(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)で表わされる部分構造と前記式(2)で表わされる単量体単位を有する高分子部との連結が、カルボン酸エステル結合またはカルボン酸アミド結合を介して行われていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブラックトナー。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明のトナーは、結着樹脂、下記式(1)で表される部分構造と下記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部とが連結した化合物、及び、着色剤としてカーボンブラックを含有するトナー粒子を有することを特徴とする。
【0017】
【化3】
[式(1)中、R
1、R
2及びArの少なくとも一つは、連結基を介してまたは単結合により該高分子部と連結し、該高分子部と連結しないR
1及びR
2は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基、OR
5基またはNR
6R
7基を表し、該高分子部と連結しないArはアリール基を表し、該高分子部と連結するR
1およびR
2は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基、OR
5またはNR
6R
7基中の水素原子が脱離した2価の基を示し、該高分子部と連結するArは、アリール基中の水素原子が脱離した2価の基を表し、R
5乃至R
7は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を表す。]
【0018】
【化4】
[式(2)中、R
3は、水素原子またはアルキル基を表し、R
4は、フェニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基またはカルボン酸アミド基を表す。]
【0019】
上記式(1)で表される部分構造と上記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部とが連結した化合物は、非水溶性溶剤や重合性単量体、トナー用の結着樹脂への親和性及びカーボンブラックに対する親和性が高いことから、該化合物を分散剤として用いることで、カーボンブラックが結着樹脂中で良好に分散し、着色力の高いブラックトナーが提供される。また、上記式(1)で表される部分構造を有する化合物をブラックトナー中に添加することで、かぶりが抑制され、転写効率が高いブラックトナーを提供される。
【0020】
なお、式(1)で表される部分構造を「アゾ骨格構造」とも称する。更に、アゾ骨格構造と式(2)で表される単量体単位を有する高分子部とが連結した化合物を「アゾ骨格構造を有する化合物」とも称する。また、アゾ骨格構造が連結していない、式(2)で表される単量体単位を有する高分子部を「高分子部」とも称する。
【0021】
初めに、アゾ骨格構造を有する化合物について説明する。
【0022】
該アゾ骨格構造を有する化合物は、カーボンブラックへの親和性が高い上記式(1)で表されるアゾ骨格構造と、非水溶性溶剤への親和性が高い上記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部で構成される。
【0023】
まず、上記式(1)で表されるアゾ骨格構造について詳細に説明する。
【0024】
上記式(1)の中のR
1及びR
2におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びシクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基等が挙げられる。
【0025】
上記式(1)中のOR
5基及びNR
6R
7基のR
5乃至R
7におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びシクロヘキシル基等の直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
【0026】
上記式(1)中のOR
5基及びNR
6R
7基のR
5乃至R
7におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、及びフェネチル基等が挙げられる。 上記式(1)中のR
1、及びR
2は、カーボンブラックへの親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、およびトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0027】
上記式(1)中のR
1は、カーボンブラックへの親和性を考慮すると、メチル基であることが好ましい。
【0028】
上記式(1)中のR
2は、カーボンブラックへの親和性の点で、NR
6R
7基であり、かつ、R
6が水素原子であり、R
7がフェニル基であることが好ましい。
【0029】
上記式(1)中のArはアリール基を表し、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0030】
上記式(1)中のArは、カーボンブラックへの親和性を著しく阻害しない限りは更に置換基により置換されていても良い。この場合、置換しても良い置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、及びカルボン酸アミド基等が挙げられる。
【0031】
上記式(1)中のR
1、R
2及びArの少なくとも1つは、連結基を介してまたは単結合により該高分子部と連結する。該高分子部と連結するR
1、R
2は、各々独立して、アルキル基、フェニル基、OR
5またはNR
6R
7基中の水素原子が脱離した2価の基を示し、該高分子部と連結するArは、アリール基中の水素原子が脱離した2価の基を表す。この場合、連結基としては、二価の連結基であれば特に限定されるものではないが、製造の容易性の観点から、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合またはスルホン酸エステル結合を含む結合であることが好ましい。特に、合成収率が高く結合安定性の高い、二級アミド結合を含む結合であることがより好ましい。
【0032】
また、カーボンブラックへの親和性の点で、上記式(1)で表される部分構造が下記式(3)で表されるものであることが好ましい。
【0033】
【化5】
[式(3)中、R
1、R
2、R
8乃至R
12の少なくとも一つは、連結基を介してまたは単結合により該高分子部と連結し、該高分子部と連結しないR
1及びR
2は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基、OR
5基またはNR
6R
7基を表し、該高分子部と連結しないR
8乃至R
12は、それぞれ独立して、水素原子、COOR
13基またはCONR
14R
15基を表し、該高分子部と連結するR
1及びR
2は、それぞれ独立して、アルキル基、フェニル基、OR
5基またはNR
6R
7基中の水素原子が脱離した2価の基を表し、該高分子部と連結するR
8乃至R
12は、それぞれ独立して、水素原子、COOR
13基またはCONR
14R
15基中の水素原子が脱離した2価の基を表し、R
13乃至R
15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を表す。]
【0034】
上記式(3)中のR
13乃至R
15におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、及びイソプロピル基等が挙げられる。
【0035】
上記式(3)中のR
13乃至R
15におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、及びフェネチル基等が挙げられる。
【0036】
カーボンブラックへの親和性の観点から、上記式(3)中のR
8乃至R
12のうち少なくとも1つが、COOR
13基またはCONR
14R
15基であることが好ましい。
【0037】
また、カーボンブラックへの親和性の観点から、R
13がメチル基であり、R
14が水素原子であり、R
15がメチル基または水素原子であることが好ましい。
【0038】
上記式(3)中のR
1、R
2、及び、R
8乃至R
12の少なくとも一つは、該高分子部との連結部を有する。カーボンブラックへの親和性及び製造の容易性の観点から、R
2がNR
6R
7基であり、かつ、R
6が水素原子、R
7が該高分子との連結部を有するフェニル基であることが特に好ましい。
【0039】
上記式(1)で表わされる部分構造が、下記式(4)または(5)で表されるものであることが、カーボンブラックの親和性の点で好ましい。
【0040】
【化6】
[式(4)中、Lは上記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部と連結する二価の連結基を表す。]
【0041】
【化7】
[式(5)中、R
14及びR
15は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を表し、Lは、上記式(2)で単量体単位を有する高分子部と連結する二価の連結基を表す。]
【0042】
上記式(4)または(5)中の高分子部との連結基Lは、二価の連結基であれば特に限定されるものではないが、製造の容易性の観点から、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合またはスルホン酸エステル結合を含む結合であることが好ましい。特に、合成収率が高く結合安定性の高い、二級アミド結合を含む結合であることがより好ましい。
【0043】
上記式(4)または(5)中の連結基Lのアゾ骨格への置換位置の違いによるカーボンブラックへの親和性は同等である。
【0044】
上記式(5)中のカルボン酸アミドの置換位置は、アゾ基に対し、o−位、m−位、またはp−位で置換した場合が挙げられるが、カーボンブラックへの親和性の点でm−位、及びp−位で置換した場合が好ましい。
【0045】
上記式(5)中のCONR
14R
15の置換位置は、アゾ基に対し、o−位、m−位、またはp−位で置換した場合が挙げられるが、カーボンブラックへの親和性の点でm−位、及びp−位で置換した場合が好ましい。
【0046】
次に、上記式(2)で表される単量体単位を有する高分子部について詳細に説明する。
【0047】
上記式(2)中のR
3におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、及びシクロヘキシル基等の直鎖、分岐、または環状のアルキル基が挙げられる。
【0048】
上記式(2)中のR
3は、単量体単位を形成する重合性単量体の重合性の観点から水素原子、またはメチル基であることが好ましい。
【0049】
上記式(2)中のR
4におけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、n−プロピルエステル基、イソプロピルエステル基、n−ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec−ブチルエステル基、tert−ブチルエステル基、オクチルエステル基、ノニルエステル基、デシルエステル基、ウンデシルエステル基、ドデシルエステル基、ヘキサデシルエステル基、オクタデシルエステル基、エイコシルエステル基、ドコシルエステル基、2−エチルヘキシルエステル基、フェニルエステル基、及び2−ヒドロキシエチルエステル基等の直鎖、または分岐のエステル基が挙げられる。
【0050】
上記式(2)中のR
4におけるカルボン酸アミド基としては、N−メチルアミド基、N,N−ジメチルアミド基、N−エチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基、N−イソプロピルアミド基、N,N−ジイソプロピルアミド基、N−n−ブチルアミド基、N,N−ジ−n−ブチルアミド基、N−イソブチルアミド基、N,N−ジイソブチルアミド基、N−sec−ブチルアミド基、N,N−ジ−sec−ブチルアミド基、N−tert−ブチルアミド基、N−オクチルアミド基、N,N−ジオクチルアミド基、N−ノニルアミド基、N,N−ジノニルアミド基、N−デシルアミド基、N,N−ジデシルアミド基、N−ウンデシルアミド基、N,N−ジウンデシルアミド基、N−ドデシルアミド基、N,N−ジドデシルアミド基、N−ヘキサデシルアミド基、N−オクタデシルアミド基、N−フェニルアミド基、N−(2−エチルヘキシル)アミド基、及びN,N−ジ(2−エチルヘキシル)アミド基等の直鎖、または分岐のアミド基が挙げられる。
【0051】
上記式(2)中のR
4は、更に置換されていてもよく、単量体単位を形成する重合性単量体の重合性を阻害したり、アゾ骨格構造を有する化合物の溶解性を著しく低下させたりするものでなければ特に制限されない。この場合、置換しても良い置換基としてはメトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基、N−メチルアミノ基、及びN,N−ジメチルアミノ基等のアミノ基、アセチル基等のアシル基、フッ素原子、及び塩素原子等のハロゲン原子が挙げられる。
【0052】
上記式(2)中のR
4は、上記アゾ骨格構造を有する化合物のトナーの結着樹脂への分散性、相溶性の点でフェニル基、カルボン酸エステル基またはカルボン酸アミド基であることが好ましい。
【0053】
上記高分子部は、上記式(2)で表される単量体単位の割合を変化させることで分散媒体との親和性を制御することができる。分散媒体がスチレンのような非極性溶剤の場合には、上記式(2)中のR
4がフェニル基で表される単量体単位の割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましい。また、分散媒体がアクリル酸エステルのようなある程度極性がある溶剤の場合には上記式(2)中のR
4がカルボキシル基、カルボン酸エステル基、またはカルボン酸アミド基で表される単量体単位の割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましい。
【0054】
上記高分子部の分子量は、カーボンブラックの分散性を向上させる点で数平均分子量が500以上である場合が好ましい。分子量は大きい方がカーボンブラックの分散性を向上させる効果が高いが、分子量があまりに大きすぎると非水溶性溶剤への親和性が低下する傾向にあるため好ましくない。従って、該高分子部の数平均分子量は200000以下である場合が好ましい。この他、製造容易性の点を考慮すると、該高分子部の数平均分子量は2000乃至50000の範囲内である場合がより好ましい。
【0055】
また、特表2003−531001号公報に開示されるように、ポリオキシアルキレンカルボニル系の分散剤において、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することで分散性を向上させる方法が知られているが、本発明の高分子部位においても、後述するATRP(Atom Transfer Radial Polymerization)のような方法でテレケリックな高分子部を合成すれば、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することができ、分散性が向上する場合もある。
【0056】
上記アゾ骨格構造を有する化合物中のアゾ骨格構造の位置は、ランダムに点在していても、一端に1つもしくは複数のブロックを形成して偏在していてもよい。
【0057】
上記アゾ骨格構造を有する化合物中のアゾ骨格構造の数は、多い方がカーボンブラックへの親和性は高いが、あまりに多すぎると非水溶性溶剤への親和性が低下する傾向にあるため好ましくない。従って、アゾ骨格構造の数は、高分子部を形成する単量体数100に対して0.2乃至10の範囲内である場合が好ましく、0.2乃至5の範囲内である場合がより好ましい。
【0058】
上記式(1)で表されるアゾ骨格構造は、下記図に示されるように、下記式(6)及び(6’)等で表される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。
【0059】
【化8】
[式(6)及び(6’)中のR
1、R
2及びArは、式(1)におけるR
1、R
2、及びArと各々同義である。]
【0060】
上記アゾ骨格構造を有する化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
【0061】
上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成する方法としては、例えば、下記(i)乃至(iv)に示す方法が挙げられる。
【0062】
まず、方法(i)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
【0063】
【化9】
[式(8)及び(9)中のR
1及びR
2は上記式(1)中のR
1及びR
2と各々同義である。式(7)及び(9)中のAr
1はアリーレン基を表す。P
1は上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体を重合して得られる高分子部位である。式(7)及び(9)中のQ
1は、P
1と反応して、上記二価の連結基Lを形成する置換基を表す。]
【0064】
上記に例示した方法(i)では、式(7)で表されるアニリン誘導体と、化合物(8)をジアゾカップリングさせ、アゾ化合物(9)を合成する工程1、及びアゾ化合物(9)と高分子部P
1を縮合反応等により連結させる工程2によって、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
【0065】
先ず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる。例えば、下記に示す方法が挙げられる。先ず、メタノール溶剤中、アニリン誘導体(7)を塩酸、又は硫酸等の無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、又はニトロシル硫酸等のジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。更に、このジアゾニウム塩を化合物(8)とカップリングさせて、アゾ化合物(9)を合成する。
【0066】
上記アニリン誘導体(7)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0067】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、及びプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピル等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、及びヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、及びN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、及びプロピオニトリル等のニトリル類、ギ酸、酢酸、及びプロピオン酸等の酸類、水等が挙げられる。又、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、溶質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(7)で表される化合物に対し1.0乃至20重量倍の範囲が好ましい。
【0068】
本工程は、通常−50℃乃至100℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0069】
次に、工程2で用いる高分子部P
1の合成方法について説明する。高分子部P
1の合成では公知の重合方法を利用できる[例えば、Krzysztof Matyjaszewski、外 1名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、2921−2990頁]。
【0070】
具体的には、ラジカル重合、カチオン重合、及びアニオン重合等が挙げられるが、製造容易性の点でラジカル重合を用いることが好ましい。
【0071】
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の使用、放射線、レーザー光等の照射、光重合開始剤と光の照射との併用、及び加熱等により行うことができる。
【0072】
ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、重合反応を開始させることができるものであればよく、熱、光、放射線、及び酸化還元反応等の作用によってラジカルを発生する化合物から選ばれる。例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、及び光重合開始剤等が挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン系、及びセリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、及びチオキサントン類等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
【0073】
この際使用される重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対し0.1乃至20重量部の範囲で、目標とする分子量分布の共重合体が得られるように使用量を調節するのが好ましい。
【0074】
上記P
1で表される高分子部は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等何れの方法を用いて製造することも可能であり、特に限定するものではないが、製造時に用いる各成分を溶解し得る溶媒中での溶液重合が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、及び2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、及びメチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、及びジエチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、またはそのアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、またはそのアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類等の極性有機溶剤や、場合によりトルエン、及びキシレン等の非極性溶剤等を、単独で、または混合して使用することができる。これらのうち沸点が100乃至180℃の温度範囲の溶剤を、単独、または混合して使用するのがより好ましい。
【0075】
重合温度は用いる開始剤の種類により好ましい温度範囲は異なり、特に制限されるものではないが、具体的には、−30乃至200℃の温度範囲で重合することが一般的であり、より好ましい温度範囲は、40乃至180℃の場合である。
【0076】
上記P
1で表される高分子部は、公知の方法を用いて、分子量分布や分子構造を制御することができる。例えば、付加開裂型の連鎖移動剤を利用する方法(特許第4254292号公報及び特許第3721617号公報参照)、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するNMP法[例えば、Craig J.Hawker、外 2名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、3661−3688頁]、ハロゲン化合物を重合開始剤として、重金属及びリガンドを用いて重合するATRP法[例えば、Masami Kamigaito、外 2名、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、2001年、第101巻、3689−3746頁]、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などを重合開始剤とするRAFT法(例えば、特表2000−515181号公報)、その他MADIX法(例えば、国際公開第99/05099号パンフレット)、及びDT法[例えば、Atsushi Goto、外 6名、「Journal of The American Chemical Society」、(米国)、American Chemical Society、2003年、第125巻、8720−8721頁]等を用いることで、分子量分布や分子構造を制御した高分子部を製造することができる。
【0077】
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。例えば、カルボキシル基を有する高分子部P
1と、Q
1がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、連結基がカルボン酸エステル結合を有する上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有する高分子部P
1とQ
1がスルホン酸基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、連結基がスルホン酸エステル結合を有する上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。更に、カルボキシル基を有する高分子部P
1と、Q
1がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、連結基がカルボン酸アミド結合を有する上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。具体的には、脱水縮合剤、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等を使用する方法(例えば、Melvin S.Newman、外 1名、「The Journal of Organic Chemistry」、(米国)、American Chemical Society、1961年、第26巻、第7号、2525−2528頁)、及びショッテン−バウマン法(例えば、Norman O.V.Sonntag、「Chemical Reviews」、(米国)、American Chemical Society、1953年、第52巻、第2号、237−416頁)等が挙げられる。
【0078】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、及びヘプタン等の炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びクロロホルム等の含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、及びN,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類、アセトニトリル、及びプロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。また、上記溶剤は溶質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記P
1で表される高分子部に対し1.0乃至20重量倍の範囲が好ましい。
【0079】
本工程は、通常0℃乃至250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
【0080】
次に、方法(ii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
【0081】
【化10】
[式(9)中のR
1、R
2、Ar
1及びQ
1は、上記方法(i)のスキーム中の式(9)中のR
1、R
2、Ar
1及びQ
1と各々同義である。式(10)中のQ
2は、式(9)中のQ
1と反応して、式(11)中のQ
3を形成する置換基を表す。式(10)及び(11)中のR
16は、水素原子、またはアルキル基を表し、Q
3は式(9)中のQ
1及び式(10)中のQ
2が反応し、形成する二価の連結基Lを形成する置換基を表す。]
【0082】
上記に例示した方法(ii)では、式(9)で表されるアゾ化合物と、式(10)で表されるビニル基含有化合物を反応させ、重合性官能基を有するアゾ化合物(11)を合成する工程3、及び重合性官能基を有するアゾ化合物(11)を、上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体と共重合する工程4によって、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
【0083】
先ず、工程3について説明する。工程3では方法(i)における工程2と同様の方法を利用し、重合性官能基を有するアゾ化合物(11)を合成することができる。例えば、カルボキシル基を有するビニル基含有化合物(10)と、Q
3がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、連結基がカルボン酸エステル結合である、上記重合性官能基を有するアゾ化合物(11)を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有するビニル基含有化合物(10)と、Q
3がスルホン酸基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、連結基がスルホン酸エステル結合である、上記重合性官能基を有するアゾ化合物(11)を合成することができる。更に、カルボキシル基を有するビニル基含有化合物(10)と、Q
3がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、連結基がカルボン酸アミド結合である、上記重合性官能基を有するアゾ化合物(11)を合成することができる。
【0084】
上記ビニル基含有化合物(10)は多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0085】
次に、工程4について説明する。工程4では、重合性官能基を有するアゾ化合物(11)と、上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体を共重合することによって、上記式(1)で表されるアゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。工程4の合成法は、上記方法(i)の高分子部P
1の合成と同様な方法を利用できる。
【0086】
次に、方法(iii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
【0087】
【化11】
[式(9)中のR
1、R
2、Ar
1及びQ
1は上記方法(i)のスキーム中の式(9)中のR
1、R
2、Ar
1及びQ
1と各々同義である。式(12)中のQ
4は、式(9)中のQ
1と反応して、式(13)中のQ
5を形成する置換基を表す。Aは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子を表す。式(13)中のR
1、R
2、及びAr
1は、上記式(9)中のR
1、R
2、及びAr
1と同意義を表し、Q
5は式(9)中のQ
1と、式(12)中のQ
4が反応し、形成する連結基を表す。]
【0088】
上記に例示した方法(iii)では、式(9)で表されるアゾ化合物と、式(12)で表されるハロゲン原子含有化合物を反応させ、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を合成する工程5、及びハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を重合開始剤として、上記式(2)で表される単量体単位を形成する重合性単量体と重合する工程6によって、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
【0089】
まず、工程5について説明する。工程5では上記方法(i)の工程2と同様の方法を利用し、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を合成することができる。例えば、カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(12)とQ
1がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(12)と、Q
1がスルホン酸基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を合成することができる。更に、カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(12)と、Q
1がアミノ基を有する置換基であるアゾ化合物(9)を使用することで、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を合成することができる。
【0090】
上記カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(12)としては、例えば、クロロ酢酸、α−クロロプロピオン酸、α−クロロ酪酸、α−クロロイソ酪酸、α−クロロ吉草酸、α−クロロイソ吉草酸、α−クロロカプロン酸、α−クロロフェニル酢酸、α−クロロジフェニル酢酸、α−クロロ−α−フェニルプロピオン酸、α−クロロ−β−フェニルプロピオン酸、ブロモ酢酸、α−ブロモプロピオン酸、α−ブロモ酪酸、α−ブロモイソ酪酸、α−ブロモ吉草酸、α−ブロモイソ吉草酸、α−ブロモカプロン酸、α−ブロモフェニル酢酸、α−ブロモジフェニル酢酸、α−ブロモ−α−フェニルプロピオン酸、α−ブロモ−β−フェニルプロピオン酸、ヨード酢酸、α−ヨードプロピオン酸、α−ヨード酪酸、α−ヨードイソ酪酸、α−ヨード吉草酸、α−ヨードイソ吉草酸、α−ヨードカプロン酸、α−ヨードフェニル酢酸、α−ヨードジフェニル酢酸、α−ヨード−α−フェニルプロピオン酸、α−ヨード−β−フェニルプロピオン酸、β−クロロ酪酸、β−ブロモイソ酪酸、ヨードジメチルメチル安息香酸、及び1−クロロエチル安息香酸等が挙げられ、その酸ハロゲン化物、及び酸無水物も同様に本発明において使用することができる。
【0091】
上記ヒドロキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(12)としては、例えば、1−クロロエタノール、1−ブロモエタノール、1−ヨードエタノール、1−クロロプロパノール、2−ブロモプロパノール、2−クロロ−2−プロパノール、2−ブロモ−2−メチルプロパノール、2−フェニル−1−ブロモエタノール、及び2−フェニル−2−ヨードエタノール等が挙げられる。
【0092】
次に、工程6について説明する。工程6では上記方法(i)中のATRP法を利用し、ハロゲン原子を有するアゾ化合物(13)を重合開始剤として、金属触媒、配位子の存在下、上記単量体単位(2)を形成する重合性単量体と重合することで、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
【0093】
ATRP法に使用する金属触媒としては、特に制限されないが、周期表7乃至11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属が好適である。低原子価錯体と高原子価錯体とが可逆的に変化するレドックス触媒(レドックス共役錯体)においては、具体的に使用される低原子価金属として、Cu
+、Ni
0、Ni
+、Ni
2+、Pd
0、Pd
+、Pt
0、Pt
+、Pt
2+、Rh
+、Rh
2+、Rh
3+、Co
+、Co
2+、Ir
0、Ir
+、Ir
2+、Ir
3+、Fe
2+、Ru
2+、Ru
3+、Ru
4+、Ru
5+、Os
2+、Os
3+、Re
2+、Re
3+、Re
4+、Re
6+、Mn
2+、及びMn
3+の群から選ばれる金属が挙げられる。中でも、Cu
+、Ru
2+、Fe
2+、及びNi
2+が好ましく、特に入手の容易性から、Cu
+が好ましい。一価の銅化合物の具体例としては、例えば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、及びシアン化第一銅等を好適に使用することができる。
【0094】
ATRP法に使用する配位子としては、一般的には有機配位子が使用される。例えば2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、及びトリブチルホスフィン等が挙げられるが、製造容易性を考慮すると、特にN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミンの様な脂肪族ポリアミン類が好ましい。
【0095】
また、上記式(1)中のR
2がNR
6R
7基であり、かつR
6が水素原子、R
7がフェニル基である場合、上記アゾ骨格構造を有する化合物は、例えば下記方法(iv)により合成することができる。
【0096】
【化12】
[式(14)、(16)、(18)及び(19)中のAr
2はアリーレン基を表す。式(15)、(16)、(18)及び(19)中のR
1は上記式(1)中のR
1と同義である。式(15)中のQ
6は、式(14)のアミノ基と反応して、式(16)中のアミド基を形成する際に脱離する置換基を表す。P
1は上記方法(i)のスキーム中のP
1と同義である。]
【0097】
上記に例示した方法(iv)では、式(14)で表されるアニリン誘導体と化合物(15)をアミド化し、化合物(16)を得る工程7、化合物(16)と式(17)で表されるアニリン類縁体のジアゾ成分とをカップリングさせて式(18)で表されるアゾ化合物を得る工程8、式(18)で表されるアゾ化合物のニトロ基を還元剤にてアミノ基に還元して式(19)で表されるアゾ化合物を得る工程9、及び式(19)で表されるアゾ化合物のアミノ基と、別途合成したP
1で表される高分子部のカルボキシル基をアミド化により結合する工程10によって、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
【0098】
先ず、工程7について説明する。工程7では、公知の方法を利用できる(例えば、「Journal of Organic Chemistry」、1998年、第63巻、第4号、1058−1063頁)。又、化合物(16)中のR
1がメチル基の場合は、前記化合物(15)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である(例えば、「Journal of Organic Chemistry」、2007年、第72巻、第25号、9761−9764頁)。上記化合物(15)は、多種市販されており容易に入手可能である。又、公知の方法によって容易に合成することができる。
【0099】
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えばトルエン、キシレン等の高沸点溶剤を使用することができる。
【0100】
次に、工程8について説明する。工程8では、上記方法(i)中の工程1と同様の方法を利用し、アゾ化合物(18)を合成することができる。
【0101】
次に、工程9について説明する。工程9は、例えば、下記に挙げるような方法でニトロ基の還元反応を行えばよい。先ず、アルコール等の溶剤中で上記アゾ化合物(18)を溶解し、還元剤の存在下、常温又は加熱条件下、上記アゾ化合物(18)のニトロ基をアミノ基に還元し、上記アゾ化合物(19)を得る。還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、水硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、鉄、亜鉛、スズ、SnCl
2、及びSnCl
2・2H
2O等が挙げられる。上記還元反応は、ニッケル、白金、パラジウム等の金属を活性炭等の不溶性担体に担持させた触媒存在下、水素ガスを接触させる方法を用いても進行する。
【0102】
次に、工程10について説明する。工程10では、上記方法(i)中の工程2と同様の方法を利用して、式(19)で表されるアゾ化合物のアミノ基と、P
1で表される高分子部のカルボキシル基をアミド化により結合することにより、上記アゾ骨格構造を有する化合物を合成することができる。
【0103】
上記例示した合成方法の各工程で得られた化合物は、通常の有機化合物の単離、精製方法を用い精製することができる。単離、精製方法としては、例えば、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、及びシリカゲル等を用いたカラムクロマトグラフィー等が挙げられる。これらの方法を単独、または2つ以上組み合わせて精製を行うことにより、高純度の化合物を得ることが可能である。
【0104】
次に、本発明のトナーの結着樹脂について説明する。
【0105】
本発明のトナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びスチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体、ブタジエン、イソプレン、及びシクロヘキセン等のオレフィン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独、または理論ガラス転移温度(Tg)が、40乃至75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる[J.Brandrup、E.H.Immergut編、「ポリマーハンドブック」、(米国)、第3版、John Wiley&Sons、1989年、209−277頁を参照]。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において透明性が低下する。本発明のトナーにおける結着樹脂は、ポリスチレン等の非極性樹脂にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性樹脂を併用して用いることで、着色剤や電荷制御剤、ワックス等の添加剤のトナー内分布を制御することができる。例えば、懸濁重合法等により直接トナー粒子を製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に該極性樹脂を添加する。該極性樹脂は、トナー粒子となる単量体単位組成物と水系媒体の極性のバランスに応じて添加する。その結果、該極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成するなど、トナー粒子表面から中心に向けその樹脂濃度が連続的に変化するように制御することができる。この時、上記アゾ骨格構造を有する化合物、着色剤、及び電荷制御剤と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー粒子中への着色剤の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。
【0106】
本発明のトナーの着色剤として用いられるカーボンブラックは、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、及びランプブラック法等の製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。
【0107】
本発明に用いるカーボンブラックの平均一次粒径は、特に制限はないが、平均一次粒径が14乃至80nmであることが好ましく、より好ましくは25乃至50nmである。平均一次粒径が14nmよりも小さいと、トナーは赤味を呈し、フルカラー画像形成用のブラックとしては不適となる。逆に、カーボンブラックの平均一次粒径が80nmより大きい場合には、良好に分散しても着色力が低くなりすぎて好ましくない。
【0108】
尚、カーボンブラックの平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡で拡大した写真を撮影して測定することができる。
【0109】
本発明に用いるカーボンブラックのDBP吸油量は、特に制限はないが、30乃至200ml/100gであることが好ましく、より好ましくは40乃至150ml/100gである。カーボンブラックのDBP吸油量が30ml/100g未満の場合、良好に分散しても着色力が低くなりやすい。逆に、カーボンブラックのDBP吸油量が200ml/100gより大きい場合には、トナー製造プロセスにおいて顔料組成物を作製する際に、大量の溶媒が必要となり好ましくない。
【0110】
尚、カーボンブラックのDBP吸油量とは、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量であり、「JIS K6217」に準拠して測定することができる。
【0111】
本発明に用いるカーボンブラックのpHは、上記アゾ骨格構造を有する化合物の効果を著しく阻害するものでなく、またトナーの定着性やかぶり等のトナー特性を阻害するものでなければ特に制限はない。
【0112】
尚、カーボンブラックのpHは、カーボンブラックと蒸留水の混合液をpH電極で測定することにより得ることができる。
【0113】
本発明に用いるカーボンブラックの比表面積は、特に制限はないが、300m
2/g以下であることが好ましく、より好ましくは100m
2/g以下である。カーボンブラックの比表面積が300m
2/gより大きいと、カーボンブラックの良好な分散性を得るために必要な、上記アゾ骨格構造を有する化合物が多く必要となるため好ましくない。
【0114】
尚、カーボンブラックの比表面積とはBET比表面積であり、「JIS K4652」に準拠して測定することができる。
【0115】
上記カーボンブラックは単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0116】
これらは粗製顔料であっても良く、上記アゾ骨格構造を有する化合物の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であっても良い。
【0117】
本発明のトナーにおけるカーボンブラックとアゾ骨格構造を有する化合物との重量組成比は、100:0.1乃至100:100の範囲である場合が好ましい。更に好ましくは、カーボンブラックの比表面積が30乃至200m
2/gである場合、顔料分散性の点で100:0.5乃至100:20の範囲である場合である。
【0118】
本発明のトナーにおける着色剤としては、上記カーボンブラックが必ず使用されるが、該カーボンブラックの分散性を阻害しない限りは、色調の調製を目的に他の着色剤を併用することができる。
【0119】
併用できる着色剤としては、非磁性トナーとして用いる場合には、公知のブラック着色剤を用いることができる。
【0120】
併用できるブラック着色剤としては、例えばC.I.Pigment Black 1、C.I.Pigment Black 10、C.I.Pigment Black 31、C.I.Natural Black 1、C.I.Natural Black 2、C.I.Natural Black 3、C.I.Natural Black 4、C.I.Natural Black 5、C.I.Natural Black 6、及び活性炭等が挙げられる。
【0121】
更に、本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合には、以下に挙げられる磁性材料をブラック着色剤として用いることができる。すなわち、マグネタイト、マグヘマイト、及びフェライト等の酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、及びNi等の金属、或いは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、及びV等の金属との合金、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0122】
これらの着色剤の使用量は、着色剤の種類によって異なるが、結着樹脂100質量部に対して総量で0.1乃至60質量部、好ましくは0.5乃至50質量部が適当である。
【0123】
更に、本発明のトナーには、調色のために、公知のマゼンタ着色剤、シアン着色剤、またはイエロー着色剤を併用して用いることができる。
【0124】
更に、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めると共に、上記粒子構成分子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
【0125】
本発明のトナー粒子に用いられる架橋剤としては、二官能の架橋剤として、例えば、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600等のジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート、及びこれらジアクリレートをジメタクリレートに代えたもの等が挙げられる。
【0126】
多官能の架橋剤としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、及びトリアリルトリメリテート等が挙げられる。
【0127】
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05乃至10質量部の範囲、より好ましくは0.1乃至5質量部の範囲で用いることが良い。
【0128】
更に、本発明においては、定着部材への付着防止のため、結着樹脂の合成時にワックス成分を用いることもできる。
【0129】
本発明において使用し得るワックス成分としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャー・トロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられ、該誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール、ステアリン酸、及びパルミチン酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、及び動物ワックス等が挙げられる。これらは単独、または併せて用いることができる。
【0130】
上記ワックス成分の添加量としては、結着樹脂100質量部に対する含有量が総量で2.5乃至15.0質量部の範囲であることが好ましく、更には3.0乃至10.0質量部の範囲であることがより好ましい。ワックス成分の添加量が2.5質量部より少ないとオイルレス定着が困難となり、15.0質量部を超えるとトナー粒子中でのワックス成分の量が多すぎるため、余剰のワックス成分がトナー粒子表面に多く存在して、所望の帯電特性を阻害する可能性があるために好ましくない。
【0131】
本発明のトナーにおいては、必要に応じて電荷制御剤を混合して用いることも可能である。これにより、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
【0132】
電荷制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる電荷制御剤が好ましい。更に、トナー粒子を直接重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない電荷制御剤が特に好ましい。
【0133】
電荷制御剤は、例えば、トナーを負帯電に制御するものとして、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体、サリチル酸誘導体及びその金属錯体、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸やその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系電荷制御剤等が挙げられる。また、トナーを正帯電に制御するものとしては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等によるニグロシン変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、りんタングステン酸、りんモリブデン酸、りんタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)、高級脂肪酸の金属塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類、及び樹脂系帯電制御剤等が挙げられる。これらを単独でまたは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0134】
本発明のトナーは、流動化剤として無機微粉体をトナー粒子に添加しても良い。無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナまたはそれらの複酸化物や、これらを表面処理したもの等の微粉体が使用できる。
【0135】
本発明のトナーを構成するトナー粒子の製造方法としては、従来使用されている、粉砕法、懸濁重合法、懸濁造粒法、及び乳化重合法等が挙げられる。製造時の環境負荷及び粒径の制御性の観点から、これらの製造方法のうち、特に懸濁重合法、及び懸濁造粒法等、水系媒体中で造粒する製造法によって得ることが好ましい。
【0136】
本発明のトナーの製造法において、上記アゾ骨格構造を有する化合物と、カーボンブラックとを予め混合し、顔料組成物を調製することで、カーボンブラックの分散性を向上させることができる。
【0137】
上記顔料組成物は湿式、または乾式にて製造が可能である。上記アゾ骨格構造を有する化合物が非水溶性溶剤との高い親和性を有していることを考えると簡便に均一な顔料組成物が製造できる湿式による製造が好ましい。例えば、下記のようにして得られる。分散媒中にアゾ骨格構造を有する化合物、及び必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながら顔料粉末を除々に加え十分に分散媒になじませる。更にニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、及びハイスピードミル等の分散機により機械的剪断力を加えることで、カーボンブラックを安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
【0138】
上記顔料組成物に使用し得る分散媒としては特に限定されないが、上記アゾ骨格構造を有する化合物の高い顔料分散効果を得るためには、分散媒が非水溶性溶剤である場合が好ましい。該非水溶性溶剤として例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピル等のエステル類、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の炭化水素類、四塩化炭素、トリクロロエチレン、及びテトラブロモエタン等の含ハロゲン炭化水素類が挙げられる。
【0139】
上記顔料組成物に使用し得る分散媒は重合性単量体であっても良い。具体的にはスチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸‐n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸‐n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、及びアクリルアミド等を挙げることができる。
【0140】
上記顔料組成物に使用し得る樹脂としては、本発明のトナーの結着樹脂として使用できる樹脂を使用することができる。例えば、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びスチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。また、これらの分散媒を2種以上混合して用いることができる。更に、上記顔料組成物は公知の方法、例えば、濾過、デカンテーションもしくは遠心分離によって単離することができる。溶剤は洗浄によって除去することもできる。
【0141】
上記顔料組成物は製造時に更に助剤を添加しても良い。例えば、表面活性剤、分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、もしくはこれらの組み合わせである。また、上記アゾ骨格構造を有する化合物は粗製顔料製造の際に予め添加しておいても良い。
【0142】
本発明の懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。上記顔料組成物、重合性単量体、ワックス成分、及び重合開始剤等を混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
【0143】
上記工程における重合性単量体組成物は、上記顔料組成物を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、上記顔料組成物を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の重合性単量体と混合することにより、カーボンブラックがより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
【0144】
上記懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、公知の重合開始剤を挙げることができ、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、及び光重合開始剤等が挙げられる。より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、及びジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)等のアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジtert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン系、及びセリウム(IV)塩−アルコール系等のレドックス開始剤等が挙げられる。光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾインエーテル類、及びケタール類等が挙げられる。これらの方法は、単独または2つ以上組み合わせて使用することができる。
【0145】
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100質量部に対して0.1乃至20質量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1乃至10質量部の範囲である場合である。上記重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
【0146】
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、及びアルミナ等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、及びデンプン等が挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、及びオレイン酸カルシウム等が挙げられる。
【0147】
上記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100質量部に対して0.2乃至2.0質量部の範囲となるような割合で使用することが該重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300乃至3000質量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
【0148】
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させても良いが、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、上記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
【0149】
本発明のトナー粒子は、懸濁造粒法により製造された場合においても好適なトナー粒子を得ることができる。懸濁造粒法の製造工程では加熱工程を有さないため、低融点ワックスを用いた場合に起こる樹脂とワックス成分の相溶化を抑制し、相溶化に起因するトナーのガラス転移温度の低下を防止することができる。また、懸濁造粒法は、結着樹脂となるトナー材料の選択肢が広く、一般的に定着性に有利とされるポリエステル樹脂を主成分にすることが容易である。そのため、懸濁重合法を適用できない樹脂組成のトナーを製造する場合に有利な製造方法である。
【0150】
上記懸濁造粒法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。先ず、上記顔料組成物、結着樹脂、及びワックス成分等を溶剤中で混合して溶剤組成物を調製する。次に、該溶剤組成物を水系媒体中に分散して溶剤組成物の粒子を造粒してトナー粒子懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を加熱、または減圧によって溶剤を除去することでトナー粒子を得ることができる。
【0151】
上記工程における溶剤組成物は、上記顔料組成物を第1の溶剤に分散させた分散液を、第2の溶剤と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、上記顔料組成物を第1の溶剤により十分に分散させた後で、他のトナー材料と共に第2の溶剤と混合することにより、カーボンブラックがより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
【0152】
上記懸濁造粒法に用いることができる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、及びヘキサン等の炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、及び四塩化炭素等の含ハロゲン炭化水素類、メタノール、エタノール、ブタノール、及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコール等の多価アルコール類、メチルセロソルブ、及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類、ベンジルアルコールエチルエーテル、ベンジルアルコールイソプロピルエーテル、及びテトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。これらを単独または2種類以上混合して用いることができる。これらのうち、上記トナー粒子懸濁液中の溶剤を容易に除去するため、沸点が低く、且つ上記結着樹脂を十分に溶解できる溶剤を用いることが好ましい。
【0153】
上記溶剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、50乃至5000質量部の範囲である場合が好ましく、120乃至1000質量部の範囲である場合がより好ましい。
【0154】
上記懸濁造粒法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系及び有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、及び炭酸バリウム等が挙げられる。有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、及びステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤等が挙げられる。
【0155】
上記分散剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.01乃至20質量部の範囲である場合が、該溶剤組成物の水系媒体中での液滴安定性の点で好ましい。
【0156】
本発明において、好ましいトナーの重量平均粒径(以下、D4と記載する)は3.00乃至15.0μmの範囲であり、より好ましくは4.00乃至12.0μmの範囲である場合である。上記の範囲内であれば、帯電安定性を維持しつつ、高精細の画像が得られやすい。
【0157】
また、トナーのD4と個数平均粒径(以下、D1と記載する)の比(以下、D4/D1と記載する)は、高解像度を維持しつつ、かぶりの抑制、転写効率の向上を達成できるという点で、1.35以下であることが好ましく、より好ましく1.30以下である。
【0158】
尚、本発明のトナーのD4とD1は、トナー粒子の製造方法によってその調整方法は異なる。例えば、懸濁重合法の場合は、水系分散媒体調製時に使用する分散剤濃度や反応撹拌速度、または反応撹拌時間等をコントロールすることによって調整することができる。
【0159】
本発明のトナーは、磁性トナーまたは非磁性トナーどちらでも良い。磁性トナーとして用いる場合には、本発明のトナーを構成するトナー粒子は、磁性材料を混合して用いても良い。このような磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、及びフェライト等の酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄、Fe、Co、及びNi等の金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Be、Bi、Cd、Ca、Mn、Se、Ti、W、及びV等の金属との合金及びこれらの混合物等が挙げられる。本発明の目的に特に好適な磁性材料は四三酸化鉄、またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0160】
これらの磁性体は平均粒径が0.1乃至2μm(好ましくは0.1乃至0.3μm)で、795.8kA/m印加での磁気特性が保磁力は1.6乃至12kA/m、飽和磁化は5乃至200Am
2/kg(好ましくは50乃至100Am
2/kg)、残留磁化は2乃至20Am
2/kgである場合がトナーの現像性の点で好ましい。
【0161】
これら磁性材料の添加量は結着樹脂100質量部に対して、磁性体10乃至200質量部、好ましくは20乃至150質量部使用する場合である。
【実施例】
【0162】
以下、実施例、比較例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例に限定されるものではない。尚、以下の記載で「部」、「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0163】
以下に本合成例で用いられる測定方法を示す。
【0164】
(1)分子量測定(GPC)
本発明の高分子部、及びアゾ骨格構造を有する化合物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出される。SECによる分子量の測定は以下に示すように行った。
【0165】
サンプル濃度が1.0%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−804の2連
溶離液:THF
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量 :0.025ml
【0166】
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂[東ソー(株)製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、及びA−500]により作成した分子量校正曲線を使用した。
【0167】
(2)酸価測定
本発明の高分子部、アゾ骨格構造を有する化合物の酸価は以下の方法により求められる。
【0168】
基本操作はJIS K−0070に基づく。
1)試料0.5乃至2.0gを精秤する。このときの質量をM(g)とする。
2)50mlのビーカーに試料を入れ、テトラヒドロフラン/エタノール(2/1)の混合液25mlを加え溶解する。
3)0.1mol/lのKOHのエタノール溶液を用い、電位差滴定測定装置を用いて滴定を行う[例えば、平沼産業(株)製自動滴定測定装置「COM−2500」等が利用できる。]。
4)この時のKOH溶液の使用量をS(ml)とする。同時にブランクを測定して、この時のKOHの使用量をB(ml)とする。
5)次式により酸価を計算する。fはKOH溶液のファクターである。
【0169】
【数1】
【0170】
(3)組成分析
上記高分子部位、アゾ骨格構造を有する化合物の構造決定は以下の装置を用いて行った。
1H NMR
日本電子(株)製ECA−400(使用溶剤 重クロロホルム)
13C NMR
ブルカー・バイオスピン(株)製FT−NMR AVANCE−600(使用溶剤 重クロロホルム)
【0171】
尚、
13C NMRは、クロム(III)アセチルアセトナートを緩和試薬として用いた逆ゲートデカップリング法により定量化し組成分析を行った。
【0172】
[実施例1]
下記方法で、上記アゾ骨格構造を有する化合物を得た。
【0173】
<化合物(101)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(101)を下記スキームに従い製造した。
【0174】
【化13】
[スキーム中、「co」とは、共重合体を構成する各単量体単位の配列が無秩序であることを表す記号である。]
【0175】
まず、化合物(20)5.00部に水30.0部、濃塩酸11.0部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム3.46部を水8.10部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.657部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。水48.0部に、化合物(21)8.13部を加えて、10℃以下に氷冷し、前記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、炭酸ナトリウム14.3部を水80.0部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水50部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた再結晶法により精製することで化合物(22)13.2部を得た(収率98.9%)。
【0176】
次に、クロロホルム30.0部に化合物(22)3.00部、トリエチルアミン1.20部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、化合物(23)1.03部を加えて同温度で20分反応させた。これをクロロホルムで抽出し、濃縮、精製することで、化合物(24)3.40部を得た(収率98.8%)。
【0177】
次に、化合物(33)10部にN,N−ジメチルホルムアミド9.44部、化合物(24)1.06部、アゾビスイソブチロニトリル0.327部を加え、窒素雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた再結晶法により精製することで化合物(101)7.60部を得た(収率69.0%)。
【0178】
[アゾ骨格構造を有する化合物(101)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=16,762、数平均分子量(Mn)=10,221
[2]酸価測定の結果:
0mgKOH/g
[3]
1H NMR(400MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図1参照):
δ [ppm]=14.69(s、1H)、11.40(s、1H)、7.56(s、2H)、7.31(s、2H)、7.19−6.43(m、135H)、2.53(s、3H)、2.47−1.05(m、97H)
【0179】
<化合物(107)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(107)を下記スキームに従い製造した。
【0180】
【化14】
【0181】
まず、クロロホルム30部に化合物(25)3.11部を加え、10℃以下に氷冷し、化合物(26)1.89部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(27)4.80部を得た(収率96.0%)。
【0182】
次に、化合物(28)4.25部に、メタノール40.0部、濃塩酸5.29部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.10部を水6.00部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.990部を加えて更に20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.0部に、化合物(27)4.51部を加えて、10℃以下に氷冷し、前記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、酢酸ナトリウム5.83部を水7.00部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドを用いた再結晶法により精製することで化合物(29)8.65部を得た(収率96.1%)。
【0183】
次に、N,N−ジメチルホルムアミド150部に化合物(29)8.58部及びパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.4部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(30)7.00部を得た(収率87.5%)。
【0184】
次に、クロロホルム25.0部に化合物(30)5.00部、トリエチルアミン1.48部を加え、10℃以下に氷冷し、化合物(31)2.07部を加えた。その後、室温で6時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(32)5.35部を得た(収率97.3%)。
【0185】
次に、N,N−ジメチルホルムアミド50.0部に化合物(32)2.50部、スチレン(33)140部、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン1.77部及び臭化銅(I)0.64部を加えた。その後、窒素雰囲気下、120℃で45分間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、メタノールでの再沈殿による精製で化合物(107)86.2部を得た(収率60.5%)。
【0186】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0187】
[アゾ骨格構造を有する化合物(107)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=36,377、数平均分子量(Mn)=21,338
[2]酸価測定の結果:
0mgKOH/g
[3]
1H NMR(400MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図2参照):
δ [ppm]=15.65(s、1H)、11.35(s、1H)、8.62(s、1H)、7.37−6.27(m、1294H)、4.06(s、3H)、3.98(4.06(s、3H)、2.47−1.05(m、786H)
【0188】
<化合物(115)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(115)を下記スキームに従い製造した。
【0189】
【化15】
【0190】
まず、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部を窒素置換しながら加熱し液温120℃以上で還流させ、そこへ、スチレン152部、アクリル酸ブチル38部、アクリル酸10部、及びtert−ブチルパーオキシベンゾエート[有機過酸化物系重合開始剤、日油(株)製、商品名:パーブチルZ]1.0部を混合したものを3時間かけて滴下した。滴下終了後、溶液を3時間撹拌した後、液温170℃まで昇温しながら常圧蒸留し、液温170℃到達後は1hPaで減圧下1時間蒸留して脱溶剤し、樹脂固形物を得た。該固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n−ヘキサンで再沈殿させて析出した固体を濾別することで高分子部位(A)を得た。
【0191】
次に、テトラヒドロフラン500部に化合物(30)を1.98部加えて、80℃まで加熱し溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、高分子部位(A)15部を加えて溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)1.96部を加えて50℃で5時間撹拌した後、液温を徐々に室温に戻し、一晩撹拌することにより反応を完結させた。反応終了後、溶液を濾過して濃縮し、メタノールで再沈殿させることにより精製し、化合物(115)を得た。
【0192】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0193】
[アゾ骨格構造を有する化合物(115)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:
重量平均分子量(Mw)=37,125、平均分子量(Mn)=21,998
[2]酸価測定の結果:
7.3mgKOH/g
[3]
13C NMR(600MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図3参照):
δ[ppm]=199.88(6C)、178.45、175.41(30C)、172.96(6C)、165.89、165.52、160.68、154.34、143.48(143C)、134.93、134.02、132.87、131.48、127.67、125.54、123.47、120.85−120.63、118.49、116.52、63.36、52.66、52.44、40.58、29.96、26.26、18.66、13.39
【0194】
<化合物(147)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(147)を下記スキームに従い製造した。
【0195】
【化16】
【0196】
上記高分子部(A)の合成例において、原料をスチレン120部、及びアクリル酸10部に変更すること以外は、同様な合成方法によって、高分子部位(B)を得た。
【0197】
化合物(35)10.0部に、DMF100.0部、濃塩酸21.4部を加えて5℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム5.28部を水20.0部に溶解させたもの加えて同温度で30分間反応させた。次いでスルファミン酸1.00部を加えて更に30分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。DMF150.0部に、化合物(34)15.5部、炭酸カリウム47.6部を加えて、5℃以下に氷冷し、前記ジアゾニウム塩溶液を加え、同温度で2時間反応させた。反応終了後、反応液を水50部中に排出した後、濃塩酸を加えpHを1に調整し30分間撹拌した。析出した固体を濾別し、水150部で洗浄した後、メタノール150部で分散洗浄することで(36)21.6部を得た(収率85.0%)。
【0198】
次に、N,N−ジメチルホルムアミド300部に化合物(36)20.0部を加え70℃で加熱溶解させた。溶液を室温まで冷却し、パラジウム−活性炭素(パラジウム5%)2.28部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、室温で6時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、溶媒を減圧留去した後、メタノールで分散洗浄することで化合物(37)15.7部を得た(収率91.0%)。
【0199】
次に、テトラヒドロフラン500部に化合物(37)を2.0部加えて、80℃まで加熱し溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、高分子部位(B)15部を加えて溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)2.0部を加えて50℃で5時間撹拌した後、液温を徐々に室温に戻し、一晩撹拌することにより反応を完結させた。反応終了後、溶液を濾過して濃縮し、メタノールで再沈殿させることにより精製し、アゾ骨格構造を有する化合物(147)12.8部得た。
【0200】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0201】
[アゾ骨格構造を有する化合物(147)の分析結果]
[1]分子量測定(GPC)の結果:数平均分子量(Mn)=15,374
[2]酸価測定の結果:0.0mgKOH/g
[3]
13C NMR(600MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図4参照):
δ[ppm]199.6(4C)、176.3(5C)、174.2(4C)、168.8、162.7、144.0−146.1(130C)、142.0、137.1−137.5、134.6、124.0−129.8、118.0、115.1−115.8、111.7、36.0−46.0、25.9
【0202】
<化合物(148)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(148)を下記スキームに従い製造した。
【0203】
【化17】
【0204】
化合物(38)10.0部に、DMF100.0部、濃塩酸21.4部を加えて5℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム5.28部を水20.0部に溶解させたもの加えて同温度で30分間反応させた。次いでスルファミン酸1.00部を加えて更に30分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。DMF150.0部に、化合物(34)15.5部、炭酸カリウム47.6部を加えて、5℃以下に氷冷し、前記ジアゾニウム塩溶液を加え、同温度で2時間反応させた。反応終了後、反応液を水50部中に排出した後、濃塩酸を加えpHを1に調整し30分間撹拌した。析出した固体を濾別し、水150部で洗浄した後、メタノール150部で分散洗浄することで(39)22.4部を得た(収率88.3%)。
【0205】
次に、N,N−ジメチルホルムアミド300部に化合物(39)20.0部を加え70℃で加熱溶解させた。溶液を室温まで冷却し、パラジウム−活性炭素(パラジウム5%)2.28部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1乃至0.4MPa)、室温で6時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、溶媒を減圧留去した後、メタノールで分散洗浄することで化合物(40)16.3部を得た(収率94.6%)。
【0206】
次に、トルエン250部に高分子部位(B)を25.0部加えて溶解させた。反応液を5℃以下に冷却し、塩化オキサリル11.6部をゆっくり滴下し、液温を徐々に室温に戻しながら15時間撹拌させた。溶媒を減圧留去した後、N,N−ジメチルアセトアミド163部に再溶解させ、化合物(40)3.00部を加え、65℃で3時間撹拌した。反応液にメタノール27.8部を加えて65℃でさらに3時間撹拌した。液温を徐々に室温に戻し、一晩撹拌することにより反応を完結させた。反応終了後、反応液をメタノール/水中に排出し、析出した沈殿を濾別、メタノール洗浄で精製し、アゾ骨格構造を有する化合物(148)26.6部得た。
【0207】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0208】
[アゾ骨格構造を有する化合物(148)の分析結果]
[1]GPCの結果:数平均分子量(Mn)=9,757
[2]酸価測定の結果:4.1mgKOH/g
[3]
13C NMR(600MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図5参照):
δ[ppm]=199.5(3C)、179.4(1C)、176.2(2C)、174.3−173.6(3C)、170.1、170.5、168.6(3C)、162.5(3C)、146.0−144.0(97C)、138.2、137.3、129.5、128.2−127.1、125.6−125.3、116.3、115.5、112.1、50.9、46.3、45.9、44.1−43.8、42.5、41.0、40.3、38.0、35.2、26.2、21.5、21.3、16.6、11.9
【0209】
<化合物(151)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(151)を下記スキームに従い製造した。
【0210】
【化18】
【0211】
上記高分子部(A)の合成例において、原料をスチレン6.0部、アクリル酸ブチル3.0部、アクリル酸1.0部に変更すること以外は、同様な合成方法によって、高分子部位(C)を得た。
【0212】
次に、テトラヒドロフラン500部に化合物(34)を2.0部加えて、80℃まで加熱し溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、高分子部位(C)15部を加えて溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)2.0部を加えて50℃で5時間撹拌した後、ドコサノール2.0部を加えて65℃で1時間撹拌した。液温を徐々に室温に戻し、一晩撹拌することにより反応を完結させた。反応終了後、溶液を濾過して濃縮し、メタノールで再沈殿させることにより精製し、アゾ骨格構造を有する化合物(151)12.8部得た。
【0213】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0214】
[アゾ骨格構造を有する化合物(151)の分析結果]
[1]GPCの結果:数平均分子量(Mn)=16,293
[2]酸価測定の結果:4.2mgKOH/g
[3]
13C NMR(600MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図6参照):
δ[ppm]=199.52(3C)、175.81(36C)、173.62(3C)、168.95、162.77、145.21、143.82(64C)、138.73、137.80、135.12、128.22、126.18、118.55、116.21,112.02、63.9、46.50−37.00、32.86,32.02、30.60、29.80、29.48、25.92,22.80、19.19、14.28,13.83
【0215】
<化合物(153)の製造例>
アゾ骨格構造を有する化合物(153)を下記スキームに従い製造した。
【0216】
【化19】
【0217】
上記高分子部位(A)の合成例において、原料をスチレン11.5部、アクリル酸ステアリル1.0部、アクリル酸0.5部に変更すること以外は、同様な合成方法によって、高分子部位(D)を得た。
【0218】
次に、テトラヒドロフラン500部に化合物(34)を2.0部加えて、80℃まで加熱し溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、高分子部位(D)15部を加えて溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)2.0部を加えて50℃で5時間撹拌した後、液温を徐々に室温に戻し、一晩撹拌することにより反応を完結させた。反応終了後、溶液を濾過して濃縮し、メタノールで再沈殿させることにより精製し、アゾ骨格構造を有する化合物(153)12.5部得た。
【0219】
得られたものが上記式で表される構造を有することは、上記した各装置を用い確認した。以下に、分析結果を示す。
【0220】
[アゾ骨格構造を有する化合物(153)の分析結果]
[1]GPCの結果:数平均分子量(Mn)=22,047
[2]酸価測定の結果:0mgKOH/g
[3]
13C NMR(600MHz、CDCl
3、室温)の結果(
図7参照):
δ[ppm]=199.64(3C)、176.08(8C)、173.85(3C)、170.70、168.84、162.77、145.51(93C)、144.18、138.50、135.25、128.26、127.89、125.93、118.67、116.68,112.48、64.26、50−36.00、32.18、29.57、26.38、22.66,14.46
【0221】
上記アゾ骨格構造を有する化合物(101)、(107)、(115)、(147)、(148)、(151)、及び(153)の製造例と同様の操作を行い、上記式(1)で表されるアゾ骨格構造を有する化合物(102)乃至(106)、(108)乃至(114)、(116)乃至(146)、(149)、(150)、(152)、(154)及び(155)を製造した。
【0222】
下記表1−1乃至1−2に本発明のアゾ骨格構造を有する化合物を表す。
【0223】
【表1-1】
【0224】
【表1-2】
[表1−1乃至1−2中、接頭語αは構造の左につく末端基を表す。X
1、X
2、Y
1乃至Y
7、Z
1、W、R
1−1乃至R
1−3、R
2−1乃至R
2−4、及びR
10−1乃至R
10−3は下記構造を表す。「Pr(i)」は無置換のイソプロピル基を表し、「Bu(t)」は無置換の三級ブチル基を表し、「Ph」は無置換のフェニル基を表し、「Et」はエチル基を表す。]
【0225】
【化20】
【0226】
【化21】
【0227】
【化22】
[X
1、X
2、Y
1乃至Y
7、Z
1、R
1−1乃至R
1−3、R
2−1乃至R
2−4、及びR
10−1乃至R
10−3中の「*」はポリマー主鎖との連結部位を示す。R
1−1乃至R
1−3、R
2−1乃至R
2−4、及びR
10−1乃至R
10−3中の「+」は式(W)との連結部位を示す。]
【0228】
[実施例2]
まず、懸濁重合法によるトナー製造プロセスにおける、カーボンブラックとアゾ骨格構造を有する化合物を含有する顔料分散液を下記の方法で調製した。
【0229】
<顔料分散液の調製例1>
着色剤としてカーボンブラック(a)(比表面積=65m
2/g、平均粒径=30nm、pH=9.0)30.0部、上記アゾ骨格構造を有する化合物(101)3.0部、非水溶性溶剤としてスチレン180部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]で3時間分散させ、メッシュで濾過して顔料分散液(DIS1)を得た。
【0230】
<顔料分散液の調製例2>
上記顔料分散液の調製例1においてアゾ骨格構造を有する化合物(101)を、アゾ骨格構造を有する化合物(102)乃至(155)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ顔料分散液(DIS2)乃至(DIS55)を得た。
【0231】
<顔料分散液の調製例3>
上記顔料分散液の調製例1において、カーボンブラック(a)をカーボンブラック(b)(比表面積=77m
2/g、平均粒径=28nm、pH=7.5)及びカーボンブラック(c)(比表面積=370m
2/g、平均粒径=13nm、pH=3.0)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ顔料分散液(DIS56)及び(DIS57)を得た。
【0232】
[比較例1]
評価の基準値となる顔料分散液、比較用の顔料分散液を下記方法により調製した。
【0233】
<基準用顔料分散液の調製例1>
上記実施例2の顔料分散液の調製例1において、アゾ骨格構造を有する化合物(101)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用顔料分散液(DIS58)を得た。
【0234】
<基準用顔料分散液の調製例2>
上記実施例2の顔料分散液の調製例3において、アゾ骨格構造を有する化合物(101)を加えないこと以外はそれぞれ同様の操作を行って、基準用顔料分散液(DIS59)及び(DIS60)を得た。
【0235】
<比較用顔料分散液の調製例1>
上記実施例2の顔料分散液の調製例1においてアゾ骨格構造を有する化合物(101)を、特許文献1に記載のスチレンホモポリマー(Mw=10,976)(比較化合物1)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比]=80/20]ランダムコポリマー(Mw=10,804)(比較化合物2)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=95/5]ブロックコポリマー(Mw=9,718)(比較化合物3)に変更した以外は同様の操作を行って、それぞれ比較用顔料分散液(DIS61)乃至(DIS63)を得た。
【0236】
[実施例3]
上記顔料分散液を下記の方法で評価した。
【0237】
本発明のアゾ色素骨格構造を有する化合物の顔料分散性を、上記顔料分散体の塗工膜の光沢試験をおこなうことで評価した。即ち顔料分散液をスポイトですくい取り、スーパーアート紙[SA金藤 180kg 80×160、王子製紙(株)製]上部に直線状に載せ、ワイヤーバー(#10)を用いて均一にアート紙上に塗工し、乾燥後の光沢(反射角:75°)を光沢計Gloss Meter VG2000[日本電色工業(株)製]により測定し、下記基準で評価した。尚、カーボンブラックがより微細に分散するほど塗工膜の平滑性が向上し光沢が向上する。
A:光沢度の向上率が80%以上
B:光沢度の向上率が50%以上、80%未満
C:光沢度の向上率が20%以上、50%未満
D:光沢度の向上率が20%未満
【0238】
光沢度の向上率が50%以上であれば良好な顔料分散性であると判断した。
【0239】
本発明の顔料分散性の評価結果を表2に示す。
【0240】
【表2】
【0241】
[実施例4]
次に、下記方法で懸濁重合法による本発明のトナーを製造した。
【0242】
<トナー製造例1>
高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を備えた2リットル用4つ口フラスコ中にイオン交換水710部と0.1mol/l−Na
3PO
4水溶液450部を添加し回転数を12000rpmに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/l−CaCl
2水溶液68部を徐々に添加し、微小な難水溶性分散安定剤Ca
3(PO
4)
2を含む水系媒体を調製した。次に下記組成物を60℃に加温し、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]を用いて5000rpmにて均一に溶解・分散した。
・上記顔料分散液(DIS1) 132部
・スチレン単量体 46部
・n−ブチルアクリレート単量体 34部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA、酸価15、ピーク分子量6000)] 10部
・エステルワックス(DSC測定における最大吸熱ピーク=70℃、Mn=704)
25部
・サリチル酸アルミニウム化合物[オリエント化学工業(株)製、商品名:ボントロンE−108] 2部
・ジビニルベンゼン単量体 0.1部
【0243】
これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)10部を加え、上記水系媒体中に投入し、回転数12000rpmを維持しつつ15分間造粒した。その後高速撹拌器からプロペラ撹拌羽根に撹拌器を変え、液温を60℃で重合を5時間継続させた後、液温を80℃に昇温させ8時間重合を継続させた。重合反応終了後、80℃、減圧下で残存単量体を留去した後、30℃まで冷却し、重合体微粒子分散液を得た。
【0244】
得られた上記重合体微粒子分散液を洗浄容器に移し、撹拌しながら、希塩酸を添加し、pH1.5で2時間撹拌し、Ca
3(PO
4)
2を含むリン酸とカルシウムの化合物を溶解させた後に、濾過器で固液分離し、重合体微粒子を得た。これを水中に投入して撹拌し、再び分散液とした後に、濾過器で固液分離した。重合体微粒子の水への再分散と固液分離とをCa
3(PO
4)
2を含むリン酸とカルシウムの化合物が十分に除去されるまで繰り返し行った。その後、最終的に固液分離した重合体微粒子を、乾燥機で十分に乾燥してトナー粒子を得た。
【0245】
得られたトナー粒子100部に対し、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された疎水性シリカ微粉体1.0部(数平均一次粒子径7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15部(数平均一次粒子径45nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.5部(数平均一次粒子径200nm)をヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製]で5分間乾式混合して、トナー(TNR1)を得た。
【0246】
<トナーの製造例2>
上記トナーの製造例1における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS2)乃至(DIS55)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、本発明のトナー(TNR2)乃至(TNR55)を得た。
【0247】
<トナーの製造例3>
上記トナーの製造例1における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS56)及び(DIS57)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、本発明のトナー(TNR56)及び(TNR57)を得た。
【0248】
[実施例5]
次に、下記方法で懸濁造粒法による本発明のトナーを製造した。
【0249】
<トナーの製造例4>
酢酸エチル180部、カーボンブラック(a)30部、上記アゾ骨格構造を有する化合物(101)3.0部、ガラスビーズ(φ1mm)130部を混合し、アトライター[日本コークス工業(株)製]により3時間分散させ、メッシュで濾過することで顔料分散液を調製した。
【0250】
下記組成をボールミルで24時間分散することにより、トナー組成物混合液200部を得た。
・上記顔料分散液 96.0部
・極性樹脂[飽和ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとフタル酸の重縮合物、Tg=75.9℃、Mw=11000、Mn=4200、酸価11)]
85.0部
・炭化水素ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、DSC測定における最大吸熱ピーク=80℃、Mw=750) 9.0部
・サリチル酸アルミニウム化合物[ボントロンE−108、オリエント化学工業(株)製] 2部
・酢酸エチル(溶剤) 10.0部
【0251】
下記組成をボールミルで24時間分散することにより、カルボキシメチルセルロースを溶解し、水系媒体を得た。
・炭酸カルシウム(アクリル酸系共重合体で被覆) 20.0部
・カルボキシメチルセルロース[セロゲンBS−H、第一工業製薬(株)製]
0.5部
・イオン交換水 99.5部
【0252】
該水系媒体1200部を、高速撹拌装置T.K.ホモミクサー[プライミクス(株)製]に入れ、回転羽根を周速度20m/secで撹拌しながら、上記トナー組成物混合液1000部を投入し、25℃一定に維持しながら1分間撹拌して懸濁液を得た。
【0253】
上記懸濁液2200部をフルゾーン翼[(株)神鋼環境ソリューション製]により周速度45m/minで撹拌しながら、液温を40℃一定に保ち、ブロワ−を用いて上記懸濁液面上の気相を強制吸気し、溶剤除去を開始した。その際、溶剤除去開始から15分後に、イオン性物質として1%に希釈したアンモニア水75部を添加し、続いて溶剤除去開始から1時間後に上記アンモニア水25部を添加し、続いて溶剤除去開始から2時間後に上記アンモニア水25部を添加し、最後に溶剤除去開始から3時間後に上記アンモニア水25部を添加し、総添加量を150部とした。更に液温を40℃に保ったまま、溶剤除去開始から17時間保持し、懸濁粒子から溶剤(酢酸エチル)を除去したトナー分散液を得た。
【0254】
溶剤除去工程で得られたトナー分散液300部に、10mol/l塩酸80部を加え、更に0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液により中和処理後、吸引濾過によるイオン交換水洗浄を4回繰り返して、トナーケーキを得た。得られたトナーケーキを真空乾燥機で乾燥し、目開き45μmの篩で篩分しトナー粒子を得た。これ以降の操作は上記トナーの製造例1と同様にしてトナー(TNR58)を得た。
【0255】
<トナーの製造例5>
上記トナーの製造例4におけるアゾ骨格構造を有する化合物(101)を(102)乃至(155)にそれぞれ変更すること以外は、同様の操作で、本発明のトナー(TNR59)乃至(TNR112)を得た。
【0256】
<トナーの製造例6>
上記カーボンブラック(a)をカーボンブラック(b)及びカーボンブラック(c)にそれぞれ変更すること以外は、上記トナーの製造例4と同様にして、本発明のトナー(TNR113)及び(TNR114)を得た。
【0257】
[比較例2]
上記実施例4で製造した本発明のトナーに対して、評価の基準値となるトナー、比較用トナーを下記方法により製造した。
【0258】
<基準用トナーの製造例1>
上記トナーの製造例1における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS58)に変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、基準用トナー(TNR115)を得た。
【0259】
<基準用トナーの製造例2>
上記トナーの製造例3における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS59)及び(DIS60)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例3と同様にして、基準用トナー(TNR116)及び(TNR117)を得た。
【0260】
<比較用トナーの製造例1>
上記トナーの製造例1における上記顔料分散液(DIS1)を顔料分散液(DIS61)乃至(DIS63)にそれぞれ変更すること以外は、トナーの製造例1と同様にして、比較用トナー(TNR118)乃至(TNR120)を得た。
【0261】
[比較例3]
実施例5で製造した本発明のトナーに対して、評価の基準値となるトナー、比較用トナーを下記方法により製造した。
【0262】
<基準用トナーの製造例3>
上記アゾ骨格構造を有する化合物(101)を加えないこと以外は、トナーの製造例4と同様にして、基準用トナー(TNR121)を得た。
【0263】
<基準用トナーの製造例4>
上記アゾ骨格構造を有する化合物(101)を加えないこと以外は、トナーの製造例6と同様にして、基準用トナー(TNR122)及び(TNR123)を得た。
【0264】
<比較用トナーの製造例2>
上記アゾ骨格構造を有する化合物(101)を、特許文献1に記載のスチレンホモポリマー(Mw=10,976)(比較化合物1)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=80/20]ランダムコポリマー(Mw=10,804)(比較化合物2)、スチレン/ブチルアクリレート[共重合比(質量比)=95/5]ブロックコポリマー(Mw=9,718)(比較化合物3)に変更した以外は、トナーの製造例4と同様にして、比較用トナー(TNR124)乃至(TNR126)を得た。
【0265】
[実施例6]
本発明で得たトナーを下記の方法で評価した。
【0266】
トナー(TNR1)乃至(TNR126)を用いて、画像サンプルを出力し後述する画像特性を比較評価した。尚、画像特性の比較に際し画像形成装置(以下LBPと略)としてLBP−5300[キヤノン(株)製]の改造機を使用した通紙耐久を行った。改造内容としてはプロセスカートリッジ(以下CRGとする)内の現像ブレードを厚み8[μm]のSUSブレードに交換した。その上でトナー担持体である現像ローラーに印加する現像バイアスに対して−200[V]のブレードバイアスを印加できるようにした。
【0267】
<トナーの重量平均粒径D4、及び個数平均粒径D1の測定>
コールターマルチサイザー[ベックマン・コールター(株)製]を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェイス[日科機バイオス(株)製]及びパーソナルコンピューターを接続した。電解液は塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を用いるが、例えばISOTON R−II[ベックマン・コールター(株)製]が使用できる。具体的な測定手順は、コールター社発行のコールターマルチサイザーのカタログ(2002年2月版)や、測定装置の操作マニュアルに記載されているが、以下の通りである。
【0268】
上記電解水溶液100乃至150mlに測定試料を2乃至20mg加えた。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1乃至3分間分散処理を行い、上記コールターマルチサイザーの100μmアパーチャーを用いて、2.0μm以上64.0μm以下のトナー粒子の体積、個数を測定した。得られたデータを16のチャンネルに振り分け、重量平均粒径D4、個数平均粒径D1及び、D4/D1を求めた。
【0269】
本発明の懸濁重合法によるトナーの重量平均粒径D4、及びD4/D1の測定結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーの重量平均粒径D4、及びD4/D1の測定結果を表4に示す。
【0270】
<トナーの着色力評価>
常温常湿[N/N(23.5℃,60%RH)]環境下にて、転写紙(75g/m
2紙)に対してトナー載り量0.5mg/cm
2のベタ画像を作成した。反射濃度計Spectrolino(GretagMacbeth社製)を用いてそのベタ画像の濃度を測定した。トナーの着色力はベタ画像濃度の向上率で評価した。
【0271】
上記トナー(TNR1)乃至(TNR55)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR115)のベタ画像濃度を基準値とした。また、上記トナー(TNR56)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR116)のベタ画像濃度を基準値とした。また、上記トナー(TNR57)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR117)のベタ画像濃度を基準値とした。
【0272】
上記トナー(TNR58)乃至(TNR112)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR121)のベタ画像濃度を基準値とした。また、上記トナー(TNR113)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR122)のベタ画像濃度を基準値とした。また、上記トナー(TNR114)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR123)のベタ画像濃度を基準値とした。
【0273】
以下に、トナーの着色力の評価基準を示す。
A:ベタ画像濃度の向上率が60%以上
B:ベタ画像濃度の向上率が40%以上、60%未満
C:ベタ画像濃度の向上率が20%以上、40%未満
D:ベタ画像濃度の向上率が20%未満
【0274】
ベタ画像濃度の向上率が20%以上であれば良好な着色力であると判断した。
【0275】
本発明の懸濁重合法によるトナーの着色力評価結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーの着色力評価結果を表4に示す。
【0276】
<トナーのかぶり評価>
常温常湿[N/N(23.5℃,60%RH)]環境下、及び高温高湿[H/H(30℃,80%RH)]環境下にて、転写紙(75g/m
2紙)を用いて2%の印字比率の画像を10,000枚までプリントアウトする画出し試験において、耐久評価終了時に白地部分を有する画像を出力し、「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」[(有)東京電色製]により測定したプリントアウト画像の白地部分の白色度[反射率Ds(%)]と転写紙の白色度[平均反射率Dr(%)]の差から、かぶり濃度(%)[=Dr(%)−Ds(%)]を算出し、耐久評価終了時のかぶりを評価した。
【0277】
以下に、トナーのかぶりの評価基準を示す。
A:かぶり濃度が1.0%未満
B:かぶり濃度が1.0%以上乃至2.0%未満
C:かぶり濃度が2.0%以上乃至3.0%未満
D:かぶり濃度が3.0%以上
【0278】
かぶり濃度が3.0%未満であればかぶりが十分に抑制されていると判断した。
【0279】
本発明の懸濁重合法によるトナーのかぶり評価結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーのかぶり評価結果を表4に示す。
【0280】
<トナーの転写効率評価>
高温高湿[H/H(30℃,80%RH)]環境下にて、転写紙(75g/m
2紙)を用いて2%の印字比率の画像を10,000枚までプリントアウトする画出し試験において、耐久評価終了時に転写効率確認を行った。トナーの載り量0.65mg/cm
2のベタ画像をドラム上に現像させた後、転写紙(75g/m
2紙)に転写させ未定着画像を得た。ドラム上のトナー量と転写紙上のトナー量との重量変化から転写効率を求めた(ドラム上トナー量が全量転写紙上に転写された場合を転写効率100%とする。)
以下に、トナーの転写効率の評価基準を示す。
A:転写効率が95%以上
B:転写効率が90%以上95%未満
C:転写効率が80%以上90%未満
D:転写効率が80%未満
【0281】
転写効率が80%以上であれば良好な転写効率であると判断した。
【0282】
本発明の懸濁重合法によるトナーの転写効率評価結果を表3に、懸濁造粒法によるトナーの転写効率評価結果を表4に示す。
【0283】
[比較例4]
比較用トナー(TNR118)乃至(TNR120)について、それぞれ重量平均粒径D4、及びD4/D1、着色力、かぶり、転写効率を実施例6と同様の方法で評価した。
【0284】
上記比較用トナー(TNR118)乃至(TNR120)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR115)のベタ画像濃度を基準値とした。
【0285】
上記比較用トナー(TNR124)乃至(TNR126)のベタ画像濃度の向上率は、基準用トナー(TNR121)のベタ画像濃度を基準値とした。
【0286】
懸濁重合法による比較用トナーの評価結果を表3に、懸濁造粒法による比較用トナーの評価結果を表4に示す。
【0287】
【表3】
【0288】
【表4】
【0289】
合成したトナーを、クロスセクションポリッシャーSM−09010[日本電子(株)製]を用いて断面を形成し、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと略)S−4800[(株)日立ハイテクノロジーズ製]によりトナー断面のカーボンブラックを観察した。TNR28の断面SEM写真を
図8に、TNR115の断面SEM写真を
図9に示す。
【0290】
表2より明らかなように、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、カーボンブラックの結着樹脂への分散性を改善することが確認された。
【0291】
また、表3より明らかなように、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、カーボンブラックの結着樹脂への分散性を改善し、着色力が良好なブラックトナーが提供されることが確認された。また、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、かぶりが抑制され、転写効率が高いブラックトナーが提供されることが確認された。
【0292】
また、表4より明らかなように、懸濁造粒法においても同様に、カーボンブラックの結着樹脂への分散性を改善し、着色力が良好なブラックトナーが提供されること、かぶりが抑制され、転写効率が高いブラックトナーが提供されることが確認された。
【0293】
更に、
図8及び
図9より明らかなように、アゾ骨格構造を有する化合物を用いることで、トナー中でもカーボンブラックが良好に分散されていることが確認された。