(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記排気還流弁に全閉を指令するときの全閉指令条件を、前記検出される出力要求量の単位時間当たりの変化量に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記検出される出力要求量の単位時間当たりの負の変化量が所定値以下となるとき、又は、前記検出される出力要求量が零となるとき、前記減速運転の要求が継続するものと判断して最大の閉弁速度により前記排気還流弁を閉弁させることを特徴とする請求項1又は8に記載のエンジンの排気還流装置。
前記制御手段は、前記排気還流弁に全閉を指令するとき、前記排気還流弁の全閉開始を遅延時間だけ遅延させると共に、前記遅延時間を、前記検出される出力要求量の単位時間当たりの負の変化量に応じて設定することを特徴とする請求項1乃至11の何れかに記載のエンジンの排気還流装置。
【発明を実施するための形態】
【0059】
<第1実施形態>
以下、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0060】
図1に、この実施形態におけるエンジンの排気還流装置(EGR装置)を含むエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
【0061】
過給機7は、吸気通路3に配置されたコンプレッサ8と、排気通路5に配置されたタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
【0062】
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
【0063】
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、インタークーラ13より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3には、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。本発明の吸気量調節弁に相当する電子スロットル装置14は、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのステップモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するための本発明の吸気量調節弁開度検出手段に相当するスロットルセンサ23とを備える。電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル26の操作に応じてスロットル弁21がステップモータ22により開閉駆動されることにより、スロットル弁21の開度が調節されるように構成される。電子スロットル装置14の構成として、例えば、特開2011−252482号公報の
図1及び
図2に記載される「スロットル装置」の基本構成を採用することができる。また、タービン9より下流の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
【0064】
エンジン1には、燃焼室16に燃料を噴射供給するためのインジェクタ25が設けられる。インジェクタ25には、燃料タンク(図示略)から燃料が供給されるようになっている。また、エンジン1には、各気筒に対応して点火プラグ29が設けられる。各点火プラグ29は、イグナイタ30から出力される高電圧を受けて点火動作する。各点火プラグ29の点火時期は、イグナイタ30による高電圧の出力タイミングにより決定される。
【0065】
この実施形態において、大量EGRを実現するためのEGR装置は、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17におけるEGRガスの流れを調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR通路17は、タービン9の上流側の排気通路5と、サージタンク3aとの間に設けられる。すなわち、排気通路5を流れる排気の一部をEGRガスとしてEGR通路17を通じて吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させるために、EGR通路17の出口17aが、スロットルバルブ14の下流側にてサージタンク3aに接続される。また、EGR通路17の入口17bは、タービン9の上流側における排気通路5に接続される。
【0066】
EGR通路17の入口17bの近傍には、EGRガスを浄化するためのEGR用触媒コンバータ19が設けられる。また、EGR用触媒コンバータ19より下流のEGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。
【0067】
図2に、EGR通路17の一部であってEGR弁18が設けられる部分を拡大して断面図により示す。
図1、
図2に示すように、EGR弁18は、ポペット弁により、かつ、電動弁により構成される。すなわち、EGR弁18は、ステップモータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。ステップモータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、ステップモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークL1だけストローク運動可能に設けられる。この実施形態では、大量EGRを実現するために、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。このEGR弁18の構成として、例えば、特開2010−275941号公報の
図1に記載された「EGRバルブ」の基本構成を
採用することができる。
【0068】
この実施形態では、エンジン1の運転状態に応じて燃料噴射制御、点火時期制御、吸気量制御及びEGR制御等をそれぞれ実行するために、インジェクタ25、イグナイタ30、電子スロットル装置14のステップモータ22及びEGR弁18のステップモータ31が、それぞれエンジン1の運転状態に応じて電子制御装置(ECU)50により制御されるようになっている。ECU50は、中央処理装置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶したり、CPUの演算結果等を一時的に記憶したりする各種メモリと、これら各部と接続される外部入力回路及び外部出力回路とを備える。ECU50は、本発明の制御手段及び排気還流弁開度検出手段に相当する。外部出力回路には、イグナイタ30、インジェクタ25及び各ステップモータ22,31が接続される。外部入力回路には、スロットルセンサ23をはじめエンジン1の運転状態を検出するための本発明の運転状態検出手段に相当する各種センサ23,27,28,51〜55が接続され、各種エンジン信号が入力されるようになっている。
【0069】
ここで、各種センサとして、スロットルセンサ23の他に、アクセルセンサ27、ブレーキセンサ28、吸気圧センサ51、回転速度センサ52、水温センサ53、エアフローメータ54及び空燃比センサ55が設けられる。アクセルセンサ27は、アクセルペダル26の操作量であるアクセル開度ACCを検出する。アクセルペダル26は、運転者によるエンジン1の出力要求量を操作するための操作手段に相当する。従って、この実施形態では、アクセルセンサ27は、運転者によるエンジン1の出力要求量を検出するための本発明の出力要求量検出手段に相当する。ブレーキセンサ28は、ブレーキペダル36が踏み込み操作されたことを検出する本発明のブレーキ検出手段に相当する。エンジン1は、車両に駆動源として搭載されており、ブレーキペダル36は、その車両を停止させるために運転者により踏み込み操作されるようになっている。吸気圧センサ51は、サージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。すなわち、吸気圧センサ51は、EGR通路17から吸気通路3へEGRガスが流れ込む位置より下流の吸気通路3(サージタンク3a)における吸気圧PMを検出するようになっている。本発明の回転速度検出手段に相当する回転速度センサ52は、エンジン1のクランクシャフト1aの回転角(クランク角)を検出するとともに、そのクランク角の変化をエンジン1の回転速度(エンジン回転速度)NEとして検出する。水温センサ53は、エンジン1の冷却水温THWを検出する。エアフローメータ54は、エアクリーナ6の直下流の吸気通路3を流れる吸気量Gaを検出する。空燃比センサ55は、触媒コンバータ15の直上流の排気通路5に設けられ、排気中の空燃比A/Fを検出する。
【0070】
また、この実施形態では、エンジン1を搭載する車両(図示略)に車速センサ56が設けられ、その車速センサ56がECU50の外部入力回路に接続される。車速センサ56は、車両の車速SPDを検出するためのものである。
【0071】
この実施形態において、ECU50は、エンジン1の全運転領域において、エンジン1の運転状態に応じてEGRを制御するためにEGR弁18を制御するようになっている。また、ECU50は、エンジン減速時に、電子スロットル装置14を閉弁制御すると共に、EGR弁18を全閉に制御するようになっている。
【0072】
ここで、エンジン1の減速時にEGR弁18の閉弁が遅れると、エンジン1に流れ込む吸気におけるEGRガスの割合(EGR率)が増えてしまい、エンジン1に減速失火を招いたり、車両のドライバビリティを悪化させるおそれがある。そこで、この実施形態では、エンジン1の減速時にEGR弁18をより早期に閉弁してEGR率の増加を防ぐために、ECU50が次のようなEGR制御を実行するようになっている。
【0073】
図3に、このEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ100で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCを取り込む。ここで、アクセル操作速度ΔTAACCは、アクセルペダル26が踏み込み操作又は踏み戻し操作されるときの速度(開かれるときの速度又は閉じられるときの速度)を意味し、アクセルセンサ27の検出値に基づいてECU50が別途演算するようになっている。すなわち、ECU50は、このアクセル操作速度ΔTAACCを、アクセルペダル26が操作されるときにアクセルセンサ27により検出される今回の検出値と前回の検出値との差から求めることができる。ここで、エンジン1を加速するためにアクセルペダル26が踏み込み操作されたときのアクセル操作速度ΔTAACCは、正の値として求めることができ、エンジン1を減速するためにアクセルペダル26が踏み戻し操作されたときのアクセル操作速度ΔTAACCは、負の値として求めることができる。
【0074】
次に、ステップ110で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の第1減速判定値C1(負の値)よりも大きいか否かを判断する。この第1減速判定値C1は、エンジン1に減速運転(急減速運転を含む)が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明における減速運転時の第1判定値に相当する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1に減速運転が要求されていないものとして、ECU50は、処理をステップ120へ移行する。
【0075】
ステップ120で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRが「0」であるか否かを判断する。このEGRカットフラグXCEGRは、EGR弁18が全閉に閉弁されてEGRがカットされる場合に「1」に設定され、それ以外の場合に「0」に設定される。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ130へ移行する。
【0076】
ステップ130で、ECU50は、EGRオン条件が成立したか否かを判断する。すなわち、EGR弁18を開弁させるための条件が成立しているか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ140へ移行する。
【0077】
そして、ステップ140で、ECU50は、回転速度センサ52及び吸気圧センサ51の検出値に基づき、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLをそれぞれ取り込む。ここで、ECU50は、エンジン負荷KLを、エンジン回転速度NEと吸気圧PMに基づいて求めることができる。
【0078】
次に、ステップ150で、ECU50は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLに応じたEGR弁18の目標開度Tegrを求める。ECU50は、この目標開度Tegrを、所定の目標開度マップ(図示略)を参照することにより求めることができる。目標開度マップは、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLとの関係から目標開度Tegrの値が予め設定されたデータである。
【0079】
そして、ステップ160で、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御した後、処理をステップ100へ戻す。この場合、ECU50は、EGR弁18が目標開度Tegrへ開弁又は閉弁するようにEGR弁18へ指令することになる。
【0080】
一方、ステップ130の判断結果が否定となる場合、EGRオン条件が成立していないことから、ECU50は、処理をステップ170へ移行する。そして、ECU50は、ステップ170で、EGR弁18を強制閉弁指令する。すなわち、EGR弁18に対して強制的な閉弁を指令する。
【0081】
次に、ECU50は、ステップ180で、EGRカットフラグXCEGRを「1」に設定し、ステップ190で、目標開度Tegrを「0」に、すなわち全閉に設定する。
【0082】
その後、ステップ160で、ECU50は、「0」に設定された目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御した後、処理をステップ100へ戻す。この場合、ECU50は、EGR弁18に対して全閉を指令することになる。
【0083】
一方、ステップ110の判断結果が否定となる場合は、エンジン1に減速運転が要求されているとして、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、上記と同様に、ステップ170、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して強制閉弁指令及び全閉指令をすることになる。
【0084】
一方、ステップ110の判断結果が一旦否定(減速運転の要求)となった場合でも、その直後にアクセル操作速度ΔTAACCが変動してステップ110の判断結果が肯定に切り換わることがある。この場合、直前にEGRカットフラグXCEGRが「1」に設定されていることから、ステップ120の判断結果が否定となり、ECU50は、処理をステップ200へ移行する。
【0085】
そして、ステップ200で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の第2減速判定値C2(負の値:C1<C2)よりも大きいか否かを判断する。この第2減速判定値C2は、第1減速判定値C1と同様、エンジン1に減速運転が要求されていることを判断するための閾値である。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への減速運転の要求が若干弱くなったものの依然として減速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、上記と同様にステップ170、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して強制閉弁指令及び全閉指令を継続することになる。
【0086】
一方、ステップ200の判断結果が肯定となる場合、エンジン1への減速運転の要求がなくなったものとして、ステップ210で、ECU50は、アクセルセンサ27の検出値に基づきアクセル開度ACCを取り込む。
【0087】
次に、ステップ220で、ECU50は、アクセル開度ACCが所定の第1加速判定値D1よりも大きいか否かを判断する。この第1加速判定値D1は、エンジン1への減速運転の要求がなくなり、減速運転以外の運転(緩減速運転又は定常運転又は加速運転を含む。)が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明における減速運転時の第2判定値に相当する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への減速運転の要求が弱くなったものの依然として減速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、上記と同様に、ステップ170、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して強制閉弁指令及び全閉指令を継続することになる。
【0088】
一方、ステップ220の判断結果が肯定となる場合、運転者による減速運転の要求がなくなり、減速運転(急減速運転を含む。)から他の運転(緩減速運転又は定常運転又は加速運転を含む。)へ切り換わったものとして、ステップ230で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRを「0」に設定した後、上記したステップ130〜ステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18への全閉指令を解除して、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに応じた目標開度TegrへEGR弁18を開弁するようにEGR弁18に指令するのである。
【0089】
この実施形態の上記制御によれば、ECU50は、アクセルセンサ27により検出されるアクセル開度ACCの単位時間当たりの変化量であるアクセル操作速度ΔTAACCに基づいてEGR弁18に全閉を指令し、そのアクセル操作速度ΔTAACC及びアクセル開度ACCに基づいてEGR弁18の全閉の指令を解除するようにしている。詳しくは、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCを所定の第1減速判定値C1と比較し、その比較結果によりエンジン1に減速運転が要求されていると判断したときにEGR弁18に全閉を指令し、減速運転の要求が継続していると判断したときに全閉の指令を継続し、減速運転の要求がなくなったと判断し、かつ、アクセル開度ACCが所定の第1加速判定値D1より大きいと判断したときに全閉の指令を解除するようにしている。また、全閉指令を解除した後は、必要に応じて、EGR弁18にその時点で求められる目標開度Tegrへの開弁を指令するようにしている。
【0090】
ここで、
図4に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。
図4において、時刻t1以前のエンジン1の定常運転時では、同図(f)に太実線(Pegr(m))で示すように、エンジン1に供給されるEGRガスの割合(EGR率)が減速時の許容EGR率P1を下回っている。そして、
図4(a)に太破線で示すように、時刻t1〜t4にかけて、アクセル開度ACCがある高開度から全閉へと減少する。このとき、時刻t1で、
図4(a)に太破線で示すように、アクセル開度ACCが減少し始め、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値へ急低下すると、同図(e)に太実線で示すように、EGRカットフラグXCEGR(m)が「1」に切り換わり、同図(c)に実線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が直ちに「0」となり、同図(c)に太実線で示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)が直ちに減少し始める。
【0091】
その後、
図4(a)に太実線で示すように、時刻t1から遅れて時刻t3で、スロットル開度TAが減少し始めると、同図(d)に示すように、それまで一定に推移していたエンジン回転速度NEが低下し始め、エンジン負荷KLも少し遅れて低下し始める。この実施形態では、アクセル操作速度ΔTAACCが、時刻t1で負の値へ転じると同時に、目標開度Tegr(m)が直ちに「0」となり、実開度Regr(m)が直ちに減少し始めるので、
図4(f)に太実線で示すように、時刻t3以降もEGR率が減速時の許容EGR率P1を下回ったまま徐々に減少し、時刻t5に達する前に「0」となる。
【0092】
これに対し、本出願人による従前の実施例では、
図4(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが時刻t1で負の値へ転じてからその値がある程度継続した時刻t2で、
図4(e)に太破線で示すように、EGRカットフラグXCEGR(b)が「1」に切り換わり、同図(c)に破線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(b)が「0」となり、同図(c)に太破線で示すように、実開度Regr(b)が減少し始める。そのため、
図4(f)に太破線で示すよう、EGR率Pegr(b)は、時刻t3以降で一旦上昇し始め、時刻t4に減速時の許容EGR率P1を上回り、やがて時刻t5にかけて「0」へ向けて徐々に減少する。
【0093】
一方、従来例では、
図4(a)に示すように、時刻t3で、スロットル開度TAが減少し始めてから、同図(c)に2点鎖線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(p)の低下が遅れ、同図(c)に太2点鎖線で示すように、実開度Regr(p)が遅れて減少し始める。そのため、
図4(f)に実線で示すように、EGR率Pegr(p)は、時刻t3以降で一旦上昇し始め、時刻t4で減速時の許容EGR率P1を上回り、急上昇し、やがて時刻t5の直後にかけて「0」へ向けて急激に減少する。
【0094】
また、
図5に上記制御に関する各種パラメータの挙動の別例をタイムチャートにより示す。
図5(a)に太破線で示すように、時刻t1〜t9にかけて、アクセル開度ACCがある高開度から全閉へと多少の変動を伴いながら減少する。このとき、
図5(a)に示すように、時刻t1で、アクセル開度ACCが減少し始め、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値へ急低下する。すると、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「1」に切り換わり、同図(c)に太破線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が直ちに「0」となり、同図(c)に太実線で示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)が直ちに減少し始める。
図5(c)において、太破線で示す目標開度Tegr(m)は、減速運転時に求められる値を示し、実線で示す目標開度Tegr(マップ値)は、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに応じ目標開度マップを参照して求められるマップ値を示す。
【0095】
その後、
図5(a)に示すように、時刻t2〜t4の間で、アクセル開度ACCの減少が一旦止まり、再び減少へ転じると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦「0」へ急上昇してから再び負の値へ戻る。すると、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが一旦「0」へ切り換わってから再び「1」へ戻る。また、
図5(c)に太破線で示すように、目標開度Tegr(m)が直ちに一旦所定の開弁の値となってから再び「0」へと戻る。また、
図5(c)に太実線で示すように、実開度Regr(m)は一旦増加して再び減少へ転じ、時刻t7で「0」、すなわち全閉となる。
【0096】
その後、
図5(a)に太実線で示すように、時刻t1〜t3から遅れて時刻t4〜t6にかけて、スロットル開度TAが変化しながら減少すると、同図(d)に示すように、それまでほぼ一定に推移していたエンジン回転速度NEが低下し始め、エンジン負荷KLも少し遅れて低下し始める。
【0097】
その後、
図5(a)に示すように、時刻t7〜t9の間で、アクセル開度ACCが一旦増加してから再び減少へ転じると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦正の値へ急上昇してから再び負の値へ戻る。しかし、この時点では、
図5(a)に示すように、アクセル開度ACCが第1加速判定値D1よりも小さいことから、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「1」のままとなり、同図(c)に太破線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)は「0」のままとなり、同図(c)に太実線で示すように、実開度Regr(m)は「0」のままとなる。
【0098】
その後、
図5(a)に示すように、時刻t7〜t9に遅れて時刻t10〜t12にかけて、スロットル開度TAが一旦増加してから減少すると、同図(d)に示すように、それまで減少を続けていたエンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLは一旦増加してから減少を続ける。
【0099】
ここで、
図5(a)に示すように、時刻t1〜t12の間で、アクセル開度ACCが全閉へ向けての減少の途中で多少変動し、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦負の値となってから「0」又は正の値へ多少変動しても、その「0」又は正の値への変化が継続しない限り、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が「0」へ戻ることとなり、実開度Regr(m)は「0」へ向けて減少を続ける。このため、EGR率は、減速時の許容EGR率P1を下回ったまま一定に推移し、その後徐々に減少することとなる。
【0100】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、エンジン1の運転時に、EGR通路17におけるEGRガスの流れを調節するために、ECU50は、エンジン1の運転状態に応じて求められた目標開度Tegrに基づいてEGR弁18を制御する。ここで、ECU50は、アクセル開度ACCの単位時間当たりの負の変化量としてのアクセル操作速度ΔTAACCを所定の第1減速判定値C1と比較し、その比較結果により運転者によりエンジン1に減速運転が要求されていると判断したときにEGR弁18に全閉を指令し、減速運転の要求が継続していると判断したときに全閉の指令をそのまま継続する。また、ECU50は、上記比較結果により減速運転の要求がなくなったと判断し、かつ、アクセル開度ACCが所定の第1加速判定D1より大きいと判断したときに、それまでの全閉の指令を解除する。また、ECU50は、全閉指令を解除した後は、必要に応じて、EGR弁18にその時点で求められる目標開度Tegrへの開弁を指令するようにしている。
【0101】
従って、EGR弁18に全閉を指令するための減速運転の要求の判断が、その要求の継続の判断と、その要求の消滅の判断とを前提に行われることから、減速運転の要求が応答性よく判断される。これにより、EGR弁18に対し全閉の指令が早められる。また、運転者の要求の消滅を受けてEGR弁18への全閉の指令の解除が早められる。このため、エンジン1に減速運転が要求されているときにEGR弁18を早くに全閉にしてEGRをカットし、エンジン1の減速失火を回避することができると共に、減速運転の要求から他の運転の要求への復帰時にEGR弁18の全閉を速やかに中断することができる。すなわち、エンジン1に供給される吸気中のEGR率Pegr(m)を、不用意に増大させることなく速やかに低減することができ、減速運転時に過剰なEGRによりエンジン1に失火が起きることを未然に防止することができる。また、減速運転から他の運転への復帰時には、EGR弁18が速やかに開弁され、適量のEGRガスが燃焼室16へと供給される。このため、減速運転の要求から他の運転の要求への復帰時には、EGR弁18の全閉を速やかに中断することができ、EGR弁18を確実に開弁させてEGRを適宜行うことができ、これによってエンジン1の燃費及び排気エミッションを改善することができる。
【0102】
このように減速運転の要求を速やかに判断できるのは、アクセル操作速度ΔTAACCを単に所定の第1減速判定値C1と比較するようにしているからである。これができるのは、減速運転の要求を判断した後、減速運転の要求の継続と、減速運転の要求の消滅とを併せて判断するようにしているからである。また、これら要求の継続と要求の消滅を判断するために、アクセル操作速度ΔTAACCを、更に所定の第2減速判定値C2と比較し、そのときのアクセル開度ACCを第1加速判定値D1と比較することで減速運転の要求の変化を監視するようにしているからである。
【0103】
また、この実施形態では、減速運転時に過剰なEGRによりエンジン1に失火が起きることを未然に防止することができるので、車両のドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0104】
<第2実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0105】
なお、以下の各実施形態において、前記第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0106】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図6に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図6のフローチャートでは、
図3のフローチャートにおけるステップ110、ステップ200及びステップ220の処理に代えて、ステップ111、ステップ201及びステップ221の処理が設けられ、ステップ100の前後にステップ300、ステップ310及びステップ320の処理が、ステップ210とステップ221の間にステップ330及びステップ340の処理がそれぞれ加わった点で
図3のフローチャートと異なる。
【0107】
すなわち、処理がこのルーチンへ移行すると、ステップ300で、ECU50は、スロットルセンサ23の検出値に基づきスロットル開度TAを取り込み、ステップモータ31へ指令している現在のステップ数からEGR弁18の実開度Regrを取り込む。ここで、スロットル開度TA及び実開度Regrとも、全開を「100(%)」とする百分率で表すことができる。
【0108】
次に、ステップ310で、ECU50は、スロットル開度TAと実開度Regrに基づきスロットル開度TAに対する実開度Regrの比(開度比)Regr/TAを求める。
【0109】
次に、ステップ100で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCを取り込む。
【0110】
次に、ステップ320で、ECU50は、開度比Regr/TAに基づき第2減速判定値C2を求める。ECU50は、例えば、
図7に示すような減速判定値マップを参照することにより、この第2減速判定値C2を求めることができる。
図7のマップでは、開度比Regr/TAが小さくなるほど第2減速判定値C2があるレベルまで小さくなるように設定されている。ここで、第2減速判定値C2は負の値であるから、それが小さくなるとは、アクセル開度ACCの負の変化量が大きくなることを意味する。
【0111】
次に、ステップ111で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが今回求めた第2減速判定値C2(負の値)よりも大きいか否かを判断する。この第2減速判定値C2は、エンジン1に減速運転(急減速運転を含む)が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明における減速運転時の第1判定値に相当する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1に減速運転が要求されていないものとして、ECU50は、処理をステップ120へ移行する。一方、この判断結果が否定となる場合、エンジン1に減速運転が要求されているとして、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、ステップ170、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して強制閉弁指令及び全閉指令をすることになる。
【0112】
上記したように開度比Regr/TAを求めるのは、一般に、この開度比Regr/TAが大きくなるほどエンジン1の減速失火が厳しくなるからである。そこで、この実施形態では、開度比Regr/TAに応じ第2減速判定値C2を求め、アクセル操作速度ΔTAACCをその第2減速判定値C2と比較するようにしている。
【0113】
一方、EGR弁18を全閉指令中に、ステップ120の判断結果が否定となる場合、ECU50は、ステップ201で、アクセル操作速度ΔTAACCが「0」以上であるか否かを判断する。減速運転時にアクセルペダル26が踏み戻されるときのアクセル操作速度ΔTAACCは、本来負の値である。それが「0」又は「正の値」になるとは、アクセルペダル26の操作が止まったか、アクセルペダル26が踏み込み操作(開く操作)が行われたことを意味する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への減速運転の要求が若干弱くなったものの依然として減速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、上記と同様に、ステップ170、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して強制閉弁指令及び全閉指令をすることになる。
【0114】
一方、ステップ201の判断結果が肯定となる場合、エンジン1への減速運転の要求がなくなったものとして、ステップ210で、ECU50は、アクセルセンサ27の検出値に基づきアクセル開度ACCを取り込む。
【0115】
次に、ステップ330で、ECU50は、回転速度センサ52の検出値に基づきエンジン回転速度NEを取り込む。
【0116】
次に、ステップ340で、ECU50は、エンジン回転速度NEに応じた第2加速判定値D2を求める。ECU50は、例えば、
図8に示すような加速判定値マップを参照することにより、この第2加速判定値D2を求める。
図8のマップでは、エンジン回転速度NEが高くなるほど第2加速判定値D2があるレベルまで大きくなるように設定されている。ここで、第2加速判定値D2をエンジン回転速度NEに応じて求めるのは、エンジン回転速度NEが高くなるほど、定常運転時のアクセル開度ACCが高くなり、より精度のよい定常条件の判定が可能であるからである。この実施形態で、第2加速判定値D2は、本発明における減速運転時の第2判定値に相当する。
【0117】
次に、ステップ221で、ECU50は、アクセル開度ACCが今回求めた第2加速判定値D2よりも大きいか否かを判断する。この第2加速判定値D2は、エンジン1への減速運転の要求がなくなり、減速運転以外の運転(緩減速運転又は定常運転又は加速運転を含む。)が要求されていることを判断するための閾値である。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への減速運転の要求が弱くなったものの依然として減速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、上記と同様に、ステップ170、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して強制閉弁指令及び全閉指令を継続することになる。
【0118】
一方、ステップ221の判断結果が肯定となる場合、運転者による減速運転の要求がなくなり、減速運転(急減速運転を含む。)から他の運転(緩減速運転又は定常運転又は加速運転を含む。)へ切り換わったものとして、ステップ230で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRを「0」に設定した後、上記したステップ130〜ステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18への全閉指令を解除して、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに応じた目標開度TegrへEGR弁18を開弁するようにEGR弁18に指令するのである。
【0119】
この実施形態の上記制御によれば、第1実施形態と異なり、ECU50は、スロットルセンサ23により検出される電子スロットル装置14(スロットル弁21)のスロットル開度TAに対する、ECU50により検出されるEGR弁18の実開度Regrの比、すなわち開度比Regr/TAに応じて第2減速判定値C2を設定するようにしている。また、ECU50は、EGR弁18の全閉指令を解除するためのアクセル開度ACCの範囲を規定する第2加速判定値D2を、回転速度センサ52により検出されるエンジン回転速度NEに応じて設定するようにしている。
【0120】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第1実施形態における作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、一般に、EGRガスに起因するエンジン1の減速失火は、電子スロットル装置14のスロットル開度TAに対するEGR弁18の実開度Regrの比である開度比Regr/TAが大きくなるほど厳しくなる傾向がある。ここで、エンジン1に減速運転が要求されるかを判断するために、アクセル操作速度ΔTAACCと比較される第2減速判定値C2が、ECU50により開度比Regr/TAに応じて設定されるので、減速失火の起きやすさに応じて減速運転の要求が適正に判断される。このため、エンジン1に減速失火が起きやすい状況では、減速運転の要求を精度よく判断することができ、EGR弁18を早くに全閉にしてEGRをカットし、減速失火をより確実に防止することができる。
【0121】
また、この実施形態によれば、一般に、エンジン1の減速運転時における運転者によるアクセル開度ACCは、エンジン回転速度NEが高くなるほど大きくなる傾向がある。ここで、減速運転の要求の消滅を判断するために、アクセル開度ACCと比較される第2加速判定値D2が、エンジン回転速度NEに応じてECU50により設定される。従って、減速運転の要求の消滅がエンジン回転速度NEに応じてより適切に判断される。このため、減速運転の要求を一旦判断し、EGR弁18を全閉に指令した後でも、減速運転の消滅を精度よく判断することができ、EGR弁18の全閉を速やかに解除することができる。
【0122】
<第3実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第3実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0123】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第1及び第2の実施形態と構成が異なる。
図9に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図9のフローチャートでは、
図6のフローチャートにおけるステップ111、ステップ170及びステップ201の処理に代えて、ステップ112、ステップ171及びステップ200の処理が設けられ、ステップ320とステップ112の間にステップ400及びステップ410の処理が、ステップ410とステップ171の間にステップ420の処理が、ステップ112とステップ171の間にステップ430の処理がそれぞれ加わった点で
図6のフローチャートと異なる。
【0124】
すなわち、ECU50は、ステップ320で、開度比Regr/TAに基づき第2減速判定値C2を求めた後、ステップ400で、ブレーキセンサ28の検出に基づきブレーキがオフであるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、すなわち、ブレーキがオンである場合、ブレーキペダル36が踏み込まれて車両の停止が要求されていることから、エンジン1の減速運転の要求が最強であるものとして、ECU50は、ステップ420で、EGR弁18の閉弁速度ΔEGRclを最大に設定する。
【0125】
その後、ステップ171で、ECU50は、最大の閉弁速度ΔEGRclによりEGR弁18を強制閉弁指令する。すなわち、EGR弁18に対して最大の閉弁速度ΔEGRclで強制的な閉弁を指令する。次に、ECU50は、ステップ180で、EGRカットフラグXCEGRを「1」に設定し、ステップ190で、目標開度Tegrを「0」に、すなわち全閉に設定し、ステップ160で、「0」に設定された目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御した後、処理をステップ100へ戻す。
【0126】
一方、ステップ400の判断結果が肯定となる場合は、ブレーキペダル36が踏み込まれていないことから、ステップ410で、ECU50は、アクセルセンサ27の検出に基づきアクセル全閉か否かを判断する。すなわち、アクセルペダル26が踏み戻されたか否かを判断する。ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値で所定値以下(絶対値としては所定値以上)となるとき、又は、アクセル開度ACCが零となるときに、アクセル全閉であると判断することができる。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1の減速運転の要求が継続するものと判断して、ECU50は、上記と同様にステップ420、ステップ171、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して最大の閉弁速度ΔEGRclで強制閉弁指令すると共に全閉指令をすることになる。
【0127】
一方、ステップ410の判断結果が否定となる場合は、ステップ112で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の第3減速判定値Ck(負の値)よりも大きいか否かを判断する。この第3減速判定値Ckは、エンジン1に減速運転(急減速運転を含む)が要求されていることを判断するための閾値であり、第2減速判定値C2よりも小さい値である。この判断結果が否定となる場合、エンジン1に減速運転が要求されているものとして、ECU50は、処理をステップ430へ移行する。
【0128】
そして、ステップ430で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCに応じたEGR弁18の閉弁速度ΔEGRclを求める。ECU50は、例えば、
図10に示すような閉弁速度マップを参照することにより、この閉弁速度ΔEGRclを求めることができる。
図10のマップでは、アクセル操作速度ΔTAACCが小さくなるほど(負の値へ小さくなるほど)、すなわち、アクセルペダル26が速く踏み戻されるほど、EGR弁18の閉弁速度ΔEGRclが最大値ΔEGRclmaxへ向けて高くなるように設定されている。
【0129】
その後、ECU50は、ステップ171で、求められた閉弁速度ΔEGRclによりEGR弁18を強制閉弁指令し、上記と同様に、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対してある閉弁速度ΔEGRclで強制閉弁指令すると共に全閉指令をすることになる。
【0130】
一方、ステップ112の判断結果が肯定となる場合、エンジン1に減速運転が要求されていないものとして、ECU50は、ステップ120で、EGRカットフラグXCEGRが「0」であるか否かを判断する。ここで、ステップ112の判断結果が一旦否定(減速運転の要求)となった場合でも、その直後にアクセル操作速度ΔTAACCが変動してステップ112の判断結果が肯定に切り換わることがある。この場合、直前にEGRカットフラグXCEGRが「1」に設定されていることから、ステップ120の判断結果が否定となり、ECU50は、処理をステップ200へ移行し、ステップ200、ステップ210、ステップ330、ステップ340、ステップ221及びステップ230の処理、更には、ステップ130〜ステップ160の処理を実行する。
【0131】
また、ステップ120の判断結果が肯定となる場合は、エンジン1に減速運転の要求がないものとして、ECU50は、そのままステップ130〜ステップ160の処理を実行する。
【0132】
この実施形態の上記制御によれば、第2実施形態と異なり、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するときの全閉指令条件を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するとき、閉弁速度ΔEGRc1に基づいてEGR弁18を閉弁させると共に、その閉弁速度ΔEGRc1を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。また、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定値以下となるとき、又は、アクセル開度ACCが零となるとき、減速運転の要求が継続するものと判断して閉弁速度ΔEGRclを最大に設定し、その最大の閉弁速度ΔEGRc1によりをEGR弁18を閉弁させるようにしている。更に、ECU50は、ブレーキセンサ28の検出結果に基づきブレーキペダル36が操作されたと判断したときも閉弁速度ΔEGRclを最大に設定し、その最大の閉弁速度ΔEGRclによりEGR弁18を閉弁させるようにしている。
【0133】
ここで、
図11に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートの特徴は、時刻t1〜t13にかけてのアクセル開度ACCとスロットル開度TAが大きく変動することにある。すなわち、
図11(a)に太破線で示すように、アクセル開度ACCは、時刻t1〜t4にかけてある高開度から減少して全閉となり、時刻t4〜t8にかけて全閉から増加してある開度に達し、時刻t8〜t13にかけてある開度から減少して全閉に至る。この間に、
図11(a)に示すように、スロットル開度TAは、アクセル開度ACCの変化に少し遅れて、アクセル開度ACCとほぼ同様の傾向で変化することになる。また、上記アクセル開度ACC及びスロットル開度TAの変動に応じて、
図11(b)〜(f)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACC、EGR弁開度、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL、EGRカットフラグXCEGR及びEGR率が変動する。このタイムチャートにおいて特徴的なのは、時刻t9〜t10の間、時刻t10〜t12の間で、アクセル操作速度ΔTAACCが変化し、それに応じて実開度Regr(m)の変化速度(傾き)が変わることにある。
【0134】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第2実施形態における作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、一般に、エンジン1の減速運転の要求は、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値として小さいほど(絶対値として大きいほど)強くなる傾向がある。ここで、ECU50により、減速運転が要求されていると判断されたとき、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて閉弁速度ΔEGRclが設定される。そして、その閉弁速度ΔEGRclによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。従って、減速運転が要求され、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるときは、その運転要求の強さに応じて設定された閉弁速度ΔEGRc1に基づいてEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。このため、エンジン1の減速運転時には、その減速運転の要求の強さに応じた適正な速度でEGR弁18を全閉へ向けて閉弁することができ、できる限り速やかにEGRをカットすることができる。
【0135】
また、この実施形態によれば、一般に、エンジン1の減速運転の要求は、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値として小さいほど(絶対値としては大きいほど)、又はアクセル開度ACCが零になるとき強くなる傾向がある。ここで、アクセル操作速度ΔTAACCが所定値以下となるとき、又は、アクセル開度ACCが零となるときに、ECU50により、減速運転の要求が継続するものと判断され、最大の閉弁速度ΔEGRclによりEGR弁18に全閉が指令される。従って、減速運転の要求が継続するときは、EGR弁18が全閉へ向けて最速で閉弁される。このため、エンジン1の減速運転時に、アクセル操作速度ΔTAACCが小さいとき、又はアクセル開度ACCが零になるときは、減速運転の要求が最も強いものとして、EGR弁18を最も速やかに全閉とし、EGRカットを最も速やかに行うことができる。
【0136】
更に、この実施形態によれば、一般に、エンジン1の減速運転の要求は、ブレーキペダル36が踏み込まれたときに確定的に最も強くなる。ここで、ECU50により、ブレーキセンサ28の検出結果に基づきブレーキペダル36が踏み込まれたと判断されたとき、最大の閉弁速度ΔEGRclによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。従って、減速運転の要求が確定的に最も強くなるときは、EGR弁18が全閉へ向けて最速で閉弁される。このため、ブレーキペダル36が踏み込まれたときは、減速運転の要求が確定的に最も強いものとして、EGR弁18を最も速やかに全閉とし、EGRカットを最も速やかに行うことができる。
【0137】
<第4実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第4実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0138】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図12、
図13に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図12、
図13のフローチャートでは、
図3のフローチャートにおけるステップ150とステップ160の間にステップ500〜ステップ640の処理が、ステップ190の後にステップ650及びステップ660の処理がそれぞれ加わった点で
図3のフローチャートと異なる。
【0139】
すなわち、処理がこのルーチンへ移行し、ステップ110、ステップ120及びステップ130の判断結果が全て肯定となり、ステップ150からステップ500へ移行すると、ECU50は、EGR弁18の実開度Regrを取り込む。
【0140】
次に、ステップ510で、ECU50は、EGR復帰時に緩開弁制御判定フラグXRegrが「0」であるか否かを判断する。この緩開弁制御判定フラグXRegrは、EGR弁18を緩開弁制御する場合は「0」に、緩開弁制御しない場合は「1」に設定される。EGR弁18の緩開弁制御とは、後述するように、EGR弁18を目標開度Tegrへ向けて緩やかに開弁する制御を意味する。そして、EGR弁18を緩開弁制御する場合は、ステップ510の判断結果が肯定となり、ECU50は処理をステップ520へ移行する。
【0141】
ステップ520で、ECU50は、実開度Regrが「0」のときからのEGR復帰であるか否かを判断する。ここで、エンジン1の始動後にEGR弁18を全閉状態から開弁する場合は、ステップ520の判断結果が肯定となり、ECU50は、処理をステップ530へ移行する。
【0142】
ステップ530で、ECU50は、実開度Regrが目標開度Tegrより小さいか否かを判断する。EGR弁18を全閉から目標開度Tegrへ向けて開弁する場合は、ステップ530の判断結果が肯定となり、ECU50は、処理をステップ540へ移行する。
【0143】
ステップ540で、ECU50は、EGR復帰時に初期設定フラグXTegrsが「1」であるか否かを判断する。この初期設定フラグXTegrsは、EGR弁18の初期目標開度Tegrs(i)を初期設定する場合は「0」に、初期設定が完了して初期設定しない場合は「1」に設定される。EGR弁18の初期目標開度Tegrs(i)とは、後述するように、EGR弁18が全閉のときに設定されるEGR弁18の目標開度を意味する。
【0144】
そして、ステップ540の判断結果が否定となる場合、すなわち、初期目標開度Tegrs(i)の初期設定を行う場合は、ECU50は、ステップ630で、初期設定フラグXTegrsを「1」に設定し、ステップ640で、初期目標開度Tegrs(i)を「0」に設定し、ステップ540の処理へ戻る。この場合、ステップ540の判断結果は、肯定となることから、ECU50は、処理をステップ550へ移行する。
【0145】
ステップ550で、ECU50は、初期目標開度Tegrs(i)を算出する。すなわち、ECU50は、前回の初期目標開度Tegrs(i-1)に所定値αを加算することにより今回の初期目標開度Tegrs(i)を算出する。ここで、所定値αについては、小開度からのEGR復帰時と、大開度からのEGR復帰時とで大きさを変更することができる。
【0146】
次に、ステップ560で、ECU50は、初期目標開度Tegrs(i)を目標開度Tegrとして設定する。そして、ステップ160で、ECU50は、目標開度Tegrに置き換えられた初期目標開度Tegrs(i)に基づきEGR弁18を制御し、処理をステップ100へ戻す。すなわち、ECU50は、EGR弁18を全閉状態から緩開弁制御することになる。
【0147】
一方、ステップ510の判断結果が否定となる場合、すなわち、緩開弁制御をしない場合は、ECU50は、そのままステップ160へ移行して、ステップ150で求められた目標開度Tegrに基づいてEGR弁18を制御する。この場合は、EGR弁18を緩開弁制御することなく目標開度Tegrへ向けて速やかに開弁することになる。
【0148】
また、ステップ520の判断結果が否定となる場合は、ECU50は、処理をステップ570へ移行して、実開度Regrが目標開度Tegrより小さいか否かを判断する。EGR弁18を全閉から目標開度Tegrへ向けて開弁する場合は、ステップ570の判断結果が肯定となり、ECU50は、処理をステップ580へ移行する。
【0149】
ステップ580で、ECU50は、EGR復帰時に初期設定フラグXTegrsが「1」であるか否かを判断する。そして、ステップ580の判断結果が否定となる場合、すなわち、初期目標開度Tegrs(i)の初期設定を行う場合は、ECU50は、ステップ590で、初期設定フラグXTegrsを「1」に設定し、ステップ600で、実開度Regrを初期目標開度Tegrs(i)として設定し、ステップ580の処理へ戻る。この場合、ステップ580の判断結果は、肯定となることから、ECU50は、処理をステップ550へ移行する。
【0150】
一方、ステップ570の判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ610へ移行する。また、ステップ530の判断結果が否定となる場合、すなわち、実開度Regrが目標開度Tegrに達した場合は、緩開弁制御が完了しその後は緩開弁制御を行わないことから、ECU50は、処理をステップ610へ移行する。そして、ECU50は、ステップ610で、緩開弁制御フラグXRegrを「1」に設定し、ステップ620で、実開度Regrを目標開度Tegrとして設定した後、ステップ160の処理を実行する。
【0151】
一方、ステップ110、ステップ200、ステップ220又はステップ130から移行してステップ170で、ECU50は、EGR弁18に対し強制開弁を指令する。その後、ECU50は、ステップ180で、EGRカットフラグXCEGRを「1」に設定し、ステップ190で、目標開度Tegrを「0」に設定する。
【0152】
続いて、ECU50は、ステップ650で、緩開弁制御フラグXRegrを「0」に設定し、ステップ660で、初期設定フラグXTegrsを「0」に設定した後、ステップ160の処理を実行する。
【0153】
この実施形態の上記制御によれば、第1実施形態と異なり、ECU50は、EGR弁18を全閉から目標開度Tegrへ向けて開弁するときは、小開度よりも大きい中開度から開弁するときよりも緩やかに徐々に開弁するようにしている。
【0154】
ここで、
図14に、上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。
図15に、
図14(c)のEGR弁開度の挙動を拡大してタイムチャートにより示す。このタイムチャートにおいて、時刻t1〜t2,t4〜t12の間における初期設定フラグXTegrsを除く各種パラメータの挙動は、
図5のそれと同じである。このタイムチャートで特徴的なのは、時刻t2〜t3及び時刻t13〜t17の間における各種パラメータの挙動にある。すなわち、
図14(a)に太破線で示すように、時刻t13〜t14の間で、アクセル開度ACCが増加すると、同図(b)に示すように、時刻t13〜t14の間で、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦正の値に増加する。
【0155】
その後、
図14(a)に実線で示すように、時刻t15〜t16の間で、スロットル開度TAが増加すると、同図(d)に示すように、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLが増加する。これに伴い、
図14(e)に示すように、時刻t15で、EGRカットフラグXCEGRが「0」に戻り、その直後に初期設定フラグXTegrsが「1」となる。また、
図14(c)及び
図15に示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(マップ値)は急増するが、実開度Regr(m)は緩やかに徐々に増加する。これは、EGR弁18を全閉から目標開度Tegrへ向けて開弁するときに、ECU50が、初期目標開度Tegrs(i)を設定することで、EGR弁18を緩やかに徐々に開弁するように指令することによるものである。その結果として、
図14(g)に示すように、時刻t15〜t17にかけてEGR率が緩やかに増加することとなる。
【0156】
また、
図14(a)に太破線で示すように、時刻t2〜t3の間で、アクセル開度ACCが一定になると、同図(b)に示すように、時刻t2〜t3の間で、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦「0」へ増加し、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「0」へ戻る。また、
図14(c)及び
図15に示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(マップ値)は一定であるが、実開度Regr(m)は緩やかに徐々に増加し始める。これは、EGR弁18を全閉へ向けて閉弁しているときに、定常運転の要求へ復帰したときは、ECU50が、初期目標開度Tegrs(i)を設定することで、EGR弁18を緩やかに徐々に開弁するように指令することによるものである。
【0157】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第1実施形態における作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、一般に、EGRがカットされた状態からEGRを再開させるには、燃焼室16に供給されるEGRガスを唐突に増やすことなく徐々に増やすのが好ましい。ここで、ECU50により、EGR弁18が全閉から目標開度Tegrへ向けて開弁されるときは、EGR弁18が小開度より大きい中開度から開弁されるときよりも緩やかに徐々に開弁されるので、燃焼室16に供給されるEGRガスが緩やかに徐々に増やされる。このため、エンジン1の燃焼に対してEGRガスを緩やかに作用させることができ、エンジン1の排気エミッションと車両のドライバビリティの悪化を防止することができる。
【0158】
<第5実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第5実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0159】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第4実施形態と構成が異なる。
図16に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。前記第4実施形態では、
図12に示すフローチャートのステップ520において、実開度Regrが「0」のときからのEGR復帰であるか否かを判断するように構成した。これに対し、この実施形態では、
図16に示すフローチャートのステップ521のように、実開度Regrが所定の小開度E(小開度Eは本発明の「中開度」よりも小さい。)よりも小さいときからEGR復帰であるか否かを判断するように構成している。この場合も、第4実施形態と同等の作用効果を得ることができる。
【0160】
<第6実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第6実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0161】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図17に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図17のフローチャートは、
図3のフローチャートに対し、ステップ135、ステップ175、ステップ435〜ステップ490の処理を加えた点で
図3のフローチャートと異なる。
【0162】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ110、ステップ200又はステップ220の判断結果が否定となる場合、ステップ435で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCに応じたEGR弁18の閉弁速度EGRcspdを求める。ECU50は、この閉弁速度EGRcspdを、例えば、
図18に示すような閉弁速度マップを参照することにより求めることができる。
図18のマップは、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値で小さくなるほど、すなわちアクセル操作速度ΔTAACCの絶対値が大きくなるほど、EGR弁18の閉弁速度EGRcspdが下限値と上限値との間で大きくなるように設定されている。
【0163】
次に、ステップ440で、ECU50は、EGR弁18の実開度Regrを取り込む。その後、ステップ450で、ECU50は、実開度Regrが所定
の小開度Eより大きいか否かを判断する。ここで、所定
の小開度Eとして、例えば、EGR弁18の全閉直近の開度を想定することができる。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、ステップ175へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ460へ移行する。
【0164】
ステップ175では、ECU50は、閉弁速度EGRcspdに基づきEGR弁18に対し強制閉弁を指令する。その後、ステップ180、ステップ190及びステップ160の処理を実行する。
【0165】
一方、ステップ460では、ECU50は、実開度Regrが「0」以下であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、すなわち、EGR弁18が開いている場合、ECU50は、処理をステップ470へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、すなわち、EGR弁18が閉じている場合、ECU50は、処理をステップ480へ移行する。
【0166】
ステップ470では、ECU50は、所定の最小閉弁速度EGRcspdminを閉弁速度EGRcspdとして設定し、処理をステップ175へ移行する。
【0167】
一方、ステップ480では、ECU50は、EGR弁18の閉弁制御を停止する。次に、ステップ490で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRを「0」に設定し、処理をステップ160へ移行する。
【0168】
また、ステップ130で、EGRオン条件が成立していない場合、ステップ135で、ECU50は、
所定の最大閉弁速度EGRcspdmaxを閉弁速度EGRcspdとして設定する。その後、ECU50は、処理をステップ440へ移行する。
【0169】
この実施形態の上記制御によれば、第1実施形態と異なり、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するときの全閉指令条件を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するとき、閉弁速度EGRcspdに基づいてEGR弁18を閉弁させると共に、その閉弁速度EGRcspdを、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。また、ECU50は、EGR弁18を全閉とする過程で検出されるEGR弁18の実開度Regrが所定値E以下となったときに、閉弁速度EGRcspdを所定の最小値EGRcspdminに設定するようにしている。
【0170】
ここで、
図19に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートでは、初期設定フラグXTegrsを除く各種パラメータの挙動は、
図14のそれとほぼ同じである。このタイムチャートで、
図14のタイムチャートと異なり特徴的なのは、時刻t1〜t4の間における各種パラメータの挙動にある。すなわち、
図19(a)に太破線で示すように、時刻t1で、アクセル開度ACCがわずかに減少し始めると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが第1減速判定値C1より小さい負の値へ低下する。すると、
図19(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「0」から「1」へ切り換わり、同図(c)に太破線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が直ちに「0」となり、同図(c)に太実線で示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)が減少し始める。
図19(c)において、太破線で示す目標開度Tegr(m)は、減速運転時に求められる値を示し、実線で示す目標開度Tegr(マップ値)は、目標開度マップを参照して求められるマップ値を示す。
【0171】
その後、
図19(a)に示すように、時刻t2〜t4の間で、アクセル開度ACCの減少が一旦止まってから再び減少へ転じると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦「0」へ上昇してから再び第1減速判定値C1より小さい負の値へと戻る。すると、
図19(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが一旦「0」へ切り換わってから再び「1」へ戻る。そして、
図19(c)に示すように、目標開度Tegr(m)が直ちに一旦所定の開弁の値となってから再び「0」へと戻る。また、
図19(c)に太実線で示すように、実開度Regr(m)は一旦増加してから再び減少へ転じ、時刻t7で「0」、すなわち全閉となる。
【0172】
ここで、
図19(a)に示すように、時刻t1〜t12の間で、アクセル開度ACCが全閉へ向けて減少する途中で多少変動し、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦負の値となってから「0」又は正の値へ多少変動しても、その「0」又は正の値への変化が継続しない限り、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が「0」へ戻ることとなり、実開度Regr(m)は「0」へ向けて減少を続ける。このため、EGR率は、減速時の許容EGR率P1を下回ったまま一定に推移し、その後徐々に減少することとなる。
【0173】
また、
図19(b)に示すように、時刻t1〜t2におけるアクセル操作速度ΔTAACCが比較的遅い場合は、同図(c)に示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)の変化は比較的緩やかとなる、すなわちEGR弁18の閉弁速度EGRcspdが比較的遅くなる。一方、
図19(b)に示すように、時刻t3〜t7におけるアクセル操作速度ΔTAACCが比較的速い場合は、同図(c)に示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)の変化は比較的急となる、すなわちEGR弁18の閉弁速度EGRcspdが比較的速くなる。
【0174】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第1実施形態における作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、一般に、エンジン1の減速運転の要求は、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値として小さいほど(絶対値としては大きいほど)強くなる傾向がある。ここで、ECU50により、減速運転が要求されていると判断されたとき、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて閉弁速度EGRcspdが設定される。そして、その閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。従って、減速運転が要求され、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるときは、その運転要求の強さに応じて設定された閉弁速度EGRcspdに基づいてEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。すなわち、緩減速時には緩い閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁され、急減速時には急速な閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。このため、エンジン1の減速運転時には、その減速運転の要求の強さに応じた適正な速度でEGR弁18を全閉へ向けて閉弁することができ、EGRをできる限り速やかにカットすることができる。また、例えば、機構的に閉弁速度の速いEGR弁18を使用した場合には、緩減速時に緩い閉弁速度でEGR弁18を閉弁できることから、EGR弁18を必要以上に閉弁させることがない。
【0175】
また、この実施形態によれば、EGR弁18が全閉へ向けて閉弁される過程で、その実開度Regrが所定
の小開度E以下となったときに、ECU50により
閉弁速度EGRcspdが最小閉弁速度EGRcspdminに設定されるので、EGR弁18が緩やかに閉弁されて全閉となる。このため、EGR弁18の全閉時に弁体32が弁座33に勢いよく着座することがなく、弁体32と弁座33との着座による衝撃と打音を抑えることができる。
【0176】
更に、この実施形態によれば、EGRオン条件が成立しないときは、閉弁速度EGRcspdが最大閉弁速度EGRcspdmaxに設定され、その最大閉弁速度EGRcspdmaxによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。このため、EGRオン条件が不成立のときは、最速でEGR弁18を全閉にしてEGRを速やかにカットすることができる。
【0177】
<第7実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第7実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0178】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図20に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図20のフローチャートは、
図3のフローチャートに対し、ステップ136、ステップ240、ステップ700〜ステップ770の処理を加えた点で
図3のフローチャートと異なる。
【0179】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ110、ステップ200又はステップ220の判断結果がそれぞれ否定となる場合、ステップ700で、ECU50は、初期設定フラグXTegrsが「0」か否か、すなわち、EGR弁18の初期目標開度Tegrs(i)を初期設定するか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ710へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ740へジャンプする。
【0180】
ステップ710では、ECU50は、EGR弁18の実開度Regrを取り込む。次に、ステップ720で、ECU50は、取り込んだ実開度Regrを目標閉弁開度Tegrc(i)として設定する。次に、ステップ730で、ECU50は、初期設定フラグXTegrsを「1」に設定する。
【0181】
そして、ステップ700又はステップ730から移行してステップ740では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCに応じたEGR弁18の目標減衰値EGRcαを求める。ECU50は、この目標減衰値EGRcαを、例えば、
図21に示すような目標減衰値マップを参照することにより求めることができる。
図21のマップは、アクセル操作速度ΔTAACCが小さくなるほど、すなわちアクセル操作速度ΔTAACCの絶対値が大きくなるほど、目標減衰値EGRcαが下限値と上限値との間で大きくなるように設定されている。
【0182】
次に、ステップ750で、ECU50は、EGR弁18の目標閉弁開度Tegrc(i)を求める。すなわち、ECU50は、前回求められた目標閉弁開度Tegrc(i-1)から目標減衰値EGRcαを減算することにより、今回の目標閉弁開度Tegrc(i)を求める。
【0183】
次に、ステップ7
60で、ECU50は、今回求められた目標閉弁開度Tegrc(i)が「0」以上であるか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、ステップ170、ステップ180、ステップ195及びステップ160の処理を実行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ770へ移行する。
【0184】
また、ステップ7
70では、ECU50は、目標閉弁開度Tegrc(i)を「0」に設定し、処理をステップ170へ移行し、ステップ170、ステップ180、ステップ195及びステップ160の処理を実行する。
【0185】
ここで、ステップ195では、ECU50は、今回求められた目標閉弁開度Tegrc(i)を目標開度Tegrとして設定する。
【0186】
また、
ステップ230では、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRを「0」に設定する。次に、ステップ240では、ECU50は、初期設定フラグXTegr
csを「0」に設定し、処理をステップ130へ移行する。
【0187】
また、ステップ130で、EGRオン条件が成立していない場合、ステップ136で、ECU50は、目標閉弁開度Tegrc(i)を「0」に設定する。その後、処理をステップ170へ移行し、ステップ170、ステップ180、ステップ195及びステップ160の処理を実行する。
【0188】
この実施形態の上記制御によれば、第1実施形態と異なり、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するときの全閉指令条件を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するとき、目標閉弁開度Tegrc(i)に基づいてEGR弁18を閉弁させると共に、目標閉弁開度Tegrc(i)を、アクセル操作速度ΔTAACCの推移に応じて減衰させるようにしている。
【0189】
ここで、
図22に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートは、
図19のタイムチャートと以下の点で異なる。すなわち、
図22(a)に太破線で示すように、時刻t1で、アクセル開度ACCがわずかに減少し始めると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが第1減速判定値
C1より小さい負の値へ低下する。すると、
図22(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「0」から「1」に切り換わり、同図(c)に太破線で示すように、EGR弁18の目標閉弁開度Tegrc(i)が減少し始めると共に、同図(c)に太実線で示すように、実開度Regr(m)が減少し始める。
【0190】
その後、
図22(a)に示すように、時刻t2〜t4の間で、アクセル開度ACCの減少が一旦止まり、再び減少へ転じると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦「0」へ上昇してから再び第1減速判定値C1より小さい負の値へと戻る。すると、
図22(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRは、一旦「0」へ切り換わってから再び「1」へ戻る。また、
図22(c)に太破線で示すように、目標閉弁開度Tegrc(i)は、一旦所定の値となってから「0」となる。また、
図22(c)に太
実線で示すように、実開度Regr(m)は、一旦増加してから減少へ転じ、時刻t7で「0」、すなわち全閉となる。
【0191】
ここで、
図22(b)に示すように、時刻t1〜t2の間で、アクセル操作速度ΔTAACCが比較的遅い場合は、同図(c)に太破線で示すように、目標閉弁開度Tegrc(i)の減衰が比較的小さい。また、
図22(b)に示すように、時刻t3〜t4で、アクセル操作速度ΔTAACCが比較的速い場合は、同図(c)に太破線で示すように、目標閉弁開度Tegrc(i)の減衰が大きくなる。
【0192】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第1実施形態の作用効果に加え次のような作用効果を得ることができる。一般に、アクセル操作速度ΔTAACCの推移は、初めに大きく、後になるほど小さくなる。従って、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるとき、目標閉弁開度Tegrc(i)は、初めに大きく減衰され、後になる
ほど小さく減衰されるので、EGR弁18が全閉へ向けて閉弁されるときは、後になるほど緩やかに閉弁される。このため、エンジン1の減速運転の要求の強さの推移に応じた適正な速度でEGR弁18を全閉へ向けて閉弁することができ、EGRをカットすることができる。
【0193】
<第8実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第8実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0194】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第7実施形態と構成が異なる。
図23に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図23のフローチャートは、
図20のフローチャートに対し、ステップ745、ステップ800〜ステップ820の処理を加えた点で
図20のフローチャートと異なる。
【0195】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ700の判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ810へジャンプする。一方、ステップ700の判断結果が肯定となる場合、ステップ800で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCを最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxとして設定する。その後、ECU50は、ステップ710〜ステップ730の処理を実行する。
【0196】
ステップ700又はステップ730から移行してステップ810では、ECU50は、最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxがアクセル操作速度ΔTAACCより小さいか否か、すなわち絶対値として大きいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ745へジャンプする。一方、この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、ステップ820で、アクセル操作速度ΔTAACCを最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxとして設定する。その後、ECU50は、処理をステップ745へ移行する。
【0197】
そして、ステップ810又はステップ820から移行してステップ745では、ECU50は、最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxに応じたEGR弁18の目標減衰値EGRcαを求める。ECU50は、この目標減衰値EGRcαを、例えば、
図24に示すような目標減衰値マップを参照することにより求めることができる。
図24のマップは、最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxが小さくなるほど、すなわち最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxの絶対値が大きくなるほど、目標減衰値EGRcαが下限値と上限値との間で大きくなるように設定されている。ここで、最大アクセル操作速度ΔTAACC
maxは、各処理周期にてステップ820で更新されることから、
図24のマップで求められる目標減衰値EGRcαも更新されることになる。その後、ECU50は、処理をステップ750へ移行する。
【0198】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、次の点で第7実施形態と作用効果が異なる。すなわち、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるとき、その時々で更新される最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxに応じた目標減衰値EGRcαが設定され、その目標減衰値EGRcαから目標閉弁開度Tegrc(i)が求められる。そして、その目標閉弁開度Tegrc(i)に基づきEGR弁18が強制的に全閉に指令される。これにより、最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxに応じた閉弁速度によりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。このため、エンジン1の減速運転の要求の強さの推移に応じた適度な速さでEGR弁18を全閉へ向けて閉弁することができ、EGRをカットすることができる。
【0199】
加えて、この実施形態では、エンジン1に減速運転が要求されているとき、途中で急減速から緩減速へ推移しても、急減速時の最大アクセル操作速度ΔTAACCmaxで求められた目標減衰値EGRcαが維持されるので、目標閉弁開度Tegrc(i)が急減速時のまま維持される。従って、エンジン1の急減速時にその途中で急減速から緩減速へ推移しても、急減速時のままの速度でEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。このため、エンジン1が急減速から緩減速へ推移しても、急減速時のままEGRを速やかにカットすることができる。
【0200】
<第9実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第9実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0201】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第1実施形態と構成が異なる。
図25に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図25のフローチャートは、
図3のフローチャートに対し、ステップ850及びステップ860の処理を加えた点で
図3のフローチャートと異なる。
【0202】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ110の判断結果が否定となる場合、ステップ850で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCに応じた遅延時間βを求める。この遅延時間βは、EGR弁18を閉弁するときにその開始を遅らせる時間を意味する。ECU50は、この遅延時間βを、例えば、
図26に示すような遅延時間マップを参照することにより求めることができる。
図26のマップは、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値で小さくなるほど、すなわちアクセル操作速度ΔTAACCの絶対値が大きくなるほど、遅延時間βが上限値と下限値との間で小さくなるように設定されている。
【0203】
次に、ステップ860で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが第1減速判定値C1以下となってから遅延時間βだけ経過するのを待って処理をステップ170へ移行し、ステップ170〜ステップ190及びステップ160の処理を実行する。
【0204】
この実施形態の上記制御によれば、第1実施形態と異なり、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するときの全閉指令条件を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するとき、EGR弁18の全閉開始を遅延時間βだけ遅延させると共に、その遅延時間βをアクセル操作速度ΔTAACC(負の変化量)に応じて設定するようにしている。
【0205】
ここで、
図27に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。
図27(a)に太破線で示すように、時刻t1〜t9の間で、アクセル開度ACCが微小な増減を繰り返すと、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが負の値と正の値との間で変動を繰り返す。このとき、
図27(f)に示すように、「ΔTAACC≦C1成立後の時間(以下「条件成立後時間」と言う。)」がカウントされるが、その時間が遅延時間βを越えないことから、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「0」のままとなり、同図(c)に示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)、目標開度Tegr(マップ値)及び実開度Regrはそれぞれある値を維持することになる。
【0206】
その後、
図27(a)に示すように、時刻t10で、アクセル開度ACCが大きく減少し始め、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが第1減速判定値C1より小さくなると、同図(f)に示すように条件成立後時間のカウントが開始される。そして、
図27(f)に示すように、時刻t11で、条件成立後時間が遅延時間βを超えると、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRが「0」から「1」に切り替わり、同図(c)に太破線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が「0」へと立ち下がる。
【0207】
その後、
図27(a)に示すように、時刻t13で、アクセル開度ACCが全閉になると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが「0」となり、同図(f)に示すように、条件成立後時間が「0」に戻る。
【0208】
その後、
図27(a)に示すように、時刻t13〜t15の間で、アクセル開度ACCが全閉を維持するが、この間に、同図(c)に太実線で示すように、実開度Regr(m)が徐々に減少し、同図(d)に示すように、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLが減少する。また、
図27(c)に太実線で示すように、実開度Regr(m)の減少に対応するように、同図(g)に示すように、EGR率は、時刻t11以降から徐々に減少することになる。
【0209】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第1実施形態における作用効果に加えて次のような作用効果を有する。すなわち、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるとき、EGR弁18の全閉開始が遅延時間βだけ遅延されると共に、その遅延時間βが減速運転の要求の強さに応じて設定される。従って、運転者の意図しない操作により減速運転の要求が判断されてEGR弁18に全閉が指令されても、減速運転の要求の強さに応じた遅延時間βだけEGR弁18の全閉開始が遅延されるので、EGR弁18の全閉が誤って直ちに開始されることがない。例えば、悪路走行等により車両が振動して、運転者の意図しないアクセル操作によりアクセル開度ACCが変動することがある。この場合、この実施形態では、EGR弁18に全閉を指令するタイミングが、減速運転の要求と判断されてから遅延時間βだけ遅延される。このため、運転者の意図しない操作によるEGRカットの誤制御を防止することができる。
【0210】
また、この実施形態では、運転者が確実にアクセルペダル26を踏み戻したときだけ減速運転の要求と判断されることから、アクセル操作速度ΔTAACCと対比される第1減速判定値C1を比較的小さな値に設定することができる。このため、減速運転の要求の判断のための感度を上げることができる。
【0211】
更に、この実施形態では、
図24のマップを参照することにより、アクセル操作速度ΔTAACCに応じた遅延時間βが求められるので、減速運転の要求が強くなるほど(アクセル操作速度ΔTAACCの絶対値が大きくなるほど)減速運転の要求の判断を早めることができ、EGRカットの開始を早めることができる。
【0212】
<第10実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第10実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0213】
前記各実施形態では、エンジン1の減速運転時にEGR弁18を強制的に全閉とし、EGRをカットすることについて説明した。ここで、エンジン1の加速運転時には、加速直後にエンジン1の背圧が上昇することから、EGR弁18が開弁状態のままだと加速直後のEGR率が不用意に上昇し、エンジン1の加速応答性が悪化するおそれがある。また、加速直後にEGR弁18の閉弁が遅れるほど、吸気に流入するEGRガスが増加し、その増加分だけ新気の割合が減少することから、エンジン1の加速性能が悪化するおそれがある。そこで、第10〜第13の実施形態では、エンジン1の減速運転が要求される場合に加え、加速運転が要求される場合に対処してEGR弁18を強制的に全閉とし、EGRをカットするようにしている。
【0214】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で前記各実施形態と構成が異なる。
図28に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
【0215】
処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ900で、ECU50は、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLをそれぞれ取り込む。次に、ステップ910で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCを取り込む。
【0216】
次に、ステップ920で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の急加速判定値K1(正の値)よりも小さいか否かを判断する。この急加速判定値K1は、エンジン1に急加速運転が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明における加速運転時の第1判定値に相当する。この判断結果が否定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されているものとして、ECU50は、処理をステップ1000へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されていないものとして、ECU50は、処理をステップ930へ移行する。
【0217】
ステップ1000では、ECU50は、EGR弁18に急加速強制閉弁を指令する。すなわち、ECU50は、急加速運転に対応してEGR弁18を強制的に閉弁するように指令する。
【0218】
次に、ステップ1010で、ECU50は、加速運転時のEGRカットフラグXCEGRKを「1」に設定する。次に、ステップ1020で、ECU50は、EGR弁18の目標開度Tegrを「0」に設定する。
【0219】
その後、ステップ990で、ECU50は、「0」に設定された目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御する、すなわち、EGR弁18を全閉に制御する。その後、ECU50は、処理をステップ900へ戻す。
【0220】
一方、ステップ930では、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRKが「0」であるか否かを判断する。このEGRカットフラグXCEGRKは、加速運転時にEGR弁18が閉弁されてEGRがカットされる場合に「1」に設定され、それ以外の場合に「0」に設定される。この判断結果が否定となる場合、EGRがカットされていることから、ECU50は、処理をステップ1100へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ940へ移行する。
【0221】
ステップ920の判断結果が一旦否定(急加速運転要求)となった場合でも、その直後にアクセル操作速度ΔTAACCが変動してステップ920の判断結果が肯定に切り換わることがある。この場合、直前にEGRカットフラグXCEGRKが「1」に設定されていることから、ステップ930の判断結果が否定となり、ECU50は、処理をステップ1100へ移行する。
【0222】
そして、ステップ1100で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の緩加速判定値K2(正の値:K2<K1)よりも小さいか否かを判断する。この緩加速判定値K2は、上記した急加速判定値K1とは異なり、エンジン1に緩加速運転等が要求されていることを判断するための閾値である。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への急加速運転の要求が若干弱くなったものの依然として急加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ1020へ移行し、上記と同様にステップ1020及びステップ990の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18に対して急加速強制閉弁指令及び全閉指令を継続することになる。
【0223】
一方、ステップ1100の判断結果が肯定となる場合、エンジン1への緩加速運転の要求がなくなったものとして、ステップ1110で、ECU50は、エンジン回転速度NEに応じた加速判定値D3を求める。ECU50は、例えば、
図29に示すような加速判定値マップを参照することによりこの加速判定値D3を求めることができる。このマップでは、エンジン回転速度NEが高くなるに連れて加速判定値D3が曲線的に増大するように設定される。この加速判定値D3は、エンジン1への加速運転の要求がなくなり、加速運転以外の運転(緩加速運転又は定常運転又は減速運転を含む。)が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明における加速運転時の第2判定値に相当する。
【0224】
次に、ステップ1120で、ECU50は、アクセル開度ACCを取り込む。その後、ステップ1130で、ECU50は、アクセル開度ACCが加速判定値D3よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への加速運転の要求が弱くなったものの依然として緩加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ1020へ移行し、上記と同様にステップ1020及びステップ990の処理を実行した後、処理をステップ900へ戻す。
【0225】
一方、ステップ1130の判断結果が肯定となる場合、運転者による急加速運転の要求がなくなり、急加速運転から他の運転(定常運転又は減速運転を含む。)へ切り換わったものとして、ステップ1140で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRKを「0」に設定する。
【0226】
次に、ステップ1150で、ECU50は、EGR弁18の実開度Regrを取り込む。その後、ステップ1160で、ECU50は、実開度Regrを目標開度Tegrとして設定する。そして、ステップ990で、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御する。
【0227】
一方、ステップ930の判断結果が肯定となる場合、ステップ940で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の第1減速判定値C1(負の値)よりも大きいか否かを判断する。この第1減速判定値C1は、エンジン1に減速運転が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明における減速運転時の第1判定値に相当する。この判断結果が否定となる場合、エンジン1に減速運転が要求されているものとして、ECU50は、処理をステップ1200へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ950へ移行する。
【0228】
ステップ1200では、ECU50は、EGR弁18に急減速強制閉弁を指令する。すなわち、ECU50は、急減速運転に対応してEGR弁18を強制的に閉弁するように指令する。
【0229】
次に、ステップ1210で、ECU50は、減速運転時のEGRカットフラグXCEGRCを「1」に設定する。その後、ECU50は、ステップ1020及びステップ990の処理を実行した後、処理をステップ900へ戻す。
【0230】
一方、ステップ950では、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRCが「0」であるか否かを判断する。このEGRカットフラグXCEGRCは、EGR弁18が閉弁されてEGRがカットされる場合に「1」に設定され、それ以外の場合に「0」に設定される。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ1300へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ960へ移行する。
【0231】
ステップ1300では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の第2減速判定値C2(負の値:C1<C2)よりも大きいか否かを判断する。この第2減速判定値C2は、第1減速判定値C1とは異なり、エンジン1に緩減速運転が要求されていることを判断するための閾値である。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への急減速運転の要求が若干弱くなったものの依然として緩減速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ1020へ移行し、上記と同様にステップ1020及びステップ990の処理を実行する。
【0232】
一方、ステップ1300の判断結果が肯定となる場合、ステップ1310で、ECU50は、アクセル開度ACCを取り込む。次に、ステップ1320で、ECU50は、アクセル開度ACCが所定の第1加速判定値D1よりも大きいか否かを判断する。この第1加速判定値D1は、エンジン1に加速運転又は定常運転が要求されていることを判断するための閾値であり、本発明の第2判定値に相当する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への減速運転の要求が緩くなったものの依然として減速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ1020へ移行し、上記と同様にステップ1020及びステップ990の処理を実行する。
【0233】
一方、ステップ1320の判断結果が肯定となる場合、運転者による急減速運転の要求がなくなり、急減速運転から他の運転(定常運転又は加速運転を含む。)へ切り換わったものとして、ステップ1330で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRCを「0」に設定した後、上記したステップ1150、ステップ1160及びステップ990の処理を実行する。すなわち、ECU50は、EGR弁18への全閉指令を解除して、目標開度Tegr(実開度Regr)に基づいてEGR弁18を制御する。
【0234】
一方、ステップ960では、ECU50は、EGRオン条件が成立したか否かを判断する。すなわち、EGR弁18を開弁させるための条件が成立しているか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ1020へ移行し、ステップ1020及びステップ990の処理を実行する。
【0235】
一方、ステップ960の判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ970へ移行し、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLをそれぞれ取り込む。
【0236】
次に、ステップ980で、ECU50は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLに応じた、EGR弁18の目標開度Tegrを求める。ECU50は、この目標開度Tegrを、所定の目標開度マップ(図示略)を参照することにより求めることができる。
【0237】
そして、ステップ990で、ECU50は、目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御した後、処理をステップ900へ戻す。この場合、ECU50は、EGR弁18が目標開度Tegrへ開弁又は閉弁するようにEGR弁18へ指令することになる。
【0238】
この実施形態の上記制御によれば、ECU50は、アクセルセンサ27により検出されるアクセル開度ACCの単位時間当たりの正の変化量としてのアクセル操作速度ΔTAACCを所定の第1加速判定値K1と比較し、その比較結果によりエンジン1に加速運転が要求されていると判断したときにEGR弁18に全閉を指令し、加速運転の要求が継続していると判断したときに全閉の指令を継続し、加速運転の要求がなくなったと判断し、かつ、アクセル開度ACCが所定の加速判定値D3より小さいと判断したときに全閉の指令を解除するようにしている。また、ECU50は、EGR弁18の全閉の指令を解除するためのアクセル開度ACCの範囲を、検出されるエンジン回転速度NEに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、検出されるエンジン回転速度NEに応じて加速判定値D3を設定するようにしている。加えて、ECU50は、アクセルセンサ27により検出されるアクセル開度ACCの単位時間当たりの負の変化量としてのアクセル操作速度ΔTAACCを所定の第1減速判定値C1と比較し、その比較結果によりエンジン1に減速運転が要求されていると判断したときにEGR弁18に全閉を指令し、減速運転の要求が継続していると判断したときに全閉の指令を継続し、減速運転の要求がなくなったと判断し、かつ、アクセル開度ACCが所定の第1加速判定値D1より大きいと判断したときに全閉の指令を解除するようにしている。
【0239】
ここで、
図30に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートでは、
図30(a)に太破線で示すように、時刻t1〜t11の間で、アクセル開度ACCが変動を伴いながら比較的急速に増加し、時刻t11〜t15の間で、アクセル開度ACCが比較的緩やかに増加する。また、
図30(a)に実線で示すように、スロットル開度TAは、アクセル開度ACCの動きに遅れてアクセル開度ACCとほぼ同じ挙動で増加する。
【0240】
すなわち、
図30(a)に示すように、時刻t1で、アクセル開度ACCがある開度から増加し始め、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが急加速判定値K1より大きい正の値へ急上昇すると、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRKが「1」へ切り換わり、同図(c)に太破線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(m)が直ちに「0」となり、同図(c)に太実線で示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)が減少し始める。
【0241】
その後、
図30(a)に示すように、時刻t2で、アクセル開度ACCが一旦上げ止まると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが「0」へ戻り、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRKが「0」へ戻り、同図(c)に示すように、目標開度Tegr(m)が一旦実開度Regr(m)となり、同図(c)に示すように、EGR弁18の実開度Regr(m)が減少する。
【0242】
その後、
図30(a)に示すように、時刻t3で、アクセル開度ACCが再び増加し始め、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが再び急加速判定値K1より大きい正の値へ急上昇すると、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRKが再び「1」へ切り替わり、同図(c)に示すように、目標開度Tegr(m)が直ちに「0」となる。ここで、
図30(c)に示すように、時刻t2〜t3の間では、目標開度Tegr(m)が、一旦実開度Regr(m)となってからわずかに増大するので、実開度Regr(m)も一旦増加することになる。
【0243】
その後、
図30(a)に示すように、時刻t4〜t9にかけて、アクセル開度ACCの増加が緩やかとなり、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦低下する。しかし、アクセル操作速度ΔTAACCは、急加速判定値K1より小さく緩加速判定値K2より大きい値であることから、
図30(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRKが「0」へ戻ることはなく、同図(c)に示すように、目標開度Tegr(m)は「0」を維持し、同図(c)に示すように、実開度Regr(m)は減少を続ける。
【0244】
その後、
図30(a)に示すように、時刻t9〜t11にかけて、アクセル開度ACCが一旦減少し、再び増加すると、同図(b)に示すように、アクセル操作速度ΔTAACCが一旦負の値へ低下してから急加速判定値K1より小さく緩加速判定値K2より大きい値へ戻る。しかし、
図30(a)に示すように、アクセル開度ACCは加速判定値D3より大きいことから、同図(e)に示すように、EGRカットフラグXCEGRKは「0」へ戻ることはなく、同図(c)に示すように、目標開度Tegr(m)は「0」を維持し、同図(c)に示すように、実開度Regr(m)は減少を続け、時刻t12で全閉となる。これにより、
図30(f)に太実線で示すように、EGR率は、時刻t9から徐々に減少し始め、時刻t14を過ぎる頃に「0」となる。
【0245】
これに対し、本出願人による従前の実施例では、
図30(b)に示すように、時刻t1〜t5にかけてアクセル操作速度ΔTAACCが増減しても、同図(c)に実線で示すように、EGR弁18の目標開度Tegr(b:マップ値)に変化はない。その後、時刻t5〜t12にかけて、目標開度Tegr(b:マップ値)はエンジン回転速度NE(b)とエンジン負荷KLの変化に伴って変化することになり、EGR弁18の実開度Regr(b)は時刻t7以降で減少することになる。また、
図30(f)に実線で示すように、EGR率(b)は、時刻t11〜t15にかけて、一旦増加してから遅れて減少することになる。
【0246】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第1実施形態における減速運転時に係る作用効果に加え、加速運転時には次のような作用効果を得ることができる。すなわち、ECU50は、アクセル開度ACCの単位時間当たりの正の変化量としてのアクセル操作速度ΔTAACCを所定の急加速判定値K1と比較し、その比較結果により運転者によりエンジン1に加速運転が要求されていると判断したときにEGR弁18に全閉を指令し、その後、加速運転の要求が継続していると判断したときに全閉の指令をそのまま継続する。また、ECU50は、上記比較結果により加速運転の要求がなくなったと判断し、かつ、アクセル開度ACCが所定の加速判定D3より小さいと判断したときは、それまでの全閉の指令を解除するようにしている。また、その時点の実開度Regrを目標開度Tegrとして、その目標開度Tegrに基づきEGR弁18を制御するようにしている。従って、EGR弁18に全閉を指令するための加速運転の要求が、その要求の継続の判断と、その要求の消滅の判断とを前提に行われることから、加速運転の要求が応答性良く判断される。これにより、EGR弁18に対する全閉の指令が早められる。また、加速運転の要求の消滅の判断を受けて全閉の指令の解除が早められる。このため、エンジン1の加速運転の要求時に、EGR弁18を早くに全閉にしてEGRをカットし、エンジン1の加速性悪化を防止することができると共に、加速運転の要求から他の運転の要求への復帰時にEGR弁18の全閉を速やかに中断することができる。
【0247】
この実施形態で、このように加速運転の要求を速やかに判断できるのは、アクセル操作速度ΔTAACCを単に所定の急加速判定値K1と比較するようにしているからである。これができるのは、加速運転の要求を判断した後、加速運転の要求の継続と、加速運転の要求の消滅とを併せて判断するようにしているからである。また、これら要求の継続と要求の消滅を判断するために、アクセル操作速度ΔTAACCを、更に所定の緩加速鵜安定値K2と比較し、そのときのアクセル開度ACCを、更に加速判定値D3と比較することで加速運転の要求の変化を監視するようにしているからである。
【0248】
更に、一般に、加速運転時における運転者による出力要求量は、エンジン回転速度NEが高くなるほど小さくなる傾向がある。この実施形態では、加速運転の要求の消滅を判断するために、アクセル開度ACCと比較される加速判定値D3が、エンジン回転速度NEに応じてECU50により設定される。従って、加速運転の要求の消滅が、エンジン回転速度NEに応じてより適切に判断される。このため、加速運転への要求を一旦判断し、EGR弁18を全閉にした後でも、加速運転の要求の消滅を精度よく判断することができ、EGR弁18の全閉を速やかに解除することができる。
【0249】
<第11実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第11実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0250】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第10実施形態と構成が異なる。
図31に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図31のフローチャートは、
図28のフローチャートに対し、ステップ905の処理を加え、
図28のフローチャートのステップ920及びステップ1100の代わりにステップ921及びステップ1101の処理を設けた点で
図28のフローチャートと異なる。
【0251】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ900の後、ステップ905で、ECU50は、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLに応じた急加速判定値K3及び緩加速判定値K4を求める。ここで、ECU50は、例えば、
図32に示すような急加速判定値マップ、
図33に示すような緩加速判定値マップを参照することにより、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLに応じた急加速判定値K3、緩加速判定値K4をそれぞれ求めることができる。
図32及び
図33のマップでは、加速レスポンスの影響が大きい運転条件(エンジン回転速度NEが低く、エンジン負荷KLが低い条件)からのエンジン1の加速ほど、急加速判定値K3、緩加速判定値K4がそれぞれ小さくなるように設定されている。
【0252】
その後、ステップ910を経てステップ921で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが、上記求められた急加速判定値K3(正の値)よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されているものとして、ECU50は、処理をステップ1000へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されていないものとして、ECU50は、処理をステップ930へ移行する。
【0253】
一方、ステップ930から移行してステップ1101では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが、上記求められた緩加速判定値K4(正の値:K4<K3)よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への急加速運転の要求が若干弱くなったものの依然として緩加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ1020へ移行する。一方、この判断結果が肯定となる場合、エンジン1への急加速運転の要求が一旦なくなったものとして、ECU50は、処理をステップ1110へ移行する。
【0254】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第10実施形態における作用効果に加えて次のような作用効果を得ることができる。すなわち、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCの正の変化量と比較される、加速判定のための急加速判定値K3及び緩加速判定値K4を、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに応じて設定するようにしている。特に、この実施形態では、加速応答性への影響が大きい運転条件(エンジン回転速度NEが低く、エンジン負荷KLが低い条件)からのエンジン1の加速ほど、急加速判定値K3、緩加速判定値K4をそれぞれ小さく設定するようにしている。従って、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLの違いに応じた応答性でEGR弁18に全閉が指令される。このため、エンジン1の加速運転時に、吸気中のEGR率を不用意に増大させることなくより速やかに低減することができ、過剰なEGRガスに起因する加速性能の悪化を防止することができる。
【0255】
<第12実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第12実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0256】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第6実施形態と構成が異なる。
図34に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図34のフローチャートは、
図17のフローチャートのステップ110、ステップ120、ステップ180、ステップ200、ステップ220、ステップ230、ステップ435及びステップ490の代わりに、ステップ115、ステップ125、ステップ185、ステップ205、ステップ225、ステップ235、ステップ436及びステップ495の処理を設けた点で
図17のフローチャートと異なる。これにより、
図17のフローチャートでは、エンジン1の減速運転の要求を判断するように構成したが、
図34のフローチャートでは、エンジン1の加速運転の要求を判断するように構成している。
【0257】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ100から移行してステップ115では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の急加速判定値K1(正の値)よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されているものとして、ECU50は、処理をステップ436へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されていないものとして、ECU50は、処理をステップ125へ移行する。
【0258】
ステップ436では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCに応じたEGR弁18の閉弁速度EGRcspdを求める。ECU50は、この閉弁速度EGRcspdを、例えば、
図35に示すような閉弁速度マップを参照することにより求めることができる。
図35のマップは、アクセル操作速度ΔTAACCが正の値で大きくなるほど、すなわちアクセル操作速度ΔTAACCの絶対値が大きくなるほど、EGR弁18の閉弁速度EGRcspdが下限値と上限値との間で大きくなるように設定されている。
【0259】
その後、ステップ440以降の処理において、ECU50は、ステップ185で、EGRカットフラグXCEGRKを「1」に設定し、ステップ495で、EGRカットフラグXCEGRKを「0」に設定する。
【0260】
一方、ステップ115から移行してステップ125では、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRKが「0」であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、EGRがカットされていることから、ECU50は、処理をステップ205へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ130へ移行する。
【0261】
そして、ステップ205では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の緩加速判定値K2(正の値:K2<K1)よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への急加速運転の要求が若干弱くなったものの依然として緩加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ436へ移行し、上記と同様にステップ436以降の処理を実行する。
【0262】
一方、ステップ205の判断結果が肯定となる場合、エンジン1への急加速運転の要求がなくなったものとして、ステップ210で、ECU50は、アクセル開度ACCを取り込む。その後、ステップ225で、ECU50は、アクセル開度ACCが加速判定値D3よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への加速運転の要求が弱くなったものの依然として緩加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ436へ移行し、上記と同様にステップ436以降の処理を実行する。
【0263】
一方、ステップ225の判断結果が肯定となる場合、運転者による急加速運転の要求がなくなり、急加速運転から他の運転(定常運転又は減速運転を含む。)へ切り換わったものとして、ステップ235で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRKを「0」に設定し、処理をステップ130へ移行する。
【0264】
この実施形態の上記制御によれば、第6実施形態と異なり、ECU50は、エンジン1に加速運転が要求されていると判断されてEGR弁18に全閉を指令するときの全閉指令条件を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するとき、閉弁速度EGRcspdに基づいてEGR弁18を閉弁させると共に、その閉弁速度EGRcspdを、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。また、ECU50は、EGR弁18を全閉とする過程で検出されるEGR弁18の実開度Regrが所定
の小開度E以下となったときに、閉弁速度EGRcspdを所定の
最小閉弁速度EGRcspdminに設定するようにしている。
【0265】
ここで、
図36に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートでは、
図36(c)に示す「EGR弁開度」を除き、各種パラメータの挙動は、
図30のそれとほぼ同じである。このタイムチャートで、
図30のタイムチャートと異なり特徴的なのは、時刻t1〜t12の間における実開度Regr(m)の挙動にある。すなわち、
図36(c)に太線で示すように、時刻t1〜t12で、実開度Regr(m)の傾き、すなわちEGR弁18の閉弁速度が、同図(b)に示すアクセル操作速度ΔTAACCに応じて変化している。
【0266】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第6実施形態と異なり、エンジン1に加速運転が要求されているときに次のような作用効果を得ることができる。すなわち、一般に、エンジン1の加速運転の要求は、アクセル操作速度ΔTAACCが正の値で大きいほど(絶対値としては大きいほど)強くなる傾向がある。ここで、ECU50により、加速運転が要求されていると判断されたとき、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて閉弁速度EGRcspdが設定される。そして、その閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。従って、加速運転が要求され、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるときは、その運転要求の強さに応じて設定された閉弁速度EGRcspdに基づいてEGR弁18が全閉へ向けて閉弁される。すなわち、緩加速時には緩い閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁され、急加速時には急速な閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18が全閉へ向けて閉弁されることになる。このため、エンジン1の加速運転時に、その加速運転の要求の強さに応じた適度な速度でEGR弁18を全閉へ向けて閉弁することができ、EGRをカットすることができる。また、例えば、機構的に閉弁速度の速いEGR弁18においては、緩加速時には緩い閉弁速度EGRcspdによりEGR弁18を閉弁できることから、EGR弁18を過剰に閉弁させることがない。
【0267】
また、この実施形態によれば、EGR弁18の実開度Regrが、所定
の小開度E以下の小さい開度になると、EGR弁18が最小閉弁速度EGRcspdminで全閉へ向けて閉弁される。このため、弁体32が弁座33に勢いよく着座することがなく、弁体32と弁座33との着座による衝撃と打音を低減することができる。
【0268】
また、この実施形態によれば、EGRオン条件が成立しないときは、EGR弁18が最大閉弁速度EGRcspdmaxで全閉へ向けて閉弁される。このため、EGRオン条件が不成立のときには、最速でEGRをカットすることができる。
【0269】
<第13実施形態>
次に、本発明におけるエンジンの排気還流装置を過給機付きエンジンに具体化した第13実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0270】
この実施形態では、EGR制御の処理内容の点で第7実施形態と構成が異なる。
図37に、この実施形態のEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。
図37のフローチャートは、
図20のフローチャートに対し、ステップ115、ステップ125、ステップ137、ステップ195、ステップ205、ステップ215、ステップ225、ステップ235、ステップ245、ステップ705、ステップ715、ステップ725、ステップ735、ステップ746、ステップ755、ステップ765及びステップ775の処理の点で異なる。これにより、
図20のフローチャートでは、エンジン1の減速運転の要求を判断するように構成したが、
図37のフローチャートでは、エンジン1の加速運転の要求を判断するように構成している。
【0271】
すなわち、このルーチンにおいて、ステップ100から移行してステップ115では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の急加速判定値K1(正の値)よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されているものとして、ECU50は、処理をステップ705へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、エンジン1に急加速運転が要求されていないものとして、ECU50は、処理をステップ125へ移行する。
【0272】
ステップ115から移行してステップ705では、ECU50は、初期設定フラグXTegrcs2が「0」か否かを判断する。すなわち、ECU50は、EGR弁18の目標閉弁開度Tegrc(i)を初期設定するか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は処理をステップ715へ移行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ746へジャンプする。
【0273】
ステップ715では、ECU50は、EGR弁18の実開度Regrを取り込む。次に、ステップ725で、ECU50は、取り込んだ実開度Regrを目標閉弁開度Tegrc(i)として設定する。次に、ステップ735で、ECU50は、初期設定フラグXTegrcs2を「1」に設定する。
【0274】
また、ステップ705又はステップ735から移行してステップ746では、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCに応じたEGR弁18の目標減衰値EGRcαを求める。ECU50は、この目標減衰値EGRcαを、例えば、
図38に示すような目標減衰値マップを参照することにより求めることができる。
図38のマップは、アクセル操作速度ΔTAACCが大きくなるほど、すなわちアクセル操作速度ΔTAACCの絶対値が大きくなるほど、目標減衰値EGRcαが下限値と上限値との間で大きくなるように設定されている。
【0275】
次に、ステップ755で、ECU50は、EGR弁18の目標閉弁開度Tegrc(i)を求める。すなわち、ECU50は、前回求められた目標閉弁開度Tegrc(i-1)から目標減衰値EGRcαを減算することにより、今回の目標閉弁開度Tegrc(i)を求める。
【0276】
次に、ステップ765で、ECU50は、今回求められた目標閉弁開度Tegrc(i)が「0」以上であるか否かを判断する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ170へ移行し、ステップ170、ステップ180、ステップ195及びステップ160の処理を実行する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ775へ移行する。
【0277】
ここで、ステップ195では、ECU50は、今回求められた目標閉弁開度Tegrc(i)を目標開度Tegrとして設定する。
【0278】
また、ステップ775では、ECU50は、目標閉弁開度Tegrc(i)を「0」に設定し、処理をステップ170へ移行する。
【0279】
一方、ステップ115の判断結果が肯定となる場合、ステップ125で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRKが「0」であるか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、EGRがカットされていることから、ECU50は、処理をステップ205へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ130へ移行する。
【0280】
ステップ115の判断結果が一旦否定(急加速運転要求)となった場合でも、その直後にアクセル操作速度ΔTAACCが変動することがあり、ステップ115の判断結果が肯定に切り換わることがある。この場合、直前にEGRカットフラグXCEGRKが「1」に設定されていることから、ステップ125の判断結果が否定となり、ECU50は、処理をステップ205へ移行する。
【0281】
そして、ステップ205で、ECU50は、アクセル操作速度ΔTAACCが所定の緩加速判定値K2(正の値:K2<K1)よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への急加速運転の要求が若干弱くなったものの依然として加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ746へ移行し、上記と同様にステップ746以降の処理を実行する。
【0282】
一方、ステップ205の判断結果が肯定となる場合、エンジン1への急加速運転の要求がなくなったものとして、ステップ215で、ECU50は、アクセル開度ACCを取り込む。その後、ステップ225で、ECU50は、アクセル開度ACCが加速判定値D3よりも小さいか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、直前よりもエンジン1への加速運転の要求が弱くなったものの依然として緩加速運転の要求が継続しているものとして、ECU50は、処理をステップ746へ移行し、上記と同様にステップ746以降の処理を実行する。
【0283】
一方、ステップ225の判断結果が肯定となる場合、運転者による急加速運転の要求がなくなり、急加速運転から他の運転(定常運転又は減速運転を含む。)へ切り換わったものとして、ステップ23
5で、ECU50は、EGRカットフラグXCEGRKを「0」に設定する。
【0284】
次に、ステップ245で、ECU50は、初期設定フラグXTegrcs2を「0」に設定した後、処理をステップ130へ移行する。
【0285】
また、ステップ130で、EGRオン条件が成立していない場合、ステップ137で、ECU50は、目標閉弁開度Tegrc(i)を「0」に設定し、処理をステップ195へ移行する。
【0286】
この実施形態の上記制御によれば、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するときの全閉指令条件を、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて設定するようにしている。詳しくは、ECU50は、EGR弁18に全閉を指令するとき、目標閉弁開度Tegrc(i)に基づいてEGR弁18を全閉へ向けて閉弁させると共に、目標閉弁開度Tegrc(i)を、アクセル操作速度ΔTAACCの推移に応じて減衰させるようにしている。
【0287】
ここで、
図39に上記制御に関する各種パラメータの挙動の一例をタイムチャートにより示す。このタイムチャートでは、
図39(c)に示す「EGR弁開度」を除き、各種パラメータの挙動は、
図30、
図36のそれとほぼ同じである。このタイムチャートで、
図30、
図36のタイムチャートと異なり特徴的なのは、時刻t1〜t12の間における目標閉弁開度Tegrc(i)と実開度Regr(m)の挙動にある。すなわち、
図39(c)に太破線で示すように、時刻t1〜t12で、目標閉弁開度Tegrc(i)の傾き、すなわちEGR弁18の閉弁速度が、同図(b)に示すアクセル操作速度ΔTAACCに応じて変化している。また、この目標閉弁開度Tegrc(i)の変化に少し遅れて実開度Regr(m)が同じような傾きで変化している。
【0288】
以上説明した本実施形態におけるエンジンの排気還流装置によれば、前記第7実施形態とは異なり次のような作用効果を得ることができる。すなわち、ECU50は、加速運転が要求されていると判断したとき、アクセル操作速度ΔTAACCに応じて目標減衰値EGRcαを求め、その目標減衰値EGRcαから目標閉弁開度Tegrc(i)を更に求め、その目標閉弁開度Tegrc(i)に基づいてEGR弁18を全閉に指令するようにしている。一般に、アクセル操作速度ΔTAACCの推移は、初めに大きく、後になるほど小さくなる。従って、ECU50によりEGR弁18に全閉が指令されるとき、目標閉弁開度Tegrc(i)は、初めに大きく減衰され、後になる
ほど小さく減衰されるので、EGR弁18が全閉へ向けて閉弁されるときは、後になるほど緩やかに閉弁される。このため、加速運転の要求の強さの推移に応じた適正な速度でEGR弁18を全閉へ向けて閉弁することができ、EGRをカットすることができる。
【0289】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して次のように実施することもできる。
【0290】
(1)前記各実施形態では、アクセル開度ACCを、運転者によるエンジン1の出力要求量とし、そのアクセル開度ACCを検出するアクセルセンサ27を出力要求量検出手段として使用した。これに対し、アクセル開度ACCに基づいて制御される電子スロットル装置14のスロットル開度TAをエンジンの出力要求量とし、そのスロットル開度TAを検出するスロットルセンサ23を出力要求量検出手段として使用することもできる。また、ハイブリッド自動車では、アクセル開度ACCに基づいて設定される目標トルクを出力要求量とし、その目標トルクを設定するコントローラを出力検出手段として使用することができる。
【0291】
(2)前記第4実施形態では、EGR弁18を全閉から目標開度Tegrへ向けて開弁するとき、EGR弁18を緩やかに徐々に開弁するために、初期目標開度Tegrs(i)を所定値αずつ徐々に増加するように構成した。これに対し、同様の場合、EGR弁の開弁速度を緩やかな速度に設定するように構成することもできる。
【0292】
(3)前記各実施形態では、本発明を、エンジン1の吸気通路3と排気通路5との間に設けられ、吸気通路3における吸気を昇圧させる過給機7を備え、EGR通路17の入口17bを過給機7のタービン9より上流の排気通路5に接続し、EGR通路17の出口17aをスロットル弁21より下流にてサージタンク3aに接続してなるEGR装置に具体化した。これに対し、この発明を、過給機を備え、EGR通路の入口を過給機のタービンより下流の排気通路に接続し、EGR通路の出口を過給機のコンプレッサより上流の吸気通路に接続してなるEGR装置に具体化することもできる。
【0293】
(4)前記各実施形態では、本発明のEGR装置を過給機7を備えたエンジン1に具体化したが、本発明のEGR装置を過給機を備えていないエンジンに具体化することもできる。