特許第6041763号(P6041763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041763
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ内蔵の車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20161206BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60R21/207
   B60N2/42
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-151452(P2013-151452)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-20649(P2015-20649A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100179855
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 えりか
(74)【代理人】
【識別番号】100086195
【弁理士】
【氏名又は名称】藁科 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】牧田 直之
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−068198(JP,A)
【文献】 特開2011−056979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートクッションの後端に設けられたシートバックとを備え、
シートバックは、前方に延出した左右のサイドフレームを持つシートバックフレームにパッドを被せてシートバック本体とし、複数のトリムカバー片を縫合した縫合部を持つトリムカバーでシートバック本体を被覆して形成され、
インフレータを内包するエアバッグを車壁側のサイドフレームに取付けてシートバックの側部の空間に内蔵し、側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータにおいて高圧ガスが発生してエアバッグに噴射され、エアバッグが車壁側でシートバックの側部前方寄りに位置するトリムカバーの縫合部を開放し、車壁側で着座者の側方の前方寄りに展開して着座者を車壁から隔離し保護するサイドエアバッグ内蔵の車両用シートにおいて、
エアバッグ車壁側のサイドフレームの内側に取付けるとともにエアバッグの内側に展開規制板を設けて、車壁側のサイドフレーム、展開規制板でエアバッグを挟み込み、
車壁側のトリムカバーの縫合部に至るガイド溝がパッドに形成され、
エアバッグの全面を覆うとともに、ガイド溝に収納されて延ばされ、ガイド溝の出口で車壁側のトリムカバーの縫合部に組み込まれた展開規制布で、エアバッグの展開の出口を制限したサイドエアバッグ内蔵の車両用シート。
【請求項2】
展開規制布は一体に成形された本体、導管片を有し、本体は袋状に縫製されてエアバッグに被せられてその全面を覆い、
導管片はその一端が本体の前面に連通され、他端がパッドのガイド溝に収納されて延ばされ、ガイド溝の出口でトリムカバーの縫合部に組み込まれている請求項記載のサイドエアバッグ内蔵の車両用シート。
【請求項3】
展開規制布は本体、導管片を有し、本体、導管片は縫合によって一体化され、本体は袋状に縫製されてエアバッグに被せられてその全面を覆い、
導管片はその一端が本体の前面に連通され、他端がパッドのガイド溝に収納されて延ばされ、ガイド溝の出口でトリムカバーの縫合部に組み込まれている請求項記載のサイドエアバッグ内蔵の車両用シート。
【請求項4】
展開規制布が力布を素材として成形された請求項1〜3のいずれか記載のサイドエアバッグ内蔵の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックの側部にエアバッグ(サイドエアバッグ)を内蔵した車両用シート(サイドエアバッグ内蔵の車両用シート)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、シートクッションと、シートクッション後端にその下端が連結されたシートバックとを備え、通常、シートバックはリクライニング装置のもとで傾動可能に設けられている。
シートバックは、衝撃吸収材としてのSばねなどのばね組体をその内部に架設したフレーム(シートバックフレーム)に、発泡材から成形されたパッド(シートパッド)を被せたシートバック本体をトリムカバー(表皮)で被覆して形成されている。
【0003】
車両の側面衝突時などに着座者とドアなどの車室側壁(車壁)との間にシートバックの車壁側の側部からエアバッグを車壁側に膨出、展開させて着座者の受ける衝撃を軽減して着座者を保護するエアバッグ内蔵の車両用シートが広く知られている。
この種の車両用シートにおいては、トリムカバーのたとえば2枚のトリムカバー片(前身頃、後身頃)はシートバックの側部前方寄りで縫合されるとともに、エアバッグ(サイドエアバッグ)の配置、内蔵される空間が車壁側のトリムカバーの縫合部の後方でシートバックの側部のパッドに形成されている。
【0004】
エアバッグ(サイドエアバッグ)はインフレータと称される起動装置(ガス発生装置)を内包してインフレータの前方にその本体を折り畳んで略直方体のケースに収納され、シートバックフレームの車壁側のサイドフレームに固定されてパッドの空間(シートバックの側部空間)に配置、内蔵されている。そして、側面衝突などによる衝撃を衝撃センサが検出すると、インフレータにおいてガス(高圧ガス)が発生してエアバッグに噴射され、エアバッグがパッドを破砕し、シートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部を開放して車壁側で着座者の側方の前方寄りに展開(膨出)して着座者を車壁から隔離し保護する。なお、トリムカバーの縫合部に至るエアバッグの経路を容易に確保できるように、通常、トリムカバーの縫合部に隣接するパッドは肉薄に成形されている。
【0005】
通常、シートバックフレームは、いずれも鋼板、鋼管などの鋼材からなる上下のアッパーフレーム、ロアフレーム、左右のサイドフレームを互いに連結して平面視略矩形形状に成形され、左右のサイドフレームは前方向に延出して形成されている。
【0006】
たとえば、特開2009−035089号公報の図3からもわかるように、エアバッグは、車壁側においてシートバックの外側、詳細にいえば、シートバックフレームの車壁側のサイドフレームの外側に固定されて、シートバックの側部空間に内蔵されている。エアバッグが車壁側のサイドフレームの外側に固定され、エアバッグの内側にサイドフレームが位置するため、着座者側へのエアバッグの展開が内側のサイドフレームによって規制(抑制、邪魔)されて、シートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部に向かう所定の経路(展開経路)に沿ってエアバッグが展開される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−035089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、エアバッグ内蔵の車両用シートにおいては、エアバッグは、車壁側のサイドフレームの外側に設けられており、エアバッグの内側に位置するサイドフレームによって着座者側へのエアバッグの展開が規制(抑制、邪魔)され、車壁側でトリムカバーの縫合部に向かう所定の経路に沿ってエアバッグが展開される。しかしながら、車壁側のサイドフレームの外側でエアバッグのための空間がパッドに形成され、その空間に内蔵したエアバッグをパッドで覆ってトリムカバーで被覆するため、エアバッグのある車壁側でシートバックの側部が外に膨らんだ形状となる。そのため、エアバッグのある車壁側とエアバッグのない車内側とにおいてシートバックの側部形状が左右で相違し、シートバックの意匠に左右差が生じるのを阻止し難い。
【0009】
本発明は、シートバックの意匠に左右差を生じることなく車壁側でシートバックの側部にエアバッグを内蔵するとともに、着座者側への展開を規制して所定の経路に沿ってエアバッグが展開されるサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、車壁側のサイドフレームの内側にエアバッグを配置しエアバッグの内側に展開規制板を設けてサイドフレーム、展開規制板でエアバッグを挟み込み、車壁側のトリムカバーの縫合部に至るガイド溝がパッドに形成され、エアバッグの全面を覆うとともに、ガイド溝に収納されて延ばされ、ガイド溝の出口で車壁側のトリムカバーの縫合部に組み込まれた展開規制布で、エアバッグの展開の出口を制限している。
すなわち、請求項1に係る本発明によれば、シートクッションとシートクッションの後端に設けられたシートバックとを備え、シートバックは、前方に延出した左右のサイドフレームを持つシートバックフレームにパッドを被せてシートバック本体とし、複数のトリムカバー片を縫合した縫合部を持つトリムカバーでシートバック本体を被覆して形成され、インフレータを内包するエアバッグを車壁側のサイドフレームに取付けてシートバックの側部の空間に内蔵し、側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータにおいて高圧ガスが発生してエアバッグに噴射され、エアバッグが車壁側でシートバックの側部前方寄りに位置するトリムカバーの縫合部を開放し、車壁側で着座者の側方の前方寄りに展開して着座者を車壁から隔離し保護するサイドエアバッグ内蔵の車両用シートにおいて、エアバッグを車壁側のサイドフレームの内側に取付けるとともにエアバッグの内側に展開規制板を設けて、車壁側のサイドフレーム、展開規制板でエアバッグを挟み込み、車壁側のトリムカバーの縫合部に至るガイド溝がパッドに形成され、エアバッグの全面を覆うとともに、ガイド溝に収納されて延ばされ、ガイド溝の出口で車壁側のトリムカバーの縫合部に組み込まれた展開規制布で、エアバッグの展開の出口を制限している
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係る本発明では、エアバッグが車壁側のサイドフレームの内側に取付けられているため、エアバッグのある車壁側とエアバッグのない車内側とにおけるシートバックの側部形状を左右同一とすることができ、シートバックの意匠に左右差が生じない。
また、車壁側のサイドフレームの内側にエアバッグを取付けているとはいえ、エアバッグの内側に展開規制板を設けているため、着座者側への展開が内側の展開規制板で規制され、エアバッグはシートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部に向かう所定の経路に沿って展開される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】内蔵されたエアバッグの周辺を部分的に透視した本発明の一実施例に係るサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの斜視図を示す。
図2図1の線A−Aに沿ったシートバックの横断面図を示す。
図3】車両用シートに内蔵されたエアバッグの周辺の分解斜視図を示す。
図4】本発明の別実施例に係るサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの図2に対応するシートバックの部分横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
サイドエアバッグ内蔵の車両用シートは、シートクッションとシートクッションの後端に設けられたシートバックとを備えている。シートバックは、前方に延出した左右のサイドフレームを持つシートバックフレームにパッドを被せてシートバック本体とし、複数のトリムカバー片を縫合した縫合部を持つトリムカバーでシートバック本体を被覆して形成されている。インフレータを内包するエアバッグが車壁側のサイドフレームに取付けられてシートバックの側部の空間に内蔵されている。側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータにおいて高圧ガスが発生してエアバッグに噴射され、エアバッグが車壁側でシートバックの側部前方寄りに位置するトリムカバーの縫合部を開放し、車壁側で着座者の側方の前方寄りに展開して着座者を車壁から隔離し保護する。ここで、エアバッグは車壁側のサイドフレームの内側に取付けられ、エアバッグの内側に展開規制板を設けて車壁側のサイドフレーム、展開規制板でエアバッグを挟み込んでいる。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は内蔵されたエアバッグの周辺を部分的に透視した本発明の一実施例に係るサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの斜視図、図2図1の線A−Aに沿ったシートバックの横断面図をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12と、シートクッションの後端に設けられたシートバック14とを備え、ヘッドレスト14hがシートバック上面に昇降可能に設けられている。通常、シートバックの下端とシートクッションの後端との間に配置されたシートリクライニング装置(図示しない)によって、シートバック14はシートクッションに対してリクライニング可能となっている。
なお、前後左右はドライバーシートに着座したドライバー(着座者)から見た方向をいい、Fr、Rr、L、Rで示し、右は車壁側、左は車内側(着座者側)に該当する。
【0016】
シートクッション12、シートバック14の基本的な構造は周知であり、シートバックに関して述べると、図1図2からわかるように、骨格となるそのフレーム(シートバックフレーム)14fに発泡ウレタン等の発泡材からなるパッド(シートパッド)14pを被せてシートバック本体とし、トリムカバー(表皮)14cでシートバック本体を被覆してシートバックが形成されている。トリムカバー14cは、通気性および伸縮性のある生地からなる複数の、たとえば2枚のトリムカバー片(前身頃、後身頃)をその縫い代が内側になるように略袋状に縫製(縫合)されてシートバックフレーム14f、パッド14pを被覆している。
なお、トリムカバー14cはトリムカバー片(前身頃、後身頃)の縫合部14c’がシートバックの側部の前方寄りに位置するように縫合される。
【0017】
シートバックフレーム14fは、前方に延びた左右のサイドフレーム14fsと、パッド14pの背面を覆うバックボードとなる正面視略矩形形状の板状のバックフレーム14fbとを有し、左右のサイドフレーム、バックフレームは、たとえばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックから一体に成形されている。そして、ブラケット16がフレームの左右のサイドフレーム14fsの内側にそれぞれ固定されている。
実施例では、フレーム14fがバックボードとなるバックフレーム14fbを有した構成であるため、トリムカバー14cはバックフレームを被覆せず、サイドフレーム14fsの前端が折り返され、その折り返し部の内側でトリムカバーの後端が端末処理されている。
【0018】
シートバック14の左右の側部では、ブラケット16の内側とパッド14pとの間に空間18が設けられており、ドアなどの車室側壁(車壁)19に隣接するシートバックの側部の空間(車壁側の空間)はエアバッグ(サイドエアバッグ)20を内蔵可能な大きさに形成されている。
【0019】
シートバックフレーム14fは、エアバッグをその内側に内蔵可能に左右のサイドフレーム14fsが前方に延びているものであれば足り、左右のサイドフレームとバックボードとなる略矩形形状の板状のバックフレーム14fbとを一体的に有して繊維強化プラスチックから成形された構成に限定されない。
たとえば、シートバックフレーム14fとして、前方に延びた左右のサイドフレームを鋼板から形成し、鋼管からなるアッパーフレーム、鋼板または鋼管からなるロアフレームで左右のサイドフレームの上下を連結した正面視略矩形形状の公知のシートバックフレーム(たとえば、特開2009−051480号公報、特に図2図7参照)を利用してもよい。
【0020】
エアバッグ20がシートバックの車壁側の側部空間に配置、内蔵されている。エアバッグ20の基本の構成は周知であり、それ自体が本発明の要旨でないため詳細に説明しないが、インフレータと称される起動装置(ガス発生装置)を内包してインフレータの前方に折り畳んで略直方体のケースに収納されている。側面衝突などによる衝撃を検出する衝撃センサ(図示しない)がシート10に装着されており、衝撃センサが側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータにおいてガス(高圧ガス)が発生してエアバッグに噴射される。そして、シートバックの側部空間18からパッド14pを破砕し、シートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部14c’を開放して、エアバッグ20が車壁側の着座者の側方で前方寄りに展開(膨出)し、着座者を車壁から隔離して着座者の受ける衝撃を軽減して着座者を保護する。
【0021】
本発明では、車壁側のサイドフレームの内側にエアバッグを配置しエアバッグの内側に展開規制板を設けてサイドフレーム、展開規制板でエアバッグを挟み込んでいる。
図3は車両用シートに内蔵されたエアバッグの周辺の分解斜視図を示している。図1図2に加えて図3を見るとよくわかるように、車壁側のブラケット16はその内側に保持用ブラケット16aを有し、この保持用ブラケットを利用してエアバッグがサイドフレームの内側でシートバックの側部に内蔵される。
たとえば、保持用ブラケット16aを横断面略コ字形状に成形してブラケット16に溶接してもよいし、ブラケット16自体を横断面略コ字形状に形成して保持用ブラケットと一体化してもよい。エアバッグ20は、横断面略コ字形状の保持用ブラケット16aまたはブラケット16に抱え込まれて保持されて、サイドフレームの内側に内蔵される。
【0022】
エアバッグ20は略直方体のケースに収納されて形成され、その内面側から取付け用の複数、たとえば2本のねじ20aが突出し、そのねじの挿通する2つの長穴状の溝(スリット)16a1が保持用ブラケット16aの端に形成されている。保持用ブラケットの2つの長穴状の溝16a1は互いに略90°相違する方向に形成されており、エアバッグ側の2本のねじ20aが長穴状の溝16a1に一端挿通されると、2つの長穴状の溝が略90°の角度で交差しているため、エアバッグ20は上下左右に簡単に離脱することなく保持用ブラケット16aに抱え込まれた所定の位置に保持される。
なお、シートバックフレームのバックフレーム(バックボード)14fbの前面に凹み14fb’が形成され、この凹みにエアバッグ20が位置している(図1参照)。
【0023】
そして、展開規制板22が保持用ブラケット16aに被せられて、エアバッグの内面側を覆っている。この展開規制板22は、たとえば、上下方向でその中央部が突出した段差付形状に形成されている。そして、展開規制板に形成された取付け穴22aにねじ20aを挿通させて座金22bを介して六角ナット22cをねじに螺合することによって、展開規制板22が保持用ブラケット16aの内側に取付けられている。
なお、実施例では、展開規制板22は、図2からわかるように、エアバッグの内面側をその後方から前方にかけて前端を除いてエアバッグの内面側を覆っているが、エアバッグの内面の前端まで延ばした形状として、前後方向でエアバッグの内面側のほぼ全面を覆ってもよい。
【0024】
衝撃センサが側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータで発生した高圧ガスがエアバッグ20に噴射されて、エアバッグは、たとえば、そのケースの前面を図3に一点鎖線で示すように上下方向の略中央部で破砕し、破砕開口20bを拡大しながら展開(膨出)される。図2に示すように、トリムカバー14cの2枚のトリムカバー片(前身頃、後身頃)の縫合部14c’がシートバックの側部の前方寄りに位置しており、エアバッグ20は、パッド14pを破砕し縫合部を開放して、シートバックの側部の空間18から車壁側で着座者の側方の前方寄りに展開して着座者を車壁19から隔離し保護する。
【0025】
破砕開口20bの形成されるエアバッグの前面中央部からシートバックの側部の前方寄りに位置するトリムカバーの縫合部14c’に至るガイド溝14pgがパッド14pに形成されている。そのため、このガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る車壁側でのエアバッグ20の経路が容易に確保される。
【0026】
ここで、本発明では、エアバッグ20はサイドフレーム14fsの内側に設けられているため、車壁側でなく車壁から離反する方向(車内側)、つまり着座者側に展開するおそれがある。しかしながら、エアバッグ20の内側に展開規制板22を設けているため、内側の展開規制板に妨げられて着座者側へのエアバッグの展開が規制(抑制、邪魔)され、着座者側にそれることなく、縫合部14c’に至る車壁側の所定の経路に沿ってエアバッグが展開する。
【0027】
エアバッグ20が展開するとき、大きな押力がエアバッグから展開規制板22に加わり、展開規制板を変形させるおそれがある。しかしながら、展開規制板22はその上下方向でその中央部が突出した段差形状に成形されて構造的に補強されているため、エアバッグからの押力に耐えて変形せず、着座者側へのエアバッグの展開が規制される。
このように、展開規制板22は補強された形状に成形されることが好ましく、補強する構造は段差形状に限定されず、たとえば複数のリブ形状の突部を平行に形成してもよい。
【0028】
なお、エアバッグ20の内側に車壁側のサイドフレーム14fsが位置して展開を妨げているため、ガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る所定の経路以外に車壁側で展開しない。
【0029】
シートバックの左側部の空間18を、図2に一点鎖線で示すように大きくして、右側部(車壁側の側部)と同様にエアバッグ20を内蔵可能な形状としておけば、シートバック14の右側部、左側部のいずれでもエアバッグを内蔵できる。そのため、シート10は、車内の右側に配置されるシート(たとえば、ドライバーシート)、左側に配置されるシート(たとえば、アシスタントシート)のいずれにも応用できる。
【0030】
エアバッグ20がサイドフレーム14fsの内側に設けられているため、エアバッグのある車壁側のサイドフレームをトリムカバー14cで覆ってもシートバックの側部形状が外に膨らんだ形状とならない。そのため、エアバッグのある車壁側とエアバッグのない車内側とにおけるシートバックの側部形状を左右同一とすることができ、シートバックの意匠に左右差が生じない。
【0031】
図4は本発明の別実施例に係るサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの図2に対応するシートバックの部分横断面図を示す。
この別実施例(実施例2)において、上記実施例(実施例1)と共通する部材については同じ参照符号を付してその説明を省略し、実施例1と異なる構成を主として説明する。この実施例2では、展開規制布でエアバッグの展開の出口を制限している点で相違し、他の構成は実施例1、2で共通している。
【0032】
すなわち、図4に示すように、展開規制布24は本体24a、導管片24bを有して形成され、本体は袋状に縫製されてエアバッグ20に被せられてその全面を覆っている。そして、導管片24bはその一端が本体の前面に連通され、他端がパッドのガイド溝14pgに収納されて延ばされ、ガイド溝14pgの出口でトリムカバーの縫合部14c’に組み込まれ、導管片、ガイド溝がいずれもトリムカバーの縫合部14c’に面して開口している。
【0033】
展開規制布の本体24a、導管片24bは一体化して成形されることが好ましいとはいえ、別体の本体、導管片を強固に縫合して展開規制布を成形してもよい。展開規制布24の素材として、エアバッグ20が高圧ガスのもとで展開(膨出)したとき、その展開を規定してパッド14pの破砕に伴って適宜破断される強度を持つ布地であれば足り、たとえば、力布を素材として展開規制布を成形できる。
【0034】
たとえば、力布を袋状に縫合してエアバッグ20の全面を覆う本体24aとし、また、本体となる部分に連続する力布の長尺片を筒状に縫合して大きな隙間を残すことなくガイド溝14pgに収納される外径の導管片24bを形成してその一端を本体前面に連通した形状とし、他端をトリムカバー14cの、たとえば、前身頃、後身頃とともに縫合して、展開規制布24が成形されている。すなわち、トリムカバー14cの前身頃、後身頃は導管片24bの他端を介在して縫合され、トリムカバーの縫合部14c’は導管片の他端を組み込んで(巻き込んで)形成されている。
【0035】
図4からわかるように、展開規制布の本体24aで覆われた状態でエアバッグ20が保持用ブラケット16aに保持される。
【0036】
このように、展開規制布の本体24aでエアバッグ20の全面を覆い、導管片24bの一端が本体24aの前面に連通するとともに他端がパッドのガイド溝14pgに収納され、延ばされてトリムカバーの縫合部14c’に組み込まれ、展開規制布24でエアバッグの展開の出口を制限している。そのため、エアバッグ20が高圧ガスのもとで展開(膨出)したとき、展開規制布24に邪魔されてエアバッグの自由な展開が規制(抑制、邪魔)され、ガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る車壁側での所定の経路でエアバッグが展開される。
【0037】
実施例1と同様に実施例2においても、エアバッグ20の内側に展開規制板22が設けられているため、展開規制板に妨げられて着座者側へのエアバッグの展開が規制され、着座者側にそれることなく、縫合部14c’に至る車壁側への所定の経路に沿ってエアバッグが展開する。
このように実施例2では、エアバッグ20の内側に展開規制板22を設けるだけでなく、展開規制布24でエアバッグの展開の出口を制限しているため、ガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る車壁側の所定の経路でのエアバッグ20の展開が確実に確保される。
【0038】
上記のように本発明によれば、エアバッグが車壁側のサイドフレームの内側に取付けられているため、シートバックの側部形状を左右同一とすることができ、シートバックの意匠に左右差が生じない。
また、車壁側のサイドフレームの内側にエアバッグを取付けているとはいえ、エアバッグの内側に展開規制板を設けているため、着座者側への展開が内側の展開規制板で規制され、エアバッグはシートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部に向かう車壁側への所定の経路に沿って展開される。
【0039】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、車壁側でシートバックの側部にエアバッグを内蔵したシートに広範囲に応用でき、乗用車、バスなどの車両用シートに限定されず、側面衝突時などに着座者の受ける衝撃を軽減して着座者を保護する必要のあるシート、たとえば電車、飛行機などのシートにも応用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 シートバック
14c トリムカバー(表皮)
14c’ 縫合部
14p パッド(シートパッド)
14f シートバックフレーム
14fb バックフレーム(バックボード)
14fs サイドフレーム
16 ブラケット
16a 保持用ブラケット
18 シートバック側部の空間
19 車壁
20 エアバッグ(サイドエアバッグ)
20a ねじ
20b 破砕開口
22 展開規制板
24 展開規制布
24a 本体
24b 導管片
図1
図2
図3
図4