【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の従来型飲料水用サーバーは、貯水タンクを通じ容器に向かって気体(空気)を導入する構造である。このため、貯水タンク内と導水管内の飲料水が頻繁に気体に触れることとなる。飲料水は、衛生上、できる限り気体に触れないことが望ましい。
【0008】
それに対し、上記特許文献2の密閉型飲料水用サーバーは、容器接続口から貯水タンクの排水口までの間に気体に触れることがないので、衛生上有利である。しかし、このサーバーは、排水のために容器内への空気供給を必要としない軟質容器専用であり、排水のために空気供給を必要とする硬質容器には使用できないという問題がある。特許文献2のような密閉型飲料水用サーバーに、硬質容器を接続することができれば便利である。
【0009】
仮に、導水管を通じた気体供給を前提としない軟質容器用サーバーに硬質容器を用いるとすると、導水管とは別経路で容器への気体供給を行う必要がある。しかし、この場合、容器内に取り入れられた気体が、サーバー設置場所の気温変化により、膨張や収縮を起こすという問題が生じ得る。
【0010】
つまり、容器内の気体は、容器内の飲料水の排水とともに増加することとなるが、この気体は設置された場所の室温により、膨張や収縮が生じる。この膨張と収縮は、貯水タンク側の飲料水に悪影響を及ぼす。容器内の気体の膨張や収縮が、貯水タンク側に影響しないようにするために、まずは、以下3つの手法が想定される。
(1)膨張した気体により押し出された水を一次保管する空間を設ける。
(2)容器の温度管理を行い気体の容積変動を抑制する。
(3)設置された容器の空気層に連通する構造を設け、変動した容積を外気に逃がす。
【0011】
これらの手法を採用した場合の問題点は、つぎのようになる。
(1)の手法は、サーバー内(貯水タンク側)に外気と通じる空間が必要であり、衛生面の確保が困難である。
(2)の手法は、容器の温度管理には多数の部品を要し大きなコスト増大となり市場の採算性に対応できない。
(3)の手法における容器の空気層とは、容器の底部に該当し接続口から最も遠い場所となり、サーバーに空気層に達する長い連通口を設けた場合容器の接続が困難となる。
【0012】
そこで、この発明は、容器への気体供給機構を持たない軟質容器用サーバー(柔軟容器用サーバー)に、気体導入が不可欠な硬質容器(柔軟容器)を接続し使用可能にすることを第一の課題とし、また、軟質容器用サーバーと硬質容器との接続が、容易行えるようにすることを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第一の課題を解決するにあたり、従来の硬質容器用サーバーと軟質容器用サーバーの違いを克服する必要がある。従来の硬質容器用サーバーの構造は、貯水タンクに外気と連通する通気口が存在することである。この通気口が、サーバーの衛生面確保に大きな障害ではあるが、以下の3つの理由により必要とされ、従来から存在している。
【0014】
(1)硬質容器は、容器内の飲料水が貯水タンク側へ落下すると容器内が負圧になるが、通気口が専用に設けられていないため、貯水タンクが滞留交換部(貯水タンク及び貯水タンクから伸びる導水管が兼用)となり水と空気を交換する構造となっていたため、外気との空気の通路が必要であった。
(2)硬質容器内の気体(空気)が、設置された室温変化により、膨張又は収縮がおこる。この容積変動を吸収するため必要であった。
(3)サーバー内の貯水タンクは、冷却・過熱される構造であり、貯水された飲料水に膨張・収縮された容積変動を吸収するため必要であった。
上記3つの作用を克服するアダプタの発明が必要となる。アダプタは、上記3つの作用を克服し、硬質容器と軟質容器用サーバーとを接続する。
【0015】
また、上記第二の課題を解決するにあたり、以下の2つの問題が想定される。
(1)前記アダプタの使用性について、当然容易に接続できる必要もあるが、接続部位の止水性の他、アダプタを取り付け後サーバーに接続する為には、通気口の止水性が必要となる。容器は接続時に接続部を下にするため、通気口に止水構造が無いと水が漏れてしまう。また、サーバーへの接続口も同様である。
(2)前記アダプタの衛生面の確保として、たまり水が起きない構造である他、繰り返し使用することが想定されるため、定期交換が必要となる、そのため、コストの抑制も大きな課題となる。
【0016】
上記第一の課題を解決するために、この発明は、サーバーに接続する前の状態で、事前に硬質容器に本件アダプタをセットし、その上で軟質容器用サーバーに接続するものとした。アダプタには、前記容器の内と外をつなげる2本の管が設けられる。
内外をつなぐ2本の管のうち、一方は、容器内とサーバーをつなぐ目的の給水管として、容器内の水をサーバーに流し込むためのものであり、その一端はサーバーの導水管に接続できる構造である。他端は容器の残水を抑制するため、前記容器の口部から最も近い部分に開放する。
もう一方の管は、容器内と容器外をつなぐ目的の通気管とし、その一端は容器外の大気に開放されフィルタ等により衛生面を確保し、他端は容器使用時に空気層が最も早く介在する口部から遠い部分の容器底部に開放する。
【0017】
すなわち、給水管を通じて容器内の飲料水が流下すると、容器内の負圧を解消する為に通気管を通じて容器に気体が流入することができ、2本の管が滞留交換部の役割をはたす事が出来るので、第一の課題の(1)が解決できる。
さらに、通気管の容器内の他端は給水管の他端よりも容器の口栓からも遠い部分である底面近く(サーバーセット時は上端部となる口部から遠い部分)に開放させたのは、容器内に入り込んだ気体が膨張、収縮するのに対し、その膨張、収縮が、飲料水及び貯水タンクを含む飲料水サーバー全体に圧力的影響を与えないようにするためである。すなわち、容器内に入り込んだ気体(底面付近に滞留した空気)が室温等の変化により膨張、収縮しても、容器底面に開放された通気管を通じて気圧は大気圧と同等に調整されるからである。
これにより、第一の課題の(2)が解決でき、また、第一の課題の(3)のサーバー内の加熱と冷却による水容積の変化にも同様に解消できる。
このような構造とすれば、サーバー内部の、貯水タンクを経由せずに、外部から直接容器に向かって気体を導入する機能を備えることができる。給水管と通気管の2本の管体で飲料水用サーバーと容器とを接続することができるので、構造が簡素でメンテナンスも容易な構造とすることができる。
【0018】
すなわち、本件発明の具体的構成としては、飲料水を収容した容器と、その容器が着脱可能でありその容器内の飲料水が貯水タンク内へ流下するようになっている飲料水用サーバーと前記容器とを接続するものであって、前記容器内に、一端が前記貯水タンク側に通じる給水管の他端と、一端が前記容器外の大気に開放された通気管の他端とが挿入され、前記通気管の他端は前記給水管の他端よりも前記容器の口部から遠い部分に位置し、前記容器内が負圧状態となった際に前記通気管から前記容器内に気体が侵入し、その気体の侵入により前記容器内の飲料水が前記貯水タンク内へ流下するようにし、飲料水の流下のため容器内に気体が侵入することを条件とした硬質容器を、飲料水の流下のため容器内に気体が侵入することを条件としない軟質容器用飲料水用サーバーに利用可能とした飲料水用サーバーと容器の接続用アダプタを採用する。
【0019】
次に、上記第二の課題を解決するために、この発明は、前記通気管の容器内の他端に、前記容器内が大気よりも与圧の場合に閉鎖し、前記容器内が負圧及び大気と同等圧の場合に開放される通気用開閉弁が設けられている構成を採用した。通気用開閉弁が設けられていることにより、室温等の変動により前記容器内に介在する気体が膨張・収縮しても常に容器内を大気圧と同等圧に保つことができる。
【0020】
通気用開閉弁を設けたことにより、容器にアダプタを挿入した状態、また、その容器を傾けたり、横向けにしたり、さらには、サーバー接続のため上下逆さまにした場合であっても、容器内が与圧であれば通気用開閉弁が閉じるので、通気管を通じて飲料水がこぼれない。つまり、容器内の通気管の他端が飲料水に浸かった状態は、大気圧よりも高い与圧であるため、飲料水が通気管に進入しようとすると閉鎖され飲料水が侵入できない状態となる。また、容器の飲料水が給水管を通じサーバーに流下する際は、容器内が負圧となるため、通気用開閉弁は開放され必要な吸気が行われる。
そして、飲料水用サーバーへの接続状態において、容器が満水状態では通気用開閉弁は飲料水に浸水状態であり閉鎖され水をこぼさず、飲料水の使用が進み、通気用開閉弁が容器内の空気層に開放された場合は、大気と同等圧のために通気用開閉弁は開放される。室温変化等によるゆるやかな圧力変動時には、通気用開閉弁は常時開放状態となり、容積変動を外気と連動して調整する。
【0021】
これらの各構成において、前記通気管の一端側にフィルタが設けられている構成を採用することができる。通気管の一端側にフィルタが設けられていれば、容器内に供給される気体を清浄することができる。なお、フィルタは通気管の一端又は一端に向かう途中に設けられていてもよいし、その通気管の一端へ通じる別部材に取付けられていてもよい。
【0022】
また、これらの各構成において、前記給水管の一端に、前記貯水タンク側への非接続時には閉鎖し、前記貯水タンク側への接続時には開放される給水用開閉弁が設けられている構成を採用することができる。
【0023】
給水用開閉弁を設けたことにより、例えば、容器に通気管や給水管を挿入した後に、その容器を傾けたり、横向けにしたりさらには、サーバー接続のため逆さまにした場合であっても、給水管を通じて飲料水がこぼれない。また、前記貯水タンク側への接続後は、容器内の飲料水の落下を妨げない構造とすることができる。
【0024】
上記の通気管用開閉弁と給水管用開閉弁を設けることにより、第二の課題における使用性及び使用時の漏水問題が解決でき、さらに、このようなシンプルな弁体の組み合わせ構造を用いればコストの増大も抑制でき、定期的な交換や使い捨ても可能となる。
【0025】
なお、上記の通気管、給水管(その通気管、給水管を支持する部材を含む)は、容器と貯水タンクとの間に介在することで、飲料水用サーバーの機能の一部を担うアダプタであるが、これらの部材をサーバー内部の導水管と貯水タンクの間に組み込んだサーバーの一部として使用することもできる。
【0026】
すなわち、その構成は、一端が前記貯水タンク側に通じ他端が前記容器内に挿入可能な給水管と、一端が前記容器外の大気に開放され他端が前記容器内に挿入可能な通気管とを備え、前記給水管と前記通気管とを前記容器の口部を通じて容器内へ挿入することでその容器に取付可能であり、前記容器への取付状態で、前記通気管の他端は前記給水管の他端よりも前記容器の口栓から遠い部分に位置するようになっており、前記給水管の一端は飲料水用サーバーの前記貯水タンクへ通じる導水管に接続された飲料水用サーバーである。
【0027】
また、上記の各構成からなるアダプタを、飲料水を収容した容器に予め取付けた状態で流通、販売等することも可能である。
【0028】
すなわち、その構成は、一端が前記貯水タンク側に通じ他端が前記容器内に挿入された給水管と、一端が前記容器外の大気に開放され他端が前記容器内に挿入された通気管とを備え、前記通気管の他端は前記給水管の他端よりも前記容器の口栓から遠い部分に位置するようになっており、前記給水管の一端は飲料水用サーバーの前記貯水タンクへ通じる導水管に接続可能である飲料水用容器である。