特許第6041718号(P6041718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041718
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】帯電装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G03G15/02 103
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-54515(P2013-54515)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-182162(P2014-182162A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮西 佳祐
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−191264(JP,A)
【文献】 特開2012−242533(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0105210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの薄い帯状を呈し、長手方向に沿って鋸刃状の複数の尖端部を突出させて備えた放電部材と、
前記複数の尖端部が順に没入及び脱離するように前記放電部材の長手方向に沿って移動する清掃部材と、
前記清掃部材に対する前記放電部材の端部に位置する尖端部の没入量を前記放電部材の中間部に位置する尖端部の没入量よりも小さくする緩和手段と、を備えた帯電装置。
【請求項2】
前記緩和手段は、前記放電部材における長手方向及び側面の法線方向に直交する方向について、前記清掃部材の位置を、放電部材の端部側で放電部材の中間部よりも放電部材から離間させるものである請求項に記載の帯電装置。
【請求項3】
前記緩和手段として、前記放電部材の端部に位置する尖端部の突出量を前記放電部材の中間部に位置する尖端部の突出量よりも小さくする請求項に記載の帯電装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れかに記載の帯電装置によって帯電される感光体を介して電子写真方式の画像形成処理を行う画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式の画像形成を行う画像形成装置に備えられる帯電装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成を行う画像形成装置は、露光工程前の感光体表面を均一の電位に帯電させる帯電装置を備えている。帯電装置は、放電部材を感光体表面との間に均一な距離を設けて保持している。近年、放電部材として、タングステンワイヤに代えて鋸刃状の放電部材が多用されている(例えば、特許文献1参照。)。鋸刃状の放電部材は、ワイヤのように清掃時の断線の虞がない。
【0003】
鋸刃状の放電部材の清掃には、ゴム等の弾性を有する清掃ローラが用いられる。清掃ローラを鋸刃状の放電部材の長手方向に沿って移動させることで、放電部材の複数の尖端部分が順に清掃ローラに没入及び脱離しつつ清掃ローラが回転し、放電部材の尖端部から塵埃が除去される。感光体表面を適正に帯電させることができるように鋸刃状の放電部材を清掃するためには、放電電極の尖端部を清掃ローラに1mm程度没入させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−256672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の帯電装置では鋸刃状の放電部材の複数の尖端部の全てが一定の高さにされていたため、放電部材の両端部に位置する尖端部は、回転していない状態の清掃ローラに没入する際に、清掃ローラからの大きな負荷の作用によって変形を生じる場合がある。一方、放電部材の長手方向における中間部分に位置する尖端部は、尖端部との接触によって回転している状態の清掃ローラに没入するため、清掃ローラから大きな負荷が作用することがなく、変形を生じることはない。
【0006】
鋸刃状の放電部材の尖端部の一部に変形を生じると、感光体表面との間の放電距離が変化し、感光体表面を均一な電位に帯電させることができなくなる。このような問題は、回転しない清掃パット等の回転しない清掃部材を用いて鋸刃状の放電部材を清掃する帯電装置においても同様に生じる。
【0007】
この発明の目的は、鋸刃状の放電部材の複数の尖端部のうち長手方向の端部に位置する尖端部に清掃部材から大きな負荷が作用しないようにし、尖端部の変形による帯電ムラの発生を防止できる帯電装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の帯電装置は、放電部材、清掃部材及び緩和手段を備えている。放電部材は、所定長さの薄い帯状を呈し、長手方向に沿って鋸刃状の複数の尖端部を突出させて備えている。清掃部材は、複数の尖端部が順に没入及び脱離するように放電部材の長手方向に沿って移動する。緩和手段は、放電部材における長手方向の端部に位置する尖端部に清掃部材から作用する力の長手方向の分力、及び放電部材の側面の法線方向の分力を緩和する。
【0009】
放電部材の長手方向に沿って移動を開始すると、まず当接部材の端部に位置する尖端部が清掃部材に没入する。このとき、放電部材の端部に位置する尖端部には、緩和手段により、放電部材の長手方向の分力、及び放電部材の側面の法線方向の分力が緩和された状態で清掃部材から力が作用する。放電部材の複数の尖端部のうち長手方向の端部に位置する尖端部に、変形を生じるような大きな負荷が清掃ローラから作用することがない。
【0010】
この構成において、緩和手段は、清掃部材に対する放電部材の端部に位置する尖端部の没入量を放電部材の中間部に位置する尖端部の没入量よりも小さくするものとすることができる。
【0011】
例えば、緩和手段は、放電部材における長手方向及び側面の法線方向に直交する方向について、清掃部材の位置を、放電部材の端部側で放電部材の中間部よりも放電部材から離間させるものとすることができる。
【0012】
また、緩和手段は、放電部材の端部に位置する尖端部の突出量を放電部材の中間部に位置する尖端部の突出量よりも小さくすることによっても実現できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、鋸刃状の放電部材の複数の尖端部のうち長手方向の端部に位置する尖端部に清掃部材から大きな負荷が作用しないようにすることができ、尖端部の変形による帯電ムラの発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の構成を示す正面図である。
図2】(A)および(B)は、この発明の第1の実施形態に係る帯電装置の側面断面図および要部の正面図である。
図3】同帯電装置の清掃時における要部の正面図である。
図4】(A)および(B)は、この発明の第2の実施形態に係る帯電装置の側面断面図および要部の正面図である。
図5】同帯電装置の清掃時における要部の正面図である。
図6】(A)および(B)は、この発明の第3の実施形態に係る帯電装置の側面断面図および要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、この発明の実施形態に係る帯電装置1を適用した画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、用紙(OHP等の記録媒体を含む。)に電子写真方式の画像形成を行う。
【0016】
一例として、画像形成装置100は、原稿読取部10、給紙部20、画像形成部30、排紙部40を備えている。原稿読取部10は、プラテンガラス11に載置された原稿又は原稿載置トレイ12から原稿搬送路R内を搬送される原稿から画像を読み取る。給紙部20は、装置本体の下部に配置され、給紙トレイ21に載置された用紙を1枚ずつ画像形成部30に向けて給紙する。
【0017】
画像形成部30は、原稿読取部10の下方に配置され、レーザスキャニングユニット(以下、LSUと言う。)37、感光体ドラム31及び定着装置36を有している。感光体ドラム31の周囲には、帯電装置1、現像装置33、転写装置34及びクリーナユニット35が感光体ドラム31の回転方向である図1に示す矢印の方向に沿ってこの順に配置されている。
【0018】
原稿読取部10によって読み取られた画像データは、操作パネル部から入力された条件で画像処理が施された後、LSU37にプリントデータとして送信される。LSU37は、帯電器32によって所定の電位に帯電された感光体ドラム31の表面に、画像データに基づいたレーザ光を照射して静電潜像を形成する。静電潜像は、現像装置33から供給されるトナーによってトナー像に顕像化される。
【0019】
トナー像は、転写装置34によって感光体ドラム31の表面から用紙の表面に転写される。転写工程を終了した用紙は、定着装置36により加熱及び加圧され、トナー像が溶融・固着された後に排紙部40の排紙トレイ42に排出される。
【0020】
図2(A)及び(B)に示すように、第1の実施形態に係る帯電装置1は、放電部材である鋸刃状電極2、ホルダ3、支持体4、清掃ローラ5、操作軸6、ケース7を備えている。
【0021】
鋸刃状電極2は、SUS等の薄い帯状の金属材料からなり、下端部から全長にわたって一定の間隔で複数の尖端部2Aが下向きに突出している。複数の尖端部2Aは、鋸刃状電極2の長手方向に平行な配列方向Xに沿って形成されている。帯電装置1は、鋸刃状電極2の長手方向を感光体ドラム31の軸方向に平行にして配置される。したがって、配列方向Xは、感光体ドラム31の回転軸に平行である。鋸刃状電極2の長さは、感光体ドラム31の周面の軸方向の長さよりも僅かに長い。
【0022】
ホルダ3は、樹脂等の絶縁性材料によって構成されており、保持部3A及び端子部3Bを備えている。保持部3Aは、鋸刃状電極2を保持する。保持部3Aの長さは、鋸刃状電極2における複数の尖端部2Aの配列範囲よりも長い。保持部3Aは、配列方向Xに直交する面内で、図2(A)中にハッチングで示す一定の断面形状を呈する。端子部3Bは、図示しない端子を収納する。端子は、図示しない高圧電源と鋸刃状電極2とを接続する。
【0023】
支持体4は、下面が開放しており、保持部3Aの外側に上方から装着される。支持体4の内側面には、突起4A,4Bが形成されている。支持体4は、内側の上面と突起4A,4Bとの間に保持部3Aを上下方向に挟み、内側の側面で保持部3Aを左右方向に挟む。したがって、支持体4は、配列方向Xに直交する面内での回転を含む移動を規制されている。
【0024】
清掃ローラ5は、この発明の清掃部材であり、支持体4の下端部に回転自在に支持されている。清掃ローラ5は、一例として、クロロスルフォン化ポリエチレン等の弾性体を素材としている。
【0025】
清掃ローラ5を構成する弾性体としては、尖端部2Aの没入及び脱離によって容易に切断されることなく弾性変形することを条件に、公知のゴム材料や樹脂材料のなかから好適な材料を実験的に選択することができる。また、尖端部2Aの表面に損傷を与えることなく尖端部2Aの表面からトナーや塵埃を除去できることを条件に公知の材料から適宜選択した研磨剤を、公知の方法で弾性体に含有させることができる。
【0026】
操作軸6は、背面側の端部が支持体4の孔部4Cの内部に固定されている。操作軸6は、図示しない前面側の端部がホルダ3の前面から突出している。
【0027】
ケース7は、ホルダ3の全長にわたって、支持体4の外側に装着される。ケース7は、鋸刃状電極2をシールドする。
【0028】
端子部3Bに収納された端子を介して鋸刃状電極2に高圧電源が印加されると、鋸刃状電極2の複数の尖端部2Aのそれぞれの先端部に印加電界が集中し、この部分に放電を発生し易くなる。これによって、複数の尖端部2Aのそれぞれから感光体ドラム31の表面に放電を生じる。この放電によって、感光体ドラム31の表面が、所定の電位に帯電する。
【0029】
保持部3Aは、配列方向Xに直交する断面形状が、少なくとも複数の尖端部2Aの配列範囲内で一定である。支持体4は、保持部3Aの外側に装着されて配列方向Xに直交する面内での回転を含む移動を規制されている。したがって、支持体4は、保持部3Aに案内されて、少なくとも複数の尖端部2Aの配列範囲内で、配列方向Xに往復移動自在にされている。
【0030】
鋸刃状電極2の清掃時に、操作軸6を介して支持体4が鋸刃状電極2の長手方向に沿って移動する。これに伴い、清掃ローラ5が鋸刃状電極2の長手方向の両端部において最も外側に位置する尖端部2Aよりもさらに外側の間を往復移動し、清掃ローラ5の周面から内部に複数の尖端部2Aが順に没入及び脱離する。
【0031】
図3に示すように、鋸刃状電極2の複数の尖端部2Aのうち、鋸刃状電極2の長手方向の両端に位置する尖端部2A′は、この発明の緩和手段として、長手方向の中間部に位置する他の尖端部2Aよりも突出量を小さくされている。例えば、中間部に位置する尖端部2Aの突出量H=1.5mmに対して、両端に位置する尖端部2a′の突出量は長さL=0.5mm小さくされている。このため、中間部に位置する尖端部2Aが清掃ローラ5に深さD=0.6mm没入する場合に、尖端部2A′は0.1mmだけ清掃ローラ5に没入する。
【0032】
清掃ローラ5は、回転力の供給を受けていないため、鋸刃状電極2の清掃開始直後に、回転していない状態で尖端部2A′に当接する。この場合でも、尖端部2A′は、清掃ローラ5へ僅かに没入するのみであり、清掃ローラ5から過大な負荷を受けることがない。清掃ローラ5から尖端部2A′に作用する力の鋸刃状電極2の長手方向(矢印X方向)の分力、及び鋸刃状電極2の側面の法線方向(図2(A)に示す矢印Y方向)の分力が緩和され、尖端部2A′に変形を生じることがない。
【0033】
これによって、鋸刃状電極2の複数の尖端部2Aの全てから感光体ドラム31に対して均一な状態で放電を行うことができる。
【0034】
図4(A)及び(B)に示すように、この発明の第2の実施形態に係る帯電装置1′は、この発明の緩和手段として、保持部3Aの一部から下方に突出するガイド3Cを備えている。その他の構成は、帯電装置1と同様である。ガイド3Cは、鋸刃状電極2の両端の先端部2A′の位置で清掃ローラ5を下方に移動させるように形成されている。
【0035】
図5に示すように、ガイド3Cは、例えば、清掃ローラ5を支持する支持体4の弾性変形により、中間部の尖端部2Aに対向する位置での清掃ローラ5の高さよりも長さM=0.5mmだけ清掃ローラ5を下方に移動させる。このため、中間部に位置する尖端部2Aが清掃ローラ5に深さD=0.6mm没入する場合に、尖端部2A′は0.1mmだけ清掃ローラ5に没入する。
【0036】
この構成によっても、尖端部2A′を清掃ローラ5へ僅かに没入させることができ、清掃ローラ5から尖端部2A′に過大な負荷が作用しないようにすることができる。清掃ローラ5から尖端部2A′に作用する力の鋸刃状電極2の長手方向(矢印X方向)の分力、及び鋸刃状電極2の側面の法線方向(図2(A)に示す矢印Y方向)の分力が緩和され、尖端部2A′に変形を生じることがない。
【0037】
なお、清掃ローラ5に代えて清掃パッドのように回転しない清掃部材を備えた帯電装置についても、この発明の第1及び第2の実施形態の構成を同様に適用できる。
【0038】
図6(A)及び(B)に示すように、この発明の第3の実施形態に係る帯電装置1″は、この発明の緩和手段として、清掃ローラ5にピニオンギア5Aを備えるとともに、保持部3Aの一部から下方に突出するラックギア3Dを備えている。その他の構成は、帯電装置1と同様である。ラックギア3Dは、少なくとも鋸刃状電極2の両端部で長手方向における尖端部A′を挟む範囲に形成されており、清掃ローラ5がピニオンギア5Aに噛合する。
【0039】
この構成により、鋸刃状電極2の清掃開始直後に、清掃ローラ5を回転した状態で尖端部2A′に当接させることができ、回転していない状態の清掃ローラ5から尖端部2A′に作用する力を小さくすることができる。清掃ローラ5から尖端部2A′に作用する力の鋸刃状電極2の長手方向(矢印X方向)の分力、及び鋸刃状電極2の側面の法線方向(図6(A)に示す矢印Y方向)の分力が緩和され、尖端部2A′に変形を生じることがない。
【0040】
なお、上記第1〜3の実施形態が備える構成を適宜組み合わせて別の帯電装置を形成することもできる。
【0041】
また、モータ及びモータの回転を鋸刃状電極2の長手方向の移動力に変換するボールネジ等の変換機構を備え、支持体4を自動で移動させるようにした帯電装置にもこの発明を同様に適用することができる。
【0042】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 帯電装置
2 鋸刃状電極
2A,2A′ 尖端部
3C ガイド
3D ラックギア
5 清掃ローラ
5A ピニオンギア
10 画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6