(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041741
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】スライドレール
(51)【国際特許分類】
F16C 29/04 20060101AFI20161206BHJP
A47B 88/00 20060101ALI20161206BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20161206BHJP
F16C 29/12 20060101ALI20161206BHJP
F16C 33/38 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
F16C29/04
A47B88/00 Q
B60N3/00 Z
F16C29/12
F16C33/38
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-79061(P2013-79061)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2014-202287(P2014-202287A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正彦
【審査官】
渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平2−109011(JP,U)
【文献】
実開昭64−12928(JP,U)
【文献】
特開平5−231433(JP,A)
【文献】
実開平2−6547(JP,U)
【文献】
特開2003−299536(JP,A)
【文献】
特開2010−5063(JP,A)
【文献】
米国特許第3904254(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00− 31/06
A47B 88/00
B60N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のアウターメンバーと、アウターメンバーに対し摺動自在に配設されたインナーメンバーと、アウターメンバーとインナーメンバーの両折曲縁間でボールを回転自在に保持するボールリテーナーからなるスライドレールにおいて、ボールリテーナーは、両メンバー間に装着された状態で、一部が常にアウターメンバーに弾性的に接触する弾性接触部を有し、ボールリテーナーとアウターメンバー間に常にテンションを付加すると共に、合成樹脂材にてボールリテーナーと一体に形成されている事を特徴とするスライドレール。
【請求項2】
弾性接触部はボールリテーナーの摺動方向の両端部に設けられている事を特徴とする請求項1に記載のスライドレール。
【請求項3】
弾性接触部は、ボールリテーナーの前後左右ボール保持突片の前後端部下面に位置し、前後左右ボール保持突片は、ボールリテーナーの基板から切り離され、少なくとも前後方向両端部が、左右中央ボール保持突片より下方に突出している事を特徴とする請求項2に記載のスライドレール。
【請求項4】
前後左右ボール保持突片に形成された前後左右ボール保持孔は、左右中央ボール保持突片に形成された左右中央ボール保持孔と、摺動方向に同一幅で、両メンバーの基板方向で大きく形成されていることを特徴とする請求項3に記載のスライドレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車のコンソールボックスの本体と蓋間に配設されるスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、前記スライドレールの代表的な構造のものとして先行技術文献1(特許文献1)に示すように、コンソールボックスの本体に固定される金属製のアウターメンバーと、アウターメンバーに対し摺動自在に配設された、蓋体と連結される金属製のインナーメンバーと、インナーメンバーとアウターメンバーの両折曲縁間でボールを回転自在に保持するボールリテーナーからなるものがある。
そして、ボールリテーナーは、両メンバーの半分程度の長さの帯状金属板を、下向きコ字型に折り曲げた基板と、基板の左右端を上方に折り曲げ、長手方向に複数個のボールを回転自在に保持する左右折曲片より構成されていた。
【0003】
すなわち、両メンバーの摺動を円滑にするため、ボールリテーナーに回転自在に保持されるボールは、両メンバーの両折曲縁間に形成される間隙よりやや小さ目の径に形成されている。
したがって、両メンバーの両折曲縁とボール間、ボールとボールリテーナーの左右折曲片に形成されたボール保持孔間には微妙なクリアランスを有している。
このため、エンジンの稼働中、あるいは走行中の振動によって、各部が絶え間なく接触することによって細かな衝突音が発生し、好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−7085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単な構造でコンパクトに構成でき、部品点数が増加させることもなく、安価に製作でき、衝突音の発生を防止できるスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、金属製のアウターメンバーと、アウターメンバーに対し摺動自在に配設されたインナーメンバーと、アウターメンバーとインナーメンバーの両折曲縁間でボールを回転自在に保持するボールリテーナーからなるスライドレールにおいて、ボールリテーナーは、両メンバー間に装着された状態で、一部が常にアウターメンバーに弾性的に接触する弾性接触部を有し、ボールリテーナーとアウターメンバー間に常にテンションを付加すると共に、合成樹脂材にてボールリテーナーと一体に形成されているものである。
【0007】
次に、上記課題を解決する為、本発明が第2の手段として構成したところは、前記第1の手段として構成したところに加え、弾性接触部はボールリテーナーの摺動方向の両端部に設けられているものである。
【0008】
次に、上記課題を解決する為、本発明が第3の手段として構成したところは、前記第2の手段として構成したところに加え、弾性接触部は、ボールリテーナーの前後左右ボール保持突片の前後端部下面に位置し、前後左右ボール保持突片は、ボールリテーナーの基板から切り離され、少なくとも前後方向両端部が、中央左右ボール保持突片より下方に突出しているものである。
【0009】
次に、上記課題を解決する為、本発明が第4の手段として構成したところは、前記第3の手段として構成したところに加え、前後左右ボール保持突片に形成された前後左右ボール保持孔は、中央左右ボール保持突片に形成された中央左右ボール保持孔より、摺動方向に同一幅で、両メンバーの基板方向でやや大きく形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の手段として構成したところによると、ボールリテーナーは合成樹脂材にて形成され、両メンバー間に装着された状態で、一部が常にアウターメンバーに弾性的に接触する弾性接触部が設けられているので、装着状態で弾性変位して、ボールリテーナーとアウターメンバー間に常にテンションを付加させることができる。これによって、ボールとボールリテーナー間、ボールと両メンバー間、ボールリテーナーと両メンバー間のクリアランスは常に一方側に偏ることとなり、エンジンの稼働等によって振動が発生しても、両メンバー、ボール、ボールリテーナーは一体化した状態で振動するので、各部間に衝突音が発生することはない。
さらに、弾性接触部はボールリテーナーと共に合成樹脂材にて一体に形成されているので、部材点数が増加することなく、製作が容易で、簡単な構成であるから、安価に製作できる。
【0011】
次に、本発明の第2の手段として構成したところによると、前記効果に加え、弾性接触部はボールリテーナーの前後端部に設けられているので、摺動方向に係わりなく、ボールリテーナーとアウターメンバー間に常に安定良くテンションを付加することができる。
【0012】
次に、本発明の第3の手段として構成したところによると、前記効果に加え、弾性接触部は、ボールリテーナーの前後左右ボール保持突片の前後端部下面に位置するので、アウターメンバーとコンソールボックス本体との連結部分(連結ネジ等の頭部)が、ボールリテーナーの摺動に影響を与えることがない。
又、前後左右ボール保持突片は、ボールリテーナーの基板から切り離され、少なくとも前後方向両端部が、中央左右ボール保持突片より下方に突出しているので、ボールリテーナーの装着状態で、ボールリテーナーとアウターメンバー間に、確実かつ安定的にテンションを付加することができ、弾性接触部とアウターメンバーの接触状態を確実に維持することができる。
【0013】
次に、本発明の第4の手段として構成したところによると、前記効果に加え、前後左右ボール保持突片に形成された前後左右ボール保持孔は、中央左右ボール保持突片に形成された中央左右ボール保持孔より、摺動方向に同一で、両メンバーの基板方向でやや大きく形成されているから、同一径のボールを使用することができ、製作が容易である。
さらに、同一径のボールを使用しても、弾性接触部の弾性接触に影響を与えることがなく、ボールリテーナーとアウターメンバー間に、確実かつ安定的に、テンションを付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のスライドレールの伸長状態の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、金属製のアウターメンバーと、アウターメンバーに対し摺動自在に配設されたインナーメンバーと、インナーメンバーとアウターメンバーの両折曲縁間でボールを回転自在に保持するボールリテーナーからなるスライドレールにおいて、ボールリテーナーは、両メンバー間に装着された状態で弾性変位して、一部が常にアウターメンバーに弾性的に接触し、ボールリテーナーとアウターメンバー間に常にテンションを付加する弾性接触部を有し、弾性接触部はボールリテーナーの摺動方向の両端部に、合成樹脂材にてボールリテーナーと一体に形成され、ボールリテーナーの前後左右ボール保持突片の前後端部下面に位置し、前後左右ボール保持突片は、ボールリテーナーの基板から切り離され、少なくとも前後方向両端部が、中央左右ボール保持突片より下方に突出し、前後左右ボール保持突片に形成された前後左右ボール保持孔は、中央左右ボール保持突片に形成された中央左右ボール保持孔より、摺動方向に同一で、両メンバーの基板方向でやや大きく形成されているものである。
【実施例】
【0016】
以下、実施例を図に基づいて説明する。
符号100は本発明のスライドレールを示し、スライドレール100は、コンソールボックス等本体に連結されるアウターメンバー1と、ボール30・・・を回転自在に保持するボールリテーナー3を介してアウターメンバー1と互いに摺動自在となし、コンソールボックス等の蓋体と連結されるインナーメンバー2より構成されている。
以下、
図1において左側斜め上方向を前端側、右側斜め下方向を後端側、前端側と後端側の両方向を摺動方向として説明する。
【0017】
アウターメンバー1は、金属製の細長状板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げた内面長手方向にボール摺動溝10、10を有する左右折曲縁11、11と、本体等と連結されるアウターメンバー基板12より断面上向き略C字形に形成されている。
そして、アウターメンバー基板12の摺動方向両端部には、アウターメンバー基板12の一部をインナーメンバー2方向に突出させた、リテーナー前後ストッパー13、13、14、14が形成されている。符号15・・・は、コンソールボックス等の本体にアウターメンバー1を連結するための連結孔を示している。
【0018】
インナーメンバー2は、アウターメンバー1とほぼ同等の長さを有する金属製の細長状板の短手両端部を外向き円弧状に折り曲げて形成された、外面長手方向にボール摺動溝20、20を有する左右折曲縁21、21と、インナーメンバー基板22より、断面下向き略C字形に形成されている。
そして、インナーメンバー基板22の前後端部側の一部をアウターメンバー1方向に突出させて、インナーメンバー2が前端側、あるいは後端側に最も摺動した状態で、ボールリテーナー3の一部に当接するインナーメンバー前後端部ストッパー23、24が形成されている。
符号25・・・は、コンソールボックス等の蓋体とインナーメンバー2を連結するための連結孔を示している。
【0019】
ボールリテーナー3は、アウターメンバー基板12、インナーメンバー基板22間に挿入可能な厚みで、アウターメンバー1、インナーメンバー2の摺動方向で略半分程度の長さに形成された断面下向き略コ字形に形成されたリテーナー基板31と、リテーナー基板31の摺動方向中央部分の下端部から連設され、アウターメンバー1とインナーメンバー2の左右両折曲縁11、11、21、21間に突出する、左右中央ボール保持孔320・・・を有する略L字形の左右中央ボール保持突片32、32と、リテーナー基板31の前後端部側に位置し、リテーナー基板31間に切り離し部300・・・を有し、左右中央ボール保持突片32、32の前後端部に、弾性変位用間隙33・・・を介して連設された、前後左右ボール保持孔340・・・を有する前後左右ボール保持突片34・・・から形成されている。
【0020】
そして、リテーナー基板31の摺動方向中央部上面に、摺動方向に所定間隔を有して上方に突出して、前記インナーメンバー前後端部ストッパー23、24が当接するインナーメンバー伸長時ストッパー311、インナーメンバー収縮時ストッパー312が形成されている。
【0021】
さらに、ボールリテーナー3がインナーメンバー2とアウターメンバー1間に装着されていない状態(いわゆる、ボールリテーナー3の単体仕様、
図2〜
図7に示す。)で、左右前後ボール保持突片34・・・は、リテーナー基板31の下端部(左右中央ボール保持突片32、32の下端部)から、摺動方向で前後端側が所定寸法下方に突出するよう、下方に傾斜した状態に形成されている。
すなわち、ボールリテーナー3がインナーメンバー2とアウターメンバー1間に装着された状態で、前後左右ボール保持突片34・・・の前後端部下面が弾性接触部35・・・として、アウターメンバー1のアウターメンバー基板12の左右端部上面に接触し、該接触部を基点として前後左右ボール保持突片34・・・が上方に弾性変位することで、ボール30・・・を介して、ボールリテーナー3とアウターメンバー1間に常にテンションを付加するよう形成されている。
【0022】
そして、左右中央ボール保持突片32、32に形成された左右中央ボール保持孔320・・・は、摺動方向に所定間隔を有して複数個形成され、アウターメンバー1のボール摺動溝10側をボール30の径より大きく、インナーメンバー2のボール摺動溝20側をボール30の径よりやや小さくした円形に形成されている。
一方、前後左右ボール保持突片34・・・に形成された前後左右ボール保持孔340・・・は摺動方向には左右中央ボール保持孔32と摺動方向に同幅で、高さ方向に前後左右ボール保持突片34・・・の弾性変位分大きく形成されている。
【0023】
本発明は以上の如く構成され、インナーメンバー2が移動側レールとして前端側に摺動すると、ボールリテーナー3は、インナーメンバー2の摺動距離の半分の距離を移動し、やがて、ボールリテーナー3の前端部(リテーナー基板31の前端部)が、アウターメンバー1のリテーナー前ストッパー13、13に当接して、ボールリレーナー3は停止し、同時に、インナーメンバー2のインナーメンバー後端部ストッパー24が、ボールリテーナー3のインナーメンバー伸長時ストッパー311に当接してインナーメンバー2は停止し、スライドレール100は最も伸長した状態となる。
【0024】
この状態から、インナーメンバー2が後端側に摺動すると、ボールリテーナー3はインナーメンバー2の摺動距離の半分の距離を移動し、やがて、ボールリテーナー3の後端部(リテーナー基板31の後端部)が、アウターメンバー1のリテーナー後ストッパー14、14に当接して、ボールリテーナー3は停止し、同時に、インナーメンバー2のインナーメンバー前端部ストッパー23が、ボールリテーナー3のインナーメンバー収縮時ストッパー312に当接してインナーメンバー2は停止し、スライドレール100は最も縮小した状態となる。
【0025】
そして、インナーメンバー2の摺動時、ボールリテーナー3の弾性接触部35・・・は、前後左右ボール保持突片34・・・の弾性変位によって、常にアウターメンバー1に弾性的に接触しながら摺動しているので、ボールリテーナー3とアウターメンバー1間には常にテンションが付加される。これによって、ボール30・・・とボールリテーナー3間、ボール30・・・と両メンバー1,2間、ボールリテーナー3と両メンバー1、2間のクリアランスは常に一方側に偏ることとなり、エンジンの稼働等によって振動が発生しても、両メンバー1、2、ボール30・・・、ボールリテーナー3は一体化した状態で振動するので、各部間に衝突音が発生することはない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上詳述したように、本発明は、車のコンソールボックスの本体と蓋体間、複写機本体と給紙トレー間に取り付けて使用することができ、広範囲で利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 アウターメンバー
10 ボール摺動溝
11、11 左右折曲縁
12 アウターメンバー基板
100 スライドレール
2 インナーメンバー
20 ボール摺動溝
21、21 左右折曲縁
22 インナーメンバー基板
3 ボールリテーナー
30 ボール
31 リテーナー基板
32、32 左右中央ボール保持突片
320 左右中央ボール保持孔
34 前後左右ボール保持突片
340 前後左右ボール保持孔
35 弾性接触部