(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、予め決められた所定の位置の被撮影体を撮影してその撮影画像を処理する画像処理装置が知られ、該画像処理装置は、被撮影体を撮影する機器として撮像素子がCCD又はCMOSであるカメラを組み付けるのが一般的である。上記カメラの組付位置は、被撮影体の撮影位置に対して決まっているので、焦点調整機構が手動式の安価なカメラを用意して事前に撮影距離に対応する位置に焦点を手動で合わせておいたものを組み付けることで装置の製造コストを抑えることができる。
【0003】
ところで、焦点調整機構が手動式のカメラでは、焦点位置が被撮影体に対して奥側及び手前側のどちら側にずれているのか分からないので、合焦範囲となる位置に基準物を置いて当該基準物を実際に撮影し、撮影画像を見ながら焦点調整機構で焦点を合わす必要があり、特に、上述の如き画像処理装置を量産する場合において、製造する画像処理装置毎にカメラの合焦作業を行う必要があり煩雑であった。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1の如きカメラ焦点調整装置を利用して事前に各カメラの焦点を合わすことが考えられる。
【0005】
特許文献1では、撮影画像の一列に並ぶ各画素x
n(n=1、2、・・・)の輝度値f
n(x
n)から隣り合う画素間の微分値f
n(x
n)’を演算した後、各微分値f
n(x
n)’の絶対値における所定の階級毎の度数分布(ヒストグラム)を演算するようになっている。そして、演算した各階級の度数に各階級の値を掛け合わせて合計した値を合焦評価値Pとし、演算した合焦評価値Pがカメラの焦点が合焦範囲であるときの合焦評価値P’に近づくようカメラの焦点調整機構を調整するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、度数分布を演算する際に、撮影画像の各画素から得られるデータをそのまま使うのではなく、隣り合う画素同士の間で微分演算を順次行った後、度数分布の演算を行っている。したがって、装置の演算処理回数が多くなって演算処理得部分に大きな負荷がかかって演算速度が遅くなり、ひいては、合焦作業に多くの時間がかかってしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装置の演算処理が速く、各カメラの合焦作業にかかる時間が短いカメラ焦点調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、撮影画像の隣り合う画素同士の間で微分演算しないようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、撮像素子がCCD又はCMOSで、且つ、レンズの焦点調整機構が手動式のカメラの焦点を調整するためのカメラ焦点調整装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、上記カメラを着脱可能に固定する固定具と、該固定具に固定された上記カメラに対向配置され、白黒チャート面を有する被撮影体と、上記カメラに着脱可能に接続され、当該カメラに作動信号を出力して上記被撮影体を撮影する制御手段とを備え、該制御手段は、R値、B値及びG値のいずれか1つを色強度として選択し、上記カメラで撮影した撮影画像における各画素の色強度が、X
1<X
2(X
1,X
2は所定の整数)としたときに、0〜X
1の範囲のものを黒色側領域に属すると、X
2〜255の範囲のものを白色側領域に属するとしてそれぞれ仕分ける仕分部と、撮影画像における各画素の色強度の度数分布から上記仕分部で白色側領域に仕分けされた各画素の白色側平均色強度Yと黒色側領域に仕分けされた各画素の黒色側平均色強度Zとをそれぞれ演算するとともに、白色側平均色強度Y及び黒色側平均色強度Zの比率H=Z/Yを演算する比率演算部と、上記比率Hに対応する上記カメラの焦点の位置が記憶された記憶部と、上記比率Hに対応する上記記憶部で記憶されたカメラの焦点の位置に基づいて上記カメラの焦点が合焦範囲となるためのレンズ移動量Dを演算するレンズ移動量演算部とを備えていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記白黒チャート面は、上記カメラの合焦範囲の最大位置と最小位置とにそれぞれ設けられ、上記比率演算部は、上記白黒チャート面毎の比率Hを演算し、上記レンズ移動量演算部は、上記比率演算部で演算した各比率Hを比較して上記焦点調整機構のレンズの移動方向を演算するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、上記焦点調整機構に着脱可能に取り付けられ、該焦点調整機構を駆動させてレンズを移動させる駆動手段を備え、上記制御手段は、上記駆動手段に接続され、上記レンズ移動量演算部で演算したレンズ移動量Dとレンズの移動方向とに基づき上記駆動手段に作動信号を出力して上記カメラの焦点を上記合焦範囲まで移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、特許文献1の如き隣り合う画素同士で順次微分演算したものを度数分布にして処理するのではなく、撮影画像の各画素が持つデータをそのまま度数分布にして処理するので、特許文献1の如き装置に比べて合焦作業にかかる時間を短縮することができる。
【0015】
第2の発明では、カメラの焦点を合わせるためのレンズの移動方向が分かるので、カメラの焦点を合わせる際に、レンズの移動方向を間違えて焦点調整機構の操作を複数回行うといったことを回避することができ、合焦作業にかかる時間をさらに短縮することができる。
【0016】
第3の発明では、自動でカメラの焦点を合わすことができるので、合焦作業が簡単になり、作業者の負担を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るカメラ焦点調整装置1を示す。該カメラ焦点調整装置1は、撮像素子10bがCMOSで、且つ、レンズ10cの位置を移動させて焦点を調整する焦点調整機構10aが手動式であるカメラ10を図示しない画像処理装置に組み付ける前に上記カメラ10の焦点を事前に調整しておくためのものである。
【0020】
上記カメラ焦点調整装置1は、上記カメラ10を着脱可能に固定する固定具2と、該固定具2に固定された上記カメラ10に対向配置された被撮影体3と、上記焦点調整機構10aに着脱可能に取り付けられ、該焦点調整機構10aを駆動させる駆動装置(駆動手段)4と、上記カメラ10及び上記駆動装置4に接続された制御部(制御手段)5と、該制御部5に接続されたモニタ6とを備えている。
【0021】
上記被撮影体3は、碁盤目状の白黒チャート面3a、3b(
図2〜4参照)を備え、白黒チャート面3aは、上記固定具2に固定されたカメラ10の合焦範囲の最小位置に配置される一方、白黒チャート面3bは、上記固定具2に固定されたカメラ10の合焦範囲の最大位置に配置されている。尚、
図2(a)〜
図4(a)の上半部分に写っている白黒チャート面は、合焦範囲の異なるカメラの合焦作業に使用するためのものであり、本実施形態では使用しない。
【0022】
上記制御部5は、上記カメラ10に作動信号を出力して上記被撮影体3を撮影するようになっていて、白黒チャート面3a、3b毎に演算処理を行う仕分部5a及び比率演算部5bを備えている。
【0023】
上記仕分部5aは、白黒チャート面3a、3bにおいて、R値、B値及びG値のうちR値を色強度として選択し、上記カメラ10で撮影した撮影画像の所定の領域における各画素の色強度が、0〜65の範囲のものを黒色側領域に属すると、110〜255の範囲のものを白色側領域に属するとしてそれぞれ仕分けるようになっている。
【0024】
尚、本実施形態では、各画素の色強度が、0〜65の範囲のものを黒色側領域に属するとし、110〜255の範囲のものを白色側領域に属するとしているが、これらの範囲は任意に設定することができ、X
1<X
2(X
1,X
2は所定の整数)としたときに、0〜X
1の範囲のものを黒色側領域に属すると、X
2〜255の範囲のものを白色側領域に属するとして仕分けることができる。
【0025】
上記比率演算部5bは、上記白黒チャート面3aにおいて、
図2(b)乃至
図4(b)に示すように、撮影画像の所定の領域における各画素の色強度の度数分布から上記仕分部5aで白色側領域に仕分けされた画素の白色側平均色強度Y
1と黒色側領域に仕分けされた画素の黒色側平均色強度Z
1とをそれぞれ演算するようになっている。
【0026】
また、上記比率演算部5bは、上記白黒チャート面3aと同様に上記白黒チャート面3bにおいて、
図2(c)乃至
図4(c)に示すように、撮影画像の所定の領域における各画素の色強度の度数分布から上記仕分部5aで白色側領域に仕分けされた画素の白色側平均色強度Y
2と黒色側領域に仕分けされた画素の黒色側平均色強度Z
2とをそれぞれ演算するようになっている。
【0027】
そして、上記比率演算部5bは、白黒チャート面3aの白色側平均色強度Y
1及び黒色側平均色強度Z
1から比率H
1=Z
1/Y
1を演算し、白黒チャート面3bの白色側平均色強度Y
2及び黒色側平均色強度Z
2から比率H
2=Z
2/Y
2を演算するようになっている。
【0028】
また、上記制御部5は、上記各比率H
1、H
2に対応するカメラ10の焦点の位置を記憶する記憶部5cと、上記比率H
1、H
2に対応する上記記憶部5cで記憶されたカメラ10の焦点の位置に基づいて上記カメラ10の焦点が合焦範囲となるためのレンズ移動量Dを演算するレンズ移動量演算部5dとを備えている。
【0029】
該レンズ移動量演算部5dは、上記比率演算部5bで演算した各比率H
1、H
2を比較して上記焦点調整機構10aのレンズ10cの移動方向を演算するよう構成されている。
【0030】
そして、上記制御部5は、上記レンズ移動量演算部5dで演算したレンズ移動量Dとレンズ10cの移動方向とに基づき上記駆動装置4に作動信号を出力して上記カメラ10の焦点を上記合焦範囲まで移動させるようになっている。
【0031】
また、上記モニタ6は、上記カメラ10で撮影した画像、
図2乃至
図4に記載の度数分布表、及び上記比率演算部5bや上記レンズ移動量演算部5dでの演算結果を表示するようになっている。
【0032】
次に、上記カメラ焦点調整装置1を用いたカメラ10の合焦作業について説明する。
【0033】
まず、作業者は、焦点を調整するカメラ10を固定具2に固定するとともに、駆動装置4及び制御部5を上記カメラ10に接続する。
【0034】
次いで、作業者は、図示しない焦点調整開始ボタンを押す。すると、制御部5は、カメラ10に白黒チャート面3a、3bを撮影するよう作動信号を出力し、その信号に基づいて上記カメラ10は、上記白黒チャート面3a、3bを撮影する。
【0035】
その後、上記仕分部5aは、撮影された画像の白黒チャート面3a、3b毎における予め設定しておいた所定の領域において、R値、B値及びG値のうちR値を色強度として選択し、上記所定の領域の各画素の色強度が、0〜65の範囲のものを黒色側領域に属すると、110〜255の範囲のものを白色側領域に属するとしてそれぞれ仕分ける。
【0036】
しかる後、
図2(b)乃至
図4(b)に示すように、上記比率演算部5bは、白黒チャート面3aにおいて、撮影画像の所定の領域における各画素の色強度の度数分布から上記仕分部5aで白色側領域に仕分けされた画素の白色側平均色強度Y
1と黒色側領域に仕分けされた画素の黒色側平均色強度Z
1とをそれぞれ演算する。
【0037】
また、上記比率演算部5bは、白黒チャート面3bにおいて、
図2(c)乃至
図4(c)に示すように、撮影画像の所定の領域における各画素の色強度の度数分布から上記仕分部5aで白色側領域に仕分けされた画素の白色側平均色強度Y
2と黒色側領域に仕分けされた画素の黒色側平均色強度Z
2とをそれぞれ演算する。
【0038】
そして、上記比率演算部5bは、白黒チャート面3aの白色側平均色強度Y
1及び黒色側平均色強度Z
1から比率H
1=Z
1/Y
1を演算し、白黒チャート面3bの白色側平均色強度Y
2及び黒色側平均色強度Z
2から比率H
2=Z
2/Y
2を演算する。
【0039】
例えば、
図2(a)は、カメラ10の焦点が白黒チャート面3a、3bの両方に合っている状態で撮影された画像であり、
図2(b)、(c)の度数分布から比率H
1、H
2を演算すると、H
1=0.26、H
2=0.27となる。また、
図3(a)は、カメラ10の焦点が白黒チャート面3aにのみ合っている状態で撮影された画像であり、
図3(b)、(c)の度数分布から比率H
1、H
2を演算すると、H
1=0.26、H
2=0.49となる。さらに、
図4(a)は、カメラ10の焦点が白黒チャート面3bにのみ合っている状態で撮影された画像であり、
図4(b)、(c)の度数分布から比率H
1、H
2を演算すると、H
1=0.47、H
2=0.27となる。このように、比率Hが低いほどカメラ10の焦点が合っていることがわかる。
【0040】
しかる後、上記レンズ移動量演算部5dは、上記比率H
1、H
2に対応する上記記憶部5cに記憶されたカメラ10の焦点の位置に基づいて上記カメラ10の焦点が上記合焦範囲となるためのレンズ移動量Dを演算する。
【0041】
例えば、
図3(a)の撮影画像では、H
2=0.49であり、記憶部5cには、H
2=0.49に対応するカメラ10の焦点の位置Xが記憶されているので、レンズ移動量演算部5dは、カメラ10の焦点が合う位置X
0と位置Xとの間の距離をレンズ移動量Dとして演算する。
【0042】
また、上記レンズ移動量演算部5dは、上記各比率H
1、H
2を比較して上記焦点調整機構10aのレンズ10cの移動方向を演算する。
【0043】
例えば、
図3(a)の撮影画像では、H
1<H
2なので、カメラ10の焦点を合わすためにレンズ10cを被撮影体3から引き離す方向に移動させる必要があることが分かる。
【0044】
そして、上記制御部5は、上記レンズ移動量演算部5dで演算したレンズ移動量Dとレンズ10cの移動方向とに基づき上記駆動装置4に作動信号を出力して上記カメラ10の焦点を合焦範囲まで移動させる。
【0045】
以上より、本発明の実施形態によると、特許文献1の如き隣り合う画素同士で順次微分演算したものを度数分布にして処理するのではなく、撮影画像の各画素が持つデータをそのまま演算せずに度数分布にして処理するので、特許文献1の如き装置に比べて合焦作業にかかる時間を短縮することができる。
【0046】
また、白黒チャート面3a、3b毎に演算した比率H
1、H
2からカメラ10の焦点を合わせるためのレンズ10cの移動方向が分かるので、カメラ10の焦点を合わせる際に、レンズ10cの移動方向を間違えて焦点調整機構10aの操作を複数回行うといったことを回避することができ、合焦作業にかかる時間をさらに短縮することができる。
【0047】
さらに、駆動装置4により自動でカメラ10の焦点を合わすことができるので、合焦作業が簡単になり、作業者の負担を減らすことができる。
【0048】
尚、本発明の実施形態では、撮像素子10bがCMOSであるカメラ10の焦点を上記カメラ焦点調整装置1で調整しているが、撮像素子10bがCCDであるカメラ10の焦点も上記カメラ焦点調整装置1で調整することができる。
【0049】
また、本発明の実施形態では、制御部5が、R値、B値及びG値のうちR値を色強度として選択してその後の演算を行っているが、R値、B値及びG値のうちB値やG値を色強度として選択してその後の演算を行うようにしてもよい。
【0050】
また、本発明の実施形態では、駆動装置4で焦点調整機構10aを駆動させてカメラ10の焦点を合焦範囲まで移動させているが、モニタ6に表示されるレンズ移動量Dとレンズ10cの移動方向に基づき、作業者が手作業で焦点調整機構10aを調整するようにしてもよい。
【0051】
また、本発明の実施形態では、カメラ焦点調整装置1で図示しない画像処理装置に組み込むカメラ10の焦点を調整したが、撮像素子がCCD又はCMOSであるカメラであればその他の装置に組み込む場合であっても上記カメラ焦点調整装置1で事前にカメラの焦点を調整しておくことができる。
【0052】
また、上記制御部5は、上述の画像処理を行う前に上記カメラ10に作動信号を出力して上記被撮影体3の画像を1枚撮影し、R値、B値及びG値のいずれか1つを色強度として選択するとともに、上記撮影画像の全画素の色強度の度数分布から平均色強度を演算し、演算結果と色強度70(色強度の平均値)とを比較して平均色強度が70に近づくようカメラ10のシャッター速度を調整する構成にしてもよい。そうすると、カメラ10による撮影画像が鮮明となり、上述の画像処理を確実に行うことができる。