(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、並びに原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも1種を含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質装置で改質した後に分離されたライトリフォーメートを溶剤として抽出処理し、
前記抽出処理で分離される溶剤脱れきピッチを、粘結炭及び非微粘結炭を混合する際に、含有量が2〜4重量%となるように粘結材として加えて配合炭を得、
前記配合炭中の非微粘結炭の含有量が70〜90重量%であり、
得られる配合炭を加圧成型機による加圧が1.0〜2.0t/cmとなるように成型して成型炭を得る、コークス製造用成型炭の製造方法。
原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、並びに原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも1種を含む残油を、原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分を接触改質装置で改質した後に分離されたライトリフォーメートを溶剤として抽出処理し、
前記抽出処理で分離される溶剤脱れきピッチを、粘結炭及び非微粘結炭を混合する際に、含有量が2〜4重量%となるように粘結材として加えて配合炭を得、
前記配合炭中の非微粘結炭の含有量が70〜90重量%であり、
得られる配合炭を加圧成型機による加圧が1.0〜2.0t/cmとなるように成型して成型炭を得る成型炭製造工程と、
前記成型炭製造工程により製造される成型炭を乾留してコークスを得る乾留工程を備えるコークスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明は、粘結炭及び非微粘結炭を混合する際に特定のコークス製造用粘結材(以下、単に「粘結材」と称する。)を加え、得られる配合炭を成型してコークス製造用成型炭を製造する方法である成型炭製造工程に関する発明と、この成型炭製造工程により製造される成型炭を乾留してコークスを得る乾留工程を備えるコークスの製造方法についての発明である。なお、下記に詳述する説明において、“質量%”“と”重量%“とは同義である。
【0016】
[粘結炭及び非微粘結炭]
粘結炭とは、加熱したときに軟化溶融する性質(粘結性)を有する石炭をいい、瀝青炭に含まれる成分である。
【0017】
コークスの原料として、この粘結炭を用いるのは、コークスは、高炉内の充填層の圧力に耐えて大きな空隙率を達成できる十分に高い強度が必要であるとともに、微粉の発生を十分に小さくできる高い耐摩耗性が必要であり、この特性を付与するためである。
【0018】
前記非微粘結炭とは、単独では加熱しても粘結性を示さない、又は示してもその程度はごく僅かである石炭化度の低い石炭をいう。この非微粘結炭は世界的に粘結炭より産出量が多く、粘結炭より安価に入手できる。非微粘結炭の反射率としては、特に限定されないが、好ましくは、0.80%以下であり、より好ましくは0.76〜0.50%であり、更に好ましくは、0.75〜0.71%である。なお、非微粘結炭の反射率とは、ビトリニットの平均最大反射率であり、たとえば、JIS M8816(1992)で規定される方法(反射率測定方法)で測定することができる。
【0019】
また、非微粘結炭の最高流動度としては、特に限定されないが、好ましくは、2.70ddpm以下0.90ddpm以上であり、より好ましくは2.40〜1.00ddpmである。非微粘結炭の最高流動度とは、石炭の流動性を評価する指標の一つであり、流動性や反射率などを用いて、石炭のコークス化性を評価することができる。最高流動度は、JIS M8801(2004)で規定される方法(ギーセラープラストメーター法)で測定することができる。なお、上述の数値範囲は本測定法で得られた数値を常用対数で換算した値(単位:Log ddpm(Log Dial Division Per Minute))である。
【0020】
非微粘結炭の揮発分としては、特に限定されないが、好ましくは、45重量%以下5重量%以上であり、より好ましくは40〜20重量%であり、特に好ましくは、38〜30重量%である。なお、試料を900℃で7分間加熱したときの減量の試料に対する重量百分率を求め、これから同時に定量した水分を減じたものであり、たとえば、JIS M8812(2006)で規定される方法(揮発分定量方法)で、測定することができる。
【0021】
[粘結材の製造]
前記の粘結材は、原油の残油を特定の溶剤で抽出した残分である溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)をいう。
【0022】
前記原油の残油としては、原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油、並びに原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油から選ばれる少なくとも1種を含む残油があげられる。
【0023】
また、前記特定の溶剤としては、次の工程で得られる成分(ライトリフォーメート)を用いることができる。これは、まず、
図1に示すように、原料である原油を常圧蒸留して分留されるナフサ留分(主に沸点が30〜230℃の留分)を得る。次いで、これを必要に応じて水素化精製装置で水素化脱硫処理を行った後、常圧蒸留で軽質ナフサ留分(主に沸点30〜90℃の留分)と重質ナフサ留分(主に沸点80〜180℃の留分)に分留する。なお、この水素化脱硫処理は、常圧蒸留で軽質ナフサ留分と重質ナフサ留分に分留した後に、水素化精製装置にかけて行ってもよい。
【0024】
次に、接触改質装置によって、前記ナフサ留分(水素化脱硫処理を行った場合は、前記重質ナフサ留分)を改質して、炭素数5以上の芳香族系炭化水素を主成分とする留分であるリフォーメートを得る。このようにして得られたリフォーメートは、密度が0.78〜0.81g/cm
3、リサーチ法オクタン価が96〜104、モーターオクタン価が86〜89であり、芳香族分を50〜70容量%、飽和分を30〜50容量%含むものである。
【0025】
その後、精留装置によって、炭素数5の炭化水素を主成分とするライトリフォーメートと、炭素数6以上の芳香族系炭化水素を主成分とする留分とに分離する。この炭素数6以上の芳香族系炭化水素を主成分とする留分は、炭素数6以上の芳香族系炭化水素を主成分とするものであり、他に炭素数6以上の飽和炭化水素、オレフィン系炭化水素、及びナフテン系炭化水素などの成分を含むものである。ライトリフォーメート及び炭素数6以上の芳香族系炭化水素を主成分とする留分に含まれる各成分は、例えば、GC(ガスクロマトグラフ)分析(JISK2536(2003)「石油製品‐成分試験方法」)などにより求めることができる。
【0026】
ライトリフォーメートと炭素数6以上の芳香族系炭化水素を主成分とする留分との分離条件は、ライトリフォーメート中にベンゼンが含まれないように分離できれば特に限定されるものではないが、例えばライトリフォーメート中の芳香族系炭化水素を主成分とする留分が30容量%以下となるように適宜調整される。
【0027】
このようにして得られたライトリフォーメートは、前記の特定の溶剤として用いられる。このライトリフォーメートは、ブタンを6〜12容量%、ペンタンを60〜70容量%、ヘキサンを10〜30容量%含むものである。なお、ここでいうブタン、ペンタン、ヘキサンとは、各々炭素数4、5、6のノルマルパラフィンとイソパラフィンの混合物であってもよい。
【0028】
前記のライトリフォーメートを溶剤として前記の残油を抽出処理し、粘結材である溶剤脱れきピッチ(SDAピッチ)を得る。この抽出処理の際、溶剤抽出装置のミキサーなどの混合装置によって、前記の残油と溶剤とは混合され、この溶剤の臨界圧力以上、臨界温度以下の一定の条件に保たれている溶剤抽出装置のアスファルテン分離槽に供給される。このアスファルテン分離槽内では、残油に含まれるアスファルトが沈殿する。沈殿物は、アスファルテン分離槽の底部から連続的に抜出され、ストリッパーによってわずかに含まれる溶剤が除去されて、溶剤脱れきピッチとされる。なお、アスファルテン分離槽の上部から抜き出された油は、脱れき油(DAO:DeasphaltedOil)として利用される。
【0029】
前記の残油と溶剤(ライトリフォーメート)とを抽出処理する際、抽出温度を130℃〜200℃とし、溶剤と残油との流量比(溶剤/残油)を4/1〜8/1として行うことが好ましい。
【0030】
残油の抽出温度は、残油の性状に応じて適宜決定されるものであって、溶剤脱れきピッチの軟化点が一定となるように調整される。抽出温度が130℃未満であると、溶剤脱れきピッチの軟化点が200℃以上となり、溶剤抽出装置内からコークス製造用粘結材を取り出すことが困難となり、コークス製造用粘結材の生産性および歩留まりが低下する。一方、抽出温度が200℃を超えると、溶剤脱れきピッチの軟化点が130℃以下となり、原料石炭への配合が困難になったり、夏場の貯炭場で溶融固着したりする恐れがあり、ハンドリング面で好ましくない。より好ましい抽出温度は、130℃以上であり、150℃以下である。
【0031】
また、溶剤と残油との流量比(溶剤/残油)が4/1未満であると、溶剤が少ないため、アスファルテン分離槽での抽出効率が低下し、溶剤脱れきピッチの軟化点が130℃以下となり、原料石炭への配合が困難になったり、夏場の貯炭場で溶融固着したりする恐れがあり、ハンドリング面で好ましくない。一方、溶剤と残油との比(溶剤/残油)が8/1を超えると、必要以上の溶剤を循環させることで、溶剤抽出装置のエネルギー消費量が増大し、非経済的な運転となり、好ましくない。より好ましい流量比(溶剤/残油)は、5/1以上であり、6/1以下である。
【0032】
このようにして得られた溶剤脱れきピッチの軟化点は130〜200℃であり、溶剤脱れきピッチ中に残留する炭素の含有量(残留炭素分)が30質量%〜70質量%、水素と炭素との比(H/C比)が1.2以下のものとなる。
【0033】
なお、ここでいう軟化点とは、JIS K2207(2006)「石油アスファルト‐軟化点試験方法(環球法)」により測定した値であり、残留する炭素の含有量(残留炭素分)とは、JISK2270(2009)「原油及び石油製品‐残留炭素分の求め方」により測定した値であり、水素と炭素との比(H/C比)とは、ASTM D5291“Standard Test Methodsfor Instrumental Determination of Carbon,Hydrogen,andNitrogen in Petroleum Products and Lubricants”に準拠して、測定される値である。
【0034】
このような溶剤脱れきピッチは、軟化点の低い軽質パラフィンの含有量が十分に少なく、揮発分も十分に少ないものであり、コークス製造用粘結材として用いた場合に、優れた結合性が得られるものとなる。
【0035】
[コークスの製造]
前記の非微粘結炭は粘結性に乏しく、配合炭中の含有量を増加させるとコークスの強度が低下する。この非微粘結炭の使用比率を増大させる手法として、成型炭装入法等の原料炭事前処理法や粘結材添加によるコークスの製造方法が知られている。
【0036】
前記の成型炭装入法は、原料石炭の一部を加圧成型して成型炭(ブリケット)を製造し、粉炭と混合してコークス炉内へ装入する方法である。この成型炭装入法によりコークスの強度が向上する主な理由は以下の通りである。原料炭の一部を圧密することにより、石炭粒子間の間隔が狭くなり粘結性が向上する。成型炭部の膨張性が増大することにより、周囲にある粉炭部の圧密化が促進されることにより、粉炭部の粘結性も向上する。成型炭を製造する際に添加する粘結材により石炭の軟化溶融性が向上する。
【0037】
この成型炭装入法において用いられる成型炭は、まず、原料石炭の一部として、前記の粘結炭の一部と非微粘結炭の一部とを、混練機で混合、混練する。この際、前記粘結材及びコールタール等のバインダーを加えることにより、配合炭が製造される。得られた配合炭を成型機で成型することにより、成型炭が得られる。
【0038】
前記配合炭中の前記粘結材の含有量は、0.5重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましい。0.5重量%未満だと、加圧成型により得られる成型炭の強度が十分でないという問題点を生じることがある。一方、含有量の上限は、10重量%が好ましく、5重量%がより好ましい。10重量%より多いと、粘結材にかかるコストが増大するという問題点を生じることがある。
【0039】
また、前記配合炭中の非微粘結炭の含有量は、10重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。10重量%未満だと原料炭にかかるコストが増大するという問題点を生じることがある。一方、含有量の上限は、90重量%が好ましく、80重量%がより好ましい。90重量%より多いと十分な強度を有するコークスが製造できないという問題点を生じることがある。
【0040】
さらに、前記配合炭中の前記コールタールの含有量は、3重量%以上が好ましく、4重量%以上がより好ましい。3重量%未満だと加圧成型により得られる成型炭の強度が十分でないという問題点を生じることがある。一方、含有量の上限は、8重量%が好ましく、7重量%がより好ましい。8重量%より多いとバインダーにかかるコストが増大するという問題点を生じることがある。
【0041】
上記の成型機による成型は、加圧成型機が用いられる。これにより、成型炭を圧密にすることができ、粘結性を向上させることができる。この加圧成型機による加圧は、1.0〜2.0t/cmがよく、0.8t/cm〜1.2t/cmが好ましい。加圧が上記範囲より小さいと、十分な強度を有する成型炭が得られないという問題点を生じることがある。一方、加圧が上記範囲より大きいと、成型炭の生産性が低下するという問題点を生じることがある。
【0042】
前記の成型炭製造工程により製造された成型炭は、原料石炭の残りの粘結炭と非微粘結炭と共にコークス炉に装入され、乾留されることにより、コークスが得られる。この乾留時の条件としては、温度1100〜1300℃で18〜20時間乾留を行う。
【0043】
次に、
図2を用いて、成型炭装入法を用いたコークスの製造法について具体例を説明する。まず、粉砕された原料炭(粘結炭及び非微粘結炭)の一部を切り出し、成型炭の強度を向上させるためのバインダーを添加し、混錬機にて、通常50〜80℃の温度で石炭とバインダーとの十分な混合を行う。混合する時間は特に限定されないが、通常は数分間程度である。バインダーとしては、前記の粘結材とコールタールが一般に用いられるが、前記の粘結材は粉末状にして原料炭中にあらかじめ混合しておき、コールタールは液状で原料炭と石油系粘結材の混合物に添加して使用される。
【0044】
バインダーを混合した原料炭混合物である配合炭は、成型機を用いて上記の圧力条件下で加圧成型され、成型炭が製造される。製造された成型炭は、所定の割合(20〜30%)で、残りの原料炭(粘結炭及び非微粘結炭)の粉炭(70〜80%)と混合され、コークス炉へと装入される。
【0045】
成型炭は圧密されてからコークス炉へ搬送されるまでの間に一度石炭塔などの貯槽に貯蔵されるため、大量の成型炭が貯蔵されると、成型炭はその重さ分だけの荷重を受ける。また、成型炭のコークス炉への搬送は、通常、ベルトコンベアーで搬送されるが、ベルトコンベアのベルトの乗り継ぎでの衝撃もある。このような衝撃や荷重などを受けるため、成型炭の強度が低いと粉化の度合いが大きくなり、結果としてコークス強度の向上効果が低下する。
本発明の手法により製造される成型炭は、高い強度を有しており、従来の手法により製造される成型炭よりも、衝撃や荷重による粉化を抑制することが可能である。よって、本発明の手法によって製造される成型炭を用いることで、より強度の高いコークスを製造することができる。
【実施例】
【0046】
本発明の実施例について以下に示す。なお、以下の実施例は本発明の効果を確認するための例であり、本発明はこの例に限定されるものではない。本発明は本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0047】
[粘結材の製造]
図1に示す原油の精製工程において用いられる常圧蒸留装置によって原油を常圧蒸留して得られる常圧蒸留残油を、さらに減圧蒸留装置によって減圧蒸留して得られる減圧蒸留残油である残油を得た。
一方、
図1に示す原油の精製工程において用いられる常圧蒸留装置によって原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分(主に沸点が30〜230℃の留分)を、水素化精製装置で水素化脱硫処理を行った後、常圧蒸留を行って、重質ナフサ(主に沸点80〜180℃の留分)を得、これを接触改質装置によって、前記重質ナフサを改質してリフォーメートを得た。次いで、このリフォーメートを精留装置にかけ、ライトリフォーメートを得た。このライトリフォーメートの成分は、ブタン(ノルマルブタンとイソブタンの混合物)を7容量%、ペンタン(ノルマルペンタンとイソペンタンの混合物)を66容量%、ヘキサン(ノルマルヘキサンとイソヘキサンの混合物)を27容量%含むものであった。
得られた残油を、得られたライトリフォーメートを用いて抽出処理し、分離された溶剤脱れきピッチからなる粘結材(表1におけるA)を得た。結果を表1に示す。
【0048】
また、前記残油を、ユリカプロセスによってさらに熱分解して、ユリカピッチからなる粘結材(表1におけるB)を得た。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
(実施例1)
粘結炭(反射率1.46%、最高流動度2.03ddpm、揮発分18.6%)を27.0重量%、非微粘結炭C(反射率0.70%、最高流動度2.64ddpm、揮発分36.4%)を70.0重量%、表1に示す粘結材Aを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、混錬したのち(混錬温度:50℃、回転数350rpm、3分間)、ダブルロール型成型機を用いて成型することで(回転数4.0rpm、成型圧力1.0t/cm)、成型炭を作製した。作製した成型炭のうち粒径25mm以上の成型炭5kgを内径50cm、長さ50cmの円筒状のドラムに投入し、ドラム50回転後における粒径15mm以上の成型炭の残留率により、成型炭の強度を評価した。測定結果は93.6%であった。結果を表2に示す。
【0051】
(比較例1)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭Cを70.0重量%、表1に示す粘結材Bを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例1と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例1と同様の条件で成型し、成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は93.0%であった。結果を表2に示す。
【0052】
(実施例2)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭D(反射率0.72%、最高流動度1.00ddpm、揮発分36.8%)を70.0重量%、表1に示す粘結材Aを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例1と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例1と同様の条件で成型し、成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は98.0%であった。結果を表2、表3に示す。
【0053】
(比較例2)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭Dを70.0重量%、表1に示す粘結材Bを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例1と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例1と同様の条件で成型し、成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は83.6%であった。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
(実施例3)
実施例1で使用した粘結炭を28.0重量%、非微粘結炭Dを70.0重量%、表1に示す粘結材Aを2.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例1と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例1と同様の条件で成型し、成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は96.0%であった。結果を表3に示す。
【0056】
(実施例4)
実施例1で使用した粘結炭を26.0重量%、非微粘結炭Dを70.0重量%、表1に示す粘結材Aを4.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例1と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例1と同様の条件で成型し、成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は98.2%であった。結果を表3に示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表2より、溶剤としてライトリフォーメートを用いて得られた粘結材Aを添加して成型した実施例1および実施例2の成型炭は、ユリカピッチである粘結材Bを添加して成型した比較例1および比較例2の成型炭よりも強度が優れていることが確認できた。特に、非微粘炭Dを使用した実施例2と比較例2との比較では、成型炭の強度に明確な差異が生じている。
成型炭の強度が高いことは、成型炭がコークス炉に導入されるまでのベルトコンベアにて搬送される過程において、衝撃や荷重による粉化ことを抑制することが可能であり、強度が高い成型炭であれば、粉化する成型炭の割合を削減することが期待できる。その割合は成型炭を用いて製造されるコークスの製造量が多いほど、求められる強度のコークスを得るための成型炭の強度差による歩留への影響差は顕著に示されることが期待される。
【0059】
よって、溶剤としてライトリフォーメートを用いて得られた粘結材Aを添加する本発明の手法を用いることにより、比較的成型性の劣る石炭を使用しても十分な強度を有する成型炭を製造することができる。
表3より、粘結材(A)の添加量を変更しても、従来の粘結材(B)に比べて、高い成型炭強度が発現することがわかる。
【0060】
(実施例5)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭E(反射率0.74%、最高流動度2.34ddpm、揮発分36.0%)を70.0重量%、表1に示す粘結材Aを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例1と同様の条件で混錬したのち、(混錬温度:50℃、回転数420rpm、1.5分間)、ダブルロール型成型機を用いて成型することで(回転数3.0rpm、成型圧力1.0t/cm)成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は96.8%であった。結果を表4に示す。
【0061】
(比較例3)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭Eを70.0重量%、表1に示す粘結材Bを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して5.0重量%となる量のコールタールを添加して、実施例5と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例5と同様の条件で成型することで成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は93.8%であった。結果を表4に示す。
【0062】
(実施例6)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭Eを70.0重量%、表1に示す粘結材Aを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して4.5重量%となる量のコールタールを添加して、実施例5と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例5と同様の条件で成型することで成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は94.8%であった。結果を表4に示す。
【0063】
(比較例4)
実施例1で使用した粘結炭を27.0重量%、非微粘結炭Eを70.0重量%、表1に示す粘結材Bを3.0重量%ずつそれぞれ配合し、石炭水分を9.0重量%に調整した配合炭を作製した。この配合炭に対して4.5重量%となる量のコールタールを添加して、実施例5と同様の条件で混錬したのち、ダブルロール型成型機を用いて実施例5と同様の条件で成型することで成型炭を作製した。成型炭の強度を実施例1と同様の方法で測定した。測定結果は87.8%であった。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
表4より、溶剤としてライトリフォーメートを用いて得られた粘結材Aを添加して成型した実施例5および実施例6の成型炭は、ユリカピッチである粘結材Bを添加して成型した比較例3および比較例4の成型炭よりも強度が優れていることが確認できた。特に、実施例5および比較例3に対して、コールタールの添加量を削減した実施例6と比較例4との比較では、成型炭の強度に明確な差異が生じている。
【0066】
よって、溶剤としてライトリフォーメートを用いて得られた粘結材Aを添加する本発明の手法を用いることにより、コールタールの添加量を削減した条件においても、粘結材Bを添加した場合に比べて、高い強度を有する成型炭を製造することができる。
【0067】
(実施例7)
粘結材Aを添加して製造した実施例1の成型炭を粘結炭と非微粘結炭を含むコークス製造用原料炭に配合し、乾留試験炉において乾留することで(乾留温度1250℃、乾留時間18時間)、コークスを製造した。このようにして得られたコークスについて熱間反応後強度(CSR:Coke Strength after CO
2 Reaction)を測定した。測定結果は59.8%であった。結果を表5に示す。
なお、CSRは、粒度20mmのコークス200gを1100℃の高温でCO
2ガスと2時間反応させたのち、I型ドラムにより回転強度を測定する方法により行った。
【0068】
(比較例5)
粘結材Bを添加して製造した比較例1の成型炭を実施例7と同様のコークス製造用原料炭に配合し、乾留試験炉において実施例7と同一条件下で乾留することで、コークスを製造した。このようにして得られたコークスについて実施例7と同一条件下で熱間反応後強度を測定した。測定結果は57.2%であった。結果を表5に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5より、溶剤としてライトリフォーメートを用いて得られた粘結材Aを添加して成型した成型炭を配合して製造した実施例7のコークスは、ユリカピッチである粘結材Bを添加して成型した成型炭を配合して製造した比較例5のコークスよりも熱間反応後強度が優れていることが確認できた。これは、実施例5のコークスでは溶剤としてライトリフォーメートを用いて得られた粘結材によって石炭軟化溶融時に炭素基質が改質されたため、コークス炭素基質の強度が向上したためであると考えられる。つまり、本発明の成型炭を調製して、成型炭からコークスを製造すれば、通常の成型炭から得られるコークスよりも、得られるコークスに比べ、コークスが充填される高炉内における通液性・通風性を向上させ、高炉における運転効率の向上とコスト削減が期待できる。