【実施例】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は内蔵されたエアバッグの周辺を部分的に透視した本発明の一実施例に係るサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの斜視図、
図2は
図1の線A−Aに沿ったシートバックの横断面図をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12と、シートクッションの後端に設けられたシートバック14とを備え、ヘッドレスト14hがシートバック上面に昇降可能に設けられている。通常、シートバックの下端とシートクッションの後端との間に配置されたシートリクライニング装置(図示しない)によって、シートバック14はシートクッションに対してリクライニング可能となっている。
なお、前後左右はドライバーシートに着座したドライバー(着座者)から見た方向をいい、Fr、Rr、L、Rで示し、右は車壁側、左は車内側(着座者側)に該当する。
【0016】
シートクッション12、シートバック14の基本的な構造は周知であり、シートバックに関して述べると、
図1、
図2からわかるように、骨格となるそのフレーム(シートバックフレーム)14fに発泡ウレタン等の発泡材からなるパッド(シートパッド)14pを被せてシートバック本体とし、トリムカバー(表皮)14cでシートバック本体を被覆してシートバックが形成されている。トリムカバー14cは、通気性および伸縮性のある生地からなる複数の、たとえば2枚のトリムカバー片(前身頃、
後身頃)をその縫い代が内側になるように略袋状に縫製(縫合)されてシートバックフレーム14f、パッド14pを被覆している。
なお、トリムカバー14cはトリムカバー片(前身頃、
後身頃)の縫合部14c’がシートバックの側部の前方寄りに位置するように縫合される。
【0017】
シートバックフレーム14fは、前方に延びた左右のサイドフレーム14fsと、パッド14pの背面を覆うバックボードとなる正面視略矩形形状の板状のバックフレーム14fbとを有し、左右のサイドフレーム、バックフレームは、たとえばCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックから一体に成形されている。そして、ブラケット16がフレームの左右のサイドフレーム14fsの内側にそれぞれ固定されている。
実施例では、フレーム14fがバックボードとなるバックフレーム14fbを有した構成であるため、トリムカバー14cはバックフレームを被覆せず、サイドフレーム14fsの前端が折り返され、その折り返し部の内側でトリムカバーの後端が端末処理されている。
【0018】
シートバック14の左右の側部では、ブラケット16の内側とパッド14pとの間に空間18が設けられており、ドアなどの車室側壁(車壁)19に隣接するシートバックの側部の空間(車壁側の空間)はエアバッグ(サイドエアバッグ)20を内蔵可能な大きさに形成されている。
【0019】
シートバックフレーム14fは、エアバッグをその内側に内蔵可能に左右のサイドフレーム14fsが前方に延びているものであれば足り、左右のサイドフレームとバックボードとなる略矩形形状の板状のバックフレーム14fbとを一体的に有して繊維強化プラスチックから成形された構成に限定されない。
たとえば、シートバックフレーム14fとして、前方に延びた左右のサイドフレームを鋼板から形成し、鋼管からなるアッパーフレーム、鋼板または鋼管からなるロアフレームで左右のサイドフレームの上下を連結した正面視略矩形形状の公知のシートバックフレーム(たとえば、特開2009−051480号公報、特に
図2、
図7参照)を利用してもよい。
【0020】
エアバッグ20がシートバックの車壁側の側部空間に配置、内蔵されている。エアバッグ20の基本の構成は周知であり、それ自体が本発明の要旨でないため詳細に説明しないが、インフレータと称される起動装置(ガス発生装置)を内包してインフレータの前方に折り畳んで略直方体のケースに収納されている。側面衝突などによる衝撃を検出する衝撃センサ(図示しない)がシート10に装着されており、衝撃センサが側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータにおいてガス(高圧ガス)が発生してエアバッグに噴射される。そして、シートバックの側部空間18からパッド14pを破砕し、シートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部14c’を開放して、エアバッグ20が車壁側の着座者の側方で前方寄りに展開(膨出)し、着座者を車壁から隔離して着座者の受ける衝撃を軽減して着座者を保護する。
【0021】
本発明では、車壁側のサイドフレームの内側にエアバッグを配置しエアバッグの内側に展開規制板を設けてサイドフレーム、展開規制板でエアバッグを挟み込んでいる。
図3は車両用シートに内蔵されたエアバッグの周辺の分解斜視図を示している。
図1、
図2に加えて
図3を見るとよくわかるように、車壁側のブラケット16はその内側に保持用ブラケット16aを有し、この保持用ブラケットを利用してエアバッグがサイドフレームの内側でシートバックの側部に内蔵される。
たとえば、保持用ブラケット16aを横断面略コ字形状に成形してブラケット16に溶接してもよいし、ブラケット16自体を横断面略コ字形状に形成して保持用ブラケットと一体化してもよい。エアバッグ20は、横断面略コ字形状の保持用ブラケット16aまたはブラケット16に抱え込まれて保持されて、サイドフレームの内側に内蔵される。
【0022】
エアバッグ20は略直方体のケースに収納されて形成され、その内面側から取付け用の複数、たとえば2本のねじ20aが突出し、そのねじの挿通する2つの長穴状の溝(スリット)16a1が保持用ブラケット16aの端に形成されている。保持用ブラケットの2つの長穴状の溝16a1は互いに略90°相違する方向に形成されており、エアバッグ側の2本のねじ20aが長穴状の溝16a1に一端挿通されると、2つの長穴状の溝が略90°の角度で交差しているため、エアバッグ20は上下左右に簡単に離脱することなく保持用ブラケット16aに抱え込まれた所定の位置に保持される。
なお、シートバックフレームのバックフレーム(バックボード)14fbの前面に凹み14fb’が形成され、この凹みにエアバッグ20が位置している(
図1参照)。
【0023】
そして、展開規制板22が保持用ブラケット16aに被せられて、エアバッグの内面側を覆っている。この展開規制板22は、たとえば、上下方向でその中央部が突出した段差付形状に形成されている。そして、展開規制板に形成された取付け穴22aにねじ20aを挿通させて座金22bを介して六角ナット22cをねじに螺合することによって、展開規制板22が保持用ブラケット16aの内側に取付けられている。
なお、実施例では、展開規制板22は、
図2からわかるように、エアバッグの内面側をその後方から前方にかけて前端を除いてエアバッグの内面側を覆っているが、エアバッグの内面の前端まで延ばした形状として、前後方向でエアバッグの内面側のほぼ全面を覆ってもよい。
【0024】
衝撃センサが側面衝突などによる衝撃を検出すると、インフレータで発生した高圧ガスがエアバッグ20に噴射されて、エアバッグは、たとえば、そのケースの前面を
図3に一点鎖線で示すように上下方向の略中央部で破砕し、破砕開口20bを拡大しながら展開(膨出)される。
図2に示すように、トリムカバー14cの2枚のトリムカバー片(前身頃、
後身頃)の縫合部14c’がシートバックの側部の前方寄りに位置しており、エアバッグ20は、パッド14pを破砕し縫合部を開放して、シートバックの側部の空間18から車壁側で着座者の側方の前方寄りに展開して着座者を車壁19から隔離し保護する。
【0025】
破砕開口20bの形成されるエアバッグの前面中央部からシートバックの側部の前方寄りに位置するトリムカバーの縫合部14c’に至るガイド溝14pgがパッド14pに形成されている。そのため、このガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る車壁側でのエアバッグ20の経路が容易に確保される。
【0026】
ここで、本発明では、エアバッグ20はサイドフレーム14fsの内側に設けられているため、車壁側でなく車壁から離反する方向(車内側)、つまり着座者側に展開するおそれがある。しかしながら、エアバッグ20の内側に展開規制板22を設けているため、内側の展開規制板に妨げられて着座者側へのエアバッグの展開が規制(抑制、邪魔)され、着座者側にそれることなく、縫合部14c’に至る車壁側の所定の経路に沿ってエアバッグが展開する。
【0027】
エアバッグ20が展開するとき、大きな押力がエアバッグから展開規制板22に加わり、展開規制板を変形させるおそれがある。しかしながら、展開規制板22はその上下方向でその中央部が突出した段差形状に成形されて構造的に補強されているため、エアバッグからの押力に耐えて変形せず、着座者側へのエアバッグの展開が規制される。
このように、展開規制板22は補強
された形状に成形されることが好ましく、補強する構造は段差形状に限定されず、たとえば複数のリブ形状の突部を平行に形成してもよい。
【0028】
なお、エアバッグ20の内側に車壁側のサイドフレーム14fsが位置して展開を妨げているため、ガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る所定の経路以外に車壁側で展開しない。
【0029】
シートバックの左側部の空間18を、
図2に一点鎖線で示すように大きくして、右側部(車壁側の側部)と同様にエアバッグ20を内蔵可能な形状としておけば、シートバック14の右側部、左側部のいずれでもエアバッグを内蔵できる。そのため、シート10は、車内の右側に配置されるシート(たとえば、ドライバーシート)、左側に配置されるシート(たとえば、アシスタントシート)のいずれにも応用できる。
【0030】
エアバッグ20がサイドフレーム14fsの内側に設けられているため、エアバッグのある車壁側のサイドフレームをトリムカバー14cで覆ってもシートバックの側部形状が外に膨らんだ形状とならない。そのため、エアバッグのある車壁側とエアバッグのない車内側とにおけるシートバックの側部形状を左右同一とすることができ、シートバックの意匠に左右差が生じない。
【0031】
図4は本発明の別実施例に係るサイドエアバッグ内蔵の車両用シートの
図2に対応するシートバックの部分横断面図を示す。
この別実施例(実施例2)において、上記実施例(実施例1)と共通する部材については同じ参照符号を付してその説明を省略し、実施例1と異なる構成を主として説明する。この実施例2では、展開規制布でエアバッグの展開の出口を制限している点で相違し、他の構成は実施例1、2で共通している。
【0032】
すなわち、
図4に示すように、展開規制布24は本体24a、導管片24bを有して形成され、本体は袋状に縫製されてエアバッグ20に被せられてその全面を覆っている。そして、導管片24bはその一端が本体の前面に連通され、他端がパッドのガイド溝14pgに収納されて延ばされ、ガイド溝14pgの出口でトリムカバーの縫合部14c’に組み込まれ、導管片、ガイド溝がいずれもトリムカバーの縫合部14c’に面して開口している。
【0033】
展開規制布の本体24a、導管片24bは一体化して成形されることが好ましいとはいえ、別体の本体、導管片を強固に縫合して展開規制布を成形してもよい。展開規制布24の素材として、エアバッグ20が高圧ガスのもとで展開(膨出)したとき、その展開を規定してパッド14pの破砕に伴って適宜破断される強度を持つ布地であれば足り、たとえば、力布を素材として展開規制布を成形できる。
【0034】
たとえば、力布を袋状に縫合してエアバッグ20の全面を覆う本体24aとし、また、本体となる部分に連続する力布の長尺片を筒状に縫合して大きな隙間を残すことなくガイド溝14pgに収納される外径の導管片24bを形成してその一端を本体前面に連通した形状とし、他端をトリムカバー14cの、たとえば、前身頃、
後身頃とともに縫合して、展開規制布24が成形されている。すなわち、トリムカバー14cの前身頃、
後身頃は導管片24bの他端を介在して縫合され、トリムカバーの縫合部14c’は導管片の他端を組み込んで(巻き込んで)形成されている。
【0035】
図4からわかるように、展開規制布の本体24aで覆われた状態でエアバッグ20が保持用ブラケット16aに保持される。
【0036】
このように、展開規制布の本体24aでエアバッグ20の全面を覆い、導管片24bの一端が
本体24aの前面に連通するとともに他端がパッドのガイド溝14pgに収納され、延ばされてトリムカバーの縫合部14c’に組み込まれ、展開規制布24でエアバッグの展開の出口を制限している。そのため、エアバッグ20が高圧ガスのもとで展開(膨出)したとき、展開規制布24に邪魔されてエアバッグの自由な展開が規制(抑制、邪魔)され、ガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る車壁側での所定の経路でエアバッグが展開される。
【0037】
実施例1と同様に実施例2においても、エアバッグ20の内側に展開規制板22が設けられているため、展開規制板に妨げられて着座者側へのエアバッグの展開が規制され、着座者側にそれることなく、縫合部14c’に至る車壁側への所定の経路に沿ってエアバッグが展開する。
このように実施例2では、エアバッグ20の内側に展開規制板22を設けるだけでなく、展開規制布24でエアバッグの展開の出口を制限しているため、ガイド溝14pgに沿って縫合部14c’に至る車壁側の所定の経路でのエアバッグ20の展開が確実に確保される。
【0038】
上記のように本発明によれば、エアバッグが車壁側のサイドフレームの内側に取付けられているため、シートバックの側部形状を左右同一とすることができ、シートバックの意匠に左右差が生じない。
また、車壁側のサイドフレームの内側にエアバッグを取付けているとはいえ、エアバッグの内側に展開規制板を設けているため、着座者側への展開が内側の展開規制板で規制され、エアバッグはシートバックの側部前方寄りのトリムカバーの縫合部に向かう車壁側への所定の経路に沿って展開される。
【0039】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。