(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6041774
(24)【登録日】2016年11月18日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】浮腫重症度測定器
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20161206BHJP
A61H 7/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
A61B5/00 101L
A61H7/00 322Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-184586(P2013-184586)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-51086(P2015-51086A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】高木 則和
(72)【発明者】
【氏名】中尾 春樹
【審査官】
増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−175016(JP,A)
【文献】
特表2009−501594(JP,A)
【文献】
特開平10−248815(JP,A)
【文献】
特開2003−319990(JP,A)
【文献】
特開2007−289321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/01
A61H 7/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の腕又は脚の皮膚表面に隣接して配置される測定用空気袋と、
前記測定用空気袋に圧縮空気を供給して、前記測定用空気袋を前記皮膚表面を押圧するように膨張させる圧縮空気供給手段と、
前記腕又は脚を包み込むようにして装着され前記測定用空気袋を支持する測定用空気袋支持部材と、
を備え、
前記測定用空気袋が膨張して前記皮膚表面を押圧して変形させている最中の前記測定用空気袋内の圧力変化に基づいて浮腫重症度を判定するようにされ、
前記測定用空気袋支持部材が、前記腕又は脚の長さ方向に沿って配置される複数の空気室を備える筒状の部材とされ、前記測定用空気袋を該測定用空気袋支持部材の内周面と前記腕又は脚の皮膚表面との間に保持すると共に、前記圧縮空気供給手段により各空気室に圧縮空気を供給排出することにより前記腕又は脚に対するマッサージも行えるようにした、浮腫重症度測定器。
【請求項2】
複数の前記測定用空気袋を備え、各測定用空気袋を前記測定用空気袋支持部材の前記内周面における各空気室に隣接する位置にそれぞれ配置した、請求項1に記載の浮腫重症度測定器。
【請求項3】
前記測定用空気袋内の圧力を測定する空気袋圧力センサと、
該空気袋圧力センサによって測定した圧力値に基づいて浮腫重症度を判定する重症度判定手段と、
前記測定用空気袋支持部材の前記空気室内の圧力を測定する空気室圧力センサと、
該空気室圧力センサによって前記空気室の圧力を監視しながら、前記空気室内の圧力値が任意に設定された設定圧力値となるように前記圧縮空気供給手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記重症度判定手段によって判定された浮腫重症度に基づいて、前記設定圧力値を自動的に変更するようにされた、請求項1又は2に記載の浮腫重症度測定器。
【請求項4】
前記測定用空気袋が、前記皮膚表面に当接する内側面と、前記測定用空気袋支持部材に支持される外側面と、前記内側面と前記外側面とを連結する蛇腹状の側面と、を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の浮腫重症度測定器。
【請求項5】
前記圧縮空気供給手段が、圧縮空気を発生するエアポンプと、該エアポンプに接続されたエアタンクと、前記エアタンクと前記測定用空気袋との間に配置され前記エアタンクと前記測定用空気袋との間の連通の開閉を行う電磁弁と、を備えており、前記電磁弁によって前記連通を閉じて前記エアタンク内に一定量の圧縮空気を貯留した状態で、前記電磁弁によって前記連通を開けて前記エアタンク内の圧縮空気を前記測定用空気袋に供給するようにされた、請求項1乃至4の何れか一項に記載の浮腫重症度測定器。
【請求項6】
人の腕又は脚の皮膚表面に隣接して配置される測定用空気袋と、
前記測定用空気袋に圧縮空気を供給して、前記測定用空気袋を前記皮膚表面を押圧するように膨張させる圧縮空気供給手段と、
前記腕又は脚を包み込むようにして装着され前記測定用空気袋を支持する測定用空気袋支持部材と、
を備え、
前記測定用空気袋が、前記皮膚表面に当接する内側面と、前記測定用空気袋支持部材に支持される外側面と、前記内側面と前記外側面とを連結する蛇腹状の側面と、を有するようにされた、浮腫重症度測定器。
【請求項7】
人の腕又は脚の皮膚表面に隣接して配置される測定用空気袋と、
前記測定用空気袋に圧縮空気を供給して、前記測定用空気袋を前記皮膚表面を押圧するように膨張させる圧縮空気供給手段と、
を備え、
前記測定用空気袋が膨張して前記皮膚表面を押圧して変形させている最中の前記測定用空気袋内の圧力変化に基づいて浮腫重症度を判定するようにされ、
前記圧縮空気供給手段が、圧縮空気を発生するエアポンプと、該エアポンプに接続されたエアタンクと、前記エアタンクと前記測定用空気袋との間に配置され前記エアタンクと前記測定用空気袋との間の連通の開閉を行う電磁弁と、を備えており、前記電磁弁によって前記連通を閉じて前記エアタンク内に一定量の圧縮空気を貯留した状態で、前記電磁弁によって前記連通を開けて前記エアタンク内の圧縮空気を前記測定用空気袋に供給するようにされた、浮腫重症度測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮腫の重症度を皮下組織の硬度から判定する浮腫重症度測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療等によりリンパ管の機能が低下したりリンパ管が閉塞したりすると、リンパ液の流れが悪くなって本来リンパ管に吸収されるはずであったリンパ液が細胞組織の隙間に溜まり、腕や脚にむくみが生じることがある。リンパ液の循環が阻害されることに起因するこのようなむくみは、リンパ浮腫と呼ばれる。同様に、血管における何らかの障害により腕や脚に浮腫が生じる場合もある。
【0003】
このような浮腫の治療方法としては、用手的リンパドレナージが知られている。用手的リンパドレナージは、リンパ管系のみならず血管系の浮腫にも効果的であり、人の手によるマッサージによって細胞組織の隙間に貯留したリンパ液などの体液を正常な機能を有するリンパ管や血管に向かって誘導して、むくみを解消するものである。また、用手的リンパドレナージの補助的役割として、腕や脚の周りに配置される環状の空気室を腕や脚の末梢の位置から身体の中枢に向かう近位方向に連続的に並べて配置し、各空気室に圧縮空気を供給して膨らませることで腕や脚を圧迫してマッサージを行うようにした空気圧式マッサージ装置を使用する場合がある(非特許文献1)。
【0004】
人の手または空気圧式マッサージ装置によるリンパドレナージを行う際には、浮腫の重症度に合わせて適切な強さでマッサージをすることが効果的であるので、浮腫の重症度を判断することが重要となる。浮腫の重症度の判断は、通常、専門医師による視診や触診により行われる。
【0005】
また最近では、超音波プローブと歪センサとを備え、超音波プローブを皮膚に押し付けたときの皮下組織の圧縮変形状態を超音波画像で確認しつつ超音波プローブの押し付け力を歪センサで測定するようにして、超音波画像と押し付け力とからリンパ浮腫であるかを診断する医療装置が開発されており(特許文献1)、そのような装置をリンパ浮腫の重症度の判断に使用することが可能と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−86002号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】カタログ「フィジカルメドマーPM−8000」 日東工器株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、そのような装置による診断は、リンパ浮腫などの各種浮腫であることを確定するための初期診断や、浮腫の状態を詳細に検診するための定期検診としては重要な役割を果たしているが、日々のリンパドレナージのやり方の修正等を目的として浮腫の重症度を日常的に確認するためにそのような診断を毎日のように行うことは医療者及び患者の双方にとって負担が大きい。そのため、より簡易に浮腫の重症度を確認できるようになることが望まれていた。そこで本発明は、浮腫の重症度をより簡易に測定できる浮腫重症度測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、
人の腕又は脚の皮膚表面に隣接して配置される測定用空気袋と、
前記測定用空気袋に圧縮空気を供給して、前記測定用空気袋を前記皮膚表面を押圧するように膨張させる圧縮空気供給手段と、
を備え、
前記測定用空気袋が膨張して前記皮膚表面を押圧して変形させている最中の前記測定用空気袋内の圧力変化に基づいて浮腫重症度を判定するようにされた、浮腫重症度測定器を提供する。
【0010】
リンパ浮腫などの各種浮腫を発症している腕や脚は、リンパ液などの体液が皮下組織に貯留されることに伴うむくみによって、健常者の腕や脚よりも軟らかくなっている。すなわち、浮腫の重症度が大きくなるにしたがって皮下組織の硬度は低下する傾向にある。そのため、皮下組織の硬度を測定することによって浮腫の重症度を簡易的に判定することができる。当該浮腫重症度測定器においては、測定用空気袋を圧縮空気によって膨張させて皮膚表面を押圧している最中の測定用空気袋内の圧力変化に基づいて浮腫の重症度を判定するようにしている。上述のように浮腫の重症度が大きくなるにつれて皮下組織の硬度は低下するため、測定用空気袋に圧縮空気が供給されたときの該測定用空気袋内の圧力変化は、浮腫の重症度が大きいほど緩やかな変化となる。当該浮腫重症度測定器は、このような圧力変化を測定することにより浮腫の重傷度を測定するものであり、前述の従来の超音波による画像診断装置等に比べて、非常に単純な構成であるとともに操作に専門的知識を要しないので、患者自身が操作して手軽に浮腫の重症度を確認することが可能となる。
【0011】
好ましくは、前記腕又は脚を包み込むようにして装着され前記測定用空気袋を支持する測定用空気袋支持部材を更に備えるようにすることができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記測定用空気袋支持部材が、前記腕又は脚の長さ方向に沿って配置される複数の空気室を備える筒状の部材とされ、前記測定用空気袋を該測定用空気袋支持部材の内周面と前記腕又は脚の皮膚表面との間に保持すると共に、前記圧縮空気供給手段により各空気室に圧縮空気を供給排出することにより前記腕又は脚に対するマッサージも行えるようにすることができる。
【0013】
マッサージ機能も備えるようにすることで、浮腫の重症度を測定したあとに、続けてリンパドレナージを行うことができるようになり、利便性が向上する。
【0014】
好ましくは、複数の前記測定用空気袋を備え、各測定用空気袋を前記測定用空気袋支持部材の前記内周面における各空気室に隣接する位置にそれぞれ配置することができる。
【0015】
このような構成により、複数箇所の浮腫の重症度を同時に測定することが可能となる。
【0016】
好ましくは、前記測定用空気袋内の圧力を測定する空気袋圧力センサと、
該空気袋圧力センサによって測定した圧力値に基づいて浮腫重症度を判定する重症度判定手段と、
前記測定用空気袋支持部材の前記空気室内の圧力を測定する空気室圧力センサと、
該空気室圧力センサによって前記空気室の圧力を監視しながら、前記空気室内の圧力値が任意に設定された設定圧力値となるように前記圧縮空気供給手段を制御する制御手段と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記重症度判定手段によって判定された浮腫重症度に基づいて、前記設定圧力値を自動的に変更するようにすることができる。
【0017】
このような構成によって、浮腫の重症度に合わせてマッサージ圧が自動的に変更されるようになり、より効果的なリンパドレナージを行うことが可能となる。
【0018】
具体的には、前記測定用空気袋が、前記皮膚表面に当接する内側面と、前記測定用空気袋支持部材に支持される外側面と、前記内側面と前記外側面とを連結する蛇腹状の側面と、を有するようにすることができる。
【0019】
より具体的には、前記圧縮空気供給手段が、圧縮空気を発生するエアポンプと、該エアポンプに接続されたエアタンクと、前記エアタンクと前記測定用空気袋との間に配置され前記エアタンクと前記測定用空気袋との間の連通の開閉を行う電磁弁と、を備えており、前記電磁弁によって前記連通を閉じて前記エアタンク内に一定量の圧縮空気を貯留した状態で、前記電磁弁によって前記連通を開けて前記エアタンク内の圧縮空気を前記測定用空気袋に供給するようにすることができる。
【0020】
浮腫の重症度を正確に判定するためには、測定用空気袋への圧縮空気の供給を毎回同じように行う必要があるが、そのために流量センサと流量制御器とを備えるようにすると測定器が非常に高価になってしまう。当該浮腫重症度測定器においては、エアポンプからの圧縮空気を一端エアタンクに貯めてから測定用空気袋に供給する構成であるので高価な機器を使用せず、コストを大きく低減することが可能となる。また、エアタンクに一端貯めるようにすることでエアポンプから吐出される圧縮空気の脈動が圧力測定に影響しないようにすることもできる。
【0021】
以下、本発明に係る浮腫重症度測定器の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る浮腫重症度測定器を示す全体図である。
【
図2】
図1の浮腫重症度測定器のエアマッサージ具を示す図である。
【
図3】流路統合ケースとマッサージ具とを接続するエアチューブの断面図である。
【
図4】
図1の浮腫重症度測定器のシステムブロック図である。
【
図5】エアポンプ及び第1乃至第3の電磁弁の駆動シーケンスを示す図である。
【
図6】脚に装着された状態のエアマッサージ具及び測定用空気袋の断面図であり、エアマッサージ具の空気袋が膨張した状態を示す図である。
【
図7】脚に装着された状態のエアマッサージ具及び測定用空気袋の断面図であり、測定用空気袋が膨張した状態を示す図である。
【
図8】測定用空気袋の圧力変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る浮腫重症度測定器1は、
図1に示すように、患者の脚Lを包むように装着される筒状のマッサージ具2と、このマッサージ具2とエアチューブ3a、3b、3cで接続された制御装置4とを備える。マッサージ具2には、
図2に示すように、つま先からかかとの付近までを覆う末梢部分から大腿部を覆う中枢部分にまで連続して並べて配置された6つの空気室5が設けられており、これら6つの空気室5は、隣接する空気室5と部分的に互いに重なり合うようにして配置されている。マッサージ具2の内周面6における各空気室5に隣接する位置には、
図6及び
図7に示すように、測定用空気袋7がそれぞれ設けられている。これら測定用空気袋7は、マッサージ具2に固定された外側面8と、マッサージ具2が脚Lに装着された状態で脚Lの皮膚表面に当接する内側面9と、外側面8と内側面9とを接続する蛇腹状の側面10とからなり、マッサージ具2を装着したときに脚Lの側面部に当接する位置に固定保持されている。制御装置4からは、各空気室5に圧縮空気を供給するためのエアチューブ3aと、各測定用空気袋7に圧縮空気を供給するためのエアチューブ3bとが出ており、途中の流路統合ケース11内で互いに隣接する空気室5と測定用空気袋7とに圧縮空気を供給するための2つの流路が、
図3に示すような1つのエアチューブ3cに統合されて、マッサージ具2の対応する空気室5及び測定用空気袋7に接続されている。このような複合流路を有するエアチューブ3cを利用することによって、マッサージ具2の周りでのエアチューブの本数を減らし、当該浮腫重症度測定器1を使用する際にエアチューブができるだけ邪魔にならないようにしている。
【0024】
制御装置4には、
図4に示すように、マッサージ具2の空気室5及び測定用空気袋7に圧縮空気を供給するための圧縮空気供給手段12と、この圧縮空気供給手段12を制御する制御回路(制御手段)13とが設けられている。圧縮空気供給手段12は、圧縮空気を発生するエアポンプ14、エアポンプ14からの圧縮空気を貯留する第1のエアタンク15、第1のエアタンク15からの流路を空気室5に向かう流路と測定用空気袋7に向かう流路との間で切り替えるように駆動される第1の電磁弁16、第1の電磁弁16からの流路を空気室5に連通させる圧縮空気供給状態と空気室5内の圧縮空気を大気中に排出する圧縮空気排出状態との間で駆動される第2の電磁弁17、第1の電磁弁16と第2の電磁弁17との間に配置され第1の電磁弁16から第2の電磁弁17に向かう圧縮空気のみを通す逆止弁18、第1の電磁弁16からの圧縮空気を一端貯留するための第2のエアタンク19、及び第2のエアタンク19からの流路を測定用空気袋7に連通させる圧縮空気供給状態と測定用空気袋7内の圧縮空気を大気中に排出する圧縮空気排出状態との間で駆動される第3の電磁弁20、により構成されている。エアポンプ14および第1乃至第3の電磁弁16、17、20は制御回路13により駆動制御されるようになっている。制御装置4には更に、第1のエアタンク15内の圧力を測定する第1圧力センサ(空気室圧力センサ)21と、測定用空気袋7内の圧力を測定する第2圧力センサ(空気袋圧力センサ)22と、が設けられている。
【0025】
当該浮腫重症度測定器1による重症度の測定は、
図1に示すように、重症度を測定する脚Lにマッサージ具2を装着し、制御装置4を起動することにより開始される。制御装置4を起動すると、制御回路13は
図5に示す駆動シーケンスに基づいて、エアポンプ14及び第1乃至第3の電磁弁16、17、20をそれぞれ駆動制御する。具体的には、制御回路13はまず空気室与圧モードとなって、エアポンプ14をONにするとともに第2の電磁弁17をONにする。このとき第1の電磁弁16はOFFになっていて、第1のエアタンク15が空気室5に向かう流路と連通した状態となっている。また、ONにされた第2の電磁弁17は第1の電磁弁16からの流路を空気室5に連通する圧縮空気供給状態となっている。従ってこの空気室与圧モードでは圧縮空気が空気室5に供給されることになるので、空気室5が膨張して脚Lを徐々に圧迫していく。制御回路13は第1圧力センサ21によって第1のエアタンク15内の圧力を監視していて、この圧力が予め設定されている空気室圧力設定値に到達したところで空気室与圧モードを終了する。この時点で測定用空気袋7は、
図6に示すように、膨張した空気室5によって脚Lの皮膚表面とマッサージ具2の内周面6との間に挟まれて内部の空気のほぼ全てを排出して収縮した状態となっている。
【0026】
次に、制御回路13はエアタンク充填モードに移行する。このエアタンク充填モードでは、第1の電磁弁16がONになり、第1のエアタンク15からの流路を測定用空気袋7に向かう流路に連通するように切り替える。このとき第3の電磁弁20はOFFになっていて、第2のエアタンク19と測定用空気袋7との間が遮断されるとともに第2のエアタンク19側の流路が塞がれた状態となっている。従って第1のエアタンク15から供給される圧縮空気は第2のエアタンク19内に移動してそこで一端貯留される。制御回路13はここでも第1のエアタンク15内の圧力を監視していて、第1のエアタンク15内の圧力が所定の測定圧力設定値に到達したところでエアタンク充填モードを終了する。この時点で第2のエアタンク19内の圧力も第1のエアタンク15内の圧力と同様に所定の圧力値とほぼ等しくなっている。従って第2のエアタンク19内には所定の圧力値で所定量の圧縮空気が貯留された状態となっている。なお、測定圧力設定値は空気室圧力設定値よりも大きな値に設定されている。そのため、エアタンク充填モードが終了した時点における第2エアタンク19内の圧力は、空気室与圧モードによって既に加圧されている空気室5内の圧力よりも高くなっている。
【0027】
次に、制御回路13は測定モードに移行する。この測定モードでは、エアポンプ14がOFFにされて第2のエアタンク19へのさらなる圧縮空気の供給が停止されるとともに、第3の電磁弁20がONにされて第2のエアタンク19が測定用空気袋7に連通された状態となる。そして、測定用空気袋7は第2のエアタンク19から流れ込む圧縮空気により膨張し始める。このとき測定用空気袋7の外側面8は、マッサージ具2の膨張した空気室5によって拘束されているため外側への膨張は抑制されて、
図7に示すように、主に内側に向かって膨張して脚Lの皮膚表面を押圧して変形させるようになる。制御回路13は、測定用空気袋7が皮膚表面を押圧している最中の測定用空気袋7内の圧力変化を第2圧力センサ22により測定する。測定用空気袋7内の圧力は時間と共に徐々に上昇するが、その上昇速度は、
図8に示すように、測定用空気袋7が当接している部分の皮下組織の硬度に依存する。すなわち、皮下組織が硬いときには皮膚表面は押圧してもあまり変位しないので、測定用空気袋7内の圧力は比較的に早く上昇し、皮下組織が軟らかいときには皮膚表面が大きく変位するので比較的にゆっくりと圧力が上昇することになる。制御回路13は、重症度判定手段としての機能も有し、第2圧力センサ22により測定されるこの圧力変化の大きさを検出することで皮下組織の硬度を推定してそれに基づき浮腫の重症度を判定するようになっている。
【0028】
制御回路13は、浮腫の重症度を判定すると、その重症度に応じてマッサージを行う際の空気室5の設定圧力値を自動的に変更する。一般に浮腫の重症度が大きい場合には強い力でのマッサージが有効であるとされているので、重症度が大きい場合には高い圧力値に設定し、重症度が小さい場合には低い圧力値に設定するようにしている。浮腫の重症度の判定は、マッサージを開始する前に一度だけ行われ、重症度の判定が終了したあとには、マッサージ具2による脚Lのマッサージが開始される。
【0029】
上記実施形態においては、浮腫重症度測定器1がマッサージ機能を有する様になっていて、測定用空気袋7は空気室5が膨張した状態のマッサージ具2によって外側への変位が抑制されるように支持されるようになっている。すなわち、空気室5を有するマッサージ具2が測定用空気袋7を支持する測定用空気袋支持部材として機能するようになっている。しかしながら、測定用空気袋支持部材は必ずしもマッサージ具2のようなものである必要はなく、脚Lのまわりに巻くバンドやサポーターのようなもので測定用空気袋7を皮膚表面との間で支持するようにして測定用空気袋7の外方への膨張を抑制し、浮腫の重症度を測定するようにしてもよい。マッサージ具2を備える場合においては、測定用空気袋7は、いずれかの空気室5に隣接する位置に一つだけ設けるようにしても良いし、いくつかの空気室5又は全ての空気室5に隣接する位置にそれぞれ設けるようにしても良い。また、上記実施形態では脚用のマッサージ具2となっているが、マッサージ具2の形状を変更して腕用のものとすることもできる。
【符号の説明】
【0030】
脚L;浮腫重症度測定器1;マッサージ具2;エアチューブ3a、3b、3c;制御装置4;空気室5;内周面6;測定用空気袋7;外側面8;内側面9;蛇腹状の側面10;流路統合ケース11;圧縮空気供給手段12;制御回路(制御手段)13;エアポンプ14;第1のエアタンク15;第1の電磁弁16;第2電磁弁17;逆止弁18;第2のエアタンク19;第3の電磁弁20;第1圧力センサ(空気室圧力センサ)21;第2圧力センサ(空気袋圧力センサ)22;