(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記油溶性染料がベンゼン環構造、ナフタレン環構造、多環芳香族炭化水素構造、芳香族ヘテロ環構造のうちのいずれか1つの構造を有する請求項1に記載の電子写真用ベルト。
前記油溶性染料がナフタレン環構造、多環芳香族炭化水素構造又は多環芳香族ヘテロ環構造のいずれか1つの構造を1分子あたり1個以上を有する、もしくはベンゼン環又は単環芳香族ヘテロ環構造を1分子あたり複数有する請求項2に記載の電子写真用ベルト。
前記油溶性染料がアントラキノン系染料、ナフトール系染料、アゾ系染料、アジン系染料、トリフェニルメタン系染料及びフタロシアニン系染料からなる群から選ばれたものである請求項3に記載の電子写真用ベルト。
中間転写ベルトを具備する電子写真画像形成装置であって、該中間転写ベルトが、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子写真用ベルトであることを特徴とする電子写真画像形成装置。
前記中間転写ベルトのトナー像担持面側に2次転写ローラが接触させられており、該中間転写ベルトの該トナー像担持面とは反対側の面に、対向ローラが接触させられており、該対向ローラに対して直流バイアスが印加可能に構成されている請求項9に記載の電子写真画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者は、特許文献1のように無機物等のフィラーを使用せずに電解質のブリードを抑制できる方法について検討を重ねた。
その結果、バインダー樹脂としての結晶性樹脂と、該バインダー樹脂中に分散させてなる電解質とを含む樹脂混合物によって形成された電子写真用ベルトの厚み方向に直流電圧を印加した場合における電解質のブリードは、電子写真用ベルト中の非晶領域を電解質が移動することにより生じていることが分かった。
【0010】
図4Aは、本発明に係る電子写真用ベルト401の概略断面図であり、
図4Bは、
図4Aの断面部分Aにおけるバインダー樹脂の状態を模式的に表したものである。
図4Bに示したように、導電性ベルト中においては、バインダー樹脂としての結晶性樹脂のポリマー鎖が配列した結晶領域(CR)と、ポリマー鎖がランダムに存在している非晶領域(AM)とが存在している。
そして、電解質は、ポリマー鎖が密に配列した結晶領域(CR)には容易に入り込めず、もっぱら非晶領域(AM)に存在する。また、電解質は、非晶領域(CR)を通って電子写真用ベルト内を移動し、ブリードしてくるものと考えられる。
【0011】
そこで、電解質の通路となる非晶領域(CR)に嵩高い分子構造を有する物質を存在させることによって電解質のブリードの抑制を図ることについて検討を行った。具体的には、バインダー樹脂としての結晶性樹脂中に電解質とともに油溶性染料を混合させた樹脂組成物を用いて電子写真用ベルトを形成した。その結果、このような電子写真用ベルトは、前記した目的をよく達成し得るものであることを見出した。
【0012】
すなわち、油溶性染料は、バインダー樹脂に対する相溶性に優れており、結晶性樹脂の非晶領域に存在させることができる。そのため、特許文献1に記載のハイドロタルサイトを用いた場合と異なり、電子写真用ベルトの表面性に与える影響が殆んど無いか、又は、極めて軽微である。
また、油溶性染料は嵩高い構造を有しているため、非晶領域に存在させることによって電解質の移動経路が塞がれ、電解質のブリードを阻害しているものと考えられる。そのため、電子写真用ベルトの厚さ方向に直流電圧を印加した場合においても、電解質のブリードが抑制されているものと考えられる。
更に、結晶性樹脂中に油溶性染料を含有させた樹脂組成物は、油溶性染料が有する嵩高い構造のために、当該樹脂組成物の結晶化速度を低下させるという効果をも奏する。これは、かかる樹脂組成物を用いて電子写真用ベルトを成形する場合における、電子写真用ベルトの表面の粗面化の制御に有利に作用するものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本発明における電子写真用ベルトはバインダー樹脂としての結晶性樹脂と電解質と油溶性染料とからなる樹脂組成物からなる。以下これらの材料について説明する。
【0015】
<結晶性樹脂>
樹脂は、その結晶構造の有無により、結晶性樹脂と非晶性樹脂に分けることができ、結晶性樹脂は結晶成分と非晶成分を有するが、例えば、DSC(示差走査熱量計)で昇温速度10℃/minで測定したときに融点付近に明瞭な融解吸熱ピークが観測されるもの、X線回折強度で2θ/が5〜50°の間に明瞭なピークが観測されるものなどを結晶性樹脂と定義することができる。
結晶性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、テトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリエーテルニトリルなどが挙げられ、結晶性をなるべく失わない範囲内で共重合や変性が行われていてもよい。またこれらを単独で、あるいは2種類以上組み合わせて用いることも可能である。
結晶性樹脂は、前記樹脂組成物の全質量に対して、50質量%以上、特には60質量%以上、さらには70質量%以上とすることが好ましい。また、上限値としては、電子写真用ベルトに必要な導電性を発現させるための電解質の含有量を考慮すると、98質量%以下、特には、95質量%以下、更には、90質量%以下とすることが好ましい。
【0016】
<電解質>
電解質としては、結晶性樹脂中に添加された際に陽イオンと陰イオンに電離することで導電性を発現する物質である。電解質の具体例を以下に示す。テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩、アルカリ金属或いはアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、パーフルオロアルキル及びパーフルオロアルケニル等のスルホン酸塩、パーフルオロアルキル及びパーフルオロアルケニル等のカルボン酸塩、パーフルオロアルキル及びパーフルオロアルケニル等の第4級アンモニウム塩、スルホニルイミド、スルホニルメチド、トリフルオロメチル硫酸塩等。これらの中から、1種又は2種以上を併用することができる。これらの中で、アルキル硫酸の第4級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル及びパーフルオロアルケニル等のカルボン酸塩及びパーフルオロアルキル及びパーフルオロアルケニル等の第4級アンモニウム塩などが好ましい。
【0017】
電解質は前記樹脂組成物の全質量に対して、抵抗均一性の観点から0.1質量%以上とするのが好ましく、結晶性樹脂との相溶性の観点から10質量%以下とすることが好ましい。
【0018】
<油溶性染料>
本発明に係る油溶性染料としては、水に不溶もしくは難溶であり、結晶性樹脂中に均一に分散することが可能なものであれば、特に限定されない。代表的な油溶性染料としては、例えば、アントラキノン系染料、ナフトール系染料、アゾ系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料、アジン系染料、チオインジゴ系染料などが挙げられる。
【0019】
アントラキノン系染料の具体例を以下に挙げる。トルイジンブルー、C.I.ソルベントブルー11、12、35、59、74、1−アミノアントラキノン、2−アミノアントラキノン、ヒドロキシエチルアミノアントラキノン、C.I.ソルベントバイオレット47等。
【0020】
ナフトール系染料の具体例を以下に挙げる。オレンジ205(橙色205号)、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントレッド26等。
【0021】
アゾ系染料の具体例を以下に挙げる。赤色2号(アマランス)、赤色40号(アルラレッドAC)、赤色102号(ニューコクシン)、黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットイエローFCF)、C.I.ソルベントイエロー7、8、20、23、107、C.I.ソルベントオレンジ8、14、C.I.ソルベントブラック4等。
【0022】
トリフェニルメタン系染料の具体例を以下に挙げる。青色1号(ブリリアントブルーFCF)、ソルベントブルー70、緑色3号(ファーストグリーンFCF)、C.I.ソルベントイエロー30等。
【0023】
フタロシアニン系染料の具体例を以下に挙げる。C.I.ダイレクトブルー86、C.I.ベーシックブルー140、長鎖アルキル変性フタロシニアン等。
【0024】
アジン系染料の具体例を以下に挙げる。C.I.ソルベントブラック5、C.I.ソルベントブラック7、スピリットブラックSB等。
【0025】
チオインジゴ系染料の具体例を以下に挙げる。青色2号(インジゴーカーミン)等。
【0026】
ベルト表面への電解質のブリードを抑制する観点から嵩高い構造であるベンゼン環構造、ナフタレン環構造、多環芳香族炭化水素構造、芳香族ヘテロ環構造のいずれか1つの構造を有する油溶性染料が好ましい。多環芳香族炭化水素構造としては例えば、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、クリセン、ピレン、トリフェニレン、コランニュレン、コロネン、オバレンなどの構造が挙げられる。また芳香族ヘテロ環構造としては例えば、単環系として、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジンなどの構造が挙げられ、複環系として、キノリン、キナゾリン、フタラジン、プテリジン、クマリン、クロモン、ベンゾジアゼビン、インドール、イソインドール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、プリン、アクリジン、フェノキサジン、フェノチアジンなどの構造が挙げられる。
【0027】
電解質のブリードを抑制する分子の嵩高さの観点からナフタレン環構造、多環芳香族炭化水素構造又は多環芳香族ヘテロ環構造のいずれか1つの構造を1分子あたり1個以上を有する、もしくはベンゼン環又は単環芳香族ヘテロ環構造を1分子あたり複数有することがさらに好ましく、該当する染料としては、アントラキノン系染料、ナフトール系染料、アゾ系染料、アジン系染料、トリフェニルメタン系染料及びフタロシアニン系染料らが挙げられる。
【0028】
油溶性染料の添加量は前記樹脂組成物の全質量に対して、電解質のブリード抑制の観点から0.1質量%以上とするのが好ましく、結晶性樹脂との相溶性の観点から10質量%以下とすることが好ましい。
【0029】
<添加剤>
本発明における電子写真用ベルトを構成する他の成分としては、イオン導電剤(例えば、高分子イオン系導電剤、界面活性剤)、導電性高分子、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系、リン、硫黄系など)、紫外線吸収剤、有機顔料、無機顔料、pH調整剤、架橋剤、相溶化剤、離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系など)、架橋剤、カップリング剤、滑剤、絶縁性フィラー(例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカ、クレー、カオリン、ハイドロタルサイト、シリカ、アルミナ、フェライト、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ニッケル、ガラス粉、石英粉末、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、熱硬化性樹脂の微粒子など)、導電性フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバー、導電性酸化チタン、導電性酸化錫、導電性マイカ)、イオン性液体などを例示することができる。これらを単独で、あるいは2種類以上組合せて用いることも可能である。
【0030】
<電子写真用ベルト>
本発明に係る電子写真用ベルトは、上記した樹脂組成物を含むものである。具体的には、例えば、上記樹脂組成物をペレット化し、連続溶融押出成形法、射出成形法、ストレッチブロー成形法、あるいはインフレーション成形法など公知の成形方法を用いて成形することでシームレス形状の電子写真用ベルトを得られる。前記シームレスベルトの成形方法として特に好ましいのは、連続溶融押出成形法やストレッチブロー成形法である。連続溶融押出成形法としては、例えば押し出したチューブの内径を高精度で制御可能な下方押出方式の内部冷却マンドレル方式、及びバキュームサイジング方式などが挙げられる。ストレッチブロー成形法による電子写真ベルトの製造方法は、前記の熱可塑性樹脂組成物のプリフォームを成形する工程と、前記プリフォームを加熱する工程と、加熱後の前記プリフォームをシームレスベルト成形用金型に装着し、その後、その成形用金型内に気体を流入し延伸成形を行う工程と、その延伸成形により得られる延伸成形物を切断してシームレスなベルトを得る工程とを有する。
【0031】
本発明の電子写真用ベルトの厚みは10μm以上500μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下が特に好ましい。また、本発明の電子写真用ベルトは、ベルトとして使用するほか、ドラムあるいはロールなどに巻き付けたり、被覆したりして使用しても良い。また、本発明の電子写真用ベルトの表面には、その外観改良やトナー等の離型性改良のために処理剤の塗布、研磨処理等の表面処理を施しても良い。
【0032】
また、本発明に係る電子写真用ベルトの用途は特に制限はないが、例えば、中間転写ベルト、搬送転写ベルト、感光体ベルトなどに好適に用いられる。特に中間転写ベルトとして好適に使用することができる。また、電子写真用ベルトを中間転写ベルトとして用いる場合には、体積固有抵抗率が1×10
2Ωcm以上1×10
14Ωcm以下であることが好ましい。前記体積固有抵抗率が1×10
2Ωcm以上であれば、電気抵抗が著しく低くなることを抑え、転写電界を容易に得ることができる。その結果として、電子写真画像へのガサツキ等の発生を有効に抑制することができる。
また、体積固有抵抗率が1×10
14Ωcm以下とすることで、転写電圧の増加を抑え、電源の大型化、コストの増大を避け得る。ただし、転写プロセスによっては、上記体積固有抵抗率の範囲外であっても転写可能となる場合もあるため、体積固有抵抗率は必ずしも上記範囲に限定されない。
【0033】
<電子写真画像形成装置>
本発明に係る電子写真用ベルトを用いる電子写真画像形成装置について説明する。まず、
図1により本実施形態の画像形成装置について説明する。本実施形態の画像形成装置は、複数色の画像形成ステーションを本発明の電子写真用ベルト(以下中間転写ベルトと呼称する)の回転方向に並べて配置した、所謂タンデム型の構成を有する。なお、以下の説明では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色に関する構成の符号に、それぞれ、Y、M、C、kの添え字を付しているが、同様の構成については添え字を省略する場合もある。
【0034】
図1の符号1Y、1M、1C、1kは感光ドラム(感光体又は像担持体)で、感光ドラム1の周囲には、帯電装置2Y、2M、2C、2k、露光装置3Y、3M、3C、3k、現像装置4Y、4M、4C、4k、中間転写ベルト(中間転写体)6が配置される。感光ドラム1は、矢印Fの方向に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。帯電装置2は、感光ドラム1の周面を所定の極性、電位に帯電する(1次帯電)。露光装置3としてのレーザビームスキャナーは、不図示のイメージスキャナー、コンピュータ等の外部機器から入力される画像情報に対応してオン/オフ変調したレーザ光を出力して、感光ドラム1上の帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム1面上に目的の画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0035】
現像装置4Y,4M,4C,4kは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(k)の各色成分のトナーを内包する。そして、画像情報に基づいて使用する現像装置4を選択し感光ドラム1面上で現像剤(トナー)による現像が行われ、静電潜像がトナー像として可視化される。本実施形態では、このように静電潜像の露光部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。また、このような帯電装置、露光装置及び現像装置により画像形成手段を構成している。
【0036】
また、中間転写ベルト6は、無端状のベルトで、感光ドラム1の表面に当接されるよう配設され、複数の張架ローラ20、21、22に張架されている。そして、矢印Gの方向へ回動するようになっている。本実施の形態では、張架ローラ20は中間転写ベルト6の張力を一定に制御するようにしたテンションローラ、張架ローラ22は中間転写ベルト6の駆動ローラ、張架ローラ21は2次転写用の対向ローラである。また、中間転写ベルト6を挟んで感光ドラム1と対向する1次転写位置には、それぞれ、1次転写ローラ5Y、5M、5C、5kが配置されている。
【0037】
感光ドラム1にそれぞれ形成された各色未定着トナー像は、1次転写ローラ5に定電圧源又は定電流源によりトナーの帯電極性と逆極性の正極性の1次転写バイアスを印加することにより、中間転写ベルト6上に順次静電的に1次転写される。そして、中間転写ベルト6上に4色の未定着トナー像が重ね合わされたフルカラー画像を得る。中間転写ベルト6は、このように感光ドラム1から転写されたトナー像を担持しつつ回転する。1次転写後の感光ドラム1の1回転毎に感光ドラム1表面は、クリーニング装置11で転写残トナーをクリーニングし繰り返し作像工程に入る。
【0038】
また、記録材7の搬送経路に面した中間転写ベルト6の2次転写位置においては、中間転写ベルト6のトナー像担持面側に2次転写ローラ(転写部)9を接触させられている。また、2次転写位置の中間転写ベルト6の裏面側、すなわち、トナー像担持面とは反対側の面には、2次転写ローラ9の対向電極をなす、直流バイアスが印加可能に構成された対向ローラ21が接触させられている。中間転写ベルト6上のトナー像を記録材7に転写する際、対向ローラ21にはトナーと同極性の直流バイアスが転写バイアス印加手段28により印加され、例えば−1000〜−3000Vが印加され−10〜−50μAの電流が流れる。このときの転写電圧は転写高圧検知手段29により検知される。更に、2次転写位置の下流側には、2次転写後の中間転写ベルト6上に残留したトナーを除去するクリーニング装置(ベルトクリーナ)12が設けられている。
【0039】
2次転写位置に導入された記録材7は、2次転写位置で挾持搬送され、その時に、2次転写ローラ9の対向ローラ21に2次転写バイアス印加手段28から所定に制御された定電圧バイアス(転写バイアス)が印加される。対向ローラ21にはトナーと同極性の転写バイアスが印加されることで転写部位にて中間転写ベルト6上に重ね合わされた4色のフルカラー画像(トナー像)を記録材7へ一括転写し、記録材上にフルカラーの未定着トナー像が形成される。トナー画像の転写を受けた記録材7は不図示の定着器へ導入され加熱定着される。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例では電子写真用ベルトのうちの電子写真用シームレスベルトを作製した。実施例及び比較例に用いた分析及び物性の測定は次のように行った。
【0041】
(特性値の測定法、評価法)
実施例及び比較例で作製した電子写真用シームレスベルトの特性値の測定方法及び評価方法は次のとおりである。
【0042】
(1)表面固有抵抗率(ρs)
測定装置は、高抵抗計(商品名:ハイレスタUP MCP−HT450型、三菱化学アナリティック(株)製)の主電極の内径が50mm、ガード・リング電極の内径が53.2mm、外径が57.2mmのプローブ(商品名:UR−100、三菱化学アナリティック(株)製)を用いてJIS−K6911に準拠する形で測定した。電圧500Vを10秒間ベルトに印加し、ベルトの周方向に表面固有抵抗率を4点測定し、その平均値を採用した。この値を初期の電気抵抗率とした。
【0043】
実施例及び比較例で得られた電子写真用シームレスベルトを、
図1で示されるような装置構造を有するタンデム型のフルカラー電子写真画像形成装置(商品名:LBP−7700C、キヤノン(株)製)の転写ユニットに中間転写ベルトとして装着し、転写媒体にシアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像をプリントした。
なお、転写媒体には、温度23℃、相対湿度45%の環境下で1日放置した、Ra(算術平均粗さ)が4μm、Rz(十点平均粗さ)が15μmの表面が粗い用紙を用いた。
耐久後抵抗率として100,000枚プリントした後の電子写真用ベルトの表面固有抵抗率を測定した。この値を耐久後の電気抵抗率とした。そして、以下の基準で評価した。
・評価基準
A :耐久後抵抗率の対数値から初期抵抗率の対数値を引いた値が0.3未満。すなわち、電解質のブリードが少ない。
B :耐久後抵抗率の対数値から初期抵抗率の対数値を引いた値が0.3以上。すなわち、電解質のブリードが多い。
なお、本評価によれば、初期抵抗率に比べて耐久後抵抗率が高くなるほど、電解質がブリードすることにより電気抵抗が上昇したと考えられることから、電解質のブリードの程度を判断することができる。
【0044】
(2)転写画像特性
電子写真用シームレスベルトを
図1で示されるような装置構造を有するタンデム型のフルカラー電子写真画像形成装置(商品名:LBP−7700C、キヤノン(株)製)の転写ユニットに中間転写ベルトとして装着し、転写媒体にシアンのベタ画像とマゼンタのベタ画像をプリントした。なお、転写媒体には、温度23℃、相対湿度45%の環境下で1日放置した、Ra(算術平均粗さ)が4μm、Rzjis(十点平均粗さ)が15μmである、表面が粗い紙を用いた。
10枚目にプリントされた電子写真画像(以下、「画像1」ともいう)と、100,000枚目にプリントされた電子写真画像(以下、「画像2」ともいう)とを各々目視で観察し、二次転写性の評価を行った。その評価基準は以下のように設定した。
・評価基準
A :二次転写ムラが確認できないもの。
B :小さな二次転写ムラが画像域全体に渡って確認できるもの。
C :中程度の二次転写ムラが画像域全体に渡って確認できるもの。
【0045】
(実施例及び比較例に用いた電子写真用シームレスベルト用樹脂組成物の材料)
後述の実施例及び比較例に用いた樹脂組成物の材料を表1〜表4に示す。表3の油溶性染料については、ベンゼン環構造、ナフタレン環構造、多環芳香族炭化水素構造、芳香族ヘテロ環構造のうち存在する構造について示した。なお、各例の材料の配合については表5及び8に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
上記電解質1〜3は何れもヘキサフルオロプロペンオリゴマーの誘導体であって、分子内にパーフルオロアルケニル基を有し、結晶性樹脂との混合によりアニオンとカチオンとに解離可能なフッ素系界面活性剤である。
【0048】
【表3】
【0049】
上記表3に記載の各油溶性染料の化学構造を以下に示す。
油溶性染料1(スピリットブラックSB(アジン系))
【化1】
油溶性染料2(ソルベントイエロー7(アゾベンゼン系))
【化2】
油溶性染料3(ソルベントブルー70(トリフェニルメタン系))
【化3】
油溶性染料4(トルイジンブルー(アントラキノン系))
【化4】
オレンジ205
(ナフトール系)
【化5】
ダイレクトブルー86
(フタロシアニン系)
【化6】
【0050】
【表4】
【0051】
〔実施例1〕
二軸押出し機(商品名:TEX30α、日本製鋼所(株)製)を用いて、表5に記載の配合にて熱熔融混練して樹脂組成物を調製した。熱熔融混練温度は260℃以上、280℃以下の範囲内となるように調整し、熱熔融混練時間はおよそ3〜5分とした。得られた樹脂組成物をペレット化し、温度140℃で6時間乾燥させた。次いで、
図2に示した構成を有する射出成形装置(商品名:SE180D、住友重機械工業(株)製)のホッパー48に、乾燥させたペレット状の樹脂組成物を投入した。
そして、シリンダ設定温度を295℃にし、スクリュー42及び42A内で溶融させ、ノズル41Aを通して、金型内に射出成形してプリフォーム104を作成した。このとき の射出成形金型温度は30℃とした。
図3に示した温度500℃のプリフォーム加熱装置107内にプリフォーム104を入れて軟化させたのち、プリフォーム104を500℃で加熱した。その後、
図3に示したブロー成形機110に160℃に加熱されたプリフォーム104を投入した。そして、金型温度を110℃に保ったブロー金型108内で延伸棒109とエアーの力でプリフォーム温度155℃、エアー圧力0.3MPa、延伸棒速度1000mm/sでブロー成形してブローボトル112を得た。このブローボトルの両端をカットすることにより電子写真用シームレスベルトを得た。得られたシームレスベルトの厚みは80μmであった。このシームレスベルトの評価結果を表6に示す。
【0052】
〔実施例2〜11〕
樹脂組成物の配合を表5に記載した通りとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用シームレスベルトを得た。これらのシームレスベルトの評価結果を表6及び表7に示す。
【0053】
〔実施例12〕
樹脂組成物の配合を表5に記載したこと、射出成形装置のシリンダ設定温度を280℃にしたことならびにプリフォーム温度を115℃にしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用シームレスベルトを得た。これらのシームレスベルトの評価結果を表7に示す。
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
〔比較例1〜7〕
樹脂組成物の配合を表8に記載した通りとした以外は、実施例1と同様にして電子写真用シームレスベルトを得た。これらのシームレスベルトの評価結果を表9に示す。
【0058】
〔比較例8〕
樹脂組成物の配合を表8に記載したこと、射出成形装置のシリンダ設定温度を280℃にしたことならびにプリフォーム温度を115℃にしたこと以外は実施例1と同様にして電子写真用シームレスベルトを得た。これらのシームレスベルトの評価結果を表9に示す。
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】