【実施例1】
【0019】
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の実施例1におけるRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag)およびRFIDタグの製造方法について説明する。
図1(a)〜(c)および
図2(a)〜(h)は本実施例におけるRFIDタグの製造工程図である。本実施例のRFIDタグにおいて主アンテナを構成する導電繊維(導電線部材)は、衣服などの商品の表示札(値札)を取り付けるための糸状部材として用いられる。また、半導体デバイス(ICチップ)およびループアンテナを封止する樹脂(樹脂パッケージ)は、糸状部材を止めるための糸止め部材として用いられる。
【0020】
図1(a)は、本実施例のRFIDタグに用いられる(半導体デバイス実装前の)メタルストリップ10の平面図を示している。メタルストリップ10は、例えば0.15mm程度の厚さを有する銅系又は鉄系の金属薄板からなり、スタンピング(プレス加工)又はエッチング加工により形成される。無線通信を行うRFIDタグのアンテナとして機能するループアンテナ12(微小ループアンテナを含む)、および、後述の半導体デバイス20を実装して電気的に接続するための端子16を備えて構成される。またループアンテナ12は、連結部14により保持されている。ただし、本実施例のループアンテナ12および端子16は
図1(a)に示されるような構造に限定されるものではない。
【0021】
なお、本実施例のループアンテナ12はメタルストリップの中側で保持されているが、これに限定されるものではない。ループアンテナ12は、例えば後述の主アンテナ30と同様に導電繊維により形成してもよく、また、金属片と導電繊維のハイブリッド構成や、メタルコイルまたはエッジワイズコイル(コイルループ)により形成することもできる。
【0022】
続いて、
図1(b)に示されるように、メタルストリップ10の端子16の上に半導体デバイス20を実装する。
図1(b)は、半導体デバイス実装後のメタルストリップ10の平面図である。半導体デバイス20は、メタルストリップ10の端子16の上に実装され、半田を用いてループアンテナ12(端子16)と電気的に接続される。本実施例において、半導体デバイス20は、樹脂でパッケージ化されていない半導体チップ(ベアチップ)である。なお本実施例では、ベアチップである半導体デバイス20は、フリップチップ実装により端子16との間の電気的接続をとっているが、これに限定されるものではなく、例えば片方の端子にチップをダイボンディングし、もう一方へのワイヤボンディングにより端子16との間の電気的接続をとるように構成してもよい。また、ハンダ接続、溶着、カシメにより電気的接続を行ってもよい。
【0023】
なお、半導体デバイス20として、ベアチップを樹脂封止して構成された半導体パッケージ(ICパッケージ)を用いてもよい。この場合、好ましくは面実装型半導体パッケージが用いられる。半導体デバイス20として半導体パッケージを用いた場合、以下のようなメリットがある。例えば、RFIDタグをクリーンルームで製造する必要がなく、RFIDタグを低コストで製造可能となる。また、半導体デバイス20として予め良品のみの半導体デバイスを選択して端子16(ループ端子)の上に実装することができる。さらに、端子16にメッキ等の表面処理を行う必要がない。
【0024】
続いて、
図1(c)に示されるように、メタルストリップ10は、連結部14にてカットされ、個片化される。
図1(c)は、個片化後において、半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12の平面図を示している。また
図2(a)は、
図1(c)に示される3つのループアンテナ12の一つの平面図であり、
図2(e)は
図2(a)の側面図である。
図2(a)、(e)に示されるように、ループアンテナ12の上に半導体デバイス20が実装されている。後述のように、ループアンテナ12は、主アンテナ30と電気的に導通することなく電気的に結合(電磁結合)される。なお本実施例では、メタルストリップ10の連結部14をカットしてループアンテナ12を個片化した後に樹脂封止(一次成形)が行われるが、連結部14の切断箇所が外部に露出しても問題ない場合には、連結部14のカット前に(個片化前に)樹脂封止を行ってもよい。
【0025】
続いて、
図2(b)の平面図および
図2(f)の側面図に示されるように、半導体デバイス20(ベアチップ)を樹脂24(一次成形樹脂)で封止する。樹脂24は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂であり、少なくとも、メタルストリップ10上に搭載した半導体デバイス20、半田、および、端子16を封止する(覆う)。このように樹脂24を用いてICチップとしての半導体デバイス20を保護することにより、効果的に強度を向上させることができる。本実施例において、樹脂24による一次成形はポッティング成形により行われる。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、トランスファモールドや圧縮成形により樹脂封止を行うこともできる。
【0026】
後述の二次成形で用いられる樹脂28(熱可塑性樹脂)は、その溶融温度が200〜300℃であり、二次成形時に半田の接合が破壊される可能性があるため、融点の高い鉛フリー半田を用いることが望ましい。一方、樹脂24(熱硬化性樹脂)の溶融温度は160℃程度であるため、半田の溶融温度に達しない。このため、樹脂24を用いた一次成形を行うことにより、後述の樹脂28(熱可塑性樹脂)を用いた樹脂封止の際(二次成形時)に半田が融けるのを防止することができる。また、熱可塑性樹脂を用いた射出成形による樹脂封止の場合、熱硬化性樹脂の場合よりも射出圧が高い。このため、一次成形を行うことにより、半導体デバイス20とメタルストリップ10(端子16)との間の接合破壊を防止することができる。さらに、熱可塑性樹脂は、一般的に0.3mm以下の小さな隙間に充填することは困難である。このため、半導体デバイス20とメタルストリップ10との間の半田接合部の近傍に空洞(エアだまり)が生じやすい。このような空洞が存在すると、温度変化によるエアの膨張及び収縮により半田接合部が破壊される可能性がある。一方、熱硬化性樹脂は、例えば数μmの小さな隙間にも充填可能である。
【0027】
このように、樹脂24(熱硬化性樹脂)を用いた一次成形は、半導体デバイス20とメタルストリップ10との間の接合(半田)を後述の二次成形時における熱および射出圧等から保護するために行われる。なお本実施例において、樹脂24としては例えばエポキシ樹脂が用いられるが、これに限定されるものではなく、フェノール系樹脂やシリコーン系樹脂などを用いてもよい。また、半導体デバイス20の全体を樹脂24で覆う代わりに、半導体デバイス20とメタルストリップ10(端子16)との間のみをFC接続およびアンダーフィル成形してもよい。なお、本実施例では、樹脂24(一次成形樹脂)として熱硬化性樹脂が用いられるが、半田接続部の信頼性が確保される場合には熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0028】
続いて
図2(c)の平面図および
図2(g)の側面図に示されるように、導電繊維により形成された主アンテナ30をループアンテナ12の近傍に配置する。導電繊維とは、例えば、SUSや銅などの金属細線繊維、SUSや銅などを有機物で被覆した金属細線繊維、導電性フィラーを練りこんだ繊維、金属被覆繊維、導電性有機ポリマー繊維であるが、これらに限定されるものではない。また、本実施例の導電繊維としては、拠り線の糸、紐、綱またはケーブルが好適に用いられる。拠り線を用いると、樹脂封止後の導電繊維の抜けをより効果的に防ぐことができる。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、導電繊維として、導線やケーブルなどのプラスチックに代表される絶縁物被覆された単線や拠り線を用いてもよい。細くかつ導電性を有する部材であれば絶縁物被覆は必須でなく、柔軟性を有する部材であって主アンテナとして使用可能であれば、他の部材でもよい。以下、これらを総称して導電繊維(導電線部材)と表記する。また、本実施例は、繊維状の導電部材に限定されるものではなく、広く一般に導電線部材に適用可能である。
【0029】
このように本実施例において、主アンテナ30は導電繊維(導電線部材)を用いて形成される。このため、導電繊維からなる主アンテナ30を、商品の表示札(値札)を取り付けるための糸状部材として用いることができる。従来、RFIDタグのアンテナは、耐環境性を考慮してフィルムや樹脂などで被覆されているが、このとき電波損失を引き起こして通信距離の妨げになる場合がある。一方、本実施例のように導電繊維を露出させることで、低コストで電波損失を改善することができる。
【0030】
続いて
図2(d)の平面図および
図2(h)の側面図に示されるように、樹脂封止された半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12、および、導電繊維で形成された主アンテナ30の中央の両方を樹脂28(熱可塑性樹脂)で封止する。同時に、主アンテナ30の両端に係合部70を形成する。係合部70は、半導体デバイス20およびループアンテナ12を封止する樹脂パッケージの樹脂を用いて形成される。2つの係合部70は、樹脂28(樹脂パッケージ)に形成された2つの孔部74にそれぞれ挿入されて固定される。孔部74は、
図2(h)に示されるように樹脂28の両側面から中央部に向けてその径が小さくなるように構成される。このような構成により、係合部70を一旦挿入すると、係合部70を引っ張っても孔部74から抜けないようになる。
【0031】
本実施例において、孔部74は、係合部70を挿入して固定するため、孔部74の両端は幅広で中央が幅狭な構造を有する。樹脂28の成形の際の金型を用いてこのような構造を形成する場合、孔部74をRFIDタグの側面側において、ループアンテナ12の平面に平行方向に形成するのは困難である。このため本実施例では、孔部74は、RFIDタグの両面(半導体デバイス20の主面に平行な両面)を貫通するように、RFIDタグの両面に直交する方向(半導体デバイス20の主面に直交する方向)に形成されている。これにより、係合部70を挿入固定するための孔部74を金型を用いて容易に形成することができる。
【0032】
なお、本実施例の樹脂28は、熱可塑性樹脂に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂を用いて形成してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合など、樹脂24の一次成形を行うことなく、ループアンテナ12と主アンテナ30を一括で所定の位置に配置し、所定の形状に封止してもよい。
【0033】
本実施例では、主アンテナ30はループアンテナ12に電気的に導通していない(空間的に互いに離れている)。しかし、主アンテナ30とループアンテナ12は互いに近接しており、電磁結合されている。このため、ループアンテナ12および主アンテナ30の両方が組み合わさることにより、RFIDタグのアンテナとしての機能を有する。このように、電磁結合による給電を行うことで、直接的な電気的接続を行うことなくアンテナとして機能するため、導電繊維からなる主アンテナ30を露出しても静電気により半導体デバイス20が破壊される可能性は小さい。またこのとき、主アンテナ30としてSUS金属細線などの強靭性、耐火性、耐腐食性、柔軟性を有する導電繊維を用いれば、使用時のRFIDタグの耐環境性能を向上させることができる。
【0034】
本実施例において、導電繊維により形成された主アンテナ30をループアンテナ12に電気的に導通することなく電磁結合させる。このような構成により、主アンテナ30は、半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12と直接接触することなく(空間的に互いに離れた状態で)、アンテナ部としての機能を発揮することができる。このため、本実施例のRFIDタグは、導電繊維からなる主アンテナ30を、商品の表示札を取り付けるための糸状部材として用いた場合でも、半導体デバイス20およびループアンテナ12は破壊されにくい。
【0035】
また本実施例において、半導体デバイス20(ICチップ)およびループアンテナ12を封止する樹脂28は、糸状部材を止めるための糸止め部材として用いられる。また、主アンテナ30に取り付けるための機構を設けてループ部分を小型化することもできる。このため、消費者に対する視覚的影響、すなわち見栄えの劣化は小さい。
【0036】
また、主アンテナ30とループアンテナ12とは空間的に互いに離れているため、所望の電磁結合を行うためにはこれらの空間的な距離(間隔)を一定に保つ必要がある。本実施例において、主アンテナ30およびループアンテナ12は、樹脂28で一括封止(一体成形)することにより、これらの間隔を一定に保つことができるため、信頼性の高いRFIDタグを提供することが可能となる。
【0037】
図3は、本実施例におけるRFIDタグの変形例であり、RFIDタグの平面図を示している。
図3のRFIDタグでは、主アンテナ30の一方の端にのみ係合部70が形成されている。主アンテナ30の他方端は、樹脂28の成形時に、金型のキャビティ内部に配置され、樹脂28により封止されることで固定されている。RFIDタグの主アンテナ30を、商品の表示札を吊り下げるための糸状部材として用いる場合、主アンテナ30の一方端のみを開放状態としておけば十分である。このため、
図3の構成では、主アンテナ30の一方の端にのみ係合部70を形成し、他方の端については金型を用いて樹脂28で充填して予め固定しておく。このような構成により、RFIDタグをより簡易かつ低コストで提供することができる。
【0038】
図4は、本実施例におけるRFIDタグの変形例であり、RFIDタグの平面図を示している。
図4(a)のRFIDタグには、主アンテナ30、ループアンテナ12、および、半導体デバイス20を封止する本体部75と、主アンテナ30が延びる方向(
図4中の左右方向)と平行に本体部75から延びる突出部76が設けられている。また突出部76の先端には、孔部74aが形成されている。孔部74aは、半導体デバイス20の主面方向と直交する方向(紙面直交方向)において突出部76の先端の樹脂を貫通するように設けられている。
【0039】
また、主アンテナ30の両端に形成されたL字形状の係合部70aは、主アンテナ30が延びる方向と直交する方向に折り曲げられている。このため、
図4(a)のRFIDタグは、係合部70aを孔部74aに挿入させようとする場合、係合部70aが自然に孔部74aの貫通方向を向くような関係となるため、係合部70aを孔部74aに挿入しやすい。
【0040】
図4(b)のRFIDタグは、
図4(a)の変形例であり、樹脂28(樹脂パッケージ)に形成された2つの孔部74にそれぞれ挿入されて固定される。また、樹脂パッケージには、孔部74と繋がっている溝78が形成されている。このような構成により、主アンテナ30の回り止め効果が得られ、主アンテナ30のネジレを効果的に抑制することが可能である。
【0041】
図4(a)、(b)の構成によれば、主アンテナ30のネジレを抑制し、より安定した通信性能を有するRFIDタグを提供することができる。なお、
図2のRFIDタグについても、係合部70に代えて係合部70aを採用することができる。
【0042】
図5は、本実施例におけるRFIDタグの変形例であり、RFIDタグの平面図を示している。
図5のRFIDタグは、半導体デバイス20を直接、樹脂28を用いて主アンテナ30とループアンテナ12とともに一括封止している点で、半導体デバイス20を樹脂24(一次成形樹脂)で封止した後に樹脂28(二次成形樹脂)で一括封止している
図2の構成と異なる。このような構成でも、本実施例の効果を得ることができる。
【0043】
図6は、本実施例におけるRFIDタグの変形例であり、RFIDタグの平面図を示している。
図6のRFIDタグは、半導体デバイス20をループアンテナ12のうち主アンテナ30から最も遠い位置に配置している点で、半導体デバイス20をループアンテナ12のうち主アンテナ30に最も近い位置に配置している
図2の構成と異なる。このような構成でも、本実施例の効果を得ることができる。
【0044】
図7は、本実施例におけるRFIDタグの変形例であり、RFIDタグの平面図を示している。
図7のRFIDタグは、
図1および
図2を参照して説明した円形状(楕円形状を含む)のループアンテナ12の代わりに、長方形状(四角形状)のループアンテナ12aを備えている。これに伴い、ループアンテナ12aおよび半導体デバイス20を封止した樹脂24の両方を一括して封止する樹脂28aも長方形状となっている。長方形状のループアンテナ12aを用いると、ループアンテナ12aと主アンテナ30とが最短間隔となる領域が増加するため、より高性能なRFIDタグを提供することができる。また、ループアンテナ12aと主アンテナ30との間隔を一定にすることが容易になり、より電磁結合の強いRFIDタグを提供することが可能である。なお、半導体デバイス20(樹脂24)は、ループアンテナ12のうち主アンテナ30に最も遠い位置に配置されているが、円形状のループアンテナ12の場合と同様に、半導体デバイス20をループアンテナ12aのうち主アンテナ30から最も近い位置に配置してもよい。
【実施例2】
【0045】
次に、本発明の実施例2におけるRFIDタグおよびRFIDタグの製造方法について説明する。
図8(a)〜(c)は、本実施例におけるRFIDタグの製造工程図である。本実施例のRFIDタグは、ケース(樹脂ケース)に半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12および主アンテナ30を収納した状態で、カバー(樹脂カバー)を用いてそれらを覆うように構成されている点で、金型を用いてこれらを樹脂封止する実施例1の構成とは異なる。
【0046】
図8(a)に示されるように、まず、ケース81の所定の位置に、導電繊維からなる主アンテナ30を載置する。また、主アンテナ30の両端には、別工程により、樹脂からなる係合部70が形成されている。ケース81は、ループアンテナ12の位置決めを行うために用いられる2つの突起部84、および、係合部70を挿入して固定するための係止部86を有する。係止部86は、実施例1の孔部74の代替機構として用いられる。なお、本実施例のケース81は樹脂で構成されているが、これに限定されるものではない。また、
図8(a)の右下に示されるように、半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12を準備する。
【0047】
続いて、
図8(b)に示されるように、半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12をケース81に収納する。前述のとおり、ケース81には2つの突起部84が設けられており、突起部84により、ループアンテナ12を適切な位置に配置することができる。このように、ケース81には、主アンテナ30、ループアンテナ12、および、半導体デバイス20が所定の位置に収納される。また、
図8(b)の右下に示されるように、カバー82を準備する。カバー82は、ケース81と同様に樹脂からなるが、これに限定されるものではない。またカバー82は、ケース81と同様に、係合部70を挿入して固定するための係止部86を有する。
【0048】
そして、
図8(c)に示されるように、主アンテナ30およびループアンテナ12をケース81に収納した後、カバー82を用いて、ケース81を覆う。本実施例のカバー82には、ケース81の係止部86に対応する係止部が設けられており、ケース81にカバー82が取り付けられることにより、係合部70を挿入固定可能な係止部が構成される。カバー82は、凹凸の嵌め込み、超音波溶着、溶剤溶着、または、接着剤により、ケース81に取り付けて固定される。
【0049】
図9は、本実施例におけるRFIDタグの変形例であり、ループアンテナ12と半導体デバイス20を搭載する前の状態を示している。本実施例では、
図9に示されるように、ケース81とカバー82とを連結部88を介して連結するように構成してもよい。主アンテナ30およびループアンテナ12をケース81に収納した後、連結部88を折り曲げることにより、ケース81とカバー82とを容易に取り付けることができる。このような構成によれば、RFIDタグの組立性を向上させることが可能である。
【0050】
本実施例によれば、金型を用いることなくRFIDタグを製造することができる。このため、実施例1と異なり、ケースおよびカバーの側面に、主アンテナ30の両端に設けられた係合部70を挿入固定するための部位(係止部86)を容易に形成すること可能である。
【実施例3】
【0051】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例は、実施例1のRFIDタグを製造するために用いられる金型に関する。
図10は、本実施例におけるRFIDタグの構成図であり、
図10(a)は主アンテナ30の所定の位置に成形された樹脂71の拡大断面図、
図10(b)はRFIDタグの全体図、
図10(c)は樹脂71のカット位置でカットしたRFIDタグの構成図である。
【0052】
本実施例では、
図10(b)に示されるように複数のRFIDタグ構造体が繋がっているため、一つのRFIDタグ構造体に分離する必要がある。なお、複数のRFIDタグ構造体が繋がっている必要はなく、後述のように一つのRFIDタグ構造体に予め分離されていてもよい。本実施例において、RFIDタグ構造体の分離は、主アンテナ30に成形された樹脂71の凹部72においてカットすることにより行われる。
【0053】
図10(a)に示されるように、主アンテナ30の所定の位置(カット位置)には、樹脂71が成形されている。樹脂71の中央部には凹部72が形成されており、凹部72において主アンテナ30(樹脂71)はカットされる。カット後、
図10(b)の繋がった構造(複数のRFIDタグ)は、
図10(c)に示されるように個片化される。カット後の主アンテナ30の端部(両端部)には、樹脂71が分離することにより係合部70が形成される。
【0054】
このように、本実施例によれば、簡易かつ低コストで係合部を形成可能なRFIDタグを提供することができる。また、高性能なアンテナ機能を有するには、主アンテナ30の長さが重要である。このため、主アンテナ30に樹脂71を成形することにより、樹脂71がカット位置の目印となり均一で高性能なアンテナ機能を有するRFIDタグを提供することが可能となる。
【0055】
図11は、本実施例のRFIDタグを成形する際に用いられる金型の構成図である。
図11(a)および
図11(b)は、金型(他方金型61)の平面図であり、それぞれ、樹脂成形前および樹脂成形後のRFIDタグを配置した状態を示している。
図11(c)および
図11(d)は、
図11(a)および
図11(b)の金型と同様の金型を示しているが、主アンテナ30が分離している点で、
図11(a)および
図11(b)の場合と異なる。
図11(e)は、金型(一方金型51、他方金型61)の断面図を示している。
図11(f)は、
図11(e)のキャビティの拡大図である。
【0056】
本実施例の金型は、RFIDタグを製造するために用いられる金型であって、導電繊維により形成された主アンテナ30、および、半導体デバイス20を搭載したループアンテナ12を第1の面側から押さえ付ける一方金型51と、主アンテナ30およびループアンテナ12を第1の面とは反対の第2の面側から押さえ付ける他方金型61とを有する。
【0057】
図11(a)〜(f)に示されるように、本実施例の金型(一方金型51、他方金型61)は、同時に複数(6個)のRFIDタグを樹脂封止可能に構成されている。ただし同時に樹脂封止可能なRFIDタグの個数はこれに限定されるものではない。樹脂成形の際(RFIDタグ構造体のセット時)には、
図11(a)および
図11(b)に示されるように、導電繊維からなる主アンテナ30は繋がっており、所定の位置(カット位置)に樹脂71を成形するためのキャビティ52a、62a(凹部)が設けられている。なお、
図11(c)および
図11(d)に示されるように、樹脂成形の際に主アンテナ30は分離していてもよい。また、一方金型51および他方金型61を用いてRFIDタグ構造体をクランプし、スプル54、54aからキャビティ52、62、52a、62aに向けて樹脂を射出することにより、キャビティ52、62、52a、62aの内部は樹脂28、71で充填される。
【0058】
なお、半導体デバイス20の樹脂28と係合部70を同じ樹脂で成形する金型を例として説明したが、必ずしも同じ樹脂で成形する必要はなく、別の特性を持つ種類の樹脂で別々に成形してもよい。
【0059】
また、
図11(f)に示されるように、キャビティ52、62には、孔部74を形成するための突起部58、68が設けられている。突起部58、68は、半導体デバイス20の主面に直交する方向(
図11(f)の上下方向)に延びるように設けられている。また、突起部58、68のそれぞれの径は、両表面の端部から中央部へ向かうにつれて小さくなっている。孔部74は、前述のように、主アンテナ30に設けられた係合部70を挿入して固定するために樹脂28(樹脂いパッケージ)に設けられる。
【0060】
本実施例の製造方法では、金型を用いて主アンテナ30に設けられた樹脂71(樹脂部)および主アンテナ30をカットして係合部70を形成するとともに複数のRFIDタグを個片化する。ただし本実施例はこれに限定されるものではなく、複数のRFIDタグ構造体の主アンテナ30が互いに分離されている場合(隣り合う主アンテナ30が繋がっていない場合)にも、
図12に示されるような金型(他方金型61a)を用いることにより適用可能である。
【0061】
なお、係合部70に代えて、
図4のL字形状の係合部70aを形成する場合、
図13に示されるように金型を用いて樹脂71aを成形し、成形後に凹部72aにてカットすればよい。
【0062】
以上のとおり、本実施例において、一方金型51および他方金型61は、キャビティ52、62を備え、主アンテナ30およびループアンテナ12をクランプしてキャビティ52、62の内部に樹脂71を射出成形するために用いられる。一方金型51および他方金型61は、同時に複数のRFIDタグを樹脂封止可能に構成されている。また、一方金型51および他方金型61は、主アンテナ30のカット位置に、樹脂71からなる係合部70を成形するためのキャビティ52a、62a(凹部)を有する。
【0063】
上記各実施例のRFIDタグは、衣服などの商品の表示札に利用される。特に本実施例では、RFIDタグの主アンテナを構成する導電繊維を、表示札をぶら下げる糸状部材として用いる。また、RFIDタグの樹脂パッケージを、糸状部材を止める糸止め部材として用いる。このような構成により、各実施例によれば、消費者に対する視覚的影響が少なく、かつ、信頼性の高いRFIDタグ、RFIDタグの製造方法、および、RFIDタグの製造に用いられる金型を提供することができる。また各実施例によれば、商品の表示札をぶら下げる糸状部材と、糸状部材を止める糸止め部材とを有し、糸状部材はRFIDタグの主アンテナであり、糸止め部材はRFIDタグの樹脂パッケージである表示札取り付け部材を提供することができる。
【0064】
また、表示札をぶら下げる糸状部材(主アンテナ)を切断すると、積極的に通信性能を低下させることができる。このため、商品購入後など、RFIDタグとしての機能を利用する必要がなくなった場合、表示札をぶら下げる糸状部材を切断することにより、プライバシーの保護を図ることが可能である。
【0065】
各実施例のRFIDタグは、例えばUHF帯の周波数を利用する。このため、導電繊維からなる主アンテナの長さは、100mm〜200mm程度に設定される。より好ましくは、主アンテナの長さは140mm〜150mm程度に設定される。このとき、樹脂パッケージから両方に延びる主アンテナの長さは、通信性能上、互いに等しく設定されることが好ましい。また、導電繊維を樹脂で被覆することにより主アンテナを構成してもよい。なお、本実施例のRFIDタグにおいて、樹脂パッケージの外側にロゴなどを刻印することも可能である。
【0066】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【0067】
例えば、主アンテナとループアンテナは必ずしも電磁結合である必要はなく、電界結合、誘電結合、磁界結合、電磁界結合であっても、主アンテナとループアンテナが物理的に直接的に導通接続せずに間接的に電気的に結合されればよい。また本実施例ではループアンテナを金属薄板で形成したが、
図14に示されるように、主アンテナと同様にループアンテナを導電繊維で形成することもできる。この場合、接続用の金属板17を用い、導電繊維からなるループアンテナ12bの両端を金属板17の上に溶着する。更に、半導体デバイス20を封止した樹脂24(熱硬化性樹脂)を、金属板17の上に実装してループアンテナ12bと電気的に接続させる。
【0068】
また、
図15(
図15(a)の平面図、
図15(b)の側面図)および実施例1に記載されているように、エッジワイズコイル120(メタルコイルループ)でループアンテナを形成してもよい。