール樹脂の調製を行った。
【表1】
【0062】
調製したフェノール樹脂の樹脂物性は以下の表に記載の通りであった。
【表2】
【0063】
実施例6
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら実施例1で調整したフェノール樹脂100部、エピクロロヒドリン(ECH)249部、ジメチルスルホキシド(DMSO)58部、水2.5部を加え、55℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム19部を90分かけて分割添加した後、さらに55℃で90分間、70℃で30分間反応を行った。反応終了後水洗を行い、有機層からロータリーエバポレーターを用いて130℃で減圧下、過剰のエピクロロヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン230部を加え溶解し、75℃にまで昇温した。攪拌下で30%水酸化ナトリウム水溶液6部を加え、1時間反応を行った後、洗浄水が中性になるまで有機層を水洗し、得られた有機層からロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等の溶剤を留去することで本発明のエポキシ樹脂を98部得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は70℃、ICI粘度は0.33Pa・s、エポキシ当量は296g/eq.であった。
【0064】
実施例7〜10、比較例3、4
実施例2〜5、比較例1、2で調整したフェノール樹脂を用いた以外は実施例1と同様のフローにより、それぞれエポキシ樹脂の調製を行った。
【0065】
調製したエポキシ樹脂の樹脂物性は以下の表に記載の通りであった。
【表3】
【0066】
実施例11〜15、比較例5、6
表1の配合物の組成の欄に示す配合物を、ミキシングロールにて均一に混合し、エポキシ樹脂組成物を得た。この組成物を粉砕し、タブレットマシンでタブレットを得た。得られたタブレットをトランスファー成型機で成形し、10×4×90mmの試験片を成形した。この試験片を180℃×6時間、後硬化を行った。この試験片をクランプに垂直に保持し、バーナーの炎を19mmの青色炎に調節し、試験片の下端中央部に炎の9.5mmを10秒接炎する。接炎後バーナーを離して、燃焼継続時間を測定する。消炎後、直ちに10秒接炎した後、バーナーを離し、燃焼継続時間を測定する。各サンプル10回分の燃焼時間合計値を表4にあわせて示す。
【表4】
【0067】
使用したエポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤を下記に示す。
1.エポキシ樹脂
実施例11〜15:本発明の実施例6〜10にそれぞれ対応
比較例5、6:比較例3、4のエポキシ樹脂にそれぞれ対応
2.硬化剤
ビフェニルフェノールアラルキル樹脂(GPH−65、水酸基当量199g/eq.日本化薬株式会社製)
3.硬化促進剤
TPP:トリフェニルホスフィン(純正化学株式会社製)
4.フィラー
高純度真球状シリカ(MSR−2102、株式会社龍森製)