(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1隔壁部は、前記第1基板の一方の面から突出し、前記第1基板と一体に形成され、前記高さ方向に分極された第1基端側圧電体と、前記第1基端側圧電体に接合され、前記第1基端側圧電体とは反対方向に分極された第1先端側圧電体と、を有し、
前記第2隔壁部は、前記第2基板の一方の面から突出し、前記第2基板と一体に形成され、前記高さ方向に分極された第2基端側圧電体と、前記第2基端側圧電体に接合され、前記第2基端側圧電体とは反対方向に分極された第2先端側圧電体と、を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の液体吐出装置。
前記複数の圧力室のうち隣り合う2つの圧力室の間には、前記隔壁部で仕切られた、液体が充填されない空気室が形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置である液体吐出ヘッドの一例としてインクジェットヘッドを示す分解模式図である。
図1に示すインクジェットヘッド100は、液体吐出方向A1と平行な長手方向A2に対して直交する幅方向Bに一列に並設された複数の圧力室1が形成された吐出ユニット10を備えている。吐出ユニット10の液体吐出側の面(前面)には、各圧力室1に対応して各ノズル30aが形成されたノズル部材としてのノズルプレート30が配置されている。吐出ユニット10とノズルプレート30とは、圧力室1とノズル30aとの位置が一致するよう(即ち、圧力室1とノズル30aとが連通するよう)アラインメントされて接着されている。これにより、各ノズル30aが各圧力室1に接続される。
【0014】
圧力室1は、長手方向A2に沿って吐出ユニット10の液体供給側の面(背面)まで延びている。吐出ユニット10の背面には、背面プレート40が配置されている。背面プレート40には、各圧力室1に対応して各インク供給口40aが形成されている。このように、吐出ユニット10と背面プレート40とは、圧力室1とインク供給口40aとの位置が一致するようアラインメントされて接着されている。更に背面プレート40には、インクタンク(不図示)と連通するインク供給口51とインク回収口52とが設けられた、共通液室形成部材であるマニホールド50が接合されている。また、吐出ユニット10の液体吐出方向A1(長手方向A2)及び幅方向Bに直交する高さ方向Cの両側の面には、複数の信号配線61が形成されたフレキシブル基板60が接合されている。
【0015】
図2は、インクジェットヘッド100における液体としてのインクの流れを示すインク流路の断面模式図である。
図3は、吐出ユニット10の長手方向に垂直な面に沿う断面図である。
図3(a)は、
図2中の相対的に背面側に近いX―X面に沿う断面図、
図3(b)は、
図2中の相対的に前面側に近いY−Y面に沿う断面図である。
【0016】
吐出ユニット10は、
図3に示すように、互いに対向する2つの基板11,12(第1基板11及び第2基板12)と、第1基板11と第2基板12との間に高さ方向Cに対して直交する幅方向Bに間隔をあけて並設された複数の隔壁部3と、を有している。これら隔壁部3は、長尺に形成されており、複数の隔壁部3により、長手方向A2に延びる複数の圧力室1が形成されている。各隔壁部3は、高さ方向Cに分極された圧電体で構成されている。なお、
図3において、各圧力室1の高さ方向Cの高さをh、幅方向Bの幅をWx,Wyとしている。
【0017】
また、吐出ユニット10は、各隔壁部3の両側面に配置され、各隔壁部3をせん断変形させる複数の電極対(一対の電極)13を有している。つまり、各隔壁部3には、それぞれ電極対13が設けられている。具体的には、各隔壁部3には、液体吐出方向A1(長手方向A2)と直交する方向、即ち、幅方向Bの両側面に、信号電極14及び共通電極15からなる電極対13がそれぞれ設けられている。電極14は、空気室側に、電極15は、圧力室側に配置されている。
【0018】
信号電極14は、
図1に示す前面溝5内に形成された前面電極71を介して、取り出し電極4に電気的に接続されている。また、共通電極15は接地されている。これら電極対13に電圧が印加されることにより、隔壁部3には、分極方向と直交する方向(幅方向B)に電界が印加され、隔壁部3は、幅方向Bにせん断変形する圧電素子として機能する。具体的には、共通電極15をグラウンド電位とし、この共通電極15に対して信号電極14に電圧を印加する。
【0019】
図2に示すように、圧力室1の液体吐出側である長手方向A2の第1端部1aの側には、ノズルプレート30が配置されている。一方、圧力室1の液体供給側である、第1端部1aに対して反対側の長手方向A2の第2端部1bの側には、マニホールド50が配置され、共通液室53が形成されている。共通液室53には、不図示のインクタンクから、インク供給口51を介してインクIが供給される。共通液室53に供給されたインクIは、インク供給口40aを介して各圧力室1へ充填される。そして、隔壁部3がせん断変形することにより圧力室1の体積が変化することで、液体(液滴)であるインク(インク滴)Iがノズル30aから吐出される。
【0020】
図3に示すように、複数の隔壁部3は、第1基板11の一方の面11aに突設された複数の第1隔壁部3Aと、第2基板12の一方の面12aに突設された複数の第2隔壁部3Bとからなる。
【0021】
第1隔壁部3Aと第2隔壁部3Bとが幅方向Bに交互に間隔をあけて並設されるように、第1隔壁部3Aの先端部3aが第2基板12の一方の面12aに接合されると共に、第2隔壁部3Bの先端部3aが第1基板11の一方の面11aに接合されている。これによって、隣り合う第1隔壁部3Aと第2隔壁部3Bとにより仕切られて圧力室1が形成されている。
【0022】
第1基板11の一方の面11aには、第2隔壁部3Bの先端部3aが嵌合する第1溝部17が形成され、第2基板12の一方の面12aには、第1隔壁部3Aの先端部3aが嵌合する第2溝部18が形成されている。
【0023】
第1隔壁部3Aは、第1基板11の一方の面11aから突出し、第1基板11と一体に形成され、高さ方向Cに分極された第1基端側圧電体31Aを有している。また、第1隔壁部3Aは、第1基端側圧電体31Aに接合され、第1基端側圧電体31Aとは反対方向に分極された第1先端側圧電体32Aを有している。
【0024】
第2隔壁部3Bは、第2基板12の一方の面12aから突出し、第2基板12と一体に形成され、高さ方向Cに分極された第2基端側圧電体31Bを有している。また、第2隔壁部3Bは、第2基端側圧電体31Bに接合され、第2基端側圧電体31Bとは反対方向に分極された第2先端側圧電体32Bを有している。
【0025】
複数の圧力室1のうち隣り合う2つの圧力室1,1の間には、空気室6が形成されている。空気室6はノズル30aおよびインク供給口40aとは連通せず、前面に形成されている前面溝5と連通している。したがって、空気室6は、液体であるインクが充填されない構造となっている。
【0026】
詳述すると、空気室6は、圧力室1を形成する2つの隔壁部3で仕切られて形成されており、更に詳細には、第1隔壁部3Aと第2隔壁部3Bとで仕切られて形成されている。本実施形態では、圧力室1と空気室6とが幅方向Bに交互に形成されている。
【0027】
なお、本実施形態において、空気室6は、隣接する圧力室1をそれぞれ独立した形で制御するため、かつ空気層を設けることで圧電体からなる隔壁部3の動きを向上させるために配置されているが、配置されていなくても構わない。
【0028】
各圧力室1は、第1端部1aにおいて圧力室1の高さ及び幅のうち相対的に短い方、本実施形態では、圧力室1の幅が、第2端部1bにおいて第1端部1aよりも長くなるように形成されている。つまり、各圧力室1は、圧力室1の第2端部1bにおける幅が、圧力室1の第1端部1aにおける幅よりも長くなるように形成されている。
【0029】
本実施形態では、第1隔壁部3Aは、
図2に示すノズルプレート30が取り付けられる前面から背面プレート40が取り付けられる背面まで、液体吐出方向A1(長手方向A2)に対して所定角度θ傾いた方向に沿って延びている。また第2隔壁部3Bは、第1隔壁部3Aとは逆方向であって、液体吐出方向A1(長手方向A2)に対して所定角度θ傾いた方向に沿って延びている。これにより、圧力室1の液体吐出側の幅Wyは、圧力室1の液体供給側の幅Wxに比べて狭くなっている。換言すると、圧力室1の液体供給側の幅Wxは、圧力室1の液体吐出側の幅Wyに比べて広くなっている。
【0030】
そして、各圧力室1は、各圧力室1の第2端部1bにおける長手方向A2に垂直な面に沿う断面の断面形状が略正方形となるように形成されている。
【0031】
圧電素子となる隔壁部3の変位量が同じであっても、圧力室1の断面積が小さい方が断面積の変化率は大きくなる。そのため、圧力室1の内部に供給されているインクIの加圧効率は、断面積が小さい方が、断面積が大きい方よりも高い。
【0032】
圧力室1の幅Wは、
図2に示すようにノズル30aに近づくに連れて狭くなっている。つまりノズル30aに近づくほど、インクIの加圧効率は高くなる。したがって、ノズル30aに形成されるインクのメニスカスに対し、より近い位置で加圧することになり、隔壁部3の変位に対するメニスカスの振動応答性が向上する。
【0033】
また、シェアモード方式のインクジェットヘッド100では、隔壁部3(圧力室1)の高さhが高いほど、変位量が大きい。そのため、圧力室1の内部のインクIをより効率的に加圧するために、隔壁部3の高さhはできるだけ高いことが望ましい。更に、圧力室1の幅Wは、できるだけ狭くすることが望ましいため、高さhと幅Wは、h>>Wの関係となるのが望ましい。
【0034】
なお一方で、圧力室1の任意の断面を液体吐出方向A1に向かって流れる粘度μの流体の流路抵抗Rは、次式(1)で表わされる。
R=[8・μ(W+h)
2]/(W・h)
3・・・(1)
【0035】
圧力室内のインクを高速に流動させるには、流路抵抗Rを下げなければならない。しかしながら、シェアモード方式のインクジェットヘッドの場合、加圧効率の観点から流路断面積W・hが小さくなっており、上式(1)より流路抵抗Rが大きいことがわかる。またh>>Wであると、同じ流路断面積W・hで比較した場合、h=W時に比べ、上式のW+hの値が大きくなり、流路抵抗が高くなることもわかる。
【0036】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、圧力室1の幅Wが第1端部1aの側から第2端部1bの側に向かうに連れて広くなっている。また更に、幅Wが広がることにより、圧力室1の断面は正方形形状、つまりh=Wに近づく。
【0037】
したがって、圧力室1の第2端部1bに近づくに連れて流路抵抗Rを効率的に下げることができ、それに伴い圧力室1の系全体としても流路抵抗を下げることができる。その結果、圧力室1内でのインクIの流速が向上する。
【0038】
本実施形態によれば、第2端部1bにおける圧力室1の断面積が第1端部1aにおける圧力室1の断面積よりも大きいので、インクが圧力中心に流入する際の流路抵抗を減少させることができる。また、第1端部1aにおける圧力室1の断面積が第2端部1bにおける圧力室1の断面積よりも小さいので、隔壁部3の変位に対する液体の加圧効率が向上する。つまり圧力室1内の液体の圧力中心をノズル30a側にシフトさせることができ、メニスカスと圧力中心との距離を縮めることができる。したがって、圧力室1内への液体充填時間を短縮でき、かつ、よりメニスカスに近い位置で液体を加圧できるため、メニスカスを高加速度に振動させることができる。また、その結果として、ノズル30aから吐出したインクIを短く切ることができるため、微小液滴の吐出が可能となる。
【0039】
特に、本実施形態では、圧力室1の第1端部1aにおいては、インクに効率よく圧力を付与するために、圧力室1の幅を圧力室1の高さよりも短くしており、圧力室1の高さを一定として幅を第2端部に向かって長くなるよう変化させている。したがって、本実施形態では、効果的にメニスカスを高加速度に振動させることができ、効果的に微小液滴の吐出が可能となる。また、第2端部1bにおいて、圧力室1の断面形状が略正方形状であるので、更に効果的にインクの流量抵抗を下げることができ、更に効果的に微小液滴の吐出が可能となる。
【0040】
次に、本実施形態におけるインクジェットヘッド100の製造方法について説明する。まず、
図4に示すように、分極処理した2枚の圧電板24,24を、分極方向が互いに反対方向となるように反転して貼り合わせ、その後に研削などの加工により所望の寸法に加工し、圧電板とする。この圧電板を2枚作成し、一方を第1圧電板25A、他方を第2圧電板25Bとする。
【0041】
続いて第1圧電板25Aに、
図5に示すように隔壁溝26を加工することで、圧電体(アクチュエータ)からなる複数の第1隔壁部3Aを形成する(第1隔壁部形成工程)。これにより、第1基板11の一方の面11aに複数の第1隔壁部3Aが形成されたこととなる。ここで、隔壁溝26は、第1圧電板25Aにおいて液体吐出方向A1に延びる直線Aに対して所定角度θ傾けた、
図5に示す直線L11に沿う方向へ加工する。即ち、第1隔壁部形成工程では、後述する圧力室形成工程にて形成される圧力室1の幅が、ノズル30aに接続する第1端部1aよりも、第2端部1bにおいて長くなるように、第1隔壁部3Aを形成する。
【0042】
また、圧電板25Aに前面溝5を加工する。これらの溝加工については加工時に圧電板25Aがキュリー温度以上とならない様な、例えばダイヤモンドブレードによる切削加工などを用いることが好ましい。
【0043】
次に隔壁溝26の加工が施された第1圧電板25Aの全面に、導電層27を付与する。これは無電解めっきなどによって容易に実現できる。その後、
図6に示すように、隔壁部3の上面(先端部)3a上の導電層27を研磨などにより選択除去し、更に隔壁溝26内に導電層27を分断するよう、第1溝部17を加工する。つまり、第1圧電板25Aにおいて、第1基板11となる一方の面に、第2隔壁部3Bの先端部3aが接合される第1溝部17を形成する(第1溝部形成工程)。この際、溝部17は、圧電板25Aの液体吐出方向A1に延びる直線Aに対して、隔壁溝26を形成した際とは逆方向へ所定角度θ傾けた、
図6に示す直線L12に沿う方向へ加工する。
【0044】
なお、加工される第1溝部17について、幅は第1隔壁部3Aの幅と略等しく設定されるのが好ましく、またこれらは前述の通りダイヤモンドブレードによる切削加工で形成されるのが好ましい。その後、図示しないが第1隔壁部3Aの形成面全面に保護絶縁膜をスパッタ法などにより付与する。
【0045】
これにより、
図6に示す第1基板11及び第1基板11に立設された複数の第1隔壁部3Aを有する第1基板ユニット28Aが作製される。
【0046】
本実施形態では、第2基板12及び第2基板12に立設された複数の第2隔壁部3Bを有する第2基板ユニット28Bも、第1基板ユニット28Aと同一の製造方法で作成される。
【0047】
即ち、第2圧電板25Bに、
図5に示すように隔壁溝26を加工することで、圧電体(アクチュエータ)からなる複数の第2隔壁部3Bを形成する(第2隔壁部形成工程)。次に、隔壁溝26の加工が施された第2圧電板25Bの全面に、導電層27を付与する。次に、隔壁溝26内に導電層27を分断するよう、第2溝部18を加工する。つまり、第2圧電板25Bにおいて、第2基板12となる一方の面に、第1隔壁部3Aの先端部3aが接合される第2溝部18を形成する(第2溝部形成工程)。このように、第1基板ユニット28Aと同様の構成の第2基板ユニット28Bが、第1基板ユニット28Aと同一の製造方法で製造される。
【0048】
続いて隔壁部3A,3Bの先端部3a,3aに、接着剤を塗布し、基板11,12同士を対向させ、
図7に示すように、隔壁部3Aの先端部3aを溝部18に嵌合すると共に、隔壁部3Bの先端部3aを溝部17に嵌合する。これにより、第1隔壁部3Aと第2隔壁部3Bとが交互に幅方向に並設される。そして、隔壁部3Aの先端部3aが溝部18に接合され、隔壁部3Bの先端部3aが溝部17に接合され、吐出ユニット10を得る。つまり、第1隔壁部3Aの先端部3aを、第2基板12の一方の面に接合する共に、第2隔壁部3Bの先端部3aを、第1基板11の一方の面に接合することで、長手方向に延びる、隔壁部3A,3Bで仕切られた圧力室1を形成する(圧力室形成工程)。
【0049】
その後、吐出ユニット10の前面及び背面を研削及び研磨し、導電層27を除去すると共に所望の寸法形状に整える。また更に吐出ユニット10の上面に対し取り出し電極分断溝29を加工し、それぞれ電気的に分断された個別の取り出し電極4を得る。
【0050】
上記一連の工程により、吐出ユニット10を形成した後、
図1に示したようにノズルプレート30、背面プレート40、マニホールド50、フレキシブル基板60,60などの貼り合わせを行い、本実施形態に係るインクジェットヘッド100を得るに至る。
【0051】
本実施形態では、第1基板ユニット28Aと第2基板ユニット28Bとは同一構成のもの、即ち、第2基板ユニット28Bは、第1基板ユニット28Aと同一構成の基板ユニットを90度回転させたものを使用している。このように、2つの基板ユニット28A,28Bを製造するために、別構成の基板ユニットを製造する必要がないので、製造工程を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。
【実施例】
【0052】
上記実施形態で説明した吐出ユニット10について、圧電材料として富士セラミックス株式会社製の圧電セラミックスC−6を用いて、隔壁溝26と溝部17(18)を、液体吐出方向A1に対してそれぞれ所定角度θ=0.25°として形成した。
【0053】
図8は、圧力室を示す構造模式図である。
図8について、液体吐出方向A1の長さL=7[mm]、ノズル30a側の第1端部1aの幅W1=30[μm]、共通液室53側の第2端部1bの幅W2=90[μm]の圧力室1を得た。なお、ノズル30a側の第1端部1aの高さh1及び共通液室53側の第2端部1bの高さh2は共に210[μm]であった。
【0054】
同様に、比較のため、比較例として、液体吐出方向A1に沿って隔壁溝26と溝部17を形成し、W1=W2とした比較構造の吐出ユニットも製作した。比較例の吐出ユニットについて、W1及びW2が30[μm](比較例1)、60[μm](比較例2)、90[μm](比較例3)のものをそれぞれ準備した。
【0055】
さらに比較のため、比較例4として、圧力室の幅Wは一定で、高さhを可変とする吐出ユニットを準備した。具体的には、
図8に示す圧力室において、W1とW2を30[μm]、高さh1を210[μm]とし、高さhを液体吐出方向A1の反対方向に進むにしたがって深くしていくことで、高さh2を630[μm]とした。
【0056】
次に、準備したそれぞれの吐出ユニットを用いてインクジェットヘッドを作成し、目標インク吐出量を1[pl]以下に設定し、吐出性能を評価した。なお、全てのインクジェットヘッドにおいて、ノズルの直径は10[μm]とし、評価に用いるインクはエチレングリコール80wt%水溶液を用いた。
【0057】
まず、それぞれの隔壁部へ電圧10[V]を印加し、その際に生じるメニスカスの周波数を評価した。次に、得られた周波数の1/2にあたるパルス幅で、15[V]の電圧を印加し、その際に吐出されるインクの吐出量を評価した。これら一連の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
比較例1〜3において、圧力室の幅Wを狭めていくと、メニスカスの振幅は大きくなる半面、メニスカスの振動周波数は減少していくことがわかった。その結果、圧力室の幅Wが狭い比較例1においては、メニスカスの振動周波数が低いため、吐出インクを切ることができず、吐出量が大きくなってしまった。なお吐出量を下げるため、印加する電圧を落としたところ、インクが吐出しなくなってしまい、1[pl]以下のインク滴を得るに至らなかった。
【0060】
比較例2についても、比較例2と比較して吐出量の若干の低減は見られたものの、メニスカスの振動周波数が低く、1[pl]以下のインク滴を得るに至らなかった。また幅Wが広い比較例3の場合、メニスカスの周波数は高いものの、いずれの電圧条件においてもインクを吐出させることができなかった。
【0061】
比較例4においては、電圧15[V]の印加ではインクは吐出しなかった。なお電圧を上げていくことで、インクが吐出されることは確認されたが、その時の吐出量は1[pl]以上となってしまい、1[pl]以下のインク滴を得るに至らなかった。
【0062】
これに対して本実施例では、電圧15[V]を印加したところ、0.9[pl]の微小インク滴を吐出させることができた。以上の結果から、本実施例におけるインクジェットヘッドの構成では、メニスカスを高加速度に振動させることができ、微小量インクを吐出することができた。
【0063】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0064】
上記実施形態では、圧力室1の幅を第1端部1aから第2端部1bに向かって連続的に長くなるようにしたが、段階的に長くなるようにしてもよい。また、第1端部1aから第2端部1bに向かう途中で圧力室1の幅が変化しない区間があってもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第1端部1aにおいて圧力室1の幅が圧力室1の高さに対して相対的に短い場合について説明したが、第1端部1aにおいて圧力室1の高さが圧力室1の幅に対して相対的に短い場合であってもよい。その場合でも、第2端部1bに向かうに連れて圧力室1の高さが段階的又は連続的に高くなってもよく、また、高さが変化しない区間があってもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、第1基板11及び第2基板12に隔壁部3A,3Bが立設され、隔壁部3A,3Bが互い違いになるようにしたが、いずれか一方の基板に隔壁部3が立設され、他方の基板に隔壁部を接合するように構成してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、隔壁部3が高さ方向Cに分極された基端圧電体と基端圧電体とは反対方向に分極された先端圧電体とを接合して構成された圧電体である場合について説明したが、高さ方向に一方向に分極された圧電体で構成されていてもよい。