特許第6041736号(P6041736)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041736
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】薬剤放散器
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20161206BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A01M1/20 E
   A61L9/12
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-74008(P2013-74008)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197991(P2014-197991A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 和之
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅之
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−82115(JP,A)
【文献】 実開平7−34676(JP,U)
【文献】 特開昭63−233740(JP,A)
【文献】 特開2010−51179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/20
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性を有する薬剤を保持した薬剤保持体と、
上記薬剤保持体を収容する収容部と、
上記薬剤保持体に空気を流通させるための第1送風機及び第2送風機とを備え、
上記収容部には、空気を流入させるための流入口と、流入した空気を流出させる流出口とが形成され、
上記第1送風機及び第2送風機によって上記収容部の流入口から該収容部内に流入した空気を上記薬剤保持体に接触させた後、上記流出口から流出させて上記薬剤を空気中に放散させるように構成された薬剤放散器において、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は、空気流れ方向に見たとき上記収容部の流出口に重複するように、かつ、上記流出口の開口幅方向に互いに間隔をあけて並ぶように配置されていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤放散器において、
上記収容部の流出口は所定方向に長い形状とされ、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は、上記収容部の流出口の長手方向に間隔をあけて配置されていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項3】
請求項2に記載の薬剤放散器において、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は同径とされ、
上記第1送風機の吸気口の縁部と上記第2送風機の吸気口の縁部との離間距離は、上記第1送風機の吸気口の径の0.25倍よりも長く設定されていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項4】
請求項2に記載の薬剤放散器において、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は同径とされ、
上記収容部の流出口の長手方向の寸法は上記第1送風機の吸気口の径の2.0倍以下に設定されていることを特徴とする薬剤放散器。
【請求項5】
請求項4に記載の薬剤放散器において、
上記第1送風機の吸気口の縁部と上記第2送風機の吸気口の縁部との離間距離は、上記第1送風機の吸気口の径の0.6倍以下に設定されていることを特徴とする薬剤放散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば虫忌避剤や殺虫剤等の薬剤を空気中に放散させる薬剤放散器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の薬剤放散器として、例えば、特許文献1に開示されているように、揮発性を有する薬剤を保持した薬剤保持体と、薬剤保持体を収容する収容部と、送風機とを備えたものが知られている。収容部には、外部空気の流入口及び流出口が形成されている。送風機は、2つ設けられており、互いの吸気口が収容部内で向かい合うようにして配置されている。そして、送風機を作動させることで収容部に外部空気を送り込んで薬剤保持体に接触させ、これによって揮発した薬剤を収容部の流出口から流出させて空気中に放散させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−192500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば虫忌避剤を放散させる場合を想定すると、効力を確保するために、特許文献1の薬剤放散器のように2つの送風機を吸気口が互いに対向するように2つ設けて薬剤保持体に対して異なる方向から空気を流通させるようにすることが考えられる。
【0005】
ところが、2つ送風機を設けると送風量を増加させることができるものの、特許文献1のように2つの吸気口が対向するように配置されていると、各々の送風機による負圧が干渉しやすく、十分な効力の向上が期待できないことが考えられる。
【0006】
また、2つの送風機を設けると薬剤放散器が大型化するので、設置スペースを確保するのが問題となる場合がある。
【0007】
そこで、送風機が1つの薬剤放散器を2つ使用することで効力を高めることが考えられるが、2つの薬剤放散器を設置するのに要するスペースを確保するのが問題となる。
【0008】
また、2つの薬剤放散器を用いる場合、それぞれの薬剤放散器に薬剤保持体があるので、ある期間使用した後は、2つの薬剤保持体を交換しなければならず使用者の交換作業が煩雑である。これに対して、薬剤保持体を大型化することが考えられるが、そのようにした場合には、薬剤放散器が、大型の薬剤保持体を装着できるように大きなものとなり、この場合も設置に要するスペースを確保する上で問題となる場合がある。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクトで、かつ、高い薬剤放散能力を持った薬剤放散器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、薬剤放散器に対して複数の送風機によって空気を流通させ、これら送風機の位置関係に工夫を凝らすことで、コンパクトでありながら高い薬剤放散能力を得ることができるようにした。
【0011】
第1の発明は、
揮発性を有する薬剤を保持した薬剤保持体と、
上記薬剤保持体を収容する収容部と、
上記薬剤保持体に空気を流通させるための第1送風機及び第2送風機とを備え、
上記収容部には、空気を流入させるための流入口と、流入した空気を流出させる流出口とが形成され、
上記第1送風機及び第2送風機によって上記収容部の流入口から該収容部内に流入した空気を上記薬剤保持体に接触させた後、上記流出口から流出させて上記薬剤を空気中に放散させるように構成された薬剤放散器において、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は、空気流れ方向に見たとき上記収容部の流出口に重複するように、かつ、上記流出口の開口幅方向に互いに間隔をあけて並ぶように配置されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1送風機と第2送風機とによって薬剤保持体に接触する空気量が増加する。このとき、第1送風機の吸気口及び第2送風機の吸気口が空気流れ方向に見たときに収容部の流出口に重複しているので、同方向に負圧が作用することになり、第1送風機と第2送風機との負圧の干渉が低減される。さらに、第1送風機の吸気口と第2送風機の吸気口とが間隔をあけて配置されるので、このことによっても第1送風機による空気の流れと第2送風機による空気の流れとの干渉が低減される。よって、コンパクトで高い薬剤放散能力が得られる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、
上記収容部の流出口は所定方向に長い形状とされ、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は、上記収容部の流出口の長手方向に間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、収容部の流出口を所定方向に長くすることで流出口の開口面積を広く確保し、この場合に第1送風機の吸気口及び第2送風機の吸気口を流出口の長手方向に間隔をあけて配置することで、空気の流量を多く確保することが可能になる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は同径とされ、
上記第1送風機の吸気口の縁部と上記第2送風機の吸気口の縁部との離間距離は、上記第1送風機の吸気口の径の0.25倍よりも長く設定されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、第1送風機による空気の流れと第2送風機による空気の流れとの干渉をより一層低減することが可能になるので、空気の流量が多くなる。
【0017】
第4の発明は、第2の発明において、
上記第1送風機の吸気口及び上記第2送風機の吸気口は同径とされ、
上記収容部の流出口の長手方向の寸法は上記第1送風機の吸気口の径の2.0倍以下に設定されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、収容部の流出口の長手方向の寸法が、第1送風機の吸気口の径と第2送風機の吸気口の径とを合わせた長さ以下となるので、収容部の大型化を回避しながら、流出口の開口面積を十分に確保することが可能になる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明において、
上記第1送風機の吸気口の縁部と上記第2送風機の吸気口の縁部との離間距離は、上記第1送風機の吸気口の径の0.6倍以下に設定されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第1送風機の吸気口と第2送風機の吸気口のうち、収容部の流出口に重複する範囲を広く確保することが可能になるので、空気の流量が多くなる。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、第1送風機及び第2送風機を設け、薬剤保持体の収容部の流出口に重複するように第1送風機の吸気口及び第2送風機の吸気口を配置し、これら吸気口の間隔をあけたので、第1送風機による空気の流れと第2送風機による空気の流れとの干渉を低減することができ、コンパクトで高い薬剤放散能力を得ることができる。
【0022】
第2の発明によれば、収容部の流出口を所定方向に長くして開口面積を広く確保する場合に、第1送風機の吸気口及び第2送風機の吸気口を、収容部の流出口の長手方向に間隔をあけて配置したので、空気の流量を多く確保することができ、より高い薬剤放散能力を得ることができる。
【0023】
第3の発明によれば、第1送風機の吸気口の縁部と第2送風機の吸気口の縁部との離間距離を、第1送風機の吸気口の径の0.25倍よりも長く設定したので、第1送風機による空気の流れと第2送風機による空気の流れとの干渉をより一層低減でき、より高い薬剤放散能力を得ることができる。
【0024】
第4の発明によれば、収容部の流出口の長手方向の寸法を、第1送風機の吸気口の径と第2送風機の吸気口の径とを合わせた長さ以下とすることができる。これにより、収容部の大型化を回避しながら、流出口の開口面積を十分に確保することができる。
【0025】
第5の発明によれば、第1送風機の吸気口の縁部と第2送風機の吸気口の縁部との離間距離を、上記第1送風機の吸気口の径の0.6倍以下にしたので、第1送風機の吸気口と第2送風機の吸気口のうち、収容部の流出口に重複する範囲を広く確保することができる。これにより、収容部の流出口の空気の流量が多くなり、より高い薬剤放散能力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る薬剤放散器の平面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3】薬剤カートリッジを省略した状態の図1相当図である。
図4】吸気口の径が50mmの場合のファン間距離と薬剤蒸散量比との関係を示すグラフである。
図5】吸気口の径が47mmの場合の図4相当図である。
図6】実施形態2に係る薬剤放散器を示す図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る薬剤放散器1の平面図である。この薬剤放散器1は、例えば、虫忌避剤、殺虫剤、芳香剤、消臭剤、除菌剤等の揮発性を有する薬剤を空気中に放散するためのものであり、例えば室内等に設置して使用することができる。
【0029】
薬剤放散器1は、薬剤カートリッジ10と、薬剤カートリッジ10が取り付けられる本体20とを備えている。薬剤カートリッジ10は、上記薬剤のうちの1種または2種以上を保持した薬剤保持体11と、薬剤保持体11を収容する枠部(収容部)12とを備えている。薬剤保持体11は、例えば上記薬剤を含浸させた不織布、発泡体、メッシュ部材等の空気が流通する部材で構成することができる。図2に示すように、薬剤保持体11は、山折り部11aと谷折り部11bとが空気の流れ方向と直交する方向に交互に形成されるようにプリーツ成形されたものである。図1に示すように、薬剤保持体11は、空気の流れ方向に見たとき、左右方向に長い矩形状となっている。薬剤保持体11の高さ(空気流れ方向の寸法)は、薬剤の要求効力によって任意に変更することができる。
【0030】
枠部12は、薬剤保持体11の周縁部を囲むように形成されている。従って、枠部12は、薬剤放散器1の左右方向に長い矩形状となり、長手方向の内寸W1は、薬剤保持体11の長手方向の寸法と同じである。また、平面視における枠部12の長手方向に直交する方向の内寸W2は、平面視における薬剤保持体11の長手方向に直交する方向の寸法と同じである。寸法W1は、後述する第1送風機31の吸気口22の径Dの2倍に設定されている。
【0031】
枠部12の内面は、薬剤保持体11の周縁部に対して全周に亘って接着されており、薬剤保持体11と枠部12との間からの空気漏れがないようにしてある。枠部12は、爪嵌合等の周知の着脱構造によって本体20に着脱可能に取り付けられている。
【0032】
枠部12の上面は、全体が開放されており、この開放部分は、空気を枠部12内に流入させるための流入口12aとされている。また、枠部12の下面も全体が開放されている。この開放部分は、枠部12内の空気を流出させるための流出口12bである。この実施形態では、枠部12の流入口12aと流出口12bとの形状及び大きさが同じである。また、流入口12aと流出口12bの長手方向の寸法はW1であり、長手方向に直交する方向の寸法はW2である。枠部12の流出口12bの長手方向の寸法は第1送風機31の吸気口22の径Dの2.0倍以下である。また、寸法W2は、第1送風機31の吸気口22の径Dと等しく設定されている。
【0033】
図2に示すように、本体20は、ケーシング21と、第1送風機31と、第2送風機32とを備えている。ケーシング21は、薬剤保持体11の長手方向、即ち左右方向に長い箱形となっている。ケーシング21の上壁部21aには、第1送風機31の吸気口となる第1吸気口22と、第2送風機32の吸気口となる第2吸気口23とが形成されている。第1吸気口22及び第2吸気口23は、共に円形であり、径も同じである。第1吸気口22はケーシング21の左寄りに配置され、第2吸気口23はケーシング21の右寄りに配置されている。
【0034】
第1吸気口22及び第2吸気口23は、空気流れ方向に見たとき、即ち、平面視で枠部12の流出口12bに重複している。また、第1吸気口22及び第2吸気口23は、左右方向に間隔をあけて並ぶように配置されている。図3に示すように、第1吸気口22における第2吸気口23側の縁部と、第2吸気口23における第2吸気口22側の縁部との離間距離Xは、第1吸気口22の径Dの0.25倍よりも長く設定されている。離間距離Xは、第1吸気口22と第2吸気口23との最も接近した部分同士の距離である。離間距離Xの上限は、第1吸気口22の径Dの0.6倍以下に設定されている。
【0035】
また、図2に示すように、ケーシング21の側壁部には、排気口24,24が形成されている。排気口24は、ケーシング21内に吸入された空気をケーシング21外に排出するためのものである。
【0036】
第1送風機31は、第1モーター33と第1ファン34とを備えている。第1モーター33は、ケーシング21内の左寄りに配置されており、ケーシング21内に設けられたモーター固定部材25により固定されている。第1モーター33の出力軸33aは、ケーシング21内で上方へ突出するように設けられている。出力軸33aは、平面視で第1吸気口22の中心と一致している。第1ファン34の中心部は、出力軸33aに固定されている。
【0037】
また、第2送風機32は、第2モーター35と第2ファン36とを備えている。第2モーター35は、ケーシング21内の右寄りに配置されており、上記モーター固定部材25により固定されている。第2モーター35の出力軸35aは、ケーシング21内で上方へ突出するように設けられている。出力軸35aは、平面視で第2吸気口23の中心と一致している。第2ファン36の中心部は、出力軸35aに固定されている。
【0038】
第1モーター33及び第2モーター35には、図示しない電池から電力が供給されるようになっている。また、この薬剤放散器1には、第1モーター33及び第2モーター35を作動状態と非作動状態に切り替えるためのスイッチ(図示せず)も設けられている。
【0039】
次に、上記のように構成された薬剤放散器1を使用する場合について説明する。まず、スイッチの操作によって第1モーター33及び第2モーター35を作動状態にする。第1モーター33によって第1ファン34が回転し、第2モーター35によって第2ファン36が回転する。第1ファン34の回転により、ケーシング21外の空気が第1吸気口22からケーシング21内に吸入され、第2ファン36の回転により、ケーシング21外の空気が第2吸気口23からケーシング21内に吸入される。このとき、第1吸気口22及び第2吸気口23が薬剤カートリッジ10の枠部12の流出口12bと重複しているので、流出口12bの近傍に負圧が生じ、これにより、枠部12の上方の空気が枠部12の流入口12aから枠部12内に流入する。枠部12に流入した空気は、薬剤保持体11に接触して薬剤保持体11を通過し、このとき薬剤が空気に混合する。そして、薬剤が混合した空気は、枠部12の流出口12bを通って枠部12から流出し、ケーシング21の第1吸気口22及び第2吸気口23からケーシング21内に吸い込まれ、排気口24,24から外部に排出され、これにより薬剤が放散される。
【0040】
薬剤蒸散量は、基本的には薬剤保持体11を通過する単位時間当たりの空気量に依存する。本実施形態では、第1吸気口22の縁部と第2吸気口23の縁部との離間距離Xを、薬剤蒸散量が高まるように設定している。
【0041】
これについて図4図5に示すグラフに基づいて説明する。図4のグラフの縦軸は薬剤蒸散量比である。まず、薬剤保持体11を図2に示す送風式薬剤放散器1にセットし、広さ8畳(33m)の居室試験室の中央床面に前述の放散器1を設置し、薬剤の蒸散開始から10分後に、アカイエカ雌成虫50匹を放ち、その後の経時的なノックダウン数を観察し、ブリス(Bliss)のプロビット(Probit)法によりKT50値を求め、そのKT50値をKT50値/蒸散量変換表に基き、薬剤蒸散量を求める。また、薬剤カートリッジ10の薬剤保持体11を長手方向中央部において2つに分割し、それぞれの薬剤保持体に、実施形態と同じ第1送風機31と第2送風機32を用いて空気を通過させた場合の薬剤蒸散量(薬剤基準蒸散量)を求める。KT50値をKT50値/蒸散量変換表に基いて求めた薬剤蒸散量と、薬剤基準蒸散量との比が上記薬剤蒸散量比である。薬剤蒸散量比が「100」とは、KT50値をKT50値/蒸散量変換表に基いて求めた薬剤蒸散量と、薬剤基準蒸散量とが同一であることを示す。
【0042】
一方、横軸は第1吸気口22の径Dと、第1吸気口22の縁部と第2吸気口23の縁部との離間距離Xとの比であり、Dを1としたときのXの値を示している。この実施形態では、薬剤としてピレスロイド系殺虫剤(メトフルトリン)を用い、この薬剤を薬剤保持体11としての不織布に含浸させている。薬剤保持体11はプリーツ成形している。
【0043】
薬剤はメトフルトリンに限らず、ピレスロイド系殺虫剤としてアレスリン、dl・d−T80−アレスリン、dl・d−T−アレスリン、d・d−T−アレスリン、d・d−T80−プラレトリン、レスメトリン、dl・d−T80−レスメトリン、エンペントリン、テラレスリン、トランスフルトリン、フタルスリン、dl・d−T80−フタルスリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、イミプロスリン、フェンバレレート、シペルメトリン、シフェノトリン、エトフェンプロックス、テフルスリン、フェンプロパトリン、フェンフルスリン、1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニルシス /トランス−2,2,3,3−テトラメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(2−メチル−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(2−クロロ−2−フルオロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル3−(1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート、1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル3−(2−クロロ−2−フルオロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート等使用できる。
【0044】
また、第1吸気口22及び第2吸気口23の径Dは50mmである。従って、薬剤カートリッジ10の枠部12の流出口12bの長手方向の寸法W1はDの2倍であるので、100mmとなり、流出口12bの寸法W2はDと同じであるので、50mmとなる。
【0045】
また、図5については縦軸及び横軸は図4と同じであり、第1吸気口22及び第2吸気口23の径Dを47mmに小径化した場合の結果を示すものである。
【0046】
図4及び図5から明らかなように、第1吸気口22の径Dと、第1吸気口22の縁部と第2吸気口23の縁部との離間距離Xとの比が0.25以下の場合には、薬剤蒸散量比が88.2まで低下する一方、0.25よりも長い場合には薬剤蒸散量比が100となり、0.25を境界にして顕著な効果の差が見られる。従って、第1送風機31の吸気口22の縁部と第2送風機32の吸気口23の縁部との離間距離Xを、第1送風機31の吸気口22の径Dの0.25倍よりも長く設定することで、0.25倍以下とした場合に比べて薬剤蒸散量比を大幅に高めることができる。これは、離間距離XをDの0.25倍以下にすると、第1送風機31と第2送風機32とが接近しすぎて、第1送風機31による空気の流れと第2送風機32による空気の流れとが干渉してしまい、その結果、薬剤保持体11を通過する単位時間当たりの空気量が低下するためである。
【0047】
また、第1吸気口22の径Dと、第1吸気口22の縁部と第2吸気口23の縁部との離間距離Xとの比が0.6よりも大きい場合には、薬剤蒸散量比が低下する一方、0.6以下の場合には薬剤蒸散量比が100となり、両者の間に顕著な効果の差が見られる。従って、第1送風機31の吸気口22の縁部と第2送風機32の吸気口23の縁部との離間距離Xを、第1送風機31の吸気口22の径Dの0.6倍以下に設定することで、0.6倍よりも長くした場合に比べて薬剤蒸散量比を大幅に高めることができる。
【0048】
図4及び図5に示す結果より、第1送風機31の吸気口22の縁部と第2送風機32の吸気口23の縁部との離間距離Xを、第1送風機31の吸気口22の径Dの0.25倍よりも長く、かつ、0.6倍以下に設定するのが好ましい。この範囲に設定することで、2台の薬剤放散器を組み合わせた効力と同等の効力を得ながら、薬剤保持体11は1つで済むので、交換作業が簡単になる。また、1台の薬剤放散器1で2台分の効力を得ることができるので、設置スペースが狭い場合にも対応することが可能である。
【0049】
また、枠部12の流出口12bの長手方向の寸法W1が、第1送風機31の吸気口22の径Dと第2送風機32の吸気口23の径Dとを合わせた長さ以下であるので、枠部12の大型化を回避しながら、流出口12bの開口面積を十分に確保することが可能になる。
【0050】
以上説明したように、この実施形態1に係る薬剤放散器1によれば、第1送風機31及び第2送風機32を設け、薬剤保持体11の枠部12の流出口12bに重複するように第1送風機31の吸気口22及び第2送風機32の吸気口23を配置し、これら吸気口22,23の間隔をあけたので、第1送風機31による空気の流れと第2送風機32による空気の流れとの干渉を低減することができ、コンパクトで高い薬剤放散能力を得ることができる。
【0051】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る薬剤放散器1を示すものである。この実施形態2の薬剤放散器1は、実施形態1のものに対し、第1送風機31と第2送風機32とが分割可能な構造となっている点で異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0052】
この実施形態2では、ケーシング21が第1ケーシング21Aと第2ケーシング21Bとで構成されている。第1ケーシング21Aは第2ケーシング21Bに対し着脱可能に取り付けられている。第1ケーシング21Aには、第1モーター33及び第1ファン34が収容されており、第1吸気口22が形成されている。第1モーター33はモーター固定部材26によって第1ケーシング21Aに固定されている。
【0053】
第2ケーシング21Bには、第2モーター35及び第2ファン36が収容されており、第2吸気口23が形成されている。第2モーター35はモーター固定部材27によって第1ケーシング21Aに固定されている。
【0054】
この実施形態2では、第1送風機31と第2送風機32とを分離させて使用することもできる。
【0055】
また、実施形態1の場合も、実施形態1と同様な作用効果を奏することができる。
【0056】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上説明したように、本発明に係る薬剤放散器は、例えば虫忌避剤、殺虫剤、芳香剤、消臭剤、除菌剤等の揮発性を有する薬剤を空気中に放散するのに用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 薬剤放散器
10 薬剤カートリッジ
11 薬剤保持体
12 枠部(収容部)
12a 流入口
12b 流出口
22 第1吸気口
23 第2吸気口
31 第1送風機
32 第2送風機
図1
図2
図3
図4
図5
図6