【実施例1】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中の部、及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0051】
(実施例1)
<基紙の作成>
LBKP100部(カナディアンスタンダードフリーネス:CSF=560ml)を用いて調製したパルプスラリーに、パルプ100部に対し、カチオン澱粉1.0部、タルク5.0部、酸性ロジンサイズ剤0.2部、液体硫酸バンド1.0部を添加し、調製した紙料を円網式抄紙機で抄紙し、原紙を得た。上記原紙上に酸化澱粉(商品名:王子エースA、王子コンスターチ社製)6%をサイズプレスにより乾燥塗工量が片面当たり1.5g/m
2となるようにオンマシンで両面に塗布し、シリンダードライヤーで乾燥することで基紙を得た。ここで得られた基紙の坪量は100g/m
2であった。
<塗工液の調製>
軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)50部と、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.5μm)50部とを水に添加し、コーレス分散機にて乾燥固形分濃度で20%の顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーにスチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)12部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ社製)1部、中空プラスチックピグメント(商品名:AE−852、JSR社製)4部を順次、添加・攪拌し、更に水を添加して濃度を調整することで乾燥固形分濃度が25%の塗工液を得た。
<塗工層の形成>
基紙の両面に、片面当たりの塗工量が固形分換算で11g/m
2となるようにエアナイフコーターで塗工液を塗工し、エアードライヤーで熱風乾燥して印刷用塗工紙を得た。得られた印刷用塗工紙の坪量は122g/m
2であった。
【0052】
(実施例2)
塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)50部を、軽質炭酸カルシウム(商品名:TP−221GS、奥多摩工業社製、体積平均粒子径:0.49μm)50部に変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0053】
(実施例3)
塗工液の調製において、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.5μm)50部を、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1200、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.8μm)50部に変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0054】
(実施例4)
塗工液の調製において、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.5μm)50部を、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1800、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.25μm)50部に変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0055】
(実施例5)
塗工液の調製において、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)の配合量を13部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ社製)の配合量を2部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0056】
(実施例6)
塗工層の形成において、塗工液の塗工量を基紙の片面当たり固形分換算で13g/m
2と変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0057】
(実施例7)
塗工層の形成において、塗工液の塗工量を基紙の片面当たり固形分換算で8g/m
2と変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0058】
(実施例8)
塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)の配合量を40部とし、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.5μm)の配合量を60部とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0059】
(実施例9)
塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)の配合量を60部とし、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.5μm)の配合量を40部とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0060】
(実施例10)
塗工液の調製において、中空プラスチックピグメント(商品名:AE−852、JSR社製)の配合量を8部とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0061】
(実施例11)
塗工液の調製において、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)12部を、アクリル共重合樹脂(商品名:モビニール735、クラリアントポリマー社製)12部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0062】
(実施例12)
塗工液の調製において、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)12部を、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス(商品名:Nipol SX1503、日本ゼオン社製)12部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0063】
(比較例1)
塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)の配合量を100部とし、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、白石カルシウム社製、体積平均粒子径:1.5μm)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0064】
(比較例2)
塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)を配合せず、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、備北粉化工業社製、体積平均粒子径:1.5μm)の配合量を100部とした以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0065】
(比較例3)
塗工液の調製において、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、備北粉化工業社製、体積平均粒子径:1.5μm)50部を、カオリン(商品名:KAOFINE、白石カルシウム社製、粒子径:2μm>が95〜100%)50部に変更した以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0066】
(比較例4)
塗工液の調製において、重質炭酸カルシウム(商品名:ソフトン1500、備北粉化工業社製、体積平均粒子径:1.5μm)50部を、重質炭酸カルシウム(商品名:SETACARB−HG、白石カルシウム社製、粒子径:1μm未満が90%以上)50部に変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0067】
(比較例5)
塗工液の調製において、軽質炭酸カルシウム(商品名:ブリリアント15、白石工業社製、体積平均粒子径:0.15μm)50部を、軽質炭酸カルシウム(商品名:白艶華PZ、白石工業社製、体積平均粒子径3.3μm)50部に変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0068】
(比較例6)
塗工液の調製において、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)の配合量を13部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ社製)の配合量を3部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0069】
(比較例7)
塗工液の調製において、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)の配合量を1部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ社製)の配合量を12部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0070】
(比較例8)
塗工液の調製において、スチレン−ブタジエン系ラテックス(商品名:L−1432、旭化成ケミカルズ社製)の配合量を13部とし、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−117、クラレ社製)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0071】
(比較例9)
塗工液の調製において、中空プラスチックピグメント(商品名:AE−852、JSR社製)を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして印刷用塗工紙を得た。
【0072】
各実施例で得られた印刷用塗工紙の構成を
図1に、各比較例で得られた印刷用塗工紙の構成を
図2に、各実施例で得られた印刷用塗工紙の物性及び評価結果を
図3に、各比較例で得られた印刷用塗工紙の物性及び評価結果を
図4に、それぞれ示した。尚、
図3,4中の各物性の測定及び評価についてはそれぞれ以下の方法で行った。
【0073】
<DRYピック>
RI印刷機(明製作所製)を用いて、プロセスインキ 墨(TV15、東洋インキ社製)を0.4cc使用し、60rpmの印刷速度で5回刷りした後にゴムロールに付着した塗工層からの脱落物や原紙層からの繊維の脱落状況を観察し、塗工層強度として以下の3段階で評価した。
○:非常に良好(ゴムロール上に付着物が見られず、合格)
△:良好(ゴムロール上に付着物が散見されるが実用に供する範囲であり、合格)
×:不良(ゴムロール上に付着物が多く見られ、不合格)
【0074】
<WETピック>
RI印刷機(明製作所製)を用いて、プロセスインキ 墨(TV15、東洋インキ社製)を0.4cc使用し、60rpm相当の印刷速度で手動1回刷りした後にゴムロールに付着した塗工層からの脱落物や原紙層からの繊維の脱落状況を観察し、塗工層強度として以下の3段階で評価した。尚、この際に、均一に水分を持たせたモルトンロールに印刷用塗工紙が付着するようにして、印刷用塗工紙上に10秒程度モルトンロールを接触保持した後にゴムロール上のインキを転写させるような工程とした。
○:非常に良好(ゴムロール上に付着物が見られず、合格)
△:良好(ゴムロール上に付着物が散見されるが実用に供する範囲であり、合格)
×:不良(ゴムロール上に付着物が多く見られ、不合格)
【0075】
<インキセット性>
RI印刷機(明製作所製)を用いて、プロセスインキ 紅(東洋インキ社製)を0.4cc使用し、30rpmの印刷速度で1回刷りした後に、その印刷用塗工紙上のインキに転写紙(ミューコートネオス、北越紀州製紙社製)を、印刷直後から30秒後、60秒後、90秒後に印刷機のゴムロールと金属ロールに圧胴させて転写させた。
○:非常に良好(転写紙へのインキの転移が殆どなく、合格)
△:良好(転写紙へのインキの転移が少し認められるが、実用に供する範囲であり合格)
×:不良(転写紙へのインキの転移が多く、不合格)
【0076】
<インキ着肉性>
RI印刷機(明製作所製)を用いて、プロセスインキ 藍(東洋インキ社製)を0.3cc使用し、30rpmの印刷速度で1回刷りした。その後、ベタ部でのインキ着肉性を目視評価した。
○:非常に良好(均一にインキが着肉されており、合格)
△:良好(インキの着肉がやや不均一であるが実用に供する範囲であり、合格)
×:不良(インキの着肉が不均一であり、不合格)
【0077】
<WETインキ着肉性>
RI印刷機(明製作所製)を用いて、プロセスインキ 藍(東洋インキ社製)を0.4cc使用し、30rpmの印刷速度で1回刷りをした。尚、この際に均一に水分を持たせたモルトンロールに印刷用塗工紙が付着するようにして、印刷用塗工紙上に10秒程度モルトンロールを接触保持した後にゴムロール上のインキを転写させるような工程とした。これにより、水とインキが共存した場合での印刷適性を評価できる。
○:非常に良好(印刷濃度が高く、合格)
△:良好(印刷濃度がやや低いが実用に供する範囲であり、合格)
×:不良(印刷濃度が低く、不合格)
【0078】
<白紙光沢度>
JIS P 8142:2005「紙及び板紙-75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠し、光沢度計(GM−26D/村上色彩技術研究所製)を用いて入射角75°にて印刷用塗工紙表面の光沢度を測定した。
【0079】
<印刷光沢度>
印刷用塗工紙に、RI印刷機(明製作所製)を用いて、プロセスインキ 紅(東洋インキ社製)を0.4cc使用し、30rpmの印刷速度で1回刷りをした。その後、23℃、50RH%条件下にて24時間放置してインキを乾燥させた後、JIS P 8142:2005「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に準拠し、光沢度計(GM−26D/村上色彩技術研究所製)を用いて入射角60°にて印刷面の光沢度を測定した。
【0080】
<ベック平滑度>
印刷用塗工紙の両面について、JIS P 8119に基づいて測定した。
【0081】
図3の結果からも明らかなように、実施例1〜12で得られた印刷用塗工紙は、各種印刷適性を満足し、ラフ肌でありながらも印刷光沢の高い印刷用塗工紙であった。
【0082】
比較例1で得られた印刷用塗工紙は、炭酸カルシウムとして体積平均粒子径が0.1〜0.6μmである軽質炭酸カルシウムのみを配合したため十分な塗工層強度が得られず、DRYピック及びWETピックに劣る結果となった。
【0083】
比較例2で得られた印刷用塗工紙は、炭酸カルシウムとして体積平均粒子径が1〜2μmである重質炭酸カルシウムのみを配合したため、インキセット性、インキ着肉性、WETインキ着肉性に劣る結果となり、また、ベック平滑度が低くなりすぎたことにより印刷適性も満足できないものであった。
【0084】
比較例3で得られた印刷用塗工紙は、重質炭酸カルシウムの替わりにカオリンを配合したため十分なインキセット性が得られず、ベック平滑度が高くなりすぎ、ラフ肌の印刷用塗工紙を得ることができなかった。
【0085】
比較例4で得られた印刷用塗工紙は、重質炭酸カルシウムとして体積平均粒子径が1μm未満と比較的粒径が小さいものを用いたため十分な塗工層強度が得られず、DRYピックとWETピックに劣る結果となった。
【0086】
比較例5で得られた印刷用塗工紙は、軽質炭酸カルシウムとして体積平均粒子径が3.3μmと粒子径の比較的大きいものを用いたため、ベック平滑度が低くなりすぎたことにより印刷適性を満足できず、印刷光沢にも劣るものであった。
【0087】
比較例6及び比較例7で得られた印刷用塗工紙は、スチレン−ブタジエン系ラテックスに対するポリビニルアルコールの配合量が多くなりすぎ、インキ着肉性に劣るものであった。特に、比較例7で得られた印刷用塗工紙はスチレン−ブタジエン系ラテックスの配合量が相対的に少なすぎたために塗工層強度にも劣るものとなり、DRYピックやWETピックなどの問題も見られた。
【0088】
比較例8で得られた印刷用塗工紙は、ポリビニルアルコールを配合しなかったため、WETインキ着肉性に劣るものであった。
【0089】
比較例9で得られた印刷用塗工紙は、プラスチックピグメントを配合しなかったため、印刷光沢度に劣るものであった。